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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066744
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 51/00 20060101AFI20240509BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F04B51/00
F04B49/10 331G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176399
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽貴
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA26
3H145AA42
3H145BA42
3H145BA43
3H145CA19
3H145CA24
3H145EA16
3H145EA37
3H145EA42
3H145FA16
(57)【要約】
【課題】エアコンプレッサにおけるダストフィルタのメンテナンスを、より効率良く実施することが可能となる監視システムを提供する。
【解決手段】モータによって駆動され空気を圧縮するように構成された圧縮機構を、ダストフィルタを介して通気可能に形成された筐体の内部に設けたエアコンプレッサに関して、監視動作を行う監視システムであって、前記監視動作は、前記圧縮機構の駆動による前記筐体内の温度の上がり易さとの相関性を有する特定情報を監視する動作である監視システムとする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって駆動され空気を圧縮するように構成された圧縮機構を、ダストフィルタを介して通気可能に形成された筐体の内部に設けたエアコンプレッサに関して、監視動作を行う監視システムであって、
前記監視動作は、
前記圧縮機構の駆動による前記筐体内の温度の上がり易さとの相関性を有する特定情報を監視する動作であることを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記エアコンプレッサは、前記ダストフィルタを介した通気を促進させる冷却ファンを有し、前記筐体内の所定箇所の温度が一定に保たれるように当該冷却ファンを駆動させるものであって、
前記監視動作は、
前記圧縮機構の負荷率と前記冷却ファンの負荷率との関係を、前記特定情報として監視する動作であることを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記監視動作は、
前記圧縮機構の負荷率と前記筐体内の所定箇所の温度との関係を、前記特定情報として監視する動作であることを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
前記監視動作は、
前記筐体の内部から外部への排気の温度と、前記筐体の外部における周囲温度との温度差を検出し、
前記圧縮機構の負荷率と前記温度差との関係を、前記特定情報として監視する動作であることを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項5】
前記ダストフィルタに目詰まりがない状態での前記特定情報を、基準情報として保有し、
前記監視動作は、
前記特定情報と前記基準情報との差が、所定の基準条件に達したか否かを判別する動作を含むことを特徴とする請求項2から請求項4の何れかに記載の監視システム。
【請求項6】
複数の前記エアコンプレッサそれぞれに対応して設けられる各通信ユニットと、
前記各通信ユニットとの通信が可能であるサーバと、を備え、
前記各通信ユニットは、対応する前記エアコンプレッサの前記特定情報に関する情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記各通信ユニットから受信する情報に基づいて、複数の前記エアコンプレッサそれぞれについて前記監視動作を行うことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンプレッサに関して監視動作を行う監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮空気を利用する各分野においてエアコンプレッサが利用されている。また一般的にエアコンプレッサは、モータを用いて空気を圧縮するように構成された圧縮機構を通気可能な筐体の内部に設け、筐体で圧縮機構が保護されるようにしている。また、例えば特許文献1には、筐体の内部に圧縮機構と冷却ファンを設けたエアコンプレッサの例が開示されている。
