(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066693
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】パイプクランプを用いたパイプの取り付け構造
(51)【国際特許分類】
F16L 3/12 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
F16L3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176276
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】瀬田 典幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 生希
【テーマコード(参考)】
3H023
【Fターム(参考)】
3H023AA03
3H023AB01
3H023AD27
3H023AE07
(57)【要約】
【課題】作業効率を改善しつつコストを削減するとともに、パイプの保持力を向上させる。
【解決手段】金属製のパイプクランプ10Aは、パイプ12の外周面1202を保持する円弧状板部14と、円弧状板部14の周方向の両端から延在しそれらの内面が重ね合わされる一対の取り付け板部16とを備え、一方の取り付け板部18の内面1802と、この一方の取り付け板部18が接続する円弧状板部14の一端で円弧状板部14の内周面1402が接触するパイプ12の外周面1202の箇所における接線12Aとがなす角度θ1は90度以下であり、他方の取り付け板部20の内面2002と、この他方の取り付け板部20が接続する円弧状板部14の他端で円弧状板部14の内周面1402が接触するパイプ12の外周面1202の箇所における接線12Bとがなす角度θ2は鈍角である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造であって、
前記パイプクランプは、パイプの外周面を保持する円弧状板部と、前記円弧状板部の周方向の両端から延在しそれらの内面が重ね合わされる一対の取り付け板部と備え、
前記一対の取り付け板部のうちの一方の取り付け板部の内面と、この一方の取り付け板部が接続する前記円弧状板部の両端のうちの一端で前記円弧状板部の内周面が接触する前記パイプの外周面の箇所における接線とがなす角度は90度以下であり、
前記一対の取り付け板部のうちの他方の取り付け板部の内面と、この他方の取り付け板部が接続する前記円弧状板部の両端のうちの他端で前記円弧状板部の内周面が接触する前記パイプの外周面の箇所における接線とがなす角度は鈍角である、
ことを特徴とするパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造。
【請求項2】
前記一方の取り付け板部と、前記円弧状板部の両端のうちの一端とは第1湾曲部を介して接続され、
前記他方の取り付け板部と、前記円弧状板部の両端のうちの他端とは第2湾曲部を介して接続され、
前記第1取り付け板部と前記第2取り付け板部の厚さを共にT1とすると、
前記第1湾曲部の頂部と前記第2湾曲部の頂部との間の距離は前記T1よりも小さい値で形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造。
【請求項3】
前記一対の取り付け板部の内面が重ね合わされた箇所のうち前記パイプの外周面に最も近い箇所と前記パイプの外周面との距離は、前記T1よりも小さい値で形成されている、
ことを特徴とする請求項2記載のパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造。
【請求項4】
前記一対の取り付け板部の前記円弧状板部から離れた端部にボルト挿通孔が形成され、
前記一対の取り付け板部の前記ボルト挿通孔に挿通されたボルトが被取り付け面に締結されることで前記パイプクランプを前記被取り付け面に取り付ける、
ことを特徴とする請求項1記載のパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプを保持するパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には様々な流体を流通させるためのパイプ(流体配管)が設けられている。
例えば、車室内空調用のエアコンに設けられたパイプには熱交換用の流体である熱媒体が流通している。
