(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066728
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】車両塩分測定方法とこれを用いた車両洗浄試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/28 20060101AFI20240509BHJP
B60S 3/04 20060101ALI20240509BHJP
G01N 27/06 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
G01N1/28 X
B60S3/04
G01N27/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176365
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】516067368
【氏名又は名称】中日本高速オートサービス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】395014596
【氏名又は名称】株式会社ファシリコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誉憲
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田村 浩毅
(72)【発明者】
【氏名】大野 耕一
【テーマコード(参考)】
2G052
2G060
3D026
【Fターム(参考)】
2G052AA04
2G052AA40
2G052AB01
2G052AB27
2G052AC20
2G052AD15
2G052AD35
2G052AD46
2G052BA17
2G052BA21
2G052DA05
2G052DA22
2G052DA23
2G052FD10
2G052GA21
2G052JA02
2G052JA04
2G052JA05
2G052JA08
2G060AA06
2G060AC08
2G060AE17
2G060AF08
3D026AA04
3D026AA08
3D026AA12
(57)【要約】
【課題】車両の塩分付着量を簡便に測定することができる塩分測定方法を提供する。
【解決手段】凍結防止剤散布車に、永久磁石23により着脱自在な試験片21を用い、試験片21を凍結防止剤散布車のシャシフレームに取り付け、凍結防止剤散布車を稼働した後、試験片を取り外し、凍結防止剤散布車から取り外した試験片21の外面22から塩分付着量を取得するから、凍結防止剤散布車に付着した状態の試料を採取する必要がなく、実際に稼働した後の凍結防止剤散布車の塩分付着量を簡便に取得することができる。また、試験片21を取り付けた状態で凍結防止剤散布車を洗浄した後、試験片21を取り外し、凍結防止剤散布車から取り外した試験片21の外面22から塩分付着量を取得するから、凍結防止剤散布車に付着した状態の試料を採取する必要がなく、洗浄後の塩分付着量を簡便に取得することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に着脱自在な試験片を用い、前記試験片を前記車両に取り付け、前記車両を稼働した後、前記試験片を取り外し、前記車両から取り外した前記試験片の外面から塩分付着量を取得することを特徴とする車両塩分測定方法。
【請求項2】
車両に着脱自在な試験片を用い、前記試験片を前記車両に取り付け、前記試験片を取り付けた状態で前記車両を洗浄した後、前記試験片を取り外し、前記車両から取り外した前記試験片の外面から塩分付着量を取得することを特徴とする車両塩分測定方法。
【請求項3】
前記車両を稼働した後、前記試験片を取り付けた状態で前記車両を洗浄し、この洗浄後に前記試験片を取り外すことを特徴とする請求項1記載の車両塩分測定方法。
【請求項4】
前記試験片に塩分を付着させた後、この塩分を付着させた試験片を前記車両に取り付けることを特徴とする請求項2記載の車両塩分測定方法。
【請求項5】
