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特開2024-66706結晶膜の製造方法及び結晶膜の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066706
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】結晶膜の製造方法及び結晶膜の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/16 20060101AFI20240509BHJP
   C30B 25/14 20060101ALI20240509BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20240509BHJP
   H01L 21/365 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C30B29/16
C30B25/14
C23C16/40
H01L21/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176312
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】515277942
【氏名又は名称】株式会社ノベルクリスタルテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 公平
(72)【発明者】
【氏名】江間 研太郎
(72)【発明者】
【氏名】ティユ クァントゥ
(72)【発明者】
【氏名】林 家弘
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077BB10
4G077DB02
4G077DB03
4G077DB05
4G077DB11
4G077EG22
4G077TG02
4G077TH03
4K030AA01
4K030AA03
4K030AA14
4K030AA17
4K030BA08
4K030BA42
4K030BB02
4K030CA04
4K030CA05
4K030EA01
4K030FA10
5F045AA03
5F045AA06
5F045AB40
5F045AC00
5F045AC11
5F045AC13
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC19
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AD13
5F045AD14
5F045AE29
5F045AF01
5F045AF09
5F045BB09
5F045BB14
5F045BB16
5F045DA53
5F045DP04
5F045DP09
5F045EB03
5F045EF02
5F045EF11
5F045EK06
(57)【要約】
【課題】酸化ガリウムの結晶膜の製造方法であって、意図しない不純物の混入をより効果的に抑えつつ、結晶膜を高速で成長させることができる結晶膜の製造方法、及びその結晶膜の製造方法に用いる結晶膜の製造装置を提供する。
【解決手段】一実施の形態として、Ga原料ガス、O原料ガス、及びにCl含有ガスに半導体基板10を曝し、半導体基板10上に酸化ガリウムの結晶膜12を形成する工程を含み、前記Ga原料ガスが、Gaガス又はGaOガスであり、前記O原料ガスが、Oガス、HOガス、又はOガスとHOガスの混合ガスであり、前記Cl含有ガスが、HClガス、Clガス、又はHClガスとClガスの混合ガスである、結晶膜12の製造方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ga原料ガス、O原料ガス、及びにCl含有ガスに半導体基板を曝し、前記半導体基板上に酸化ガリウムの結晶膜を形成する工程を含み、
前記Ga原料ガスが、Gaガス又はGaOガスであり、
前記O原料ガスが、Oガス、HOガス、又はOガスとHOガスの混合ガスであり、
前記Cl含有ガスが、HClガス、Clガス、又はHClガスとClガスの混合ガスである、
結晶膜の製造方法。
【請求項2】
前記Ga原料ガスが、Hガスを用いて生成されるGaOガスであり、
前記結晶膜を形成する工程を、内側に露出したSiを含む材料からなる部分を含む反応炉内で、前記Hガスが前記Siを含む材料からなる部分に触れることを抑えつつ実施する、
請求項1に記載の結晶膜の製造方法。
【請求項3】
原料ガスを生成するための、Siを含まない材料からなる原料ガス生成容器と、
前記原料ガス生成容器の排出口から排出される原料ガスを用いて半導体基板上に結晶膜を形成するための結晶膜形成領域と、
前記原料ガス生成容器の排出口から前記結晶膜形成領域までの領域及び前記結晶膜形成領域を囲む、Siを含まない材料からなる管状部材と、
前記原料ガス生成容器、前記膜形成領域、及び前記管状部材を収容する、内側に露出したSiを含む材料からなる部分を含む反応炉と、
