(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066681
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 11/68 20060101AFI20240509BHJP
B26D 1/24 20060101ALI20240509BHJP
B26D 5/08 20060101ALI20240509BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B41J11/68
B26D1/24 Z
B26D5/08 B
B26D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176250
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彰
【テーマコード(参考)】
2C058
3C027
【Fターム(参考)】
2C058AB02
2C058AC06
2C058AE02
2C058AE04
2C058AF04
2C058AF06
2C058AF31
2C058AF51
2C058LA03
2C058LA13
2C058LA19
2C058LA23
2C058LB10
2C058LB19
2C058LB36
2C058LC02
2C058LC18
3C027XX03
3C027XX04
3C027XX19
(57)【要約】
【課題】設置スペースが小さくて済むスリッタ部を備えたプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタ1は、モータ57と、回転軸57Aに固定され、回転軸57Aと一体に回転するピニオンギア67と、ピニオンギア67の回転を減速して伝達する減速ギア69と、回転軸57Aの回転が直接伝達しない状態で回転軸57Aに挿通され、ピニオンギア67及び減速ギア69の回転に連動して回転軸57A上で回転する駆動ギア71と、駆動ギア71と一体に構成され、駆動ギア71と同軸で回転する駆動回転刃61Aと、駆動回転刃61Aにより回転する従動回転刃61Bと、を有し、駆動回転刃61Aと従動回転刃61Bとの間を通過する用紙12A,14Aを切断するスリッタ部25を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモータと、
前記回転軸に固定され、前記回転軸と一体に回転するピニオンギアと、
前記ピニオンギアの回転を減速して伝達する減速ギアと、
前記回転軸の回転が直接伝達しない状態で前記回転軸に挿通され、前記ピニオンギア及び前記減速ギアの回転に連動して前記回転軸上で回転する駆動ギアと、
前記駆動ギアと一体に構成され、前記駆動ギアと同軸で回転する駆動回転刃と、
前記駆動回転刃と部分的に接触することで回転する従動回転刃と、を有し、
前記駆動回転刃と前記従動回転刃との間を、前記回転軸と直交する搬送方向に通過する用紙を切断するスリッタ部と、
を備えていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記モータの筐体の外周面の少なくとも一部は、平坦面を有しており、
前記平坦面は、前記搬送路上を進む前記用紙に面する位置に配置されており、
前記モータは、前記搬送路上を進む前記用紙と前記平坦面の間の間隙が徐々に狭くなるように、前記搬送路に対して、前記回転軸を中心にして所定の角度傾けた状態で設置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記モータの前記平坦面に対向した対向面は、前記平坦面と略並行で、且つ、前記搬送路に対して傾斜して形成された通路部材を備えた
ことを特徴とする請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記駆動回転刃は、外輪が前記駆動回転刃に固定され、内輪が前記回転軸に固定されたベアリングを介して前記回転軸に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記用紙の搬送路上の所定の位置に前記駆動回転刃及び前記従動回転刃が位置するように、前記スリッタ部を移動させるスリッタ部移動手段をさらに備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプリンタ。
