(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066700
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】止水シャッター装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20240509BHJP
E06B 7/22 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176294
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小縣 剛士
(72)【発明者】
【氏名】上村 達也
(72)【発明者】
【氏名】角 和博
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EB02
2E036FA10
2E036FB01
2E036GA02
2E036HB08
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 押圧機構による押圧状態を容易に解除する。
【解決手段】 空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体10と、押圧力を発生する押圧装置40,50とを備え、閉鎖状態の開閉体10を押圧装置40,50の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、機械的な操作により押圧装置40,50を後退させて前記押圧力を解放する解除機構70を具備した。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、押圧力を発生する押圧装置とを備え、閉鎖状態の前記開閉体を前記押圧装置の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、
機械的な操作により前記押圧装置を後退させて前記押圧力を解放する解除機構を具備したことを特徴とする止水シャッター装置。
【請求項2】
前記押圧装置は、本体部と、前記本体部に相対し前進するロッドとを備え、前記ロッドの前進により前記押圧力を発生することを特徴とする請求項1記載のシャッター装置。
【請求項3】
前記解除機構は、前記押圧装置から離れた位置で機械的に操作される操作部を備え、前記操作部が操作された際の操作力により、前記押圧装置を後退させることを特徴とする請求項1記載の止水シャッター装置。
【請求項4】
前記押圧装置を複数備え、
前記解除機構は、単数の操作部の操作力によって複数の前記押圧装置を後退させるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の止水シャッター装置。
【請求項5】
前記解除機構は、前記操作部が操作された際の操作力を流体圧により伝達する流体圧管と、前記流体圧管の流体圧により前記押圧装置を後退させるシリンダ装置とを備えることを特徴とする請求項3又は4記載の止水シャッター装置。
【請求項6】
前記シリンダ装置を着脱可能に設けたことを特徴とする請求項5記載の止水シャッター装置。
【請求項7】
前記解除機構は、前記操作部が操作された際の操作力を伝達する解放操作力伝達機構と、前記解放操作力伝達機構により伝達される操作力によって前記押圧装置を後退させる押圧装置後退機構とを備えることを特徴とする請求項3又は4記載の止水シャッター装置。
【請求項8】
前記操作力が回転力であって、
前記解放操作力伝達機構は、直列状に配設された複数の回転軸と、前記回転軸による回転力が伝達する方向を変換する方向変換機構とを具備することを特徴とする請求項7記載の止水シャッター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水が流通しないように開口部を閉鎖する止水シャッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明は、例えば特許文献1に記載されるように、上下方向へ積み重ねられる複数のパネルからなるシャッターカーテンを、パワーシリンダ、ピストンロッド等からなる電動の押圧機構(垂直圧迫手段及び水平圧迫手段)により押圧し、このシャッターカーテンを、水密ゴムを介して不動部位(床面やレール等)に圧接し、水密性を保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術によれば、閉鎖状態のシャッターカーテンを押圧機構により押圧している最中に停電が発生した場合、押圧機構による押圧状態を解除できず、シャッターカーテンの開放が困難になるおそれがある。
