(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066705
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】プレスフィット端子、及び、該プレスフィット端子を有するコネクタ装置。
(51)【国際特許分類】
H01R 12/58 20110101AFI20240509BHJP
【FI】
H01R12/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176303
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】西脇 健治
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB35
5E223AB43
5E223BA27
5E223BB12
5E223CB24
5E223CB63
5E223CD01
5E223CD15
5E223DA34
5E223DB01
5E223DB13
5E223EA03
5E223EA13
(57)【要約】
【課題】簡易な構造を有するプレスフィット端子、及び、該プレスフィット端子を有するコネクタ装置を提供する等。
【解決手段】折り返し部と、折り返し部にて連結された第1及び第2の板片と、基部(第1の取付片)と、板厚方向において基部と対向配置された取付片(第2の取付片)と、接触部を備えるプレスフィット端子である。第1の板片は、折り返し部の近位側に、一方の側に突出するように折り曲げられた第1の近位側弾性接触部を有し、且つ、遠位側に、一方の側とは反対の他方の側に突出するように折り曲げられた第1の遠位側弾性接触部を有する。第2の板片は、第1の方向における折り返し部の近位側に、他方の側に突出するように折り曲げられた第2の近位側弾性接触部を有し、且つ、第1の方向における折り返し部の遠位側に、一方の側に突出するように折り曲げられた第2の遠位側弾性接触部を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体を板厚方向に折り返すことによって形成された折り返し部と、
前記折り返し部にて連結された、第1の方向に沿って並行に延びる第1及び第2の板片と、
前記第1の板片と連結された基部と、
前記第2の板片と連結され、且つ、前記板厚方向において前記基部の少なくとも一部と対向配置された、ハウジングに対する取付片と、
前記取付片と連結された、相手コネクタ端子に対する接触部と、
を備え、
前記第1の板片は、前記第1の方向における前記折り返し部の近位側に、前記基部と前記取付片の双方に対して前記板厚方向における一方の側に突出するように折り曲げられた、スルーホールに対する第1の近位側弾性接触部を有し、且つ、前記第1の方向における前記折り返し部の遠位側に、前記基部と前記取付片の双方に対して前記板厚方向における前記一方の側とは反対の他方の側に突出するように折り曲げられた、スルーホールに対する第1の遠位側弾性接触部を有し、
前記第2の板片は、前記第1の方向における前記折り返し部の近位側に、前記基部と前記取付片の双方に対して前記板厚方向における前記他方の側に突出するように折り曲げられた、スルーホールに対する第2の近位側弾性接触部を有し、且つ、前記第1の方向における前記折り返し部の遠位側に、前記基部と前記取付片の双方に対して前記板厚方向における前記一方の側に突出するように折り曲げられた、スルーホールに対する第2の遠位側弾性接触部を有し、
主として、前記第1の近位側弾性接触部と前記第2の近位側弾性接触部を1つの組として、且つ、前記第1の遠位側弾性接触部と前記第2の遠位側弾性接触部を他の組として、スルーホールに対する押圧力を発揮するように構成されている、
ことを特徴とするプレスフィット端子。
【請求項2】
前記基部が、ハウジングに対する取付片を構成する、請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記第1の近位側弾性接触部と、前記第2の近位側弾性接触部は、前記第1の方向において、略同じ位置に位置付けられている、
及び/又は、
前記第1の遠位側弾性接触部と、前記第2の遠位側弾性接触部は、前記第1の方向において、略同じ位置に位置付けられている、