を備えた、
結晶膜の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶膜の製造方法及び結晶膜の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化ガリウムの結晶膜を形成する方法であって、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法の欠点を解消することにより、ドーパントとして働く不純物の意図しない混入を抑えつつ、結晶膜を高速で成長させる方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の方法によれば、GaOガスなどの酸化ガリウムの原料ガスの生成において、酸化ガリウムの中でドーパントとして働くClなどを含む物質が生成されないため、結晶膜へのドーパントとして働く不純物の意図しない混入を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-48776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法によれば、Ga原料ガスであるGaOガスとO原料ガスであるOガスの反応が激しく、Ga酸化物の粉体が気相中で生成され、不純物として結晶膜中に取り込まれるため、高純度の結晶膜を得ることが困難である。
【0006】
本発明の目的は、酸化ガリウムの結晶膜の製造方法であって、意図しない不純物の混入をより効果的に抑えつつ、結晶膜を高速で成長させることができる結晶膜の製造方法、及びその結晶膜の製造方法に用いる結晶膜の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記の結晶膜の製造方法及び結晶膜の製造装置を提供する。
【0008】
[1]Ga原料ガス、O原料ガス、及びにCl含有ガスに半導体基板を曝し、前記半導体基板上に酸化ガリウムの結晶膜を形成する工程を含み、前記Ga原料ガスが、Gaガス又はGaOガスであり、前記O原料ガスが、Oガス、HOガス、又はOガスとHOガスの混合ガスであり、前記Cl含有ガスが、HClガス、Clガス、又はHClガスとClガスの混合ガスである、結晶膜の製造方法。
[2]前記Ga原料ガスが、Hガスを用いて生成されるGaOガスであり、前記結晶膜を形成する工程を、内側に露出したSiを含む材料からなる部分を含む反応炉内で、前記Hガスが前記Siを含む材料からなる部分に触れることを抑えつつ実施する、上記[1]に記載の結晶膜の製造方法。
[3]原料ガスを生成するための、Siを含まない材料からなる原料ガス生成容器と、前記原料ガス生成容器の排出口から排出される原料ガスを用いて半導体基板上に結晶膜を形成するための結晶膜形成領域と、前記原料ガス生成容器の排出口から前記結晶膜形成領域までの領域及び前記結晶膜形成領域を囲む、Siを含まない材料からなる管状部材と、前記原料ガス生成容器、前記膜形成領域、及び前記管状部材を収容する、内側に露出したSiを含む材料からなる部分を含む反応炉と、を備えた、結晶膜の製造装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸化ガリウムの結晶膜の製造方法であって、意図しない不純物の混入をより効果的に抑えつつ、結晶膜を高速で成長させることができる結晶膜の製造方法、及びその結晶膜の製造方法に用いる結晶膜の製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る結晶積層構造体の垂直断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る気相成長装置の垂直断面図である。
図3図3は、O原料ガスとしてHOガス、Cl含有ガスとしてHClガスをそれぞれ用いてGaからなる結晶膜を成長させる場合の、成長温度に対する駆動力ΔPをプロットしたグラフである。
図4図4は、O原料ガスとしてHOガス、Cl含有ガスとしてHClガスをそれぞれ用いてGaからなる結晶膜を成長させる場合の、VI/IIIに対する駆動力ΔPをプロットしたグラフである。
図5図5は、O原料ガスとしてOガス、Cl含有ガスとしてHClガスをそれぞれ用いてGaからなる結晶膜を成長させる場合の、成長温度に対する駆動力ΔPをプロットしたグラフである。
図6図6は、O原料ガスとしてOガス、Cl含有ガスとしてHClガスをそれぞれ用いてGaからなる結晶膜を成長させる場合の、VI/IIIに対する駆動力ΔPをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態〕
(結晶積層構造体の構成)
図1は、本発明の実施の形態に係る結晶積層構造体1の垂直断面図である。結晶積層構造体1は、半導体基板10と、半導体基板10の主面11上にエピタキシャル結晶成長により形成された、酸化ガリウムの単結晶からなる結晶膜12を有する。
【0012】