そこで、バッテリー等の予備電源を備える場合もあるが、予備電源自体が水害等により故障してしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、押圧力を発生する押圧装置とを備え、閉鎖状態の前記開閉体を前記押圧装置の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、機械的な操作により前記押圧装置を後退させて前記押圧力を解放する解除機構を具備したことを特徴とする止水シャッター装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、押圧機構による押圧状態を容易に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る止水シャッター装置の一例を屋外側から視た正面図である。
【
図2】同止水シャッター装置の全閉状態を示す縦断面図であり、閉鎖前のパネルを二点鎖線で示している。
【
図3】
図1の(III)-(III)線に沿う横断面図である。
【
図5】開閉体を垂直方向へ押圧する押圧装置の動作説明図である。
【
図6】開閉体を水平方向へ押圧する押圧装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
本明細書中、「開閉体厚さ方向」とは、閉鎖状態の開閉体の厚さ方向を意味する。また、「開閉体幅方向」とは、開閉体の開閉方向と略直交する方向であって、開閉体の厚さ方向ではない方向を意味する。
また、「開閉体開閉方向」とは、開閉体が開閉動作のために空間を仕切ったり開放したりするスライド方向を意味する。
【0009】
また、「開閉体幅方向外側」とは、開閉体幅方向に沿って開閉体の外側へ向かう方向側を意味する。例えば、向かって右側のガイドレールを基準にすると、開閉体幅方向外側は、右方向側になる。
また、「開閉体幅方向内側」とは、開閉体幅方向に沿って開閉体の内側へ向かう方向側を意味する。例えば、向かって右側のガイドレールを基準にすると、開閉体幅方向内側は、左方向側になる。
【0010】
また、「開閉体厚さ方向外側」とは、開閉体の厚みの中央部から開閉体厚さ方向に沿って離れる方向側を意味する。
また、「開閉体厚さ方向内側」とは、開閉体厚さ方向に沿って開閉体の厚みの中央部へ向かう方向側を意味する。
【0011】
止水シャッター装置1は、建物等の躯体開口部を開閉体10によって開閉するように設置される。
この止水シャッター装置1は、空間を仕切るようにして閉鎖動作し閉鎖方向端部を対向する被当接面G(例えば、地面や床面等)に当接して全閉する開閉体10と、開閉体10の幅方向の両端部をそれぞれ横断面凹状に囲んで閉鎖方向へ案内する左右のガイドレール20,20と、開閉体10を上方側で収納したり繰り出したりする開閉体収納部30と、開閉体収納部30内で押圧力を発生する押圧装置40,50とを備え、閉鎖状態の開閉体10を押圧装置40,50の押圧力により不動部位である被当接面Gやガイドレール20に押し付ける。
【0012】
さらに、この止水シャッター装置1は、開閉体10が押圧装置40,50押圧力によって押圧されている際に、機械的な操作により押圧装置40,50を後退させてこの押圧力を解放する解除機構60を備える。
【0013】
開閉体10は、開閉体収納部30によって閉鎖方向へ順次に繰出される複数のパネル11,12を略垂直に積み重ねて全閉状態になる(
図2参照)。
複数のパネル11,12は、パネル連繋チェーン14によって開閉方向に繋がっている(
図2参照)。
【0014】
パネル11は、開閉体幅方向へ長尺な正面視矩形板状の部材である。このパネル11は、金属材料を引抜成形又は押出成形することで、上下に仕切られた空洞を有する縦断面枠状に形成される。
