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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066703
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】タイヤ用のモールド
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240509BHJP
   B29C 33/10 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176297
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 希美
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AH20
4F202CA21
4F202CU07
(57)【要約】
【課題】タイヤのベアー及びスピューが抑制されうるモールドの提供。
【解決手段】タイヤ用のモールドは、雌ネジを有するホールと、プラグ44とを有している。プラグ44は、シャンク46とヘッド48とを有している。シャンク46は、その外周面に雄ネジ50を有している。この雄ネジ50は、ホールの雌ネジと螺合しうる。プラグ44は、トップ面52及びボトム面54を有している。プラグ44はさらに、ソケット56、チャンバー58及び4つのベント60を有している。ベント60は、チャンバー58からトップ面52に至っている。このベント60は、トップ面52において、開口64を有している。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ用のモールドであって、
(1)上記モールドのキャビティと背面とを連通しており、その内周面に雌ネジを有するホール、
及び
(2)上記キャビティに向けて開口するベントを含んでおり、かつその外周面に上記雌ネジと螺合する雄ネジを有するプラグ
を備えたタイヤ用のモールド。
【請求項2】
上記雄ネジが上記プラグの先端にまで至っている、請求項1に記載のモールド。
【請求項3】
上記プラグが、シャンクと、このシャンクよりも背面側に位置しておりかつこのシャンクよりも太いヘッドとを有する、請求項1又は2に記載のモールド。
【請求項4】
上記プラグがこのプラグのボトム面に開口するソケットを有しており、このソケットの断面形状が非円形である、請求項1又は2に記載のモールド。
【請求項5】
上記開口がスリット形状を有する、請求項1又は2に記載のモールド。
【請求項6】
上記開口の幅が0.10mm以下である請求項5に記載のモールド。
【請求項7】
上記開口が円形状を有する、請求項1又は2に記載のモールド。
【請求項8】
上記開口の内径が0.20mm以下である請求項7に記載のモールド。
【請求項9】
A:モールドに、ローカバーを投入する工程、
及び
B:上記ローカバーをモールド内で加圧及び加熱する工程
を備えたタイヤの製造方法であって、
上記工程Aにおいて、
(1)上記モールドのキャビティと背面とを連通しており、その内周面に雌ネジを有するホール、
及び
(2)上記キャビティに向けて開口するベントを含んでおり、かつその外周面に上記雌ネジと螺合する雄ネジを有するプラグ
を有するモールドに上記ローカバーが投入される、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、タイヤ用のモールドを開示する。詳細には、本明細書は、モールドの改良されたベントを開示する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの加硫工程に、モールドが用いられている。この加硫工程では、予備成形されたローカバー(グリーンタイヤ)が、モールドに投入される。このローカバーは、モールドとブラダー(又は中子)とによって形成されるキャビティにおいて、加圧されつつ加熱される。加圧と加熱とにより、ローカバーのゴム組成物がキャビティ内を流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる。
【0003】
一般的なモールドは、ベントホールを有している。加硫工程において、モールドのキャビティ面とローカバーとの間のエアーは、このベントを通じて排出される。この排出により、ベアーが抑制されうる。このベントホールには、ローカバーのゴム組成物が流入する。流入は、ゴムのスピューを招来する。このスピューは、タイヤと一体である。スピューは、タイヤの外観及び性能を阻害する。スピューの除去には、手間がかかる。
【0004】