【0003】
このようなエアコンプレッサにおいては冷却ファンを駆動させて、圧縮機構の駆動等により生じる筐体内部の熱を、外部へ排出させることが可能である。また、筐体の通気口に大気中の塵埃を除去するためのダストフィルタを設けることにより、筐体を通気可能としながらも筐体内部への塵埃の進入を極力抑えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-332788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した筐体に設けられるダストフィルタの目詰まりが進むと、筐体の内部温度が上がり易くなり、各種の不具合の要因となる虞がある。例えば、筐体内の電気部品の寿命が低下したり、潤滑油の温度が上昇することで油寿命が低下し、スラッジが生成され易くなったりする虞がある。
【0006】
また、ダストフィルタの目詰まりの進み具合は、エアコンプレッサの使用状況や周囲環境(特に塵埃の多さ)等によって大きく異なる。そのため、ダストフィルタについて定期的(例えば500時間ごと)にメンテナンスを行うといった方法では、メンテナンスを効率良く実施することは難しい。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑み、エアコンプレッサにおけるダストフィルタのメンテナンスを、より効率良く実施することが可能となる監視システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る監視システムは、モータによって駆動され空気を圧縮するように構成された圧縮機構を、ダストフィルタを介して通気可能に形成された筐体の内部に設けたエアコンプレッサに関して、監視動作を行う監視システムであって、前記監視動作は、前記圧縮機構の駆動による前記筐体内の温度の上がり易さとの相関性を有する特定情報を監視する動作である構成とする。
【0009】
上記構成としてより具体的には、前記エアコンプレッサは、前記ダストフィルタを介した通気を促進させる冷却ファンを有し、前記筐体内の所定箇所の温度が一定に保たれるように当該冷却ファンを駆動させるものであって、前記監視動作は、前記圧縮機構の負荷率と前記冷却ファンの負荷率との関係を、前記特定情報として監視する動作である構成とする。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記監視動作は、前記圧縮機構の負荷率と前記筐体内の所定箇所の温度との関係を、前記特定情報として監視する動作である構成とする。
【0011】
上記構成としてより具体的には、前記監視動作は、前記筐体の内部から外部への排気の温度と、前記筐体の外部における周囲温度との温度差を検出し、前記圧縮機構の負荷率と前記温度差との関係を、前記特定情報として監視する動作である構成とする。
【0012】
上記構成としてより具体的には、前記ダストフィルタに目詰まりがない状態での前記特定情報を、基準情報として保有し、前記監視動作は、前記特定情報と前記基準情報との差が、所定の基準条件に達したか否かを判別する動作を含む動作である構成とする。
【0013】
上記構成としてより具体的には、複数の前記エアコンプレッサそれぞれに対応して設けられる各通信ユニットと、前記各通信ユニットとの通信が可能であるサーバと、を備え、前記各通信ユニットは、対応する前記エアコンプレッサの前記特定情報に関する情報を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記各通信ユニットから受信する情報に基づいて、複数の前記エアコンプレッサそれぞれについて前記監視動作を行う構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る監視システムによれば、エアコンプレッサにおけるダストフィルタのメンテナンスを、より効率良く実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る監視システム900の概略的な構成図である。
図2】本実施形態に係るエアコンプレッサ100の概略的な構成図である。
図3】筐体20の外観の一例を示す説明図である。
図4】データ収集動作に関するフローチャートである。
図5】状況判別動作に関するフローチャートである。
