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特開2024-66699樹脂成形品の製造方法、及び、原料の評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066699
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法、及び、原料の評価方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/72 20060101AFI20240509BHJP
   B29B 9/12 20060101ALI20240509BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240509BHJP
【FI】
B29B7/72
B29B9/12
B29C48/92
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176293
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】小西 規文
(72)【発明者】
【氏名】田中 章博
(72)【発明者】
【氏名】朴 峻秀
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F201AB13
4F201AM23
4F201AP11
4F201AP12
4F201AQ01
4F201AR12
4F201AR13
4F201BA01
4F201BA02
4F201BC01
4F201BC37
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK73
4F201BK74
4F201BL08
4F201BL25
4F201BL45
4F207AB13
4F207AM23
4F207AP11
4F207AP12
4F207AQ01
4F207AR12
4F207AR13
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK12
4F207KM06
4F207KM13
(57)【要約】
【課題】樹脂成形品におけるドローレゾナンスの発生を抑制可能な樹脂成形品の製造方法、及び、原料の評価方法を提供する。
【解決手段】樹脂成形品の製造方法は、各々が樹脂とフィラーとを含む複数種類の原料を準備し、複数種類の原料の各々に関し、原料を溶融することによって製造された溶融材料を連続的に吐出し、吐出された溶融材料を引き取ることによって樹脂成形品を製造し、互いに異なる引取り速度で溶融材料を引き取ることによって製造された複数の樹脂成形品の各々に関して、外形と相関を有する値の変化を測定し、値の変化に関する測定結果に基づいて複数種類の原料から選択された原料を用いることによって樹脂成形品を製造する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が樹脂とフィラーとを含む複数種類の原料を準備し、
前記複数種類の原料の各々に関し、
原料を溶融することによって製造された溶融材料を連続的に吐出し、
吐出された前記溶融材料を引き取ることによって樹脂成形品を製造し、
互いに異なる引取り速度で前記溶融材料を引き取ることによって製造された複数の樹脂成形品の各々に関して、外形と相関を有する値の変化を測定し、
前記値の変化に関する測定結果に基づいて前記複数種類の原料から選択された原料を用いることによって前記樹脂成形品を製造する、樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記複数種類の原料のうち、前記値の変化の幅が所定範囲に収まる前記引取り速度の最大値が最も大きい原料が、前記樹脂成形品の製造に用いられる原料として選択される、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
前記フィラーが導電性フィラーを含み、
前記複数種類の原料の各々に関し、前記複数の樹脂成形品の各々の電気抵抗値をさらに測定し、
前記値の変化に関する測定結果、及び、前記電気抵抗値の測定結果に基づいて、前記複数種類の原料から前記樹脂成形品の製造に用いられる原料が選択される、請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
樹脂とフィラーとを含む原料を溶融することによって製造された溶融材料を連続的に吐出し、
吐出された前記溶融材料を引き取ることによって樹脂成形品を製造し、
互いに異なる引取り速度で前記溶融材料を引き取ることによって製造された複数の樹脂成形品の各々に関して、外形と相関を有する値の変化を測定し、
前記値の変化に関する測定結果に基づいて前記原料を評価する、原料の評価方法。
【請求項5】
前記値の変化の幅が所定範囲に収まる前記引取り速度の最大値に基づいて前記原料を評価する、請求項4に記載の原料の評価方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の製造方法、及び、原料の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-130289号公報(特許文献1)は、ペレット製造システムを開示する。このペレット製造システムにおいては、ストランドの径が測定され、測定された径に基づいてストランドカッターにおけるストランドの引取り速度が制御される。そして、ストランドカッターによってストランドを切断することによりペレットが製造される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-130289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂とフィラーとを含む原料を用いて樹脂成形品を製造すると、いわゆるドローレゾナンスが発生する場合がある。