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  • 特開-警報システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066641
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】警報システム
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20240509BHJP
   H04R 1/40 20060101ALI20240509BHJP
   H04R 27/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/40 310
H04R27/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176168
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】井関 晃広
【テーマコード(参考)】
5D018
5D220
【Fターム(参考)】
5D018AF16
5D220AA05
5D220AB06
5D220AB08
(57)【要約】
【課題】複数の警報出力器が設けられた空間内の特定位置において警報音の小音化を実現する警報システムを得る。
【解決手段】同一空間内に設置され、同一音源の警報音を出力する複数の警報出力器を備えた警報システムであって、同一空間内の特定位置において、複数の警報出力器による合成音を、複数の警報出力器の任意の1台による単独での再生音よりも小さい音にする小音化ルールを満たすように、複数の警報出力器のそれぞれから出力される警報音について位相制御を行う制御部をさらに備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一空間内に設置され、同一音源の警報音を出力する複数の警報出力器を備えた警報システムであって、
前記同一空間内の特定位置において、前記複数の警報出力器による合成音を、前記複数の警報出力器の任意の1台による単独での再生音よりも小さい音にする小音化ルールを満たすように、前記複数の警報出力器のそれぞれから出力される警報音について位相制御を行う制御部
をさらに備える警報システム。
【請求項2】
前記同一空間内に設置され、前記同一空間内に含まれる人検知エリアにおいて人の存在を検知する人感センサをさらに備え、
前記制御部は、前記人感センサにより前記人検知エリアに人が存在することが検知された場合には、前記特定位置において前記小音化ルールを満たした上で、前記人検知エリアにおける音量を増大させるように前記複数の警報出力器のそれぞれから出力される警報音の音量制御を行う
請求項1に記載の警報システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の警報出力器のそれぞれから前記特定位置までの直線距離に基づいて、前記複数の警報出力器のそれぞれから出力される警報音を含む各帯域において、前記特定位置に到達する際の相対的な遅延量を帯域毎に算出し、前記相対的な帯域毎の遅延量を考慮した上で前記小音化ルールを満たすように前記位相制御を行う
請求項1または2に記載の警報システム。
【請求項4】
前記制御部は、事前に計測した前記同一空間内のインパルス応答に基づいて、前記複数の警報出力器のそれぞれから出力される警報音を含む各帯域において、前記特定位置に到達する際の相対的な遅延量を帯域毎に算出し、前記相対的な帯域毎の遅延量を考慮した上で前記小音化ルールを満たすように前記位相制御を行う
請求項1または2に記載の警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の警報出力器が設置されている同一空間内において、特定位置で警報音の小音化を行う警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
所望のエリアで増音し、かつ他のエリアで音圧維持することができるとともに、音圧維持について均一な周波数特性を与えることができる従来装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1によれば、主音源(メインスピーカ)に対して複数の制御音源(制御スピーカ)を利用し、それらに対する制御フィルタを制御することによって、あるエリアでは当該主音源のみの状態(当該制御を行わない状態)に比べて増音するように制御するとともに、他のエリアでは(当該制御の前後を比較したときに)音圧を維持するように制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4062678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1によれば、あるエリアで増音し、他のエリアで音圧維持する「増音制御」を実施できる。すなわち、特許文献1は、1つのスピーカから出力される音を、ある特定のエリアで聞こえやすくするために、制御スピーカをさらに追加利用する技術である。
