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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066715
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】電磁クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/112 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
F16D27/112 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176335
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(74)【代理人】
【識別番号】100129377
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬川 耕司
(72)【発明者】
【氏名】桑原 秀明
(57)【要約】      (修正有)
【課題】入力シャフトが高速で回転駆動される場合でも、樹脂と樹脂とが摺動する第1摺動面が高温になり溶解してしまうのを防止する。
【解決手段】本発明の電磁クラッチは、モータにより回転駆動される入力シャフトと一体的に回転する樹脂製の中継シャフトと、入力シャフトと一体的に回転するロータと、中継シャフトの外周側に配置され、ロータに対して密着または離間させられるアーマチュアを有する樹脂製のカップリングと、中継シャフトとカップリングとが摺動する第1摺動面に対して空気を供給する空気供給手段とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段により回転駆動される入力シャフトと一体的に回転する樹脂製の中継シャフトと、
前記入力シャフトと一体的に回転するロータと、
前記中継シャフトの外周側に配置され、前記ロータに対して密着または離間させられるアーマチュアを有する樹脂製の回転伝達部材と、
前記中継シャフトと前記回転伝達部材とが摺動する第1摺動面に対して空気を供給する空気供給手段とを備えることを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項2】
前記空気供給手段は、前記中継シャフトの外周面から前記第1摺動面まで貫通する複数の貫通溝と、隣接した2つの前記貫通溝間に形成される羽部と、前記貫通溝と連通し且つ前記中継シャフトの端面に形成される吸気穴とを有していることを特徴とする請求項1に記載の電磁クラッチ。
【請求項3】
前記吸気穴は、前記第1摺動面よりも前記入力シャフトの回転軸側において前記貫通溝と連通することを特徴とする請求項2に記載の電磁クラッチ。
【請求項4】
前記中継シャフトに回転自在に嵌合されて前記ロータとともに磁路を形成するヨークを備え、
前記ヨークは、軸受を介して前記ロータの外周に嵌合されており、
前記空気供給手段により前記第1摺動面に対して供給された空気は、その後、前記ロータと前記軸受とが摺動する第2摺動面に対して供給されることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の電磁クラッチ。
【請求項5】
前記中継シャフト及び前記回転伝達部材は、スーパーエンジニアリングプラスチックで形成されることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の電磁クラッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁クラッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁クラッチとして、軸に固定されたロータに対して密着または離間させられる結合部材を有する駆動部材と、軸に回転自在に嵌合されてロータとともに磁路を形成するヨークと、ヨークに取り付けられた励磁コイルとを有するものが一般的である(例えば特許文献1参照)。その電磁クラッチでは、励磁コイルに電流を供給して結合部材をロータに吸着させてロータとヨークとが固定され、励磁コイルへの電流の供給を停止することによりロータとヨークとの結合を切り離される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-97598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電磁クラッチと同様の電磁クラッチ801としては、図14に示されるように、入力シャフト2に固定された中継シャフト803と、中継シャフト803にハブ5を介して固定されたロータ6と、ロータ6に対して密着または離間させられるアーマチュア10を有するカップリング8と、中継シャフト803に回転自在に嵌合されてロータ6とともに磁路を形成するヨーク11と、ヨーク11に取り付けられたボビン12に励磁コイル16を巻き付けてなる電磁石18(励磁装置)とを有するものがある。ヨーク11は、その内周面に固定された軸受11a、11bを介してロータ6の外周に配置される。
【0005】
