IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特開2024-66645振動低減型クラッチ結合制御方法および振動低減型クラッチ結合制御装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066645
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】振動低減型クラッチ結合制御方法および振動低減型クラッチ結合制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/36 20060101AFI20240509BHJP
   F02C 3/107 20060101ALI20240509BHJP
   F01K 23/14 20060101ALI20240509BHJP
   F01K 23/16 20060101ALI20240509BHJP
   F16D 43/26 20060101ALI20240509BHJP
   F16D 11/10 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F02C7/36
F02C3/107
F01K23/14
F01K23/16
F16D43/26 C
F16D43/26 D
F16D11/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176179
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 雅規
(72)【発明者】
【氏名】岩田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】大橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】千葉 英樹
【テーマコード(参考)】
3G081
3J056
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BA11
3G081DA30
3J056AA03
3J056AA63
3J056BB02
3J056BB05
3J056GA02
3J056GA26
(57)【要約】
【課題】結合後の振動値を最小化しかつ起動停止においてもその状態を維持できる振動低減型クラッチ結合制御方法および振動低減型クラッチ結合制御装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、ガスタービンおよび発電機と、蒸気タービンとがクラッチで結合される一軸型コンバインドサイクルの振動低減型クラッチ結合制御方法は、発電機が電力系統に接続されガスタービンが負荷を担っているガスタービン単独運転ステップS10と、蒸気タービンの回転の位相をガスタービンの回転の位相に対して少なくとも3つの異なる複数の結合角度でクラッチでの結合をそれぞれ行いそれぞれの結合運転においてそれぞれの振動データを取得する複数結合条件での振動データ取得ステップS20と、それぞれの振動データに基づいて最適結合角度を導出する最適結合角度導出ステップS30と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンおよび発電機と、蒸気タービンとがクラッチで結合される一軸型コンバインドサイクルの振動低減型クラッチ結合制御方法であって、
前記発電機が電力系統に接続され、前記ガスタービンが負荷を担っている状態で運転するガスタービン単独運転ステップと、
前記蒸気タービンの回転の前記ガスタービンの回転に対する少なくとも3つの異なる結合角度で前記クラッチでの結合をそれぞれ行い、それぞれの結合運転に移行し、それぞれの結合運転においてそれぞれの振動データを取得する振動データ取得ステップと、
前記それぞれの振動データに基づいて最適結合角度を導出する最適結合角度導出ステップと、
を有することを特徴とする振動低減型クラッチ結合制御方法。
【請求項2】
複数の前記結合角度のそれぞれは、前記ガスタービンの発電機側端部に形成された基準マーカの検出信号と、前記蒸気タービンの蒸気タービン側結合端部に形成された基準マーカの検出信号とに基づいて測定されることを特徴とする請求項1に記載の振動低減型クラッチ結合制御方法。
【請求項3】
複数の前記結合角度は、等間隔に設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動低減型クラッチ結合制御方法。
【請求項4】
前記結合の状態への移行は、
前記蒸気タービンの回転数を、前記ガスタービンの回転数より結合前保持差分回転数だけ低い回転数で保持するステップと、
前記結合前保持差分回転数においての複数の前記結合角度のそれぞれを、結合角度対応時間に換算して、前記結合角度対応時間に応じて前記結合の状態に移行するステップと、
を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動低減型クラッチ結合制御方法。
【請求項5】
前記結合前保持差分回転数は、前記ガスタービンに設けられたGT回転数検出器の出力と、前記蒸気タービンに設けられたST回転数検出器の出力とから算出されることを特徴とする請求項4に記載の振動低減型クラッチ結合制御方法。
【請求項6】
前記最適結合角度導出ステップにおける最適結合角度の導出は、ポーラル図を用いて行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動低減型クラッチ結合制御方法。
【請求項7】
前記最適結合角度における振動値をさらに低減するためのバランスウェイトを追加するウェイト追加ステップをさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動低減型クラッチ結合制御方法。
【請求項8】
ガスタービンおよび発電機と、蒸気タービンとがクラッチで結合される一軸型コンバインドサイクルの振動低減型クラッチ結合制御装置であって、
前記ガスタービンに設けられたGT回転数検出器の出力、前記蒸気タービンに設けられたST回転数検出器の出力、前記ガスタービンの発電機側端部に形成された基準マーカの検出信号、前記蒸気タービンの蒸気タービン側結合端部に形成された基準マーカの検出信号、ならびに、結合前保持回転数および昇速条件に関する外部入力を受け入れる入力部と、
前記昇速条件、前記蒸気タービンの回転数の前記ガスタービンの回転数に対する結合前保持差分回転数を記憶する記憶部と、
前記結合前保持差分回転数において結合状態に移行するための複数の結合角度のそれぞれを、結合角度対応時間に換算する結合角度対応時間算出部と、複数の前記結合角度のそれぞれで前記クラッチが結合したのちの振動データに基づいてポーラル図を作成するポーラル図作成部と、前記ポーラル図に基づいて最適結合角度を導出する最適結合角度導出部と、を有する演算部と、
を備えることを特徴とする振動低減型クラッチ結合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一軸型コンバインドサイクルにおける振動低減型クラッチ結合制御方法およびこれに用いる振動低減型クラッチ結合制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一軸型コンバインドサイクルにおいては、ガスタービンおよび発電機と、蒸気タービンとが、互いにクラッチで結合される。すなわち、まず、ガスタービンが、系統に接続された発電機の負荷を担い単独で運転される。次に、ガスタービン排気の熱を回収する排熱回収ボイラからの発生蒸気が、蒸気タービンが起動可能な蒸気条件に到達した時点で、蒸気タービンの起動、回転上昇が行われ、クラッチにおいて蒸気タービン側とガスタービン側とが接続される。