図6】負荷率Lcと負荷率Lfとの関係R1に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について各図面を参照しながら説明する。なお本実施形態に係る監視システムは、複数のエアコンプレッサそれぞれに関して監視動作を行うシステムとなっている。
【0017】
1.監視システムの構成等
まず本実施形態に係る監視システムの構成等について説明する。図1は、本実施形態に係る監視システム900の概略的な構成を例示している。監視システム900は、LAN(Local Area Network)300、およびサーバ500を含むように構成されている。LAN300は、メッシュ型の無線ネットワーク210を含むように構成されている。
【0018】
無線ネットワーク210は、複数のエアコンプレッサ100それぞれに一対一に対応して設けられた子機(以下、「通信ユニット200」と称する。)、中継機201、および親機202の各通信機(ノード)を用いて構成された通信ネットワークである。無線ネットワーク210は、例えば工場のようなローカルエリア内に配置された複数のノード間で無線通信することが可能であり、また直接電波が届かない場合においては、その間にあるノードが中継して相互通信が可能である。
【0019】
無線ネットワーク210の通信プロトコルの1つの特徴は、複数のノードを経由(ホップ)することで目的のノードまでパケットを送る、マルチホップ機能を有することにある。従って、距離的な理由等により電波が届きにくい場所に通信ユニット200を設置する場合であっても、中継機201を設けることで、他のノードとの相互通信が可能となる。また、新たな通信ユニット200を追加する場合、配線工事負担が少なく、通信ネットワークを容易に拡張することができる。さらに、ノードをメッシュ状に配置することにより、仮にあるノードに障害が発生した場合であっても、他の正常なノードを介して通信を可能とすることができる。
【0020】
LAN300においては、全ての通信ユニット200は無線ネットワーク210を介して親機202に接続され、更に親機202は、データ回線終端装置203およびインターネット400を介してサーバ500に接続されている。これによりサーバ500は、各通信ユニット200との通信が可能となっている。各通信ユニット200から送信される情報は、LAN300とインターネット400を介してサーバ500に送られることになる。
【0021】
このように監視システム900では、各通信ユニット200から送信される情報を、サーバ500に収集させることができる。なお必要に応じて、サーバ500には、インターネット400を介して更に別のLANを接続させ、監視システム900の規模を拡張させることも可能である。
【0022】
各通信ユニット200は、自機に対応するエアコンプレッサ100(後述する制御装置10)との通信が可能であり、当該エアコンプレッサ100におけるモニタデータ群(各項目のモニタ結果のデータ)を取得し、装置IDとともに当該モニタデータ群をサーバ500へ送信することができる。なお当該装置IDは、当該エアコンプレッサ100を他のエアコンプレッサ100から識別可能とする情報である。サーバ500は、各通信ユニット200から受信する情報に基づいて、複数のエアコンプレッサ100それぞれについての監視を行うことが可能である。なおサーバ500には、全てのエアコンプレッサ100についての装置IDが予め登録されており、装置IDごとに情報の記録等を行うことが可能である。
【0023】
2.エアコンプレッサの構成等
次に、エアコンプレッサ100の構成等について説明する。図2は、エアコンプレッサ100の概略的な構成を示している。
【0024】
本図に示すようにエアコンプレッサ100は、圧縮機構1、オイルセパレータ2、自動温度調節弁3、オイルクーラ4、オイルフィルタ6、インバータ7、吸込フィルタ8、冷却ファン9、制御装置10、およびファンモータ91の各要素が、筐体20の内部に配置された構成となっている。圧縮機構1は、圧縮機本体51および電気モータ52などを有している。
【0025】
本実施形態の例では、エアコンプレッサ100は給油式のエアコンプレッサとして構成され、外部から吸込んだ空気Aaを圧縮機本体51により圧縮して圧縮空気Abとし、これを例えば各種の空圧機器などへ吐出することが可能である。なお、エアコンプレッサ100は、本発明の趣旨を逸脱しない限り種々の構成を採用することが可能であり、オイルフリー式のエアコンプレッサとして構成されても良い。
【0026】