樹脂成形品の品質の観点からドローレゾナンスの発生は好ましくない。上記特許文献1においては、このような問題の解決手段が開示されていない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、樹脂成形品におけるドローレゾナンスの発生を抑制可能な樹脂成形品の製造方法、及び、原料の評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従う樹脂成形品の製造方法は、各々が樹脂とフィラーとを含む複数種類の原料を準備し、複数種類の原料の各々に関し、原料を溶融することによって製造された溶融材料を連続的に吐出し、吐出された溶融材料を引き取ることによって樹脂成形品を製造し、互いに異なる引取り速度で溶融材料を引き取ることによって製造された複数の樹脂成形品の各々に関して、外形と相関を有する値の変化を測定し、値の変化に関する測定結果に基づいて複数種類の原料から選択された原料を用いることによって樹脂成形品を製造する。
【0007】
この樹脂成形品の製造方法においては、互いに異なる引取り速度で溶融材料を引き取ることによって製造された複数の樹脂成形品の各々に関して外形と相関を有する値の変化が測定され、値の変化に関する測定結果に基づいて複数種類の原料から選択された原料を用いることによって樹脂成形品が製造される。したがって、この樹脂成形品の製造方法によれば、引取り速度毎の上記値(例えば、径)の変化が考慮された上で選択された原料を用いて樹脂成形品が製造されるため、樹脂成形品におけるドローレゾナンスの発生を抑制することができる。
【0008】
上記樹脂成形品の製造方法においては、複数種類の原料のうち、上記値の変化の幅が所定範囲に収まる引取り速度の最大値が最も大きい原料が、樹脂成形品の製造に用いられる原料として選択されてもよい。
【0009】
この樹脂成形品の製造方法によれば、上記値の変化の幅が所定範囲に収まる引取り速度の最大値が最も大きい原料が樹脂成形品の製造に用いられる原料として選択されるため、比較的速い引取り速度で所定品質以上の樹脂成形品を製造することができる。
【0010】
上記樹脂成形品の製造方法においては、フィラーが導電性フィラーを含み、複数種類の原料の各々に関し、複数の樹脂成形品の各々の電気抵抗値をさらに測定し、上記値の変化に関する測定結果、及び、電気抵抗値の測定結果に基づいて、複数種類の原料から樹脂成形品の製造に用いられる原料が選択されてもよい。
【0011】
この樹脂成形品の製造方法によれば、引取り速度毎の上記値の変化、及び、電気抵抗値の両方が考慮された上で樹脂成形品の製造に用いられる原料が選択されるため、ドローレゾナンスの発生が抑制され、かつ、電気抵抗値が抑制された樹脂成形品を製造することができる。
【0012】
本発明の他の局面に従う原料の評価方法は、樹脂とフィラーとを含む原料を溶融することによって製造された溶融材料を連続的に吐出し、吐出された溶融材料を引き取ることによって樹脂成形品を製造し、互いに異なる引取り速度で溶融材料を引き取ることによって製造された複数の樹脂成形品の各々に関して、外形と相関を有する値の変化を測定し、値の変化に関する測定結果に基づいて原料を評価する。
【0013】
この原料の評価方法においては、互いに異なる引取り速度で溶融材料を引き取ることによって製造された複数の樹脂成形品の各々に関して外形と相関を有する値の変化が測定され、値の変化に関する測定結果に基づいて原料が評価される。したがって、この原料の評価方法によれば、引取り速度毎の上記値の変化に関し原料毎に評価することができる。
【0014】
上記原料の評価方法は、上記値の変化の幅が所定範囲に収まる引取り速度の最大値に基づいて原料を評価してもよい。
【0015】
この原料の評価方法によれば、上記値の変化の幅が所定範囲に収まる引取り速度の最大値に関し原料毎に評価することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂成形品におけるドローレゾナンスの発生を抑制可能な樹脂成形品の製造方法、及び、原料の評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】製造ラインの一例を模式的に示す図である。
図2】各原料候補の評価及び原料選択の手順を示すフローチャートである。
図3図2のステップS120のタイミングで製造ラインが行なう処理手順を示すフローチャートである。
図4】原料A1の外径変動を示す図である。
図5】原料A2の外径変動を示す図である。
図6】原料A3の外径変動を示す図である。
図7】原料A4の外径変動を示す図である。
図8】原料A5の外径変動を示す図である。
図9】原料A1における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。
図10】原料A2における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。
図11】原料A3における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。
図12】原料A4における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。
図13】原料A5における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。
図14】具体例1における各原料の引取り速度毎の結果を纏めた図である。
図15】原料B1における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。
図16】原料B2における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。