あるいは、エンジンに設けられたパイプにはオイルや冷却水、EGRガスなどの液体や気体が流通している。
このようなパイプをエンジンルームに配置する場合、パイプの中間部を、パイプクランプを介して車体に保持することになる。
例えば、パイプクランプの円弧状板部をパイプに巻き付けた後に、円弧状板部の両端から延在する一対の取り付け板部を重ね合わせ、エンジンルーム内に設けられた基台に締結具を用いて締め付けて固定する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、パイプクランプをパイプに巻き付けた際に、パイプの外周面とパイプクランプの内面との間に大きな隙間が形成されてしまい、クランプによるパイプの保持力が低下してしまう。そうすると、走行時に車両が振動したり内燃機関が振動すると、パイプがガタついてしまうことがある。
このため、パイプの取り付けの際に溶接やろう付けを行ったり、パイプとクランプの間にゴムパッキンやゴムブッシュを充填していたが、溶接やろう付けを用いた取り付けは、技術力を有する作業であるため容易に行えず、また、ゴムパッキンやゴムブッシュを用いた取り付けは、部品数が増加してコストが上昇してしまう。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、パイプの保持力を向上させるとともに、容易な取り付け作業により作業効率を改善しつつコストを削減するパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するため本発明の一実施の形態は、金属製のパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造であって、前記パイプクランプは、パイプの外周面を保持する円弧状板部と、前記円弧状板部の周方向の両端から延在しそれらの内面が重ね合わされる一対の取り付け板部と備え、前記一対の取り付け板部のうちの一方の取り付け板部の内面と、この一方の取り付け板部が接続する前記円弧状板部の両端のうちの一端で前記円弧状板部の内周面が接触する前記パイプの外周面の箇所における接線とがなす角度は90度以下であり、前記一対の取り付け板部のうちの他方の取り付け板部の内面と、この他方の取り付け板部が接続する前記円弧状板部の両端のうちの他端で前記円弧状板部の内周面が接触する前記パイプの外周面の箇所における接線とがなす角度は鈍角であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記一方の取り付け板部と、前記円弧状板部の両端のうちの一端とは第1湾曲部を介して接続され、前記他方の取り付け板部と、前記円弧状板部の両端のうちの他端とは第2湾曲部を介して接続され、前記第1取り付け板部と前記第2取り付け板部の厚さを共にT1とすると、前記第1湾曲部の頂部と前記第2湾曲部の頂部との間の距離は前記T1よりも小さい値で形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記一対の取り付け板部の内面が重ね合わされた箇所のうち前記パイプの外周面に最も近い箇所と前記パイプの外周面との距離は、前記T1よりも小さい値で形成されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記一対の取り付け板部の前記円弧状板部から離れた端部にボルト挿通孔が形成され、前記一対の取り付け板部の前記ボルト挿通孔に挿通されたボルトが被取り付け面に締結されることで前記パイプクランプを前記被取り付け面に取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、金属製のパイプクランプが、パイプの外周面を保持する円弧状板部と、円弧状板部の周方向の両端から延在しそれらの内面が重ね合わされる一対の取り付け板部とを備え、一方の取り付け板部の内面と、この一方の取り付け板部が接続する円弧状板部の一端で円弧状板部の内周面が接触するパイプの外周面の箇所における接線とがなす角度は90度以下であり、他方の取り付け板部の内面と、この他方の取り付け板部が接続する円弧状板部の他端で円弧状板部の内周面が接触するパイプの外周面の箇所における接線とがなす角度は鈍角であるため、パイプの外周面とパイプクランプの内面との間の隙間を減少させてパイプを取り付けることができる。したがって、円弧状板部の内周面とパイプの外周面との接触面積を大きく確保し、パイプの保持力を向上させるとともに、容易な取り付け作業により作業効率を改善しつつコストを削減する上で有利となる。
