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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066698
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】車両用スペアタイヤキャリア構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 43/04 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
B62D43/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176292
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】岩井 宏介
(57)【要約】
【課題】スペアタイヤの容易な積み降ろしを可能にする車両用スペアタイヤキャリア構造を提供することを目的とする。
【解決手段】キャリア構造100は、スペアタイヤ108を下方から支えるキャリア本体118と、スペアタイヤ108の後方にて車幅方向に延びるキャリア後端部材120と、キャリア本体118の前側でキャリア本体118をフロアパネル106に回転可能につなぐ前側ヒンジ114a、114bと、キャリア後端部材120の両端でキャリア後端部材120をキャリア本体118に回転可能につなぐ一対の後側ヒンジ126a、126bと、を備える。一対の後側ヒンジ126a、126bそれぞれは、キャリア本体118に一体的に設けられたヒンジ基部134と、ヒンジ基部134を車幅方向に貫通しキャリア後端部材120が接続されるヒンジ孔136と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後部のフロアパネルの下面に沿ってスペアタイヤを搭載する車両用スペアタイヤキャリア構造において、
当該車両用スペアタイヤキャリア構造は、
前記スペアタイヤを下方から支えるキャリア本体と、
前記スペアタイヤの後方にて車幅方向に延びるキャリア後端部材と、
前記キャリア本体の前側で該キャリア本体を前記フロアパネルに回転可能につなぐ前側ヒンジと、
前記キャリア後端部材の両端で該キャリア後端部材を前記キャリア本体に回転可能につなぐ一対の後側ヒンジと、
を備え、
前記一対の後側ヒンジそれぞれは、
前記キャリア本体に一体的に設けられたヒンジ基部と、
前記ヒンジ基部を車幅方向に貫通し前記キャリア後端部材が接続されるヒンジ孔と、
を有することを特徴とする車両用スペアタイヤキャリア構造。
【請求項2】
前記一対の後側ヒンジは、前記スペアタイヤを後方に投影した範囲内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用スペアタイヤキャリア構造。
【請求項3】
前記キャリア後端部材は、
前記一対の後側ヒンジそれぞれから上方に延びる一対の取付部と、
前記スペアタイヤの後方にて前記一対の取付部に差し渡される中央領域と、
前記一対の取付部それぞれから突出して前記一対の後側ヒンジそれぞれのヒンジ孔に挿入されるヒンジ軸と、
を有し、
前記中央領域は、車両後方に凸に曲がっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用スペアタイヤキャリア構造。
【請求項4】
前記一対の後側ヒンジそれぞれはさらに、
前記ヒンジ基部の車両後側の下縁を湾曲させた湾曲部と、
前記湾曲部に沿って設けられて車幅方向に突出するフランジと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用スペアタイヤキャリア構造。
【請求項5】
前記キャリア後端部材はさらに、前記一対の取付部それぞれの下端から前記一対の後側ヒンジ側に突出するストッパを有し、
前記一対の後側ヒンジはさらに、前記ストッパが前記ヒンジ軸を中心にして回転する範囲を切り欠いた回転規制部を有することを特徴とする請求項3に記載の車両用スペアタイヤキャリア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スペアタイヤキャリア構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のスペアタイヤは、車両後部のフロアパネルの下側にスペアタイヤキャリアを使用して水平な姿勢で搭載されることが多い。例えば、特許文献1の図1には、スペアタイヤキャリア1が開示されている。スペアタイヤキャリア1は、主にパイプ状の材料から形成され、前端側がヒンジによってフロアパネル2に接続されていて、フロアパネル2との間にスペアタイヤSTを挟持することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-91395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスペアタイヤキャリア1は、後方側の部位(後端部)がスペアタイヤSTに沿ってフロアパネル2側に立ち上がっている。この高端部は、走行中にスペアタイヤSTを後方から支えることの他、積降作業時や点検作業時にスペアタイヤキャリア1を開放した際にスペアタイヤSTが滑り落ちることを防いでいる。