【0006】
一方、警報音を出力する警報システムでは、同一空間内に1台ではなく、複数のスピーカが設置され、同一音源の警報音を出力することで、同一空間内に警報音を行き渡らせることが一般的である。そして、このような警報システムにおいては、同一空間内での特定エリアでの増音は不要であるが、例えば、窓などの特定位置においては小音化を図り、警報音が窓の外に音漏れしてしまうことを抑制したい用途が考えられる。
【0007】
しかしながら、特許文献1は、このような小音化の用途までは考慮しておらず、局所的な場所からの音漏れを抑制する小音化の機能までは有していない。
【0008】
本開示は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、複数の警報出力器が設けられた空間内の特定位置において警報音の小音化を実現する警報システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る警報システムは、同一空間内に設置され、同一音源の警報音を出力する複数の警報出力器を備えた警報システムであって、同一空間内の特定位置において、複数の警報出力器による合成音を、複数の警報出力器の任意の1台による単独での再生音よりも小さい音にする小音化ルールを満たすように、複数の警報出力器のそれぞれから出力される警報音について位相制御を行う制御部をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、複数の警報出力器が設けられた空間内の特定位置において警報音の小音化を実現する警報システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態1に係る警報システムの全体構成を示した説明図である。
図2】本開示の実施の形態1における位相差の設定に関する説明図である。
図3】本開示の実施の形態2に係る警報システムの全体構成を示した説明図である。
図4】本開示の実施の形態2に係る警報システムの制御部で実施される一連処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の警報システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
本開示に係る警報システムは、異なる位置から出力される各警報音の位相制御を行うことで、特定位置においては各警報音の干渉により合成波としての振幅を抑制し、特定位置での小音化を実現することを技術的特徴とするものである。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係る警報システムの全体構成を示した説明図である。本実施の形態1における警報システムは、複数の警報出力器10と、制御部20と、音源30とを備えて構成されている。
【0014】
複数の警報出力器10は、同一空間内の異なる位置に設置されており、音源30から出力される警報音を、同一空間内に出力する。警報出力器10の具体例としては、火災発生を知らせる警報音を出力する住警器、避難誘導を行うための音声データを出力するスピーカなどが挙げられる。
【0015】
本実施の形態1に係る警報システムは、音源30から出力される警報音を、制御部20により位相制御した上で、複数の警報出力器10のそれぞれから出力することで、特定位置において各警報音を干渉させ、小音化を図ることを特徴としている。図1では、窓1が特定位置に相当し、位相制御に基づく小音化を行うことで、窓からの音漏れを抑制する効果が得られる。
【0016】
本開示において、位相制御に基づく小音化を実現するための「小音化ルール」は、以下の技術内容を意味している。
<小音化ルール>
音漏れを防止したい特定位置において、複数の警報出力器10による合成音を、複数の警報出力器の任意の1台による単独での再生音よりも小さい音にすること。
【0017】
図1では、以下のような状態が模式的に示されている。
・複数の警報出力器10が、2台の警報出力器10(1)、10(2)で構成されている。
・波形1~波形3は、以下の技術内容を意味している。
波形1:特定位置である窓1における、警報出力器10(1)から出力された警報音の波形
波形2:特定位置である窓1における、警報出力器10(2)から出力された警報音の波形
波形3:特定位置である窓1において、波形1と波形2が干渉した結果として得られる合成波形
【0018】
従って、図1の構成に対応した具体的な「小音化ルール」は、以下のようになる。
図1の構成に対応した小音化ルール>