【0003】
図24は、従来の一軸型コンバインドサイクルの各起動時の軸受でのロ―タシャフトの振動の例を示すグラフである。結合A、結合B、結合C、および結合Dと、一軸型コンバインドサイクルの各起動時においての結合がなされた後のガスタービンおよび蒸気タービンは、一体となって電力系統の周波数に対応する回転数で回転する。
【0004】
しかしながら、従来の結合では、クラッチ結合後のガスタービン側のロータシャフトと蒸気タービン側のロータシャフトが、常に同一の相対的な位相すなわち相対的な角度で結合するわけではない。クラッチの結合方向、すなわち相対的な角度によりアンバランスの発生方向が異なる。この結果、結合状態における軸受でのロ―タシャフトの振動(以下、「振動」)が、図24に示すように、振動値A、振動値B、振動値C、および振動値Dと、その都度、変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5455631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クラッチを有しないパワートレインの機器の場合には、その健全性を評価する指標として、計測された機器の軸振動振幅値を時系列トレンドにプロットする、もしくは振動ベクトルを極座標にプロットする。これにより振動傾向の監視が行われる。軸振動に変化がない場合は、機器のアンバランス状態に変化がなく健全であるとの評価が行われている。
【0007】
一方、一軸型コンバインドサイクルにおいて、前述のように、起動ごとに結合後の振動値が異なる結果、その振動変化が、機器の異常な状態変化によるものか、それとも結合の相対角度の変化によるものかを正確に判断することは困難であった。さらに結合方向によっては振動が高めとなり、次に停止するまでの期間、高い振動での運用の継続を余儀なくされることもあった。
【0008】
また、一般的に運転開始時に振動が増加した場合、その振動増加を発生させた要因が明らかでありその要因が機器の運用上問題のない変化であるならば、回転体にバランスウェイトを付加するフィールドバランスによる振動改善が実施される。しかしながら、クラッチを有する一軸型コンバインドサイクルにおいては、前述のように、結合角度により振動状態が異なりバランス原点が変化する。このため、振動増加の要因がクラッチ結合によるアンバランス変化であると特定できても、釣り合わせに必要なバランスウェイトの方向が決められず、フィールドバランスによる振動改善が困難である。
【0009】
本発明の目的は、結合後の振動値を最小化しかつ起動停止においてもその状態を維持できる振動低減型クラッチ結合制御方法および振動低減型クラッチ結合制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法は、ガスタービンおよび発電機と、蒸気タービンとがクラッチで結合される一軸型コンバインドサイクルの振動低減型クラッチ結合制御方法であって、前記発電機が電力系統に接続され、前記ガスタービンが負荷を担っている状態で運転するガスタービン単独運転ステップと、前記蒸気タービンの回転の位相を前記ガスタービンの回転の位相に対して少なくとも3つの異なる複数の結合角度で前記クラッチでの結合をそれぞれ行い、それぞれの結合運転に移行する結合状態移行ステップと、前記それぞれの結合運転においてそれぞれの振動データを取得するデータ取得ステップと、前記それぞれの振動データから、最適結合角度を導出する最適結合角度導出ステップと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置を含む一軸型コンバインドサイクルの構成を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置を含む一軸型コンバインドサイクルのクラッチの原理を示す概念図である。
図3】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法の手順を示すフロー図である。
図5】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における速度条件の例を示すグラフである。
図6】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における結合角度対応時間算出ステップの詳細手順を示すフロー図である。
図7】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における回転数上昇・保持ステップにおける第1回目のMSV突き上げ指示を説明するための結合後の状態を概念的に示す横断面図である。
図8】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における回転数上昇・保持ステップにおける第2回目のMSV突き上げ指示を説明するための結合後の状態を概念的に示す横断面図である。
図9】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における回転数上昇・保持ステップにおける第3回目のMSV突き上げ指示を説明するための結合後の状態を概念的に示す横断面図である。
図10】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における回転数上昇・保持ステップにおける発電機側端部の状態を概念的に示す横断面図である。
図11】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における回転数上昇・保持ステップにおける蒸気タービン側結合端部の状態を概念的に示す横断面図である。
図12】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における回転数上昇・保持ステップにおける各信号を説明する概念的なグラフである。
図13】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における複数結合条件での第N回目の結合・振動データ取得ステップの詳細手順を示すフロー図である。
図14】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における振動データ取得、収納ステップの詳細手順を示すフロー図である。
図15】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの結合前の状態を示す概念図である。
図16】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの結合後の状態を示す概念図である。
図17】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの各結合角度における結合前後のクラッチ近傍の軸方向の状態を示す概念図である。
図18】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの各結合角度における結合前後のクラッチ近傍の横断面における状態を示す概念図である。
図19】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの各結合角度における結合後の状態を示すポーラル図である。
図20】第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの結合後の振動状態を示すグラフである。
図21】第2の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法の手順を示すフロー図である。
図22】第2の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの各結合角度における振動のさらなる振動低減方法を示す結合後の状態を示すポーラル図である。