結晶膜12は、典型的には、β型の結晶構造を有する酸化ガリウム(β-Ga)の単結晶からなる。また、結晶膜12は、Sn、Siなどのドーパントを含んでもよい。
【0013】
半導体基板10は、サファイア基板、酸化ガリウムの単結晶からなる酸化ガリウム単結晶基板などの、結晶膜12のエピタキシャル成長の下地基板として用いることのできる基板である。半導体基板10は、導電型不純物を含んでいてもよい。
【0014】
結晶膜12は、OVPE(Oxide Vapor Phase Epitaxy)法、SOVPE(Sub-Oxide Vapor Phase Epitaxy)法、又はLP-CVD(Low-Pressure Chemical Vapor Deposition)法を利用した気相成長により形成される。OVPE法とSOVPE法を用いる場合、Ga原料ガスとしてGaOガスを用いる。LP-CVD法を用いる場合には、Ga原料ガスとしてGaガスを用いる。これらのいずれの方法においても、Ga原料ガスであるGaOガス又はGaガスの生成において、酸化ガリウムの中でドーパントとして働くCl、Cなどの不純物を含む物質が生成されない。
【0015】
結晶膜12は、上記のGa原料ガスなどの酸化反応により形成され、また、そのGa原料ガスなどの生成において結晶膜12の中でドーパントとして働くCl、Cなどの不純物を含む物質が生成されないため、意図せずに混入するドーパントとして機能する不純物の濃度が非常に低い。例えば、結晶膜12のCl濃度は5×1014/cm以下、C濃度は2×1016/cm以下である。
【0016】
結晶膜12が、Si、Snなどの意図的に添加されたドーパントを含む場合、上述のように結晶膜12への意図しないドーパントの添加が抑えられるため、意図的に添加するドーパントの濃度を高い精度で制御することができる。また、結晶膜12が、Si、Snなどの意図的に添加されたドーパントを含まない場合、上述のように結晶膜12への意図しないドーパントの添加が抑えられるため、例えば、結晶膜12を用いて製造される半導体デバイスに優れた耐圧特性を付与することができる。
【0017】
なお、HVPE法やTHVPE(tri-halide vapor phase epitaxy)法では、Gaのハライド化合物(GaCl、GaCl)を原料として用いるため、結晶膜のCl濃度を1×1016/cm以下に抑えることは非常に困難である。また、有機金属化学気相成長法(MOCVD法)では、有機金属原料(トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa))を原料として用いるため、結晶膜のC濃度を3×1016/cm以下に抑えることは非常に困難である。
【0018】
また、結晶膜12の形成に用いられるOVPE法、SOVPE法、LP-CVD法は、いずれも結晶膜の成長プロセスが似ているHVPE法と同様に、高速で結晶膜を形成することができる方法であり、例えば、酸化ガリウムの結晶膜の成長法として知られているMBE(Molecular Beam Epitaxy)法と比較すると、結晶膜の成長速度が格段に大きい。
【0019】
また、結晶膜12を形成する際には、Ga酸化物の粉体の気相中での生成を抑えるために、HClガス、Clガス、又はHClガスとClガスの混合ガスであるCl含有ガスが用いられる。このため、結晶膜12へのGa酸化物の粉体の混入が抑えられており、結晶膜12は高い純度を有する。
【0020】
なお、半導体基板10からの不純物拡散を防ぐなどのため、半導体基板10と結晶膜12の間にバッファ層が形成されてもよい。
【0021】
(気相成長装置の構造)
以下に、本実施の形態に係る結晶膜の製造装置である、結晶膜12の形成に用いる気相成長装置の構造の一例について説明する。
【0022】
図2は、本発明の実施の形態に係る気相成長装置2の垂直断面図である。気相成長装置2は、第1のガス導入ポート21、第2のガス導入ポート22、第3のガス導入ポート23、第4のガス導入ポート24、及び排気ポート25を有する反応炉20と、反応炉20に収容された原料ガス生成容器26、管状部材27、及び基板保持具28と、反応炉20の周囲に設置され、反応炉20内の所定の領域を加熱する第1の加熱手段29a及び第2の加熱手段29bを備える。なお、図2に示されるガスや原料ガス生成容器26内のGa原料の種類は、OVPE法を用いる場合の一例である。
【0023】
反応炉20は、管状の本体部200と、本体部200の両端を塞ぐ蓋201、202を有する。例えば、本体部200は石英ガラスなどのSiを含む材料からなり、蓋201、202はSUSからなる。なお、管状とは、断面が円形の円管だけでなく、断面が多角形の多角形管などの円管以外の形状も含む。
【0024】
反応炉20は、原料ガス生成容器26内のGa原料ガスが生成される原料反応領域R1と、原料ガス生成容器26の排出口261から排出されるGa原料ガス、第4のガス導入ポート24から導入されるO原料ガスなどを用いて半導体基板10上に結晶膜12を形成するための結晶膜形成領域R2を有する。半導体基板10を保持するための基板保持具28は、結晶膜形成領域R2に設置される。
