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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066746
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 51/00 20060101AFI20240509BHJP
   F04B 49/10 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F04B51/00
F04B49/10 331Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176401
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽貴
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145AA26
3H145AA42
3H145CA03
3H145CA21
3H145EA13
3H145EA20
3H145FA16
3H145FA20
3H145FA25
(57)【要約】
【課題】より適切な頻度でエアコンプレッサのメンテナンスを実施することが可能となる監視システムを提供する。
【解決手段】モータによって駆動され空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機構を備えたエアコンプレッサに関して、監視動作を行う監視システムであって、前記監視動作は、前記エアコンプレッサの負荷率を積算し、当該負荷率の積算値が所定の閾値に達する時期を監視する監視システムとする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって駆動され空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機構を備えたエアコンプレッサに関して、監視動作を行う監視システムであって、
前記監視動作は、
前記エアコンプレッサの負荷率を積算し、当該負荷率の積算値が所定の閾値に達する時期を監視する動作であることを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記エアコンプレッサにおける前記圧縮空気の吐出圧力に応じて、前記積算値の補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記エアコンプレッサは、潤滑油を用いて前記圧縮機構における摩擦緩和がなされるとともに、前記潤滑油の劣化度合が検知可能に構成されており、
前記劣化度合に応じて、前記積算値の補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項4】
前記エアコンプレッサは、潤滑油を用いて前記圧縮機構における摩擦緩和がなされるとともに、前記潤滑油の使用時間が計測可能に構成されており、
前記使用時間に応じて、前記積算値の補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項5】
前記エアコンプレッサにおける所定部品の交換または取外しがなされたときに、前記積算値をリセットすることを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項6】
複数の前記エアコンプレッサそれぞれに対応して設けられる各通信ユニットと、
前記各通信ユニットとの通信が可能であるサーバと、を備え、
前記各通信ユニットは、対応する前記エアコンプレッサの負荷率に関する情報を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記各通信ユニットから受信する情報に基づいて、複数の前記エアコンプレッサそれぞれについて前記監視動作を行うことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンプレッサに関して監視動作を行う監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮空気を利用する各分野においてエアコンプレッサが利用されている。エアコンプレッサとしては、モータを用いて空気を圧縮するように構成された圧縮機構を備えるものが広く利用されている。このようなエアコンプレッサにおいては、長期使用に伴って圧縮機構等の各部の性能劣化が問題となる。