電磁クラッチ801において、中継シャフト803及びカップリング8は、樹脂で形成される。そのため、電磁クラッチ801において、カップリング8がロータ6から切り離されている場合、樹脂製の中継シャフト803と樹脂製のカップリング8とが摺動する。樹脂と樹脂とが摺動する第1摺動面N1では、樹脂の熱伝導率が低く摩擦熱が逃げ難いため、摺動速度が高速の場合には、高温になり第1摺動面N1が溶解する問題がある。
【0006】
また、電磁クラッチ801において、ロータ6は、鋼で形成され、軸受11a、11bは、樹脂で形成される。そのため、電磁クラッチ801において、鋼製のロータ6と樹脂製の軸受11a、11bとが摺動する。鋼と樹脂とが摺動する第2摺動面N2では、鋼側の熱伝導率が高く摩擦熱が逃げやすいが、樹脂の熱伝導率が低く摩擦熱が逃げ難いため、摺動速度が非常に高速の場合には、高温になり第2摺動面が溶解する問題がある。
【0007】
本発明は、樹脂と樹脂とが摺動する第1摺動面が溶解してしまうのを防止できる電磁クラッチを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、本発明の電磁クラッチは、駆動手段により回転駆動される入力シャフトと一体的に回転する樹脂製の中継シャフトと、前記入力シャフトと一体的に回転するロータと、前記中継シャフトの外周側に配置され、前記ロータに対して密着または離間させられるアーマチュアを有する樹脂製の回転伝達部材と、前記中継シャフトと前記回転伝達部材とが摺動する第1摺動面に対して空気を供給する空気供給手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
このようにすると、樹脂製の中継シャフトと樹脂製の回転伝達部材とが摺動する第1摺動面に対して空気が供給される。そのため、入力シャフトが高速で回転駆動される場合でも、樹脂と樹脂とが摺動する第1摺動面が、高温になり溶解してしまうのを防止することができる。
【0011】
本発明の電磁クラッチにおいて、前記空気供給手段は、前記中継シャフトの外周面から前記第1摺動面まで貫通する複数の貫通溝と、隣接した2つの前記貫通溝間に形成される羽部と、前記貫通溝と連通し且つ前記中継シャフトの端面に形成される吸気穴とを有していることを特徴とする。
【0012】
このように構成すると、空気を第1摺動面に対して容易に供給することができる。
【0013】
本発明の電磁クラッチにおいて、前記吸気穴は、前記第1摺動面よりも前記入力シャフトの回転軸側において前記貫通溝と連通することを特徴とする。
【0014】
このように構成すると、吸気穴を中継シャフトに形成することで、中継シャフトの強度が低下するのを防止することができる。
【0015】
本発明の電磁クラッチにおいて、前記中継シャフトに回転自在に嵌合されて前記ロータとともに磁路を形成するヨークを備え、前記ヨークは、軸受を介して前記ロータの外周に嵌合されており、前記空気供給手段により前記第1摺動面に対して供給された空気は、その後、前記ロータと前記軸受とが摺動する第2摺動面に対して供給されることを特徴とする。
【0016】
このように構成すると、鋼製のロータと樹脂製の軸受とが摺動する第2摺動面に対して空気が供給される。そのため、入力シャフトが非常に高速で回転駆動される場合でも、鋼と樹脂とが摺動する第2摺動面が、高温になり溶解してしまうのを防止することができる。
【0017】
本発明の電磁クラッチにおいて、前記中継シャフト及び前記回転伝達部材は、スーパーエンジニアリングプラスチックで形成されることを特徴とする。
【0018】
このように構成すると、樹脂製の中継シャフト及び樹脂製の回転伝達部材を融点の高いスーパーエンジニアリングプラスチックで形成することで、入力シャフトが高速で回転駆動される場合でも、樹脂と樹脂とが摺動する第1摺動面が、高温になり溶解してしまうのをより防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した本発明によれば、入力シャフトが高速で回転駆動される場合でも、樹脂と樹脂とが摺動する第1摺動面が、非常に高温になり溶解してしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る電磁クラッチ1の断面図である。
図2図1の電磁クラッチ1の中継シャフト3の斜視図である。
図3図1のa1-a1線における断面図である。
図4図2の中継シャフト3の側面図である。
図5図1の電磁クラッチ1の部分拡大図である。
図6図1の電磁クラッチ1の部分拡大図である。
図7図7(a)は、変形例に係る中継シャフト103の斜視図であり、図7(b)は、中継シャフト103の側面図である。
図8図8(a)は、変形例に係る中継シャフト203の斜視図であり、図8(b)は、中継シャフト203の側面図である。
図9図9(a)は、変形例に係る中継シャフト303の正面図であり、図9(b)は、中継シャフト303の側面図である。
図10図10(a)は、変形例に係る中継シャフト403の正面図であり、図10(b)は、中継シャフト403の側面図である。
図11図11(a)は、変形例に係る中継シャフト503の正面図であり、図11(b)は、中継シャフト503の側面図である。
図12図12(a)は、変形例に係る中継シャフト603の正面図であり、図12(b)は、中継シャフト603の側面図である。