このパネル11の下端部は、開閉体幅方向の全長にわたって縦断面略V字状に突出しており、その突出する外面には、シール部16が一体的に設けられる。
【0015】
シール部16は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から、パネル11下端に沿う縦断面V字状に形成され、パネル11の下端部に開閉体幅方向の全長にわたって接合されている。
【0016】
また、パネル11の上端部には、シール部16に嵌り合うように、開閉体幅方向の全長にわたって縦断面略V溝状の凹部11aが形成される。
そして、パネル11の横幅方向の両端部には、開閉体幅方向へ突出するように、支持軸部13が設けられる。
【0017】
最上部のパネル12は、開閉体幅方向へ長尺状に連続する正面視矩形状を呈し、パネル11よりも高さ寸法が小さい。前記寸法は、開閉体10によって開閉される開口部の高さ寸法等に応じて適宜に設定される。
このパネル12は、パネル11と略同様に、金属材料を引抜成形又は押出成形することで、開閉体幅方向に連続する空洞を内在する縦断面枠状に形成される。
パネル12の下端側には、パネル11と同様にシール部16が設けられる。さらに、パネル12の側面には、パネル11と同様に支持軸部13が設けられる。また、また、パネル12の上端には、開閉体幅方向へわたって連続する凹部12aが設けられる。
【0018】
なお、複数のパネル11のみによって所望とする高さ寸法の開閉体10を構成できる場合には、パネル12を省くことも可能である。この場合、最上部には、パネル11が位置し、このパネル11の上端部が、押圧装置40によって押圧される。
【0019】
支持軸部13は、各パネル11,12の幅方向の両端部から、それぞれ、開閉体幅方向外側へ突出している(
図3参照)。
この支持軸部13は、パネル連繋チェーン14に挿通された軸状部材の先端側に、ローラを回転自在に支持してなる。
【0020】
パネル連繋チェーン14は、動力伝達用等に用いられる所謂ローラチェーンであり、その長さ方向において所定間隔置きに支持軸部13を回転自在に挿通している。
このパネル連繋チェーン14は、上下方向のすべてのパネル11,12を、支持軸部13を介して連結し、その上端側が開閉体収納部30内のスプロケット31に掛けられている。
【0021】
また、各パネル11の側面において、下端側の屋内寄りには、ガイド軸部15が設けられている(
図2及び
図3参照)。
ガイド軸部15は、各パネル11の幅方向端部から突出する軸状部材の先端側にローラを回転自在に支持してなる。
このガイド軸部15は、各パネル11が開閉体収納部30に収納される際に、開閉体収納部30内のガイド部材34(
図2参照)に係合し案内され、開閉体厚さ方向の振れを抑制する。なお、このガイド軸部15は、省くことも可能である。
【0022】
ガイドレール20は、閉鎖状態の開閉体10の幅方向端部を囲むように、横断面凹状もしくはコ字状に形成される(
図3参照)。このガイドレール20は、被当接面Gから開閉体収納部30へわたる長尺状に形成される。
ガイドレール20内には、閉鎖状態の開閉体10を屋外側から屋内側へ押圧する厚さ方向押圧機構55と、この厚さ方向押圧機構55によって押動された開閉体10を屋内側から受ける受部材21とが、上下方向へわたって連続的に設けられる。
【0023】
厚さ方向押圧機構55は、後述する押圧装置50の下方向きの力によって、全閉状態の開閉体10を屋内側へ押圧する装置である。
この厚さ方向押圧機構55は、開閉体10の屋外側面に当接する当接部材55aと、この当接部材55aを屋内側へ平行移動する押圧方向変換機構55bと、押圧方向変換機構55bに押圧装置50の押圧力を伝達する押圧力伝達部材55cとを具備して構成される(
図3及び
図6参照)。
【0024】
押圧方向変換機構55bは、上下方向の力を開閉体厚さ方向の力に変換する機構である。
押圧方向変換機構55bは、上下方向の力を開閉体厚さ方向へ変換する二つのリンク部材55b1,55b2と、これらリンク部材55b1,55b2を支持する支持部材55b3とを備える(
図6参照)。
【0025】