図17】原料B3における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。
図18】具体例2における各原料の引取り速度毎の結果を纏めた図である。
図19】製造ラインにおける製造条件(混練条件等)の決定手順を示すフローチャートである。
図20】電気抵抗値測定機を含む製造ラインの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施の形態」とも称する。)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれている。
【0019】
[1.製造ラインの構成]
図1は、本実施の形態に従う樹脂成形品の製造方法において用いられる製造ライン10の一例を模式的に示す図である。この製造ラインにおいては、例えば、導電性樹脂組成物のペレットが製造される。導電性樹脂組成物は、導電性を有する樹脂組成物であり、例えば、樹脂と導電性フィラーとを含んでいる。
【0020】
導電性樹脂組成物に含まれる樹脂としては、成形可能な樹脂であれば限定されないが熱可塑性樹脂が好ましく、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂(ホモポリマー及び共重合体)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)若しくはテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(EPE)等のフッ素系共重合体、ポリエーテルエステル等のポリエステル系共重合体、又は、ポリエーテルアミド若しくはポリエーテルエステルアミド等のポリアミド系共重合体等が用いられてもよい。また、上記したもののポリマーアロイやポリマーブレンドが用いられてもよい。その他、上記したものに限らず、少量の熱硬化性樹脂や反応性樹脂等を用いることもできる。
【0021】
導電性樹脂組成物に含まれる導電性フィラーの一例としては、導電性カーボン、白金、金、銀、銅、ニッケル、チタン及びこれらの混合物が挙げられる。導電性カーボンの一例としては、黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、カーボンナノチューブ及びこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
図1に示されるように、製造ライン10は、押出機100と、冷却水槽200と、水切り装置250と、レーザ外径測定機300と、ペレタイザ400と、コンピュータ500とを含んでいる。製造ライン10においては、製造工程の上流から下流に向かって、押出機100、冷却水槽200、水切り装置250、レーザ外径測定機300及びペレタイザ400がこの順に並んでいる。コンピュータ500は、製造ライン10における各構成要素を制御するように構成されている。
【0023】
押出機100は、例えば、二軸混練押出機によって構成される。押出機100は、例えば、内部へ原料を投入するホッパーと、原料を混練するスクリューと、内部を温めるヒータと、ストランドS1を吐出するダイとを含んでいる。ストランドS1の断面形状は、円形であってもよいし、円形でなくてもよい。ストランドS1の断面形状は、例えば、多角形であってもよい。押出機100には、例えば、樹脂及び導電性フィラーが原料として投入される。押出機100は、樹脂及び導電性フィラーを混練して、樹脂及び導電性フィラーを含む長尺状のストランドS1を連続的に吐出する。なお、押出機100においては、例えば、1回当たりの原材料の供給量、スクリューの回転数、及び、ヒータの温度が調整可能である。
【0024】
冷却水槽200は、水を貯留するように構成されている。押出機100によって吐出されたストランドS1は、冷却水槽200内の水を経て水切り装置250へ搬送される。押出機100によって連続的に吐出されるストランドS1は、冷却水槽200に貯留された水によって順次冷却される。冷却水槽200内に設けられたローラ205は、押出機100から吐出されたストランドS1が最初に接触するローラである。本明細書においては、ローラ205を通過した後のストランドS1の速度V2と、ローラ205を通過する前のストランドS1の速度V1との比(V2/V1)を「ドロー比」とも称する。製造ライン10においては、例えば、ローラ205等のローラの回転速度を調節することによって、ストランドS1の引取り速度が調節可能となっている。また、押出機100のダイの端部から水面までの長さL1を「エアギャップ」とも称する。
【0025】
水切り装置250は、冷却水槽200において冷却されたストランドS1にエアを吹き付けるように構成されている。水切り装置250を経ることによって、ストランドS1は乾燥する。
【0026】
レーザ外径測定機300は、ストランドS1の外径を順次測定するように構成されている。なお、「外径」は、本発明における「外形と相関を有する値」の一例である。例えば、ストランドS1の断面が円形でない場合であっても、レーザ外径測定機300によって測定されるストランドS1の渡り寸法が「外形と相関を有する値」とされてもよい。すなわち、ストランドS1の押出方向(搬送方向)に直交する方向へのレーザー投影等により測定されるストランドS1の渡り寸法が「外径と相関を有する値」とされてもよい。これら、ストランドS1の「外径」及び「渡り寸法」の各々は、ストランドS1の搬送方向(引取り方向)に直交する方向にストランドS1を切断した場合のストランドS1の断面の大きさ(例えば、面積、周長)と相関を有する値ということもできる。レーザ外径測定機300による測定結果は、例えば、コンピュータ500へ送信される。例えば、コンピュータ500においては、ストランドS1の各部における外径情報を参照することによって、ストランドS1の外径変動が認識される。なお、ストランドS1の外径変動とは、ストランドS1の長手方向における外径のばらつき度合いのことをいう。例えば、ストランドS1の外径変動が所定の範囲に収まっていない場合に、ストランドS1においてドローレゾナンスが発生していると判断される。