【0025】
第1のガス導入ポート21は、OVPE法を用いる場合は、Ga原料ガスの生成に用いるガスをキャリアガスとしてのNガス、Arガスなどの不活性ガスとともに原料ガス生成容器26内に流入させるために用いられる。また、SOVPE法を用いる場合は、Ga原料ガスのキャリアガスとしてのNガス、Arガスなどの不活性ガスを原料ガス生成容器26内に流入させるために用いられる。また、LP-CVD法を用いる場合は、キャリアガスとしてのNガス、Arガスなどの不活性ガスを原料ガス生成容器26内に流入させるために用いられる。
【0026】
OVPE法を用いる場合は、原料ガス生成容器26で生成されるGa原料ガスであるGaOガスのO原料としてのHOガスを、第1のガス導入ポート21から原料ガス生成容器26内に導入する。また、原料ガス生成容器26の内壁に付着するGaをエッチングして、原料ガス生成容器26の排出口261からGaOガスを効率よく排出するため、HOガスと併せてHガスを第1のガス導入ポート21から原料ガス生成容器26内に導入することが好ましい。SOVPE法を用いる場合は、原料ガス生成容器26の内壁に付着するGaをエッチングして、原料ガス生成容器26の排出口261からGaOガスを効率よく排出するため、微量のHガスを第1のガス導入ポート21から原料ガス生成容器26内に導入することが好ましい。
【0027】
第1のガス導入ポート21は、Hガスに触れても分解されることがないアルミナなどの材料からなる。このため、Hガスを原料ガス生成容器26内に導入する場合であっても、第1のガス導入ポート21がHガスによって分解されることがない。第1のガス導入ポート21が石英ガラスなどのSiを含む材料からなる場合は、反応炉20内の加熱された雰囲気中でHガスに触れると分解され、脱離したSiが結晶膜12にドナー不純物として取り込まれてしまうおそれがある。例えば、石英ガラスは、およそ700℃以上の温度条件下でHガスに触れると分解される。なお、Hガスを原料ガス生成容器26内に導入しない場合には、第1のガス導入ポート21の材料として石英ガラスなどのSiを含む材料を用いてもよい。
【0028】
第2のガス導入ポート22は、反応炉20の手前側である蓋201側からキャリアガスとしてのNガス、Arガスなどの不活性ガスを導入するために用いられる。第2のガス導入ポート22は、例えば、SUSからなる。
【0029】
第3のガス導入ポート23は、Ga酸化物の粉体の気相中での生成を抑えるためのHClガス、Clガス、又はHClガスとClガスの混合ガスであるCl含有ガスを、キャリアガスとしてのNガス、Arガスなどの不活性ガスとともに結晶膜形成領域R2に導入するために用いられる。また、結晶膜12にSiなどのドーパントを添加する場合には、SiClなどのドーパント原料ガスを第3のガス導入ポート23から結晶膜形成領域R2に導入する。
【0030】
第4のガス導入ポート24は、結晶膜12のO原料ガスとしてのOガス、HOガス、又はOガスとHOガスの混合ガスをキャリアガスとしてのNガス、Arガスなどの不活性ガスとともに結晶膜形成領域R2に導入するために用いられる。
【0031】
第3のガス導入ポート23と第4のガス導入ポート24は、Hガスに触れても分解されることがないアルミナなどの材料からなる。このため、Hガスを原料ガス生成容器26内に導入する場合や結晶膜12のO原料ガスとしてHOガスを用いる場合であっても、第3のガス導入ポート23と第4のガス導入ポート24がHガスによって分解されることがない。第3のガス導入ポート23と第4のガス導入ポート24が石英ガラスなどのSiを含む材料からなる場合は、反応炉20内の加熱された雰囲気中でHガスに触れると分解され、脱離したSiが結晶膜12にドナー不純物として取り込まれてしまうおそれがある。なお、Hガスを原料ガス生成容器26内に導入せず、かつ結晶膜12のO原料ガスとしてHOガスを用いない場合には、第3のガス導入ポート23と第4のガス導入ポート24の材料として石英ガラスなどのSiを含む材料を用いてもよい。
【0032】
原料ガス生成容器26は、Ga原料ガスを生成するためのGa原料が収容される容器である。原料ガス生成容器26に収容されるGa原料は、OVPE法又はLP-CVD法を用いる場合は液体の金属Ga、SOVPE法を用いる場合は固体(例えば、単結晶のバルク又は多結晶の粉末)のGaと液体の金属Gaである。原料ガス生成容器26内で生成されるGa原料ガスや、第1のガス導入ポート21から原料ガス生成容器26内に導入されるHガスやキャリアガスは、原料ガス生成容器26の排出口261のみから排出される。
【0033】
原料ガス生成容器26は、Hガスに触れても分解されることがないアルミナやサファイアなどの材料からなる。このため、Hガスを原料ガス生成容器26内に導入する場合や結晶膜12のO原料ガスとしてHOガスを用いる場合であっても、原料ガス生成容器26がHガスによって分解されることがない。原料ガス生成容器26が石英ガラスなどのSiを含む材料からなる場合は、反応炉20内の加熱された雰囲気中でHガスに触れると分解され、脱離したSiが結晶膜12にドナー不純物として取り込まれてしまうおそれがある。なお、Hガスを原料ガス生成容器26内に導入せず、かつ結晶膜12のO原料ガスとしてHOガスを用いない場合には、原料ガス生成容器26の材料として石英ガラスなどのSiを含む材料を用いてもよい。