二つのリンク部材55b1,55b2は、開閉体厚さ方向に直列的に配設され、これらの中央側が回転自在に接続されて、この接続部分を上方へ突出させた側面視略へ字状に構成される。
一方のリンク部材55b1は、屋外側(
図6によれば左側)の部分が、支持部材55b3に対し回転自在に枢支されている。この枢支部分は、開閉体厚さ方向及び上下方向へは移動しない。
【0026】
他方のリンク部材55b2は、屋内側(
図6によれば右側)の部分が、支持部材55b3に対し開閉体厚さ方向へ移動可能に係合し、且つ当接部材55aに対し回転自在に枢着されている。この枢着部分は、上下方向へは移動しない。
【0027】
押圧力伝達部材55cは、上下方向へわたる長尺杆状の部材であり、支持部材55b3に対し上下方向へ移動可能に係合している。
この押圧力伝達部材55cは、上端側がロッド52に対し回転自在に枢着され、この枢着部分よりも下側の部分が、二つのリンク部材55b1,55b2の接続部分に嵌り合うようにして掛合している。すなわち、押圧力伝達部材55cが上下方向へ移動するのに連動して、リンク部材55b1,55b2の接続部分も同上下方向へ移動する。
【0028】
よって、上記構成の押圧方向変換機構55bによれば、ロッド52に押圧されて押圧力伝達部材55cが下方へ移動すると、当接部材55aが屋外側(
図6によれば右側)へ移動し開閉体10を押し動かす。
また、ロッド52の後退により押圧力伝達部材55cが上方へ移動すると、当接部材55aが屋内側(
図6によれば左側)へ移動し、開閉体10から離れる。
【0029】
なお、図示を省略するが、単一の押圧力伝達部材55cには、上下方向に間隔を置いて複数の押圧方向変換機構55bが配設される。
【0030】
また、受部材21は、閉鎖状態の開閉体10に対し、上下方向の全長にわたって接するようにした長尺状の部材である(
図3及び
図6参照)。この受部材21は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性材料から形成され、開閉体10の屋内側面に弾性的に接触して、開閉体10とガイドレール20の間の水密性を保持する。
【0031】
また、開閉体収納部30は、開閉体10によって開閉される開口部の上方において、当該止水シャッター装置1の設置対象物である躯体等の壁面に固定される。
この開閉体収納部30は、
図2に示すように、内側に空間を有する基体30aに、パネル連繋チェーン14を掛け回したスプロケット31と、このスプロケット31を双方向へ回転させる駆動機構32と、パネル11,12を、支持軸部13を介してパネル11,12を吊持して前後方向へ導く収納レール33と、パネル11下端側のガイド軸部15を水平方向へ案内するガイド部材34とを支持している。
【0032】
この開閉体収納部30は、駆動機構32によりスプロケット31を一方向へ回転させることで、収納状態にある複数のパネル11,12を屋外側へ順次に繰り出して下方へ閉鎖動作させる。また、同開閉体収納部30は、駆動機構32によりスプロケット31を逆方向へ回転させることで、閉鎖状態にあるパネル11,12を開放動作させ、上方側で屋内側へ収納する。
【0033】
また、駆動機構32は、電動モータによってチェーン及びスプロケット31等を動作させる電動開閉機構と、操作部32aに対する手動操作により同チェーン及びスプロケット31等を動作させる手動開閉機構とを備える。操作部32aは、図示例によれば、手で引っ張るようにして回転させることが可能なチェーンである。
【0034】
二種類の押圧装置40,50は、開閉体幅方向に間隔を置いて複数配設される(
図1参照)。各押圧装置40(又は50)は、上下方向へ進退可能に支持される。
【0035】
一方の押圧装置40は、シリンダ状の本体部41と、本体部41に相対し進退自在に嵌り合ったロッド42と、ロッド42を前進させるための駆動源(例えば、図示しない電動モータ等)とを備え、前記駆動源の駆動によりロッド42を前進させて押圧力を発生する。
【0036】
複数の押圧装置40の下方側には、これら押圧装置40を跨るようにして、開閉体10を上方側から押圧して下方側の不動部位に押し付ける押圧部材43が設けられる。
詳細に説明すれば、押圧装置40は、左側と右側にそれぞれ複数(