図23】第2の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの結合後の振動状態を示すグラフである。
図24】従来の一軸型コンバインドサイクルの各起動時の従来の一軸型コンバインドサイクルの各起動時の軸受でのロ―タシャフトの振動の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法および振動低減型クラッチ結合制御装置について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置100を含む一軸型コンバインドサイクル1の構成を示すブロック図である。
【0014】
一軸型コンバインドサイクル1は、発電機5、ガスタービン系統10、排熱回収ボイラ20、蒸気タービン系統30、クラッチ40、および振動低減型クラッチ結合制御装置100とケーブル類180を有する振動低減型クラッチ結合制御システム200を備える。
【0015】
ガスタービン系統10は、燃焼器11、圧縮機12、およびガスタービン13を有する。燃焼器11には、燃料ガス供給部11aが接続され、燃焼器11に燃料ガスが導かれる。
【0016】
燃焼器11においては、燃料ガス供給部11aにより導かれた燃料ガスと、圧縮機12から供給された圧縮空気とが混合され、燃焼により燃焼ガスが生成される。
【0017】
生成された燃焼ガスは、ガスタービン13の作動流体としてガスタービン13に流入しガスタービン13において仕事をした後に、排ガスとしてガスタービン13から排熱回収ボイラ20に排出される。
【0018】
ガスタービン13のロータシャフトを含むガスタービン側ロータシャフト16は、発電機5のロータシャフトを含んでいる。ガスタービン側ロータシャフト16の発電機側端部17は、クラッチ40に接続している。
【0019】
ガスタービン側ロータシャフト16の外周面には周方向の一か所に、たとえば、ブロック取付けまたは溝加工による後述する図10に示す基準マーカ17aが設けられている。また、基準マーカ17aの近傍には、1回転1パルス検出によるGT側ロータ回転角度検出器19が設けられている。GT側ロータ回転角度検出器19はたとえばギャップ検出器である。なお、図1では、基準マーカ17aが発電機側端部17に設けられている場合を例示したが、ガスタービン側ロータシャフト16の回転が検出できる箇所であれば、基準マーカ17aはこれ以外の箇所に設けられてもよい。
【0020】
ガスタービン側ロータシャフト16の軸受のうち、発電機側端部17に最も近い軸受であるGT結合側軸受2の軸振動、すなわちGT結合側軸受2におけるガスタービン側ロータシャフト16の振れ回りを検出するために、GT結合側軸受2にはGT側軸振動計2aが設けられている。GT側軸振動計2aは、たとえば、ギャップ検出器である。
【0021】
ガスタービン側ロータシャフト16のガスタービン排気側端部には、回転数検出用のGT側ギア18aが設けられており、GT側ギア18aの近傍には、GT側回転数検出器18が設けられている。なお、図1では、回転数検出用のGT側ギア18aがガスタービン側ロータシャフト16のガスタービン排気側端部に設けられている場合を例示したが、ガスタービン側ロータシャフト16の回転が検出できる箇所であれば、回転数検出用のGT側ギア18aはガスタービン側ロータシャフト16のガスタービン排気側端部以外の箇所に設けられてもよい。
【0022】
排熱回収ボイラ20は、ガスタービン13からの排気ガスの熱を回収し、高圧ドラム21、過熱器22、中圧タービン蒸気供給系24、および低圧タービン蒸気供給系25の加熱源となっている。
【0023】
蒸気タービン系統30は、蒸気タービン側ロータシャフト36により互いに直列に結合された高圧タービン31、中圧タービン34、および低圧タービン35を有する。
【0024】
高圧ドラム21で生成され過熱器22で加熱された過熱蒸気は、主蒸気管23から高圧タービン31に作動流体として供給される。主蒸気管23には、高圧主蒸気止め弁32および高圧主蒸気加減弁33が設けられている。高圧タービン31で作動流体として仕事をした蒸気は、中圧タービン蒸気供給系24で再熱された後に、中圧タービン34に供給される。中圧タービン34で作動流体として仕事をした蒸気は、低圧タービン蒸気供給系25で再度加熱された後に、低圧タービン35に供給される。
【0025】
蒸気タービン系統30の回転数あるいはクラッチ40で結合後の蒸気タービン系統30の負荷は、高圧主蒸気加減弁33を通過する蒸気流量により調節される。また、高圧主蒸気加減弁33の開度は、タービン制御装置50により制御される。
【0026】
蒸気タービン系統30の蒸気タービン側ロータシャフト36の高圧タービン排気側端部37には、クラッチ40が接続されている。
【0027】
蒸気タービン側ロータシャフト36の外周面には周方向の一か所に、たとえば、ブロック取付または溝加工による基準マーカ37aが設けられている。また、基準マーカ37aの近傍には、1回転1パルス検出によるST側ロータ回転角度検出器39が設けられている。ST側ロータ回転角度検出器39はたとえばギャップ検出器である。図1では、基準マーカ37aが高圧タービン排気側端部37に設けられている場合を例示したが、蒸気タービン側ロータシャフト36の回転が検出できる箇所であれば、基準マーカ37aはこれ以外の箇所に設けられてもよい。
【0028】
蒸気タービン側ロータシャフト36の軸受のうち、高圧タービン排気側端部37に最も近い軸受であるST結合側軸受3の軸振動、すなわちST結合側軸受3におけるガスタービン側ロータシャフト36の振れ回りを検出するために、ST結合側軸受3近傍にはST側軸振動計3aが設けられている。ST側軸振動計3aはたとえばギャップ検出器である。
【0029】
蒸気タービン側ロータシャフト36の低圧タービン排気側端部には、回転数検出用のST側ギア38aが設けられており、ST側ギア38aの近傍には、ST側回転数検出器38が設けられている。なお、図1では、回転数検出用のST側ギア38aが蒸気タービン側ロータシャフト36の低圧タービン排気側端部に設けられている場合を例示したが、蒸気タービン側ロータシャフト36の回転が検出できる箇所であれば、回転数検出用のST側ギア38aはこれ外の箇所に設けられてもよい。
【0030】
振動低減型クラッチ結合制御システム200の振動低減型クラッチ結合制御装置100は、GT側軸振動計2a、ST側軸振動計3a、GT側回転数検出器18、GT側ロータ回転角度検出器19、ST側回転数検出器38、およびST側ロータ回転角度検出器39の各出力を、すなわち、GT側軸振動、ST側軸振動、GT側回転数、GT側ロータ回転角度、ST側回転数、およびST側ロータ回転角度の各信号を、ケーブル類180を介して入力として受け入れるとともに、タービン制御装置50に高圧主蒸気加減弁33の開度変更指令を、ケーブル類180を介して出力する。
【0031】
図2は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置を含む一軸型コンバインドサイクルのクラッチ40の原理を示す概念図である。(a)は結合前、(b)は結合途中、(c)は結合後の状態をそれぞれ示す。
【0032】
クラッチ40は、ガスタービン側ロータシャフト16とともに回転するGT側部材41、蒸気タービン側ロータシャフト36とともに回転するST側部材42、およびST側部材42とともに回転し軸方向に移動可能なスライディング部43を有する。
【0033】