【請求項6】
前記用紙の幅寸法は、8インチ(約20.32センチメートル)であり、
前記スリッタ部は、前記スリッタ部移動手段により、前記用紙を切断しない位置から、幅寸法が6インチ(約15.24センチメートル)に切断される位置まで移動可能である
ことを特徴とする請求項5に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の用紙種類を用意することなく、異なる幅寸法の印刷出力を得るために、幅寸法の大きな用紙に印刷後、用紙を切断して、所望の小さい幅寸法の用紙に調整する、スリッタ機能を有するプリンタが存在する。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のプリンタは、用紙を搬送する搬送ローラと同じ軸上に、用紙を切断する回転刃を備えている。用紙切断時は、回転刃を所定の切断位置に移動させ、搬送ローラの回転により回転刃を回転させて、搬送路を通過する用紙を切断するようになっている。
【0004】
特許文献2及び特許文献3に記載のプリンタは、モータの回転軸上に取り付けられた回転刃を備えている。用紙切断時は、回転刃を所定の切断位置に移動させ、モータを回転させて回転刃を回転させて、搬送路を通過する用紙を切断するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-105383号公報
【特許文献2】特許第6074990号公報
【特許文献3】中国実用新案第213140873号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のプリンタは、回転刃を切断位置に移動させるための機構が、用紙の幅寸法を超える設置スペースを必要としており、プリンタが大型になってしまう課題が存在する。
【0007】
また、特許文献2や特許文献3に記載のプリンタは、特許文献1の構成よりは、設置スペースが小さくて済むが、用紙を切断するのに要するトルクを得るため、大型のモータを備えるようにする必要があった。そのため、用紙の排出口の限られたスペース内に設置することが困難であった。
【0008】
本発明の目的は、設置スペースが小さくて済むスリッタ部を備えたプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明のプリンタは、回転軸を有するモータと、前記回転軸に固定され、前記回転軸と一体に回転するピニオンギアと、前記ピニオンギアの回転を減速して伝達する減速ギアと、前記回転軸の回転が直接伝達しない状態で前記回転軸に挿通され、前記ピニオンギア及び前記減速ギアの回転に連動して前記回転軸上で回転する駆動ギアと、前記駆動ギアと一体に構成され、前記駆動ギアと同軸で回転する駆動回転刃と、前記駆動回転刃と部分的に接触することで回転する従動回転刃と、を有し、前記駆動回転刃と前記従動回転刃との間を、前記回転軸と直交する搬送方向に通過する用紙を切断するスリッタ部と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
減速ギアを介して駆動回転刃を回転させることで、モータの出力軸に駆動回転刃を固定して駆動回転刃を回転させる場合よりも、駆動回転刃に発生するトルクが増大する。したがって、出力軸に発生するトルクが小さい小型のモータを用いても、駆動回転刃及び従動回転刃によって用紙を切断するのに十分なトルクを駆動回転刃に発生させることができる。これにより、本発明は、発生するトルクがより大きい大型のモータを用いたものに比べて、スリッタ部の設置スペースを小さくすることができる。
【0011】
また、モータの回転軸に駆動回転刃を設けることで、モータと駆動回転刃とを同軸に配することができ、回転軸を中心とした半径方向における駆動回転刃の占有スペースを、モータの占有スペースと重複させて、設置スペースを小さくすることができる。しかも、モータの回転軸に駆動回転刃が固定されていることで、モータの回転軸と駆動回転刃の軸とを、別体で同軸に配置した構成に比べて、軸間の芯のずれが生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】プリンタの幅方向の中心を通り、前後方向に沿った鉛直面による断面図である。
