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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066636
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】建物の吊家工法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/06 20060101AFI20240509BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
E04G23/06 A
E04G23/06 Z
E04G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176160
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】相樂 敏男
(72)【発明者】
【氏名】光枝 良
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】西村 昭憲
(72)【発明者】
【氏名】井口 礼
(72)【発明者】
【氏名】渡部 裕生
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 志朗
【テーマコード(参考)】
2E174
2E176
【Fターム(参考)】
2E174BA02
2E174CA02
2E174CA12
2E174CA23
2E174CA38
2E176AA09
2E176CC01
2E176CC02
(57)【要約】
【課題】既存の建物における建物部分の吊り移動を、吊り移動中の変形や歪みによる建物部分の破損が防止された状態で、容易に効率良く行えるようにする。
【解決手段】既存の建物Bにおける基礎部分から上の建物部分Bbを、基礎部分から切り離した後、クレーンCを使用して吊り移動させる建物の吊家工法であって、建物部分Bbを吊り移動させるにあたり、当該建物部分Bbを、縦断のみで移動先基礎部分Bc上にて自立可能な複数の分割建物部分Bb1~Bb3に分割し、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを、クレーンCにて個別に移動先基礎部分Bc上の所定位置に吊り移動させて自立させた後、再接合させて建物部分Bbを再構築する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の建物における基礎部分から上の建物部分を、前記基礎部分から切り離した後、クレーンを使用して吊り移動させる建物の吊家工法であって、
前記建物部分を吊り移動させるにあたり、当該建物部分を、縦断のみで移動先基礎部分上にて自立可能な複数の分割建物部分に分割し、
前記分割建物部分のそれぞれを、前記クレーンにて個別に前記移動先基礎部分上の所定位置に吊り移動させて自立させた後、再接合させて前記建物部分を再構築する建物の吊家工法。
【請求項2】
前記分割建物部分を吊り移動させるにあたり、自立状態の前記分割建物部分を支持する支持架台と、当該支持架台と前記クレーンの吊り具との間に介在されて前記分割建物部分の吊り姿勢を水平に保つ吊り治具とを備え、
前記支持架台及び前記吊り治具は、少なくともそれらの前後幅と左右幅の一方が、前記分割建物部分の前後幅又は左右幅よりも幅広になる枠状に形成されている請求項1に記載の建物の吊家工法。
【請求項3】
前記分割建物部分のそれぞれは、トレーラを使用した搬送が可能となるように、当該トレーラに自立状態で積載可能な大きさに分割されている請求項1又は2に記載の建物の吊家工法。
【請求項4】
前記トレーラには、傾斜地にて前記分割建物部分を搬送する際に、前記分割建物部分の搬送姿勢を水平に保つ支持台が備えられている請求項3に記載の建物の吊家工法。
【請求項5】
前記分割建物部分を吊り移動させるよりも前の段階において前記建物部分の改修予定箇所を撤去する請求項1又は2に記載の建物の吊家工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の建物における基礎部分から上の建物部分を、前記基礎部分から切り離した後、クレーンを使用して吊り移動させる建物の吊家工法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景技術としては、例えば、建造物の土台を基礎から切り離した後、クレーンを使用して、建造物の全体を土台ごと吊り移動させて新基礎上に載置固定する建造物の移設工法がある(例えば特許文献1参照)。
又、例えば、既築家屋を基礎から切り離した後、縦横に分断して、トラックにて輸送可能な複数のユニットに解体し、解体した複数のユニットを、トラックなどを使用して新たな建築先に輸送し、輸送した複数のユニットを、新たな建築先の基礎上に据え付けて再接合する住宅の再利用方法がある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭52-037701号公報
【特許文献2】特開2002-081214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、建造物の全体を土台ごと吊り移動させることにより、クレーンとして扱い難い大型のものを使用する必要がある上に、建造物の吊り移動が行い難くなる。又、吊り移動中に建造物の変形や歪みが生じ易くなり、その変形や歪みに起因した建造物の破損を招く虞が高くなる。