また筐体20は、図3に例示するように、大気中の塵埃を除去するためのダストフィルタ12を介して通気可能に形成されている。より具体的には、筐体20の少なくとも一部には内外の通気を可能とする通気口が設けられており、この通気口を外側から覆うようにダストフィルタ12が配置されている。
【0027】
このように、筐体20の通気口にダストフィルタ12を設けることにより、筐体20を通気可能としながらも、筐体20の内部への塵埃の進入が極力抑えられるようになっている。ダストフィルタ12は筐体20に対して着脱可能となっていても良く、これにより適宜、ダストフィルタ12を筐体20から取り外して清掃したり、ダストフィルタ12を新しいものに交換したりすることが容易となる。
【0028】
図2において、白抜矢印は空気Aaおよび圧縮空気Abの経路を概略的に示し、太線矢印は潤滑油Luが循環する潤滑油循環回路Xを概略的に示している。なお、筐体20の外部から内部へ空気Aaを導入する経路は、ダストフィルタ12を介した経路としても良く、これとは別の経路(例えば空気Aaの専用経路)としても良い。本実施形態では、圧縮機本体51から出た圧縮空気Abは、オイルセパレータ2を通って外部へ吐出される。また図2に示す潤滑油循環回路Xは、圧縮機構1において潤滑油Luを用いて摩擦緩和や冷却がなされる所定箇所(圧縮機本体51など)を通り、潤滑油Luを循環させる経路である。
【0029】
潤滑油循環回路Xは、圧縮機本体51からオイルセパレータ2、自動温度調節弁3、オイルクーラ4、およびオイルフィルタ6を順に通って、潤滑油Luが圧縮機本体51へ流れる経路を有する。また潤滑油循環回路Xは、オイルクーラ4およびオイルフィルタ6の間の位置と自動温度調節弁3とを繋ぐ補助経路Xaを有する。
【0030】
圧縮機本体51は、電気モータ52によって駆動され、空気Aaを圧縮して圧縮空気Abを生成するように動作する。本実施形態の例では、圧縮機本体51として回転式(スクリュ式)の圧縮機が採用されており、圧縮機本体51では潤滑油Luを用いて、スクリュロータの摩擦緩和と冷却(圧縮熱や摩擦熱の除去)を行うことが可能となっている。また電気モータ52は、外部から供給される交流電力(商用電源等)で回転駆動するように構成されており、圧縮機本体51のロータを駆動させる。
【0031】
なお、圧縮機本体51により生成された圧縮空気Abには、潤滑油Luが含まれる。そのためオイルセパレータ2は、圧縮機本体51から圧縮空気Abを受け、この圧縮空気Abに含まれる潤滑油Luを分離させて一時的に貯留する。なお圧縮機本体51からオイルセパレータ2に至る潤滑油循環回路Xの部分は、圧縮空気Abに含まれた潤滑油Luの経路である。
【0032】
自動温度調節弁3は、潤滑油Luの温度を調節する役割を果たす三方弁である。本実施形態の例の自動温度調節弁3は、例えば潤滑油Luの温度が所定の基準値より低いときに、補助経路Xaを通る潤滑油Luの量が増えるように動作する。これにより、オイルクーラ4を通る潤滑油Luの量を減らし、潤滑油Luの温度低下を抑えることが可能である。
【0033】
オイルクーラ4は、水冷によって潤滑油Luを冷却する水冷オイルクーラ、および空冷によって潤滑油Luを冷却する空冷オイルクーラを有する。水冷オイルクーラは、潤滑油Luに含まれる排熱を回収するもので、潤滑油Luと冷却水との熱交換によって潤滑油Luを一次冷却しつつ、冷却水を温水化する。なお水冷オイルクーラで生成された温水は、工場内でボイラ給水などとして利用される。
【0034】
空冷オイルクーラは、水冷オイルクーラを通過後の潤滑油Luを通すようにし、潤滑油Luと冷却用空気(冷却ファン9の動作により筐体20内部に吸入される外気)との熱交換によって潤滑油Luを二次冷却するように構成される。なおオイルクーラ4は、水冷オイルクーラと空冷オイルクーラの一方のみを有するようにしても良い。またオイルフィルタ6は、潤滑油Luから鉄錆やスラッジ等の不純物を除去するフィルタである。
【0035】
なお、潤滑油循環回路Xを循環する潤滑油Luは、圧縮機本体51において摩擦緩和の役割を果たした後、オイルセパレータ2に流入して圧縮空気Abから分離される。この潤滑油Luは、オイルセパレータ2に一時的に貯留した後、自動温度調節弁3を経て、オイルクーラ4を通過する際に冷却される。この冷却された潤滑油Luは、オイルフィルタ6において不純物が除去された後、圧縮機構1に流入して必要箇所での摩擦緩和や冷却に利用され、圧縮機本体51に戻る。
【0036】
