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特開2024-6666アルコール系ゲル状組成物およびその製造方法
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  • 特開-アルコール系ゲル状組成物およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006666
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アルコール系ゲル状組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/28 20060101AFI20240110BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08L1/28
C08K5/053
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107774
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】弁理士法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 絢子
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB031
4J002CH022
4J002EC056
4J002FD206
4J002FD312
4J002GB00
4J002HA06
(57)【要約】
【課題】ゲル化される溶媒としてアルコールを用いながらも、加熱等の手段を要せず、生産性良く実用性の高いゲル状組成物を得るための技術の提供をする。
【解決手段】ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを3~9質量%、
炭素数5以下の低級モノアルコールを55~70質量%、
水を15~40質量%含有することを特徴とするアルコール系ゲル状組成物およびその製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを3~9質量%、
炭素数5以下の低級モノアルコールを55~70質量%、
水を15~40質量%含有することを特徴とするアルコール系ゲル状組成物。
【請求項2】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースが、ヒドロキシC2-4アルキルC1-4アルキルセルロースである請求項1に記載のアルコール系ゲル状組成物。
【請求項3】
ヒドロキシC2-4アルキルC1-4アルキルセルロースが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである請求項2に記載のアルコール系ゲル状組成物。
【請求項4】
更に、非イオン系界面活性剤を含有する請求項1~3の何れか1項に記載のアルコール系ゲル状組成物。
【請求項5】
非イオン系界面活性剤の含有量が0.05~10質量%である請求項4に記載のアルコール系ゲル状組成物
【請求項6】
更に、グリセリンを含有する請求項1~3の何れか1項に記載のアルコール系ゲル状組成物。
【請求項7】
グリセリンの含有量が、0.05~10質量%である請求項6に記載のアルコール系ゲル状組成物
【請求項8】
更に、芳香性分、殺虫成分、防虫成分、殺菌成分、脱臭成分および消臭成分からなる群から選ばれる有効成分の1種または2種以上を含有する請求項1~3の何れか1項に記載のアルコール系ゲル状組成物。
【請求項9】
有効成分が粉末状である請求項8記載のアルコール系ゲル状組成物。
【請求項10】
有効成分の含有量が0.01~10質量%である請求項8に記載のアルコール系ゲル状組成物。
【請求項11】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース:炭素数5以下の低級モノアルコールの質量比が1:9~1:25である請求項1~3の何れか1項に記載のアルコール系ゲル状組成物。
【請求項12】
ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよび炭素数5以下の低級モノアルコールからなる溶液と、炭素数5以下の低級モノアルコールを含有する水溶液とを常温で混合させることを特徴とする請求項1に記載のアルコール系ゲル状組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール系ゲル状組成物に関し、更に詳細には、主要な溶媒としてアルコールを利用し、かつ加熱することなく製造が可能なアルコール系ゲル状組成物およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の分野において、溶媒として水やアルコールを使用し、ゲル化剤を用いてゲル化したゲル状組成物が広く使用されている。アルコールを主な溶媒とするゲルについては、水を主な溶媒としたゲルと比較して凝固点が低く、低温環境下での不凍効果が得られるため、冷凍庫や寒冷地等においても利用可能なゲル状組成物を得ることができる。