【0005】
しかしながら、上記の高端部が存在することで、ユーザはスペアタイヤSTを積み降ろすためには腰をかがめた低い姿勢でスペアタイヤを持ち上げる必要があり、労力を要するおそれがある。また、スペアタイヤキャリア1は、リアバンパ等との間にスペアタイヤSTが通せる程度の開口部を形成するところ、スペアタイヤキャリア1が地面に接触してしまえばそれ以上に開くことは出来ないため、リアバンパの下端を高く設定するなどの対策が必要になる場合がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、スペアタイヤの容易な積み降ろしを可能にする車両用スペアタイヤキャリア構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用スペアタイヤキャリア構造の代表的な構成は、車両後部のフロアパネルの下面に沿ってスペアタイヤを搭載する車両用スペアタイヤキャリア構造において、当該車両用スペアタイヤキャリア構造は、スペアタイヤを下方から支えるキャリア本体と、スペアタイヤの後方にて車幅方向に延びるキャリア後端部材と、キャリア本体の前側でキャリア本体をフロアパネルに回転可能につなぐ前側ヒンジと、キャリア後端部材の両端でキャリア後端部材をキャリア本体に回転可能につなぐ一対の後側ヒンジと、を備え、一対の後側ヒンジそれぞれは、キャリア本体に一体的に設けられたヒンジ基部と、ヒンジ基部を車幅方向に貫通しキャリア後端部材が接続されるヒンジ孔と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スペアタイヤの容易な積み降ろしを可能にする車両用スペアタイヤキャリア構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例に係る車両用スペアタイヤキャリア構造の概要を示した図である。
図2図1(b)のキャリア構造を示した斜視図である。
図3図2(b)のキャリア後端部材を拡大して示した図である。
図4図2(a)のキャリア構造を上方から見た概略図である。
図5図1(b)のキャリア構造のスペアタイヤの積降作業を示した図である。
図6図2(a)のキャリア構造を後方から見た概略図である。
図7図6(b)の後側ヒンジに対するキャリア後端部材の動作を示した図である。
図8図4のキャリア後端部材の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る車両用スペアタイヤキャリア構造は、車両後部のフロアパネルの下面に沿ってスペアタイヤを搭載する車両用スペアタイヤキャリア構造において、当該車両用スペアタイヤキャリア構造は、スペアタイヤを下方から支えるキャリア本体と、スペアタイヤの後方にて車幅方向に延びるキャリア後端部材と、キャリア本体の前側でキャリア本体をフロアパネルに回転可能につなぐ前側ヒンジと、キャリア後端部材の両端でキャリア後端部材をキャリア本体に回転可能につなぐ一対の後側ヒンジと、を備え、一対の後側ヒンジそれぞれは、キャリア本体に一体的に設けられたヒンジ基部と、ヒンジ基部を車幅方向に貫通しキャリア後端部材が接続されるヒンジ孔と、を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、スペアタイヤを降ろすとき、前側ヒンジでキャリア本体を下降させたうえ、後側ヒンジでキャリア後端部材を後方に開放させることが可能になっている。この構成によれば、スペアタイヤを後方に滑らせるように引っ張り降ろしたり、スペアタイヤを前方に押し上げるように積んだりすることが可能であり、スペアタイヤを持ち上げる動作が不要になっている。よって、上記構成によれば、スペアタイヤの積降作業が容易であって、ユーザの労力を抑えることができる。さらに、上記構成によれば、キャリア後端部材を後方に倒すことでフロアパネルおよびリアバンパとの間に開口部を大きく形成することができるため、リアバンパの下端を調整する必要が無くなり、リアバンパの意匠の自由度の向上に資することができる。
【0012】
上記の一対の後側ヒンジは、スペアタイヤを後方に投影した範囲内に配置されるとよい。
【0013】
上記構成によれば、一対の後側ヒンジにはキャリア後端部材が接続されているため、スペアタイヤは一対の後側ヒンジおよびキャリア後端部材の上を通過することになる。この構成によれば、キャリア後端部材をスペアタイヤの積降作業時のガイドとして利用することが可能になり、スペアタイヤの円滑な積み降ろしを実現することができる。