また、オイルセパレータ2で分離された圧縮空気Abは、筐体20内に配置されたアフタークーラ(図示省略)によって冷却された後、外部に送気されるようになっている。アフタークーラは、水冷によって圧縮空気Abを冷却する水冷アフタークーラ、および空冷によって圧縮空気Abを冷却する空冷オイルクーラを有するのが好ましい。水冷アフタークーラは、圧縮空気Abに含まれる排熱を回収するもので、圧縮空気Abと冷却水との熱交換によって圧縮空気Abを一次冷却しつつ、冷却水を温水化する。なお冷却水は、水冷オイルクーラと水冷アフタークーラに対して直列に通水しても良いし、並列に通水するようにしても良い。
【0037】
空冷アフタークーラは、水冷アフタークーラを通過後の圧縮空気Abを通すようにし、圧縮空気Abと冷却用空気(冷却ファン9の動作により筐体20内部に吸入される外気)との熱交換によって圧縮空気Abを二次冷却するように構成される。なおアフタークーラは、水冷アフタークーラと空冷アフタークーラの一方のみを有するようにしても良い。
【0038】
インバータ7は、外部から電気モータ52へ供給される交流電力の電力変換を行う。なお、インバータ7の動作は制御装置10によって制御可能となっており、これにより制御装置10は、電気モータ52の駆動周波数Fmを制御することが可能である。駆動周波数Fmを高くするほど電気モータ52の回転速度が上がり、圧縮機本体51での圧縮空気Abの生成量が増大することになる。
【0039】
吸込フィルタ8は、圧縮機本体51への空気Aaの吸気経路に設けられ、粉塵を除去するフィルタである。筐体20外部から吸い込まれた空気Aaは、吸込フィルタ8を通過する際に粉塵が除去され、圧縮機本体51に送られることになる。
【0040】
冷却ファン9は、筐体20の内部が冷却されるように、ダストフィルタ12を介した通気を促進させると共に、上述した空冷オイルクーラおよび空冷アフタークーラに冷却用空気を送風するファンである。筐体20の内部の温度は、電気モータ52などの電気部品の発熱、および圧縮機本体51における空気の圧縮熱などにより、外気温度に比べて上昇し易い。筐体20の内部の温度上昇は、電気部品や潤滑油Luの劣化などの要因となるため、冷却ファン9によって筐体20の内部を適度に冷却することが重要である。
【0041】
なお、冷却ファン9を駆動させるファンモータ91の駆動周波数Ffは、制御装置10により制御可能となっている。この駆動周波数Ffを高くするほど、ファンモータ91の回転速度が上がることによってダストフィルタ12を介した通気が更に促進され、冷却ファン9による冷却効果が高まることになる。
【0042】
制御装置10は、エアコンプレッサ100が正常に動作するように、エアコンプレッサ100の各部の制御および監視を行う。また、制御装置10は、エアコンプレッサ100に対応する通信ユニット200(図1を参照)との通信が可能である。
【0043】
制御装置10は、筐体20内の所定箇所(本実施形態の例ではオイルセパレータ2の内部)の温度が一定に保たれるように、冷却ファン9を駆動させる。より具体的には、制御装置10は、オイルセパレータ2の内部温度を吐出温度Tdとして監視し、この吐出温度Tdが一定に保たれるように、ファンモータ91の駆動周波数FfをPIDフィードバック制御により調節する。この吐出温度Tdは、オイルセパレータ2に一時的に貯留されている潤滑油Luの温度としても良い。なお、エアコンプレッサ100としてオイルフリー式のものが採用されている場合は、例えば2段吐出温度を吐出温度Tdとすれば良い。
【0044】
また制御装置10は、例えば圧縮空気Abの需要量等に応じて、電気モータ52の駆動周波数Fmを制御する。これにより、圧縮空気Abの需要量が増大するほど駆動周波数Fmを上げて、より多くの圧縮空気Abを生成することが可能となる。更に制御装置10は、エアコンプレッサ100の周囲温度Ta(筐体20の外部の温度)、および、筐体20の内部から外部への排気の温度である排気温度Teの各温度を監視する。排気温度Teは、筐体20から排出される直前の圧縮空気Ab(空冷アフタークーラを通過後の圧縮空気Ab)の温度としても良く、冷却ファン9によって筐体20からダストフィルタ12を介して排出される直前の空気の温度としても良い。
【0045】
ここで、冷却ファン9の負荷率は圧縮機構1の負荷率に影響され、圧縮機構1の負荷率が大きくなるほど冷却ファン9の負荷率は大きくなる。なお、冷却ファン9の負荷率[%]は、ファンモータ91の最大駆動周波数に対する実際の駆動周波数の割合、または最大回転数に対する実際の回転数の割合であり、冷却ファン9による送風量の相対的な大きさを示している。また、圧縮機構1の負荷率[%]は、電気モータ52の最大駆動周波数に対する実際の駆動周波数の割合、または最大回転数に対する実際の回転数の割合であり、圧縮熱の入熱量の相対的な大きさを示している。