また、アルコール自体を有効成分として用いたり、水を嫌う環境に用いる場合にも有用である。しかしながら、水と比較してアルコールをゲル化するための実用的な技術の報告は少ない。
【0003】
上記の問題点をなくしながら低級アルコール系ゲルを得る方法として、多糖類であるグアガムを化学的に変性させた変性グアガムに酸を加えることで、特に加熱することもなく室温でも容易に弾力性のあるゲルを得る技術が報告されている(特許文献1)。しかし、変性グアガムが天然物に由来していることから、置換基の変性度を一定に保った変性グアガムを得ることは難しく、これを用いてアルコールの濃度や増粘後のゲル状組成物の物性を一定に保つことが困難であった。また、天然物に由来するグアガムの入手が不安定になりやすいことから、変性グアガムそのものの入手が不安定になりやすいといった問題点があった。
【0004】
また、本出願人は、ヒドロキシアルキルセルロースとヒドロキシアルキルアルキルセルロースを混合して用いるアルコールゲルについて提案している(特許文献2、3)。しかし、実際の生産を行う際には混合時のハンドリングが複雑になったり、生産性が低くなってしまうといった問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-212298号公報
【特許文献2】特開2017-177057号公報
【特許文献3】特開2017-88679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、ゲル化される溶媒としてアルコールを用いながらも、加熱等の手段を要せず、生産性良く実用性の高いゲル状組成物を得るための技術の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、アルコールをゲル化させるための技術について研究を重ねていたところ、ゲル化剤として水溶性高分子であるヒドロキシアルキルセルロースと水とを特定の配合量を加えることで、加熱等の工程を行わずに、室温においてアルコール系ゲル状組成物が生産性高く得られ、更に実用性も高いことを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを3~9質量%、炭素数5以下の低級モノアルコールを55~70質量%、水を15~40質量%含有することを特徴とするアルコール系ゲル状組成物である。
【0009】
また、本発明は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよび炭素数5以下の低級モノアルコールからなる溶液と、炭素数5以下の低級モノアルコールを含有する水溶液とを常温で混合させることを特徴とするアルコール系ゲル状組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性良く、室温下でも安定で、実用性のあるアルコール系ゲル状組成物が得られる。そしてこのゲル状組成物は、アルコールや水分、揮散性成分の揮散により組成物が収縮し、その終点が明確であるため、成分を揮散させるタイプの組成物として利用することができるものである。また、このゲル状組成物は粉末の分散性も良いため、粉末を含有するタイプの組成物としても利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】aは、作成されたゲルの上端の位置、bは、ゲルをビーカーごと横倒しに倒して5分経過した後のゲル表面先端の位置である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアルコール系ゲル状組成物(以下、「本発明のゲル状組成物」という)は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースを3~9質量%、炭素数5以下の低級モノアルコールを55~70質量%、水を15~40質量%含有するものである。
【0013】
本発明のゲル状組成物は、アルコールを含有する溶媒を利用した、ゲル状の外観を有するものを意味する。また、「ゲル状」とは、高い粘性を持って流動性を失い、その外観が一般にゲルといわれる状態を意味し、例えば、100mlビーカーに総量80gのゲルを作製し、室温にて20分静置した後のゲル上端の位置から、そのゲルをビーカーごと横倒しに倒して5分経過した後のゲル表面先端の位置との距離が、21mm以上25mm以下、好ましくは20mm以下であるものを意味する。
【0014】
本発明に用いられるヒドロキシアルキルアルキルセルロース(以下、「HAAC」と略称する)は、セルロースを苛性ソーダで処理後、塩化アルキル、酸化アルキレン等のエーテル化剤と反応させて得られる非イオン性の水溶性セルロースエーテルであり、セルロースの水酸基の水素原子の一部をアルキル基やヒドロキシアルキル基で置換することにより、水素結合を消失させ、水溶性としたものである。これらHAACは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