【0027】
また、製造ライン10においては、必ずしもレーザ外径測定機300が設けられなくてもよい。ストランドS1の外径変動は、例えば、製造ライン10の外部で測定されてもよい。例えば、ストランドS1の一部を切り出し、切り出されたストランドS1の外径がノギス等によって測定されてもよい。また、例えば、ストランドS1の外径のばらつきを目視又は手触りで作業者が確認することによって、ストランドS1の外径変動が所定の範囲に収まっているか否かが認識されてもよい。
【0028】
ペレタイザ400は、レーザ外径測定機300側から搬送されるストランドS1を順次切断し、ペレットP1を順次製造するように構成されている。ペレタイザ400は、例えば、回転刃と、回転刃を回転させるモータとを含み、回転刃を回転させることによってストランドS1を切断する。
【0029】
コンピュータ500は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じて製造ライン10に含まれる各構成要素の制御を行なうように構成されている。また、コンピュータ500は、製造ライン10に含まれる各構成要素と通信するように構成されている。また、コンピュータ500は、情報処理の結果を外部のディスプレイ等に出力するように構成されている。
【0030】
[2.原料の評価及び選択手順]
樹脂と導電性フィラーとを含む原料を用いてストランドS1(樹脂成形品の一例)が製造されると、製造されたストランドS1においてドローレゾナンスが発生する場合がある。ドローレゾナンスとは、製造されるストランドS1の長手方向において生じる周期的な外径の変動のことをいう。例えば、最終的に製造されるペレットP1の品質の観点から、ストランドS1においてはドローレゾナンスが発生しないことが好ましい。
【0031】
本発明者(ら)は、ストランドS1の製造に用いられる原料の種類によって、製造されるストランドS1の外径変動の度合いが変わることを見出した。より詳細には、本発明者(ら)は、ストランドS1の製造に用いられる原料の種類によって、ドローレゾナンスが発生しない範囲におけるドロー比の最大値(ストランドS1の引取り速度の最大値)が異なることを見出した。なお、一般的に、ドロー比が大きくなる程、ドローレゾナンスが発生し易くなる。
【0032】
本実施の形態に従う樹脂成形品の製造方法においては、まず、複数種類の原料の候補(以下、「原料候補」とも称する。)の各々の評価が行なわれる。具体的には、ドローレゾナンスが発生しない範囲におけるドロー比の最大値(ストランドS1の引取り速度の最大値)が原料候補毎に評価される。その後、評価結果に基づいて、複数の原料候補から、ストランドS1及びペレットP1(以下、「ストランドS1等」とも称する。)の製造に適した原料が選択される。例えば、ドローレゾナンスが発生しない範囲におけるドロー比の最大値(ストランドS1の引取り速度の最大値)が最も大きい原料候補が、ストランドS1等の製造に用いられる原料として選択される。ドロー比が大きくなる程、ストランドS1等の生産効率が高まるためである。以下、各原料候補の評価及び原料選択の手順について説明する。
【0033】
図2は、各原料候補の評価及び原料選択の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される各工程は、複数種類の原料候補が準備された状態で、例えば、作業者によって行なわれる。
【0034】
図2を参照して、作業者は、準備された複数種類の原料候補からいずれかの原料候補を選択する(ステップS100)。本実施の形態に従う樹脂成形品の製造方法においては、各原料候補の評価及び原料選択時に用いられるストランドS1の引取り速度として複数の引取り速度が予め決められている。作業者は、予め決められている複数の引取り速度のうちいずれの引取り速度でストランドS1を引き取るかを選択する(ステップS110)。
【0035】
作業者は、選択された原料候補を押出機100に投入し、選択された引取り速度でストランドS1が引き取られるように各種設定を行ない、製造ライン10を用いてストランドS1等を製造する(ステップS120)。
【0036】
図3は、図2のステップS120のタイミングで製造ライン10が行なう処理手順を示すフローチャートである。なお、原料候補を評価する段階においては、一部(引取り速度等)を除く製造条件は、予め定められたものに固定されていてもよい。図3を参照して、例えば、作業者の指示に従って、選択された原料候補が押出機100へ投入される(ステップS200)。原料が投入されると、押出機100は、樹脂と導電性フィラーとを溶融して混練し、ストランドS1(溶融材料)の吐出を開始する(ステップS210)。押出機100から吐出されたストランドS1は、引き取られ、冷却水槽200に貯留された水の中を経ることによって冷却される(ステップS220)。水の中を経たストランドS1は、水切り装置250において乾かされる(ステップS230)。
【0037】
その後、ストランドS1がレーザ外径測定機300を通過する時に、ストランドS1の外径がレーザ外径測定機300によって順次測定され、測定結果がコンピュータ500へ送信される(ステップS240)。これにより、ストランドS1の外径変動の度合いがコンピュータ500によって認識される。
【0038】
その後、ストランドS1はペレタイザ400によってペレタイズされる(ステップS250)。なお、製造ライン10における各構成要素(押出機100、冷却水槽200、水切り装置250、レーザ外径測定機300及びペレタイザ400)の制御は、例えば、コンピュータ500によって行なわれる。