【0046】
ダストフィルタ12の目詰まりが生じると、送風量を維持するために、一次現象として冷却ファン9の負荷率が上昇する。さらに、目詰まりが進行すると、冷却ファン9の負荷率を最大に調整しても送風量が落ちるので、二次現象として吐出温度Tdが上昇すると共に、排気温度Teも上昇する。また、排気温度Teが上昇すると、排気温度Teと周囲温度Taの温度差が大きくなる。
【0047】
ダストフィルタ12の目詰まりが進むほど、圧縮機構1の駆動による筐体20内の温度の上がり易さが増すため、当該温度の上がり易さとの相関性を有する情報(以下、「特定情報」と称することがある。)を監視することにより、ダストフィルタ12のメンテナンスの要否を判別することが可能となる。この特定情報としては、下記(A)~(C)の関係(相関)の情報が挙げられる。
(A)圧縮機構1の負荷率と冷却ファン9の負荷率との関係
(B)圧縮機構1の負荷率と吐出温度Tdとの関係
(C)圧縮機構1の負荷率と温度差(排気温度Te-周囲温度Ta)との関係
【0048】
そこで、本実施形態に係る監視システム900においては、上記(A)~(C)の各関係に着目した監視動作を行って、ダストフィルタ12のメンテナンスの要否を判別する。以下、監視システム900の動作の具体的内容について詳細について説明する。
【0049】
3.監視システムの動作等
監視システム900は、各エアコンプレッサ100について、ダストフィルタ12のメンテナンスの要否に関する監視動作を実行する。本実施形態の例では、監視システム900は、各エアコンプレッサ100のモニタデータ群Mをサーバ500に収集させるデータ収集動作、および、モニタデータ群Mに基づいて所定条件が満たされたか否かの判別を行う状況判別動作を実行する。
【0050】
まずデータ収集動作について、図4に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。各通信ユニット200は、対応するエアコンプレッサ100の主電源がONになると、モニタデータ群Mの取得動作を開始する(ステップS11)。本実施形態でのモニタデータ群Mには、先述した電気モータ52の駆動周波数Fm、ファンモータ91の駆動周波数Ff、吐出温度Td、周囲温度Ta、および排気温度Teの各モニタデータが含まれる。なお各モニタデータは、何れも所定周期(例えば1分間隔)で同期して逐次取得された値(時系列データ)を含み、各モニタデータにおける全ての値には、その値が取得された日時の情報も付随している。各通信ユニット200は、対応するエアコンプレッサ100の制御装置10からモニタデータ群Mを継続的に受信して取得し、サーバ500へ送信するまで一時的に記録する。
【0051】
また各通信ユニット200は、モニタデータ群Mの取得動作を実行しながら、モニタデータ群Mの送信タイミングの到来を監視する(ステップS12)。そしてこの送信タイミングが到来する度に(ステップS12のYes)、各通信ユニット200は、前回の送信後に新たに記録したモニタデータ群Mを、対応するエアコンプレッサ100の装置IDとともにサーバ500へ送信する(ステップS13)。本実施形態の例では、各通信ユニット200は、一定周期(例えば、30~120分の周期)でモニタデータ群Mをサーバ500へ送信するように設定されており、この周期ごとに、新たに記録したモニタデータ群Mをサーバ500へ送信する。
【0052】
一方で、サーバ500は、各通信ユニット200からのモニタデータ群Mおよび装置IDの受信を待機する(ステップS21)。そして、何れかの通信ユニット200からモニタデータ群Mおよび装置IDを受信する度に(ステップS21のYes)、サーバ500は、当該モニタデータ群Mを、当該装置IDに関する情報として記録する(ステップS22)。
【0053】
このような一連のデータ収集動作(ステップS11~S22)が行われることにより、各エアコンプレッサ100におけるモニタデータ群Mの情報を、サーバ500に収集させることが可能である。
【0054】
次に状況判別動作について、図5に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。この状況判別動作は、本実施形態の例では、データ収集動作によって新たなモニタデータ群Mがサーバ500に記録されたタイミングで、当該モニタデータ群Mに基づいてサーバ500によって実行される。
【0055】