【0005】
一方、特許文献2では、既築家屋を縦横に分断して複数のユニットに解体してから、クレーンによるトラックの荷台への吊り移動やトラックの荷台から新たな建築場所への吊り移動が行われることにより、クレーンとして扱い易い小型のものを使用しながら、既築家屋の吊り移動を行い易くすることができる。
しかしながら、各ユニットは、既築家屋を単に縦横に分断して解体したものであることから、各ユニットを新たな建築場所に据え付けて再接合するためには、それらを新たな据付け位置にて自立保持するための仮止め作業などを要することから、各ユニットの再接合にかなりの労力を要することになる。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、既存の建物における建物部分の吊り移動を、吊り移動中の変形や歪みによる建物部分の破損が防止された状態で、容易に効率良く行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、既存の建物における基礎部分から上の建物部分を、前記基礎部分から切り離した後、クレーンを使用して吊り移動させる建物の吊家工法であって、
前記建物部分を吊り移動させるにあたり、当該建物部分を、縦断のみで移動先基礎部分上にて自立可能な複数の分割建物部分に分割し、
前記分割建物部分のそれぞれを、前記クレーンにて個別に前記移動先基礎部分上の所定位置に吊り移動させて自立させた後、再接合させて前記建物部分を再構築する点にある。
【0008】
本構成によると、既存の建物における建物部分を複数の分割建物部分に分割した後に、それらの分割建物部分を個別にクレーンにて吊り移動させることから、建物部分の全体をクレーンにて一挙に吊り移動させる場合に比較して、クレーンにて吊り移動させる対象物の小型軽量化を実現することができ、これにより、クレーンとして、扱い易い比較的小型のものを使用しながら、対象物の吊り移動を行い易くすることができる。
又、吊り移動させる対象物の小型軽量化により、吊り移動中に生じる対象物(分割建物部分)の変形や歪みを抑制することができ、吊り移動中の変形や歪みに起因した対象物(分割建物部分)の破損をより確実に防止することができる。
そして、各分割建物部分は、移動先基礎部分上にて自立可能な状態に縦断のみで分割されていることから、吊り移動後の移動先基礎部分での各分割建物部分の設置作業や再接合作業などが行い易くなる。これにより、移動先基礎部分上での建物部分の再構築を効率良く行うことができる。
その結果、既存の建物における建物部分の吊り移動を、吊り移動中の変形や歪みによる建物部分の破損が防止された状態で、容易に効率良く行うことができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、前記分割建物部分を吊り移動させるにあたり、自立状態の前記分割建物部分を支持する支持架台と、当該支持架台と前記クレーンの吊り具との間に介在されて前記分割建物部分の吊り姿勢を水平に保つ吊り治具とを備え、
前記支持架台及び前記吊り治具は、少なくともそれらの前後幅と左右幅の一方が、前記分割建物部分の前後幅又は左右幅よりも幅広になる枠状に形成されている点にある。
【0010】
本構成によると、クレーンの吊り具に複数のワイヤーロープを介して水平に吊下げ支持された吊り治具を、その分割建物部分よりも幅広になる前後幅方向又は左右幅方向の枠端部が、支持架台における分割建物部分よりも幅広になる前後幅方向又は左右幅方向の枠端部と対向するように、分割建物部分の上方に位置させた状態で、それらの対向する枠端部にわたって複数のワイヤーロープなどを掛け渡すことにより、吊り治具と支持架台とにわたる各ワイヤーロープなどを、支持架台で支持されている分割建物部分に備えられた軒や庇などの張出部よりも外側の位置に通すことができる。
これにより、クレーンによる分割建物部分の吊り移動時に、吊り治具から支持架台にわたるワイヤーロープなどが、支持架台に自立状態で支持された分割建物部分における軒や庇などの張出部に接触して、分割建物部分の吊り姿勢に悪影響を及ぼす虞を回避することができる。
その結果、分割建物部分の吊り移動を、ワイヤーロープなどとの接触による分割建物部分の変形や歪みを抑制することができる安定した水平の吊り姿勢で好適に行うことができ、分割建物部分の変形や歪みに起因した破損を防止することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、前記分割建物部分のそれぞれは、トレーラを使用した搬送が可能となるように、当該トレーラに自立状態で積載可能な大きさに分割されている点にある。
【0012】
本構成によると、既存の建物の基礎部分から移動先基礎部分までの距離が、クレーンの最大作業半径を超える場合には、クレーンの最大作業半径を超える各分割建物部分の移動を、トレーラTによる搬送で補うことができる。
又、分割建物部分のそれぞれを、容易に自立状態で安定性良くトレーラに積載することができ、これにより、トレーラを使用した分割建物部分の搬送移動を、分割建物部分の変形や歪みが抑制された好適な状態で効率良く行うことができる。