請求項1に記載されたプレスフィット端子。
【請求項4】
前記第1の近位側弾性接触部と前記第2の近位側弾性接触部が、前記第2の方向において互いに離間されている、
及び/又は、
前記第1の遠位側弾性接触部と前記第2の遠位側弾性接触部が、前記第2の方向において互いに離間されている、請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項5】
前記第1の遠位側弾性接触部が、前記第2の方向において前記第2の板片の側に延びている幅広の第3の遠位側弾性接触部である、
及び/又は、
前記第2の遠位側弾性接触部が、前記第2の方向において前記第1の板片の側に延びている幅広の第4の遠位側弾性接触部である、請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項6】
前記第3の遠位側弾性接触部の少なくとも前記第2の方向における両端部が、前記第1の取付片と連結されている、
及び/又は、
前記第4の遠位側弾性接触部の少なくとも前記第2の方向における両端部が、前記第2の取付片と連結されている、
請求項5に記載のプレスフィット端子。
【請求項7】
前記第3の遠位側弾性接触部の一部が、前記第2の方向において前記第1の取付片と連結されていない、
及び/又は、
前記第4の遠位側弾性接触部の一部が、前記第2の方向において前記第2の取付片と連結されていない、
請求項6に記載のプレスフィット端子。
【請求項8】
前記第1の方向において、弾性接触部の組を更に設けた、請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項9】
前記折り返し部が、スルーホールに対する弾性接触部を形成する、請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項10】
一枚の金属板から形成された、請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載のプレスフィット端子と、前記プレスフィット端子を取り付けることができるハウジング及び基板を有するコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスフィット端子、更に詳細には、板状体を板厚方向にて折り返した構造を有するプレスフィット端子、及び、このプレスフィット端子を有するコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、上記構成を有するプレスフィット用コネクタ端子の一例が示されている。特許文献1において、プレスフィット用コネクタ端子100は、弾力性を有する1枚の略帯形状の金属板10を加工することによって形成されており、、プリント回路基板90の導電性のスルーホール91に挿入される接触部101と、接触部101の反対側に設けたピン部102と、接触部101とピン部102との間に設けられたショルダ部103と、を備えている。
【0003】
金属板10のピン部102及びショルダ部103より先端側の二か所に、プレス絞り加工を施して略半球面状の膨出部11,12が、板厚方向の対向位置に1つずつ形成されており。また、金属板10を膨出部11,12の間に位置する折り返し部13で折り曲げて二つの膨出部11,12の凹曲面11a,12a同士を対向させることによって接触部101が形成されている。
【0004】
この接触部101は、二つの膨出部の凸曲面11d,12d側がそれぞれ外周を向いた状態とされており、全体として略フットボール形状をなし、スルーホールに接触部101を挿入したときに、180度間隔に位置する二つの膨出部11,12の凸曲面11d,12d側がそれぞれスルーホール91の内周面に接触することによって膨出部11,12がそれぞれ凹む方向に弾性変形して、スルーホール91に対する押圧力を生じるようになっている。
【0005】