前記車両から前記試験片を取り外し、この試験片を乾燥した後、電気伝導式の塩分濃度計を用いて前記試験片の外面の塩分付着量を取得することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両塩分測定方法。
【請求項6】
前記試験片には、前記車両に着脱自在に吸着する磁石手段が設けられていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の車両塩分測定方法。
【請求項7】
請求項2又は3記載の車両塩分測定方法を用い、異なる洗浄条件で洗浄を行い、洗浄後に試験片の外面の塩分付着量を取得することを特徴とする車両洗浄試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両塩分測定方法とこれを用いた車両洗浄試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、除雪に関連して、凍結を防止するために散布した融雪剤の効果を確保するために道路における塩分濃度を検出する方法と装置が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
一方、塩分を含む融雪剤を撒いた道路を走行する車両は、乗用車や除雪車などの車種に係らず、塩分の影響により車体が腐食し易く、洗浄により付着した塩分を除去することが行われている。特に、
図14に示すように、車両である凍結防止剤散布車1は、シャシフレーム2の前部に運転席3が設けられており、作業に伴うシャシフレーム2の捻じれや撓みなどの影響を繰り返し受けることにより塗装膜にヒビを生じ、錆びが発生し易いため、付着した塩分を洗浄により除去する必要がある。尚、
図14では捩じれを誇張して図示している。
【0004】
また、洗浄による塩分除去効果を確認するため、車両の塩分付着量の測定が行われている。一例として、湿塩散布車の塩分測定として、散布作業を行った車両を洗浄した後、作業員が脱イオン水で洗浄したビニール手袋を装着し、適度な大きさのガーゼを脱イオン水で湿潤させ、このガーゼで車体の測定箇所を縦方向と横方向に拭いて塩分を含む水である試料をガーゼにより吸着し、この作業を複数回行い、塩分を含む試料を吸着したガーゼを脱イオン水の入ったビーカーに入れ、このビーカーにイオン検知管を入れ、イオン検知管により塩分濃度を測定するイオン検知式の測定方法が提案されている。
【0005】
しかし、上記の測定方法では、ガーゼで車体の測定箇所を拭いて試料を採取するため、その作業に多大な手間が掛かるという問題がある。また、作業員により採取にばらつきが出て、測定誤差が発生する虞があり、さらに、車体の下部などの塩分の影響を受け易い箇所で、シャシフレームの内側や各種センサーの配線及びエアブレーキ用エア配管などの錯綜部分などの狭隘箇所では、試料の採取が難しい場合があった。
【0006】
これに対して、車両とは異なるが鋼構造物表面の塩分濃度を測定する装置として、特許第3912776号公報,実公平4-5003号公報及び米国特許第6946844号明細書に示されるように、液保持室を有する検出部を鋼構造物の被検出面に当接させ、該液保持室に塩分抽出用の純水を供給し、該液保持室に設けられた撹拌子を用いて純水を撹拌して被検出面から塩分を溶解抽出した後、その液の電気伝導率を測定することにより、鋼構造物表面の塩分濃度を測定する装置が知られており、例えば、迅速且つ高精度に被検出面に付着する塩分濃度を測定することが可能なシンプルで頑丈な構造の塩分濃度測定計として、演算処理装置と共に操作パネル及び表示部を備えた装置本体と、該装置本体に接続された検出部とからなる構造物表面の塩分測定装置であって、該検出部は、一端に開口部を有し且つ塩分測定の際に塩分抽出用の純水を受入れて保持する液保持室と、純水を液保持室に供給する液供給流路と、純水の供給時に液保持室内の空気を排気するエア抜き流路と、液保持室内の液を撹拌する撹拌子と、液保持室内に検出端を露出させ、液保持室内の液体の電気伝導率を測定する塩分測定用センサーとを備えており、前記撹拌子は、前記塩分抽出用の純水が前記構造物表面の被検出面に向けて直接噴射され、且つ該純水が該被検出面全体に接触するような流れが生じるようにその攪拌軸方向に液保持室内の液を流動させることを特徴とする電気伝導式の塩分測定装置(特許文献2)が提案されている。