また、第1湾曲部の頂部と第2湾曲部の頂部との間の距離を、一方の取り付け板部と他方の取り付け板部の厚さT1よりも小さい値で形成すれば、パイプの外周面とパイプクランプの内面との間の隙間を確実に減少させるため、円弧状板部の内周面とパイプの外周面との接触面積を大きく確保し、パイプの保持力を向上させる上で有利となる。
また、一対の取り付け板部の内面が重ね合わされた箇所のうちパイプの外周面に最も近い箇所と、パイプの外周面との距離を、一方の取り付け板部と他方の取り付け板部の厚さT1よりも小さい値で形成すれば、パイプの外周面とパイプクランプの内面との間の隙間を確実に減少させるため、円弧状板部の内周面とパイプの外周面との接触面積を大きく確保し、パイプの保持力を向上させる上で有利となる。
また、一対の取り付け板部の円弧状板部から離れた端部にボルト挿通孔が形成され、一対の取り付け板部のボルト挿通孔に挿通されたボルトが被取り付け面に締結されることでパイプクランプを被取り付け面に取り付ける構成とすれば、円弧状板部とボルトとの間で所定の距離を確保できるため、近傍に配置された他のパイプとの接触を回避する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)は第1の実施の形態のパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造の平面図であり、(B)は第1の実施の形態のパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造の正面図である。
【
図2】金型による成型前のパイプクランプを示す説明図である。
【
図3】金型がパイプクランプに接した状態を示す説明図である。
【
図4】金型がパイプクランプを押圧している状態を示す図である。
【
図5】金型により成型されたパイプクランプを示す説明図である。
【
図6】一対の取り付け板部が重ね合わされた箇所の拡大図である。
【
図7】第2の実施の形態のパイプクランプを用いたパイプの取り付け構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態のパイプクランプ10Aにより保持されて取り付けられるパイプ12は、例えば、車室内空調用のエアコンに用いられる熱交換用の流体が流通するパイプであり、エンジンルーム内に配置されている。
本実施の形態のパイプ12は金属製であるが、合成樹脂製やゴム製(ゴムホース)であっても取り付け可能となっている。
また、パイプクランプ10Aは金属製であって、例えば炭素鋼STKMなど従来公知の様々な材料が適用可能となっている。
【0009】
パイプクランプ10Aは、
図1に示すように、パイプ12の外周面1202を保持する円弧状板部14と、円弧状板部14の周方向の両端から延在しそれらの内面が重ね合わされる一対の取り付け板部16とを備えている。
一対の取り付け板部16のうちの一方の取り付け板部18と、一方の取り付け板部18が接続する円弧状板部14の両端のうちの一端とは、第1湾曲部1002を介して接続されている。
また、一対の取り付け板部16のうちの他方の取り付け板部20と、他方の取り付け板部20が接続する円弧状板部14の両端のうちの他端とは第2湾曲部1004を介して接続されている。
【0010】
図1、
図6に示すように、円弧状板部14の一端から他端に至るまでの内周面1402は、パイプ12の外周面1202に圧接している。
そして、パイプクランプ10Aの内面(パイプクランプ10Aの第1湾曲部1002の内面および第2湾曲部1004の内面)と、パイプ12の外周面1202とにより囲まれた箇所には、隙間Sが形成されている。
図1(B)に示すように、一対の取り付け板部16は、パイプ12側の端部から、後述するボルトB側の端部までの内面が重ね合わされており、それらの長手方向の中間部には第1屈曲部1602および第2屈曲部1604が形成されている。
したがって、
図1(B)に示すように、一方の取り付け板部18は、パイプ12側の端部から順に、第1上平坦部1804、第1屈曲部1602、上傾斜部1806、第2屈曲部1604、および第2上平坦部1808が形成されている。
また、他方の取り付け板部20は、パイプ12側の端部から順に、第1下平坦部2004、第1屈曲部1602、下傾斜部2006、第2屈曲部1604、第2下平坦部2008が形成されている。