サーバ500は、モニタデータ群Mに基づいて、圧縮機構1の負荷率Lc、冷却ファン9の負荷率Lf、および排気温度Teと周囲温度Taの温度差ΔT(=排気温度Te-周囲温度Ta)を算出する(ステップS31)。サーバ500には、電気モータ52の最大駆動周波数Fmoおよびファンモータ91の最大駆動周波数Ffoの情報が予め登録されており、サーバ500は、圧縮機構1の負荷率Lc[%]を、電気モータ52の駆動周波数Fmと電気モータ52の最大駆動周波数Fmoの比(=駆動周波数Fm/最大駆動周波数Fmo×100)として算出し、冷却ファン9の負荷率Lf[%]を、ファンモータ91の駆動周波数Ffとファンモータ91の最大駆動周波数Ffoの比(=駆動周波数Ff/最大駆動周波数Ffo×100)として算出する。
【0056】
なお、圧縮機構1の負荷率Lcについては、電気モータ52の実際の回転数と電気モータ52の最大回転数との比として算出されるようにしても良く、冷却ファン9の負荷率Lfについては、ファンモータ91の実際の回転数とファンモータ91の最大回転数との比として算出されるようにしても良い。またエアコンプレッサ100において、冷却ファン9の送風量を風量センサ等で検知可能としている場合、冷却ファン9の負荷率Lfの代わりに当該送風量の値を利用するようにしても良い。
【0057】
次にサーバ500は、圧縮機構1の負荷率Lcと冷却ファン9の負荷率Lfとの関係R1、圧縮機構1の負荷率Lcと吐出温度Tdとの関係R2、および、圧縮機構1の負荷率Lcと温度差ΔTとの関係R3の何れかについて、基準情報Bとの差Zが所定の基準条件Cに達したか否かを判別する(ステップS32)。これらの関係R1~R3のそれぞれは、圧縮機構1の駆動による筐体20内の温度の上がり易さとの相関性を有する特定情報に該当する。
【0058】
ここで、圧縮機構1の負荷率Lcと冷却ファン9の負荷率Lfとの関係R1は、図6に示すような負荷率Lcと負荷率Lfの関係を示す座標系を想定した場合、当該座標系上の位置として表される。例えば、負荷率LcがX1で負荷率LfがY1のときの関係R1は、図6において座標(X1,Y1)で表される。また、関係R1についての基準情報Bは、例えば図6に示す基準線Ba(つまり、あらゆる負荷率Lcに対して負荷率Lfを特定する情報)のように表される。この例の場合、座標(X1,Y1)で表される関係R1と基準情報Bとの差Zは、図6に示すようにY1-Y2(つまり負荷率Lcを統一した上での、負荷率Lfどうしの差)となる。
【0059】
また本実施形態の例では、関係R1に関する基準情報B(基準線Ba)は、ダストフィルタ12に目詰まりがない状態(例えば、目詰まりが全くない未使用の状態)でのエアコンプレッサ100における、あらゆる負荷率Lcに対して負荷率Lfを特定する情報とする。また更に、関係R1に関する基準条件Cは、例えば、そのときの基準情報Bにおける負荷率Lfに対する許容上昇量α(例えば5~10%の範囲で選ばれる値)として設定され得る。この場合、図6の例では、Z≧αの式を満たせば、関係R1について基準情報Bとの差が基準条件Cに達したことになる。つまり、負荷率LcがX1のとき、負荷率LfがY2からα以上増加してY1になれば、Z≧αを満足する。なお、ここでは一例として関係R1について説明したが、関係R2および関係R3についても、負荷率Lfが吐出温度Tdまたは温度差ΔTに置き換わる点を除いて同様である。
【0060】
上述したステップS32の判別の結果、関係R1~R3の何れかについて基準情報Bとの差Zが基準条件Cに達していれば(ステップS32のYes)、サーバ500は、予防保全フラグをONに更新した上で(ステップS33)、今回の状況判別動作を終了する。すなわち、サーバ500は、装置IDごとに、ダストフィルタ12のメンテナンスの要否を表す予防保全フラグ(初期値は「OFF」)の情報を予め記録保持しており、ステップS33の動作によって、今回の状況判別動作に関する装置ID(今回の状況判別動作に用いたモニタデータ群Mに対応した装置ID)に対応する予防保全フラグが「ON」に更新される。
【0061】
一方、関係R1~R3の何れについても基準情報Bとの差Zが基準条件Cに達していなければ(ステップS32のNo)、サーバ500は、ステップ33の動作を行うことなく、今回の状況判別動作を終了する。
【0062】
サーバ500に記録保持されている装置IDごとの予防保全フラグの状況は、各エアコンプレッサ100のメンテナンス業務を請け負う事業者(設備管理代行者)等によって確認可能であり、どのエアコンプレッサ100についてダストフィルタ12のメンテナンスが必要となったかを容易に把握することが可能となっている。これにより、例えば上記事業者の下でメンテナンス作業を担うフィールドエンジニアは、ある装置IDについての予防保全フラグがONになった場合、その装置IDに対応するエアコンプレッサ100のダストフィルタ12のメンテナンス(清掃や交換など)を行動計画に組み入れることができる。なお、「ON」になった予防保全フラグについては、例えばメンテナンスの実施後に「OFF」へ更新することにより、再度の監視が行われるようにすることが可能である。