音漏れを防止したい窓1の位置において、合成波である波形3の音圧レベル(合成音の音圧レベル)が、波形1単独での音圧レベルよりも小さく、かつ、波形2単独での音圧レベルよりも小さくすること。
【0019】
以下では、図1に示した2台の警報出力器10(1)、10(2)のうち、警報出力器10(2)から出力される警報音に対して制御部20内の位相制御部21により、小音化ルールを満たす位相制御を実施する場合を具体例として、図1に基づいて本開示の位相制御を詳細に説明する。
【0020】
2台の警報出力器10(1)、10(2)から同一の音源30の警報音を出力しても、窓1に到達するまでの距離に応じて、波形1の遅延量と波形2の遅延量とは異なり、位相は一致しない。従って、位相制御部21は、それぞれの遅延量を事前に求めておくことが必要となる。そこで、まず初めに、遅延量の算出処理について説明する。
【0021】
制御部20は、以下の2つの手法のいずれかにより、同一空間内における2台の警報出力器10(1)、10(2)と特定位置との位置関係から、遅延量をあらかじめ算出することができる。
手法1:警報出力器10(1)から窓1までの直線距離L1と、警報出力器10(2)から窓1までの直線距離L2をあらかじめ測定し、測定結果に基づくそれぞれの遅延量から、警報出力器10(1)に対する警報出力器10(2)の相対的な遅延量を帯域毎に算出する。
【0022】
手法2:警報出力器10(1)と窓1との間のインパルス応答、および警報出力器10(2)と窓1との間のインパルス応答をそれぞれ計測し、計測結果から警報出力器10(1)に対する警報出力器10(2)の相対的な遅延量を帯域毎に算出する。
【0023】
次に、位相制御部21は、相対的な帯域毎の遅延量を考慮した上で、音源30から出力される警報音に関して、周波数毎に警報出力器10(1)と警報出力器10(2)との間の位相差を設定する。
【0024】
図2は、本開示の実施の形態1における位相差の設定に関する説明図である。図2では、警報音が、振幅が1の単一の正弦波であるとして、2つの正弦波の位相差により、合成波の振幅がどのように変化するかをまとめて示したものである。
【0025】
位相差が0°の場合には、2つの正弦波が重なり合うことで、合成波の振幅は2倍となる。また、位相差が120°の場合には、合成波の振幅は1のままである。また、位相差が180°の場合には、互いの正弦波で打ち消し合い、合成波の振幅は0となる。すなわち、位相差が0°~120°の間では合成波の音圧レベルが単一の正弦波よりも大きくなり、位相差が120°~180°の間では合成波の音圧レベルが単一の正弦波よりも小さくなる。
【0026】
従って、位相制御部21は、相対的な帯域毎の遅延量を考慮した上で、音源30から出力される警報音の周波数成分に応じて、あらかじめ決められた帯域毎に警報出力器10(1)と警報出力器10(2)との間の位相差を、小音化ルールを満たすような適切な値に設定する。換言すると、位相制御部21は、特定位置である窓1に到達した2つの警報音の合成波が小音化ルールを満たすように、位相制御を行う。
【0027】
なお、音源30から出力される警報音が単一の正弦波の場合には、帯域毎に位相差を設定しなくとも、固定遅延、もしくは一律の位相差の設定で、同様の効果を得ることが可能となる。また、位相制御部21は、警報出力器10が3つ以上の場合にも、上述した2つの場合と同様に、特定位置のける合成波が小音化ルールを満たす条件の下で、位相制御を行うことができる。
【0028】
以上のように、実施の形態1によれば、同一空間内に設置された複数の警報出力器から出力されるそれぞれの警報音に対して位相制御を行うことで、特定位置において小音化を実現でき、音漏れを抑制することができる。
【0029】
音量だけを操作して警報音を小さくしてしまうと、警報音を聞いて欲しい場所での音が小さくなるなど、特定位置以外の場所に悪影響が生じてしまう。また、警報出力器が1台では、特定位置での音圧レベルを抑制できず、音漏れが生じることがある。さらに、複数の警報出力器がある場合にも、本実施の形態1のように適切な位相制御を行わない場合には、特定位置での音圧レベルを抑制できず、音漏れが生じることがある。
【0030】
これに対して、本実施の形態1では、同一空間内に設置された複数の警報出力器と、複数の警報出力器から出力されるそれぞれの警報音に対して位相制御を行う位相制御部とを組み合わせた構成を採用することで、特定位置での小音化を実現することができる。
【0031】
なお、図1を用いた説明では、窓からの音漏れを抑制する場合を具体例として説明したが、本開示に係る警報システムは、同一空間内での特定位置において小音化を実現できる点に特徴がある。従って、音漏れを抑制する用途以外にも、同一空間内の特定の位置で警報音を抑えて小音化を図りたいような用途に対しても、適用可能である。
【0032】
実施の形態2.