【0007】
また、前記塩分測定装置では、液保持室の開口部の周囲にはシリコーンゴム等からなるO-リング等のシール部材が設けられており、更にシール部材の外側には永久磁石が配置されている。これにより、検出部を鋼構造物の被検出面に当接させた時、永久磁石によって検出部が鋼構造物に固定される。また、この時、シール部材によって液保持室は液密状態が保たれるため、前記開口部の面積と測定した塩分濃度から被検出面における単位面積当たりの塩分量が取得できる。
【0008】
上記塩分測定装置は、塩分濃度を迅速かつ高精度に測定できるが、被検出面に水分が残っていると、測定精度が低下するため、被検出面である車体の外面を乾燥状態にする必要がある。
【0009】
そして、前記湿塩散布車などの除雪関係車両は降雪時に稼働するため、稼働終了後、除雪基地に戻っても天候が降雪のままである場合が多い。このため、稼働後大型車両洗浄機により除雪関係車両を洗浄し、洗浄後、乾燥させようとしても、容易に乾燥できないケースが起こる。このようなことから、天候が悪い場合、車体が乾くまで1日程度の長時間を要する場合もあり、塩分付着量を測定するためには、その間、稼働できないという問題があり、しかも、検出部が車体の狭隘部に入らず、測定できない箇所が多くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003-35686号公報
【特許文献2】特開2010-151465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
解決しようとする課題は、車両の塩分付着量を簡便に測定することができる車両塩分測定方法を提供することを目的とし、加えて、塩分付着量を効果的に低減できる車両洗浄試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、車両に着脱自在な試験片を用い、前記試験片を前記車両に取り付け、前記車両を稼働した後、前記試験片を取り外し、前記車両から取り外した前記試験片の外面から塩分付着量を取得することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、車両に着脱自在な試験片を用い、前記試験片を前記車両に取り付け、前記試験片を取り付けた状態で前記車両を洗浄した後、前記試験片を取り外し、前記車両から取り外した前記試験片の外面から塩分付着量を取得することを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、前記車両を稼働した後、前記試験片を取り付けた状態で前記車両を洗浄し、この洗浄後に前記試験片を取り外すことを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、前記試験片に塩分を付着させた後、この塩分を付着させた試験片を前記車両に取り付けることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、前記車両から前記試験片を取り外し、この試験片を乾燥した後、電気伝導式の塩分濃度計を用いて前記試験片の外面の塩分付着量を取得することを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、前記試験片には、前記車両に着脱自在に吸着する磁石手段が設けられていることを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項2又は3記載の車両塩分測定方法を用い、異なる洗浄条件で洗浄を行い、洗浄後に試験片の外面の塩分付着量を取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の構成によれば、車両に付着した状態の試料を採取する必要がなく、実際に稼働した後の車両の塩分付着量を簡便に取得することができる。
【0020】
請求項2の構成によれば、車両に付着した状態の試料を採取する必要がなく、洗浄後の塩分付着量を簡便に取得することができる。
【0021】
請求項3の構成によれば、稼働後に洗浄した車両の塩分付着量を取得することができる。
【0022】
請求項4の構成によれば、実際に稼働する必要がなく、試験的に塩分を付着させた試験片の車両洗浄後の塩分付着量を取得することができる。