【0003】
そのためエアコンプレッサの性能維持のためには、圧縮機構のオーバーホールやフィルタ類の交換等のメンテナンスを適切に実施することが求められる。例えば特許文献1には、筐体の内部に電動機や圧縮機本体などを配置した圧縮機であって、内部の点検作業等を可能とするために、筐体の一部(前面板)を着脱可能としてものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-332788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここでメンテナンスの実施頻度については、できるだけ過不足の無いようすることが望ましい。実施頻度が少な過ぎると、性能劣化によりエアコンプレッサが本来の性能を発揮することができず、また、故障の原因となる虞もある。逆に実施頻度が多過ぎると、メンテナンスに必要なコストが無駄に増えてしまうことになる。
【0006】
そこでメンテナンスの実施頻度をエアコンプレッサの運転時間で管理するようにし、例えば、運転時間の累計が所定時間に達した時にメンテナンスを実施することが考えられる。しかし実際の性能劣化の進み具合は、エアコンプレッサがどのような負荷率で使用されたか等も影響する。そのためこのような管理手法では、エアコンプレッサのメンテナンスが適切な頻度で実施されない虞がある。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑み、より適切な頻度でエアコンプレッサのメンテナンスを実施することが可能となる監視システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る監視システムは、モータによって駆動され空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機構を備えたエアコンプレッサに関して、監視動作を行う監視システムであって、前記監視動作は、前記エアコンプレッサの負荷率を積算し、当該負荷率の積算値が所定の閾値に達する時期を監視する動作である構成とする。本構成によれば、より適切な頻度でエアコンプレッサのメンテナンスを実施することが可能となる。
【0009】
上記構成としてより具体的には、前記エアコンプレッサにおける前記圧縮空気の吐出圧力に応じて、前記積算値の補正を行う構成としても良い。また上記構成としてより具体的には、前記エアコンプレッサは、潤滑油を用いて前記圧縮機構における摩擦緩和がなされるとともに、前記潤滑油の劣化度合が検知可能に構成されており、前記劣化度合に応じて、前記積算値の補正を行う構成としても良い。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記エアコンプレッサは、潤滑油を用いて前記圧縮機構における摩擦緩和がなされるとともに、前記潤滑油の使用時間が計測可能に構成されており、前記使用時間に応じて、前記積算値の補正を行う構成としても良い。また上記構成としてより具体的には、前記エアコンプレッサにおける所定部品の交換または取外しがなされたときに、前記積算値をリセットする構成としても良い。
【0011】
上記構成としてより具体的には、複数の前記エアコンプレッサそれぞれに対応して設けられる各通信ユニットと、前記各通信ユニットとの通信が可能であるサーバと、を備え、前記各通信ユニットは、対応する前記エアコンプレッサの負荷率に関する情報 を前記サーバに送信し、前記サーバは、前記各通信ユニットから受信する情報に基づいて、複数の前記エアコンプレッサそれぞれについて前記監視動作を行う構成としても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る監視システムによれば、より適切な頻度でエアコンプレッサのメンテナンスを実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る監視システム900の概略的な構成図である。
図2】本実施形態に係るエアコンプレッサ100の概略的な構成図である。