図13】ハブ5の外周面とロータ6の内周面との間に凹溝5Nを形成した場合を示す図である。
図14】従来の電磁クラッチ801の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。なお、本実施形態に係る電磁クラッチ1の構成は、中継シャフト3の構成を除いて、従来の電磁クラッチ801の構成と略同一である。
【0022】
本実施形態に係る電磁クラッチ1は、図1に示されるように、入力シャフト2に固定された中継シャフト3と、中継シャフト3にハブ5を介して固定されたロータ6と、ロータ6に対して密着または離間させられるアーマチュア10を有するカップリング8と、中継シャフト3に回転自在に嵌合されてロータ6とともに磁路を形成するヨーク11と、ヨーク11に取り付けられたボビン12に励磁コイル16を巻き付けてなる電磁石18(励磁装置)とを備えている。
【0023】
本実施形態の電磁クラッチ1は、例えば自動車のドア等の開閉装置に用いられる。そのため、電磁クラッチ1の使用環境は、-30℃~80℃、5000~20000rpm(2~8m/s)と摺動速度が非常に大きい。
【0024】
入力シャフト2は、鋼で形成された略円柱形状の部材であり、モータ2a(駆動手段)により回転駆動される。中継シャフト3は、樹脂で形成された略筒形状の部材であり、入力シャフト2の外周面に嵌合固定される。中継シャフト3は、入力シャフト2と一体的に回転する。
【0025】
ハブ5は、鋼で形成された略円筒形状の部材であり、中継シャフト3を内部に貫通させる貫通孔5aと、その軸方向の一端から半径方向外方に延びる鍔部5bと有している。ハブ5は、中継シャフト3の外周面に嵌合固定されるとともに、ロータ6の円筒状部分6aの中央孔6nに嵌合させられる。ハブ5は、入力シャフト2、中継シャフト3及びロータ6と一体的に回転する。
【0026】
ロータ6は、鋼で形成された略有底円筒状の部材である。ロータ6は、磁性材料からなり、円筒状部分6aと、円筒状部分6aから外方に向かって延びる板状部6bと、板状部6bの外周縁に一体的に形成された円筒状部分6cとを有している。ロータ6の円筒状部分6aは、ハブ5の外周に配置され、板状部6bは、アーマチュア10に対向するように配置される。
【0027】
ロータ6は、電磁石18の一端を覆うように配置されている。ロータ6は、電磁石18が作動させられたときに磁路を形成するように構成されているとともに、板状部6bに形成した切欠部6nから、アーマチュア10に向けて磁束を分流させるように構成されている。
【0028】
カップリング8は、樹脂で形成された略有底円筒状の部材である。カップリング8の円筒状部分8aは、非磁性材料からなり、ロータ6を覆うように配置されている。円筒状部分8aの外周縁には、軸線方向に突出するボス部8bが一体的に設けられる。
【0029】
円筒状部分8aのロータ6側の面には、アーマチュア10が、バネ(図示省略)によって軸線方向に沿って円筒状部分8aに向かう方向に付勢された状態でカップリング8に取り付けられている。カップリング8は、アーマチュア10を軸方向に移動可能且つアーマチュア10を一体回転可能に保持している。
【0030】
カップリング8の外周部には、外部の装置に対して駆動力を伝達するためのギヤ(図示省略)が設けられており、そのギヤと噛合するように出力ドラム(図示せず)などを接続すると、自動車のドアの開閉が可能となる。
【0031】
アーマチュア10は、鋼で形成された板状の部材であり、カップリング8のボス部8bの内径よりも小さい外径寸法を有している。アーマチュア10は、電磁石18の作動により、ロータ6の切欠部6nから分流してくる磁束によって、ロータ6の方向に吸引される。カップリング8及びアーマチュア10は、中継シャフト3に固定されていないため、中継シャフト3に対して回転可能である。
【0032】
ロータ6の円筒状部分6aの外周には、鋼で形成されたヨーク11が配置されている。ヨーク11は、磁性体からなり、その内周面に軸受11a、11bが固定される。そのため、ヨーク11は、ロータ6が入力シャフト2と共に回転しても回転しないように構成されている。
【0033】
ロータ6の内部においてヨーク11の外周には、ボビン12が配置される。ボビン12は、ヨーク11に外嵌される円筒部12aと、円筒部12aの両端から半径方向外方に延びる鍔部12b,12cとを有している。励磁コイル16は、円筒部12aの外面の鍔部12b,12c間に巻き付けられる。
【0034】
本実施形態の電磁クラッチ1において、中継シャフト3、カップリング8及び軸受11a、11bは、樹脂で形成されるが、その樹脂として、融点の高いスーパーエンジニアリングプラスチックが使用される。スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂などがある。
【0035】
従来の電磁クラッチ801において、中継シャフト803及びカップリング8は、POM(ポリアセタール)樹脂で形成されており、POMの耐熱温度は、約90~100℃であるのに対して、スーパーエンジニアリングプラスチックであるPPSの耐熱温度は、約240℃であり、PEEKの耐熱温度は、約300℃である。
【0036】
そのため、本実施形態の電磁クラッチ1において、中継シャフト3及びカップリング8の耐熱温度は、従来の電磁クラッチ801の中継シャフト803及びカップリング8の耐熱温度と比べて、非常に高い。