一対の取り付け板部16の円弧状板部14から離れた端部には、ボルトBを挿通するボルト挿通孔22が形成されている。
【0011】
図6(B)に示すように、一方の取り付け板部18の内面1802と、一方の取り付け板部18が接続する円弧状板部14の両端のうちの一端で円弧状板部14の内周面1402が接触するパイプ12の外周面1202の箇所における接線12Aとがなす角度θ1は、隙間Sを減少させ円弧状板部14の内周面1402とパイプ12の外周面1202との接触面積を大きく確保するため90度以下となっている。
本実施の形態の角度θ1はおおよそ85度となっている。
角度θ1は、90度以下であればよく、パイプ12の外径やパイプクランプ10Aの厚さなどにより湾曲可能な角度が定められる。なお、角度θ1の下限値は、曲げ加工上の観点からして60度前後となる。
【0012】
また、
図6(B)に示すように、他方の取り付け板部20の内面2002と、他方の取り付け板部20が接続する円弧状板部14の両端のうちの他端で円弧状板部14の内周面1402が接触するパイプ12の外周面1202の箇所における接線12Bとがなす角度θ2は、隙間Sを減少させ円弧状板部14の内周面1402とパイプ12の外周面1202との接触面積を大きく確保するため鈍角となっている。
本実施の形態の角度θ2はおおよそ120度となっている。
角度θ2は、鈍角であるため90度<θ2<180度であればよく、角度θ1と同様にパイプ12の外径やパイプクランプ10Aの厚さなどにより湾曲可能な角度が定められる。
【0013】
また、一方の取り付け板部18と他方の取り付け板部20の厚さ(板部の厚さ)を共にT1とすると、第1湾曲部1002の頂部1002Aと第2湾曲部1004の頂部1004Aとの間の距離D1は、隙間Sを減少させ円弧状板部14の内周面1402とパイプ12の外周面1202との接触面積を大きく確保するため板部の厚さT1よりも小さい値で形成されている。
なお、第1湾曲部1002の頂部1002Aは、第1湾曲部1002がパイプ12の外周面1202に接した箇所と、第1湾曲部1002が他方の取り付け板部20に接した箇所との間の中央部をいう。また、第2湾曲部1004の頂部1004Aは、第2湾曲部1004がパイプ12の外周面1202に接した箇所と、第2湾曲部1004が一方の取り付け板部18に接した箇所との間の中央部をいう。
【0014】
また、一対の取り付け板部16の内面が重ね合わされた箇所、すなわち一方の取り付け板部18の内面1802と他方の取り付け板部20の内面2002とが重ね合わされた箇所のうち、パイプ12の外周面1202に最も近い箇所と、パイプ12の外周面1202との距離D2は、板部の厚さT1よりも小さい値で形成されている。
このように、角度θ1、角度θ2、距離D1、および距離D2を所定範囲内に定めることで、パイプ12の外周面1202とパイプクランプ10Aの内面との間の隙間Sの体積を減少させ、隙間Sを減少させ円弧状板部14の内周面1402とパイプ12の外周面1202との接触面積を大きく確保でき、パイプ12の保持力を向上させる上で有利となる。
【0015】
次に、パイプクランプ10Aによるパイプ12の取り付け方法について
図2~
図5を参照して説明する。
図2に示すように、厚さが均一な一枚の金属板からなるパイプクランプ10Aは、パイプ12を保持する前ではパイプ12が挿脱できるように円弧状板部14が開き、一対の取り付け板部16が離れた状態で直線状に延在している。
パイプ12をエンジンルーム内に取り付けるには、開いた円弧状板部14にパイプ12を挿入し、上型32および下型34を有する金型30により成型加工を行う。
【0016】
図2に示すように、上型32は、支軸部3202を中心に揺動可能となっており、本実施の形態では、成型加工時に時計回りに揺動する。
上型32の型面32Aには、パイプクランプ10Aの円弧状板部14をパイプ12に巻き付ける円弧状上型部3204、第1湾曲部1002を形成する第1湾曲上型部3206、第1上平坦部1804を形成する第1上平坦型部3212、第1屈曲部1602を形成する第1屈曲上型部3208、上傾斜部1806を形成する上傾斜型部3214、第2屈曲部1604を形成する第2屈曲上型部3210、第2上平坦部1808を形成する第2上平坦型部3216が設けられている。
【0017】
また、下型34は、上下に移動可能となっており、本実施の形態では、成型加工時に上昇する。