図3】監視システム900が行う主要な動作に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について各図面を参照しながら説明する。なお本実施形態に係る監視システムは、複数のエアコンプレッサそれぞれに関して監視動作を行うシステムとなっている。
【0015】
1.監視システムの構成等
まず本実施形態に係る監視システムの構成等について説明する。図1は、本実施形態に係る監視システム900の概略的な構成を例示している。監視システム900は、LAN(Local Area Network)300、およびサーバ500を含むように構成されている。LAN300は、メッシュ型の無線ネットワーク210を含むように構成されている。
【0016】
無線ネットワーク210は、複数のエアコンプレッサ100それぞれに一対一に対応して設けられた子機(以下、「通信ユニット200」と称する。)、中継機201、および親機202の各通信機(ノード)を用いて構成された通信ネットワークである。無線ネットワーク210は、例えば工場のようなローカルエリア内に配置された複数のノード間で無線通信することが可能であり、また直接電波が届かない場合においては、その間にあるノードが中継して相互通信が可能である。
【0017】
無線ネットワーク210の通信プロトコルの1つの特徴は、複数のノードを経由(ホップ)することで目的のノードまでパケットを送る、マルチホップ機能を有することにある。従って、距離的な理由等により電波が届きにくい場所に通信ユニット200を設置する場合であっても、中継機201を設けることで、他のノードとの相互通信が可能となる。また、新たな通信ユニット200を追加する場合、配線工事負担が少なく、通信ネットワークを容易に拡張することができる。さらに、ノードをメッシュ状に配置することにより、仮にあるノードに障害が発生した場合であっても、他の正常なノードを介して通信を可能とすることができる。
【0018】
LAN300においては、全ての通信ユニット200は無線ネットワーク210を介して親機202に接続され、更に親機202は、データ回線終端装置203およびインターネット400を介してサーバ500に接続されている。これによりサーバ500は、各通信ユニット200との通信が可能となっている。各通信ユニット200から送信される情報は、LAN300とインターネット400を介してサーバ500に送られることになる。
【0019】
このように監視システム900では、各通信ユニット200から送信される情報を、サーバ500に収集させることができる。なお必要に応じて、サーバ500には、インターネット400を介して更に別のLANを接続させ、監視システム900の規模を拡張させることも可能である。
【0020】
各通信ユニット200は、自機に対応するエアコンプレッサ100(後述する制御装置10)との通信が可能であり、当該エアコンプレッサ100に関するモニタデータ(モニタ結果のデータ)を取得し、装置IDとともに当該モニタデータをサーバ500へ送信することができる。なお当該装置IDは、当該エアコンプレッサ100を他のエアコンプレッサ100から識別可能とする情報である。
【0021】
サーバ500は、各通信ユニット200から受信する情報に基づいて、複数のエアコンプレッサ100それぞれについての監視を行うことが可能である。なおサーバ500には、全てのエアコンプレッサ100についての装置IDが予め登録されており、装置IDごとに情報の記録等を行うことが可能である。監視システム900の動作については、改めて詳細に説明する。
【0022】
2.エアコンプレッサの構成等
次に、エアコンプレッサ100の構成等について説明する。図2は、エアコンプレッサ100の概略的な構成を示している。
【0023】
本図に示すようにエアコンプレッサ100は、圧縮機構1、オイルセパレータ2、自動温度調節弁3、オイルクーラ4、オイルフィルタ6、インバータ7、吸込フィルタ8、冷却ファン9、および制御装置10の各要素が、筐体20の内部に配置された構成となっている。圧縮機構1は、圧縮機本体51および電気モータ52などを有している。
【0024】
本実施形態の例では、エアコンプレッサ100は給油式のエアコンプレッサとして構成され、外部から吸込んだ空気Aaを圧縮機本体51により圧縮して圧縮空気Abとし、これを例えば各種の空圧機器などへ吐出することが可能である。なお、エアコンプレッサ100は、本発明の趣旨を逸脱しない限り種々の構成を採用することが可能であり、オイルフリー式のエアコンプレッサとして構成されても良い。