【0037】
本実施形態の電磁クラッチ1の中継シャフト3の構成について、図2図4に基づいて説明する。
【0038】
中継シャフト3は、図2に示すように、カップリング8内に配置される第1部分30と、ハブ5内に配置される第2部分31と、第1部分30の端部(第2部分31と反対側の端部)から外方に向かって延びてカップリング8の側面と対向する第3部分32とを有している。
【0039】
第1部分30は、断面形状が略円形の外周面を有している。第1部分30の外周面には、4つの貫通溝33が形成される。貫通溝33は、略矩形状であり、第1部分30の外周面から内周面まで貫通している。貫通溝33は、第1部分30の周方向に延びるように形成される。4つの貫通溝33は、図3に示すように、周方向に等間隔に形成される。隣接する2つの貫通溝33間には、羽部35がそれぞれ形成される。そのため、中継シャフト3の第1部分30には、4つの貫通溝33と4つの羽部35とが周方向に交互に配置される。
【0040】
第3部分32には、図4に示すように、4つの吸気穴36が形成される。4つの吸気穴36は、第3部分32の側面から第1部分30に形成される4つの貫通溝33までそれぞれ貫通している。そのため、第1部分30に形成される4つの貫通溝33は、第3部分32に形成される4つの吸気穴36を介して外部と連通している。吸気穴36の入口部分には、樹脂加工する際にテーパ部36aが形成される。テーパ部36aは、吸気穴36の外周に沿って配置される。そのため、外部の空気が、吸気穴36内に吸い込まれやすい。
【0041】
本実施形態の電磁クラッチ1において、中継シャフト3に形成された4つの貫通溝33と4つの羽部35と4つの吸気穴36が、空気供給手段50を構成する。
【0042】
本実施形態の電磁クラッチ1の動作を説明する。図5は、図1の電磁クラッチ1において一点鎖線の丸で囲んだ部分の拡大図であり、図6は、図1の電磁クラッチ1において一点鎖線の長方形で囲んだ部分の拡大図である。
【0043】
モータ2aを駆動して、入力シャフト2を回転駆動した状態で、励磁コイル16が通電されると、ヨーク11、ロータ6及びアーマチュア10の間で磁気的な閉ループを形成して、アーマチュア10は、ばね(図示省略)の付勢力に抗してばねを圧縮しながらロータ6に磁気的に吸着されることにより電磁クラッチ1は接続状態となる。そのとき、カップリング8は、ロータ6に吸着されたアーマチュア10と一体的に回転するので、入力シャフト2とともに回転する。
【0044】
これに対して、通常の非通電時は、ヨーク11、ロータ6及びアーマチュア10の間で磁気的な閉ループを形成しないため、アーマチュア10は、ばね(図示省略)によりカップリング8の円筒状部分8aに向かう方向に付勢されてロータ6より解放され、アーマチュア10とロータ6は、一体的に回転しない状態すなわち遮断状態となる。そのとき、カップリング8は、中継シャフト3と摺動しながら空転する。
【0045】
本実施形態の電磁クラッチ1では、通常の非通電時において、中継シャフト3がカップリング8の円筒状部分8aに対して空転すると、図5に示すように、樹脂製の中継シャフト3と樹脂製のカップリング8とが第1摺動面N1a、N1bで摺動する。そのとき、入力シャフト2と一体的に中継シャフト3が回転することにより、中継シャフト3に形成された羽部35が回転して、外部から吸気穴36を介して吸い込んだ空気が貫通溝33内に向かって流れる空気流れを形成する。
【0046】
なお、第1摺動面N1aは、中継シャフト3の第1部分30の外周面とカップリング8の内周面との間に配置される摺動面と、中継シャフト3の第3部分32の内側面とカップリング8の側面との間に配置される摺動面とを含む。第1摺動面N1bは、中継シャフト3の第1部分30の外周面とカップリング8の内周面との間に配置される摺動面である。
【0047】
そのため、図5に示すように、外部の空気が中継シャフト3の吸気穴36を介して中継シャフト3の貫通溝33内に吸い込まれる。その空気は、中継シャフト3とカップリング8との間の第1摺動面N1a(貫通溝33よりも吸気穴36側に配置される摺動面)を流れた後で、中継シャフト3の第3部分32とカップリング8の側面との間を通過して外部に排出される。よって、空気が第1摺動面N1aを通過するように対流することにより第1摺動面N1aが冷却されるとともに、流体圧力により樹脂同士の接触圧力を低減することにより、第1摺動面N1aにおいて発熱するのを抑制することができる。
【0048】
また同様に、中継シャフト3の吸気穴36を介して外部から貫通溝33内に吸い込まれた空気が、中継シャフト3とカップリング8との間の第1摺動面N1b(貫通溝33よりも吸気穴36と反対側に配置される摺動面)を流れた後で、ロータ6側に向かって流れる。よって、空気が第1摺動面N1bを通過するように対流することにより第1摺動面N1bが冷却されるとともに、流体圧力により樹脂同士の接触圧力を低減することにより、第1摺動面N1bにおいて発熱するのを抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態の電磁クラッチ1では、通常の非通電時において、ロータ6が軸受11a、11bに対して空転すると、図6に示すように、鋼製のロータ6と樹脂製の軸受11a、11bとが第2摺動面N2a、N2bで摺動する。そのとき、第1摺動面N1bを流れた後で、ロータ6側に向かって流れる空気が、ロータ6と軸受11aとの間の第2摺動面N2aに供給される。