【0014】
上記のキャリア後端部材は、一対の後側ヒンジそれぞれから上方に延びる一対の取付部と、スペアタイヤの後方にて一対の取付部に差し渡される中央領域と、一対の取付部それぞれから突出して一対の後側ヒンジそれぞれのヒンジ孔に挿入されるヒンジ軸と、を有し、中央領域は、車両後方に凸に曲がっていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、キャリア後端部材の中央領域が後方に凸の形状になっていることで、キャリア後端部材を開放させるときに中央領域の回転半径を大きくし、中央領域とリアバンパとの間に開口部をより大きく形成することができる。よって、上記構成によっても、スペアタイヤの円滑な積降作業を実現することが可能になるとともに、リアバンパの意匠の自由度の向上に資することができる。
【0016】
上記の一対の後側ヒンジそれぞれはさらに、ヒンジ基部の車両後側の下縁を湾曲させた湾曲部と、湾曲部に沿って設けられて車幅方向に突出するフランジと、を有してもよい。
【0017】
上記の後側ヒンジの湾曲部およびフランジは、キャリア本体を下降させたときの接地部として利用することができる。特に、湾曲部がなだらかに湾曲していることで地面との接触面積が増えるため、地面に接触したときの衝撃を抑えると共に、より安定して接地することが可能になる。
【0018】
上記のキャリア後端部材はさらに、一対の取付部それぞれの下端から一対の後側ヒンジ側に突出するストッパを有し、一対の後側ヒンジはさらに、ストッパがヒンジ軸を中心にして回転する範囲を切り欠いた回転規制部を有してもよい。
【0019】
上記構成のストッパおよび回転規制部によれば、キャリア後端部材の回転半径を規制することができる。よって、例えばキャリア後端部材のスペアタイヤへの接触や、キャリア後端部材の後方への過度の回転などを防ぐことが可能になる。
【実施例0020】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施例に係る車両用スペアタイヤキャリア構造(以下、キャリア構造100)の概要を示した図である。図1(a)は、当該キャリア構造100を搭載する車両102を後方から示した図である。以下、図1その他の本願のすべての図面において、車両前後方向をそれぞれ矢印F(Forward)、B(Backward)、車幅方向の左右をそれぞれ矢印L(Leftward)、R(Rightward)、車両上下方向をそれぞれ矢印U(Upward)、D(Downward)で例示する。
【0022】
キャリア構造100は、フロアパネル106(図1(b)参照)の下面に沿って車両102にスペアタイヤ108を搭載する部材であって、本実施例では車両102の後部のリアバンパ104の前側に配置されることを想定している。
【0023】
図1(b)は、図1(a)の車両102を下方から示した図である。当該キャリア構造100は、フロアパネル106に沿ってスペアタイヤ108を水平な姿勢で車両102に搭載する。キャリア構造100の前側は前側ヒンジ114a、114bでクロスメンバ110に接続され、後側はフック116を利用してクロスメンバ112に懸架されている。
【0024】
図2は、図1(b)のキャリア構造100を示した斜視図である。図2(a)は、図1(b)のスペアタイヤ108を搭載した状態のキャリア構造100を上方から示した斜視図である。キャリア構造100は、多くの部分がパイプ状の材料で形成され、スペアタイヤ108の下方、前方、側方、および後方を囲うように搭載することが可能になっている。
【0025】
図2(b)は、図2(a)のキャリア構造100を単独で示した斜視図である。キャリア構造100は、大きく分けて、スペアタイヤ108(図2(a)参照)を下方から支えるキャリア本体118と、スペアタイヤ108の後方にて車幅方向に延びるキャリア後端部材120とを含んで構成されている。特に、キャリア後端部材120は可倒式であって、キャリア本体118に対して後方に倒すことが可能になっている。
【0026】
キャリア本体118は、前後方向に延びる左右一対の前後部材122a、122bと、車幅方向に延びる横部材124a、124bを交差するよう組み合わせて構成されている。
【0027】
前後部材122a、122bは、スペアタイヤ108を左右の側方から支える。横部材124aは、スペアタイヤ108(図2(a)参照)の中心を通るよう前後部材122a、122bにかけ渡されていて、スペアタイヤ108を下方から支える。横部材124bは、スペアタイヤ108の前側に沿って前後部材122a、122bにかけ渡されていて、スペアタイヤ108を前方から支える。
【0028】
前後部材122a、122bそれぞれの前端には、一対の前側ヒンジ114a、114bが設けられている。前側ヒンジ114a、114bはブラケット等を介してクロスメンバ110(図1(b)参照)に接続され、キャリア本体118をフロアパネル106に対して回転可能につなぐ。