【0025】
また筐体20は、大気中の塵埃を除去するためのダストフィルタを介して通気可能に形成されている。より具体的には、筐体20の少なくとも一部には内外の通気を可能とする通気口が設けられており、この通気口を外側から覆うようにダストフィルタが配置されている。
【0026】
図2において、白抜矢印は空気Aaおよび圧縮空気Abの経路を概略的に示し、太線矢印は潤滑油Luが循環する潤滑油循環回路Xを概略的に示している。本実施形態では、圧縮機本体51から出た圧縮空気Abは、オイルセパレータ2を通って外部へ吐出される。
【0027】
また図2に示す潤滑油循環回路Xは、圧縮機構1において潤滑油Luを用いて摩擦緩和や冷却がなされる所定箇所(圧縮機本体51など)を通り、潤滑油Luを循環させる経路である。潤滑油循環回路Xは、圧縮機本体51からオイルセパレータ2、自動温度調節弁3、オイルクーラ4、およびオイルフィルタ6を順に通って、潤滑油Luが圧縮機本体51へ流れる経路を有する。また潤滑油循環回路Xは、オイルクーラ4およびオイルフィルタ6の間の位置と自動温度調節弁3とを繋ぐ補助経路Xaを有する。
【0028】
圧縮機本体51は、電気モータ52によって駆動され、空気Aaを圧縮して圧縮空気Abを生成するように動作する。本実施形態の例では、圧縮機本体51として回転式(スクリュ式)の圧縮機が採用されており、圧縮機本体51では潤滑油Luを用いて、スクリュロータの摩擦緩和と冷却(圧縮熱や摩擦熱の除去)を行うことが可能となっている。また電気モータ52は、外部から供給される交流電力(商用電源等)で回転駆動するように構成されており、圧縮機本体51のロータを駆動させる。
【0029】
なお、圧縮機本体51により生成された圧縮空気Abには、潤滑油Luが含まれる。そのためオイルセパレータ2は、圧縮機本体51から圧縮空気Abを受け、この圧縮空気Abに含まれる潤滑油Luを分離させて一時的に貯留する。なお圧縮機本体51からオイルセパレータ2に至る潤滑油循環回路Xの部分は、圧縮空気Abに含まれた潤滑油Luの経路である。
【0030】
自動温度調節弁3は、潤滑油Luの温度を調節する役割を果たす三方弁である。本実施形態の例の自動温度調節弁3は、例えば潤滑油Luの温度が所定の基準値より低いときに、補助経路Xaを通る潤滑油Luの量が増えるように動作する。これにより、オイルクーラ4を通る潤滑油Luの量を減らし、潤滑油Luの温度低下を抑えることが可能である。
【0031】
オイルクーラ4は、水冷によって潤滑油Luを冷却する水冷オイルクーラ、および空冷によって潤滑油Luを冷却する空冷オイルクーラを有する。水冷オイルクーラは、潤滑油Luに含まれる排熱を回収するもので、潤滑油Luと冷却水との熱交換によって潤滑油Luを一次冷却しつつ、冷却水を温水化する。なお水冷オイルクーラで生成された温水は、工場内でボイラ給水などとして利用される。
【0032】
空冷オイルクーラは、水冷オイルクーラを通過後の潤滑油Luを通すようにし、潤滑油Luと冷却用空気(冷却ファン9の動作により筐体20内部に吸入される外気)との熱交換によって潤滑油Luを二次冷却するように構成される。なおオイルクーラ4は、水冷オイルクーラと空冷オイルクーラの一方のみを有するようにしても良い。またオイルフィルタ6は、潤滑油Luから鉄錆やスラッジ等の不純物を除去するフィルタである。
【0033】
なお、潤滑油循環回路Xを循環する潤滑油Luは、圧縮機本体51(ロータの軸を受ける軸受部や軸封部等)において摩擦緩和の役割を果たした後、オイルセパレータ2に流入して圧縮空気Abから分離される。この潤滑油Luは、オイルセパレータ2に一時的に貯留した後、自動温度調節弁3を経て、オイルクーラ4を通過する際に冷却される。この冷却された潤滑油Luは、オイルフィルタ6において不純物が除去された後、圧縮機構1に流入して必要箇所での摩擦緩和や冷却に利用され、圧縮機本体51に戻る。
【0034】