【0023】
請求項5の構成によれば、電気伝導式の塩分濃度計を用いて、外した試験片を乾燥することにより、短時間で車両の塩分付着量を簡便に取得することができる。
【0024】
請求項6の構成によれば、磁石により試験片を車両に着脱自在に取り付けることができる。
【0025】
請求項7の構成によれば、試験により得られた異なる洗浄条件における塩分付着量から、試験場所における最適な洗浄条件を設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例1を示す車両の側面図である。
【
図10】同上、試験片の取付状態を示す側面図である。
【
図13】本発明の実施例6を示す洗浄ノズルの側面図である。
【
図14】シャシフレームの捻じれを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0028】
本発明の実施例1を
図1~
図7を参照して説明する。尚、上記
図14と同一部分には同一符号を付して説明する。
図1は車両たる凍結防止剤散布車1を示し、その車体4の前部には運転席3が設けられており、この運転席3の後部には、シャシフレーム2上に荷台5が設けられ、この荷台5には凍結防止剤散布装置6が搭載されている。この凍結防止剤散布装置6は、ホッパー7の下部後方に散布部8が設けられており、また、前記荷台5の下部に走行手段たる前輪9と後輪10,10が設けられている。さらに、前記運転席3の前部には必要に応じて除雪手段たるプラウ11が設けられ、このプラウ11は、車体4に着脱自在に設けられていても良い。
【0029】
図2に示すように、前記シャシフレーム2は、鋼製の梯子型フレームであり、前後方向に長い左右一対のサイドレール2L,2Rと、これら左右一対のサイドレール2L,2R間を車幅方向に接続した複数のクロスメンバー2Cを備え、防錆塗装が施されている。また、
図3に示すように、サイドレール2L,2Rは、2つのコ字型の鋼材12,12Aを重ね合わせて溶着した後、塗装を施しており、シャシフレーム2の捻じれや撓みなどの影響で塗装膜にヒビが生じ易い面がある。尚、左右のサイドレール2L,2Rはコ字形の開口を車幅方向中央側に向けて配置されている。
【0030】
本発明は、凍結防止剤散布車1などの除雪関連の車両に限らず、各種車両に適用可能であり、乗用車,バス,トラックなどの旅客・貨物を輸送するための車や、前記凍結防止剤散布車・除雪手段を装備した除雪トラック(除雪車)などの除雪関係や建設工事・土木工事関係などの車や、軌道を走行する電車などに適用可能であり、自走式以外でも、牽引により移動する車でもよく、走行手段も車輪以外でもクローラなどでもよい。
【0031】
図6に示すように、一例として、車両が凍結防止剤散布車1である場合、車体4に付着した塩分付着量を取得する塩分測定方法は、車体4の外面の複数箇所に試験片21を着脱可能に取り付ける取付工程(S101)と、試験片21を車体4に取り付けた後、凍結防止剤散布車1を稼働する稼働工程(S102)と、試験片21を取り付けた状態で前記散布車1を洗浄する洗浄工程(S103)と、洗浄工程(S103)後に試験片21を散布車1から取り外す取外工程(S104)と、取り外した状態で試験片21の外面22から塩分付着量を取得する塩分付着量取得工程(S105)とを備える。
【0032】
図4に示すように、前記試験片21は、軟鋼製の平板状の金属板からなり、例えば、SS400などからなる。また、試験片21は、縦横寸法が110mm×110mmで厚さが0.1~1(0.1以上、1以下)mm、好ましくは0.2~0.4mmであり、少なくとも試験片21の外面22には塗装により塗装層が設けられている。この場合、試験片21の塗装は車体4の塗装と類似のものとすることが好ましく、除雪関係車両である凍結防止剤散布車1の場合、同様な車両用黄色塗装を施している。
【0033】
前記試験片21を車体4の磁性体たる金属部分に着脱可能に取り付ける取付手段たる永久磁石23を備える。この永久磁石23は、円板状をなし、例えば直径が23mm、厚さが2.5mm程度である。その永久磁石23を、前記試験片21の内面の中央に吸着する。尚、この例では、使用する永久磁石23を選定することにより、永久磁石23により車体4に吸着した状態の試験片21を取り外しても、永久磁石23が車体4に残るように設定している。