上記HAACとしては、具体的に、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシC2-4アルキルC1-4アルキルセルロース等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、「HPMC」と略称する)が好ましい。
【0016】
本発明に用いるHAACの置換度、すなわちセルロースのグルコース環単位当たりに存在するアルコキシル基で置換された水酸基の平均個数は、特に限定されないが、好ましくは1.0~2.5、更に好ましくは1.5~2.5の範囲である。また置換モル数、すなわちセルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシアルコキシ基の平均モル数も特に限定されないが、好ましくは0.05~0.40、更に好ましくは0.10~0.30の範囲である。
【0017】
また、本発明で用いるHAACを水に溶解させた際の好ましい水溶液の粘度は、2%水溶液粘度として300~200000mPa・sが好ましく、3000~100000mPa・sがより好ましい。なお、粘度は、20℃で、B型粘度計を用いて測定した値である。
【0018】
上記HPMCとしては、例えば、信越化学工業(株)製のメトローズ等が挙げられる。このようなメトローズとしては、例えば、メトローズSHシリーズ等が挙げられる。メトローズSHシリーズの中でも、メトローズ65SHシリーズ(置換度1.8、置換モル数0.15、粘度は複数)等が好ましく、これらの中でもメトローズ65SH-75000が特に好ましい。
【0019】
本発明のゲル状組成物におけるHAACの含有量は、3~9質量%(以下、単に%という)であり、好ましくは4~6%である。
【0020】
また、本発明に用いられる炭素数5以下の低級モノアルコール(以下、単に「モノアルコール」という)は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、ペンタノールが挙げられる。これらの中でもエタノールが好ましい。また、これらモノアルコールは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明のゲル状組成物におけるモノアルコールの含有量は、55~70%であり、60~65%が好ましい。
【0022】
なお、本発明のゲル状組成物におけるHAACとモノアルコールの質量比は、特に限定されないが、例えば、HAAC:モノアルコール=1:9~1:25、好ましくは1:10~1:15である。
【0023】
本発明に用いられる水は、特に限定されず、例えば、水道水、イオン交換水等を用いることができる。
【0024】
本発明のゲル状組成物における水の含有量は、15~40%であり、20~40%が好ましく、25~35%がより好ましい。
【0025】
本発明のゲル状組成物には、有効成分を分散させるため、または溶媒または揮散性の有効成分の揮散に伴う容器壁面からの離型性を向上させる目的で、更に非イオン系界面活性剤を含有させることが好ましい。非イオン系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジュスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル等が挙げられる。これらの中でもポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテルが好ましく、ポリオキシエチレン(40)硬化ひまし油エーテルが特に好ましい。これらの非イオン系界面活性剤のHLBは特に限定されないが、例えば、10~15、好ましくは12~14である。これら非イオン系界面活性剤は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
本発明のゲル状組成物における非イオン系界面活性剤の含有量は特に限定されないが、例えば、0.05~10%、好ましくは0.1~5%である。
【0027】
本発明のゲル状組成物には、溶媒または揮散性の有効成分の揮散に伴う容器壁面からの離型性の向上やゲルが割れを抑制し相似形に収縮する目的でグリセリンを含有させることが好ましい。
【0028】
本発明のゲル状組成物におけるグリセリンの配合量は特に限定されないが、例えば、0.05~10%、好ましくは0.1~5%である。
【0029】