特許文献1に開示された端子構成、更に言えば、膨出部を利用して形成された接触部は、その構造が複雑であるため、実質的に折り曲げ加工のみによって製造される接触部に比べて、製造コストが増加する傾向がある。また、その複雑な構造故、スルーホールに対する押圧力の調整が困難であり、結果として、リペアを必要とするような繰り返しの使用にも適さない。更に、スルーホールに対する押圧力を、1組の接触部によって発揮させる必要があるため、各接触部においてスルーホールに対する押圧力を大きくする必要があり、結果として、スルーホールへの挿入力が大きくなりがちである。大きな挿入力は、ユーザにとっては取り扱い時の負担が大きい。。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上述した従来技術における問題点を解決することができるプレスフィット端子、及び、該プレスフィット端子を有するコネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様によるプレスフィット端子は、板状体を板厚方向に折り返すことによって形成された折り返し部と、前記折り返し部にて連結された、第1の方向に沿って並行に延びる第1及び第2の板片と、前記第1の板片と連結された基部と、前記第2の板片と連結され、且つ、前記板厚方向において前記基部の少なくとも一部と対向配置された、ハウジングに対する取付片と、前記取付片と連結された、相手コネクタ端子に対する接触部と、を備え、前記第1の板片は、前記第1の方向における前記折り返し部の近位側に、前記基部と前記取付片の双方に対して前記板厚方向における一方の側に突出するように折り曲げられた、スルーホールに対する第1の近位側弾性接触部を有し、且つ、前記第1の方向における前記折り返し部の遠位側に、前記基部と前記取付片の双方に対して前記板厚方向における前記一方の側とは反対の他方の側に突出するように折り曲げられた、スルーホールに対する第1の遠位側弾性接触部を有し、前記第2の板片は、前記第1の方向における前記折り返し部の近位側に、前記基部と前記取付片の双方に対して前記板厚方向における前記他方の側に突出するように折り曲げられた、スルーホールに対する第2の近位側弾性接触部を有し、且つ、前記第1の方向における前記折り返し部の遠位側に、前記基部と前記取付片の双方に対して前記板厚方向における前記一方の側に突出するように折り曲げられた、スルーホールに対する第2の遠位側弾性接触部を有し、主として、前記第1の近位側弾性接触部と前記第2の近位側弾性接触部を1つの組として、且つ、前記第1の遠位側弾性接触部と前記第2の遠位側弾性接触部を他の組として、スルーホールに対する押圧力を発揮するように構成されている、ことを特徴として有する。
この態様のプレスフィット端子は、実質的に折り曲げ加工のみによって製造することができるため、特許文献1に開示されているような複雑な構造を有する製造物に比べて、製造コストを低く抑えることができる。また、スルーホールに対する押圧力を、実質的に、弾性接触部における折り曲げの度合いのみによって調整することができるため、リペアを必要とするような繰り返しの使用にも適したものとなっている。更に、スルーホールに対する押圧力を、2組の弾性接触部によって発揮させるものであるため、各組におけるスルーホールに対する押圧力をそれ程大きくする必要がなく、結果として、各組におけるスルーホールへの挿入力を抑制することができる。更にまた、2組の弾性接触部を設けることにより、スルーホールへの挿入時におけるクリーニング効果が向上する。
【発明の効果】
【0009】
上記の従来技術における問題点を解決することができるプレスフィット端子、及び、該プレスフィット端子を有するコネクタ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態によるプレスフィット端子と、本発明の一実施形態によるコネクタ装置の一部分解斜視図でる。
【
図2】本発明の一実施形態によるプレスフィット端子と、本発明の一実施形態によるコネクタ装置の一部分解斜視図でる。
【
図3】プレスフィット端子を前側から見た斜視図である。
【
図4】プレスフィット端子を後側から見た斜視図である。
【
図5】プレスフィット端子を後側から見た斜視図である。
【
図9】変形例に係るプレスフィット端子の正面図である。
【
図10】変形例に係るプレスフィット端子の平面図である。
【
図11】変形例に係るプレスフィット端子の背面図である
【
図12】プレスフィット接続の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の例示的な実施形態を説明する。説明の便宜のため好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。