その結果、クレーンの最大作業半径を超える分割建物部分の長距離移動を、分割建物部分の変形や歪みに起因した破損が防止された好適な状態で効率良く行うことができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、前記トレーラには、傾斜地にて前記分割建物部分を搬送する際に、前記分割建物部分の搬送姿勢を水平に保つ支持台が備えられている点にある。
【0014】
本構成によると、トレーラを使用して分割建物部分を傾斜地にて搬送移動させる場合には、トレーラと分割建物部分との間に支持台を介在させることにより、自立状態の分割建物部分を容易に水平姿勢で安定性良くトレーラに積載することができる。これにより、傾斜地でのトレーラを使用した分割建物部分の搬送移動を、分割建物部分の変形や歪みが抑制された好適な状態で効率良く行うことができる。
その結果、傾斜地でのトレーラを使用した分割建物部分の搬送移動を、分割建物部分の変形や歪みに起因した破損が防止された好適な状態で効率良く行うことができる。
【0015】
本発明の第5特徴構成は、前記分割建物部分を吊り移動させるよりも前の段階において前記建物部分の改修予定箇所を撤去する点にある。
【0016】
本構成によると、建物部分に改修予定箇所が含まれている場合には、分割建物部分の吊り移動前に改修予定箇所が撤去されていることから、クレーンによる分割建物部分の吊り移動中に改修予定箇所が破損して欠け落ちる虞を回避することができる。又、改修予定箇所の撤去に伴う分割建物部分の軽量化で、クレーンによる分割建物部分の吊り移動が行い易くなる。
その結果、分割建物部分の吊り移動を、より好適に効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】移築前の建物(木造建築物)の部分正面図
図2】移築前の建物(木造建築物)の平面図
図3】建物の吊家工法を適用した建物移築工事の概略平面図
図4】建物移築工事におけるトレーラによる分割建物部分の搬送状態を示す側面図
図5】建物移築工事におけるクレーンによる分割建物部分の吊り移動状態を示す正面図
図6】クレーンによる分割建物部分の吊り移動で使用する吊り治具(トラバーサ)の構成を示す斜視図
図7】各分割建物部分を既存の基礎部分上で支持架台にて支持させた状態を示す平面図
図8】支持架台に支持された状態の分割建物部分を移動先基礎部分上の仮置き台に仮置きした状態を示す平面図
図9】建物移築工事のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る建物の吊家工法を、傾斜地の高所に建てられた建物を同じ傾斜地の低所に移築する建物移築工事に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
尚、本発明に係る建物の吊家工法は、上記の建物移築工事に限らず、例えば、傾斜地の低所から高所に建物を移築する建物移築工事や、平地で建物を移築する建物移築工事などに適用することも可能である。
【0020】
本発明に係る建物の吊家工法は、図1~4に示すように、既存の建物Bにおける基礎部分Baから上の建物部分Bbを、基礎部分Baから切り離した後、クレーンCを使用して吊り移動させる工法である。そして、本実施形態においては、本発明に係る建物の吊家工法が適用される建物移築工事として、図3~4に示すように、傾斜地Sの高所Hpから低所Lpにわたる建物部分Bbの移動距離がクレーンCの最大作業半径を超えるものが例示されている。そのため、本実施形態で例示する建物移築工事においては、建物部分Bbを高所Hpの基礎部分Ba上から低所Lpに新たに構築された移動先基礎部分Bc上に移動させるにあたり、トレーラTが使用されるとともに、クレーンCとして、トレーラTに対する荷積み用の第1クレーンC1と荷下ろし用の第2クレーンC2とが使用される。
【0021】
本実施形態で例示する移築対象の建物Bは、図1~3に示すように、傾斜地Sの高所Hpに設置された礎石からなる基礎部分Baと、基礎部分Ba上に設置された木造の建物部分Bbとを有する木造建築物である。建物部分Bbには、基礎部分Baに載置支持された木製の土台1と、土台1に建て込まれた複数の木柱2と、外壁面を形成する土壁3と、外壁面から横外方に張り出す軒4や庇5などが備えられている。
【0022】
本実施形態で例示する建物移築工事においては、前述したように、移築対象の建物Bが、礎石からなる基礎部分Baに建物部分Bbの土台1が載置支持された木造建築物であることから、基礎部分Baからの建物部分Bbの切り離しは、複数のジャッキ(図示せず)を使用して、建物Bの基礎部分Baに対して建物部分Bbをジャッキアップさせることで行える。
【0023】
図示は省略するが、本実施形態で例示する建物移築工事においては、建物部分Bbのジャッキアップや吊り移動などを行うにあたり、複数のスリングベルトなどを使用して建物部分Bbを補強している。
【0024】