【0050】
なお、第2摺動面N2aは、ロータ6の円筒状部分6aの外周面と軸受11aの円筒状部分6aに沿った部分の内周面との間に配置される摺動面と、ロータ6の板状部6bの内側面と軸受11aの板状部6bに沿った部分の外側面との間に配置される摺動面とを含む。第2摺動面N2bは、ロータ6の円筒状部分6aの外周面と軸受11bの円筒状部分6aに沿った部分の内周面との間に配置される摺動面と、ハブ5の鍔部5bの内側面と軸受11bの鍔部5bに沿った部分の外側面との間に配置される摺動面とを含む。
【0051】
そのため、第1摺動面N1bを流れた後で、ロータ6側に向かって流れる空気は、図6に示すように、ロータ6と軸受11aとの間の第2摺動面N2aを流れる。そのため、ロータ6と軸受11aとの間の第2摺動面N2aにおいても、空気が第2摺動面N2aを通過するように対流することにより第2摺動面N2aが冷却されるとともに、流体圧力により樹脂同士の接触圧力を低減することにより、第2摺動面N2aにおいて発熱するのを抑制することができる。
【0052】
ロータ6と軸受11aとの間の第2摺動面N2aを流れた空気は、ロータ6と軸受11bとの間の第2摺動面N2bに供給される。そのため、ロータ6と軸受11bとの間の第2摺動面N2bにおいても、空気が第2摺動面N2bを通過するように対流することにより第2摺動面N2bが冷却されるとともに、流体圧力により樹脂同士の接触圧力を低減することにより、第2摺動面N2bにおいて発熱するのを抑制することができる。
【0053】
本実施形態の電磁クラッチ1は、高速摺動の条件下においても樹脂同士が摺動する滑り軸受構造を採用することが可能となり、自動車の電動ドア用のクラッチの大幅な製作コストの削減が可能となる。電磁クラッチ1では、中継シャフト3の羽部35から内部空間に流れ込む空気の冷却効果だけでなく、クラッチが通電していない場合でも、入力シャフト2は高速で回転することで、部品間の隙間に空気が流れ込むことにより、摺動面にも隙間が形成され、部品間の摩擦を低減することができるとともに、アーマチュア10とロータ6との間で発生した削りカスなどのダストも除去できるため、摩擦面を維持することができる。そのため、単に部品を冷却するにとどまらず、他の部品の寿命を延ばす効果も得られる。
【0054】
以上のように本実施形態の電磁クラッチ1は、モータ2aにより回転駆動される入力シャフト2と一体的に回転する樹脂製の中継シャフト3と、入力シャフト2と一体的に回転するロータ6と、中継シャフト3の外周側に配置され、ロータ6に対して密着または離間させられるアーマチュア10を有する樹脂製のカップリング8と、中継シャフト3とカップリング8とが摺動する第1摺動面N1a、N1bに対して空気を供給する空気供給手段50とを備える。
【0055】
このようにすると、樹脂製の中継シャフト3と樹脂製のカップリング8とが摺動する第1摺動面N1a、N1bに対して空気が供給される。そのため、入力シャフト2が高速で回転駆動される場合でも、樹脂と樹脂とが摺動する第1摺動面N1a、N1bが、高温になり溶解してしまうのを防止することができる。
【0056】
本実施形態の電磁クラッチ1において、空気供給手段50は、中継シャフト3の外周面から第1摺動面N1a、N1bまで貫通する複数の貫通溝33と、隣接した2つの貫通溝33間に形成される羽部35と、貫通溝33と連通し且つ中継シャフト3の端面に形成される吸気穴36とを有している。
【0057】
このように構成すると、空気を第1摺動面N1a、N1bに対して容易に供給することができる。
【0058】
本実施形態の電磁クラッチ1において、吸気穴36は、第1摺動面N1a、N1bよりも入力シャフト2の回転軸側において貫通溝33と連通する。
【0059】
このように構成すると、吸気穴36を中継シャフト3に形成することで、中継シャフト3の強度が低下するのを防止することができる。
【0060】
本実施形態の電磁クラッチ1において、羽部35は、中継シャフト3に周方向に複数形成される。
【0061】
このように構成すると、第1摺動面N1a、N1bの全周にわたって空気を供給することができる。
【0062】
本実施形態の電磁クラッチ1において、中継シャフト3に回転自在に嵌合されてロータ6とともに磁路を形成するヨーク11を備え、ヨーク11は、軸受11a、11bを介してロータ6の外周に嵌合されており、空気供給手段50により第1摺動面N1bに対して供給された空気は、その後、ロータ6と軸受11a、11bとが摺動する第2摺動面N2に対して供給される。
【0063】
このように構成すると、鋼製のロータ6と樹脂製の軸受11a、11bとが摺動する第2摺動面N2に対して空気が供給される。そのため、入力シャフト2が高速で回転駆動される場合でも、鋼と樹脂とが摺動する第2摺動面N2が、高温になり溶解してしまうのを防止することができる。
【0064】
本実施形態の電磁クラッチ1において、中継シャフト3及びカップリング8は、スーパーエンジニアリングプラスチックで形成される。
【0065】