【0039】
再び図2を参照して、ステップS120においてストランドS1等の製造が終了すると、作業者は、予め決められている引取り速度の全てのパターンによるストランドS1等の製造が終了したか否かを判断する(ステップS130)。予め決められている引取り速度の全てのパターンによるストランドS1等の製造が終了していないと判断されると(ステップS130においてNO)、作業者は、再びステップS110に示される工程を行なう。なお、再び行なわれるステップS110においては、未だに選択されていない引取り速度が選択される。
【0040】
一方、予め決められている引取り速度の全てのパターンによるストランドS1等の製造が終了したと判断されると(ステップS130においてYES)、作業者は、予め準備された全ての原料候補に関してストランドS1等の製造が終了したか否かを判断する(ステップS140)。予め準備された全ての原料候補に関してストランドS1等の製造が終了していないと判断されると(ステップS140においてNO)、作業者は、再びステップS100に示される工程を行なう。なお、再び行なわれるステップS100においては、未だに選択されていない原料候補が選択される。
【0041】
一方、予め準備された全ての原料候補に関してストランドS1等の製造が終了したと判断されると(ステップS140においてYES)、作業者は、各原料候補の引取り速度毎のストランドS1の外径変動を参照して各原料候補の評価を行なう(ステップS150)。例えば、各原料候補の引取り速度毎のストランドS1の外径変動を示す情報がコンピュータ500からディスプレイへ出力され、作業者は、各原料候補の引取り速度毎のストランドS1の外径変動を参照して、ドローレゾナンスが発生しない範囲における原料候補毎の引取り速度の最大値を確認する。ドローレゾナンスが発生しない範囲における引取り速度の最大値が大きい程、原料候補の評価は高くなる。作業者は、各原料候補の評価結果に基づいて、ストランドS1等の製造に使用する原料を選択する(ステップS160)。ステップS160においては、例えば、評価が最も高い原料候補が選択される。
【0042】
このように、本実施の形態に従う樹脂成形品の製造方法においては、互いに異なる引取り速度でストランドS1(溶融材料)を引き取ることによって製造された複数のストランドS1(樹脂成形品)の各々の径の変化が測定され、径の変化に関する測定結果に基づいて複数種類の原料候補から選択された原料を用いることによって樹脂成形品が製造される。したがって、本実施の形態に従う樹脂成形品の製造方法によれば、引取り速度毎の径の変化が考慮された上で選択された原料を用いて樹脂成形品が製造されるため、樹脂成形品におけるドローレゾナンスの発生を抑制することができる。
【0043】
また、本実施の形態に従う樹脂成形品の製造方法によれば、径の変化の幅が所定範囲(ドローレゾナンスとみなされない範囲)に収まる引取り速度の最大値が最も大きい原料が樹脂成形品の製造に用いられる原料として選択されるため、比較的速い引取り速度で所定品質以上の樹脂成形品を製造することができる。以下、各原料候補の評価及び原料選択の具体例について説明する。
【0044】
具体例1において、作業者は、原料A1,A2,A3,A4,A5を準備した。原料A1は、ポリプロピレンとファーネスブラックとを含んでいる。原料A2は、ポリプロピレンとアセチレンブラックとを含んでいる。原料A2におけるアセチレンブラックの濃度(X+1wt%)は、原料A1におけるファーネスブラックの濃度(Xwt%)よりも大きい。原料A3は、ポリプロピレンとアセチレンブラックとを含んでいる。原料A3におけるアセチレンブラックの濃度は、原料A2におけるアセチレンブラックの濃度と略同一である。なお、原料A3を用いたストランドS1の製造時には、原料A2を用いたストランドS1の製造時と比較して、ストランドS1の吐出量及び生産速度が小さかった。
【0045】
原料A4は、ポリプロピレンとファーネスブラックとを含んでいる。原料A4におけるファーネスブラックの濃度は、原料A1におけるファーネスブラックの濃度と略同一である。なお、原料A1を用いたストランドS1の製造に用いられた押出機(2軸)と、原料A4を用いたストランドS1の製造に用いられた押出機(2軸)とは種類が異なっていた。具体的には、A4を用いたストランドS1の製造に用いられた押出機の方が大型であった。原料A5は、ポリプロピレンとアセチレンブラックとを含んでいる。原料A5におけるアセチレンブラックの濃度は、原料A2,A3の各々におけるアセチレンブラックの濃度と略同一である。なお、原料A5を用いたストランドS1の製造に用いられた押出機(2軸)と、原料A2,A3を用いたストランドS1の製造に用いられた押出機(2軸)とは種類が異なっていた。具体的には、A5を用いたストランドS1の製造に用いられた押出機の方が大型であった。
【0046】
具体例1においては、引取り速度の設定値として、「1」、「1.5」、「2」、「2.5」及び「3」が用いられた。引取り速度の設定値「1」、「1.5」、「2」、「2.5」及び「3」は、ドロー比「約6.3」、「約9.4」、「約12.6」、「約15.8」及び「約19」にそれぞれ対応している。作業者は、各原料に関して、複数の引取り速度の少なくとも一部を用いて、複数のストランドS1を製造した。製造された各ストランドS1における外径の変動等に関し次に説明する。
【0047】
図4は、原料A1の外径変動を示す図である。図4を参照して、横軸はストランドS1の長手方向の位置を示し、縦軸はストランドS1の外径(幅方向の長さ)を示す。折れ線T1は引取り速度の設定値が「1」である場合の外径変動を示し、折れ線T2は引取り速度が「1.5」である場合の外径変動を示す。折れ線T3は引取り速度の設定値が「2」である場合の外径変動を示し、折れ線T4は引取り速度の設定値が「3」である場合の外径変動を示す。折れ線T1,T2,T3における外径変動は小さく、引取り速度の設定値が「1」、「1.5」及び「2」の各々である場合においてはドローレゾナンスが発生していないことが分かる。一方、折れ線T4における外径変動は大きく、引取り速度の設定値が「3」である場合においてはドローレゾナンスが発生していることが分かる。