本発明のゲル状組成物には、芳香成分、殺虫成分、防虫成分、殺菌成分、脱臭成分、消臭成分等の有効成分を含有させることが好ましい。芳香成分としては、特に限定されないが、例えば、香料、精油等が挙げられる。殺虫成分、防虫成分、殺菌成分としては、特に限定されないが、例えば、エンペントリン、トランスフルスリン、アレスリン、フェノトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、樟脳、2-フェノキシエタノール、唐辛子、ゴボウ、クミンアルデヒド、塩化ベンザルコニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。脱臭成分、消臭成分としては、特に限定されないが、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アンモニウム、ミョウバン、硫酸銅、硫化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、酸化チタン酸化亜鉛、フラボノイド化合物、カテキン、ポリフェノール、シクロデキストリン、ゼオライト、層状アルミノケイ酸亜鉛、活性炭、備長炭等が挙げられる。これら有効成分の形態は特に限定されないが、粉末状のものが好ましく、唐辛子、層状アルミノケイ酸亜鉛、活性炭、備長炭等の粉末がより好ましい。粉末の大きさは特に限定されないが、例えば、平均粒径(メジアン径D50)が0.1μm~500μm、好ましくは1μm~350μmである。これら有効成分は1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
本発明のゲル状組成物における有効成分の含有量は特に限定されないが、例えば、0.01~10%、好ましくは0.1~5%である。
【0031】
更に、本発明のゲル状組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて、ヒドロキシプロピル化グアーガム、ヒドロキシアルキルセルロースなどの他のゲル化剤、前記非イオン系界面活性剤以外の他の界面活性剤等の乳化・分散成分、酸・アルカリ等のpH調整成分、合成色素、天然色素等の色素成分等を含有させることもできる。
【0032】
なお、HAACは、非イオン性の化合物であることから、添加する界面活性剤や揮発性有効成分などに対して選択性が高い。また、HAACは基材臭が非常に低いことから、香料等を用いた場合にも影響を与えにくく、幅広い揮発性の有効成分に対して利用可能なゲル状組成物を得ることができる。さらに、HAACの有する界面活性作用により、界面活性剤の添加量を抑えながらも高濃度の香料を始めとする揮散性の有効成分を含有したゲル状組成物を得ることができる。
【0033】
本発明のゲル状組成物は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびモノアルコールからなる溶液と、モノアルコールを含有する水溶液とを、特段加熱等をすることなく、常温(25℃程度)で混合させ、均一化することにより製造される。ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびモノアルコールからなる溶液は、流動性が高い分散液であるが、モノアルコールを含有する水溶液を加えることにより、組成物全体がゲル化する。
【0034】
なお、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびモノアルコールからなる溶液またはモノアルコールを含有する水溶液には、必要により、非イオン系界面活性剤、グリセリン、有効成分、他のゲル化剤、前記非イオン系界面活性剤以外の他の界面活性剤等の乳化・分散成分、酸・アルカリ等のpH調整成分、合成色素、天然色素等の色素成分等を含有させればよい。また、モノアルコールを含有する水溶液のモノアルコールの含有量は、ヒドロキシアルキルアルキルセルロースおよびモノアルコールからなる溶液におけるモノアルコールの含有量よりも少なくすることが好ましい。
【0035】
本発明のゲル状組成物において、好ましい態様としては、以下のものが挙げられる。特にこのゲル状組成物は、いずれも均一な攪拌が可能であり、良好なゲル形成性を示すとともに生産性も高く、ゲルからの離水も少なく溶媒の揮散に伴いゲルが容器壁面に残らず相似形に収縮し、揮散においてゲルの割れが生じることもなく、粉末の分散性も優れる。
ヒドロキシアルキルアルキルセルロース 4~6%
炭素数5以下の低級モノアルコール 55~65%
水 25~35%
非イオン系界面活性剤 0.5~1%
グリセリン 0.5~1%
有効成分(粉末) 0.1~2%
【0036】
かくして得られる本発明のゲル状組成物は、非加熱で高濃度のアルコールを取扱いの容易なHAACを用いることでゲル化されたものである。
【0037】
また、本発明のゲル状組成物の調製過程において、アルコールを過熱することによる爆発・火災等の危険を防止することもできる。さらにアルコールを50%以上の高濃度に配合することにより、防虫効果および低温環境下での不凍効果を持たせることも可能となる。その上、調整時には水の添加により組成物のゲル化が起こるため、安全かつ容易にゲル状組成物を得ることができる。
【0038】
さらに本発明のゲル状組成物の製造過程においてはゲル化速度を一定時間遅くできるので、混合後に直ちにゲル化してしまい均一なゲルができなくなってしまう不都合がなく、実際の製造現場において取り扱いやすいものである。
【0039】
本発明のゲル状組成物は、上記のような性質から、成分を揮散させるタイプの消臭剤、脱臭剤、防虫剤、殺虫・防虫剤、殺菌剤、芳香剤や、粉末を含有するタイプの消臭剤、脱臭剤、防虫剤、殺虫・防虫剤、殺菌剤、芳香剤等として有利に利用することができるものである。