【
図3】スリッタユニットを本体部から取り外した状態の斜視図である。
【
図5】スリッタ部のモータの回転軸を通り、左右方向に沿った鉛直面の断面図である。
【
図6】スリッタユニットを通る用紙の様子を説明するためのスリッタ部の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るプリンタの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0014】
<全体構成>
図1は、プリンタ1の外観を示す斜視図、
図2は、プリンタ1の幅方向Wの中心を通り、前後方向Lに沿った鉛直面による断面図である。
【0015】
プリンタ1は、
図1に示すように、全体として直方体状に形成されていて、本体部3と、ゴミ箱5とを備えている。本実施の形態では、
図1に示すように、左右方向(幅方向)W、前後方向(長さ方向)L、上下方向(高さ方向)Hを定義している。
【0016】
本体部3は、金属製のフレームの外側を金属製の外装カバー7、樹脂製の上部フロントケース9及び下部フロントケース11で覆って形成されている。本体部3の内部には、
図2に示すように、ロール紙12を収容するロール紙収容室13と、枚葉紙14を収容する枚葉紙収容室15と、インクリボンユニット16を収容するリボン収容室17とが形成されている。
【0017】
ロール紙収容室13には、長尺帯状の用紙12Aをロール状に巻いたロール紙12が収容される。ロール紙12は、外装カバー7から本体部3を引き出してから、上部フロントケース9を備えた本体部3の前上部を跳ね上げ、ゴミ箱5を取り外すことで、交換可能になっている。
【0018】
枚葉紙収容室15は、
図2に示すように、プリンタ1の最下部に設けられ、ロール紙収容室13の下方に配置されている。枚葉紙収容室15は、予め所定の大きさに切断された枚葉紙14を厚さ方向に重ねて収容しており、用紙14Aを供給する。
【0019】
枚葉紙収容室15は、下部フロントケース11に覆われており、下部フロントケース11の上部に形成された指掛け部11aに指を掛けて前後方向Lの前方に引くことで、本体部3とは独立して前方に引き出し可能に設けられている。枚葉紙収容室15は、前方に引き出された状態で上方が開放され、この開放された上方から、内部に収容する枚葉紙14を出し入れすることができる。
【0020】
上部フロントケース9は、本体部3の前上部に配置されている。上部フロントケース9は、本体部3の前上部に配置されたカッターユニット19及びスリッタユニット21に対向して配置され、カッターユニット19及びスリッタユニット21を覆っている。
【0021】
上部フロントケース9の前面には、本体部3の内部から搬送された用紙12A,14Aを外部に排出する排出口23が形成されている。排出口23は、用紙12A,14Aの幅よりも長い寸法で形成されている。排出口23には、凹部23Aが形成されており、後述のスリッタ部25の部分29が露出するようになっている。露出している部分29が凹部23A内を左右方向に移動可能になっており、用紙のスリットを行わない場合は、露出している部分29が凹部23Aの左端にくるようになっており、用紙のスリットを行う場合は、露出している部分29が凹部23Aの右端にくるようになっている。
【0022】
本体部3は、これらロール紙収容室13、枚葉紙収容室15及びリボン収容室17の他、電源、用紙搬送部、リボン搬送部、カッターユニット19、スリッタユニット21及び制御部等を備えている。
【0023】
ゴミ箱5は、本体部3の前面開口を塞ぐように、本体部3に着脱可能に設けられている。ゴミ箱5は、
図1に示すように、閉じた状態で本体部3と係合して閉じた状態を維持しており、前方に引っ張ることで係合が外れて本体部3から取り外すことができる。また、ゴミ箱5を本体部3から取り外した状態から、後方Rに押し付けることで、ゴミ箱5は本体部3に係合して取り付けられ、取り付けられた状態に維持される。
【0024】