【0034】
異なる試験片21と永久磁石23による吸着試験を複数回行い、磁束密度(磁力の強さ)が90~190ミリテスラ(900~1900ガウス)の前記永久磁石23を選定し、縦横寸法が110mm×110mmで厚さが0.3mmの試験片21を選定ことにより、永久磁石23を車体4に吸着した状態で、試験片21のみを繰り返し着脱することができた。
【0035】
尚、上記の組み合わせに限らず、試験片21の寸法・材質と、永久磁石23の大きさ・磁力の組合せにより、吸着した状態の試験片21を取り外しても、永久磁石23が車体4に残るように設定することができる。さらには、永久磁石23を接着などにより車体4に固定するようにしてもよい。
【0036】
従って、1回、永久磁石23を車体4に取り付けたら、永久磁石23を車体4から外さない限り、繰り返し同一の位置に試験片21を取り付けることができる。尚、この場合、車体4は、荷台5に搭載された凍結防止剤散布装置6及びプラウ11などを含むものであって、車両たる凍結防止剤散布車1の走行手段たる前輪9と後輪10を除いた全ての部位を選定して取り付けることができる。
【0037】
また、前記取付工程(S101)において、試験片21を車体4に複数箇所取り付け、特に、車体4の一部を構成する前記シャシフレーム2には複数の試験片21,21・・・が前後方向に間隔を置いて取り付けられる。尚、シャシフレーム2の下面に限らず、車両幅方向外側のサイドレール2L,2Rの外面2G,2Gや、車両幅方向内側のサイドレール2L,2Rの内面2N,2Nや、クロスメンバー2Cなどに、試験片21を取り付けてもよい。また、シャシフレーム2以外にも、荷台5の下面、車体4の一部である駆動装置のケース(図示せず)、例えば車体4床下の図示しないデファレンシャルケースやタイヤハウスなどに試験片21が取り付けられる。
【0038】
いずれの場合も、散布車1の露出した外面に、その外面22を外側にして試験片21を取り付ける。さらに、床下以外でも、運転席3や荷台5の外面や、散布車1に搭載した凍結防止剤散布装置6やプラウ11の外面に試験片21を取り付けることができる。そして、車両たる凍結防止剤散布車1の複数の取付位置に対応して、該取付位置を示す数字や記号などの識別表示部24を試験片21の外面22に設ける。
【0039】
例えば、測定する車両がN台(Nは整数)、取付箇所がM箇所(Mは整数)の場合、
図4に示すように、試験片21の外面22の角部に、識別表示部24として、「N-M」と記載し、Nが車両番号表示部、Mが取付箇所表示部である。この識別表示部24により、試験片21を使用する車両と取付箇所を認識することができる。
【0040】
取付工程(S101)の後の稼働工程(S102)において、走行しながら凍結防止剤散布装置6により道路に塩分を含む凍結防止剤を散布したり、プラウ11により凍結防止剤が散布された道路の除雪をしたり、塩分を含む凍結防止剤が散布された道路を走行したりすることにより、散布車1の外面に塩分が付着し、散布車1の外面に取り付けた試験片21の外面22も同様に塩分が付着する。
【0041】
除雪基地などに戻った凍結防止剤散布車1を、試験片21を取り付けた状態で洗車する。この洗浄工程(S103)では、門型の車両用洗浄装置31を用いたり、洗浄ノズルの先端から洗浄液を噴射する洗浄装置(図示せず)を用い、その洗浄ノズルを作業員が持って洗浄を行ったりすることができる。こうすることにより試験片21の外面も車両の外面と同一条件で洗浄される。
【0042】
前記洗浄工程(S103)では、車両毎に塩分付着量が低下するように最適洗浄条件を決めるため、試験洗浄条件を定めて行われる。一例として、前記車両用洗浄装置31や前記洗浄装置などを用いた試験洗浄条件を下記の表1に示す。
【0043】
【0044】