本発明に係る建物の吊家工法においては、建物部分Bbを吊り移動させるにあたり、図2~3に示すように、建物部分Bbを、縦断のみで移動先基礎部分Bc上にて自立可能な3つの分割建物部分Bb1~Bb3に分割する。具体的には、隣り合う分割建物部分Bb1~Bb3の木柱2間に備えられた通路部Pを利用して、当該通路部Pが分割箇所となるように複数の分割線L(図2~3に示す一点鎖線を参照)を設定し、これらの分割線Lに基づいて、建物部分Bbを縦断のみ3つの分割建物部分Bb1~Bb3に分割することで、各分割建物部分Bb1~Bb3を、それぞれの土台1や木柱2が残された自立可能な状態にすることができる。そして、図3~4に示すように、各分割建物部分Bb1~Bb3の移動には、トレーラTが使用されることから、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれは、傾斜地Sの高所Hp側から低所Lp側にわたる搬送経路RでのトレーラTを使用した搬送が可能となるように、トレーラTに自立状態で積載可能な大きさに分割される。
【0025】
尚、本実施形態においては、建物部分Bbを上記のように3つの分割建物部分Bb1~Bb3に分割するものを例示しているが、これに限らず、例えば、建物部分Bbを2つ又は4つ以上の分割建物部分に分割するものであってもよい。
【0026】
本発明に係る建物の吊家工法においては、図1に示すように、各分割建物部分Bb1~Bb3を吊り移動させるよりも前の段階において建物部分Bbの改修予定箇所Bb4が撤去されている。具体的には、移築対象の建物Bに対する事前の建物検査において、例えば、土台1や木柱2の腐食箇所や土壁3の損傷箇所などが見つかり、それらの箇所が改修予定箇所Bb4に指定された場合には、それらの改修予定箇所Bb4が各分割建物部分Bb1~Bb3を吊り移動させるよりも前の段階で撤去される。ちなみに、図1では、改修予定箇所Bb4の一例である土壁3の一部が撤去された状態を示している。
【0027】
本発明に係る建物の吊家工法においては、図3~8に示すように、各分割建物部分Bb1~Bb3を吊り移動させるにあたり、自立状態の各分割建物部分Bb1~Bb3を個別に下方から支持する3つの支持架台F1~F3と、当該支持架台F1~F3とクレーンC1,C2の吊り具Ca(図6参照)との間に介在されて分割建物部分Bb1~Bb3の吊り姿勢を水平に保つ吊り治具としてのトラバーサ10とが備えられている。そして、図7~8に示すように、各支持架台F1~F3及びトラバーサ10は、少なくともそれらの前後幅と左右幅の一方が、分割建物部分Bb1~Bb3の前後幅又は左右幅よりも幅広になる平面視長方形の枠状に形成されている。
【0028】
各支持架台F1~F3は、図4~5、図7~8に示すように、分割建物部分Bb1~Bb3における前後両端部又は左右両端部の土台1を下方から支持する2本の端部支持鋼材6と、それらの端部支持鋼材6の間に位置して分割建物部分Bb1~Bb3における土台1の前後中間部又は左右中間部を下方から支持する単一の中間部支持鋼材7とを有している。又、各支持架台F1~F3は、各支持鋼材6,7の一端部又は他端部にわたってそれらに接合される2本の端部接合鋼材8と、各支持鋼材6,7の中間部にわたってそれらに接合される単一の中間部接合鋼材9とを有している。各支持鋼材6,7の長さは、その長さから得られる各支持架台F1~F3の前後幅又は左右幅が、分割建物部分Bb1~Bb3の前後幅又は左右幅よりも幅広になる長さに設定されている。各支持鋼材6,7及び各接合鋼材8,9にはレール用の鋼材が使用されている。
【0029】
尚、本実施形態においては、各支持架台F1~F3として、分割建物部分Bb1~Bb3を下方から支持するものを例示したが、これに限らず、例えば、分割建物部分Bb1~Bb3の下部や中間部などを支持するものであってもよい。又、各支持架台F1~F3として、2本の端部支持鋼材6の間に単一の中間部支持鋼材7を有するものを例示したが、これに限らず、例えば、2本の端部支持鋼材6の間に複数の中間部支持鋼材7を有するものであってもよい。そして、各支持鋼材6,7及び各接合鋼材8,9には、レール用の鋼材に限らず、H型鋼やC型鋼などを使用することができる。
【0030】
図示は省略するが、各支持架台F1~F3は、それらの各支持鋼材6,7及び各接合鋼材8,9が、前述したジャッキアップによる基礎部分Baからの建物部分Bb(各分割建物部分Bb1~Bb3)の切り離しで得られる基礎部分Baと建物部分Bbとの間の空間を利用して、建物部分Bbに対する下方の所定位置に配置される。そして、各支持鋼材6,7は、それらを分割建物部分Bb1~Bb3の土台1や木柱2の柱脚部にボルト接合するための接合部材や、各支持鋼材6,7との間に土台1や木柱2を挟持保持するための挟持部材などを使用して、分割建物部分Bb1~Bb3を下方から支持する状態で、土台1や木柱2の柱脚部に着脱可能に取り付けられる。各接合鋼材8,9は、それらとの間に各支持鋼材6,7を挟持保持するための挟持部材などを使用して、各支持鋼材6,7にわたってそれらの端部又は中間部を繋ぐ状態で、各支持鋼材6,7に着脱自在に取り付けられる。
【0031】
トラバーサ10は、図5~7に示すように、各支持架台F1~F3の支持鋼材6,7と同等以上の長さを有する一対の第1鋼材11と、各第1鋼材11よりも短い長さで各第1鋼材11の一端部又は他端部にわたってそれらにボルト接合される一対の第2鋼材12とを有している。各第1鋼材11及び各第2鋼材12にはH型鋼が採用されている。
【0032】
尚、本実施形態においては、トラバーサ10として、一対の第1鋼材11が一対の第2鋼材12よりも長い平面視長方形の枠状に形成されたものを例示したが、これに限らず、例えば、一対の第1鋼材11と一対の第2鋼材12とが同じ長さの平面視正方形の枠状に形成されたものであってもよく、又、単一の第1鋼材11と一対の第2鋼材12とを有する平面視H形に形成されたものであってもよい。又、各第1鋼材11及び各第2鋼材12には、H型鋼に限らず、例えばI形鋼やC型鋼などを使用することができる。