また、オイルセパレータ2で分離された圧縮空気Abは、筐体20内に配置されたアフタークーラ(図示省略)によって冷却された後、外部に送気されるようになっている。アフタークーラは、水冷によって圧縮空気Abを冷却する水冷アフタークーラ、および空冷によって圧縮空気Abを冷却する空冷オイルクーラを有するのが好ましい。水冷アフタークーラは、圧縮空気Abに含まれる排熱を回収するもので、圧縮空気Abと冷却水との熱交換によって圧縮空気Abを一次冷却しつつ、冷却水を温水化する。なお冷却水は、水冷オイルクーラと水冷アフタークーラに対して直列に通水しても良いし、並列に通水するようにしても良い。
【0035】
空冷アフタークーラは、水冷アフタークーラを通過後の圧縮空気Abを通すようにし、圧縮空気Abと冷却用空気(冷却ファン9の動作により筐体20内部に吸入される外気)との熱交換によって圧縮空気Abを二次冷却するように構成される。なおアフタークーラは、水冷アフタークーラと空冷アフタークーラの一方のみを有するようにしても良い。
【0036】
インバータ7は、外部から電気モータ52へ供給される交流電力の電力変換を行う。なお、インバータ7の動作は制御装置10によって制御可能となっており、これにより制御装置10は、電気モータ52の駆動周波数Fmを制御することが可能である。駆動周波数Fmを高くするほど電気モータ52の回転速度が上がり、圧縮機本体51での圧縮空気Abの生成量が増大することになる。
【0037】
吸込フィルタ8は、圧縮機本体51への空気Aaの吸気経路に設けられ、粉塵を除去するフィルタである。筐体20外部から吸い込まれた空気Aaは、吸込フィルタ8を通過する際に粉塵が除去され、圧縮機本体51に送られることになる。冷却ファン9は、筐体20の内部が冷却されるように通気を促進させると共に、上述した空冷オイルクーラおよび空冷アフタークーラに冷却用空気を送風するファンである。
【0038】
制御装置10は、エアコンプレッサ100が正常に動作するように、エアコンプレッサ100の各部の制御および監視を行う。また、制御装置10は、エアコンプレッサ100に対応する通信ユニット200(図1を参照)との通信が可能である。
【0039】
また制御装置10は、例えば圧縮空気Abの需要量等に応じて、電気モータ52の駆動周波数Fmを制御する。これにより、圧縮空気Abの需要量が増大するほど駆動周波数Fmを上げて、より多くの圧縮空気Abを生成することが可能となる。また制御装置10は、筐体20内の所定箇所(本実施形態の例ではオイルセパレータ2の内部)の温度が一定に保たれるように、冷却ファン9を駆動させる。
【0040】
なおエアコンプレッサ100においては、長期使用に伴って圧縮機構1等の各部の性能劣化が問題となるため、エアコンプレッサ100の性能維持のためには、圧縮機構1のオーバーホールやフィルタ類の交換等のメンテナンスを適切に実施することが重要である。但し、実際の性能劣化の進み具合は、エアコンプレッサ100がどのような負荷率で使用されたかも影響するため、単に運転時間の累計が所定時間に達した時にメンテナンスを実施するという運用では、メンテナンスが適切な頻度で実施されない虞がある。
【0041】
そこで監視システム900は、エアコンプレッサ100の負荷率Lcを積算し、負荷率Lcの積算値が所定の閾値に達する時期を監視する動作を行うことにより、エアコンプレッサ100がどのような負荷率で使用されたかも考慮した適切な時期でのメンテナンスを可能とする。なお負荷率Lc[%]は、電気モータ52の最大駆動周波数Fmoに対する実際の駆動周波数Fmの割合(=駆動周波数Fm/最大駆動周波数Fmo×100)で表され、通常は0%(停止時)~100%(定格運転時)の値をとる。以下、監視システム900の動作の具体的内容について詳細について説明する。
【0042】
3.監視システムの動作等
監視システム900が行う主要な動作について、図3に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0043】
各通信ユニット200は、対応するエアコンプレッサ100の主電源がONになると、モニタデータMの取得動作を開始する(ステップS11)。本実施形態でのモニタデータMには、先述した電気モータ52の駆動周波数Fmのモニタデータ(所定の周期Tpで逐次得られた駆動周波数Fmの時系列データ)が含まれ、当該モニタデータにおける全ての値には、その値が取得された日時の情報も付随している。各通信ユニット200は、対応するエアコンプレッサ100の制御装置10からモニタデータMを継続的に受信して取得し、サーバ500へ送信するまで一時的に記録する。
【0044】