上記表1に示すように、試験項目(1)の洗浄水の噴射方向では、洗浄条件として、後述する洗浄ノズルの向きについて、下向き,横向き,上向き,斜め向き,その他の異なった向きなどを選択する。試験項目(2)の洗浄水の噴射圧力では、条件として、洗浄水の噴出圧力を、ゲージ圧で、1気圧,2気圧,3気圧,その他の異なった圧力に設定して洗浄水を噴射する。試験項目(3)の洗浄水の噴射時間では、条件として、洗浄水の噴出時間を、1分,2分,3分,それ以外の異なった時間に設定する。試験項目(4)の洗浄水の温度では、条件として、洗浄水の温度を、5℃,20℃,40℃,その他の異なった温度に設定する。試験項目(5)の洗浄水の種類では、条件として、洗浄水を、地下水,飲料水,不凍液添加水,その他の異なる水を選択して洗浄を行う。尚、洗浄水の噴射方向で、斜めの向きは、さらに細かく洗浄ノズルの向きの角度を設定してもよい。
【0045】
また、この例では、
図7に示すように、門型の車両用洗浄装置31を用い、この車両用洗浄装置31は左,右枠体32L,32Rとこれら左,右枠体32L,32Rの上部に架け渡された上枠部33を備え、左,右枠体32L,32Rに設けた左右の配管32H,32Hには、複数の洗浄ノズル32Nが上下方向に並んで設けられていると共に、上枠部33に設けた上の配管33Hには、複数の洗浄ノズル33Nが車幅方向に並んで設けられ、さらに、下部の配管34Hには、複数の洗浄ノズル34Nが車幅方向に並んで設けられている。前記洗浄ノズル32の向きを変えることにより、洗浄水の噴射方向を変更することができる。
【0046】
図7では、洗浄ノズル33Nの洗浄水Wの噴射方向を下向き、洗浄ノズル34Nを上向き、複数の左右の洗浄ノズル32N,32Nの洗浄水Wの噴射方向を、上側から下側に向かって、水平に対して24度下向き、18度下向き、12度下向き、6度下向き、0度、5度上向きのいずれも横向きに設定しており、これに限らず、適宜、洗浄水Wの噴射方向を変更して設定することができる。同様に車幅方向(左右)に並んだ上,下の洗浄ノズル33N,34Nを、左右の位置により斜め向きに変更するように設定してもよい。
【0047】
洗浄水については、前記洗浄ノズルの試験項目(2)の条件のいずれかを選択する。この場合、全ての洗浄ノズル32N,33N,34Nを同じ噴射圧量に設定したり、配管32H,33H,34H毎に異なる噴射圧力に設定したりしてもよい。また、使用する洗浄水については、上記試験項目(4)(5)の条件のいずれかを選択することができる。尚、試験項目(3)の洗浄水の噴射時間は、車両が車両用洗浄装置31を通過する時間である。
【0048】
試験項目(3)などでは、車両用洗浄装置31の使用場所により制約を受ける場合がある。使用場所の制約として、洗浄水を貯めておく大容量タンクを設定できないことが上げられる。理由として、除雪関係車両を必要とする地域が豪雪地域であること、山間部が多いこと、山間部はタンクの大型化が難しいこと、タンクの大型化が可能であっても、コスト的に設置が難しく、維持管理もコスト面で難しい場合が上げられる。このような使用場所により制約を受ける場合は、使用場所に適した試験項目を変えて試験を行い、最適な洗浄条件を設定する。
【0049】
即ち、洗浄水の使用量に制限のある場所では、使用量が少なく済むように噴射時間を短縮すれば、最適な洗浄条件が得られる。また、試験項目(3)では、条件で時間を増加すれば、洗浄効果が向上すると考えられるが、洗浄水の使用量と車両用洗浄装置31の稼働時間が長くなり、エネルギー効率的には低下するから、エネルギーの効率性を考慮して試験場所に最適な洗浄条件を設定する。
【0050】
上記取外工程(S101)では、選択した条件で車両を洗浄した後、車両から試験片21を取り外す。外した試験片21は、室内において水滴が落ちないように外面22を上にして水平になるように並べ、電気ヒーターなどの乾燥手段(図示せず)を用いて強制乾燥させることにより自然乾燥よりも早く乾燥させることができ、上記特許文献2で示したような電気伝導式の塩分測定装置により、電気伝導率を測定し、前記電気伝導率から塩分濃度を検出する。試験片21の外面22の塩分付着量を電気伝導式の塩分濃度計により測定して取得する。そして、電気伝導式塩分濃度計の測定で得られた塩分濃度から単位面積当たりの塩分付着量及び塩分付着量の大小を取得する。
【0051】
塩分濃度を測定した試験片21は、次の使用の前までに、食器用洗剤などにより洗浄した後、乾燥させる。即ち、取付工程(S101)に用いる試験片21は、食器用洗剤などにより洗浄したものを用いる。尚、測定精度が低くても良い場合、他の塩分濃度測定方法を用いても良い。
【0052】