【0012】
図1及び
図2に、本発明の一実施形態によるプレスフィット端子と、このプレスフィット端子を設けた本発明の一実施形態によるコネクタ装置の一部分解斜視図を示す。
図1は、前側から見た斜視図、
図2は、後側から見た斜視図である。本コネクタ装置2は、本プレスフィット端子1に加えて、ハウジング5及び基板6を含む。プレスフィット端子1は、ハウジング5に対しては、例えば圧入により固定した状態で、一方、基板6に対しては、固定はせず、リペア等のために着脱可能に取付けた状態で使用する。
【0013】
ハウジング5及び基板6へのプレスフィット端子1の取り付けは、例えば、プレスフィット端子1を、ハウジング5に対して圧入固定した後に(
図1及び
図2に示した状態)、ハウジング5に取り付けたプレスフィット端子1に対して基板6を着脱可能に取り付ける。便宜上、
図1及び
図2では、2個のプレスフィット端子1については、ハウジング5に対して固定等する前の状態を示している。
【0014】
ハウジング5へのプレスフィット端子1の固定は、ハウジング5の後側から行う。ハウジング5の後面53には、各プレスフィット端子1を固定するための複数の貫通穴54が設けられている。各プレスフィット端子1が、これらの貫通穴54に挿入されたとき、プレスフィット端子1の中央付近に設けた第1及び第2の取付片21、22が、各貫通穴54の所定位置に位置決めされた状態で取り付けられる。貫通穴54に取り付けられたときでも、プレスフィット端子1の一端側の少なくとも一部(接触部30等)は、ハウジング5の嵌合空間51に露出し、その他端側の少なくとも一部(折り返し部10等)は、ハウジング5の後側に露出する。
【0015】
露出したプレスフィット端子1の他端側(折り返し部10等)は、基板6に設けたスルーホール61に着脱可能に取り付ける。電気的な接続を可能とするため、スルーホール61の内周面には、めっき60が施されている。スルーホール61に取り付けられることにより、プレスフィット端子30は、基板6に物理的且つ電気的に接続される。
【0016】
プレスフィット端子1がハウジング5及び基板6の双方に取り付けられた状態において、ハウジング5の嵌合空間51にて、プレスフィット端子1の一端側が、コネクタ装置2と嵌合した相手コネクタ装置の端子(図示されていない)と接続されることにより、相手コネクタ装置の端子と基板6は、プレスフィット端子1を介して電気的に接続される。
【0017】
図3に、プレスフィット端子1を前側から見た斜視図を、
図4及び
図5に、プレスフィット端子1を異なる角度で後側から見た斜視図を示し、更に、
図6に、プレスフィット端子1の正面図を、
図7に、その平面図を、更に、
図8に、プレスフィット端子1の背面図を、それぞれ示す。
【0018】
プレスフィット端子1は、板状体、例えば、一枚の金属板に、打ち抜き及び折り曲げ加工を施すことによって形成される。これらの加工は、一般の機器によって容易に行うことができるため、製造コストを安価に抑えることができる。尚、板状体は、金属板に限定されない。例えば、金属以外の材料から成る板状体を加工した後に、必要な部分にメッキを施すことによって導電性を付与してもよい。
【0019】
プレスフィット端子1は、ハウジング5への取り付けに用いる第1及び第2の取付片21、22を中央付近に有し、更に、その一方の側に、基板6のスルーホール61に対するプレスフィット接続に使用する部材(折り返し部10等)を、他方の側に、相手コネクタ装置の端子(図示されていない)との接続に使用する部材(接触部30等)を、それぞれ有する。
【0020】
プレスフィット接続に使用する一方の側の部材には、プレスフィット端子1の一方の端部を形成する折り返し部10と、該折り返し部10にて連結された第1の板片11及び第2の板片12が含まれる。
【0021】
折り返し部10は、板状体を板厚方向「α」に略180度、折り返すことによって形成されている。折り返し部10は、スルーホール61への挿入時に先端を形成する部分であって、その強度が問題となるが、折り返し構造を採用することでその強度が高められている。折り返し部10は、第1の板片11及び第2の板片12と同様に、スルーホール61に対する接触部を形成することもできる。この点については、後述する。