GT側部材41は、GT側保持部41a、GT側歯41b、およびラチェット歯車41cを有する。GT側保持部41aは、発電機側端部17に接続している。また、ST側部材42は、ST側保持部42a、およびST側保持部42aヘリカルスプライン外面部42bを有する。ST側保持部42aは、高圧タービン排気側端部37に接続している。スライディング部43は、ラチェット爪43a、ヘリカルスプライン内面部43b、およびスライディング部側歯43cを有する。
【0034】
当初、スライディング部43は、図2(a)に示すように、ST側保持部42aから軸方向に最も遠い位置にある。ST側部材42がGT側部材41と同じ速度に達する、すなわち、ST側回転数がGT側回転数に達すると、ST側部材42のスライディング部43からラチェット爪43aが径方向外側に突出する。この結果、ラチェット爪43aがGT側部材41のラチェット歯車41cと結合し、スライディング部43がGT側部材41により拘束される。
【0035】
さらに、ST側部材42がGT側部材41の回転数を超えようとする、すなわちST側回転数がGT側回転数を超えようとすると、図2(b)に示すように、スライディング部43のヘリカルスプライン内面部43bとST側部材42のヘリカルスプライン外面部42bとのねじの作用によりST側部材42のスライディング部43が軸方向にGT側部材41に向かって移動する。この結果、ラチェット歯車41cとヘリカルスプライン外面部42bとが螺合するに至る。これにより、図2(c)に示すように、ST側部材42がスライディング部43を介してGT側部材41と結合し、クラッチ40の結合がなされる。この結果、ST側回転数がGT側回転数と一致する。
【0036】
逆に、ST側回転数がGT側回転数より低くなると、上述の動作とは逆方向の動作により、クラッチ40においてST側部材42はGT側部材41と離脱する。このように、ST側回転数は、常に、GT側回転数より低い、あるいはGT側回転数と同じ回転数となり、ST側回転数がGT側回転数を超えることはない。
【0037】
図3は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置100の構成を示すブロック図である。
【0038】
振動低減型クラッチ結合制御装置100は、入力部110、記憶部120、演算部130、タイムカウンタ140、進行制御部150、および出力部160を有する。振動低減型クラッチ結合制御装置100は、たとえば、計算機システムである。あるいは、個別の計装機器、演算器等の集合体であってもよい。
【0039】
入力部110は、外部入力受入れ部111と信号入力受入れ部112を有する。外部入力受入れ部111は、蒸気タービン系統30の昇速条件、結合前保持回転数、および結合後のクラッチ40の切り離し速度等の条件(以下「速度条件」)を外部入力として受け入れる。また、信号入力受入れ部112は、GT側軸振動計2a、ST側軸振動計3a、GT側ロータ回転角度検出器19、ST側ロータ回転角度検出器39、GT側回転数検出器18、およびST側回転数検出器38のそれぞれの出力を、ケーブル類180を介して受け入れる。
【0040】
記憶部120は、速度条件記憶部121、結合条件記憶部122、結合角度記憶部123、振動データ記憶部124を有する。
【0041】
速度条件記憶部121は、外部入力受入れ部111が受入れた蒸気タービンの速度条件を収納、記憶する。
【0042】
結合条件記憶部122は、クラッチ40において、回転中の発電機側端部17と高圧タービン排気側端部37とを結合する際の少なくとも3つの異なる結合角度の条件を含む結合条件を収納、記憶する。ここで、結合角度とは、発電機側端部17と高圧タービン排気側端部37が、クラッチ40において結合したときの高圧タービン排気側端部37の発電機側端部17に対する相対的角度である。なお、結合条件および結合角度については、後の振動低減型クラッチ結合制御方法の手順において、詳細を説明する。
【0043】
結合角度記憶部123は、発電機側端部17と高圧タービン排気側端部37とが、クラッチ40において結合したときの、結合角度を記憶する。
【0044】
振動データ記憶部124は、発電機側端部17と高圧タービン排気側端部37とが、クラッチ40において結合した後の振動データを収納、記憶する。
【0045】
演算部130は、結合角度算出部131、ポーラル図作成部132、最適結合角度導出部133、結合角度対応時間算出部134、および振動低減判定部135を有する。
【0046】
結合角度算出部131は、複数の結合条件でのそれぞれの角度間隔を算出する。すなわち、M回(Mは自然数)の結合を行う場合は、各結合角度同士の角度間隔は、(360度/M)の角度として算出される。算出された角度間隔は、結合条件記憶部122に収納、記憶される。
【0047】
ポーラル図作成部132は、振動データ記憶部124に記憶された少なくとも3つの異なる結合角度条件で結合した後の振動データを用いて、ポーラル図を自動作成する。
【0048】
最適結合角度導出部133は、ポーラル図作成部132により作成されたポーラル図に基づいて、最適な結合角度条件すなわち最適結合角度を導出する。
【0049】
結合角度対応時間算出部134は、速度条件記憶部121に収納された結合前保持回転数の条件の下で、結合角度に対応する時間(結合角度対応時間)を算出する。
【0050】
振動低減判定部135は、最適結合角度の条件の下で実施された結合後の振動値について、効果が得られたか否かを判定する。
【0051】
タイムカウンタ140は、結合角度対応時間に応じたタイミングで、高圧主蒸気加減弁33を動作させるために時間をカウントする。
【0052】
進行制御部150は、振動低減型クラッチ結合制御装置100において、その制御プロセスの進行を司る。また、進行制御部150は、タイムカウンタ140の出力により、高圧主蒸気加減弁33への指令のタイミングを決定し、出力部160に指令する。
【0053】
出力部160は、進行制御部150からの指令により、高圧主蒸気加減弁33への要求信号を、タービン制御装置50に出力する。
【0054】
次に、振動低減型クラッチ結合制御方法の手順に沿って、振動低減型クラッチ結合制御装置100の作用を順次説明する。
【0055】
図4は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法の手順を示すフロー図である。
【0056】
振動低減型クラッチ結合制御方法は、ガスタービン単独運転ステップS10、複数結合条件での振動データ取得ステップS20、最適結合条件導出ステップS30、および最適結合条件での結合確認ステップS40を有する。
【0057】
ガスタービン単独運転ステップS10は、発電機5が図示しない電力系統に接続され、ガスタービン系統10が負荷を担っている状態の、クラッチ40での結合前の段階である。
【0058】
次に、複数結合条件での振動データ取得ステップS20について説明する。本ステップS20は、速度条件の設定ステップS21,結合角度対応時間の算出ステップS22、M回にわたり行われる結合・振動データ取得ステップS24を有する。
【0059】
速度条件設定ステップS21においては、進行制御部150が、目標回転数、回転数上昇率、結合前保持回転数などの速度条件を、速度条件記憶部121から読み出す。
【0060】
図5は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における速度条件の例を示すグラフである。図5の横軸は時間、縦軸は、回転数および高圧主蒸気加減弁33の開度(MCV開度)を示す。
【0061】
図5において、破線は、ガスタービン13の回転数(GT回転数)、実線は蒸気タービン系統30の回転数(ST回転数)、一点鎖線はMCV開度を示す。
【0062】
図5に示すように、ガスタービン13は、定格回転数(同期速度)である回転数NGTで回転中である。
【0063】