このように構成すると、樹脂製の中継シャフト3及び樹脂製のカップリング8を融点の高いスーパーエンジニアリングプラスチックで形成することで、入力シャフト2が高速で回転駆動される場合でも、樹脂と樹脂とが摺動する第1摺動面N1a、N1bが、高温になり溶解してしまうのをより防止することができる。
【0066】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0067】
上記実施形態では、空気供給手段50が、中継シャフト3に形成された4つの貫通溝33と4つの羽部35と4つの吸気穴36により構成されるが、それに限られない。例えば、貫通溝33、羽部35及び吸気穴36の数、形状、大きさ、配置などは、任意である。本発明の空気供給手段は、中継シャフト3とカップリング8(回転伝達部材)とが摺動する第1摺動面N1a、N1bに対して空気を供給するものであればよい。
【0068】
上記実施形態の中継シャフト3の変形例である中継シャフト103について、図7に基づいて説明する。中継シャフト103の第1部分30の外周面には、図7(a)に示すように、4つの貫通溝331が形成される。貫通溝331は、略円形状であり、第1部分30の外周面から内周面まで貫通している。4つの貫通溝331は、周方向に等間隔に形成される。隣接する2つの貫通溝331間には、羽部351がそれぞれ形成される。そのため、中継シャフト103の第1部分30には、4つの貫通溝331と4つの羽部351とが周方向に交互に配置される。第3部分32には、図7(b)に示すように、4つの吸気穴361が形成される。4つの吸気穴361は、第3部分32の側面から第1部分30に形成される4つの貫通溝331までそれぞれ貫通している。そのため、第1部分30に形成される4つの貫通溝331は、第3部分32に形成される4つの吸気穴361を介して外部と連通している。本変形例において、中継シャフト103に形成された4つの貫通溝331と4つの羽部351と4つの吸気穴361が、空気供給手段50を構成する。
【0069】
上記実施形態の中継シャフト3の変形例である中継シャフト203について、図8に基づいて説明する。中継シャフト203の第1部分30の外周面には、図8(a)に示すように、6つの貫通溝332と6つの凹溝332aとが形成される。貫通溝332は、略矩形状であり、第1部分30の外周面から内周面まで貫通している。6つの貫通溝332は、周方向に等間隔に形成される。6つの凹溝332aは、第1部分30の外周面に凹状に形成され、第1部分30の軸方向全域に延びている。6つの凹溝332aは、6つの貫通溝332とそれぞれ連通している。凹溝332aは、第3部分32と近接する部分が、入力シャフト2の回転方向上流側に配置され、第3部分32から離れるにつれて入力シャフト2の回転方向下流側に配置されるように傾斜している。隣接する2つの凹溝332a間には、羽部352がそれぞれ形成される。そのため、中継シャフト203の第1部分30には、6つの凹溝332a(6つの貫通溝332)と6つの羽部352とが周方向に交互に配置される。第3部分32には、図8(b)に示すように、6つの吸気穴362が形成される。6つの吸気穴362は、第3部分32の側面から第1部分30に形成される6つの貫通溝332までそれぞれ貫通している。そのため、第1部分30に形成される6つの貫通溝332は、第3部分32に形成される6つの吸気穴362を介して外部と連通している。本変形例において、中継シャフト203に形成された6つの貫通溝332と6つの羽部352と6つの吸気穴362が、空気供給手段50を構成する。
【0070】
上記実施形態の中継シャフト3の変形例である中継シャフト303について、図9に基づいて説明する。中継シャフト303の第1部分30の外周面には、図9(a)に示すように、8つの貫通溝333が形成される。貫通溝333は、略円形状であり、第1部分30の外周面から内周面まで貫通している。8つの貫通溝333は、周方向に等間隔に形成される。隣接する2つの貫通溝333間には、羽部353がそれぞれ形成される。そのため、中継シャフト303の第1部分30には、8つの貫通溝333と8つの羽部353とが周方向に交互に配置される。第3部分32の外側面には、図9(b)に示すように、8つの突出部T3と、8つの凹部N3が配置される、8つの突出部T3は、周方向に等間隔に形成される。8つの突出部T3は、第3部分32の内周側から外周側まで全域に配置される。突出部T3は、中継シャフト303の半径方向に延びる幅の狭い凸部である。突出部T3の半径方向の中央部が入力シャフト2の回転方向上流側に向かって凸となるように湾曲している。凹部N3は、隣接する2つの突出部T3間に配置される。第3部分32には、8つの吸気穴363が形成される。8つの吸気穴363は、凹部N3の半径方向内側において、第3部分32の側面から第1部分30に形成される8つの貫通溝333までそれぞれ貫通している。そのため、第1部分30に形成される8つの貫通溝333は、第3部分32に形成される8つの吸気穴363を介して外部と連通している。中継シャフト303では、第3部分32の外側面に8つの突出部T3が形成されているため、中継シャフト303が回転すると、8つの突出部T3により第3部分32の外側面において空気が半径方向内側に集められて、吸気穴363から貫通溝333内に流れ込む。本変形例において、中継シャフト303に形成された8つの貫通溝333と8つの羽部353と8つの吸気穴363と8つの突出部T3と8つの凹部N3が、空気供給手段50を構成する。