特開2007-45083公報には、ベントホールと、このベントホールに挿入されたプラグとを有するモールドが開示されている。このモールドでは、ベントホールとプラグとのクリアランスを通ってエアーが排出される。このモールドでは、スピューが生じにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-45083公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2007-45083公報に開示されたモールドでは、クリアランスの寸法精度は、ベントホールの寸法、プラグの寸法、プラグの姿勢等の影響を受ける。このモールドにおいて、クリアランスの優れた寸法精度が達成されることには、困難が伴う。クリアランスの寸法精度に劣るモールドでは、ベアーが生じやすい。
【0007】
本出願人の意図するところは、タイヤのベアー及びスピューが抑制されうるモールドの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、タイヤ用のモールドを開示する。このモールドは、
(1)このモールドのキャビティと背面とを連通しており、その内周面に雌ネジを有するホール、
及び
(2)このキャビティに向けて開口するベントを含んでおり、かつその外周面に上記雌ネジと螺合する雄ネジを有するプラグ
を有する。
【発明の効果】
【0009】
この製造方法では、ベントを通じてエアーが排出されるので、タイヤにベアーが生じにくい。この製造方法では、ベントへのゴム組成物の流入が抑制されるので、タイヤにスピューが生じにくい。この製造方法により、高品質なタイヤが得られうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係るタイヤ用モールドの一部が示された概略図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿った拡大断面図である。
図3図3は、図2のモールドのセグメントが示された左側面図である。
図4図4は、図3のセグメントが示された平面図である。
図5図5は、図3のセグメントの一部が示された拡大正面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線に沿った拡大断面図である。
図7図7は、図6のセグメントの一部が示された分解拡大図である。
図8図8は、図7のセグメントのプラグが示された斜視図である。
図9図9A図8のプラグが示された平面図であり、図9B図9AのB-B線に沿った断面図であり、図9C図9Aのプラグが示された底面図である。
図10図10は、図9Aのプラグの一部が示された拡大平面図である。
図11図11Aは他の実施形態に係るタイヤ用モールドのプラグが示された平面図であり、図11B図11AのB-B線に沿った断面図であり、図11C図11Aのプラグが示された底面図である。
図12図12は、図11Aのプラグの一部が示された拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、タイヤ製造方法の好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0012】
図1及び2に、タイヤ用モールド2が示されている。図2において、矢印Xはモールド2の径方向を表し、矢印Yはモールド2の軸方向を表す。このモールド2は、下プレート4、上プレート6、一対のサイドウォールプレート8、コンテナリング10、複数のセクターシュー12及び複数のセグメント14を有している。図1では、便宜上、上プレート6の図示が省略されている。下プレート4は、リング状の形状を有する。上プレート6は、ディスク状の形状を有する。それぞれのサイドウォールプレート8は、実質的にリング状の形状を有する。
【0013】
図1に示されるように、コンテナリング10は、筒状である。図2に示されるように、コンテナリング10は、内周面16を有している。この内周面16は、軸方向に対して傾斜している。内周面16は、下に向かうに従って径方向外側に向かう形状を、有している。内周面16は、複数のレール18を有している。
【0014】
図1に示されるように、セクターシュー12の平面形状は、実質的に扇形である。図2に示されるように、セクターシュー12は、内周面20及び外周面22を有している。図1では、複数のセクターシュー12が周方向に沿って並んでいる。セクターシュー12の数は、通常3以上20以下である。本実施形態では、セクターシュー12の数は、9である。
【0015】