先(1回目)の洗浄条件で取得した塩分付着量と部位を記録する。次(2回目)の稼働の際も、車両に試験片21を取り付け、稼働後、洗浄に係る条件を変更して車両の洗浄を行い、変更前の試験洗浄条件である1回目の試験洗浄条件と比較して塩分付着量が低下するように洗浄条件を変更し、変更後の塩分付着量が変更前の塩分付着量に比べて低下するように試験洗浄条件を設定する。
【0053】
1回目の試験洗浄条件で取得した塩分付着量の多い部位は、洗浄で塩分が落ちにくい部位であるから、洗浄条件を変えて塩分付着量を測定し、塩分付着量が低下しない場合は、条件を変えるか、条件における選択肢を変更する。このような試験を繰り返し、多数のデータを取ることにより、最適な洗浄条件が得られ、得られた洗浄条件は、洗浄する場所毎に行う実証実験であるから、信頼性の高いものとなる。
【0054】
従って、適切な洗浄条件の決定は、前述の各項目間のバランスを取る必要があるうえ、稼働地域(例えば、飛騨地方、北陸地方、北海道地区など)の違いによっても除雪基地に求められる洗浄装置は異なるケースが多く、言い換えると、洗浄装置の最適な条件は除雪基地ごとに見出すことが求められる。
【0055】
このように適切な洗浄条件を決めるための実験(言い換えると塩分濃度の測定実験)回数は膨大なものとなり、雪氷期の1シーズン(一般的には11月~4月ごろ)で完了できないケースが生じる可能性があるのに対して、本実施例では、多数の試験を効率よく行うことができる。
【0056】
このように本実施例では、請求項1に対応して、車両たる凍結防止剤散布車1に着脱自在な試験片21を用い、試験片21を凍結防止剤散布車1に取り付け、凍結防止剤散布車1を稼働した後、試験片21を取り外し、凍結防止剤散布車1から取り外した試験片21の外面22の塩分付着量を取得するから、凍結防止剤散布車1に付着した状態の試料を採取する必要がなく、実際に稼働した後の凍結防止剤散布車1の塩分付着量を簡便に取得することができる。
【0057】
このように本実施例では、請求項2に対応して、車両たる凍結防止剤散布車1に着脱自在な試験片21を用い、試験片21を凍結防止剤散布車1に取り付け、試験片21を取り付けた状態で凍結防止剤散布車1を洗浄した後、試験片21を取り外し、凍結防止剤散布車1から取り外した試験片21の外面22の塩分付着量を取得するから、凍結防止剤散布車1に付着した状態の試料を採取する必要がなく、洗浄後の塩分付着量を簡便に取得することができる。
【0058】
このように本実施例では、請求項3に対応して、凍結防止剤散布車1を稼働した後、試験片21を取り付けた状態で凍結防止剤散布車1を洗浄し、この洗浄後に試験片21を取り外すから、稼働後に洗浄した凍結防止剤散布車1の塩分付着量を取得することができる。
【0059】
このように本実施例では、請求項5に対応して、凍結防止剤散布車1から試験片21を取り外し、この試験片21を乾燥した後、電気伝導式の塩分濃度計を用いて試験片21の外面の塩分付着量を取得するから、外した試験片21を乾燥することにより、短時間で凍結防止剤散布車1の塩分付着量を簡便に取得することができる。
【0060】
このように本実施例では、請求項6に対応して、試験片21には、凍結防止剤散布車1に着脱自在に吸着する磁石手段たる永久磁石23が設けられているから、永久磁石23により試験片21を凍結防止剤散布車1に着脱自在に取り付けることができる。
【0061】
このように本実施例では、請求項7に対応して、請求項2又は3記載の車両塩分測定方法を用い、異なる洗浄条件である洗浄水の噴射方向や洗浄水の種類などで洗浄を行い、洗浄後に試験片21の外面の塩分付着量を取得するから、試験により得られた異なる洗浄条件における塩分付着量から、試験場所における最適な洗浄条件を設定することができる。
【0062】
以下、実施例上の効果として、前記車両塩分測定方法を用い、洗浄後に取得した塩分付着量に基いて、前記塩分付着量が低下するように最適な洗浄条件を設定する車両洗浄方法であるから、洗浄場所にあった条件で、洗浄後の塩分付着量を効果的に低減することができる。
【0063】