【0034】
第1の加熱手段29aと第2の加熱手段29bは、反応炉20内の原料反応領域R1と結晶膜形成領域R2をそれぞれ加熱することができる。第1の加熱手段29aと第2の加熱手段29bは、例えば、抵抗加熱式や輻射加熱式の加熱装置である。
【0035】
管状部材27は、原料ガス生成容器26の排出口261から結晶膜形成領域R2までの領域及び結晶膜形成領域R2を囲む。すなわち、原料ガス生成容器26の排出口261から結晶膜形成領域R2までの領域及び結晶膜形成領域R2と、反応炉20の本体部200との間に、管状部材27が配置されている。なお、管状とは、断面が円形の円管だけでなく、断面が多角形の多角形管などの円管以外の形状も含む。
【0036】
管状部材27は、アルミナなどのSiを含まない材料からなり、Hガスに触れても分解されることがない。反応炉20の本体部200が石英ガラスなどのSiを含む材料からなる場合など、反応炉20が内側に露出したSiを含む材料からなる部分を含む場合であって、かつ、Hガスを原料ガス生成容器26内に導入する場合や結晶膜12のO原料ガスとしてHOガスを用いる場合には、反応炉20内の加熱された雰囲気中でHガスがSiを含む材料を分解することにより反応炉20から脱離したSiが結晶膜12にドナー不純物として取り込まれてしまうおそれがある。そこで、管状部材27を用いることにより、反応炉20のSiを含む材料からなる部分がHガスに曝されることを抑制できる。なお、Hガスを原料ガス生成容器26内に導入せず、かつ結晶膜12のO原料ガスとしてHOガスを用いない場合には、管状部材27を用いなくてもよい。
【0037】
(結晶膜の製造方法)
以下に、本実施の形態に係る結晶膜12を形成する工程の例を、OVPE法、SOVPE法、LP-CVD法を用いる場合についてそれぞれ説明する。
【0038】
<OVPE法を用いる場合>
まず、第1の加熱手段29aを用いて反応炉20の原料反応領域R1を加熱し、原料反応領域R1の雰囲気温度を所定の温度、例えば500~900℃に保った状態で、HOガスとHガスをキャリアガスとともに第1のガス導入ポート21から原料ガス生成容器26内の原料反応領域R1に導入する。
【0039】
そして、原料ガス生成容器26に収容されている金属GaとHOガスが反応してGaOガスが生成されて、原料ガス生成容器26の排出口261から排出される。生成されたGaOガスは、GaOガスとともに原料ガス生成容器26の排出口261から排出されたキャリアガスや第2のガス導入ポート22から導入されたキャリアガスによって結晶膜形成領域R2へ運ばれる。
【0040】
次に、第2の加熱手段29bを用いて反応炉20の結晶膜形成領域R2の雰囲気温度を所定の温度、例えば800~1100℃に保った状態で、結晶膜形成領域R2において、原料反応領域R1で生成されたGaOガスと、第4のガス導入ポート24から導入された結晶膜12のO原料ガスとしてのOガス、HOガス、又はOガスとHOガスの混合ガスと、第3のガス導入ポート23から導入されたHClガス、Clガス、又はHClガスとClガスの混合ガスであるCl含有ガスとを混合させ、その混合ガスに半導体基板10を曝し、半導体基板10の主面11上に結晶膜12をエピタキシャル成長させる。このとき、反応炉20を収容する炉内の結晶膜形成領域R2における圧力を、例えば、1atmに保つ。
【0041】
ここで、Si等のドーパントを結晶膜12に添加する場合には、GaOガス、O原料ガス、Cl含有ガスに加えて、第3のガス導入ポート23より、ドーパント原料ガス(例えば、四塩化ケイ素(SiCl)等の塩化物系ガス)も結晶膜形成領域R2に導入する。
【0042】
ガスを原料ガス生成容器26内に導入する場合は、原料ガス生成容器26の排出口261からGaOガスとともに排出されたHガスが結晶膜形成領域R2まで流れる。また、結晶膜12のO原料ガスとしてHOガスを用いる場合は、結晶膜形成領域R2において結晶膜12の成長の過程でHガスが生じる。これらの場合であっても、管状部材27が、原料ガス生成容器26の排出口261から結晶膜形成領域R2までの領域及び結晶膜形成領域R2を囲んでいるため、石英ガラスなどのSiを含む材料を分解し得るHガスが反応炉20の本体部200の内面に触れることを抑えつつ、結晶膜12を形成できる。このため、反応炉20が内側に露出したSiを含む材料からなる部分を含む場合であっても、そのSiを含む材料からなる部分がHガスによって分解されて、反応炉20から脱離したSiが結晶膜12にドナー不純物として取り込まれることを抑制できる。
【0043】
また、結晶膜12をエピタキシャル成長させる際に結晶膜12の原料ガスに加えてCl含有ガスを供給することにより、Ga酸化物の粉体が気相中で生成されることを抑制できる。これは、Cl含有ガスがGa酸化物の粉体を分解するためであると考えられる。
