IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特開2024-66723積層フィルムおよびそれを用いた包装材
<>
  • 特開-積層フィルムおよびそれを用いた包装材 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066723
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】積層フィルムおよびそれを用いた包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20240509BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240509BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B7/022
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176350
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】古川 周平
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA11
3E086DA08
4F100AK41B
4F100AK42A
4F100AK71C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EH20
4F100GB23
4F100JA11B
4F100JK06C
4F100JK08C
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】スリット加工時に破断せず、安定した搬送、巻き取りをすることが可能なポリエステル系シーラントフィルムを含む積層フィルム、およびそれを用いた包装材を提供すること。
【解決手段】フィルム形状を有する基材層と、前記基材層上に設けられる樹脂層とを備え、
前記樹脂層は、ポリエステルを含む第1樹脂層、並びに、前記第1樹脂層と前記基材層との間に位置する第2樹脂層を有し、前記第2樹脂層は、前記基材層と前記第1樹脂層とに接合し、
前記第2樹脂層は、酸含有量が1mol%以上、又は、エステル含有量が3.5mol%以上であり、前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層との密着強度が1N/15mm以上であり、前記第2樹脂層の破断点ひずみが500%以上800%以下であることを特徴とする積層フィルムである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム形状を有する基材層と、
前記基材層上に設けられる樹脂層とを備え、
前記樹脂層は、ポリエステルを含む第1樹脂層、
並びに、前記第1樹脂層と前記基材層との間に位置する第2樹脂層を有し、
前記第2樹脂層は、前記基材層と前記第1樹脂層とに接合し、
前記第2樹脂層は、酸含有量が1mol%以上、又は、エステル含有量が3.5mo
l%以上であり、
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層との密着強度が1N/15mm以上であり、
前記第2樹脂層の破断点ひずみが500%以上800%以下であることを特徴とする
積層フィルム。
【請求項2】
前記第1樹脂層の厚みが20μm以上80μm以下であり、
前記第1樹脂層に対する前記第2樹脂層の厚みの比率が0.5以上であり、
前記第1樹脂層と前記第2樹脂層の厚みの合計が250μm以下であることを特徴と
する請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステルが結晶性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層フ
ィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の積層フィルムを使用したことを特徴とする包装材。
【請求項5】
請求項3に記載の積層フィルムを使用したことを特徴とする包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系シーラントフィルムを含む積層フィルムおよびそれを用いた包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、飲料、医薬品等の包装袋において、シーラントフィルムが広く使用されている。シーラントフィルムは包装材の最内層に設けられ、ヒートシールによって包装袋が密閉され、内容物の保護、漏洩防止といった機能が備わる。シーラントフィルムとしては、ヒートシール強度の高いポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が使用されてきた。
【0003】
しかし、これらの樹脂からなるシーラントフィルムは、油脂や香料などの有機化合物からなる成分を吸着しやすいため、シーラントフィルムが内容物と接する最内層に用いられている包装材は、内容物の味覚や香りを変化させやすいという欠点を持っている。そのため、有機化合物を有効成分として含む化成品や医薬品、有機化合物を香気成分として含む食品等の包装にポリオレフィン系樹脂からなるシーラントフィルムを最内層として使用するのは適さないことがある。
【0004】
このような問題に鑑みて、特許文献1には、ポリエステル系フィルムにヒートシール性を付与したフィルムが開示されている。このようなポリエステル系シーラントフィルムは、種々の有機化合物との親和性が低いために内容物の成分を吸着しにくいという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-165059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般にポリエステル系フィルムは加工性が悪く、フィルムをスリット加工する場合には、搬送中にフィルムが破断し、巻き取りができないことがある。
【0007】