【0033】
図5~6に示すように、トラバーサ10は、その四隅が第1クレーンC1又は第2クレーンC2の吊り具Caに4本のワイヤーロープ13などを有する第1吊り具ユニットU1を介して吊り下げられる4点吊で、第1クレーンC1又は第2クレーンC2に玉掛けされる。各支持架台F1~F3は、それらにおける2本の端部接合鋼材8の両端部と中央部とが、トラバーサ10における一対の第2鋼材12の両端部と中央部とに、6本のワイヤーロープ14やベルトスリング15などを有する第2吊り具ユニットU2を介して吊り下げられる6点吊で、トラバーサ10に玉掛けされる。第2吊り具ユニットU2には、第1クレーンC1又は第2クレーンC2にて吊り下げられた分割建物部分Bb1~Bb3の水平レベルの調整を可能にするレバーホイスト16が含まれている。
【0034】
本実施形態で例示する建物移築工事においては、図5~7に示すように、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを支持架台F1~F3にて支持させた後、支持架台F1~F3のそれぞれを、順次、第1クレーンC1の吊り具Caに各吊り具ユニットU1、U2やトラバーサ10を介して玉掛けする。そして、図3~5に示すように、玉掛けされた支持架台F1~F3で支持された分割建物部分Bb1~Bb3のいずれかを、第1クレーンC1にて建物Bの基礎部分Ba上からトレーラT上に吊り移動させて、支持架台F1~F3とともにトレーラT上に載置する。そして、分割建物部分Bb1~Bb3のいずれかがトレーラT上に載置されるごとに、載置された分割建物部分Bb1~Bb3を、トレーラTにて傾斜地Sの高所Hp側から低所Lp側に搬送する。
【0035】
このように、本実施形態で例示する建物移築工事においては、トレーラT上に載置された分割建物部分Bb1~Bb3を、傾斜地Sの高所Hp側から低所Lp側に搬送することから、図3~4に示すように、トレーラTには、傾斜地Sにて分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを搬送する際に、各分割建物部分Bb1~Bb3の搬送姿勢を水平に保つ支持台20が備えられている。
【0036】
図3~4に示すように、支持台20は、トレーラTに分割建物部分Bb1~Bb3とともに積載される支持架台F1~F3を支持するように、トレーラT上における前後方向の3か所に配置されている。各支持台20は、トレーラTの左右幅に相当する長さを有する複数の第1鋼材21や、第1鋼材21よりも長さが短い複数の第2鋼材22などを積み重ねて構成され、傾斜地の勾配に応じて、各鋼材21,22の積み重ね数や各支持台20の配置間隔を調整し、かつ、トレーラT又は支持架台F1~F3と各支持台20との間などに枕木23やキャンバー24などを介在させることで、分割建物部分Bb1~Bb3の搬送姿勢を水平に調整することができる。
【0037】
図示は省略するが、分割建物部分Bb1~Bb3は、トレーラT上に支持台20を介して水平に積載された後、台付けワイヤーやレバーホイストなどを使用してトレーラT上に固定される。
【0038】
本実施形態で例示する建物移築工事においては、図3図8に示すように、分割建物部分Bb1~Bb3のいずれかが、トレーラTにて傾斜地Sの高所Hp側から低所Lp側に搬送されてくるごとに、搬送された分割建物部分Bb1~Bb3を、第2クレーンC2にてトレーラT上から移動先基礎部分Bc上の所定位置に吊り移動させて自立させた後、自立させた分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを再接合させて建物部分Bbを再構築する。
【0039】
詳述すると、図3図5図8に示すように、分割建物部分Bb1~Bb3のいずれかが、トレーラTにて傾斜地Sの低所Lp側に搬送されてくると、その都度、搬送された分割建物部分Bb1~Bb3を支持する支持架台F1~F3を、第2クレーンC2の吊り具Caに各吊り具ユニットU1、U2やトラバーサ10を介して玉掛けする。そして、玉掛けされた支持架台F1~F3で支持された分割建物部分Bb1~Bb3のいずれかを、第2クレーンC2にてトレーラT上から移動先基礎部分Bcの所定位置に備えた複数の仮置き台30(図8参照)の上方まで吊り移動させて、支持架台F1~F3とともに仮置き台30上に仮置きする。そして、分割建物部分Bb1~Bb3を仮置き台30上に仮置きしている間に、分割建物部分Bb1~Bb3から事前に撤去した土台1や木柱2の腐食箇所などを修復する。
【0040】
その後、図示は省略するが、各仮置き台30上に載置された支持架台F1~F3から分割建物部分Bb1~Bb3を取り外し、取り外した分割建物部分Bb1~Bb3を、複数のジャッキを使用して、支持架台F1~F3に対してジャッキアップさせる。そして、分割建物部分Bb1~Bb3をジャッキアップさせている間に、支持架台F1~F3を解体して、仮置き台30とともに移動先基礎部分Bc上から撤去する。
【0041】