【0048】
図5は、原料A2の外径変動を示す図である。図5を参照して、横軸はストランドS1の長手方向の位置を示し、縦軸はストランドS1の外径(幅方向の長さ)を示す。折れ線T5は引取り速度の設定値が「1」である場合の外径変動を示し、折れ線T6は引取り速度が「1.5」である場合の外径変動を示す。折れ線T7は、引取り速度の設定値が「2」である場合の外径変動を示す。折れ線T5,T6における外径変動は小さく、引取り速度の設定値が「1」及び「1.5」の各々である場合においてはドローレゾナンスが発生していないことが分かる。一方、折れ線T7における外径変動は大きく、引取り速度の設定値が「2」である場合においてはドローレゾナンスが発生していることが分かる。
【0049】
図6は、原料A3の外径変動を示す図である。図6を参照して、横軸はストランドS1の長手方向の位置を示し、縦軸はストランドS1の外径(幅方向の長さ)を示す。折れ線T8は引取り速度の設定値が「1」である場合の外径変動を示し、折れ線T9は引取り速度が「1.5」である場合の外径変動を示す。折れ線T10は、引取り速度の設定値が「2」である場合の外径変動を示す。折れ線T8,T9における外径変動は小さく、引取り速度の設定値が「1」及び「1.5」の各々である場合においてはドローレゾナンスが発生していないことが分かる。一方、折れ線T10における外径変動は大きく、引取り速度の設定値が「2」である場合においてはドローレゾナンスが発生していることが分かる。
【0050】
図7は、原料A4の外径変動を示す図である。図7を参照して、横軸はストランドS1の長手方向の位置を示し、縦軸はストランドS1の外径(幅方向の長さ)を示す。折れ線T11は引取り速度の設定値が「1」である場合の外径変動を示し、折れ線T12は引取り速度が「1.5」である場合の外径変動を示す。折れ線T13は引取り速度の設定値が「2」である場合の外径変動を示し、折れ線T14は引取り速度の設定値が「2.5」である場合の外径変動を示す。折れ線T15は、引取り速度の設定値が「3」である場合の外径変動を示す。折れ線T11,T12,T13,T14における外径変動は小さく、引取り速度の設定値が「1」、「1.5」、「2」及び「2.5」の各々である場合においてはドローレゾナンスが発生していないことが分かる。一方、折れ線T15における外径変動は大きく、引取り速度の設定値が「3」である場合においてはドローレゾナンスが発生していることが分かる。
【0051】
図8は、原料A5の外径変動を示す図である。図8を参照して、横軸はストランドS1の長手方向の位置を示し、縦軸はストランドS1の外径(幅方向の長さ)を示す。折れ線T16は引取り速度の設定値が「1」である場合の外径変動を示し、折れ線T17は引取り速度が「1.5」である場合の外径変動を示す。折れ線T18は引取り速度の設定値が「2」である場合の外径変動を示し、折れ線T19は引取り速度の設定値が「2.5」である場合の外径変動を示す。折れ線T16における外径変動は小さく、引取り速度の設定値が「1」である場合においてはドローレゾナンスが発生していないことが分かる。一方、折れ線T17,T18,T19の各々における外径変動は大きく、引取り速度の設定値が「1.5」、「2」及び「2.5」の各々である場合においてはドローレゾナンスが発生していることが分かる。
【0052】
図9は、原料A1における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。変動係数とは、ストランドS1の外径の標準偏差を、ストランドS1の外径の平均値で除算したものである。変動係数が0.05以上である場合に、ドローレゾナンスが発生している可能性が高い。図9を参照して、領域R1は変動係数が0-0.05の領域を示し、領域R2は変動係数が0.05-0.1の領域を示す。領域R3は変動係数が0.1-0.15の領域を示し、領域R4は変動係数が0.15-0.2の領域を示す。
【0053】
図10は、原料A2における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。図10を参照して、領域R5は変動係数が0-0.05の領域を示し、領域R6は変動係数が0.05-0.1の領域を示す。領域R7は変動係数が0.1-0.15の領域を示し、領域R8は変動係数が0.15-0.2の領域を示す。
【0054】
図11は、原料A3における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。図11を参照して、領域R9は変動係数が0-0.05の領域を示し、領域R10は変動係数が0.05-0.1の領域を示す。領域R11は変動係数が0.1-0.15の領域を示し、領域R12は変動係数が0.15-0.2の領域を示す。領域R13は変動係数が0.2-0.25の領域を示し、領域R14は変動係数が0.25-0.3の領域を示す。
【0055】
図12は、原料A4における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。図12を参照して、領域R15は変動係数が0-0.05の領域を示し、領域R16は変動係数が0.05-0.1の領域を示す。領域R17は変動係数が0.1-0.15の領域を示し、領域R18は変動係数が0.15-0.2の領域を示す。領域R19は変動係数が0.2-0.25の領域を示し、領域R20は変動係数が0.25-0.3の領域を示す。
【0056】