【0044】
図3は、O原料ガスとしてHOガス、Cl含有ガスとしてHClガスをそれぞれ用いてGaからなる結晶膜12を成長させる場合の、成長温度に対する駆動力ΔPをプロットしたグラフである。この場合のGa生成の反応式は、GaO+2HO→Ga+2Hである。
【0045】
ここで、駆動力ΔPは、結晶の成長のし易さの指標となるものであり、原料供給分圧から反応平衡分圧を引いたものに等しい。駆動力ΔPの値が大きいと結晶が成長しやすいが、一方で、値が大きすぎると過剰反応を生じ、気相中でのガリウム酸化物の粉体の発生などを引き起こす。
【0046】
図3には、RHClが0、0.1、0.25、0.5、1.0であるときのデータが含まれている。このRHClは、GaOガスの供給分圧PGa2Oに対するHClガスの供給分圧PHClの比の値である。すなわち、RHCl=PHCl/PGa2Oである。
【0047】
図3は、HClガスを供給し、その供給量を制御することにより、結晶膜12の成長の駆動力を制御できることを示している。これは、HClガスがGa酸化物の粉体を分解することにより駆動力が低下することによると考えられる。例えば、図3では全圧を1atm、GaOガスの供給分圧PGa2Oを1.5×10-4atm、HOガスの供給分圧PH2Oを3.0×10-3atm、Ga原子供給量に対するO原子供給量の比の値であるVI/IIIを10とそれぞれ設定しており、この条件下では、RHClを0.5に設定することにより、成長温度が約900K~1500K(約600~1200℃)の範囲内で駆動力をほぼ線形的に変化させられることがわかる。
【0048】
図4は、O原料ガスとしてHOガス、Cl含有ガスとしてHClガスをそれぞれ用いてGaからなる結晶膜12を成長させる場合の、VI/IIIに対する駆動力ΔPをプロットしたグラフである。図4には、RHClが0、0.2、0.5、1.0、2.0であるときのデータが含まれている。
【0049】
図4も、図3と同様に、HClガスを供給し、その供給量を制御することにより、結晶膜12の成長の駆動力を制御できることを示している。例えば、図4では全圧を1atm、GaOガスの供給分圧PGa2Oを1.5×10-4atm、成長温度を1300Kとそれぞれ設定しており、この条件下では、RHClを0~1に設定することにより、VI/IIIが1~500の範囲内で良好な成膜が期待できる。
【0050】
このように、HClガスの供給量により、結晶膜12の成長の駆動力を制御できるため、駆動力が大きくなりすぎないようにして、GaOガスとHOガスとの過剰反応による、気相中でのGa酸化物の粉体の生成を抑制しつつ、駆動力が小さくなりすぎないようにして、結晶膜12を成長させることができる。また、結晶膜12のO原料ガスとしてHOガスの代わりにOガス、又はOガスとHOガスの混合ガスを用いた場合や、Cl含有ガスとしてHClガスの代わりにClガス、又はHClガスとClガスの混合ガスを用いた場合にも、同様の効果が得られる。
【0051】
<SOVPE法を用いる場合>
まず、第1の加熱手段29aを用いて反応炉20の原料反応領域R1を加熱し、原料反応領域R1の雰囲気温度を所定の温度、例えば500~900℃に保った状態で、キャリアガスを第1のガス導入ポート21から原料ガス生成容器26内の原料反応領域R1に導入する。
【0052】
そして、原料ガス生成容器26に収容されているGaと金属Gaが反応してGaOガスが生成されて、原料ガス生成容器26の排出口261から排出される。生成されたGaOガスは、GaOガスとともに原料ガス生成容器26の排出口261から排出されたキャリアガスや第2のガス導入ポート22から導入されたキャリアガスによって結晶膜形成領域R2へ運ばれる。
【0053】
次に、第2の加熱手段29bを用いて反応炉20の結晶膜形成領域R2の雰囲気温度を所定の温度、例えば800~1100℃に保った状態で、結晶膜形成領域R2において、原料反応領域R1で生成されたGaOガスと、第4のガス導入ポート24から導入された結晶膜12のO原料ガスとしてのOガス、HOガス、又はOガスとHOガスの混合ガスと、第3のガス導入ポート23から導入されたHClガス、Clガス、又はHClガスとClガスの混合ガスであるCl含有ガスとを混合させ、その混合ガスに半導体基板10を曝し、半導体基板10の主面11上に結晶膜12をエピタキシャル成長させる。このとき、反応炉20を収容する炉内の結晶膜形成領域R2における圧力を、例えば、1atmに保つ。
【0054】
ここで、Si等のドーパントを結晶膜12に添加する場合には、GaOガス、O原料ガス、Cl含有ガスに加えて、第3のガス導入ポート23より、ドーパント原料ガス(例えば、四塩化ケイ素(SiCl)等の塩化物系ガス)も結晶膜形成領域R2に導入する。
【0055】
