IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 能美防災株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-火災システム 図1
  • 特開-火災システム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066638
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】火災システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240509BHJP
   G08B 29/10 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G08B29/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176165
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】井関 晃広
【テーマコード(参考)】
5C087
5G405
【Fターム(参考)】
5C087AA02
5C087AA10
5C087AA37
5C087CC02
5C087CC12
5C087CC22
5C087DD04
5C087EE05
5C087FF01
5C087FF04
5C087FF13
5C087GG08
5C087GG11
5C087GG14
5C087GG66
5C087GG70
5G405AA01
5G405AA06
5G405AD02
5G405AD06
5G405AD09
5G405CA14
5G405CA21
5G405CA23
5G405CA30
5G405CA38
(57)【要約】
【課題】簡易な構成により、音響データを用いて防災機器の状態を監視可能な火災システムを得る。
【解決手段】監視エリアに設置され、電池を電源とする住警器と、監視エリア内で発生する音を音響データとして収音する収音装置と、収音装置により収音された音響データに基づいて住警器の状態を監視するコントローラとを備えた火災システムであって、住警器は、電池の電圧に基づいて、住警器の特定の状態を表す特定音を出力し、コントローラは、特定音に基づいて住警器の状態を監視する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視エリアに設置され、電池を電源とする住警器と、
前記監視エリア内で発生する音を音響データとして収音する収音装置と、
前記収音装置により収音された前記音響データに基づいて前記住警器の状態を監視するコントローラと
を備えた火災システムであって、
前記住警器は、前記電池の電圧に基づいて、前記住警器の特定の状態を表す特定音を出力し、
前記コントローラは、前記特定音に基づいて前記住警器の状態を監視する
火災システム。
【請求項2】
前記収音装置は、前記住警器から出力される前記特定音を収音することで時系列データを生成し、前記時系列データにおける前記特定音の遷移状態から前記電池が電池切れに至るまでの残時間を推定することで前記住警器の状態を監視し、前記残時間に応じた警報出力を行う
請求項1に記載の火災システム。
【請求項3】
前記住警器は、前記監視エリア内に複数の住警器として設置されており、
前記複数の住警器のそれぞれは、住警器ごとに異なる周波数を有するように前記特定音があらかじめ割り付けられており、
前記収音装置は、前記周波数を識別することで、前記監視エリア内に設置された前記複数の住警器のそれぞれに対応した前記状態を監視する
請求項1または2に記載の火災システム。
【請求項4】
前記住警器は、前記監視エリア内に複数の住警器として設置されており、
前記複数の住警器のそれぞれは、出力する前記特定音に対して各住警器に固有に割り当てられた識別コードを含むデジタル情報を重畳し、
前記収音装置は、前記特定音に含まれている前記デジタル情報から識別コードを特定することで、前記監視エリア内に設置された前記複数の住警器のそれぞれに対応した前記状態を監視する
請求項1または2に記載の火災システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記住警器の状態を監視結果として外部装置に通知する通信機能を有する
請求項1または2に記載の火災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、住警器等の防災機器の状態を、防災機器から出力された特定音の音圧レベルから監視する火災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
監視エリアにおいて炎が発生したことを検知するために、種々の防災機器が設置されている。防災機器は、火災発生時に正常に働くことが重要であり、あらかじめ決められた間隔で動作試験を実施することが義務づけられている。
【0003】
防災設備の動作試験を実施する従来技術として、管理室等に設置されている火災受信機から、各住戸の火災感知器の試験を遠隔で実行することができる集合住宅警報情報システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1によれば、管理室等の遠隔から、住戸に連絡することなく、いつでも火災感知器を試験することができ、火災報知機能の信頼性を向上させることができる。また、定期的な試験を自動的に実行することができる集合住宅警報情報システムを提供することができ、火災報知機能の信頼性を一層向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4062678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1では、試験対象である防災機器が、火災受信機に接続され、相互通信が可能な構成を有することが必須である。しかしながら、住警器など、火災受信機には接続されず、独立して設置される防災機器に対しては、特許文献1に係るシステムを適用することはできない。