図1の一例によれば二つ)設けられる。そして、押圧部材43は、左側の複数の押圧装置40により上下動するように一つ設けられ、同様に、右側の複数の押圧装置40により上下動するように一つ設けられる。
【0037】
各押圧部材43は。水平片と垂直片を有するアングル状の部材であり、開閉体幅方向へ長尺状に延設されている。
この押圧部材43は、押圧装置40のロッド42先端側に、開閉体幅方向の軸を中心に回転するように枢着される。
さらに、この押圧部材43は、ロッド42の前進に伴って所定の軌跡を描いて開閉体10の上端へ近づくようにリンク機構44によって支持されている。
【0038】
リンク機構44は、基体30aにブラケット等を介して支持され回動する複数のアーム等からなる。このリンク機構44は、押圧部材43を、略水平に保持したまま、側面視円弧状の軌跡を描くようにして、開閉体10上端部に対し接近させたり離隔させたりする(
図5参照)。
【0039】
また、他方の押圧装置50は、押圧装置40と略同様に、シリンダ状の本体部51と、本体部51に相対し前進するように嵌り合ったロッド52と、ロッド52を前進させるための駆動源(例えば、電動モータ等)を備え、ロッド52の前進により押圧力を発生する(
図6参照)。
この押圧装置50は、ロッド52のストロークが、押圧装置40のものとは異なる。ロッド52のストロークは、厚さ方向押圧機構55の動作量等に応じて適宜に設置される。
【0040】
この押圧装置50は、開閉体幅方向において複数の押圧装置40を間に置くようにして、その左側と右側に、それぞれ、間隔をおいて設けられる(
図1参照)。
【0041】
幅方向中央側の複数(図示例によれば四つ)の押圧装置40は、解除機構60によって後退可能である。同様に、両側二つの押圧装置50も、略同構成の解除機構60によって後退可能である。
【0042】
解除機構60は、押圧装置40,50から離れた位置で機械的に操作される単数の操作部61と、操作部61が操作された際の操作力を流体圧により伝達する複数の流体圧管62と、各流体圧管62の流体圧により対応する押圧装置40(又は50)を後退させるシリンダ装置63と、押圧装置40(又は50)を上下方向へ自在に進退するように支持するガイド支持機構64とを備え(
図1及び
図4参照)、操作部61が操作された際の操作力により、複数の押圧装置40(又は50)を略同時に後退させる。
【0043】
操作部61は、操作者等が手元位置で操作できるように、開閉体10から離れた適宜な高さ位置に設けられる。この高さ位置は、例えば、操作部32aにおいて手で操作される部分の高さ位置と略同じに設定され、図示例によれば、操作部32aの下端又は下端寄り位置と略同じに設定される。
この操作部61は、回転自在に支持されたクランク状のハンドル61aと、このハンドルが操作された際の回転力により流体圧を発生する流体圧発生器61bとを備え、流体圧発生器61bにより発生した流体圧を複数の流体圧管62へ同時に供給する。
【0044】
各流体圧管62は、フレキシブルな可撓性の管体であり、動力伝達媒体としてのオイルを内在している。この流体圧管62は、一端側を流体圧発生器61bに接続するとともに、他端側をシリンダ装置63の流体圧注入口に接続し、内在するオイルによる流体圧をシリンダ装置63へ伝達する。
【0045】
シリンダ装置63及びガイド支持機構64は、複数の押圧装置40(50)に対応するように複数設けられる。
【0046】
各シリンダ装置63は、基体30a等の不動部位に固定されたシリンダ63aと、このシリンダ63aから突出するピストン63bとを備え、各流体圧管62からシリンダ63aに内在する流体圧を変化させることで、ピストン63bを前進させたり後退させたりする。ピストン63bの先端側は、押圧装置40(又は50)に接続されている。
ここで、前記流体圧は、好ましくは油圧とするが、空気圧や水圧とすることも可能である。
【0047】
なお、各シリンダ装置63の好ましい態様としては、シリンダ63aを、基体30a等の不動部位に対し着脱可能に設けるようにしてもよい。
この構成によれば、シリンダ装置63が故障した場合等に、シリンダ装置63自体を取り外して、押圧装置40,50を後退させて、押圧装置40,50による押圧力を解除することができる。
【0048】