本実施の形態2では、特定位置での小音化を維持した上で、同一空間内における警報音を聞かせたい人が存在する位置では、視聴に適した音圧レベルを確保する構成を備えた警報システムについて説明する。
【0033】
図3は、本開示の実施の形態2に係る警報システムの全体構成を示した説明図である。本実施の形態2における警報システムは、複数の警報出力器10と、位相制御部を有する制御部20と、音源30とを備えた先の実施の形態1の構成に対して、人感センサ11をさらに備えるとともに、制御部20が第1の振幅制御部および第2の振幅制御部をさらに有している。そこで、これらの相違点を中心に、以下に説明する。
【0034】
人感センサ11は、複数の警報出力器10とともに同一空間内に設置され、同一空間内に含まれる人検知エリアにおいて人の存在を検知するセンサである。図3において、同一空間内の点線で示したエリアが、人感センサ11による人検知エリアに相当する。
【0035】
なお、図3に示した人感センサ11は、警報出力器10(1)と警報出力器10(2)のどちらに近い位置に人がいるかを識別できるものとする。また、警報出力器10(1)に近いエリアに人がいることを検知する人感センサ11(1)と、警報出力器10(2)に近いエリアに人がいることを検知する人感センサ11(2)とに分けて設置することも考えられる。
【0036】
本実施の形態2では、人感センサ11により人検知エリアに人が存在することが検知された場合には、特定位置において小音化ルールを満たした上で、人検知エリアにおける音量を増大させるように、複数の警報出力器10のそれぞれから出力される警報音の音量制御を行う点に技術的特徴がある。そして、この技術的特徴を実現するために、制御部20内に第1の振幅制御部22および第2の振幅制御部23が設けられている。
【0037】
例えば、図3に示すように、人が警報出力器10(2)に近いエリアに存在することが検知された場合には、第2の振幅制御部23により警報音の振幅を大きくすることで、音量可変制御を実行する。ただし、第2の振幅制御部23は、音量の可変制御を行う際に、先の実施の形態1で説明した小音化ルールを満たす条件下で、警報出力器10(2)から出力される警報音の振幅を増大させる。
【0038】
なお、人が警報出力器10(1)に近いエリアに存在することが検知された場合には、第1の振幅制御部22により、小音化ルールを満たす条件下で、上述したような音量可変制御が実行されることとなる。
【0039】
このようにして、人検知結果に基づいて、音量を上げる制御を行うことで、人の近傍に設置された最寄りの警報出力器10から出力される警報音を大きくすることができる。この結果、特定位置での小音化を満たした上で、人への警報通知を確実に行うことが可能となる。
【0040】
なお、最寄りの警報出力器10からの警報音を大きくすることで、特定位置での小音化の効果は弱まることになる。しかしながら、本実施の形態2における音量可変制御は、小音化ルールを満たす条件下で実行されるため、警報出力器10単体よりも小音化を図る状態を維持できる。
【0041】
次に、フローチャートを用いて制御部20で実行される一連処理の流れを説明する。図4は、本開示の実施の形態2に係る警報システムの制御部20で実施される一連処理を示したフローチャートである。なお、以下の説明では、位相制御部21、第1の振幅制御部22、および第2の振幅制御部23のそれぞれの機能をまとめて、制御部20で実施されるものとして説明する。
【0042】
まず初めに、ステップS401において、制御部20は、各警報出力器10と、小音化を図りたい特定位置との位置関係から、遅延量を事前算出する。
【0043】
次に、ステップS402において、制御部20は、遅延量を考慮した上で、特定位置において小音化ルールを満たす条件下で、複数の警報出力器10から出力される各警報音の位相制御を実施する。
【0044】
次に、ステップS403において、制御部20は、人感センサにより人が検知された位置が特定できたか否かを判断する。特定できた場合にはステップS404に進み、特定できなかった場合には、音量可変制御を実施することなしに、一連処理を終了する。
【0045】
ステップS404に進んだ場合には、制御部20は、小音化ルールを満たす条件下で、人の検知位置の近傍に設置された最寄りの警報出力器10から出力される警報音を大きくするように音量可変制御を実施し、一連処理を終了する。
【0046】
以上のように、実施の形態2によれば、小音化ルールを満たす条件下で、位相制御を行うとともに、人検知結果に応じて音量可変制御をさらに実施することができる。この結果、先の実施の形態1と同等の効果を実現できるとともに、人への警報通知をより確実に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
10、10(1)、10(2) 警報出力器、11 人感センサ、20 制御部、21 位相制御部、22 第1の振幅制御部、23 第2の振幅制御部、30 音源。
図1
図2
図3
図4