そして、支持架台F1~F3の撤去や土台1や木柱2などの修復を終えると、分割建物部分Bb1~Bb3をレベル調整しながらジャッキダウンさせて、分割建物部分Bb1~Bb3の土台1を移動先基礎部分Bc上の所定位置に水平に載置して分割建物部分Bb1~Bb3を自立させるとともに、移動先基礎部分Bcに埋め込んだ複数のアンカーボルトなどを使用して移動先基礎部分Bc上の所定位置に据え付ける。
【0042】
このようにして、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを移動先基礎部分Bc上の所定位置に個別に据え付けた後、それらの分割建物部分Bb1~Bb3における土台1、梁などの横架材、床版、屋根板などの躯体を再接合させて建物部分Bbを再構築する。
【0043】
ちなみに、図示は省略するが、各仮置き台30は、複数の枕木を移動先基礎部分Bcの所定位置に積み重ねて構成されるとともに、桟木などを使用した適切なレベル調整が行われている。
【0044】
以下、図9のフローチャートに基づいて本実施形態で例示する建物移築工事での施工手順を説明する。
【0045】
本実施形態で例示する建物移築工事においては、第1工程S1として、建物部分Bbを、縦断のみで移動先基礎部分Bc上にて自立可能で、かつ、トレーラTに自立状態で積載可能な大きさの3つの分割建物部分Bb1~Bb3に分割する建物部分分割工程を行う。又、第2工程S2として、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを、2台のクレーンC1,C2やトレーラTなどを使用して個別に建物Bの基礎部分Ba上から移動先基礎部分Bcの所定位置に移動させる分割建物部分移動工程を行う。そして、第3工程S3として、移動先基礎部分Bc上の所定位置に個別に移動された分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを再接合させて建物部分Bbを再構築する建物部分再構築工程を行う。
【0046】
第1工程S1の建物部分分割工程には、移築対象の建物Bにおける建物部分Bbの腐食箇所や損傷個所などの改修予定箇所Bb4を撤去する改修予定箇所撤去作業と、複数のスリングベルトなどを使用して建物部分Bb(分割建物部分Bb1~Bb3)を補強する建物部分補強作業と、複数のジャッキを使用して、建物Bの基礎部分Baに対して建物部分Bb(分割建物部分Bb1~Bb3)をジャッキアップさせて、建物部分Bb(各分割建物部分Bb1~Bb3)を基礎部分Baから切り離す建物部分切り離し作業とが含まれている。
【0047】
第2工程S2の分割建物部分移動工程には、支持架台取り付け作業と、分割建物部分積載作業と、分割建物部分搬送作業と、分割建物部分仮置き作業と、分割建物部分修復作業と、支持架台撤去作業と、分割建物部分設置作業とが含まれている。
【0048】
支持架台取り付け作業では、ジャッキアップによる切り離しで得られた基礎部分Baと各分割建物部分Bb1~Bb3との間の空間を利用して、支持架台F1~F3のいずれかを、対応する分割建物部分Bb1~Bb3に当該分割建物部分Bb1~Bb3を下方から支持する状態に取り付けて、各分割建物部分Bb1~Bb3の自立状態での各クレーンC1,C2による吊り移動を可能にする。
【0049】
分割建物部分積載作業では、建物Bの近くに配置した第1クレーンC1を使用して、分割建物部分Bb1~Bb3のいずれかを、支持架台F1~F3とともに、基礎部分Ba上からその近くの傾斜地Sの高所Hpに待機させたトレーラT上に吊り移動させて自立状態で積載する。
【0050】
分割建物部分搬送作業では、建物部分Bb1~Bb3が積載されたトレーラTを傾斜地Sの高所Hpから低所Lpに移動させて、トレーラT上に積載された建物部分Bb1~Bb3を、支持架台F1~F3とともに、基礎部分Baから離れた移動先基礎部分Bcの近くまで搬送する。
【0051】
分割建物部分仮置き作業では、移動先基礎部分Bcの近くまで搬送された建物部分Bb1~Bb3を、移動先基礎部分Bcの近くに配置した第2クレーンC2を使用して、支持架台F1~F3とともに、トレーラT上から移動先基礎部分Bcの所定位置に備えた複数の仮置き台30上まで吊り移動させて仮置きする。
ちなみに、この分割建物部分仮置き作業にて建物部分Bb1~Bb3が搬出されたトレーラTは、傾斜地Sの低所Lpから高所Hpに移動して高所Hpにて待機する。
【0052】
分割建物部分修復作業では、前述した建物部分分割工程の改修予定箇所撤去作業において分割建物部分Bb1~Bb3から事前に撤去された土台1や木柱2の腐食箇所などを修復して、移動先基礎部分Bc上の所定位置への分割建物部分Bb1~Bb3の自立状態での設置を可能にする。
【0053】
支持架台撤去工程では、各仮置き台30上に載置された各支持架台F1~F3から分割建物部分Bb1~Bb3を取り外し、取り外した分割建物部分Bb1~Bb3を、複数のジャッキを使用してジャッキアップさせた後、支持架台F1~F3を解体して仮置き台30とともに移動先基礎部分Bc上から撤去する。
【0054】
分割建物部分設置作業では、ジャッキアップさせた分割建物部分Bb1~Bb3を、レベル調整しながらジャッキダウンさせて移動先基礎部分Bc上の所定位置に自立状態で設置する。
【0055】