また各通信ユニット200は、モニタデータMの取得動作を実行しながら、モニタデータMの送信タイミングの到来を監視する(ステップS12)。そしてこの送信タイミングが到来する度に(ステップS12のYes)、各通信ユニット200は、前回の送信後に新たに記録したモニタデータMを、対応するエアコンプレッサ100の装置IDとともにサーバ500へ送信する(ステップS13)。本実施形態の例では、各通信ユニット200は、一定の送信周期(例えば、30~120分の周期)でモニタデータMをサーバ500へ送信するように設定されており、この送信周期ごとに、新たに記録したモニタデータMをサーバ500へ送信する。
【0045】
なお当該送信周期が比較的長いような場合、制御装置10がこの1周期ごとに負荷率Lc(=駆動周波数Fm/最大駆動周波数Fmo×100)の総和または平均値を算出し、この算出されたデータが駆動周波数Fmのモニタデータの代わりにサーバ500へ送信されるようにしても良い。このようにすれば、後述するステップS22の動作を行う際のサーバ500の処理負担を、軽減させることが可能となる。
【0046】
一方で、サーバ500は、各通信ユニット200からのモニタデータMおよび装置IDの受信を待機する(ステップS21)。そして、何れかの通信ユニット200からモニタデータMおよび装置IDを受信する度に(ステップS21のYes)、サーバ500は、当該モニタデータMを当該装置IDに関する情報として記録するとともに、当該装置IDの負荷率積算値Liを更新する(ステップS22)。
【0047】
すなわちサーバ500は、装置IDごとに、負荷率積算値Liの情報を記録保持しており、ステップS22の動作によって、今回受信した装置IDに対応する負荷率積算値Liを更新する。より具体的に説明すると、サーバ500は、今回のモニタデータMに含まれる全ての駆動周波数Fm(時系列データの各値)についての負荷率Lc(=駆動周波数Fm/最大駆動周波数Fmo×100)を求め、これらの負荷率Lcの総和を算出する。なお、駆動周波数Fmの最大値である最大駆動周波数Fmoの情報は、予めサーバ500に登録されている。
【0048】
そして更にサーバ500は、今回算出した負荷率Lcの総和を、既に記録保持済みの負荷率積算値Liに加算することにより、負荷率積算値Liを更新する。これにより負荷率積算値Liは、今回加算された分を含んで、これまでに逐次加算されてきた負荷率Lcの積算値となる。
【0049】
次にサーバ500は、上記更新後の負荷率積算値Liが所定の閾値αに達したか否かを判別する(ステップS23)。この閾値αは、エアコンプレッサ100のメンテナンスが推奨される時期に対応した負荷率積算値Liとなるように、予め適切に設定された値である。なお仮に、駆動周波数Fmのモニタデータの時間間隔(先述した周期Tpと同等)が1分(1/60 時間)である場合、平均負荷率50%にて10,000時間連続で電気モータ52が駆動されたときの負荷率積算値Liは、30,000,000%(=50% × 60/h × 10,000h)となる。上述した閾値αは、一例としてこのような値に設定されても良い。
【0050】
そして負荷率積算値Liが閾値αに達していた場合には(ステップS23のYes)、サーバ500は、今回受信した装置IDについての予防保全フラグを「ON」に更新する(ステップS24)。すなわち、サーバ500は、装置IDごとに、予防保全フラグ(初期値は「OFF」)の情報を予め記録保持しており、ステップS24の動作によって、今回受信した装置IDに対応する予防保全フラグが「ON」に更新される。なおサーバ500は、ステップS24の動作を行った後、ステップS21の動作を再度実行する。
【0051】
一方で、負荷率積算値Liが閾値αに達していなかった場合には(ステップS23のNo)、サーバ500は、ステップS24の動作を行うことなく、ステップS21の動作を再度実行する。このような一連の動作(ステップS11~S24)が行われることにより、サーバ500は、モニタデータMを利用して、各エアコンプレッサ100について負荷率も考慮したメンテナンスが推奨される時期を監視し、この時期が到来したときに予防保全フラグを「ON」にすることができる。
【0052】