【0071】
上記実施形態の中継シャフト3の変形例である中継シャフト403について、図10に基づいて説明する。中継シャフト403の第1部分30の外周面には、図10(a)に示すように、8つの貫通溝334と8つの凹溝334aとが形成される。貫通溝334は、略円形状であり、第1部分30の外周面から内周面まで貫通している。8つの貫通溝334は、周方向に等間隔に形成される。8つの凹溝334aは、第1部分30の外周面に凹状に形成され、第1部分30の軸方向に沿って延びている。8つの凹溝334aは、8つの貫通溝334とそれぞれ連通している。隣接する2つの凹溝334a間には、羽部354がそれぞれ形成される。そのため、中継シャフト403の第1部分30には、8つの凹溝334a(8つの貫通溝334)と8つの羽部354とが周方向に交互に配置される。第3部分32の外側面には、図10(b)に示すように、8つの突出部T4と、8つの凹部N4とが配置される。8つの突出部T4は、周方向に等間隔に形成される。8つの突出部T4は、第3部分32の内周側から外周側まで全域に配置される。突出部T4の入力シャフト2の回転方向上流側端部は、入力シャフト2の回転方向下流側に向かって凸となるように湾曲している。突出部T4の入力シャフト2の回転方向下流側端部は、入力シャフト2の回転方向上流側に向かって凸となるように湾曲している。凹部N4は、隣接する2つの突出部T4間に配置される。第3部分32には、8つの吸気穴364が形成される。8つの吸気穴364は、凹部N4の半径方向内側において、第3部分32の側面から第1部分30に形成される8つの貫通溝334までそれぞれ貫通している。そのため、第1部分30に形成される8つの貫通溝334は、第3部分32に形成される8つの吸気穴364を介して外部と連通している。中継シャフト403では、第3部分32の外側面に8つの突出部T4が形成されているため、中継シャフト403が回転すると、8つの突出部T4により第3部分32の外側面において空気が半径方向内側に集められて、吸気穴364から貫通溝334内に流れ込む。本変形例において、中継シャフト403に形成された8つの貫通溝334と8つの羽部354と8つの吸気穴364と8つの突出部T4と8つの凹部N4が、空気供給手段50を構成する。なお、図10の中継シャフト403では、8つの吸気穴364が8つの貫通溝334にそれぞれ接続されるが、それに限られない。例えば、複数の吸気穴364を1つの貫通溝334に接続する構造としてもよい。例えば、中継シャフト403は、4つの貫通溝334と4つの凹溝334aと8つの吸気穴364を有しており、2つの吸気穴364を1つの貫通溝334に接続して、空気が8つの吸気穴364から4つの貫通溝334に流れて、そして4つの凹溝334aへ流れる構造でもよい。また、例えば、1つの吸気穴364を複数の貫通溝334に接続する構造としてもよい。例えば、中継シャフト403は、8つの貫通溝334と8つの凹溝334aと4つの吸気穴364を有しており、1つの吸気穴364を2つの貫通溝334に接続して、空気が4つの吸気穴364から8つの貫通溝334に流れて、そして8つの凹溝334aへ流れる構造でもよい。
【0072】
上記実施形態の中継シャフト3の変形例である中継シャフト503について、図11に基づいて説明する。中継シャフト503の第1部分30の外周面には、図11(a)に示すように、8つの凹溝335aが形成される。凹溝335aは、中継シャフト503の軸方向に延びる幅の狭い溝である。8つの凹溝335aは、周方向に等間隔に形成される。凹溝335aは、第3部分32と近接する部分が、入力シャフト2の回転方向上流側に配置され、第3部分32から離れるにつれて入力シャフト2の回転方向下流側に配置されるように傾斜している。隣接する2つの凹溝335a間には、羽部355がそれぞれ形成される。そのため、中継シャフト503の第1部分30には、8つの凹溝335aと8つの羽部355とが周方向に交互に配置される。第3部分32の内側面には、図11(b)に示すように、8つの突出部T5と、8つの凹部N5とが配置される、8つの突出部T5は、周方向に等間隔に形成される。8つの突出部T5は、第3部分32の内側面において、内周側から外周側まで全域に配置される。突出部T5は、中継シャフト503の半径方向に延びる幅の狭い凸部である。突出部T5の半径方向の中央部が入力シャフト2の回転方向上流側に向かって凸となるように湾曲している。凹部N5は、隣接する2つの突出部T5間に配置される。8つの凹部N5は、凹部N5の半径方向内側において、第1部分30に形成される8つの凹溝335aと連通している。そのため、第1部分30に形成される8つの凹溝335aは、第3部分32に形成される8つの凹部N5とともに外部と連通している。中継シャフト503では、第3部分32の内側面に8つの突出部T5が形成されているため、中継シャフト503が回転すると、8つの突出部T5により第3部分32の内側面において空気が半径方向内側に集められて、凹溝335a内に流れ込む。本変形例において、中継シャフト503に形成された8つの凹溝335aと8つの羽部355と8つの突出部T5と8つの凹部N5が、空気供給手段50を構成する。
【0073】