第3工程S3の建物部分再構築工程には、移動先基礎部分Bc上の所定位置に設置された分割建物部分Bb1~Bb3を、移動先基礎部分Bcに埋め込まれた複数のアンカーボルトなどを使用して、移動先基礎部分Bc上の所定位置に据え付ける分割建物部分据え付け作業と、据え付けた各分割建物部分Bb1~Bb3における土台1、梁などの横架材、床版、屋根板などの躯体を再接合させて、隣り合う分割建物部分Bb1~Bb3の木柱2間に備えられた通路部Pなどを再構築する再構築作業とが含まれている。
【0056】
以上の通り、本実施形態で例示する建物移築工事においては、本発明に係る建物の吊家工法が適用されていることにより、既存の建物Bにおける建物部分Bbを3つの分割建物部分Bb1~Bb3に分割した後に、それらの分割建物部分Bb1~Bb3を個別に各クレーンC1,C2にて吊り移動させている。
【0057】
この点から、建物部分Bbの全体を各クレーンC1,C2にて一挙に吊り移動させる場合に比較して、各クレーンC1,C2にて吊り移動させる対象物の小型軽量化を実現することができ、これにより、各クレーンC1,C2として、扱い易い比較的小型のものを使用しながら、対象物(分割建物部分Bb1~Bb3)の吊り移動を行い易くすることができる。
【0058】
又、吊り移動させる対象物の小型軽量化により、吊り移動中に生じる対象物(分割建物部分Bb1~Bb3)の変形や歪みを抑制することができ、吊り移動中の変形や歪みに起因した対象物(分割建物部分Bb1~Bb3)の破損をより確実に防止することができる。
【0059】
そして、各分割建物部分Bb1~Bb3は、移動先基礎部分Bc上にて自立可能な状態に縦断のみで分割されていることから、吊り移動後の移動先基礎部分Bcでの各分割建物部分Bb1~Bb3の据え付け作業や再接合作業などが行い易くなる。これにより、移動先基礎部分Bc上での建物部分Bbの再構築を効率良く行うことができる。
【0060】
その結果、既存の建物Bにおける建物部分Bbの吊り移動を、吊り移動中の変形や歪みによる建物部分Bbの破損が防止された状態で、容易に効率良く行うことができる。
【0061】
又、本発明に係る建物の吊家工法が適用されていることにより、各分割建物部分Bb1~Bb3の吊り移動に使用する各支持架台F1~F3及びトラバーサ10のそれぞれが、少なくともそれらの支持鋼材6,7又は第1鋼材11の長さで決まる前後幅と左右幅の一方が、各分割建物部分Bb1~Bb3の前後幅又は左右幅よりも幅広になる平面視長方形の枠状に形成されている。
【0062】
この点から、各分割建物部分Bb1~Bb3を吊り移動させる場合には、先ず、各クレーンC1,C2の吊り具Caに複数のワイヤーロープ13などを介して水平に吊下げ支持されたトラバーサ10を、その分割建物部分Bb1~Bb3よりも幅広になる前後幅方向又は左右幅方向の枠端部となる各第2鋼材22が、各支持架台F1~F3における分割建物部分Bb1~Bb3よりも幅広になる前後幅方向又は左右幅方向の枠端部となる各端部接合鋼材8と対向するように、分割建物部分Bb1~Bb3の上方に位置させる。そして、この状態にて、対向するトラバーサ10の第2鋼材22と分割建物部分Bb1~Bb3の端部接合鋼材8とにわたって3本ずつのワイヤーロープ14やベルトスリング15などを掛け渡すことにより、トラバーサ10と支持架台F1~F3とにわたる各ワイヤーロープ14やベルトスリング15などを、支持架台F1~F3で支持されている分割建物部分Bb1~Bb3に備えられた軒4や庇5などの張出部よりも外側の位置に通すことができる。
【0063】
これにより、各クレーンC1,C2による分割建物部分Bb1~Bb3の吊り移動時に、トラバーサ10と支持架台F1~F3とにわたるワイヤーロープ14やベルトスリング15などが、支持架台F1~F3に自立状態で支持された分割建物部分Bb1~Bb3における軒4や庇5などの張出部に接触して、分割建物部分Bb1~Bb3の吊り姿勢に悪影響を及ぼす虞を回避することができる。
【0064】
その結果、各分割建物部分Bb1~Bb3の吊り移動を、ワイヤーロープ14やベルトスリング15などとの接触による分割建物部分Bb1~Bb3の変形や歪みを抑制することができる安定した水平の吊り姿勢で好適に行うことができ、分割建物部分Bb1~Bb3の変形や歪みに起因した破損を防止することができる。
【0065】
更に、本発明に係る建物の吊家工法が適用されていることにより、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれが、トレーラTを使用した搬送が可能となるように、トレーラTに自立状態で積載可能な大きさに分割されている。
【0066】
この点から、本実施形態で例示する建物移築工事のように、既存の建物Bの基礎部分Baから移動先基礎部分Bcまでの距離が、クレーンC1,C2の最大作業半径を超える場合には、クレーンC1,C2の最大作業半径を超える各分割建物部分Bb1~Bb3の移動を、トレーラTによる搬送で補うことができる。
【0067】
又、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを、容易に自立状態で安定性良くトレーラTに積載することができ、これにより、トレーラTを使用した各分割建物部分Bb1~Bb3の搬送移動を、各分割建物部分Bb1~Bb3の変形や歪みが抑制された好適な状態で効率良く行うことができる。
【0068】
その結果、クレーンC1,C2の最大作業半径を超える各分割建物部分Bb1~Bb3の長距離移動を、各分割建物部分Bb1~Bb3の変形や歪みに起因した破損が防止された好適な状態で効率良く行うことができる。