外周面22は、軸方向に対して傾斜している。外周面22は、下に向かうに従って径方向外側に向かう形状を、有している。図2に示されるように、外周面22は溝24を有している。図示は省略されるが、この溝24は、いわゆる蟻溝である。この蟻溝24は、アンダーカット形状を有している。外周面22は、コンテナリング10の内周面16と当接している。蟻溝24には、レール18が嵌まっている。蟻溝24とレール18との引っかかりにより、セクターシュー12のコンテナリング10からの離脱が阻止されている。蟻溝24は、レール18に対して擦動可能である。従ってセクターシュー12は、コンテナリング10に対して擦動可能である。
【0016】
図1では、複数のセグメント14がリング状に配置されている。これらのセグメント14により、キャビティが形成されている。セグメント14の数は、通常3以上20以下である。セグメント14の数は、セクターシュー12の数と一致している。従って本実施形態では、セグメント14の数は、9である。モールド2が、互いにサイズの異なる複数種のセグメント14を有してもよい。
【0017】
それぞれのセグメント14の平面形状は、実質的に扇形である。図2に示されるように、セグメント14は、キャビティ面26と背面28とを有している。背面28は、セクターシュー12の内周面20に当接している。セグメント14は、セクターシュー12に固定されている。固定は、ボルト等の図示されない手段によって達成されている。セクターシュー12とセグメント14との間に、他の部材(ホルダー等)が介在してもよい。
【0018】
モールド2が開かれた状態では、セクターシュー12は図2に示された位置よりも径方向外側(図2における左側)にあり、コンテナリング10は図2に示された位置よりも上方にある。モールド2の閉動作では、コンテナリング10が、徐々に下降する。コンテナリング10の内周面16にその外周面22が押されたセクターシュー12は、径方向内側に向かって、徐々に移動する。この移動により、セクターシュー12とこれに隣接するセクターシュー12との距離が、徐々に小さくなる。セクターシュー12の移動に伴い、セグメント14が、径方向内側に向かって徐々に移動する。この移動により、セグメント14とこれに隣接するセグメント14との距離が、徐々に小さくなる。コンテナリング10の下降が終了した時点で、セグメント14が隣接するセグメント14と当接し、キャビティが形成される。セグメント14が隣接するセグメント14と当接したときが、モールド2が閉じたときである。
【0019】
閉じているモールド2が開かれるとき、コンテナリング10が徐々に上昇する。蟻溝24とレール18とは引っかかっているが、セクターシュー12には重力がかかっているので、このセクターシュー12は上昇しない。セクターシュー12は、コンテナリング10と擦動しつつ、径方向外側に向かって、徐々に移動する。この移動により、セクターシュー12とこれに隣接するセクターシュー12との距離が、徐々に大きくなる。セクターシュー12の移動に伴い、セグメント14が、径方向外側に向かって徐々に移動する。この移動により、セグメント14とこれに隣接するセグメント14との距離が、徐々に大きくなる。
【0020】
図3-5に、セグメント14が示されている。図5において、矢印Yはモールド2の軸方向を表し、矢印Zはモールド2の周方向を表す。前述の通りセグメント14は、キャビティ面26と背面28とを有している。セグメント14はさらに、一対の側面30及び一対の端面32を有している。セグメント14の材質(後述されるプラグを除く)は、金属である。典型的な金属は、アルミニウム合金である。
【0021】
図3及び5に示されるように、キャビティ面26は、4つのメインリッジ34と、多数のサブリッジ36とを有している。それぞれのメインリッジ34は、周方向に延在している。このメインリッジ34は、タイヤのトレッドの周方向溝に対応する。それぞれのサブリッジ36は、周方向に対して傾斜している。このサブリッジ36は、タイヤのトレッドの横溝に対応する。これらのメインリッジ34及びサブリッジ36により、キャビティ面26に多数のリセス38が形成されている。それぞれのリセス38は、タイヤのトレッドのブロックに対応する。リセス38は雌であり、ブロックは雄である。ブロックには、リセス38の形状が転写される。
【0022】
図6及び7に示されるように、セグメント14は、ホール40を有している。このホール40は、メインホール40aとサブホール40bとを含んでいる。メインホール40aの内径は、サブホール40bの内径よりも大きい。サブホール40bは、キャビティ面26に開口している。本実施形態では、サブホール40bは、キャビティ面26のうちのリセス38に開口している。サブホール40bは、その内周面に雌ネジ42を有している。メインホール40aは、サブホール40bから延びている。図示されていないが、メインホール40aは、背面28に開口している。ホール40は、キャビティと背面28とを連通している。