図13は、原料A5における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。図13を参照して、領域R21は変動係数が0-0.05の領域を示し、領域R22は変動係数が0.05-0.1の領域を示す。領域R23は変動係数が0.1-0.15の領域を示し、領域R24は変動係数が0.15-0.2の領域を示す。領域R25は変動係数が0.2-0.25の領域を示し、領域R26は変動係数が0.25-0.3の領域を示す。領域R27は変動係数が0.3-0.35の領域を示し、領域R28は変動係数が0.35-0.4の領域を示す。領域R29は、変動係数が0.4-0.45の領域を示す。
【0057】
図14は、具体例1における各原料の引取り速度毎の結果を纏めた図である。図14を参照して、「○」はストランドS1においてドローレゾナンスが発生していないことを示し、「×」はストランドS1においてドローレゾナンスが発生していることを示している。「-」は、当該条件ではストランドS1の製造を行なわなかったことを示している。図14に示される例においては、ドローレゾナンスが発生しない範囲における引取り速度の最大値が最も大きい原料が原料A4である。したがって、この例においては、例えば、原料A4がストランドS1等を製造するための原料として選択される。
【0058】
具体例2において、作業者は、原料B1,B2,B3を準備した。原料B1,B2,B3の各々は、ポリプロピレンとアセチレンブラックとを含んでいる。原料B1におけるアセチレンブラックの濃度はXwt%であり、原料B2におけるアセチレンブラックの濃度はX+1wt%であり、原料B3におけるアセチレンブラックの濃度はX+2wt%である。
【0059】
具体例2においては、引取り速度の設定値として、「1」、「1.25」、「1.5」、「1.75」及び「2」が用いられた。引取り速度の設定値「1」、「1.25」、「1.5」、「1.75」及び「2」は、ドロー比「約6.3」、「約8」、「約9.4」、「約11」及び「約12.6」にそれぞれ対応している。作業者は、各原料に関して、複数の引取り速度の少なくとも一部を用いて、複数のストランドS1を製造した。製造された各ストランドS1における外径の変動等に関し次に説明する。
【0060】
図15は、原料B1における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。図15を参照して、領域R30は変動係数が0-0.05の領域を示し、領域R31は変動係数が0.05-0.1の領域を示す。領域R32は変動係数が0.1-0.15の領域を示し、領域R33は変動係数が0.15-0.2の領域を示す。領域R34は変動係数が0.2-0.25の領域を示し、領域R35は変動係数が0.25-0.3の領域を示す。
【0061】
図16は、原料B2における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。図16を参照して、領域R36は変動係数が0-0.05の領域を示し、領域R37は変動係数が0.05-0.1の領域を示す。領域R38は変動係数が0.1-0.15の領域を示し、領域R39は変動係数が0.15-0.2の領域を示す。領域R40は、変動係数が0.2-0.25の領域を示す。
【0062】
図17は、原料B3における、ドロー比、エアギャップ及び変動係数の関係を示す図である。図17を参照して、領域R41は変動係数が0-0.05の領域を示し、領域R42は変動係数が0.05-0.1の領域を示す。領域R43は変動係数が0.1-0.15の領域を示し、領域R44は変動係数が0.15-0.2の領域を示す。領域R45は変動係数が0.2-0.25の領域を示し、領域R46は変動係数が0.25-0.3の領域を示す。領域R47は、変動係数が0.3-0.35の領域を示す。
【0063】
図18は、具体例2における各原料の引取り速度毎の結果を纏めた図である。図18を参照して、「○」はストランドS1においてドローレゾナンスが発生していないことを示し、「×」はストランドS1においてドローレゾナンスが発生していることを示している。「-」は、当該条件ではストランドS1の製造を行なわなかったことを示している。図18に示される例においては、ドローレゾナンスが発生しない範囲における引取り速度の最大値が最も大きい原料が原料B1である。したがって、この例においては、例えば、原料B1がストランドS1等を製造するための原料として選択される。
【0064】
[3.製造ラインにおける各種製造条件の調整手順]
図19は、製造ライン10における製造条件(混練条件等)の決定手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される処理は、選択された原料によるストランドS1等の製造が行なわれている場合において、コンピュータ500がレーザ外径測定機300から測定結果を順次受信しているときに、コンピュータ500によって繰り返し実行される。
【0065】
図19を参照して、コンピュータ500は、レーザ外径測定機300から受信された外径に基づいて認識されるストランドS1の外径変動が所定範囲(ドローレゾナンスが発生していないといえる範囲)から外れているか否かを判定する(ステップS300)。測定結果が所定範囲から外れていないと判定されると(ステップS300においてNO)、処理はリターンへ移行する。
【0066】
一方、測定結果が所定範囲から外れていると判定されると(ステップS300においてYES)、コンピュータ500は、製造条件(混練条件等)の見直しを行ない、新たな製造条件を決定する(ステップS310)。コンピュータ500は、決定された製造条件で動作するように製造ライン10の各構成要素(例えば、押出機100)における製造条件を調整する(ステップS320)。適宜見直される製造条件の一例としては、エアギャップの長さ、押出機100における樹脂と導電性フィラーとの混練条件(例えば、押出機100の各動作パラメータ(例えば、1回当たりの原材料の供給量、スクリューの回転数、ダイの温度、及び、ヒータの温度))、ストランドS1の引取り速度が挙げられる。