【0029】
前後部材122a、122bそれぞれの後端には、一対の後側ヒンジ126a、126bが設けられている。後側ヒンジ126a、126bは、キャリア本体118とキャリア後端部材120の両端とを回転可能につなぐ。これにより、キャリア後端部材120は、スペアタイヤ108の積降作業時に開閉することが可能になっている。
【0030】
図3は、図2(b)のキャリア後端部材120を拡大して示した図である。図3(a)は、キャリア後端部材120を後方から示した斜視図である。
【0031】
キャリア後端部材120は、大きく分けて、パイプ部材から形成された中央領域128と、両端に設けられた一対の取付部130a、130bとを含んで構成されている。
【0032】
中央領域128は、スペアタイヤ108の後方にて一対の取付部130a、130bに車幅方向に差し渡されていて、スペアタイヤ108を後方から支える。中央領域128のさらに中央には、フック116(図1(b)参照)に引っ掛けられる凸部132が形成されている。凸部132は、後方に突出するよう屈曲して形成されている。
【0033】
取付部130a、130bは、キャリア後端部材120の閉鎖状態において後側ヒンジ126a、126bそれぞれから上方に延びるよう設けられている。本実施例では、取付部130a、130bは、パイプ状の中央領域128の両端を屈曲させたうえ、板金状の部材を接合することで形成されている。
【0034】
図3(b)は、図3(a)の後側ヒンジ126aを拡大して示した図である。後側ヒンジ126aは、基礎の部分としてヒンジ基部134を有している。ヒンジ基部134は、キャリア本体118の前後部材122aの後端に板金状の部材を接合することで、キャリア本体118に一体的に形成されている。
【0035】
ヒンジ基部134には、キャリア後端部材120が接続される部位として、ヒンジ孔136が設けられている。ヒンジ孔136は、ヒンジ基部134に車幅方向に貫通するよう形成されている。
【0036】
キャリア後端部材120の取付部130aには、ヒンジ軸138が設けられている。ヒンジ軸138は、取付部130aから車幅方向外側に突出してヒンジ孔136に挿入されている。
【0037】
ヒンジ基部134および取付部130aには、回転防止孔140、142も設けられている。回転防止孔140、142は、不図示のかんぬき等の部材が挿し込まれ、キャリア後端部材120の回転を防止するために使用される。回転防止孔140はヒンジ基部134のヒンジ孔136の下方に設けられ、回転防止孔142は取付部130aのヒンジ軸138の下方に設けられていて、それぞれ車幅方向に貫通している。
【0038】
回転防止孔140、142は、キャリア後端部材120の閉鎖時、すなわち取付部130aがヒンジ基部134に対して上方に延びた姿勢において重なるように設けられている。なお、回転防止孔140、142は、取付部130a、130bの両方に設けてもよいが、一方にのみ設けることでもその機能を発揮することができる。
【0039】
図4は、図2(a)のキャリア構造100を上方から見た概略図である。上述したように、キャリア本体118部では、前後部材122a、122bが前後方向にのび、横部材124a、124bが車幅方向に延びている。
【0040】
一対の後側ヒンジ126a、126bは、スペアタイヤ108を車両後方に投影した範囲内に配置されている。すなわち、後側ヒンジ126aは、互いの距離がスペアタイヤ108の径よりも狭くなるよう配置されている。
【0041】
一対の後側ヒンジ126a、126bにはキャリア後端部材120が接続されているため、上記構成によれば、スペアタイヤ108は積み降ろす際に一対の後側ヒンジ126a、126bおよびキャリア後端部材120の上を通過することになる。よって、キャリア後端部材120をスペアタイヤ108の積降作業時のガイドとして利用することが可能になり、例えばスペアタイヤ108を降ろすときにキャリア後端部材120に沿って滑り降ろすように引き抜くなど、スペアタイヤ108の円滑な積降作業を実現することが可能になる。
【0042】
図5は、図1(b)のキャリア構造100のスペアタイヤ108の積降作業を示した図である。図5(a)は、図1(b)のキャリア構造100を車両左側から示した図である。
【0043】
上述したように、キャリア構造100は、スペアタイヤ108の搭載時において、キャリア後端部材120を車両に固定されたフック116に引っ掛けることで、スペアタイヤ108を懸架している。
【0044】
図5(b)は、図5(a)のキャリア本体118を下降させた図である。キャリア構造100は、スペアタイヤ108を降ろすとき、まずキャリア後端部材120をフック116から外し、前側ヒンジ114aでキャリア本体118を回転させるように下降させて地面に接地させる。