本発明は、前記のような問題点を解決することを目的とするものである。すなわち、スリット加工時に破断せず、安定した搬送、巻き取りをすることが可能なポリエステル系シーラントフィルムを含む積層フィルム、およびそれを用いた包装材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、スリット加工時におけるポリエステル系フィルムの加工性改善には、ポリエステル系フィルムと他の層との密着性及びポリエステル系フィルムと接する層の破断点ひずみが重要であることを見出した。本発明は、以下の態様を有する。
【0009】
請求項1に記載の発明は、フィルム形状を有する基材層と、前記基材層上に設けられる樹脂層とを備え、前記樹脂層は、ポリエステルを含む第1樹脂層、並びに、前記第1樹脂層と前記基材層との間に位置する第2樹脂層を有し、前記第2樹脂層は、前記基材層と前記第1樹脂層とに接合し、前記第2樹脂層は、酸含有量が1mol%以上、又は、エステル含有量が3.5mol%以上であり、前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層との密着強度
が1N/15mm以上であり、前記第2樹脂層の破断点ひずみが500%以上800%以下であることを特徴とする積層フィルムである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記第1樹脂層の厚みが20μm以上80μm以下であり、前記第1樹脂層に対する前記第2樹脂層の厚みの比率が0.5以上であり、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層の厚みの合計が250μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルムである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記ポリエステルが結晶性を有することを特徴とする請求項1に記載の積層フィルムである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の積層フィルムを使用したことを特徴とする包装材である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の積層フィルムを使用したことを特徴とする包装材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、スリット加工時に破断せず、安定した搬送、巻き取りをすることが可能なポリエステル系シーラントフィルムを含む積層フィルム、およびそれを用いた包装材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態の積層フィルムにおける一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1を参照して、本発明の実施形態の一例について説明する。但し、本発明が、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態の積層フィルム1におけるシーラントフィルム10は、ポリエステルを含む第1樹脂層11(シール側)と第2樹脂層12とを有する。
【0018】
<第1樹脂層>
第1樹脂層11はポリエステルを主成分として含む。本発明において、「主成分として含む」とは、例えば、第1樹脂層11の全量に対してポリエステルの含有量が50質量%より多いことである。第1樹脂層11中のポリエステルの含有率は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、さらに好ましくは98質量%である。なお、第1樹脂層11は、他の高分子材料、各種添加剤などを配合してもよい。
【0019】
第1樹脂層11は、テレフタル酸及びその他のジカルボン酸成分と、ジオール成分との共重合体である共重合ポリエステルが好ましい。
【0020】
その他のジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、多官能酸などを挙げることができる。その他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロペンタンジカルボン酸、シクロオクタンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコ酸及びそれらの誘導体などの脂肪族ジカルボン酸が好ましい。ジカルボン酸は上述した化合物を単独で用いてもよいし、2種類以上の化合物を組み合わせてもよい。
【0021】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどの脂肪族ジオールを挙げることができる。また、上記以外にも、1,4―ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール及びそれらの誘導体を用いてもよい。ジオール成分は上述した化合物を単独で用いてもよいし、2種類以上の化合物を組み合わせてもよい。
【0022】
第1樹脂層11には、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加剤が添加されてもよい。例えば、アンチブロッキング剤を含有することで、第1樹脂層11の滑り性が向上してブロッキングが起こりにくくなるからである。アンチブロッキング剤としては、シリカ、タルク、珪藻土等を挙げることができる。アンチブロッキング剤の含有量は、例えば、0.1質量%以上3質量%以下であり、0.5質量%以上1.5質量%以下であることが好ましい。
【0023】
第1樹脂層11が含むポリエステルは、非晶性であっても結晶性であってもよく、好ましくは結晶性であってもよい。結晶性ポリエステルを含むことで、例えば、有機化合物に対する低吸着性が向上する。
【0024】
なお、本発明において、非晶性とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて20℃から300℃まで10℃/分の速度で昇温した際に、融解ピークを持たないことを意味し、結晶性とは、DSCを用いて20℃から300℃まで10℃/分の速度で昇温した際に、融解ピークが生起することを意味する。また、本発明において、DSCを用いた測定は、JIS K7121に基づいて測定することができる。
【0025】