下型34の型面34Aには、パイプクランプ10Aの円弧状板部14をパイプ12に巻き付ける円弧状下型部3402、第2湾曲部1004を形成する第2湾曲下型部3404、第1下平坦部2004を形成する第1下平坦型部3410、第1屈曲部1602を形成する第1屈曲下型部3406、下傾斜部2006を形成する下傾斜型部3412、第2屈曲部1604を形成する第2屈曲下型部3408、第2下平坦部2008を形成する第2下平坦型部3414が設けられている。
【0018】
図3に示すように、パイプクランプ10Aの成型加工が開始されると、上型32は時計回りに揺動して型面32Aが一方の取り付け板部18のパイプ12と反対側の端部を時計回りに押圧し、他方の取り付け板部20に向けて移動させる。
また、下型34は上昇し、他方の取り付け板部20のパイプ12側の端部を上方に押圧する。
これにより、パイプクランプ10Aの円弧状板部14がパイプ12に巻き付いていく。
上型32がさらに揺動し、下型34がさらに上昇すると、
図4に示すように、上型32により一方の取り付け板部18が上型32の型面32Aに設けられた型部に沿って変形されていき、下型34により他方の取り付け板部20が下型34の型面34Aに設けられた型部に沿って変形されていく。
【0019】
そして、さらに上型32が揺動するとともに下型34が上昇すると、
図5に示すように、一対の取り付け板部16が重ね合わされていく。
このとき、
図5、
図1(B)に示すように、円弧状上型部3204および円弧状下型部3402により、円弧状板部14がパイプ12の外周面のほぼ全周に亘って巻き付けられ、第1湾曲上型部3206により第1湾曲部1002が形成され、第2湾曲下型部3404により第2湾曲部1004が形成される。
そして、一方の取り付け板部18の内面1802と他方の取り付け板部20の内面2002とが重ね合わされながら、第1屈曲上型部3208および第1屈曲下型部3406により第1屈曲部1602が形成され、第2屈曲上型部3210および第2屈曲下型部3408により第2屈曲部1604が形成される。
それと同時に、一方の取り付け板部18には、第1上平坦型部3212により第1上平坦部1804が形成され、上傾斜型部3214により上傾斜部1806が形成され、第2上平坦型部3216により第2上平坦部1808が形成される。
また、他方の取り付け板部20には、第1下平坦型部3410により第1下平坦部2004が形成され、下傾斜型部3412により下傾斜部2006が形成され、第2下平坦型部3414により第2下平坦部2008が形成される。
【0020】
パイプクランプ10Aの成型加工が完了したら、上型32を反時計回りに揺動させ、下型34を下降させて成型されたパイプクランプ10Aを取り出す。そして、
図1に示すように、一対の取り付け板部16のボルト挿通孔22にボルトBを通し、一対の取り付け板部16をエンジンルーム内に設けられたブラケット26の被取り付け面2602に載せ、ブラケット26の雌ねじ2604にボルトBを螺合し、ボルトBを締結する。
これにより円弧状板部14がパイプ12に巻き付いて円弧状板部14の内周面1402がパイプ12の外周面1202に接触することでパイプ12が保持され、重ね合わされた一対の取り付け板部16がボルトBの頭部とブラケット26の被取り付け面2602とにより挟持されることでパイプクランプ10Aがブラケット26に取り付けられる。
【0021】
このように、本実施の形態によれば、金属製のパイプクランプ10Aは、パイプ12の外周面1202を保持する円弧状板部14と、円弧状板部14の周方向の両端から延在しそれらの内面が重ね合わされる一対の取り付け板部16とを備え、一方の取り付け板部18の内面1802と、この一方の取り付け板部18が接続する円弧状板部14の一端で円弧状板部14の内周面1402が接触するパイプ12の外周面1202の箇所における接線12Aとがなす角度θ1は90度以下であり、他方の取り付け板部20の内面2002と、この他方の取り付け板部20が接続する円弧状板部14の他端で円弧状板部14の内周面1402が接触するパイプ12の外周面1202の箇所における接線12Bとがなす角度θ2は鈍角であるため、パイプ12の外周面1202とパイプクランプ10Aの内面(パイプクランプ10Aの第1湾曲部1002の内面および第2湾曲部1004の内面)との間の隙間Sを減少させ、円弧状板部14の内周面1402とパイプ12の外周面1202との接触面積を大きく確保してパイプ12を取り付けることができる。
したがって、パイプ12の保持力を向上させるとともに、容易な取り付け作業により作業効率を改善しつつコストを削減する上で有利となる。