【0045】
図5(c)は、図5(b)のキャリア後端部材120を開放した図である。キャリア後端部材120は、後側ヒンジ126aでキャリア本体118から後方に倒すようにして開放することができる。なお、上記図3(b)を参照して説明したように、回転防止孔140、142にかんぬきを使用している場合は、そのかんぬきを取り外す操作を行う。
【0046】
キャリア後端部材120は、地面に接地させるように後方に倒すことができる。キャリア後端部材120が可倒式であることで、キャリア後端部材120が不倒式の場合に比べて、キャリア構造100を車両後方に延長させることができる。これによって、キャリア構造100はリアバンパ104の下方にまで到達するため、ユーザが車両後方からスペアタイヤ108を引き降ろしたり積み入れたりしやすく、作業効率が向上する。
【0047】
上記説明したように、当該キャリア構造100では、スペアタイヤ108を降ろすとき、前側ヒンジ114a、114bでキャリア本体118を下降させたうえ、後側ヒンジ126a、126bでキャリア後端部材120を後方に開放させることができる。この構成によって、スペアタイヤ108を後方に滑らせるように引っ張り降ろしたり、スペアタイヤ108を前方に押し上げるように積んだりすることが可能になっている。すなわち、当該キャリア構造100では、スペアタイヤ108を持ち上げる動作が不要になっていて、スペアタイヤ108の積降作業が容易であって、ユーザの労力を抑えることができる。
【0048】
当該キャリア構造100では、キャリア後端部材120を後方に倒すことで、フロアパネル106およびリアバンパ104との間に開口部E1を大きく形成することができる。そのため、リアバンパ104の下端の高さを調整する必要が無くなっている。よって、リアバンパ104の意匠の自由度が向上していて、例えばリアバンパ104をより下方に延ばしてマフラ等の下回り部品の後方からの視認角を減らすなど、車両の美観の向上に資することができる。
【0049】
また、キャリア後端部材120が可倒式であることで、キャリア本体118のフロアパネル106に対する傾斜が緩やかな状態であっても、スペアタイヤ108の積み降ろしが可能になる。そのため、スペアタイヤ108をキャリア本体118に押し上げるときのユーザの労力を減らすことができる他、車高の低い車種にも実装することが可能になる。
【0050】
さらに、キャリア後端部材120が可倒式であれば、スペアタイヤ108は立ち上がったキャリア後端部材120を乗り越える必要が無い。すなわち、当該キャリア構造100では、キャリア後端部材120の高さ寸法がスペアタイヤ108の積み降ろしを邪魔しない。そのため、例えばキャリア後端部材120の凸部132をより高い位置に形成することもでき、フック116を短くして当該フック116の固定ボルトに与える負荷を減らすなど、フック116の耐久性を向上させることも可能になる。
【0051】
図6は、図2(a)のキャリア構造100を後方から見た概略図である。図6(a)は、キャリア後端部材120を閉鎖した状態の図である。キャリア後端部材120の閉鎖時において、中央領域128は後側ヒンジ126a、126bよりも高い位置に存在している。
【0052】
再び図4を参照する。キャリア後端部材120の中央領域128は、スペアタイヤ108に沿って全体的に車両後方に凸になるよう曲がった形に形成されている。特に、本実施例では、中央領域128は、凸部132を頂点として全体的に三角形を描くような直線的な形になっている。
【0053】
図6(b)は、図6(a)のキャリア後端部材120を開放した状態の図である。上述したキャリア後端部材120の中央領域128が後方に凸の形状になっていることで、キャリア後端部材120を開放させたとき、中央領域128の回転半径、すなわち中央領域128の移動量D1がより大きく確保されている。
【0054】
上記構成によって、中央領域128とリアバンパ104(図5(b)参照)との間には、より大きな開口部E1を形成することができる。よって、スペアタイヤ108の積み降ろしの際の間口が広くなり、スペアタイヤ108の円滑な積降作業を実現することが可能になる。また、開口部E1が大きいことで、スペアタイヤ108がリアバンパ104に干渉するおそれが減るため、リアバンパ104の意匠の自由度のさらなる向上に資することもできる。
【0055】
再び図3(b)を参照する。後側ヒンジ126aには、湾曲部144が形成されている。湾曲部144は、ヒンジ基部134の車両後側の下縁を湾曲させて形成されている。
【0056】
後側ヒンジ126aには、湾曲部144を含んだヒンジ基部134の縁に沿ってフランジ146が設けられている。フランジ146は、ヒンジ基部134の縁から車幅方向の外側に向かって突出するよう形成されている。
【0057】