ゴミ箱5は、上端が開口し、内部空間5aを有する箱状に形成されている。ゴミ箱5の上端の開口5bは、カッターユニット19に対して開口している。
【0025】
カッターユニット19により、用紙12A,14Aの余白部が、用紙12A,14Aの幅方向Wに細長い短冊状の用紙片として切り落とされると、その用紙片が落下して、開口5bを通じてゴミ箱5の内部空間5aに収容される。
【0026】
本体部3には、リボン収容室17に収容されたインクリボンユニット16のインクリボンTを搬送するインクリボン部IRが設けられている。インクリボンTは、イエローY、マゼンタM及びシアンCの各インク領域、並びにオーバーコートOPの領域が、長手方向に繰り返し交互に配置された帯状のシートである。インクリボンユニット16は、外装カバー7から本体部3を引き出すことで、交換可能になっている。
【0027】
本体部3には、ロール紙収容室13からの用紙12Aを搬送路CPに沿って搬送する、及び、枚葉紙収容室15からの用紙14Aを搬送路CPに沿って搬送する、搬送機構31が設けられている。搬送路CPは、
図2に示した一点鎖線の経路である。本実施の形態では、給紙位置(ロール紙収容室13及び枚葉紙収容室15)から排出口23への搬送向きを順方向とし、その逆を逆方向と定義する。用紙12A,14Aは、搬送機構31により、搬送路CPを順方向・逆方向に搬送されて、最終的に、排出口23から排出される。
【0028】
搬送路CPは、ロール紙給紙路P1、枚葉紙給紙路P2、給紙路P3、反転路P4、プリント路P5、排紙路P6を有している。搬送機構31は、搬送路CPに沿って、ロール紙繰り出しローラ33、枚葉紙繰り出しローラ35、枚葉紙給紙ローラ37、グリップローラ39、プラテンローラ41、反転ローラ43、カッター部ローラ45、スリッタ部ローラ47と、を備えている。
【0029】
ロール紙繰り出しローラ33は、ロール紙12から延び出た用紙12Aを挟んで用紙12Aをグリップローラ39に搬送する。枚葉紙繰り出しローラ35は、最も上に重ねられた枚葉紙14に接し、回転により、その枚葉紙14を繰り出す。枚葉紙給紙ローラ37は、枚葉紙繰り出しローラ35の近傍に配置されており、繰り出された用紙14Aを給紙路P3を介してグリップローラ39に搬送する。グリップローラ39は、用紙12A,14Aを挟んで順方向に進めてプリント路P5に搬送する。グリップローラ39は、印画時は、用紙12A,14Aを逆方向に進める。また、用紙14A(枚葉紙)の両面に印画を行う際には、用紙14Aを反転路P4に進める。プラテンローラ41は、後述のサーマルヘッドと対向する位置に配置されており、インクリボンが押圧された用紙12A,14Aを支持する。
【0030】
反転ローラ43は、用紙14A(枚葉紙)の両面に印画を行う際に駆動するものである。裏面に印画を行う際、用紙14Aはグリップローラ39によって搬送路CPの反転路RPに搬送され、その後、反転ローラ43によって給紙路P3に進められる。
【0031】
カッター部ローラ45は、カッターユニット19に備えられており、用紙12A,14Aの余白を切断する場合や、用紙12Aをロール紙12から切り離す際に、用紙12A,14Aを所定の位置まで進めて、切断中にずれないように押さえる。
【0032】
スリッタ部ローラ47は、スリッタユニット21に備えられており、用紙12A,14Aを排出口23に向かって進める。後述のように、用紙12A,14Aをスリットする際には、搬送路にスリッタ部25が移動されて、用紙12A,14Aを切断しながら、用紙12A,14Aを排紙する。
【0033】
プラテンローラ41と対向する位置には、サーマルヘッド49が配置されている。サーマルヘッド49は、ガイド部51で張られたインクリボンTの転写面とは反対側に配置され、ガイド部で張られ、用紙12A,14Aと同期して繰り出されたインクリボンTを、搬送路CPを搬送される用紙12A,14Aに対して押圧し、熱により、転写面のインクを用紙12A,14Aに転写して印画を行う。
【0034】
<スリッタユニット>
図3は、スリッタユニット21を本体部3から取り外した状態の斜視図であり、
図4は、スリッタ部25の斜視図であり、
図5は、スリッタ部25のモータの回転軸を通り、左右方向に沿った鉛直面による断面図であり、