第1樹脂層11の厚さは、例えば、20μm以上80μm以下である。第1樹脂層11の厚さが20μm以上であることによって、第1樹脂層11が良好なヒートシール性を発揮できる。第1樹脂層11の厚さの下限値は、例えば30μmでもよいし、40μmでもよい。また、第1樹脂層11の厚さが80μm以下であることによって、第1樹脂層11は、有機化合物等に対する低吸着性を良好に発揮できる。また、第1樹脂層11の厚さの上限値は、例えば60μmでもよいし、50μmでもよいし、40μmでもよい。
【0026】
第1樹脂層11同士を温度160℃、シールバー圧力0.2MPa、シール時間1秒でヒートシールした際のヒートシール強度が2N/15mm以上である。ヒートシール強度が2N/15mm未満であると、シール部分が容易に剥離されるため、包装袋として用いることができない。ヒートシール強度が大きいと耐圧性及び耐衝撃性を確保しやすい。この観点から、ヒートシール強度は15N/15mm以上でもよいし、20N/15mm以上でもよいし、25N/15mm以上でもよいし、30N/15mm以上でもよい。なお、上記ヒートシール強度は、JIS Z0238により測定される。
【0027】
<第2樹脂層>
第2樹脂層12は、基材層13と第1樹脂層11とに接合する層である。基材層13及び第1樹脂層11によって覆われる。第2樹脂層12はTダイ共押出成形法によって第1樹脂層11と同時に形成される。第2樹脂層12は、第1樹脂層11の加工性を補助するために用いられてもよく、第2樹脂層の破断点ひずみを500%以上800%以下とすることで、スリット加工時に第1樹脂層11が破断せずに、安定して搬送され、巻き取りできる。破断点ひずみは、材料の塑性変形が生じて応力が増加し続けた際に、材料が破断す
るときのひずみであり、この値が大きいほど、その材料は破断し難い。第2樹脂層12の破断点ひずみが500%未満では、第1樹脂層11が脆性破壊するのと同時に第2樹脂層12も破壊する。破断点ひずみは、JIS K7161により測定される。
【0028】
第2樹脂層12は、第1樹脂層11と密着しており、その密着強度は1N/15mm以上5N/15mm以下である。第2樹脂層12と第1樹脂層11との密着強度が1N/15mm未満であると、層間で容易に剥離され、第1樹脂層11の加工性を補助することができない。密着強度は大きいと、第2樹脂層12と第1樹脂層11とがより強固に一体化するため、好ましく、2N/15mm以上でもよいし、3N/15mm以上でもよい。
【0029】
第2樹脂層12は、酸含有量が1mol%以上、又は、エステル含有量が3.5mol%以上であることによって、第1樹脂層11との密着強度が1N/15mm以上となる。或いは、第2樹脂層12はポリエステル樹脂であってもよい。第2樹脂層12と第1樹脂層11との密着強度の観点から、構造中に有する酸やエステル等の極性基含有量は多い方が好ましい。
【0030】
第2樹脂層12は、破断点ひずみが良好な範囲にあれば、具体的には、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-アクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体が例示できる。ただし、これらの材料は特に限定されるものではなく、さらにこれらの材料は単独で用いられても良いし、これらのうちの複数の材料が組み合わされて用いられても良い。第2樹脂層12にエチレン-メタクリル酸共重合体を使用した場合には、メタクリル酸のモル比が1mol%以上が好ましく、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体を使用した場合には、メタクリル酸メチルのモル比が3.5mol%以上が好ましい。
【0031】
第2樹脂層12には、上述した高分子化合物に加えて、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加材が添加されてもよい。
【0032】
第1樹脂層11に対する第2樹脂層12の膜厚の比率は、0.5以上とすることで、加工性がよく、ヒートシール性も維持したフィルムを得ることができる。0.5未満だと第1樹脂層11に対して第2樹脂層が薄くなり、加工性向上効果が期待できない。
【0033】
第1樹脂層11と第2樹脂層12を合わせた膜厚は、250μm以下とすることで、ヒートシール性が維持でき、コストも抑えられ、シーラントフィルムとして活用できる積層フィルムを得ることができる。
【0034】
<基材層>
基材層13としては、通常の包装材料を構成するプラスチックフィルムを適宜使用することができるが、機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。プラスチックフィルムの構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、6-ナイロンなどのポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミドなどが挙げられる。プラスチックフィルムは、延伸、未延伸のどちらでも良いが、好ましくは二軸延伸されたフィルムである。なお、本実施形態において、基材層13は、PETフィルムである。
【0035】
基材層13としては、表面改質処理が施されたものの使用が可能である。例えば、単体フィルム使用時の印刷適性向上、積層使用時のラミネート適性向上のために他基材と接触する面に対して表面改質処理を行うことが可能である。表面改質処理はコロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させることにより官能基を発現させる手法や、易接着層のコーティング等のウェットプロセスによる改質(アンカーコート処理)を好適に用いることが可能である。
【0036】
本実施形態によって得られる積層フィルム1は、単体フィルム、または他基材と積層して包装材とすることができる。単体フィルムまたは積層体として用いる場合、スタンディングパウチの他に、三方袋、合掌袋、ガゼット袋、スパウト付きパウチ、ビーク付きパウチ等に用いることが可能である。また、包装袋の製袋様式は特に制限されるものではない。
【0037】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではないことはいうまでもない。また、以上の実施の形態を組み合わせて用いることは、任意である。
【実施例0038】
以下、本発明者らが作成した実施例を、比較例と比較して詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