一方、蒸気タービン系統30は、停止ターニング状態、あるいは、1000rpm未満である低速ヒートソーク回転の回転数から、蒸気タービン系統30の温度状態(冷機・暖機)により決定される回転数変化率すなわち速度変化率(昇速率)r2にて昇速される。その後、低速ヒートソーク回転数より高い所定の回転数N1において、速度変化率r2より小さい速度変化率r1に切替わりさらに昇速される。その後、所定の速度NSTに到達すると、速度変化率r0が0に変更され速度一定に保持される。この場合の速度NSTを結合前保持回転数NST、ガスタービン13の回転数NGTから結合前保持回転数NSTを減じた値ΔNを、結合前保持差分回転数と呼ぶものとする。
【0064】
なお、ガスタービン系統10の回転数の測定はGT側回転数検出器18により、また、蒸気タービン系統30の回転数の測定はST側回転数検出器38にて行われるものとする。
【0065】
最初の速度変化率r2の領域においては、回転数目標値の上昇に合わせて、MCV開度は増大する。次の速度変化率r1の領域においては、速度変化率r1が速度変化率r2より小さくなった分、タービン制御装置50においての速度制御系の速度偏差が減少する。図6に示した例では、タービン制御装置50の速度制御には、即応性確保のために比例制御が用いられていることから、速度変化率r2への切替え後は、速度偏差の減少に応じてMCV開度が減少している。
【0066】
以上のような、回転数および速度変化率の指令を、進行制御部150が出力部160を経由して、順次、タービン制御装置50に出力する。
【0067】
後述するように、蒸気タービン系統30の結合前保持回転数NSTでの運転状態が安定する所定の時間が経過した後に、進行制御部150が出力部160を経由して、タービン制御装置50にMCV突き上げ指令、すなわち、MCVが所定の開度まで開くように指令を出力することになる。ここで、所定の開度は、たとえば、蒸気タービン系統30の初期負荷に相当する開度である。
【0068】
次に、複数結合条件での結合ステップS20のステップS21の速度条件の設定の後の結合角度対応時間の算出ステップS22について説明する。
【0069】
図6は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における結合角度対応時間算出ステップS22の詳細手順を示すフロー図である。
【0070】
まず、結合回数Mを設定する(ステップS22a)。ここで、Mは3以上の自然数である。すなわち、異なる結合角度で少なくとも3回の結合を行う。なお、回数は、4回以上であってもよい。
【0071】
次に、結合角度間隔を算出する(ステップS23b)。後述するポーラル図作成以降の手順を考慮すると、結合角度間隔は等間隔が適当である。したがって、結合角度間隔ΔΘ(度)は、次の式(1)で与えられる。
ΔΘ=360/M …(1)
【0072】
なお、以下、結合角度間隔ΔΘが等間隔である場合を例にとって説明するが、厳密に等間隔である必要はなく、後述するポーラル図を作成しやすく精度良く作成できる場合であれば、ほぼ等間隔であってもよいし、他の間隔を設定してもよい。
【0073】
次にそれぞれの結合角度を算出する(ステップS22c)。最初の結合を、結合角度ゼロを狙って行うとすれば、それぞれの位相は、次の式(2)で与えられる。
Θ=0、Θ=ΔΘ、…、Θ=(M-1)・ΔΘ …(2)
【0074】
ここで、MCV突き上げ指令が出力されてから、実際にクラッチ40での結合が行われるまでの時間遅れについて検討する。
【0075】
図7ないし図9は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における回転数上昇・保持ステップにおける第1回目ないし第3回目のMSV突き上げ指示を説明するための結合後の状態を概念的に示す横断面図である。
【0076】
図7ないし図9では、データ取得回数Mが3の場合を示している。したがって、ΔΘは120度であり、Θ=0度、Θ=120度、Θ=240度となる。図7ないし図9において、便宜上、GT側の基準マーカ37aを12時方向に固定している。その基準となるGT側の基準マーカ37aに対するST側の基準マーカ17aの相対角度について、破線矢印は、結合を狙ってMSV突き上げ指示を出した時点の方向、実線矢印は実際に結合したときの方向を示す。以下では、この実線矢印の場合の12時方向との角度を結合角度としている。
【0077】
MSV突き上げ指示が出されてから、実際にクラッチ40で結合するまでには、タービン制御装置50までの信号伝達時間、タービン制御装置50における演算処理、および高圧主蒸気加減弁33の動作遅れ等がある。このため、図7ないし図9の破線矢印と実線矢印で示すように、実際に結合する結合角度は、指令時の結合角度の目標より大きい。この追加遅れ分Φとすると結合角度は、結合目標角度Θに追加遅れ分Φを加えたものとなる。追加遅れ分Φをそれぞれ、Φ、Φ、Φとすると、図7の場合は(Θ+Φ)すなわちΦ図8の場合は(Θ+Φ)すなわち(120度+Φ)、図9の場合は(Θ+Φ)すなわち(240度+Φ)となる。追加遅れΦが上述のような原因に起因することを考慮すれば、Φ、ΦおよびΦの値は、ほぼ同一であると考えられる。
【0078】
振動データ取得時においても、後述する最適結合角度での結合の場合においても、運転状態が変化しなければ、追加遅れΦもほぼ同一であると考えられる。すなわち、ほぼ同一の追加遅れが一律に生ずるだけであるので、運転状態が変化しないという条件のもとに、追加遅れΦの影響の違いを考慮する必要はないということになる。最初は追加遅れ分Φの値が分からないが、結合目標角度Θで突き上げ信号を出して、結合角度(Θ+Φ)から追加遅れ分Φを確認していくことにより、追加遅れ分Φを求めることができる。
【0079】
次に、結合角度対応時間を算出する(ステップS22d)。以下に、算出の考え方を図10図11を参照しながら説明する。
【0080】
図10は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における回転数上昇・保持ステップにおける発電機側端部17の状態を概念的に示す横断面図である。図11は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における回転数上昇・保持ステップにおける高圧タービン排気側端部37の状態を概念的に示す横断面図である。また、図12は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における回転数上昇・保持ステップにおける各信号を説明する概念的なグラフである。
【0081】
図12は、結合前の、軸振動値とロータ角度検出パルスの時間変化を示している。GT側およびST側のそれぞれについて、図12に示すような図が作成できる。ここで、軸振動値は、GT側軸振動計2aの出力であり、ロータ角度検出パルスはGT側ロータ回転角度検出器19の出力である。またST側の軸振動値とロータ角度検出パルスの時間変化を示す場合は、ロータ角度検出パルスはST側軸振動計3aの出力であり、ロータ角度検出パルスはST側ロータ回転角度検出器39の出力である。
【0082】
すなわち、GT側およびST側のそれぞれについて、図12に示す図が作成できる。図12では、軸振動値は、GT側軸振動計2aの出力、ロータ角度検出パルスはST側ロータ回転角度検出器39の出力についてのみを例示している。軸振動値と、ロータ角度検出パルスにより、ロータ基準位置である基準マーカ17a、基準マーカ37aを基準としての振れ回りの方向、すなわち、どの方向が振れ回っているのかを示している。
【0083】
たとえば、ガスタービン系統10側あるいは蒸気タービン系統30側から見たガスタービン系統10の発電機側端部17は、回転数NGT(rpm)でたとえば時計方向に回転している。GT側ロータ回転角度検出器19が検出する基準マーカ17aからの信号も1分間にNGT回発生する。
【0084】