図6は、スリッタユニット21を通る用紙の様子を説明するためのスリッタ部25の左側面図である。
図5では、モータ57の内部構造の図示は省略してある。
【0035】
スリッタユニット21は、ユニット枠体53と、スリッタ部25と、スリッタ部移動手段27と、スリッタ部ローラ47とを有している。
【0036】
ユニット枠体53は、金属製の枠体である。ユニット枠体53には、スリッタ部25、スリッタ部移動手段27、スリッタ部ローラ47が取り付けられており、ユニット枠体53を本体部3から取り外すことで、スリッタユニット21を本体部3から取り外し可能になっている。
【0037】
スリッタ部ローラ47は、駆動ローラ47Aと従動ローラ47Bを有している。スリッタユニット21が本体部3に取り付けられている場合、カッター部ローラ45によって搬送された用紙12A,14Aが駆動ローラ47Aと従動ローラ47Bに挟まれ、排出口23に向かって進められる。
【0038】
図4及び
図5は、ケース25Bを除いた状態のスリッタ部25を示している。
図4及び
図5に示すように、スリッタ部25は、スリッタ枠体55、モータ57、輪列59、一組の回転刃61(駆動回転刃61A及び従動回転刃61B)を有している。
【0039】
スリッタ枠体55は、ベース部(通路部材)63と、組付壁部65から構成されている。組付壁部65は、ベース部63の縁部分に固定された固定部65Aと、ベース部63に沿って延びる平坦部65Bと、平坦部65Bの縁部から鉛直方向に延びる組付部65Cを有している。モータ57及び輪列59は、組付部65Cに組付けられている。平坦部65Bには部分的に孔65Dが形成されており、孔65Dに一組の回転刃61の切断部が配置されている。
【0040】
ベース部63と、組付壁部65の平坦部65Bの間には間隙Gが設けられており、一組の回転刃61によって切断された用紙12A,14Aの不要部分(用紙12A″,14A″)が通過可能になっている。
【0041】
モータ57は、出力軸として回転軸57Aを有しており、筐体の外周面(回転軸57Aを半径方向の外側から覆う面)は、一対の平坦面57B,57Bを有している。本実施の形態では、モータ57は、
図6に示すように、搬送路CP(排紙路P6)上を進む用紙12A,14Aと平坦面57Bの間の間隙Gが徐々に狭くなるように、搬送路CP(排紙路P6)に対して、回転軸57Aを中心にして所定の角度θ傾けた状態で設置されている。これはモータ57の筐体に用紙12A,14Aが当たらないようにして、モータが、用紙の搬送及び切断を妨げないようにするためである。また、用紙が切断された後は、切断された用紙12A,14Aの不要部分(用紙12A″,14A″)がモータ57の筐体に当たって、幅寸法を調整された用紙部分(用紙12A´,14A´)よりも垂れ下がった状態で排紙されるようにするためである(
図6参照)。所定の角度θは、例えば、5°~10°である。また、モータ57の傾き角度に合わせて、ベース部(通路部材)63は、平坦面57Bと略並行で、且つ、搬送路CP(排紙路P6)に対して傾斜して形成されている。
【0042】
輪列59は、ピニオンギア67と、減速ギア69と、駆動ギア71を備えている。ピニオンギア67は、回転軸57Aに固定され、回転軸57Aと一体に回転する。減速ギア69は、ピニオンギア67よりも直径の大きい大径ギア69aと、大径ギア69aよりも直径の小さい小径ギア69bとが、軸を共有して一体に形成されている。ピニオンギア67は減速ギア69の大径ギア69aと噛み合い、ピニオンギア67の回転を伝達する。小径ギア69bは大径ギア69aと一体に回転する。
【0043】
駆動ギア71は、回転軸57Aの回転が直接伝達しない状態で回転軸57Aに挿通され、回転軸57A回りに回転自在である。駆動ギア71は、減速ギア69の小径ギア69bと噛み合っている。これにより、減速ギア69は、ピニオンギア67の回転を減速して、駆動ギア71に伝達する。駆動ギア71は、ピニオンギア67及び減速ギア69の回転に連動して回転軸57A上で(回転軸57A周りに)回転する。
【0044】