各ガイド支持機構64は、基体30a等の不動部位に固定されたガイド部64aと、このガイド部64aに沿って上下方向へ自在に進退する可動部64bとを備え、可動部64bに対し、ピストン63bと押圧装置40(又は50)の本体部41(又は51)との両部材を固定している。
【0049】
ガイド部64aは、平行する複数(図示例によれば二つ)のガイド軸である。
可動部64bは、複数のガイド部64aに対し跨るように嵌り合っており、ガイド部64aの延設方向へ移動自在である。
【0050】
なお、ガイド支持機構64には、例えばリニアガイド等と呼称される周知の機構を適用すればよいが。その他のガイド機構を用いることも可能である。
【0051】
なお、
図2中の符号90は、開閉体幅方向の中央寄りへ可動柱91を移動させ、この可動柱91を開閉体10の屋内側面に押し付けて、開閉体10の撓みを抑制する撓み抑制装置である。
【0052】
<作用効果>
次に、上記構成の止水シャッター装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
開閉体収納部30にパネル11,12が収納された状態で、駆動機構32による閉鎖動作が開始されると、複数のパネル11,12が、開閉体収納部30から順次に下方へ繰り出され、被当接面Gに積み重ねられる。そして、これら複数のパネル11,12からなる開閉体10は、
図2に示す全閉状態で静止する。
この全閉状態において、押圧装置40,50が動作すると、開閉体10は垂直方向及び水平方向に押圧される。
【0053】
垂直方向の動作について説明すれば、押圧装置40は、図示しない制御回路からの信号及び電力により動作し、本体部41に相対しロッド42を下向きに伸長させる(
図5(a)(b)参照)。
すると、ロッド42前端に接続された押圧部材43が、リンク機構44により円弧状に回動し、パネル12(開閉体10)の上端部に当接し、開閉体10を下方へ押圧する。
【0054】
また、水平方向の動作について説明すれば、押圧装置50は、図示しない制御回路からの信号及び電力により動作し、本体部51に相対しロッド52を下向きに伸長させる(
図6(a)(b)参照)。
すると、ロッド52の押圧力により、厚さ方向押圧機構55の押圧方向変換機構55bが当接部材55aを水平方向へ移動して開閉体10の屋外側面に当接する。さらに、前記水平方向の移動が継続することで、開閉体10が屋内側へ移動し受部材21に押圧される。
【0055】
押圧部材43等による垂直方向の押圧力により、最下側のパネル11は、下端のシール部16を被当接面Gに押し付けて弾性変形する。また、上下に隣接するパネル11,11(又は12)間でも、シール部16が挟まれ弾性変形する。
また、押圧方向変換機構55b等による水平方向の押圧力により、開閉体10の各パネル11,12は、ガイドレール20の受部材21に押し付けられて、シール部16が弾性変形する。
よって、開閉体10の下端と被当接面Gの間、上下に隣接するパネル11,11(又は12)間、及び開閉体10とガイドレール20の間において、水密性が保持される。
【0056】
<解除動作>
前記押圧状態において、開閉体10を開放する場合、通常は、前記制御回路等を介した電気的な操作により、押圧装置40及び押圧装置50を逆方向へ動作させ、前記押圧状態を解除すればよい。
しかしながら、例えば停電等の発生により、押圧装置40及び押圧装置50や前記制御回路へ電力が供給されず、電気的な解除操作ができない場合には、二つの操作部61,61のハンドルをそれぞれ回す操作を行えばよい。
【0057】
各操作部61の回転操作による流体圧の変化は、複数の流体圧管62によって対応する複数のシリンダ装置63へ伝達する。各シリンダ装置63は、前記流体圧の変化によりロッド42(又は2)を初期位置まで後退させる。
このため、一方の操作部61の回転操作により、複数の押圧装置40及び押圧部材43等による垂直方向の押圧状態が解除される(
図5(c)参照)。
さらに、他方の操作部61の回転操作により、両側の押圧装置50及び厚さ方向押圧機構55等による水平方向の押圧状態も解除される(
図6(c)参照)。
【0058】
したがって、開閉体10が上方へ開放動作可能な状態になる。停電状態のまま開閉体10を開放させるには、操作部32aを手で操作して、駆動機構32を人力で開放方向へ動作させればよい。