微量のHガスを原料ガス生成容器26内に導入する場合は、原料ガス生成容器26の排出口261からGaOガスとともに排出されたHガスが結晶膜形成領域R2まで流れる。また、結晶膜12のO原料ガスとしてHOガスを用いる場合は、結晶膜形成領域R2において結晶膜12の成長の過程でHガスが生じる。これらの場合であっても、管状部材27が、原料ガス生成容器26の排出口261から結晶膜形成領域R2までの領域及び結晶膜形成領域R2を囲んでいるため、石英ガラスなどのSiを含む材料を分解し得るHガスが反応炉20の本体部200の内面に触れることを抑えつつ、結晶膜12を形成できる。このため、反応炉20が内側に露出したSiを含む材料からなる部分を含む場合であっても、そのSiを含む材料からなる部分がHガスによって分解されて、反応炉20から脱離したSiが結晶膜12にドナー不純物として取り込まれることを抑制できる。
【0056】
また、結晶膜12をエピタキシャル成長させる際に結晶膜12の原料ガスに加えてCl含有ガスを供給することにより、Ga酸化物の粉体が気相中で生成されることを抑制できる。これは、Cl含有ガスがGa酸化物の粉体を分解するためであると考えられる。
【0057】
なお、図3図4を用いて、OVPE法を用いる場合にHClガスの供給量により結晶膜12の成長の駆動力を制御できることを示したが、結晶膜12のGa原料ガスとしてOVPE法を用いる場合と同じGaOガスを生成するSOVPE法においても、同様である。
【0058】
<LP-CVD法を用いる場合>
まず、第1の加熱手段29aを用いて反応炉20の原料反応領域R1を加熱し、原料反応領域R1の雰囲気温度を所定の温度、例えば500~900℃に保った状態で、キャリアガスを第1のガス導入ポート21から原料ガス生成容器26内の原料反応領域R1に導入する。
【0059】
そして、原料ガス生成容器26に収容されている金属Gaが気化してGaガスが生成されて、原料ガス生成容器26の排出口261から排出される。生成されたGaガスは、Gaガスとともに原料ガス生成容器26の排出口261から排出されたキャリアガスや第2のガス導入ポート22から導入されたキャリアガスによって結晶膜形成領域R2へ運ばれる。
【0060】
次に、第2の加熱手段29bを用いて反応炉20の結晶膜形成領域R2の雰囲気温度を所定の温度、例えば800~1100℃に保った状態で、結晶膜形成領域R2において、原料反応領域R1で生成されたGaガスと、第4のガス導入ポート24から導入された結晶膜12のO原料ガスとしてのOガス、HOガス、又はOガスとHOガスの混合ガスと、第3のガス導入ポート23から導入されたHClガス、Clガス、又はHClガスとClガスの混合ガスであるCl含有ガスとを混合させ、その混合ガスに半導体基板10を曝し、半導体基板10の主面11上に結晶膜12をエピタキシャル成長させる。このとき、反応炉20を収容する炉内の結晶膜形成領域R2における圧力を、例えば、0.01atmに保つ。
【0061】
ここで、Si等のドーパントを結晶膜12に添加する場合には、GaOガス、O原料ガス、Cl含有ガスに加えて、第3のガス導入ポート23より、ドーパント原料ガス(例えば、四塩化ケイ素(SiCl)等の塩化物系ガス)も結晶膜形成領域R2に導入する。
【0062】
結晶膜12のO原料ガスとしてHOガスを用いる場合は、結晶膜形成領域R2において結晶膜12の成長の過程でHガスが生じる。この場合であっても、管状部材27が、原料ガス生成容器26の排出口261から結晶膜形成領域R2までの領域及び結晶膜形成領域R2を囲んでいるため、石英ガラスなどのSiを含む材料を分解し得るHガスが反応炉20の本体部200の内面に触れることを抑えつつ、結晶膜12を形成できる。このため、反応炉20が内側に露出したSiを含む材料からなる部分を含む場合であっても、そのSiを含む材料からなる部分がHガスによって分解されて、反応炉20から脱離したSiが結晶膜12にドナー不純物として取り込まれることを抑制できる。
【0063】
また、結晶膜12をエピタキシャル成長させる際に結晶膜12の原料ガスに加えてCl含有ガスを供給することにより、Ga酸化物の粉体が気相中で生成されることを抑制できる。これは、Cl含有ガスがGa酸化物の粉体を分解するためであると考えられる。
【0064】
図5は、O原料ガスとしてOガス、Cl含有ガスとしてHClガスをそれぞれ用いてGaからなる結晶膜12を成長させる場合の、成長温度に対する駆動力ΔPをプロットしたグラフである。この場合のGa生成の反応式は、2Ga+3/2O→Gaである。
【0065】
図5には、RHClが0、0.2、0.5、1.0、2.0、5.0、10であるときのデータが含まれている。このRHClは、Gaガスの供給分圧PGaに対するHClガスの供給分圧PHClの比の値である。すなわち、RHCl=PHCl/PGaである。
【0066】
図5は、HClガスを供給し、その供給量を制御することにより、結晶膜12の成長の駆動力を制御できることを示している。これは、HClガスがGa酸化物の粉体を分解することにより駆動力が低下することによると考えられる。例えば、図5では全圧を0.01atm、Gaガスの供給分圧PGaを3.0×10-4atm、Oガスの供給分圧PO2を3.0×10-4atm、VI/IIIを2とそれぞれ設定しており、この条件下では、RHClを5.0に設定することにより、成長温度が約700K~1600K(約400~1300℃)の範囲内で駆動力を変化させられることがわかる。