【0023】
セグメント14はさらに、プラグ44を有している。図6において矢印Axは、このプラグ44の軸方向を表す。プラグ44は、ホール40に収容されている。説明の便宜上、図7では、プラグ44がホール40と分離されて示されている。プラグ44が、図7において矢印A1で示される方向へ移動することで、プラグ44がホール40に至る。プラグ44の材質は、金属である。典型的な金属は、炭素鋼、合金鋼及びアルミニウム合金である。合金鋼の具体例として、ステンレス鋼が挙げられる。
【0024】
図8及び9に、プラグ44が示されている。プラグ44は、シャンク46とヘッド48とを有している。図6及び7も併せて参照すれば明らかな通り、ヘッド48は、シャンク46よりも背面28の側に位置している。ヘッド48の外径は、シャンク46の外径よりも大きい。シャンク46は、その外周面に雄ネジ50を有している。本実施形態では、雄ネジ50は、シャンク46の外周面の全体に渡って形成されている。従って雄ネジ50は、プラグ44の先端にまで至っている。この雄ネジ50は、サブホール40bの雌ネジ42と螺合しうる。
【0025】
プラグ44は、トップ面52及びボトム面54を有している。図9Bに示されるように、このプラグ44はさらに、ソケット56、チャンバー58及び4つのベント60を有している。ソケット56は、ボトム面54において開口62を有している。本実施形態では、この開口62は六角形である。換言すれば、ソケット56の断面形状は、非円形である。チャンバー58は、ソケット56からトップ面52の方向に向かって延びている。それぞれのベント60は、チャンバー58からトップ面52に至っている。このベント60は、トップ面52において、開口64を有している。図9Aに示されるように、この開口64の形状は、スリット状である。図6も併せて参照すれば明らかなように、ベント60は、モールド2のキャビティに向けて開口している。ベント60、チャンバー58、ソケット56及びホール40は、このキャビティをモールド2の外部と連通する。本実施形態では、開口64の数は4である。この数は、3以上12以下が好ましい。
【0026】
セグメント14が、チャンバー58を有さないプラグ44を含んでもよい。このプラグ44では、ベント60が、ボトム面54からソケット56に至る。このセグメント14では、ベント60、ソケット56及びホール40が、キャビティをモールド2の外部と連通する。
【0027】
図7において、矢印D1はメインホール40aの内径を表し、矢印D2はサブホール40bの内径を表し、矢印D3はシャンク46の外径を表し、矢印D4はヘッド48の外径を表す。外径D3は、内径D1より小さい。外径D4は、内径D1より小さく、かつ内径D2より大きい。
【0028】
プラグ44は、シャンク46がキャビティ面26の側に位置する姿勢で、背面28からメインホール40aに挿入される。シャンク46の先端がメインホール40aとサブホール40bとの境界Brに至ったのち、工具(六角レンチ等)がソケット56(図9B参照)に嵌められる。この工具の回転によりプラグ44が回転し、雌ネジ42と雄ネジ50とが徐々に螺合する。回転に伴ってプラグ44は、キャビティ面26に向けて前進する。メインホール40aとサブホール40bとの境界Brにヘッド48が至った時点で、プラグ44の進行が終了する。進行が終了したとき、トップ面52は、概ねキャビティ面26と面一である。プラグ44が六角形以外の非円形なソケット56を有してもよい。
【0029】
このプラグ44は螺入によってホール40に取り付けられるので、圧入される場合に比べ、プラグ44にかかる応力は小さい。このプラグ44では、変形が生じにくい。従って、取付け後のプラグ44の開口64(又はベント60)は、寸法精度に優れる。
【0030】
図10に、トップ面52が拡大されて示されている。図10において矢印Woは、開口64の幅を表す。後に詳説されるように、この幅Woは小さい。
【0031】
このモールド2が用いられたタイヤ製造方法では、まず、予備成形工程によってローカバーが得られる。次に、モールド2が開いており、ブラダー(図示されず)が収縮している状態で、ローカバーがモールド2に投入される。ブラダーは、ローカバーの内側に位置する。この段階では、ローカバーのゴム組成物は、未架橋状態である。次に、モールド2が締められ、セグメント14によってキャビティが形成される。次に、ブラダーが膨張する。ローカバーはブラダーによってモールド2のキャビティ面26に押しつけられ、加圧される。この状態のローカバーRcが、図2に示されている。加圧と同時にローカバーRcは、加熱される。加圧と加熱とにより、ゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤが得られる(加硫工程)。このタイヤは、トレッド及びサイドウォールを有している。このトレッドは、複数のセグメント14によって形成されたキャビティによって成形される。サイドウォールは、サイドウォールプレート8によって成形される。ブラダーに代えて中子を有するモールド2にて、ローカバーRcが加圧及び加熱されてもよい。
