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  • 特開-車両用灯具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066671
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20240509BHJP
   F21S 45/00 20180101ALI20240509BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20240509BHJP
【FI】
G01S7/03 246
F21S45/00
G01S13/931
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176238
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保山 治
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AB24
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AF03
5J070AK35
(57)【要約】
【課題】本開示は、外部からの意匠性を確保した構成で、かつ、レーダの測定範囲を制限してレーダユニットの誤検知を抑制できる車両用灯具を提供することを目的とする。
【解決手段】車両用灯具は、レーダ波を送受信するレーダユニット21と、不透過樹脂で形成されたエクステンション22と、を備える。エクステンション22は、基部23と立壁部24を有する。基部23は、レーダユニット21に対向する対向面23Sを有する。立壁部24は、対向面23Sからレーダユニット21に向かって突設されていて、対向面23Sの垂直方向断面視においてレーダユニット21の外周を覆うように位置する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ波を送受信するレーダユニットと、
不透過樹脂で形成された樹脂部材と、
を備え、
前記樹脂部材は、基部と立壁部を有し、
前記基部は、前記レーダユニットに対向する対向面を有し、
前記立壁部は、前記対向面から前記レーダユニットに向かって突設されていて、前記対向面の垂直方向断面視において前記レーダユニットの外周を覆うように位置する、車両用灯具。
【請求項2】
前記立壁部の少なくとも一部は、前記レーダユニットのFOVの内側に位置する、請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記立壁部の内周面または外周面の少なくとも一部に、電波吸収体が設けられている、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記樹脂部材は、前記立壁部と、前記立壁部以外の基部からなり、
前記立壁部と前記基部は、互いに異なる樹脂材料で形成されていて、
前記立壁部の樹脂材料の電波吸収性は、前記基部の樹脂材料の電波吸収性よりも高い、請求項1または2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自車両の周辺の物体を広範囲に検出できる車両用レーダが普及している。例えば、特許文献1には、レーダユニットと、レーダユニットの送受信波を反射する反射鏡が搭載された車両用灯具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-154182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レーダユニットを車両用灯具内に配置する場合、レーダユニットの外観は、車両用灯具内のランプユニットの外観と大きく相違するため、レーダユニットが車両用灯具のアウタレンズ越しに見えてしまうと、ユーザが外観に違和感を覚える可能性がある。
また、外部からの意匠性を確保するため、例えば、レーダユニットを車両用灯具内のエクステンションの背面に配置することが考えられる。しかしながら、車両用灯具内の部材がレーダの送受信波に干渉してしまい、レーダユニットの誤検知が生じる恐れがあるという課題があった。
【0005】
本開示は、外部からの意匠性を確保した構成で、かつ、レーダユニットの測定範囲を制限してレーダユニットの誤検知を抑制できる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車両用灯具は、
レーダ波を送受信するレーダユニットと、
不透過樹脂で形成された樹脂部材と、
を備え、
前記樹脂部材は、基部と立壁部を有し、
前記基部は、前記レーダユニットに対向する対向面を有し、
前記立壁部は、前記対向面から前記レーダユニットに向かって突設されていて、前記対向面の垂直方向断面視において前記レーダユニットの外周を覆うように位置する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、外部からの意匠性を確保した構成で、かつ、レーダユニットの誤検知を抑制できる車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る車両用灯具を搭載した車両の概略図である。
図2】本開示の実施形態に係る車両用灯具の断面図である。
図3】本開示の実施形態に係る車両用灯具を車両の前方側から見た模式図である。
図4】本開示の実施形態に係るレーダユニットと樹脂部材の模式図である。