【0059】
このように、上記構成の止水シャッター装置1によれば、押圧装置40,50による押圧状態を手動で容易に解除することができ、ひいては、停電等により電力供給がない場合でも、押圧装置40,50を解除して開閉体10を開放することができる。このため、停電時に押圧装置40,50を電動で解除するための予備電源を不要にすることも可能である。
【0060】
<解除機構の他例>
上記実施形態において、解除機構60は、
図7に示す解除機構70に置換することが可能である。
解除機構70は、押圧装置40,50から離れた位置で機械的に操作される操作部71と、操作部71が操作された際の操作力(図示例によれば回転力)を伝達する解放操作力伝達機構72と、解放操作力伝達機構72により伝達される操作力によって押圧装置40(又は50)を後退させる押圧装置後退機構73と、単数の操作部71の操作力により複数の押圧装置40(又は50)を同時に進退させる連動機構74とを備える。
【0061】
操作部71は、回転自在に支持されたクランク状のハンドル71aと、このハンドルが操作された際の回転力を上方の解放操作力伝達機構72へ伝達する回転出力部71bとを備える。
【0062】
解放操作力伝達機構72は、直列状に配設された複数の回転軸72aと、回転軸72aによる回転力が伝達する方向を変換する方向変換機構72bとを具備する。
【0063】
各回転軸72aは、回転自在に支持された硬質のシャフトである。
各方向変換機構72bは、例えば、回転軸を交差させて噛み合った傘歯車による機構、ウォームとウォームホイールによる機構等とすればよい。
【0064】
押圧装置後退機構73は、複数の押圧装置40(又は50)に対応するように、複数設けられる。
各押圧装置後退機構73は、解放操作力伝達機構72による回転力により回転するネジ軸部材73aと、ネジ軸部材73aに螺合して進退する可動部73bと、可動部73bを進退可能に支持するガイド部73cとを備え、可動部73bを押圧装置40(又は50)の本体部41(又は51)に接続している。
【0065】
ネジ軸部材73aは、先端側にネジ部を有する硬質軸状の部材であり、基体30a等に固定された軸受ブラケット73dによって回転自在に支持されている。
【0066】
可動部73bは、ネジ軸部材73aのネジ部に螺合するナット状の部材であり、ネジ軸部材73aの回転により前進又は後退する。
【0067】
なお、ネジ軸部材73a及び可動部73bのナット状部分には、例えばボールねじ機構等、回転運動を直線運動に変換する機構を適用することが可能である。
【0068】
ガイド部73cは、平行する複数(図示例によれば二つ)のガイド軸であり、可動部73bに挿通されて、可動部73bを移動自在に支持する。
【0069】
なお、可動部73b及びガイド部73cは、上記ガイド支持機構64同様に、リニアガイド等の周知の機構を適用することが可能である。
【0070】
連動機構74は、複数のネジ軸部材73aにそれぞれ固定されたスプロケット74aと、これらスプロケットに掛け巻かれたチャーン74bとを具備し、複数のネジ軸部材73aを同方向へ回転するように連動する。
【0071】
よって、上記構成の解除機構70によれば、単一の操作部71に対する回転操作により、複数の押圧装置40(又は50)を略同時に後退させることができ、ひいては、停電等により電力供給がない場合でも、押圧装置40,50を解除して開閉体10を開放することができる。
【0072】
<その他の変形例>
上記実施形態によれば、開閉体10を積み上げられる複数のパネル11によって構成したが、開閉体10を単数の略板状の部材から構成することも可能である。
【0073】
また、上記実施形態によれば、押圧装置40,50をピストンシリンダ方式により押圧力を発生する機構としたが、前記押圧装置の他例としては、駆動回転するネジ部材に螺合したナット状部材によって押圧力を発生する機構や、駆動回転する平歯車とラック歯車によって押圧力を発生する機構、リニアモータによって押圧力を発生する機構、その他の機構とすることが可能である。
【0074】