湾曲部144およびフランジ146は、キャリア本体118を下降させたときの接地部として利用することができる。例えば、図5(c)に示したように、キャリア本体118を下降させたとき、後側ヒンジ126aは地面に接触する。このとき、図3(b)の湾曲部144がなだらかに湾曲していることで地面との接触面積が増えるため、地面に接触したときの衝撃を抑えると共に、より安定して接地することが可能になる。
【0058】
図7は、図6(b)の後側ヒンジ126aに対するキャリア後端部材120の動作を示した図である。図7(a)は、キャリア後端部材120の閉鎖時の状態を示した図である。
【0059】
キャリア後端部材120のうち、取付部130aの下端にはストッパ148が設けられている。ストッパ148は、車幅方向の外側の後側ヒンジ126a側に突出していて、後側ヒンジ126aのヒンジ基部134に干渉する構成になっている。
【0060】
ヒンジ基部134には、回転規制部150が形成されている。回転規制部150は、ヒンジ基部134の下部のうち、ストッパ148がヒンジ軸138を中心にして回転する範囲を切り欠くことで形成されている。
【0061】
ストッパ148は、キャリア後端部材120を起立させたとき、回転規制部150の後方の縁に干渉し、キャリア後端部材120が前方に倒れることを規制する。これによって、キャリア後端部材120がスペアタイヤ108(図3(a)参照)に接触することを防ぐと共に、キャリア後端部材120の姿勢を安定させて凸部132をフック116に引っ掛ける作業を行いやすくすることができる。
【0062】
図7(b)は、図7(a)のキャリア後端部材120の開放時の状態を示した図である。ストッパ148は、キャリア後端部材120を後方に最大限に倒したとき、ヒンジ基部134のうち前後部材122aの後端の付近に干渉し、キャリア後端部材120の後方へのさらなる回転を制限する。
【0063】
上記の通り、ストッパ148および回転規制部150によれば、キャリア後端部材120の回転半径を規制することができる。よって、例えばキャリア後端部材120のスペアタイヤ108への接触や、キャリア後端部材120の後方への過度の回転などを防ぐことが可能になる。
【0064】
キャリア後端部材120は、図5(b)に示したようにキャリア本体118を下降させてヒンジ基部134を接地させたとき、自重で後方に倒れる構成とすることができる。
【0065】
(変形例)
図8は、図4のキャリア後端部材120の変形例(キャリア後端部材160)を示した図である。図8では、上記実施例にて既に説明した構成要素と同じものには同じ符号を付していて、これによって既出の構成要素については説明を省略する。また、以下の説明において、既に説明した構成要素と同じ名称のものについては、例え異なる符号を付していても、特に明記しない場合は同じ機能を有しているものとする。
【0066】
図8に示すように、キャリア後端部材160の中央領域162は、スペアタイヤ108に沿って全体的に車両後方に凸の円弧を描くように湾曲した形に形成されている。
【0067】
当該キャリア後端部材160においても、図6(b)のキャリア後端部材120と同様に、中央領域162が後方に凸の形状になっていることで、キャリア後端部材160を開放させたとき、中央領域162の回転半径、すなわち移動量D1(図6(b)参照)が大きくなっている。
【0068】
当該キャリア構造部材160においても、中央領域162とリアバンパ104との間により大きな開口部E1を形成することができる。よって、当該構成においても、スペアタイヤ108の積み降ろしの際の間口が広くなり、スペアタイヤ108の円滑な積降作業を実現することが可能になる。また、開口部E1が大きいことで、スペアタイヤ108がリアバンパ104に干渉するおそれが減るため、当該構成によってもリアバンパ104の意匠の自由度のさらなる向上に資することができる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、車両用スペアタイヤキャリア構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
100…キャリア構造、102…車両、104…リアバンパ、106…フロアパネル、108…スペアタイヤ、110…クロスメンバ、112…クロスメンバ、114a、114b…前側ヒンジ、116…フック、118…キャリア本体、120…キャリア後端部材、122a、122b…前後部材、124a、124b…横部材、126a、126b…後側ヒンジ、128…中央領域、130a、130b…取付部、132…凸部、134…ヒンジ基部、136…ヒンジ孔、138…ヒンジ軸、140、142…回転防止孔、144…湾曲部、146…フランジ、148…ストッパ、150…回転規制部、E1…開口部、160…キャリア後端部材、162…中央領域
図1
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図7
図8