【0067】
[4.特徴]
以上のように、本実施の形態に従う樹脂成形品の製造方法においては、互いに異なる引取り速度で溶融材料を引き取ることによって製造された複数の樹脂成形品(ストランドS1)の各々の径の変化が測定され、径の変化に関する測定結果に基づいて複数種類の原料から選択された原料を用いることによって樹脂成形品(ストランドS1等)が製造される。したがって、この樹脂成形品の製造方法によれば、引取り速度毎の径の変化が考慮された上で選択された原料を用いて樹脂成形品が製造されるため、樹脂成形品におけるドローレゾナンスの発生を抑制することができる。
【0068】
[5.他の実施の形態]
上記実施の形態の思想は、以上で説明された実施の形態に限定されない。例えば、いずれかの実施の形態の少なくとも一部の構成と、他のいずれかの実施の形態の少なくとも一部の構成とが組み合わされてもよい。以下、上記実施の形態の思想を適用できる他の実施の形態の一例について説明する。
【0069】
<5-1>
上記実施の形態においては、レーザ外径測定機300の測定結果に基づいて原料の選択が行なわれた。しかしながら、原料の選択においては、例えば、製造されたストランドS1の電気抵抗値も考慮されてもよい。
【0070】
図20は、電気抵抗値測定機350を含む製造ライン10Aの一例を示す図である。図20に示されるように、製造ライン10Aは、電気抵抗値測定機350を含んでいる。電気抵抗値測定機350は、通過するストランドS1の電気抵抗値を測定するように構成されている。電気抵抗値測定機350による測定結果は、例えば、コンピュータ500Aへ送信される。
【0071】
また、製造ライン10Aにおいては、必ずしも電気抵抗値測定機350が設けられなくてもよい。ストランドS1の電気抵抗値は、例えば、製造ライン10Aの外部で測定されてもよい。例えば、ストランドS1の一部を切り出し、切り出されたストランドS1の電気抵抗値がテスター又は抵抗計によって測定されてもよい。
【0072】
ストランドS1の製造に用いられる原料が、ストランドS1の外径変動、及び、ストランドS1の電気抵抗値の各々を考慮した上で選択されてもよい。例えば、最低限下回らなければならない電気抵抗値の基準が予め決められており、電気抵抗値が当該基準を下回る原料候補から、ストランドS1の外径変動に基づいて、ストランドS1の製造に用いられる原料が選択されてもよい。
【0073】
この樹脂成形品の製造方法によれば、引取り速度毎の径の変化、及び、電気抵抗値の両方が考慮された上で樹脂成形品の製造に用いられる原料が選択されるため、ドローレゾナンスの発生が抑制され、かつ、電気抵抗値が抑制された樹脂成形品を製造することができる。
【0074】
<5-2>
上記実施の形態においては、各原料候補に樹脂及び導電性フィラーが含まれていた。しかしながら、各原料候補には、必ずしも樹脂及び導電性フィラーが含まれていなくてもよい。各原料候補には、樹脂、及び、導電性を有さないフィラーが含まれていてもよい。導電性を有さないフィラーの一例としては、増量用のフィラー(炭酸カルシウム等)、補強用のフィラー(チタン酸カリウム等)、抗菌剤となるフィラー(カテキン等)、ガスバリア材(合成マイカ系等)、軽量化のためのフィラー(シリカバルーン等)、磁性を付与するフィラー(各種フェライト系)、熱伝導性を付与するフィラー(アルミナ等)、及び、圧電性を付与するフィラー(チタン酸バリウム等)が挙げられる。
【0075】
<5-3>
上記実施の形態においては、ストランドS1等の製造に用いられる原料が原料候補から選択された後に、ストランドS1等の本製造が開始された。しかしながら、必ずしもこのような順でストランドS1等が製造されなくてもよい。例えば、レーザ外径測定機300による測定結果をリアルタイムで監視し、測定結果に応じて押出機100へ投入される原料がリアルタイムで変更されてもよい。すなわち、ストランドS1等の本製造の過程において、最適な原料が探索されてもよい。
【0076】
<5-4>
上記実施の形態においては、ストランドS1等の各種製造条件が、ストランドS1等を製造しながら適宜調整された。しかしながら、各種製造条件の調整は必ずしもこのように行なわれなくてもよい。例えば、各種パラメータの組合せ毎に予めストランドS1等を試験的に製造し、製造された各ストランドS1等の品質に基づいて各種パラメータの最適な組合せが事前に調べられてもよい。そして、最適なパラメータの組合せを用いて、ストランドS1等の本製造が行なわれてもよい。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について例示的に説明した。すなわち、例示的な説明のために、詳細な説明及び添付の図面が開示された。よって、詳細な説明及び添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が詳細な説明及び添付の図面に記載されているからといって、それらの必須でない構成要素が必須であると直ちに認定されるべきではない。
【0078】
また、上記実施の形態は、あらゆる点において本発明の例示にすぎない。上記実施の形態は、本発明の範囲内において、種々の改良や変更が可能である。すなわち、本発明の実施にあたっては、実施の形態に応じて具体的構成を適宜採用することができる。
【符号の説明】
【0079】
10,10A 製造ライン、100 押出機、200 冷却水槽、205 ローラ、250 水切り装置、300 レーザ外径測定機、350 電気抵抗値測定機、400 ペレタイザ、500,500A コンピュータ、L1 長さ、P1 ペレット、S1 ストランド、T1-T19 折れ線、R1-R47 領域、V1,V2 速度。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20