【0032】
ローカバーRcがキャビティ面26に押しつけられるとき、キャビティ面26とローカバーRcとの間のエアーは、ベント60、チャンバー58、ソケット56及びホール40を通過し、背面28から排出される。この排出により、タイヤにおいてベアーが抑制される。
【0033】
開口64の幅Woが小さいので、この開口64にはゴム組成物が流入しにくい。このモールド2では、ベント60へのゴム組成物の流入に起因するスピューが抑制される。このモールド2により、高品質なタイヤが得られうる。
【0034】
開口64の幅Woは、0.10mm以下が好ましい。開口64の幅Woが0.10mm以下であるベント60には、ゴム組成物が流入しにくい。このベント60を有するモールド2で得られたタイヤには、スピューが生じにくい。スピューの抑制の観点から、幅Woは0.08mm以下がより好ましく、0.06mm以下が特に好ましい。ベアーの抑制の観点から、この幅Woは0.01mm以上が好ましく、0.02mm以上がより好ましく、0.03mm以上が特に好ましい。
【0035】
このモールド2では、雌ネジ42と雄ネジ50との螺合により、プラグ44がホール40に堅固に固定される。従って、プラグ44の姿勢に起因するクリアランスのバラツキは、生じない。このモールド2では、エアーが安定して排出されうる。
【0036】
図7において矢印Lsは、シャンク46の長さを表す。本実施形態では、長さLsは、雄ネジ50の長さでもある。このシャンク46における長さLsと外径D3との比(Ls/D3)は、1.0以上2.5以下が好ましい。この比(Ls/D3)が1.0以上であるモールド2では、高精度なクリアランスが達成されうる。この観点から、比(Ls/D3)は1.3以上がより好ましく、1.5以上が特に好ましい。この比(Ls/D3)が2.5以下であるプラグ44は、強度に優れる。この観点から、比(Ls/D3)は2.2以下がより好ましく、2.0以下が特に好ましい。外径D3は、1.0mm以上20mm以下が好ましい。
【0037】
図9Bにおいて矢印Lvは、ベント60の長さを表す。プラグ44の強度の観点から、この長さLvは1.0mm以上が好ましく、1.3mm以上がより好ましく、1.5mm以上が特に好ましい。プラグ44の製造容易性の観点から、この長さLvは10.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましく、2.0mm以下が特に好ましい。
【0038】
前述の通り、ヘッド48の外径D4は、サブホール40bの内径D2よりも大きい。従って、ヘッド48はサブホール40bを通過し得ない。このモールド2では、キャビティへのプラグ44の脱落が生じない。従って、脱落に起因する、モールド2の損傷、及びタイヤへのプラグ44の混入は、生じない。
【0039】
ベント60に架橋ゴム、堆積物等が詰まったとき、工具がソケット56に嵌められる。この工具の逆回転によりプラグ44が逆回転し、雌ネジ42と雄ネジ50との螺合が解除される。プラグ44は、ホール40を通して取り出される。取出し時にプラグ44にかかる応力は小さいので、プラグ44の変形が抑制される。このプラグ44が洗浄され、再度ホール40に取り付けられうる。損傷を有するプラグ44が廃棄され、新品のプラグ44がホール40に装着されてもよい。
【0040】
本実施形態では、ホール40は、セグメント14に形成されている。ホール40が、セグメント14以外のモールド部品に形成されてもよい。例えば、ホール40がサイドウォールプレート8に形成されてもよい。
【0041】
図11に、他の実施形態に係るタイヤ用モールドのプラグ66が示されている。図11Aはこのプラグ66の平面図であり、図11B図11AのB-B線に沿った断面図であり、図11Cはこのプラグ66の底面図である。このモールドの、プラグ66以外の構成は、図1-10に示されたモールド2の構成と同じである。
【0042】
このプラグ66は、シャンク68とヘッド70とを有している。ヘッド70は、シャンク68よりも背面の側に位置している。ヘッド70の外径は、シャンク68の外径よりも大きい。シャンク68は、その外周面に雄ネジ72を有している。本実施形態では、雄ネジ72は、シャンク68の外周面の全体に渡って形成されている。従って雄ネジ72は、プラグ66の先端にまで至っている。この雄ネジ72は、サブホール40b(図7参照)の雌ネジ42と螺合しうる。