【実施例0040】
以下、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制約されるものではない。
【0041】
実 施 例 1
ゲル状組成物の調製および物性評価:
表1に示す組成(配合割合)に従い、下記の製法によりゲル状組成物を調製した。得られたゲル状組成物について、下記評価基準によりその物性を評価した。結果を表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
[ 製 法 ]
室温下、プラスチック製の100ml用ビーカー中に下記表1のA液の割合で配合したものを入れ、この液を攪拌しつつ、B液の配合割合で配合させたものを加えてゲル化させ80gのゲル状組成物を得た。
【0044】
[ ゲル状組成物の物性評価 ]
上記ゲル状組成物について、下記評価基準によりその物性を評価した。
【0045】
(1)ゲル化
ゲル形成のための攪拌を停止後、室温にて20分静置した100mlビーカーについて、図1のようにしてゲル移動距離を測定し、この数値からゲル形成性を評価した。すなわち、作成されたゲルの上端の位置(図中、a)から、そのゲルをビーカーごと横倒しに倒して5分経過した後のゲル表面先端の位置(図中、b)との距離(移動距離)を測定し、下の基準で評価した。
(評価)(内容)
×…ゲル化できない。
△…横に倒したときに5分後のゲルの先端位置が26mm以上30mm以下。
〇…横に倒したときに5分後のゲルの先端位置が21mm以上25mm以下。
◎…横に倒したときに5分後のゲルの先端位置が20mm以下。
【0046】
(2)生産性
ゲル製造時のゲル化の状態について、下の基準で評価した。
(評価)(内容)
◎…混合後も均一にゲル化できる。
〇…ややゲル化が早いが均一にゲル化できる。
×…直ちにゲル化してしまい、均一なゲルにならない。
【0047】
(3)離型性
溶媒の揮散に伴いゲルが収縮する途中において、容器壁面にゲルの離型性について、下の基準で評価した。
(評価)(内容)
◎…容器壁面からゲルが残らず離型した。
〇…容器壁面にゲルがやや残った。
×…容器壁面にゲルが残り離型しなかった。
【0048】
(4)ゲルの割れ
溶媒の揮散に伴いゲルが収縮する途中において、ゲルの割れを下の基準で評価した。
(評価)(内容)
◎…すべてのサンプルで揮散終期までゲルの割れが生じない。
〇…一部のサンプルに揮散中にわずかにゲルの割れが生じるが、使用には影響がない。
×…すべてのサンプル揮散中にゲルの割れが生じる。
【0049】
(5)粉末の分散性
ゲル中の唐辛子粉末の分散性について、下の基準で評価した。
(評価)(内容)
〇…ゲル中で均一に分散した。
×…ゲル中で分散しなかった。
【0050】
【表2】
【0051】
上記実施例の結果から明らかなように、本発明品のゲル状組成物は、ゲル化性、生産性、離型性、ゲルの割れ、ゲル中の粉末の分散性に優れたゲル状組成物を形成することができた。なお、比較品1~3についてはゲル化ができなかったため、生産性、離型性、ゲルの割れの評価は行わなかった。また、比較品4および5については生産性の評価が×であったため、離型性、ゲルの割れの評価は行わなかった。
【0052】
実 施 例 2
製 剤 例:
表3(表中の数値はg)の組成を用い、実施例1と同様の製法により、本発明のゲル状防虫剤を調製した。いずれも均一な攪拌が可能であり、良好なゲル形成性を示すとともに生産性も高く、ゲルからの離水も少なく溶媒の揮散に伴いゲルが容器壁面に残らず相似形に収縮し、揮散においてゲルの割れが生じることもなく、粉末の分散性も優れていた。よって、利用価値の高い製剤を得ることができた。
【0053】
【表3】
【0054】
実 施 例 3
製 剤 例:
表4(表中の数値はg)の組成を用い、実施例1と同様の製法により、本発明のゲル状芳香剤を調製した。いずれも均一な攪拌が可能であり、良好なゲル形成性を示すとともに生産性も高く、ゲルからの離水も少なく溶媒の揮散に伴いゲルが容器壁面に残らず相似形に収縮し、揮散においてゲルの割れが生じることもなかった。よって、利用価値の高い製剤を得ることができた。
【0055】
【表4】
【0056】
実 施 例 4
製 剤 例:
表5(表中の数値はg)の組成を用い、実施例1と同様の製法により、本発明のゲル状脱臭剤を調製した。いずれも均一な攪拌が可能であり、良好なゲル形成性を示すとともに生産性も高く、ゲルからの離水も少なく溶媒の揮散に伴いゲルが容器壁面に残らず相似形に収縮し、揮散においてゲルの割れが生じることもなく、粉末の分散性も優れていた。よって、利用価値の高い製剤を得ることができた。
【0057】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のゲル状組成物は、生産性が高く、また、アルコールや水分等の揮散により組成物が収縮し、その終点が明確であるため実用性が高く、成分を揮散させるタイプの消臭剤、脱臭剤、防虫剤、殺虫・防虫剤、殺菌剤、芳香剤や、粉末を含有するタイプの消臭剤、脱臭剤、防虫剤、殺虫・防虫剤、殺菌剤、芳香剤等に利用することができるものである。
図1