図5】本開示の実施形態に係るレーダユニットと樹脂部材を上方から見たときの、レーダユニットの視野と立壁部との位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本開示の実施形態に係る車両用灯具10を搭載した車両100の概略図である。矢印Fは車両100の前方向を、矢印Bは車両100の後方向を、矢印Lは車両100の左方向を、矢印Rは車両100の右方向を示している。車両100のフロント部の左右には、自車両の前方を照射するための一対の灯具10が設けられている。
【0010】
図2は、本開示の実施形態に係る灯具10の断面図である。図2に示す灯具10は、図1において車両100のフロント部の右側および左側に位置する。なお、車両100の右側および左側に位置するそれぞれの車両用灯具10は互いに左右対称の形状であるため、以降では、右側に位置する車両用灯具10のみを説明する。
【0011】
図2に示すように、灯具10は、ハウジング11と、アウタレンズ12(透光部材の一例)と、複数のランプユニット14と、レーダユニット21と、エクステンション22(樹脂部材の一例)を備える。ハウジング11とアウタレンズ12は、灯室13(収容空間の一例)を形成する。
【0012】
ランプユニット14は、光源と光学部材を有する。当該光学部材は、レンズとリフレクタの少なくとも一方を含む。光源の例としては、白熱ランプ、ハロゲンランプ、放電ランプ、ネオンランプ等の光源や、発光ダイオード、レーザダイオード、有機EL素子等の半導体発光素子が挙げられる。光源から出射された光は、光学部材を介してランプユニット14から出射される。
【0013】
ランプユニット14から出射される光の波長の少なくとも一部は、可視光域に含まれている。ランプユニット14から出射された光は、アウタレンズ12を通過し、車両100の外部における所定の領域を照明する。
【0014】
レーダユニット21は、レーダ波を送受信する。レーダユニット21は、例えばFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)変調方式のミリ波レーダなどで構成され、レーダ波を送信する送信アンテナと、対象物からの反射波を受信する受信アンテナを有する。レーダユニット21は、送信アンテナから直線性に優れる電波を送信し、自車両の前方にある対象物からの反射波を受信アンテナで受信して信号処理することで、自車両を基準とした対象物との距離、速度、角度を測定することができる。
【0015】
レーダユニット21から送信されたレーダ波は、エクステンション22、およびアウタレンズ12を通過し、車両100の外部における所定の領域を照射する。照射された物体により反射されたレーザ波は、再び、アウタレンズ12、およびエクステンション22を通過し、レーダユニット21によって受信される。
【0016】
ところで、レーダユニット21の外観は、例えば黒色の直方体あるいは立方体形状を呈しており、ランプユニット14の外観と大きく相違する。したがって、ランプユニット14が灯室に収容されている車両用灯具と比較すると、ユーザが外観に違和感を覚える可能性がある。
【0017】
そこで、本実施形態では、エクステンション22を少なくともレーダユニット21の測定範囲である視野(FOV:Field Of View)を覆うように、レーダユニット21の灯具前方に配置する。図3は、本開示の実施形態に係る車両用灯具を車両の前方側から見た模式図である。エクステンション22は、不透過樹脂で形成されていて、灯室13内に配置されている構造の一部を覆い隠して車両100の外側から視認できないようにする意匠部品である。また、不透過樹脂は、例えば、厚み0.5mm~2.5mmにおいて、波長1mm~100mmのレーダ波は50%以上透過させ、波長400nm~800nmの可視光線を50%以上透過させない樹脂である。
【0018】
上記構成により、図3に示すように、灯室13内に配置されたレーダユニット21は車両100の外側からエクステンション22により遮られるので、視認されにくくすることができる。したがって、外部からの意匠性を確保し、車両用灯具10の商品性低下を抑制できる。
【0019】
本実施形態の車両用灯具10において、エクステンション22は、不透過樹脂で形成されているので、エクステンション22は、レーダ波を透過させつつ、可視光を遮蔽する。このため、灯室13内に配置されたレーダユニット21は車両100の外側からエクステンション22により遮られ視認されにくくするとともに、レーダユニット21によるセンシングが可能になっている。したがって、外部からの意匠性を確保し、車両用灯具10の商品性低下を抑制できる。
【0020】
なお、不透過樹脂とは、例えば厚みを0.5mm~2.5mmで成形したときに、厚み方向における可視光の透過率が低い(例えば20%以下)樹脂材料である。また、不透過樹脂として、例えば、PBT材、PC(ポリカーボネート)材、または、これらの樹脂材にカーボン等が添加された樹脂材が用いられ得る。
【0021】
また、金属光沢が意匠性を高めるという理由から、通常は、車両用灯具10のエクステンション22の表面にはアルミ等からなる金属膜が形成されている。しかしながら、金属膜はレーダ波の透過を阻害するため、本実施形態では、表面(特にレーダ波が透過する領域)には金属膜を形成しないことが望ましい。
【0022】
ところで、車両用灯具10の内部には、ランプユニット14等の複数の他の部材が配置されている。そのため、レーダユニット21から送信されたレーダ波がこのような他の部材によって反射されると、レーダユニット21は対象物との距離等を正確に測定することができず、レーダユニット21の誤検知が生じる恐れがある。したがって、他の部材からの反射波がレーダユニット21の測定範囲であるFOVに位置しないように、レーダユニット21を配置する場所に制約があった。
【0023】