本実施の形態では、駆動ギア71は、駆動回転刃61Aと一体に構成されている。駆動ギア71と駆動回転刃61Aは同軸で回転するようになっている。駆動回転刃61Aは、ベアリング73を介して回転軸57Aに取り付けられている。ベアリング73は、外輪が駆動回転刃61Aに固定され、内輪が回転軸57Aに固定されている。この構成により、モータ57の回転軸57Aに駆動回転刃61Aを固定して回転させる場合よりも大きなトルクで駆動回転刃61Aを回転させることができる。
【0045】
従動回転刃61Bは、回転軸がベース部63と固定部65Aの間に架け渡されている。固定部65Aと従動回転刃61Bの間には、バネ75が配置されており、従動回転刃61Bが駆動回転刃61Aに対して付勢されている。これにより、従動回転刃61Bは、駆動回転刃61Aの回転により回転し、駆動回転刃61Aと従動回転刃61Bの間を通過する用紙12A,14Aを切断する。
【0046】
スリッタ部移動手段27は、用紙12A,14Aの搬送路CP(排紙路P6)上の所定の位置に駆動回転刃61A及び従動回転刃61Bが位置するようスリッタ部25を移動させる。本実施の形態では、スリッタ部移動手段27は、リニアステップモータ27により構成されている。
【0047】
スリッタ部25は、ベース部63の下面に設けられた突起部63A(
図5参照)がユニット枠体53に形成された溝部(図示せず)にスライド可能に嵌り、且つ、スリッタ部25のケース25Bに形成された突起部25Cがユニット枠体53に形成された溝部53Aにスライド可能に嵌っている。そのため、スリッタ部25は回転することなく、左右方向に移動が可能になっている。これにより、制御部から用紙12A,14Aをスリットする旨の指令が出されると、指令によりリニアステップモータ27が回転し、スリッタ部25が待機位置から切断位置に移動するようになっている。
【0048】
用紙12A,14Aをスリットしない場合には、スリッタ部25は待機位置に位置し(
図3の状態)、用紙12A,14Aは、スリッタ部ローラ47によって排出口23から排紙される。
【0049】
用紙12A,14Aをスリットする場合には、制御部からの指令により、スリッタ部25が待機位置から所定の切断位置に右方向に移動し、その位置で駆動回転刃61A及び従動回転刃61Bが回転する。この状態で、用紙12A,14Aがスリッタ部ローラ47によって進められると、
図6に示すように、用紙12A,14Aが駆動回転刃61A及び従動回転刃61Bによって切断され、所望の幅寸法の用紙に調整された上で、排出口23から排紙される。排出口23からは、幅寸法を調整された用紙12A,14A(用紙12A´,14A´)と共に、不要部分(用紙12A″,14A″)も排紙される。本実施の形態では、用紙12A,14Aの幅寸法は、8インチ(約20.32センチメートル)であり、スリッタ部により切断されて用紙12A´,14A´は、幅寸法が6インチ(約15.24センチメートル)や7インチ(約17.78センチメートル)になるようになっている。排紙が完了すると、制御部からの指令により、スリッタ部25は、左方向に移動し、待機位置に戻る。
【0050】
[プリンタの作用]
以下にプリンタ1の作用を説明する。
【0051】
プリンタ1は、回転軸57Aを有するモータ57と、回転軸57Aに固定され、回転軸57Aと一体に回転するピニオンギア67と、ピニオンギア67の回転を減速して伝達する減速ギア69と、回転軸57Aの回転が直接伝達しない状態で回転軸57Aに挿通され、ピニオンギア67及び減速ギア69の回転に連動して回転軸57A上で回転する駆動ギア71と、駆動ギア71と一体に構成され、駆動ギア71と同軸で回転する駆動回転刃61Aと、駆動回転刃61Aと部分的に接触することで回転する従動回転刃61Bと、を有し、駆動回転刃61Aと従動回転刃61Bとの間を、回転軸57Aと直交する搬送方向に通過する用紙12A,14Aを切断するスリッタ部25と、を備えていることを特徴とする。
【0052】
このようにすることで、本発明では、減速ギアを介して駆動回転刃を回転させることで、モータの出力軸に駆動回転刃を固定して駆動回転刃を回転させる場合よりも、駆動回転刃に発生するトルクが増大する。したがって、出力軸に発生するトルクが小さい小型のモータを用いても、駆動回転刃及び従動回転刃によって用紙を切断するのに十分なトルクを駆動回転刃に発生させることができる。これにより、本発明は、発生するトルクがより大きい大型のモータを用いたものに比べて、スリッタ部の設置スペースを小さくすることができる。