また、上記実施形態よれば、押圧装置40と押圧装置50をストロークの異なるものとしたが、図示しない他例としては、厚さ方向押圧機構55の動作量等を適宜に調整して、押圧装置40と押圧装置50のストロークを略同一にすることも可能である。この場合には、二つの操作部61,61の一方を省くとともに。単一の操作部61に対する操作により、全ての押圧装置後退機構73を連動させて、全ての押圧装置40,50の押圧力を解除する構成とすることが可能である。
【0075】
また、上記実施形態において押圧方向変換機構55bは、リンク機構等によってロッド52の上下方向の力を開閉体厚さ方向の力に変換するようにしたが、他例としては、図示例以外の構成(例えば、ラック・ピニオン機構等)によってロッド52の上下方向の力を開閉体厚さ方向の力に変換することも可能である。
【0076】
また、上記構成の解除機構70によれば、複数の硬質の回転軸72aによる回転力の伝達方向を方向変換機構72bにより変えるようにしたが、複数の回転軸72aをフレキシブルシャフトに置換して、方向変換機構72bを省くことも可能である。
【0077】
また、上記実施形態の解除機構60,70は、ハンドルの回転操作により押圧装置40,50を後退させる構成としたが、この解除機構の他例としては、レバー等に対する揺動操作により押圧装置40,50を後退させる機構や、紐状部材やチェーン状部材等に対する引張操作により押圧装置40,50を後退させる機構、着脱される電動工具の駆動力により押圧装置40,50を後退させる機構等とすることも可能である。
【0078】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0079】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
空間を仕切るようにして閉鎖動作する開閉体と、押圧力を発生する押圧装置とを備え、閉鎖状態の前記開閉体を前記押圧装置の押圧力により不動部位に押し付けるようにした止水シャッター装置であって、機械的な操作により前記押圧装置を後退させて前記押圧力を解放する解除機構を具備したことを特徴とする止水シャッター装置(
図1~
図7参照)。
(2)
前記押圧装置は、本体部と、前記本体部に相対し前進するロッドとを備え、前記ロッドの前進により前記押圧力を発生することを特徴とする(1)に記載のシャッター装置(
図5~
図6参照)。
(3)
前記解除機構は、前記押圧装置から離れた位置で機械的に操作される操作部を備え、前記操作部が操作された際の操作力により、前記押圧装置を後退させることを特徴とする(1)または(2)に記載の止水シャッター装置(
図4~
図7参照)。
(4)
前記押圧装置を複数備え、前記解除機構は、単数の操作部の操作力によって複数の前記押圧装置を後退させるように構成されていることを特徴とする(3)に記載の止水シャッター装置(
図1,
図4及び
図7参照)。
(5)
前記解除機構は、前記操作部が操作された際の操作力を流体圧により伝達する流体圧管と、前記流体圧管の流体圧により前記押圧装置を後退させるシリンダ装置とを備えることを特徴とする(3)又は(4)に記載の止水シャッター装置。
(6)
前記シリンダ装置を着脱可能に設けたことを特徴とする(5)記載の止水シャッター装置。
(7)
前記解除機構は、前記操作部が操作された際の操作力を伝達する解放操作力伝達機構と、前記解放操作力伝達機構により伝達される操作力によって前記押圧装置を後退させる押圧装置後退機構とを備えることを特徴とする(3)又は(4)に記載の止水シャッター装置(
図4参照)。
(8)
前記操作力が回転力であって、前記解放操作力伝達機構は、直列状に配設された複数の回転軸と、前記回転軸による回転力が伝達する方向を変換する方向変換機構とを具備することを特徴とする(7)に記載の止水シャッター装置(
図7参照)。
【符号の説明】
【0080】
1:止水シャッター装置
10:開閉体
20:ガイドレール(不動部位)
30:開閉体収納部
40,50:押圧装置
41,51:本体部
42,52:ロッド
43:押圧部材
55:厚さ方向押圧機構
60,70:解除機構
61,71:操作部
62:流体圧管
63:シリンダ装置
72:解放操作力伝達機構
73:押圧装置後退機構
74:連動機構
G:被当接面(不動部位)