【0067】
図6は、O原料ガスとしてOガス、Cl含有ガスとしてHClガスをそれぞれ用いてGaからなる結晶膜12を成長させる場合の、VI/IIIに対する駆動力ΔPをプロットしたグラフである。図6には、RHClが0、0.2、0.5、1.0、2.0、5.0、10であるときのデータが含まれている。
【0068】
図6も、図5と同様に、HClガスを供給し、その供給量を制御することにより、結晶膜12の成長の駆動力を制御できることを示している。例えば、図4では全圧を0.01atm、Gaガスの供給分圧PGaを3.0×10-4atm、成長温度を1600Kとそれぞれ設定しており、この条件下では、RHClを0~5.0に設定することにより、VI/IIIが1~100の範囲内で良好な成膜が期待できる。
【0069】
このように、HClガスの供給量により、結晶膜12の成長の駆動力を制御できるため、駆動力が大きくなりすぎないようにして、GaガスとOガスとの過剰反応による、気相中でのGa酸化物の粉体の生成を抑制しつつ、駆動力が小さくなりすぎないようにして、結晶膜12を成長させることができる。また、結晶膜12のO原料ガスとしてOガスの代わりにHOガス、又はOガスとHOガスの混合ガスを用いた場合や、Cl含有ガスとしてHClガスの代わりにClガス、又はHClガスとClガスの混合ガスを用いた場合にも、同様の効果が得られる。
【0070】
(実施の形態の効果)
上記本発明の実施の形態によれば、Ga原料ガスの生成において、酸化ガリウムの中でドーパントとして働くCl、Cなどの不純物を含む物質が生成されないため、意図しないCl、Cなどの結晶膜12への混入を抑制できる。また、結晶膜12をエピタキシャル成長させる際に結晶膜12の原料ガスに加えてCl含有ガスを供給することにより、Ga酸化物の粉体が気相中で生成されることを抑えて、Ga酸化物の粉体が不純物として結晶膜12に混入することを抑制できる。また、管状部材27を用いることにより、反応炉20の石英ガラスなどのSiを含む材料からなる部分がHガスによって分解されて、酸化ガリウムの中でドーパントとして働くSiが生じることを抑え、意図しないSiの結晶膜12への混入を抑制できる。したがって、結晶膜12への意図しない不純物の混入を効果的に抑えることができる。
【0071】
また、上記本発明の実施の形態に係る結晶膜12の製造方法に用いるOVPE法、SOVPE法、LP-CVD法は、結晶膜12の成長速度に優れるため、結晶膜12を用いて製造される半導体デバイスの特性上、結晶膜12にある程度の厚さが求められる場合であっても、生産現場において現実的な時間で結晶膜12を形成することができる。
【0072】
なお、上記の結晶膜12の製造方法は、OVPE法、SOVPE法、LP-CVD法を用いる場合において、それぞれ次のような特徴を有する。
OVPE法を用いる場合は、通常、原料ガス生成容器26の排出口261からGaOガスを効率よく排出するために、Hガスを第1のガス導入ポート21から原料ガス生成容器26内に導入する。このため、上述のように、気相成長装置2のHガスが触れる部分にSiを含まない材料を用いるなどの対処が必要になる。一方で、LP-CVD法を用いる場合はHガスを用いないため、上記のHガスへの対処は不要である。SOVPE法を用いる場合でも、通常はHガスを用いなくともよいため、上記のHガスへの対処は不要である。
SOVPE法を用いる場合は、Ga原料ガスを生成するためのGa原料としてGaを用いるが、Gaの純度は通常5N程度と高くない。OVPE法及びLP-CVD法を用いる場合は、Ga原料ガスを生成するためのGa原料として高純度の金属Gaのみを用いることができるため、SOVPE法を用いる場合と比較して、Ga原料から結晶膜12への不純物の混入を抑えることができる。
LP-CVD法を用いる場合は、Ga原料とO原料に高純度の金属Gaと高純度のOガスのみを用いることができるため、非常に純度の高い結晶膜12を形成することができるが、Ga原料ガスであるGaガスとO原料ガスであるOガスの反応が激しいため、成長圧力を下げるなどの対処が必要になる。OVPE法及びSOVPE法を用いる場合は、Ga原料ガスとO原料ガスの反応がLP-CVD法を用いる場合ほど激しくないため、LP-CVD法を用いる場合よりもGa酸化物の粉体が気相中で生成されることを抑制しやすい。
【0073】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0074】
また、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0075】
1…結晶積層構造体、10…半導体基板、11…主面、12…結晶膜、2…気相成長装置、20…反応炉、26…原料ガス生成容器、27…管状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6