また、第1湾曲部1002の頂部1002Aと第2湾曲部1004の頂部1004Aとの間の距離D1を、一方の取り付け板部18と他方の取り付け板部20の厚さ(板部の厚さ)T1よりも小さい値で形成しているため、パイプ12の外周面1202とパイプクランプ10Aの内面との間の隙間Sを確実に減少させ、円弧状板部14の内周面1402とパイプ12の外周面1202との接触面積を大きく確保できるため、パイプ12の保持力を向上させる上で有利となる。
また、一対の取り付け板部16の内面が重ね合わされた箇所のうちパイプ12の外周面1202に最も近い箇所と、パイプ12の外周面1202との距離D2を、一方の取り付け板部18と他方の取り付け板部20の厚さ(板部の厚さ)T1よりも小さい値で形成しているため、パイプ12の外周面1202とパイプクランプ10Aの内面との間の隙間Sを確実に減少させ、円弧状板部14の内周面1402とパイプ12の外周面1202との接触面積を大きく確保できるため、パイプ12の保持力を向上させる上で有利となる。
また、一対の取り付け板部16の円弧状板部14から離れた端部にボルト挿通孔22が形成され、一対の取り付け板部16のボルト挿通孔22に挿通されたボルトBが被取り付け面2602に締結されることでパイプクランプ10Aが被取り付け面2602に取り付けられる構成とすれば、円弧状板部14とボルトBとの間で所定の距離を確保できるため、近傍に配置された他のパイプとの接触を回避する上で有利となる。
【0022】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態のパイプクランプ10Aは、一方の取り付け板部18の内面1802と他方の取り付け板部20の内面2002とが重ね合わされ、第1湾曲部1002、第2湾曲部1004、第1屈曲部1602、および第2屈曲部1604が形成されていたが、第2の実施の形態のパイプクランプ10Bは、第1湾曲部1002および第2湾曲部1004が形成され、第1屈曲部1602および第2屈曲部1604が形成されていない構成となっている。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な個所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態と異なった個所について重点的に説明する。
【0023】
図7に示すように、第2の実施の形態のパイプクランプ10Bは、一方の取り付け板部48の内面4802と他方の取り付け板部50の内面5002とが重ね合わされ、第1湾曲部1002および第2湾曲部1004が形成され、一対の取り付け板部46の内面が重ね合わされた箇所はボルト挿通孔22側の端部まで直線状に延在している。
このような本実施の形態のパイプクランプ10Bを成型する金型30では、上型32の型面32Aに、円弧状上型部3204、第1湾曲上型部3206が設けられ、下型34の型面34Aに、円弧状下型部3402、第2湾曲下型部3404が設けられ、一対の取り付け板部46を押圧する箇所は直線状に延在している。
パイプクランプ10Bによるパイプ12の取り付け方法については、第1の実施の形態と同様である。
【0024】
このような本実施の形態のパイプクランプ10Bによっても、第1の実施の形態と同様の効果を奏する。
また、パイプ12の下方にブラケット26の被取り付け面2602が配置されていない場合、第1屈曲部1602および第2屈曲部1604を形成せずに取り付け可能である。したがって、本実施の形態のパイプクランプ10Bは容易に成型する上で有利となる。
【符号の説明】
【0025】
10A、10B パイプクランプ
1002A、1004A 頂部
12 パイプ
14 円弧状板部
16、46 一対の取り付け板部
18、48 一方の取り付け板部
1804 第1上平坦部
1806 上傾斜部
1808 第2上平坦部
20、50 他方の取り付け板部
2004 第1下平坦部
2006 下傾斜部
2008 第2下平坦部
22 ボルト挿通孔
26 ブラケット
2602 被取り付け面
30 金型
32 上型
32A 型面
3202 支軸部
3204 円弧状上型部
3206 第1湾曲上型部
3208 第1屈曲上型部
3210 第2屈曲上型部
3212 第1上平坦型部
3214 上傾斜型部
3216 第2上平坦型部
34 下型
34A 型面
3402 円弧状下型部
3404 第2湾曲下型部
3406 第1屈曲下型部
3408 第2屈曲下型部
3410 第1下平坦型部
3412 下傾斜型部
3414 第2下平坦型部