第1樹脂層11の材料として、ユニチカ株式会社製のポリエステル樹脂「MA-8334P」を用いた。第2樹脂層12の材料として、住友化学株式会社製のエチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂(EMMA)樹脂「WH303-F」(破断点ひずみ:750%、エステル含有量は3.8mol%)を用いた。基材層13として延伸基材PETフィルム(厚さ12μm)を用いた。第1樹脂層11と第2樹脂層12とを共押出成形により二層を積層し、押出成形装置を用いて260℃にて、溶融多層押出ラミネート製膜した。第1樹脂層11の膜厚は30μm、第2樹脂層12の膜厚は30μmとし、第1樹脂層11と第2樹脂層12の総厚を60μmとし、第1樹脂層11に膜厚に対する第2樹脂層膜厚は1.00とした。
【0040】
(実施例2)
第2樹脂層12の材料として、三井・ダウ ポリケミカル株式会社製のエチレン-メタクリル酸共重合体「AN4228C」(破断点ひずみ:600%、酸含有量は1.3mol%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルム1を成形した。
【0041】
(実施例3)
第1樹脂層11の膜厚を80μm、第2樹脂層12の膜厚を160μmとし、第1樹脂層11と第2樹脂層12の総厚を240μmとし、第1樹脂層11に膜厚に対する第2樹脂層膜厚は2.00としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルム1を成形した。
【0042】
(実施例4)
第1樹脂層11の膜厚を20μm、第2樹脂層12の膜厚を10μmとし、第1樹脂層11と第2樹脂層12の総厚を30μmとし、第1樹脂層11に膜厚に対する第2樹脂層膜厚は0.50としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルム1を成形した。
【0043】
(比較例1)
第2樹脂層12の材料として、三井・ダウ ポリケミカル株式会社製のエチレン-メタ
クリル酸共重合体「AN4233C」(破断点ひずみ:600%、酸含有量は0.43mol%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルム1を成形した。
【0044】
(比較例2)
第2樹脂層12の材料として、日本ポリエチレン株式会社製の気相法メタロセンLLDPE「NH745N」(破断点ひずみ:500%、酸又はエステル含有量は0)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルム1を成形した。
【0045】
(比較例3)
第2樹脂層12の材料として、日本ポリエチレン株式会社製の高圧法低密度ポリエチレン「LC600A」(破断点ひずみ:100%、酸又はエステル含有量は0)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルム1を成形した。
【0046】
(比較例4)
第2樹脂層12の材料として、株式会社ベルポリエステルプロダクツ製のポリエステル樹脂であるベルペット「OKY100」(破断点ひずみ:440%)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルム1を成形した。
【0047】
(比較例5)
第1樹脂層11の膜厚を20μm、第2樹脂層12の膜厚を5μmとし、第1樹脂層11と第2樹脂層12の総厚を25μmとし、第1樹脂層11に膜厚に対する第2樹脂層膜厚は0.25としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルム1を成形した。
【0048】
(比較例6)
第1樹脂層11の膜厚を80μm、第2樹脂層12の膜厚を220μmとし、第1樹脂層11と第2樹脂層12の総厚を300μmとし、第1樹脂層11に膜厚に対する第2樹脂層膜厚は2.75としたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルム1を成形した。
【0049】
(スリット加工性の評価)
製膜したフィルムの端部をスリットした際に、搬送中にフィルムが破断しなかったものを「〇」とし、破断したものを「×」とした。
【0050】
(密着性の評価)
第1樹脂層11と第2樹脂層12の密着強度は、一般的な引張試験機を利用することで測定することができる。第1樹脂層11と第2樹脂層12と基材層13を幅15mm、長さ150mmで切り出した後に、第1樹脂層11と第2樹脂層12の界面を50mm剥離する。剥離した端部をそれぞれ引張試験機のチャックで把持し、チャック間距離50mm、引張速度300mm/minで第1樹脂層11と第2樹脂層12が剥離する方向にT形に引っ張って引張試験を実施する。密着強度は、この試験で得られる荷重の最大値を示すものとする。第1樹脂層11と第2樹脂層12の密着強度が1N/15mm以上のものを「〇」とし、1N/15mm未満のものを「×」とした。
【0051】
(包材としての活用)
コストの観点から、製膜したフィルムの第1樹脂層11と第2樹脂層12を合わせた膜厚が、250μm以下のものを「〇」とし、250μmを越えるものを「×」とした。
【0052】
(総合評価)
上記、スリット加工性の評価、密着性の評価、包材としての活用判定にて、全て「〇」のものを、総合評価として「〇」とした。1つでも「×」となったものを、総合評価とし
て「×」とした。
【0053】
各実施例、比較例における条件、及び評価結果の一覧表を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
(評価結果)
実施例1~5は、第2樹脂層12の破断点ひずみが500%以上であり、第1樹脂層11の膜厚が20μm以上80μm以下であり、第1樹脂層11に対する第2樹脂層12の膜厚の比率は0.5以上であり、第1樹脂層11と第2樹脂層12を合わせた膜厚は250μm以下であり、第2樹脂層12と第1樹脂層11との密着強度が1N/15mm以上であり、第2樹脂層12と第1樹脂層11が密着し、スリット加工性が良好で、包装材として活用見込みが得られたことから、総合評価として「〇」となった。一方で、比較例1~6は、満たさない項目があり、いずれかの評価で「×」となったため、総合評価として「×」となった。
【符号の説明】
【0056】
1 積層フィルム
10 シーラントフィルム
11 第1樹脂層
12 第2樹脂層
13 基材層
図1