また、蒸気タービン系統30の高圧タービン排気側端部37は、回転数NST(rpm)でガスタービン系統10と同様に時計方向に回転している。ST側ロータ回転角度検出器39が検出する基準マーカ37aからの信号も1分間にNST回発生する。
【0085】
高圧タービン排気側端部37の回転数NST(rpm)は、発電機側端部17の回転数NGT(rpm)より遅いことから、発電機側端部17を基準とすると、高圧タービン排気側端部37が、相対的に反時計方向に結合前保持差分回転数ΔN(rpm)で回転する、すなわち結合前保持差分回転数はこの相対的回転速度ΔNであり、反時計方向への回転となる。この結果、高圧タービン排気側端部37の反時計方向への1回転当たりの相対的な回転時間Tr(秒)は、次の式(3)で与えられる。
Tr=60/ΔN …(3)
【0086】
したがって、高圧タービン排気側端部37に設けられた基準マーカ37aは、発電機側端部17に設けられた基準マーカ17aを基準として、Tr秒で反時計径方向に360度回転することになる。
【0087】
したがって、各データ取得時の結合角度の角度差に対応する結合角度対応時間の間隔ΔTΘは、次の式(4)により与えられる。
ΔTΘ=Tr/M=60/(M・ΔN) …(4)
【0088】
たとえば、結合前保持差分回転数ΔNが4rpm、データ取得回数Mが3回である場合には、結合角度対応時間の間隔ΔTΘは、5秒となる。
【0089】
この場合、第1回目の結合での結合角度対応時間TΘ1は0秒、第2回目の結合での結合角度対応時間TΘ2は5秒、第3回目の結合での結合角度対応時間TΘ3は10秒となる。
【0090】
次に、複数結合条件での結合ステップS20のステップS22の結合角度対応時間の算出ステップS22の後の結合・振動データ取得ステップ等(S23~S26)について説明する。
【0091】
結合・振動データ取得ステップ等では、図4に示すように、ステップS23で回数指標Nを1に設定し、ステップS24で第N回目の結合・振動データ取得を行い、ステップS25で、Nを1だけ増加させ、ステップS26でNが所定の繰り返し回数Mを超えたか否かを判定し、超えていない場合はステップS23以降を繰り返す。ここで、所定の回数は例えば3であり、その場合は、ステップS24の結合・振動データ取得を3回実施することになる。
【0092】
以下、結合・振動データ取得ステップS24の詳細を説明する。
【0093】
図13は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における複数結合条件での第N回目の結合・振動データ取得ステップの詳細手順を示すフロー図である。
【0094】
結合・振動データ取得ステップS24は、第N回目回転数上昇後、回転数保持(ステップS241)、結合角度対応時間でMCV突き上げ指示(ステップS242)、振動データ収納・取得(ステップS243)、および低速ヒートソーク回転数への変更(S244)の各ステップを有する。以下、これらの各ステップについて順次説明する。
【0095】
まず、蒸気タービン系統30の第N回目の回転数上昇および回転数保持を行う(ステップS241)。すなわち、速度条件の設定ステップS21で設定された速度条件に基づいて、進行制御部150が出力部160を経由して、順次、タービン制御装置50に指示信号を発する。この結果、タービン制御装置50は、図5に示した蒸気タービン系統30の回転数変化を得るように、ST側回転数検出器38の出力をフィードバック信号として、MCV33の開度を調節する。蒸気タービン系統30の回転数は、最終的に、結合前保持回転数NSTに至り、保持される。すなわち、ガスタービン13から蒸気タービン系統30を見た場合は、両者の回転方向の反対方向に、相対的な結合前保持差分回転数ΔNで回転して見える。
【0096】
次に、進行制御部150は、第N回目の結合角度対応時間で、タービン制御装置50に対してMCV突き上げ指示を出力する(ステップS242)。
【0097】
このMCV突き上げ指示ステップS242は、具体的には、以下の通りである。すなわち、まず、GT側ロータ回転角度検出器19が発電機側端部17に設けられた基準マーカ17aを検出する(ステップS242a)。次に、タイムカウンタ140が、基準マーカ17aが検出された時点を起点として、第N回目の結合角度対応時間TΘNが経過した時点で到達信号を出力する(ステップS242b)。次に、進行制御部150は、タイムカウンタ140からの出力を受けて、出力部160を経由してタービン制御装置50にMCV突き上げの指示信号を発する(ステップS242c)。ここで、MCV突き上げとは、前述のように、MCV33の開度を、たとえば、蒸気タービン系統30の初期負荷相当の開度まで急開させることを言う。
【0098】
結合・振動データ取得ステップS24の次の振動データ取得・収納ステップS243については、図14を引用しながら説明する。
【0099】
図14は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法における振動データ取得、収納ステップS25の詳細手順を示すフロー図である。
【0100】
まず、結合・振動データ取得ステップS24における最終ステップであるMCV突き上げ指示ステップS242cによって、クラッチ40が結合する(ステップS25a)。すなわち、MCV突き上げ指示によりMCV33が開き、高圧タービン排気側端部37の回転数NST(rpm)が発電機側端部17の回転数NGT(rpm)を超えようとする際に、クラッチ40がかみ合い、一軸型コンバインドサイクル1として、一体で回転する。
【0101】
次に、進行制御部150は、一軸型コンバインドサイクル1の安定化のための所定時間に亘り状態保持をする(ステップS25b)。すなわち、進行を停止する。
【0102】
次に、振動データの取得・収納を行う(ステップS26c)。ここで、振動データの取得は、GT結合側軸受2の近傍に設けられたGT側軸振動計2a、およびST結合側軸受3の近傍に設けられたST側軸振動計3aにより行われる。得られた振動データは、振動データ記憶部124に収納、記憶される。
【0103】
以上の結合角度対応時間でのMCV突き上げ指示ステップS242の後に、低速ヒートソーク回転数への変更を行う(ステップS244)。具体的には、進行制御部150が出力部160を介して、タービン制御装置50に低速ヒートソーク回転数への変更の指示信号を発する。この結果、MCV33の開度が減少し、高圧タービン排気側端部37の回転数が低下し、クラッチ40での噛み合いが解除され、非結合状態に移行する。
【0104】
以上が、複数結合条件での振動データ取得ステップS20の内容である。
【0105】
次に、図4に示した最適結合条件導出ステップS30について説明する。ステップS30は、ポーラル図の作成ステップS31、最適位相差の導出ステップS32、および、結合角度対応時間の導出ステップS33を有する。
【0106】
最適結合条件導出ステップS30の説明に際して、図15ないし図17を引用しながら、クラッチ結合前後の状態について概念的に説明する
【0107】
図15は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの結合前の状態を示す概念図である。
【0108】
ガスタービン系統10の発電機側端部17は、GT結合側軸受2の外側に配されている。また、蒸気タービン系統30の高圧タービン排気側端部37は、ST結合側軸受3の外側に配されている。
【0109】
すなわち、ガスタービン側ロータシャフト16のGT結合側軸受2の外側の発電機側端部17を含む部分は、片持ちの状態で回転している。また、蒸気タービン側ロータシャフト36のST結合側軸受3の外側の高圧タービン排気側端部37を含む部分も、片持ちの状態で回転している。
【0110】