【0007】
従って、独立して設置される防災機器について、動作試験を自動的に実行することができるシステムが望まれる。また、独立して設置される住警器等では、電源として電池が用いられており、電池切れが発生すると、正常動作を行うことができなくなる。
【0008】
従って、防災機器が電池切れとなることで動作不能となる前に、事前に電池切れの時期を予測することが重要である。特に、種々の防災機器が設置されている監視エリアにおいて、電池切れが発生する前に、簡易な構成で電池切れになるおそれも含めた防災機器の状態を監視することが望まれる。
【0009】
本開示は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、簡易な構成により、音響データを用いて防災機器の状態を監視可能な火災システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る火災システムは、監視エリアに設置され、電池を電源とする住警器と、監視エリア内で発生する音を音響データとして収音する収音装置と、収音装置により収音された音響データに基づいて住警器の状態を監視するコントローラとを備えた火災システムであって、住警器は、電池の電圧に基づいて、住警器の特定の状態を表す特定音を出力し、コントローラは、特定音に基づいて住警器の状態を監視するものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、簡易な構成により、音響データを用いて防災機器の状態を監視可能な火災システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の実施の形態1に係る火災システムの全体構成を示した説明図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る火災システムにおいて実行される電池寿命推定方法に関する一連処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の火災システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
本開示は、防災機器に装備された電池を電源として出力される音響データから算出した現状の音圧レベルに基づいて、防災機器の自動監視を可能とすることを技術的特徴とするものであり、この結果、特に、電池切れとなって動作不能に至るまでの残時間を推定することができる。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る火災システムの全体構成を示した説明図である。本実施の形態1における火災システムは、複数の防災機器10と、マイク20と、コントローラ30とを備えて構成されている。
【0015】
複数の防災機器10としては、例えば、住警器、火災感知器、熱感知器、煙感知器などが挙げられ、監視エリア内で火災が発生したことを知らせる監視機能の役目を果たす。本実施の形態1における防災機器10は、電池を電源として動作する。
【0016】
複数の防災機器10のそれぞれは、監視機能とは別の機能として、あらかじめ設定されたタイミングで、電池を電源とした自身の特定の状態を表す特定音を、電池残量を反映した音響データとして出力する試験機能を有している。
【0017】
ここで、「あらかじめ設定されたタイミング」とは、例えば、1ヶ月ごとの定期的なタイミングとすることもできるが、電池寿命が近づくにつれてタイミングを短くするように設定することもできる。
【0018】
なお、監視エリア内に設置される防災機器10の台数は、1台でも複数台でもよい。また、防災機器10が複数台設置される場合には、同一タイプの機器に限定されず、例えば、住警器と煙感知器が混在して設置されている監視エリアにおいて、住警器と煙感知器を、電池切れに至るまでの残時間の推定も含めた状態監視の対象機器とすることができる。
【0019】
以下の説明では、監視エリア内に、複数の防災機器10として、図1に示すように防災機器10(1)と、防災機器10(2)の2台が設置されている場合を具体例として説明する。
【0020】
マイク20は、炎の監視エリアに設置され、監視エリア内において、防災機器10(1)および防災機器10(2)のそれぞれから出力される特定音を収音するための収音装置に相当する。
【0021】
コントローラ30は、防災機器10(1)および防災機器10(2)のそれぞれから出力される特定音をマイク20を介して音響データとして取得することで、機器ごとに音響データの現状の音圧レベルを算出する。なお、複数の防災機器10のそれぞれから出力される特定音をコントローラ30において機器ごとに識別するためには、例えば、以下のような手法が考えられる。
【0022】
手法1:複数の防災機器10のそれぞれに対して、防災機器ごとに異なる周波数をあらかじめ割り付けておき、複数の防災機器10のそれぞれから異なる周波数の特定音が出力されるようにする。
【0023】
手法2:複数の防災機器10のそれぞれに対して、異なる出力タイミング、および異なる音パターンの特定音をあらかじめ割り付けておき、複数の防災機器10のそれぞれから異なるタイミングで異なる音の特定音が出力されるようにする。
【0024】
手法3:「音響透かし技術」を活用し、複数の防災機器10のそれぞれが、各住警器に固有に割り当てられた識別コードを含むデジタル情報を重畳した特定音を出力する。
【0025】
コントローラ30は、複数の防災機器10のそれぞれに関して、収音結果に基づいて状態監視を行う。特に、コントローラ30は、各防災機器10の収音結果に基づいて算出したそれぞれの音圧レベルの劣化状態から、電池が電池切れに至るまでの残時間を防災機器10ごとに推定し、残時間に応じた警報出力を行う。