サーバ500に記録保持されている装置IDごとの予防保全フラグの状況は、各エアコンプレッサ100のメンテナンス業務を請け負う事業者(設備管理代行者)等によって確認可能であり、どのエアコンプレッサ100についてメンテナンスが推奨されるかを容易に把握することが可能となっている。これにより、例えば上記事業者の下でメンテナンス作業を担うフィールドエンジニアは、ある装置IDについての予防保全フラグがONになった場合、その装置IDに対応するエアコンプレッサ100のメンテナンス(例えば、圧縮機構1のオーバーホール、フィルタ類の交換、或いは潤滑油Luの交換など、エアコンプレッサ100における所定部品の交換または取外しを含む作業)を行動計画に組み入れることができる。
【0053】
また、「ON」になった予防保全フラグについては、例えばメンテナンスの実施後に「OFF」へ更新するとともに、負荷率積算値Liをリセットすることにより、再度の監視が行われるようにすることが可能である。なおこの処理は、監視システム900において自動的に実行されるようにしても良い。例えば、エアコンプレッサ100において、自機の所定部品の交換または取外しがなされた場合にこれが検知されるようにしておき、この検知情報と装置IDが対応する通信ユニット200によってサーバ500へ送信されるようにしておく。そしてサーバ500は、当該検知情報と装置IDを受信した際に、当該装置IDに対応する負荷率積算値Liをリセットするとともに、予防保全フラグを「OFF」へ更新するようにすれば良い。
【0054】
4.その他
以上に説明したとおり本実施形態に係る監視システム900は、電気モータ52によって駆動され空気Aaを圧縮して圧縮空気Abを生成する圧縮機構1を備えたエアコンプレッサ100に関して、監視動作を行うシステムとなっている。更にこの監視動作は、エアコンプレッサ100の負荷率Lcを積算し、負荷率Lcの積算値である負荷率積算値Liが所定の閾値αに達する時期を監視する動作となっている。そのため監視システム900によれば、より適切な頻度でエアコンプレッサ100のメンテナンスを実施することが可能である。
【0055】
なお監視システム900においては、エアコンプレッサ100のメンテナンスが推奨される時期をより適切に監視することが可能となるように、負荷率積算値Liの補正を行うようにしても良い。負荷率積算値Liの補正に関する具体的形態としては、例えば、次の第1~第3の例が挙げられる。
【0056】
第1の例としては、エアコンプレッサ100における圧縮空気Abの吐出圧力に応じて、負荷率積算値Liの補正を行う例が挙げられる。この吐出圧力は、圧縮機本体51から吐出される圧縮空気Abの圧力に相当する。圧縮機本体51における軸受部や軸封部等は、負荷率Lcが同等であっても、当該吐出圧力が大きいほど(換言すれば、空気Aaの圧縮率が大きいほど)、受ける荷重が大きくなる傾向がある。
【0057】
そこで負荷率積算値Liに積算される負荷率Lcに対して、そのときの当該吐出圧力に応じた係数(吐出圧力が大きいほど、増大する係数)を乗じることにより、この傾向も考慮されるように負荷率積算値Liを補正することが可能である。この例では、エアコンプレッサ100において当該吐出圧力が継続的に検知されるようにするとともに、先述したモニタデータMに当該検知情報のモニタデータも含まれるようにし、サーバ500は、このモニタデータに基づいて負荷率積算値Liの補正を行うようにすれば良い。
【0058】
第2の例としては、潤滑油Luの劣化度合に応じて、負荷率積算値Liの補正を行う例が挙げられる。圧縮機本体51における軸受部や軸封部等は、負荷率Lcが同等であっても、潤滑油Luの劣化度合が高いほど摩擦緩和の効果が低減し、摩擦による負担が大きくなる傾向がある。そこで負荷率積算値Liに積算される負荷率Lcに対して、そのときの潤滑油Luの劣化度合に応じた係数(劣化度合が大きいほど、増大する係数)を乗じることにより、この傾向も考慮されるように負荷率積算値Liを補正することが可能である。
【0059】
この例では、エアコンプレッサ100に油劣化センサを設けて、潤滑油Luの劣化度合が継続的に検知されるようにすれば良い。そして更に、先述したモニタデータMに当該検知情報のモニタデータも含まれるようにし、サーバ500は、このモニタデータに基づいて負荷率積算値Liの補正を行うようにすれば良い。
【0060】