図16は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの結合後の状態を示す概念図である。
【0111】
クラッチ40で結合後は、ガスタービン系統10の発電機側端部17および高圧タービン排気側端部37は、GT結合側軸受2およびST結合側軸受3により両側を支持された状態となる。
【0112】
図17は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの各結合角度における結合前後のクラッチ近傍の状態の例を示す概念図であり、(a)は結合角度Θ、(b)は結合角度(Θ+90度)、(c)は結合角度(Θ+180度)、(d)は結合角度(Θ+270)度の場合を示す。
【0113】
また、図18は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの各結合角度における結合前後のクラッチ近傍の横断面における状態を示す概念図であり、(a)は結合角度Θ、(b)は結合角度(Θ+90度)、(c)は結合角度(Θ+180度)、(d)は結合角度(Θ+270)度の場合を示す。すなわち、図18の(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ図17の(a)、(b)、(c)、(d)に対応している。
【0114】
図17および図18は、発電機側端部17に対して高圧タービン排気側端部37が回転中心に対して偏心して旋回する場合に、クラッチ40での結合によりどのような状態になるかを概念的に示している。以下に、図17および図18のa)、b)、c)、d)について順次説明する。なお、図18の各図において、上方を0度、として、時計回りに角度を表現するものとする。また、図17および図18のa)、b)、c)、d)のそれぞれにおいて、白抜き矢印の左側は、発電機側端部17に高圧タービン排気側端部37が結合する直前の状態を示す。また、白抜き矢印の右側は、発電機側端部17に高圧タービン排気側端部37が結合する直後の状態を示す。以下、高圧タービン排気側端部37は、基準マーカ37aの方向に偏心しているものとする。
【0115】
(a)は、発電機側端部17の基準マーカ17aの方向(以下、「GT角度」)が0度方向、高圧タービン排気側端部37の基準マーカ17aの方向(以下、「ST角度」)が0度方向の状態で結合した場合を示す。この場合、結合後は、発電機側端部17は0度方向に偏心する一方、高圧タービン排気側端部37の0度方向の偏心量が若干減少する。
【0116】
(b)は、GT角度が0度方向、ST角度が90度方向の状態で結合した場合を示す。この場合、結合後は、発電機側端部17は90度方向に偏心し、アンバランスが付加される。
【0117】
(c)は、GT角度が0度方向、ST角度が180度方向の状態で結合した場合を示す。この場合、結合後は、発電機側端部17は180度方向に偏心する一方、高圧タービン排気側端部37の180度方向の偏心量が若干減少する。
【0118】
(d)は、GT角度が0度方向、ST角度が270度方向の状態で結合した場合を示す。この場合、結合後は、発電機側端部17は270度方向に偏心し、アンバランスが付加される。
【0119】
以上のように、結合する際のGT角度に対するST角度によって、付加されるアンバランスの方向が変化する。なお、付加されるアンバランス方向は変化するが、結合前のSTの軸端偏心量が同であれば、結合する際のGT角度に対するST角度によらず、付加されるアンバランスモーメントは同じと考えられる。したがって結合により発生する振動ベクトルの方向は変化するが、振動ベクトルのスカラー量は変化しない。
【0120】
次に、最適結合条件導出ステップS30のポーラル図の作成ステップS31、最適位相差の導出ステップS32、および、結合角度対応時間の導出ステップS33を順次説明する。なお、以下の説明では、「ベクトルX・Y」の表記は、点Xから点Yに向かう方向であり、点Xと点Y間の距離を大きさに持つベクトルを意味するものとする。また、起点Xが中心Cの場合のベクトルを振動ベクトルと呼ぶこととする。
【0121】
まず、ポーラル図作成部132が行うポーラル図の作成ステップS31について説明する。
【0122】
図19は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの各結合角度における結合後の状態の例を示す振動ベクトルを極座標にプロットしたポーラル図である。
【0123】
ここで、ポーラル図は、周方向が位相(0°~360°)を、中心Cから径方向の長さが振動の振幅(あるいは半振幅)を表す。
【0124】
スカラー量である振動ベクトルの長さは、図12で示したGT側軸振動計2aまたはST側軸振動計3aの出力に基づく振幅である。また、振動ベクトルの方向は、GT側ロータ回転角度検出器19の出力に対するST側ロータ回転角度検出器39の出力の相対値である結合角度である。
【0125】
クラッチ40での結合後の振動値としては、GT側とST側のいずれを用いてもよい。すなわち、理論的には、結合後のロータシャフトの振れ回りの変化は相似となり、いずれの軸受で後述する最適角度を評価しても、同じ角度となる筈である。なお、実際に結合で振動が変化するのはST側の軸受部の軸振動の方がより顕著に変化するので、以下では、ST側の振動ベクトルに基づき最適角度を評価する場合を例にとって示す。
【0126】
図19は、結合・振動データ取得を3回行った場合を示している。それぞれ、結合目標角度Θ、Θ、およびΘであるとする。ここで、それぞれの結合目標角度の間隔は120度である。
【0127】
結合・振動データ取得(ステップS20)の結果、結合目標角度Θの場合は結合角度(Θ+Φ)により振動ベクトルC・P、結合目標角度Θの場合は結合角度(Θ+Φ)により振動ベクトルC・P、結合目標角度Θの場合は結合角度(Θ+Φ)により振動ベクトルC・Pが得られる。ここで、振動値は、ST結合側軸受3の近傍に設けられたST側軸振動計3aの出力である。また、結合角度は、ステップS242で目標とした結合角度に基づいている。
【0128】
図20は、第1の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの結合後の振動状態を示すグラフである。横軸は結合角度、縦軸は振幅である。結合角度Θ2の近傍で、振幅が最小となっている。ここで、結合角度(Θm+Φm)において、振幅が最小となっている。この結合角度(Θm+Φm)が最適結合角度である。ここで、追加遅れ分Φmは、前述のように、Φ、Φ、Φとほぼ等しく、たとえば、これらの平均値としてもよい。
【0129】
次に、最適結合角度導出部133が行う最適結合角度の導出ステップS32について、図19のポーラル図を引用しながら説明する。
【0130】
点P、点Pおよび点Pに基づいて外接円CCが得られる。外接円CCの中心Pは、点P、点Pおよび点Pの外心となる。ここで、振動ベクトルC・Pは、結合前の振動状態ではなく、結合後のGT結合側軸受2およびST結合側軸受3により両側を支持された状態の仮想的な平均的振動状態を示しており、中心点Pは仮想的な中心である。
【0131】
この仮想的な中心Pを起点とするベクトル、すなわち結合角度(Θ+Φ)の場合のベクトルP・P、結合角度(Θ+Φ)の場合のベクトルP・P、結合角度(Θ+Φ)の場合のベクトルP・Pは、それぞれの場合の蒸気タービン系統30の寄与によるものである。
【0132】
外接円CC上の点とポーラル図の中心点Cとの距離が最小となる点が、振幅が最小となる最適な場合に対応する。したがって、最適点Pは、ポーラル図の中心点Cと外接円CCの中心点Pとを結ぶ線と外接円CCの交点である。また、ベクトルCC・Pの角度(Θ+Φ)が最適結合角度となる。
【0133】
次に、結合角度対応時間算出部134が、最適結合角度(Θ+Φ)の結合目標角度Θmに対応する結合角度対応時間を算出する。結合角度対応時間の間隔は、前出の次の式(4)で与えられる。