【0022】
第1の板片11及び第2の板片12は、折り返し部10にて連結された状態で、基板6に対する接続方向(第1の方向)「β」に沿って並行に延びている。これら第1の板片11及び第2の板片12は、板厚方向「α」及び第1の方向「β」の双方と直交する板幅方向(第2の方向)「γ」において互いに離間されている。折り返し部10は、第1の板片11を、第1の方向「β」に沿って延ばして折り返した部分101と、第2の板片12を、第1の方向「β」に沿って延ばして折り返した部分102から成る。
【0023】
第1の板片11は、第1の方向「β」における折り返し部10の近位側に、第1の近位側弾性接触部111を有し、且つ、その遠位側に、第1の遠位側弾性接触部112を有する。第1の近位側弾性接触部111は、第1及び第2の取付片21、22の双方に対して板厚方向「α」における一方の側「α1」に突出するように折り曲げられており、一方、第1の遠位側弾性接触部112は、第1及び第2の取付片21、22の双方に対して板厚方向「α」における一方の側とは反対の他方の側「α2」に突出するように折り曲げられている。
【0024】
同様に、第2の板片12は、第1の方向「β」における折り返し部10の近位側に、第2の近位側弾性接触部121を有し、且つ、その遠位側に、第2の遠位側弾性接触部122を有する。第2の近位側弾性接触部121は、第1及び第2の取付片21、22の双方に対して板厚方向「α」における他方の側「α2」に突出するように折り曲げられており、一方、第2の遠位側弾性接触部122は、第1及び第2の取付片21、22の双方に対して板厚方向「α」における一方の側「α1」に突出するように折り曲げられている。
【0025】
これら第1の近位側弾性接触部111等は、スルーホール61へのプレスフィット端子1の挿入時に、スルーホール61の内壁にそれぞれ弾性接触し、スルーホール61の径方向に押圧力を発揮させ、プレスフィット端子1をスルーホール61に取り付けるよう機能する。更に詳細には、これら第1の近位側弾性接触部111等は、主として、第1の近位側弾性接触部111と第2の近位側弾性接触部121を1つの組として、且つ、第1の遠位側弾性接触部112と第2の遠位側弾性接触部122を他の組として、少なくとも板厚方向「α」において、スルーホール61に対する押圧力を発揮する。「主として」と記載したのは、第1の近位側弾性接触部111と第2の遠位側弾性接触部122の間、又は、第1の遠位側弾性接触部112と第2の近位側弾性接触部121との間においても、多少は押圧力を発揮し得るからであり、また、それらの位置関係によっては、大きな押圧力を発揮することもある。
【0026】
第1の近位側弾性接触部111と、第2の近位側弾性接触部121は、第1の方向「β」において、略同じ位置に位置付けられているのが好ましい。同様に、第1の遠位側弾性接触部112と、第2の遠位側弾性接触部122は、第1の方向「β」において、略同じ位置に位置付けられているのが好ましい。このような位置付けとすることにより、第1の近位側弾性接触部111と第2の近位側弾性接触部121の対、及び、第1の遠位側弾性接触部112と第2の遠位側弾性接触部122の対は、それぞれ、スルーホール61に対して、より効率的に押圧力を発揮し得る。勿論、必ずしも、このような位置付けと必要はなく、例えば、押圧力を弱めるために、意図的に、異なる位置に位置付けてもよい。尚、「略同じ位置」とは、厳密に同じ位置である必要はなく、押圧力を効果的に発揮できるような位置であれば足りることを意味する。
【0027】
第1の取付片21は、折り返し部10とは反対側の第1の板片11の端部と、第2の取付片22は、折り返し部10とは反対側の第2の板片12の端部と、それぞれ連結された状態で設けられている。第1及び第2の取付片21、22は共に、第1の方向「β」と第2の方向「γ」によって形成される「β-γ」面において、略矩形状の板面を成している。これら第1及び第2の取付片21、22は、第1の方向「β」において、略同じ位置に位置付けられており、また、それらの大きさは、第1及び第2の板片11、12との連結側の幅広部分、即ち、第1の板片11の幅広部分211と第2の板片12の幅広部分221を除いて略同じものとされている。この結果、対向配置された第1及び第2の取付片21、22は、幅広部分211、221を除き、「β-γ」面において略同じ大きさ及び形状を有し、互いに重ね合わされた状態とされている。このような二枚重ね構成とすることにより、第1及び第2の取付片21、22の強度が高められている。