【0063】
このように本実施形態の監視システム900によれば、エアコンプレッサ100ごとのダストフィルタ12のメンテナンスを効率良く実施することができ、ダストフィルタ12の目詰まりによる種々の不具合を極力未然に防ぐことができる。
【0064】
4.その他
以上に説明したとおり本実施形態に係る監視システム900は、電気モータ52によって駆動され空気Aaを圧縮するように構成された圧縮機構1を、ダストフィルタ12を介して通気可能に形成された筐体20の内部に設けたエアコンプレッサ100に関して、監視動作を行う監視システムとなっている。この監視動作は、圧縮機構1の駆動による筐体20内の温度の上がり易さとの相関性を有する特定情報を監視する動作である。そのため監視システム900によれば、エアコンプレッサ100におけるダストフィルタ12のメンテナンスを、より効率良く実施することが可能となる。
【0065】
また監視システム900は、圧縮機構1の負荷率Lcと冷却ファン9の負荷率Lfとの関係R1、圧縮機構1の負荷率Lcと吐出温度Tdとの関係R2、および、圧縮機構1の負荷率Lcと温度差ΔTとの関係R3を特定情報として監視し、特定情報と基準情報Bとの差が基準条件Cに達したか否かを判別する。なお監視システム900は、関係R1~R3の全てを監視する代わりに、これらのうちの一つまたは二つのみを監視するようにしても良い。
【0066】
またエアコンプレッサの種類について、本実施形態では、電気モータ52(メインモータ)の駆動周波数の制御によって空気圧縮量が調整できるインバータ機のエアコンプレッサ100を例に挙げたが、その代わりに、ロード運転(圧縮空気を作る状態)とアンロード運転(カラ運転で待機する状態)を繰返すように制御されるロード・アンロード機のエアコンプレッサを採用することも可能である。
【0067】
この場合に圧縮機構の負荷率は、一例として、ロード運転時では100%とし、アンロード運転時では10%とすれば良い。この例では、アンロード運転中にも圧縮機構での軸受部や軸封部が荷重を受けることを考慮して、負荷率を10%と見なしている。またこの場合、モニタデータ群Mの内容は、駆動周波数Fmの代わりに、ロード運転信号(ロード運転中のときにONを示す信号)とアンロード運転信号(アンロード運転中のときにONを示す信号)を採用すれば良い。そしてステップS31の動作においては、ロード運転信号がONの場合は圧縮機構の負荷率Lcを100%とし、アンロード運転信号がONの場合は圧縮機構の負荷率Lcを10%とすれば良い。
【0068】
また監視システム900は、複数のエアコンプレッサ100それぞれに対応して設けられる各通信ユニット200と、各通信ユニット200との通信が可能であるサーバ500と、を備える。そして、各通信ユニット200は、対応するエアコンプレッサ100の特定情報に関する情報をサーバ500に送信し、サーバ500は、各通信ユニット200から受信する情報に基づいて、複数のエアコンプレッサ100それぞれについて監視動作を行う。
【0069】
そのため監視システム900によれば、複数のエアコンプレッサ100それぞれの監視をサーバ500で行うことができ、効率の良い監視を実現させることが可能である。なお、例えば複数台のエアコンプレッサ100が工場内に分散設置されているような場合、通信ユニット200からサーバ500への送信データには、当該通信ユニット200に対応したエアコンプレッサ100の位置情報を含めるようにしても良い。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0071】
1 圧縮機構
2 オイルセパレータ
3 自動温度調節弁
4 オイルクーラ
6 オイルフィルタ
7 インバータ
8 吸込フィルタ
9 冷却ファン
10 制御装置
12 ダストフィルタ
20 筐体
51 圧縮機本体
52 電気モータ
91 ファンモータ
100 エアコンプレッサ
200 通信ユニット
201 中継機
202 親機
203 データ回線終端装置
210 無線ネットワーク
300 LAN
400 インターネット
500 サーバ
900 監視システム
Aa 空気
Ab 圧縮空気
Lu 潤滑油
X 潤滑油循環回路
Xa 補助経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6