【0043】
プラグ66は、トップ面74及びボトム面76を有している。このプラグ66はさらに、ソケット78、チャンバー80及び複数のベント82を有している。ソケット78は、ボトム面76において開口84を有している。本実施形態では、この開口84は六角形である。換言すれば、ソケット78の断面形状は、非円形である。チャンバー80は、ソケット78からトップ面74の方向に向かって延びている。それぞれのベント82は、チャンバー80からトップ面74に至っている。このベント82は、トップ面74において、開口86を有している。この開口86の形状は、円形状である。ベント82、チャンバー80及びソケット78は、キャビティをモールドの外部と連通する。このベント82により、ベアーが抑制されうる。本実施形態では、開口86の数は19である。この数は、5以上40以下が好ましい。ベント82が、非円形である開口86を有してもよい。
【0044】
図12に、トップ面74が拡大されて示されている。図12において矢印Doは、開口86の内径を表す。この内径Doは、シャンク68の外径D3(図11Bを参照)に比べ、十分に小さい。この開口86(又はベント82)には、ゴム組成物が流入しにくい。このモールドでは、スピューが抑制されうる。
【0045】
開口86の内径Doは、0.20mm以下が好ましい。開口86の内径Doが0.20mm以下であるベント82には、ゴム組成物が流入しにくい。このベント82を有するモールドで得られたタイヤには、スピューが生じにくい。スピューの抑制の観点から、内径Doは0.17mm以下がより好ましく、0.15mm以下が特に好ましい。ベアーの抑制の観点から、この内径Doは0.10mm以上が好ましい。
【0046】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0047】
[項目1]
タイヤ用のモールドであって、
(1)上記モールドのキャビティと背面とを連通しており、その内周面に雌ネジを有するホール、
及び
(2)上記キャビティに向けて開口するベントを含んでおり、かつその外周面に上記雌ネジと螺合する雄ネジを有するプラグ
を備えたタイヤ用のモールド。
【0048】
[項目2]
上記雄ネジが上記プラグの先端にまで至っている、項目1に記載のモールド。
【0049】
[項目3]
上記プラグが、シャンクと、このシャンクよりも背面側に位置しておりかつこのシャンクよりも太いヘッドとを有する、項目1又は2に記載のモールド。
【0050】
[項目4]
上記プラグがこのプラグのボトム面に開口するソケットを有しており、このソケットの断面形状が非円形である、項目1から3のいずれかに記載のモールド。
【0051】
[項目5]
上記開口がスリット形状を有する、項目1から4のいずれかに記載のモールド。
【0052】
[項目6]
上記開口の幅が0.10mm以下である項目5に記載のモールド。
【0053】
[項目7]
上記開口が円形状を有する、項目1から4のいずれかに記載のモールド。
【0054】
[項目8]
上記開口の内径が0.20mm以下である項目7に記載のモールド。
【0055】
[項目9]
A:モールドに、ローカバーを投入する工程、
及び
B:上記ローカバーをモールド内で加圧及び加熱する工程
を備えたタイヤの製造方法であって、
上記工程Aにおいて、
(1)上記モールドのキャビティと背面とを連通しており、その内周面に雌ネジを有するホール、
及び
(2)上記キャビティに向けて開口するベントを含んでおり、かつその外周面に上記雌ネジと螺合する雄ネジを有するプラグ
を有するモールドに上記ローカバーが投入される、タイヤの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上説明されたモールドにより、種々のタイヤが製造されうる。
【符号の説明】
【0057】
2・・・タイヤ用モールド
14・・・セグメント
26・・・キャビティ面
28・・・背面
34・・・メインリッジ
36・・・サブリッジ
38・・・リセス
40・・・ホール
40a・・・メインホール
40b・・・サブホール
42・・・雌ネジ
44・・・プラグ
46・・・シャンク
48・・・ヘッド
50・・・雄ネジ
52・・・トップ面
54・・・ボトム面
56・・・ソケット
58・・・チャンバー
60・・・ベント
64・・・開口
66・・・プラグ
68・・・シャンク
70・・・ヘッド
72・・・雄ネジ
74・・・トップ面
76・・・ボトム面
78・・・ソケット
80・・・チャンバー
82・・・ベント
86・・・開口
図1
図2
図3
図4
図5
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図12