【0069】
その上、本発明に係る建物の吊家工法が適用されていることにより、トレーラTには、傾斜地Sにて分割建物部分Bb1~Bb3を搬送する際に、分割建物部分Bb1~Bb3の搬送姿勢を水平に保つ支持台20が備えられている。
【0070】
この点から、トレーラTを使用して分割建物部分Bb1~Bb3を傾斜地Sにて搬送移動させる場合には、トレーラTと分割建物部分Bb1~Bb3との間に支持台20を介在させることにより、自立状態の分割建物部分Bb1~Bb3を容易に水平姿勢で安定性良くトレーラTに積載することができる。これにより、傾斜地SでのトレーラTを使用した分割建物部分Bb1~Bb3の搬送移動を、分割建物部分Bb1~Bb3の変形や歪みが抑制された好適な状態で効率良く行うことができる。
【0071】
その結果、傾斜地SでのトレーラTを使用した分割建物部分Bb1~Bb3の搬送移動を、分割建物部分Bb1~Bb3の変形や歪みに起因した破損が防止された好適な状態で効率良く行うことができる。
【0072】
しかも、本発明に係る建物の吊家工法が適用されていることにより、分割建物部分Bb1~Bb3を吊り移動させるよりも前の段階において建物部分Bbの改修予定箇所Bb4が撤去されている。
【0073】
この点から、各分割建物部分Bb1~Bb3を吊り移動させる際には、既に各分割建物部分Bb1~Bb3から改修予定箇所Bb4が撤去されていることから、各クレーンC1,C2による分割建物部分Bb1~Bb3の吊り移動中に改修予定箇所Bb4が破損して欠け落ちる虞を回避することができる。又、改修予定箇所Bb4の撤去に伴う分割建物部分Bb1~Bb3の軽量化で、各クレーンC1,C2による分割建物部分Bb1~Bb3の吊り移動が行い易くなる。
【0074】
その結果、分割建物部分Bb1~Bb3の吊り移動を、より好適に効率良く行うことができる。
【0075】
そして、本実施形態で例示する建物移築工事においては、トラバーサ10における各第1鋼材11の長さが、各支持架台F1~F3の前後幅又は左右幅を各分割建物部分Bb1~Bb3の前後幅又は左右幅よりも幅広にするための各支持鋼材6,7の長さと同等以上であることから、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれの吊り移動に単一のトラバーサ10を使用することができる。
【0076】
その結果、各クレーンC1,C2を使用して分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを順次吊り移動させるごとに、各クレーンC1,C2に対して使用するトラバーサ10を付け替える手間を省くことができ、各分割建物部分Bb1~Bb3の吊り移動をより効率良く行うことができる。
【0077】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、上記の実施形態や他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0078】
(1)上記の実施形態においては、本発明に係る建物の吊家工法が適用される建物移築工事として、各分割建物部分Bb1~Bb3の移動距離となる建物Bの基礎部分Baから移動先基礎部分Bcまでの距離が、クレーンC1,C2の最大作業半径を超えることで、各分割建物部分Bb1~Bb3の移動にトレーラTを使用するものを例示したが、これに限らず、例えば、トレーラTを使用せずに、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを、クレーンCの最大作業半径内に位置する既存の基礎部分Ba上から移動先基礎部分Bc上に、単一のクレーンCのみを使用して吊り移動させるものであってもよい。
【0079】
又、建物移築工事としては、例えば、トレーラTを使用せずに、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを、単一のクレーンCのみを使用して、クレーンCの最大作業半径内に位置する既存の基礎部分Ba上から仮設基礎部分上に吊り移動させて一旦仮置きした後、既存の基礎部分Baを撤去してその場所に新たに構築した移動先基礎部分Bc上に、仮設基礎部分上から同じクレーンCを使用して吊り移動させるものであってもよい。
【0080】
更に、建物移築工事としては、例えば、トレーラTを使用せずに、分割建物部分Bb1~Bb3のそれぞれを、第1クレーンC1を使用して、第1クレーンC1の最大作業半径内に位置する既存の基礎部分Ba上から仮設基礎部分上に吊り移動させて一旦仮置きした後、第2クレーンC2を使用して、第2クレーンC2の最大作業半径内に位置する仮設基礎部分上から新たに構築した移動先基礎部分Bc上に吊り移動させるものであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 トラバーサ(吊り治具)
20 支持台
B 建物
Ba 基礎部分
Bb 建物部分
Bb1 分割建物部分
Bb2 分割建物部分
Bb3 分割建物部分
Bb4 改修予定箇所
Bc 移動先基礎部分
C クレーン
Ca 吊り具
F1 支持架台
F2 支持架台
F3 支持架台
T トレーラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9