ΔTΘ=Tr/M=60/(M・ΔN) …(4)
【0134】
今、結合前保持差分回転数ΔNが4rpmの場合を例にとると、図19の例では、データ取得回数Mが3回であるので、結合角度対応時間の間隔ΔTΘは、5秒となる。
【0135】
したがって、第1回目の突き上げの結合角度対応時間をTΘ1とすれば、第2回目は、(TΘ1+5)秒、第3回目は(TΘ1+10秒)となる。ここで、TΘ1は、5秒未満であれば、任意の値でよい。
【0136】
次に、図4に示した最適結合条件での結合確認ステップS40について説明する。最適結合条件での結合確認ステップS40では、最適結合条件導出ステップS30において導出された最適結合条件に基づいて、以下の各ステップにより、効果の確認を行う。なお、各ステップの重複する詳細説明は省略する。
【0137】
まず、進行制御部150が、回転数上昇条件を行う(ステップS41)。次に、GT基準マーカ検出後の最適結合角度対応時間後に、進行制御部150がMCV突き上げ指示を行う(ステップS42)。ステップS42によりクラッチ40が結合した状態で、振動データ記憶部124が振動データを取得し、収納・記憶する(ステップS43)。収納した振動データにより、振動低減判定部135が、最適結合条件での効果を確認する(ステップS44)。
【0138】
本実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法は、一軸型コンバインドサイクル1の建設時、クラッチ40を含むパワートレインおよびMCV33等の分解・点検・修理・組立を行う定期検査時等のメンテナンス後において、特に有効である。
【0139】
以上に示したように、本実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法および振動低減型クラッチ結合制御装置100によれば、少なくとも3つの異なる結合角度について、結合角度を時間に換算したうえで、それぞれのクラッチ40での結合を行い、それぞれの振動データに基づいて最適結合角度を導出する。確実に最適な結合角度での結合を行うことが可能となるため、結合後の振動の最小化を図ることができる。また、結合後の振動値の監視により、異常の早期検出が可能となる。
【0140】
[第2の実施形態]
図21は、第2の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法の手順を示すフロー図である。
【0141】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、本実施形態による振動低減型クラッチ結合制御方法は、最適結合条件での結合確認ステップS40の後に、さらに、バランスウェイトの追加ステップS50を有する。以下、ステップS50の各ステップについて順次説明する。
【0142】
まず、テストウェイトの追加を行う(ステップS51)。この際のテストウェイトの重さは、振動値の変化を有意に計測できる範囲で、極力小さいことが好ましい。
【0143】
テストウェイトを追加すべき周方向の位置について、図22を引用しながら説明する。
【0144】
図22は、第2の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの各結合角度における振動のさらなる振動低減方法を示す結合後の状態を示すポーラル図である。
【0145】
ステップS40で最適結合角度(Θ+Φ)をもたらすベクトルP・Pが得られている。したがって、最適結合角度Θの方向に、テストウェイトを追加する。
【0146】
次に、最適結合角度(Θ+Φ)での結合を行い(ステップS52)、結合状態での振動値を取得する(ステップS53)。この結果、ベクトルP・PがベクトルP/Pまで延びて、ベクトルP・Pとなり、最適結合角度(Θ+Φ)での振動値が、点P1での振動値(図22における中心点Cから点Ptを通る破線の円弧までの長さ)まで低減する。
【0147】
次に、バランスウェイトの決定、追加を行う(ステップS54)。
【0148】
ベクトルP・Pをポーラル図の中心点Cまで延長することにより、振動値をゼロとすることができる。したがって、ベクトルP・Cに相当するバランスウェイトを追加する。バランスウェイトの重さは、テストウェイトの重さに、ベクトルP・Cの長さのベクトルP・Pの長さに対する比を乗じることにより得られる。
【0149】
次に、最適結合角度での結合、効果を確認する(ステップS55)。
【0150】
図23は、第2の実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御装置の対象となる一軸型コンバインドサイクルの結合後の振動状態を示すグラフである。横軸は結合角度、縦軸は、クラッチ40で結合後の片振幅を示す。
【0151】
破線の曲線は、バランスウェイトを追加しない場合の結合角度への依存性を示し、実線の曲線は、バランスウェイトを追加した場合の結合角度への依存性を示す。実線の曲線で示すように、バランスウェイトを追加した場合は、最適結合角度(Θ+Φ)において、振動値は、ゼロあるいはほぼゼロ(「実質ゼロ」)まで低減している。
【0152】
以上のように、本実施形態に係る振動低減型クラッチ結合制御方法および振動低減型クラッチ結合制御装置によれば、最適位相差で確実に結合できる構成の下で、バランスウェイトを追加することにより、振動値を実質的にゼロとすることができる。
【0153】
以上、説明した実施形態によれば、結合後の振動値を最小化しかつ起動停止においてもその状態を維持できる振動低減型クラッチ結合制御方法および振動低減型クラッチ結合制御装置を提供することが可能となる。
【0154】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0155】
1…一軸型コンバインドサイクル、2…GT結合側軸受、2a…GT側軸振動計、3…ST結合側軸受、3a…ST側軸振動計、5…発電機、10…ガスタービン系統、11…燃焼器、11a…燃料ガス供給部、12…圧縮機、13…ガスタービン、16……ガスタービン側ロータシャフト、17…発電機側端部、17a…基準マーカ、18…GT側回転数検出器、18a…GT側ギア、19…GT側ロータ回転角度検出器、20…排熱回収ボイラ、21…高圧ドラム、22…過熱器、23…主蒸気管、24…中圧タービン蒸気供給系、25…低圧タービン蒸気供給系、30…蒸気タービン系統、31…高圧タービン、32…高圧主蒸気止め弁、33…高圧主蒸気加減弁(MCV)、34…中圧タービン、35…低圧タービン、36…蒸気タービン側ロータシャフト、37…高圧タービン排気側端部、37a…基準マーカ、38…ST側回転数検出器、38a…ST側ギア、39…ST側ロータ回転角度検出器、40…クラッチ、41…GT側部材、41a…GT側保持部、41b…GT側歯、41c…ラチェット歯車、42…ST側部材、42a…ST側保持部、42b…ヘリカルスプライン外面部、43…スライディング部、43a…ラチェット爪、43b…ヘリカルスプライン内面部、43c…スライディング部側歯、50…タービン制御装置、100…振動低減型クラッチ結合制御装置、110…入力部、111…外部入力受入れ部、112…信号入力受入れ部、120…記憶部、121…速度条件記憶部、122…結合条件記憶部、123…結合角度記憶部、124…振動データ記憶部、130…演算部、131…結合角度算出部、132…ポーラル図作成部、133…最適結合角度導出部、134…結合角度対応時間算出部、135…振動低減判定部、140…タイムカウンタ、150…進行制御部、160…出力部、180…ケーブル類、200…振動低減型クラッチ結合制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24