ここで出願人は、潤滑油についてRBOT(回転ボンベ式酸化安定度試験)による劣化試験を実施し、潤滑油の比誘電率、動粘度、および密度について、当該潤滑油の劣化度合との相関性の調査を行った結果、特に潤滑油の比誘電率は、当該潤滑油の劣化度合と良好な相関性を有することが判明した。そこで上記の油劣化センサとしては、潤滑油Luの比誘電率を検知するセンサを採用しても良い。
【0061】
第3の例としては、潤滑油Luの使用時間(エアコンプレッサ100の初回使用時または前回の潤滑油Luの交換時からの累積の使用時間)に応じて、負荷率積算値Liの補正を行う例が挙げられる。圧縮機本体51における軸受部や軸封部等は、負荷率Lcが同等であっても、潤滑油Luの使用時間が長いほど潤滑油Luの劣化度合が高く、摩擦による負担が大きくなる傾向がある。そこで負荷率積算値Liに積算される負荷率Lcに対して、そのときの潤滑油Luの使用時間に応じた係数(使用時間が長いほど、増大する係数)を乗じることにより、この傾向も考慮されるように負荷率積算値Liを補正することが可能である。
【0062】
特に、潤滑油Luの交換推奨時間(長期使用による劣化が相当に進んだと見込まれるため交換が推奨される時間であり、一例としては3000時間)が設定されている場合、潤滑油Luの使用時間がこの交換推奨時間を超過していると、当該傾向が顕著となる。そこで、潤滑油Luの使用時間がこの交換推奨時間を超過しているときに限り、負荷率積算値Liに積算される負荷率Lcに対して、そのときの潤滑油Luの使用時間に応じた係数(例えば、当該超過の時間が増えるごとに、1.1、1.2、1.3、・・・と増大する係数)を乗じるようにしても良い。
【0063】
また監視システム900は、複数のエアコンプレッサ100それぞれに対応して設けられる各通信ユニット200と、各通信ユニット200との通信が可能であるサーバ500と、を備える。そして、各通信ユニット200は、対応するエアコンプレッサ100の負荷率Lcに関する情報をサーバ500に送信し、サーバ500は、各通信ユニット200から受信する情報に基づいて、複数のエアコンプレッサ100それぞれについて監視動作を行う。
【0064】
そのため監視システム900によれば、複数のエアコンプレッサ100それぞれの監視をサーバ500で行うことができ、効率の良い監視を実現させることが可能である。なお、例えば複数台のエアコンプレッサ100が工場内に分散設置されているような場合、通信ユニット200からサーバ500への送信データには、当該通信ユニット200に対応したエアコンプレッサ100の位置情報を含めるようにしても良い。
【0065】
またエアコンプレッサの種類について、本実施形態では、電気モータ52(メインモータ)の駆動周波数の制御によって空気圧縮量が調整できるインバータ機のエアコンプレッサ100を例に挙げたが、その代わりに、ロード運転(圧縮空気を作る状態)とアンロード運転(空運転で待機する状態)を繰返すように制御されるロード・アンロード機のエアコンプレッサを採用することも可能である。
【0066】
エアコンプレッサ100としてロード・アンロード機のエアコンプレッサを採用した場合、圧縮機構の負荷率は、一例として、ロード運転時では100%とし、アンロード運転時では10%とすれば良い。この例では、アンロード運転中にも圧縮機構での軸受部や軸封部が荷重を受けることを考慮して、負荷率を10%と見なしている。またこの場合、モニタデータMの内容は、駆動周波数Fmの代わりに、ロード運転信号(ロード運転中のときにONを示す信号)とアンロード運転信号(アンロード運転中のときにONを示す信号)とすれば良い。そしてステップS22の動作においては、ロード運転信号がONの場合は負荷率Lcを100%とし、アンロード運転信号がONの場合は負荷率Lcを10%とすれば良い。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
1 圧縮機構
2 オイルセパレータ
3 自動温度調節弁
4 オイルクーラ
6 オイルフィルタ
7 インバータ
8 吸込みフィルタ
9 冷却ファン
10 制御装置
20 筐体
51 圧縮機本体
52 電気モータ
100 エアコンプレッサ
200 通信ユニット
201 中継機
202 親機
203 データ回線終端装置
210 無線ネットワーク
300 LAN
400 インターネット
500 サーバ
900 監視システム
Aa 空気
Ab 圧縮空気
Lu 潤滑油
X 潤滑油循環回路
Xa 補助経路
図1
図2
図3