本発明者は、他の部材からの反射波がレーダユニット21のFOVに入り込むことを防止するため、レーダユニット21の測定範囲を制限して、レーダユニット21の誤検知を抑制できる構成について検討した。
【0024】
図4は、本開示の実施形態に係るレーダユニット21とエクステンション22の模式図である。エクステンション22は、上述したように不透過樹脂で構成されている。図4に示すように、エクステンション22は、基部23と立壁部24を有している。
【0025】
基部23は、1枚または複数枚の板状部材から構成されていて、レーダユニット21に対向する対向面23Sを有する。対応面23Sの反対側の面は、車両用灯具10の外部に向いている。対向面23Sの反対側の面には、車両用灯具10の外観意匠性を高めるために蒸着膜や塗装膜などの装飾が施される。
【0026】
立壁部24は、対向面23Sからレーダユニット21に向かって延びていて、対向面23Sの垂直方向断面視においてレーダユニット21の外周を覆うように位置する。また、立壁部24の内部には、空間Sが設けられている。この空間Sの前方は基部23で閉塞されており、空間Sの後方にはレーダユニット21が位置している。空間Sの後方はレーダユニット21により閉塞されていても閉塞されていなくてもよい。
図示した例では、立壁部24は、上壁、下壁、右壁、左壁の4枚の板状部材から構成された中空の略直方体形状である。また、立壁部24は、対向面23S側に位置する閉口部24Aと、閉口部24Aと反対側に位置する開口部24Bを有する。
閉口部24Aと開口部24Bは、それぞれ矩形形状を有し、閉口部24Aの開口面積と開口部24Bの閉口面積は略同一である。また、閉口部24Aと開口部24Bは、レーダユニット21が車両100に搭載された状態における左右方向の寸法が上下方向の寸法よりも大きい、偏平な矩形形状を有する。
【0027】
基部23および立壁部24は、不透過樹脂で形成されていて、例えば射出成形によって一体形成されている。
【0028】
図5は、レーダユニット21とエクステンション22を上方から見たときの、レーダユニット21のFOVと立壁部24との位置関係を示す模式図である。図5に示すように、立壁部24はレーダユニット21の前方に位置し、レーダユニット21は反射波の受信面21Aが立壁部24の開口部24Bの開口面内に位置するように構成されている。
【0029】
より具体的に説明する。図5に示したように、レーダユニット21の反射波の受信面21Aの法線方向を軸線Axで示したとき、レーダユニット21の視野角をθ×2と定義する。このとき、レーダユニット21の右壁と左壁は、レーダユニット21から前方に離れた位置でFOVを横切っている。レーダユニット21の右壁の後縁はFOVの外側に位置し、レーダユニット21の右壁の前縁はFOVの内側に位置している。換言すれば、立壁部24の少なくとも一部は、レーダユニット21のFOVの内側に位置している。
【0030】
上述したように、レーダユニット21のFOVの範囲内にランプ内の他の部材などが位置すると、レーダユニット21の誤検知を招く恐れがある。ところが、本開示の車両用灯具10によれば、レーダユニット21と基部23との間の空間Sが立壁部により閉塞されているため、該空間Sに他の部材が位置しない。したがって、レーダ波が他の部材によって反射されることが抑制され、レーダユニット21の誤検知を抑制できる。
【0031】
また、立壁部24の内周面または外周面の少なくとも一部に、電波吸収体25が設けられていてもよい。電波吸収体25は、レーダ波の波長域の透過率が50%以下の材料で構成されている。図4、4に示す例示では、立壁部24の内周面全体に電波吸収体25が貼付または塗布されている。これにより、レーダユニット21と基部23との間の空間Sの側方から出射して他の部材によって反射されるレーダ波を電波吸収体25によって吸収し、レーダユニット21の誤検知をさらに抑制できる。
電波吸収体は、電波吸収層と接着層が積層した電波吸収フィルムでもいいし、電波吸収材量を分散・混錬したバインダーを対象に塗布したものでもよい。
【0032】
また、立壁部24と基部23は、互いに異なる樹脂材料で形成されていて、立壁部24の樹脂材料の電波吸収性は、基部23の樹脂材料の電波吸収性よりも高くてもよい。これにより、基部23は対向面23Sから出射したレーダ波を通過させ、対向面23S以外から(空間Sの側方から)出射して他の部材によって反射されるレーダ波を立壁部24によって吸収し、レーダユニット21の誤検知をさらに抑制できる。
ここで、例えば、基部23をPCやPBT等のベース樹脂部材とし、立壁部24をベース樹脂部材にカーボン系材料や金属酸化物等のフィラーを添加した電波吸収性樹脂部材としてもよい。ベース樹脂部材および電波吸収性樹脂部材は、多色成形として、これら樹脂を一体的に形成してもよい。
【0033】
なお、上述した例では、立壁部24は、上壁、下壁、右壁、左壁の4枚の板状部材から構成された中空の略直方体形状であるが、これに限られず、例えば立壁部24は、1枚の板状部材を筒状に曲げた円筒形状であってもよい。
【0034】
以上、本開示の実施形態について説明をしたが、本開示の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本開示の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0035】
10 灯具
11 ハウジング
12 透光部材
13 灯室
14 ランプユニット
21 レーダユニット
21A 受信面
22 樹脂部材
23 基部
23S 対向面
24 立壁部
24A 閉口部
24B 開口部
25 電波吸収体
100 車両
Ax 軸線
図1
図2
図3
図4
図5