【0028】
ハウジング5の貫通穴54への取り付けを可能とするため、第1及び第2の取付片21、22の第2の方向「γ」における幅は、相手コネクタ装置の端子との接続に使用する他方の側の部材(接触部30等)の幅より大きく設定されている。また、第2の板片12の幅広部分221の幅は、第1の板片11の幅広部分211の幅より大きく設定され、これにより、幅広部分211と幅広部分221の間に段部230が形成されている。第1及び第2の取付片21、22を、貫通穴54へ取り付ける際、この段部230を利用して、貫通穴54の所定位置に、第1及び第2の取付片21、22を容易に位置決めすることができる。貫通穴54への取り付け強度を高めるため、第1及び第2の取付片21、22のそれぞれに、第2の方向「γ」に突出する係止部210、220を設けてもよい。
【0029】
相手コネクタ装置の端子との接続に使用する他方の側の部材には、プレスフィット端子1の他方の端部を形成する接触部30と、該接触部30を第2の取付片22に連結している膨出部32が含まれる。本実施形態では、接触部30は、折り返し部10と同様に第1の方向「β」に延びているが、接触部30は、相手コネクタ装置の端子との接続方向に沿って延びていれば足り、必ずしも、第1及び第2の板片11、12と同じ方向「β」に沿って延びている必要はない。強度を高めるため、接触部30及び膨出部32は、それらの内部に略半円状の内部空間31を形成するように若干丸められている。
【0030】
図9乃至
図11に、プレスフィット端子の変形例を示す。この変形例の構成によれば、接触部の弾性力を強化することができる。これらの図は、上述した
図6乃至
図8にそれぞれ対応する。
図6乃至
図8に示した実施形態では、第1の近位側弾性接触部111と第2の近位側弾性接触部121は、第2の方向「γ」において互いに完全に離間されており、同様に、第1の遠位側弾性接触部112と第2の遠位側弾性接触部122も、第2の方向「γ」において互いに完全に離間されていた。これに対し、第1の遠位側弾性接触部112を、第2の方向「γ」において第2の板片12の側に延ばして、幅広の第3の遠位側弾性接触部131としてもよく、同様に、第2の遠位側弾性接触部122を、第2の方向「γ」において第1の板片11の側に延ばして、幅広の第4の遠位側弾性接触部132としてもよい。このような幅広の第3の遠位側弾性接触部131及び第4の遠位側弾性接触部132を設けることにより、第1の遠位側弾性接触部112及び第2の遠位側弾性接触部122に比べて、弾性力を、更に言えば、スルーホールに対する押圧力を高めることができる。
【0031】
第3の遠位側弾性接触部131及び第4の遠位側弾性接触部132における接触力を調整、例えば、減ずるため、例えば、貫通穴133、134を設けてもよい。言い換えれば、第3の遠位側弾性接触部131の第2の方向「γ」における両端部131bを、第1の取付片21と完全には連結せずに、一部を連結しない構成としてもよい。同様に、第4の遠位側弾性接触部132の第2の方向「γ」における両端部132bを、第2の取付片22と完全には連結せずに、一部を連結しない態様としもよい。これにより、第3の遠位側弾性接触部131及び第4の遠位側弾性接触部132における接触力を弱めることができ、また、例えば、貫通穴133、134の大きさ及び形状を変更することにより、接触力の微調整を行うことも可能である。
【0032】
図12を参照して、プレスフィット接続の動作を説明する。
図12の(a)は、スルーホール61に対するプレスフィット端子1の挿入前の状態を、一方、
図12の(b)は、挿入後の状態を、断面図で示したものである。
【0033】