また、車体4の表面と試験片21の間に永久磁石23を配置し、永久磁石23により試験片21を車体4に着脱可能に取り付けると共に、使用する永久磁石23と試験片21を選定して、永久磁石23が車体4に残るように永久磁石23と試験片21を選定したから、1回、永久磁石23を車体4に取り付けたら、永久磁石23が車体4から外れない限り、繰り返し同一の位置に試験片21を取り付けることができる。また、試験片21に識別表示部24を設けたから、試験片21を使用する車両と取付箇所を容易に確認することができる。
【0064】
また、車両用洗浄装置31を用い、この車両用洗浄装置31は、車両の側面側に洗浄水を噴射する洗浄ノズル32Nが横向きで上下方向に並んで複数設けられ、車両の上面側に洗浄水を噴射する洗浄ノズル33Nが下向きで左右方向に並んで複数設けられると共に、車両の下面側に洗浄水を噴射する洗浄ノズル34Nが上向きで左右方向に並んで複数設けられているから、凍結防止剤散布車1を効率よく均一に洗浄することができる。
【0065】
また、試験項目が複数あると共に、試験項目毎に複数の条件があるから、組合せを変えることにより最適洗浄条件を効果的に設定することができる。
【0066】
さらに、従来は測定が困難であったシャシフレーム2のコ字型のサイドレール2L,2Rの内面に、試験片21を取り付けるから、その内面の塩分付着量を取得でき、これにより塩分が付着し易いサイドレール2L,2Rの内面に適した洗浄条件を設定することができる。
【0067】
また、試験片21の内面に永久磁石23を重ね合わせて車両に試験片21を取り付けるから、車両の平坦な取付面に取り付けた状態で、試験片21と前記取付面との間に永久磁石23の厚さ分だけの隙間ができ、この隙間により試験片21が取り外し易くなる。また、車両用洗浄装置31の使用場所の条件により、洗浄水の使用量と車両用洗浄装置31の稼働時間が長くならないように、エネルギーの効率性を考慮した最適な洗浄条件を設定することができる。
尚、前記試験片21Aにも前記識別表示部24を設けてもよく、この試験片21Aは車両に取り付けないから、少なくとも試験を行う車両を示す車両表示部Nのみを記載すればよく、取付箇所表示部には、整数以外の記号を記載すれば、車両に取り付けるものではないことを示すことができる。
また、付着工程(S201)後、洗浄前測定用の複数の試験片21Aの外面22の塩分付着量を測定し、それら複数の試験片21Aの塩分付着量の平均値から洗浄前塩分付着量を取得する洗浄前塩分残量取得工程(S202)を備える。尚、洗浄前測定用試験片21Aは1枚でもよい。また、洗浄前塩分残量取得工程(S202)で塩分付着量を取得する方法としては、従来技術で示したイオン検知管を用いる方法など各種の方法を用いてもよいが、精度を高めるために電気伝導式の塩分濃度計を用いることができる。
また、付着工程(S201)後、複数の車両取付用試験片21を乾燥し、この乾燥後、車体4の外面の複数箇所に着脱可能に取り付ける取付工程(S101)と、試験片21を取り付けた状態で前記散布車1を洗浄する洗浄工程(S103)と、洗浄工程(S103)後に試験片21を車体4から取り外す取外工程(S104)と、取り外した状態で試験片21の外面22から塩分付着量を取得する塩分付着量取得工程(S105)とを備える。
従って、洗浄前は全ての部位の試験片21の塩分付着量を試験片21Aの塩分付着量と同一と見なすことができ、且つ、洗浄前の塩分付着量が既知となり、車両を稼働しなくても、洗浄による塩分付着量の低下を確認することができ、これにより好ましい洗浄条件を設定することができる。また、塩分が付着し易い箇所だけ繰り返して洗浄・測定することができ、好ましい洗浄条件を設定できる。
このように本実施例では、上記実施例1と同様な作用・効果を奏し、また、請求項4に対応して、試験片21に塩分を付着させた後、この塩分を付着させた試験片21を凍結防止剤散布車1に取り付けるから、実際に稼働する必要がなく、試験的に塩分を付着させた試験片21の車両洗浄後の塩分付着量を取得することができる。
また、実施例上の効果として、車両取付用の複数の試験片21と、洗浄前測定用の少なくとも1枚、好ましくは複数の試験片21Aとを用い、全ての試験片21,21Aの塩分付着量が同一で、少なくとも1枚の試験片21Aの塩分付着量を取得する洗浄前塩分残量取得工程(S202)を備えるから、洗浄前と洗浄後の塩分付着量が取得でき、両者を比較して最適条件を設定することができる。