【0026】
残寿命推定を行うために、コントローラ30は、一例として、電池の電圧に応じた残寿命と、電池の電圧に応じて出力される特定音がマイク20で収音される際の音圧レベルとの関係を示す残寿命-音圧レベルデータを、テーブルデータとしてあらかじめ記憶しておく。
【0027】
そして、コントローラ30は、収音結果に基づいて算出した現状の音圧レベルに対応する残寿命を、残寿命-音圧レベルデータに関するテーブルデータを参照することで推定することができる。さらに、コントローラ30は、防災機器10ごとに個別に推定した残時間に応じて、複数の防災機器10のそれぞれを識別可能な警報出力を行う。
【0028】
なお、残寿命-音圧レベルデータをあらかじめ作成しておく代わりに、現状の音圧レベルから残寿命を求める関数をあらかじめ規定しておくこともできる。また、コントローラ30は、現状の音圧レベルに基づいて残寿命を推定する代わりに、時間経過に伴って順次算出した音圧レベルの遷移状態を示す時系列データを生成し、時系列データから残寿命を推定することもできる。
【0029】
換言すると、コントローラ30は、現状の音圧レベルから電池の劣化状態を推定してもよく、時系列的に算出した音圧レベルの遷移状態から電池の劣化状態を推定してもよい。
【0030】
次に、フローチャートを用いて、本実施の形態1に係る火災システムにおいて実行される一連処理について説明する。図2は、本開示の実施の形態1に係る火災システムにおいて実行される電池寿命推定方法に関する一連処理を示したフローチャートである。
【0031】
まず初めに、ステップS201において、コントローラ30は、監視エリアに設置された収音装置20を介して、監視エリア内の防災機器10から出力される特定音の収音処理を実行する。なお、複数の防災機器10のそれぞれは、あらかじめ設定されたタイミングごとに個別に特定音を出力し、その都度、この収音処理が実行されることとなる。
【0032】
次に、ステップS202において、コントローラ30は、ステップS201の収音処理を実施するごとに、対応する防災機器10に関して現状の音圧レベルを算出する。
【0033】
次に、ステップS203において、コントローラ30は、算出した現状の音圧レベルの劣化状態から、対応する防災機器10に関する電池寿命推定処理を実施し、電池切れに至るまでの残時間を推定する。
【0034】
次に、ステップS204において、コントローラ30は、ステップS203において推定された残時間に応じて、警報が必要か否かを判断する。コントローラ30は、警報が必要と判断した場合には、ステップS205に進む。一方、コントローラ30は、警報が必要ないと判断した場合には、一連処理を終了する。
【0035】
例えば、コントローラ30は、残時間が1ヶ月以下の時間として推定された場合には、警報が必要と判断することができる。
【0036】
ステップS205に進んだ場合には、コントローラ30は、複数の防災機器10のうち、警報を行う防災機器を識別可能とするように、警報出力を行う。例えば、コントローラ30は、文字表示出力、あるいは音声パターン出力により、残時間に関する警報をすべき防災機器10を識別可能とするように、警報出力を行う。
【0037】
なお、図2のフローチャートでは、電池寿命推定方法に関する一連処理について説明した。しかしながら、複数の防災機器10のそれぞれは、自身の現在の状態に応じて、状態毎に異なる特定音を出力することができる。従って、コントローラ30は、特定音の種類から、複数の防災機器10のそれぞれについて現在の状態を音響データに基づいて監視することが可能となる。
【0038】
また、住警器の状態を監視結果として外部装置に通知する通信機能をコントローラ30に持たせることで、音響データに基づく各防災機器の監視結果を他のデバイスでも有効活用することができる。
【0039】
以上のように、実施の形態1によれば、監視エリア内において防災機器から出力された特定音の収音結果から、各防災機器の状態を監視する構成を備えた火災システムを容易に実現できる。
【0040】
特に、本実施の形態1に係る火災システムは、監視エリア内で収音された音響データに基づく演算処理により、防災機器ごとに電池寿命を個別に推定できる点に技術的特徴があり、以下のような効果が得られる。
【0041】
効果1:収音装置を用いて収音した音響データに基づいて電池残量を推定する場合には、音響データの低域における圧力変動にフォーカスすることとなるため、減衰が起こりにくい。従って、例えば、締め切った部屋を監視エリアとする場合であれば、防災機器の設置場所によらず、音響データの収音が可能となり、収音装置の設置位置を選ばないメリットがある。さらに、収音装置は、防災機器のように天井に設置する必要がなく、設置場所を決める際の自由度がある。
【0042】
効果2:マイクの設置位置に自由度があるため、後付けで、あるいは一時的に電池劣化診断機能を付加したい場合にも、容易に本開示に係る火災システムを構築することができる。すなわち、比較的簡単な構成で、種々の監視エリアにおいて、防災機器の電池寿命推定処理を実現できる。
【0043】
効果3:各防災機器から特定音を出力させるタイミングを適切に選定でき、監視エリアに応じた所望のタイミングで、電池寿命推定処理を自動的に実行することができる。例えば、監視エリアに利用者が存在しないような時間帯で電池寿命推定処理を実行することで、監視エリアで発生するノイズの影響を極力抑えた上で、防災機器の電池寿命推定処理を実行することができる。この結果、火災システムの正常動作を保証し、信頼性を一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
10、10(1)、10(2) 防災機器、20 収音装置(マイク)、30 コントローラ。
図1
図2