【0053】
また、モータの回転軸に駆動回転刃を設けることで、モータと駆動回転刃とを同軸に配することができ、回転軸を中心とした半径方向における駆動回転刃の占有スペースを、モータの占有スペースと重複させて、設置スペースを小さくすることができる。しかも、モータの回転軸に駆動回転刃が固定されていることで、モータの回転軸と駆動回転刃の軸とを、別体で同軸に配置した構成に比べて、軸間の芯のずれが生じることがない。
【0054】
プリンタ1は、モータ57の筐体の外周面の少なくとも一部は、平坦面57Bを有しており、平坦面57Bは、搬送路CP(排紙路P6)上を進む用紙12A,14Aに面する位置に配置されており、モータ57は、搬送路CP(排紙路P6)上を進む用紙12A,14Aと平坦面57Bの間の間隙が徐々に狭くなるように、搬送路に対して、回転軸57Aを中心にして所定の角度(θ)傾けた状態で設置されていてもよい。
【0055】
これにより、用紙12A,14Aがモータ57に当たらないため、モータ57が用紙12A,14Aの搬送及び切断を妨げることがない。また、用紙が切断された後は、切断された用紙12A,14Aの不要部分(用紙12A″,14A″)がモータ57の筐体に当たって、幅寸法を調整された用紙部分(用紙12A´,14A´)よりも垂れ下がった状態で排紙されるようになる。
【0056】
モータ57の平坦面57Bに対向した対向面は、平坦面57Bと略並行で、且つ、搬送路CP(排紙路P6)に対して傾斜して形成された通路部材(ベース部)63を備えていてもよい。これにより、さらに、用紙12A,14Aの搬送及び切断を妨げることがない。
【0057】
駆動回転刃61Aは、外輪が駆動回転刃61Aに固定され、内輪が回転軸57Aに固定されたベアリング73を介して回転軸57Aに固定されていてもよい。これにより、簡易な構成で、駆動回転刃61Aを回転軸57A上で回転させることができる。
【0058】
用紙12A,14Aの搬送路上の所定の位置に駆動回転刃61A及び従動回転刃61Bが位置するように、スリッタ部25を移動させるスリッタ部移動手段27をさらに備えていてもよい。スリッタ部移動手段27により、スリッタ部25を、用紙を切断しない位置から、用紙を切断する位置に移動させることができる。用紙を切断する位置はスリッタ部移動手段27の移動可能範囲の任意の位置とすることができる。
【0059】
用紙の幅寸法やスリット後の用紙の幅寸法は任意である。例えば、用紙の幅寸法が8インチ(約20.32センチメートル)であり、スリッタ部25により幅寸法が6インチ(約15.24センチメートル)や7インチ(約17.78センチメートル)等、任意の幅寸法になるように切断されるものとすることができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【0061】
例えば、上記実施の形態では、スリッタ部は、制御部で制御されたスリッタ部移動手段で移動させたが、手動でスリッタ部を待機位置から切断位置に移動できるようにしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0062】
1 プリンタ
3 本体部
5 ゴミ箱
7 外装カバー
9 上部フロントケース
11 下部フロントケース
13 ロール紙収容室
15 枚葉紙収容室
17 リボン収容室
19 カッターユニット
21 スリッタユニット
23 排出口
25 スリッタ部
27 スリッタ部移動手段
31 搬送機構
33 ロール紙繰り出しローラ
35 枚葉紙繰り出しローラ
37 枚葉紙給紙ローラ
39 グリップローラ
41 プラテンローラ
43 反転ローラ
45 カッター部ローラ
47 スリッタ部ローラ
49 サーマルヘッド
51 ガイド部
53 ユニット枠体
55 スリッタ枠体
57 モータ
59 輪列
61 一組の回転刃
61A 駆動回転刃
61B 従動回転刃
63 ベース部
65 組付壁部
67 ピニオンギア
69 減速ギア
71 駆動ギア
73 ベアリング
75 バネ
CP 搬送路
T インクリボン
IR インクリボン部
H 高さ方向
L 前後方向
W 幅方向