上記実施形態の中継シャフト3の変形例である中継シャフト603について、図12に基づいて説明する。中継シャフト603の第1部分30の外周面には、図12(a)に示すように、8つの凹溝336aが形成される。凹溝336aは、中継シャフト603の軸方向に延びる幅の狭い溝である。8つの凹溝336aは、周方向に等間隔に形成される。凹溝336aは、第3部分32から軸方向に離れるにつれて幅が大きくなるように形成される。隣接する2つの凹溝336a間には、羽部356がそれぞれ形成される。そのため、中継シャフト603の第1部分30には、8つの凹溝336aと8つの羽部356とが周方向に交互に配置される。第3部分32の内側面には、図12(b)に示すように、8つの突出部T6と、8つの凹部N6とが配置される。8つの突出部T6は、周方向に等間隔に形成される。8つの突出部T6は、第3部分32の内周側から外周側まで略全域に配置される。突出部T6は、中継シャフト603の半径方向に延びる幅の狭い凸部である。突出部T6の入力シャフト2の回転方向上流側端部は、入力シャフト2の回転方向下流側に向かって凸となるように湾曲している。突出部T6の入力シャフト2の回転方向下流側端部は、入力シャフト2の回転方向上流側に向かって凸となるように湾曲している。凹部N6は、隣接する2つの突出部T6間に配置される。8つの凹部N6は、凹部N6の半径方向内側において、第1部分30に形成される8つの凹溝336aと連通している。そのため、第1部分30に形成される8つの凹溝336aは、第3部分32に形成される8つの凹部N6とともに外部と連通している。中継シャフト603では、第3部分32の内側面に8つの突出部T6が形成されているため、中継シャフト603が回転すると、8つの突出部T6により第3部分32の内側面において空気が半径方向内側に集められて、凹溝336a内に流れ込む。本変形例において、中継シャフト603に形成された8つの凹溝336aと6つの羽部356と8つの突出部T6と8つの凹部N6が、空気供給手段50を構成する。
【0074】
上記実施形態及び上記変形例では、空気供給手段50が中継シャフト3に形成されるが、それに限られない。本発明の空気供給手段は、中継シャフト3とカップリング8(回転伝達部材)とが摺動する第1摺動面N1a、N1bに対して空気を供給するものであればよいため、空気供給手段は、例えばハブ5やロータ6などの中継シャフト3以外の部品に形成されてもよい。また、空気供給手段は、例えば中継シャフト3、ハブ5やロータ6などの複数の部品に形成されてもよい。例えば、樹脂製のハブ5を使用して、ハブ5の内周面に溝を形成して、第1摺動面N1a、N1bに対して空気を供給するようにしてもよい。図8に示すように、6つの吸気穴362と6つの貫通溝332と6つの凹溝332aを有する中継シャフト203において、螺旋状の貫通溝332と逆方向の螺旋状の貫通溝をハブ5の内周面に形成すると、第1摺動面N1a、N1bに対して空気が供給されやすい。
【0075】
例えば、図13に示すように、ハブ5の外周面(ロータ6と接する面)に凹溝5Nを形成すると、その凹溝5Nは、金属製のロータ6の放熱のための空気の通路として使用することができる。図8図9図11の場合、螺旋が片方に巻いているので、入力シャフト2の回転方向に合わせ、反対の螺旋にすることも可能である。例えば、図8(a)において、凹溝332aは、第3部分32と近接する部分が、入力シャフト2の回転方向下流側に配置され、第3部分32から離れるにつれて入力シャフト2の回転方向上下流側に配置されるように傾斜してもよい。例えば図11では、入力シャフト2を逆方向に回すと、空気の流れる方向が反対方向になり、やはり内部には空気が流れる。
【0076】
上記本実施形態では、中継シャフト3、カップリング8及び軸受11a、11bが、スーパーエンジニアリングプラスチックで形成されるが、それに限られない。中継シャフト3、カップリング8及び軸受11a、11bの材料は任意であり、スーパーエンジニアリングプラスチック以外の樹脂で形成されてもよい。入力シャフト2は、鋼で形成される場合に限られず、樹脂で形成されてもよい。
【0077】
上記実施形態では、カップリング8の外周部に、外部の装置に対して駆動力を伝達するためのギヤが設けられているが、それに限られない。例えば、ギヤ以外に、スプラインやセレーション、異形状等で接続し、外部の装置に対して駆動力を伝達する構造でもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 電磁クラッチ
2 入力シャフト
2a モータ(駆動手段)
3 中継シャフト
6 ロータ
8 カップリング(回転伝達部材)
10 アーマチュア
11 ヨーク
11a 軸受
11b 軸受
33 貫通溝
35 羽部
36 吸気穴
50 空気供給手段
103 中継シャフト
331 貫通溝
351 羽部
361 吸気穴
203 中継シャフト
332 貫通溝
352 羽部
362 吸気穴
303 中継シャフト
333 貫通溝
353 羽部
363 吸気穴
403 中継シャフト
334 貫通溝
354 羽部
364 吸気穴
503 中継シャフト
335 貫通溝
355 羽部
603 中継シャフト
336 貫通溝
356 羽部
N1a、N1b 第1摺動面
N2a、N2b 第2摺動面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14