スルーホール61にプレスフィット端子1が挿入される際、第1の近位側弾性接触部111等は、第1の近位側弾性接触部111と第2の近位側弾性接触部121を1つの組として、また、第1の遠位側弾性接触部112と第2の遠位側弾性接触部122を他の組として、縮径されつつ、スルーホール61に挿入され、スルーホール61の内壁とそれぞれ弾性接触して、スルーホール61の径方向に押圧力を発揮し、それら全体で、プレスフィット端子1をスルーホール61に取り付けるように機能する。この場合、各第1の近位側弾性接触部111等のスルーホール61に対する押圧力は、それらの折り曲げの度合いを変更することによって容易に調整することができる。従って、各第1の近位側弾性接触部111等は、繰り返しリペアして、容易に再使用することができる。また、本構成では、スルーホール61に対する押圧力を、2組の弾性接触部によって発揮させる構造となっているため、各組におけるスルーホールに対する押圧力をそれ程大きくする必要がなく、結果として、各組におけるスルーホールへの挿入力を低く設定することができる。更に、2組の弾性接触部を設けることにより、スルーホールへの挿入時にクリーニング効果を期待することができる。更にまた、例えば、第1の遠位側弾性接触部112に代えて、上述した幅広の第3の遠位側弾性接触部131を用いることにより、また、第2の遠位側弾性接触部122に代えて、上述した幅広の第4の遠位側弾性接触部132を用いることにより、第1の近位側弾性接触部111と第2の近位側弾性接触部121によってスルーホール61に対して発揮されるスルーホール61に対する押圧力を、第3の遠位側弾性接触部131と第4の遠位側弾性接触部132によって発揮される押圧力よりも小さくして、言い換えれば、スルーホール61に対するプレスフィット端子1の挿入力を段階的に大きくするよう設定して、挿入をスムーズにすることもできる。挿入力をこのように段階的に強める構成とすることにより、接続作業の状態をユーザに認識させ、挿入途中に、ユーザが挿入作業を中止してしまうといった誤動作を防止することもできる。
【0034】
更に、任意であるが、第1の方向「β」における、基板6の厚さ及び第1の近位側弾性接触部111等の長さその他の条件を調整することによって、第1の近位側弾性接触部111等と同様に、スルーホール61に挿通させた折り返し部10を、スルーホール61に対する弾性接触部として形成することもできる。折り返し部10、例えば、第1の近位側弾性接触部111と第2の近位側弾性接触部121との境目付近10aは、第1の近位側弾性接触部111等が、スルーホール61によって縮径された際、特に、第1の近位側弾性接触部111と第2の近位側弾性接触部121が縮径された際に、追従的に拡径され、この結果、弾性接触部として機能し得る。
【0035】
本発明の更に別の態様、特徴及び効果は、本発明を実施するよう意図された最良の態様を含めて、多数の特定の実施形態及び実施例を示すだけで、以下の詳細な説明から容易に明らかとなろう。
例えば、第1の方向「β」において、2組のみならず、更に多くの弾性接触部の組を設けてもよい。
また、第1の取付片21又は第2の取付片22のいずれか一方のみを、取付片として構成し、他方については、取り付けに寄与しない、単なる基部(21)として構成してもよい。特に、接触部30を設けていない第1の取付片21については、ハウジング5に取り付けられていない場合でも、端子の機能に大きな影響を与えることはほとんどないことが多い。特に図示しないが、例えば、第1の取付片21を、単なる基部(21)として構成する場合、係止部210は設けず、また、第2の方向「γ」における幅を、第2の取付片22の幅よりも小さく設定する。この場合、基部(21)は、貫通穴54に対しては実質的に取付けられることがないため、例えば、第2の取付片21に固着されるのが好ましい。
本発明は、他の及び異なる実施形態で構成することもでき、そしてその多数の細部は、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、種々の明らかな観点において変更することができる。従って、図面及び説明は、例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 プレスフィット端子
2 コネクタ装置
5 ハウジング
6 基板
10 折り返し部
11 第1の板片
12 第2の板片
21 第1の取付片
22 第2の取付片
30 接触部
61 スルーホール
111 第1の近位側弾性接触部
112 第1の遠位側弾性接触部
121 第2の近位側弾性接触部
122 第2の遠位側弾性接触部
α 板厚方向
β 第1の方向
γ 第2の方向