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特開2024-66765反応装置、流路の封止方法、及びチップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066765
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】反応装置、流路の封止方法、及びチップ
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20240509BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20240509BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G01N35/02 B
G01N37/00 101
B01J19/00 321
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176433
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健人
(72)【発明者】
【氏名】河野 隆昌
【テーマコード(参考)】
2G058
4G075
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB09
2G058BB19
2G058CC19
4G075AA39
4G075AA63
4G075BA10
4G075CA02
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB50
4G075EC25
4G075FA01
4G075FA12
(57)【要約】
【課題】装置を大掛かりにせずとも、流路内の封止性を高めることができる、反応装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一端に開口部4が設けられている流路3を有する、チップ本体2と、開口部4を封止するための封止部材6と、熱源7とを備え、チップ本体2における、熱源7により加熱される加熱領域Aが、開口部4が設けられる領域Bを含んでおり、封止部材6の軟化点Tsが、加熱領域Aの最高到達温度Tmax以下である、反応装置10。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一端に開口部が設けられている流路を有する、チップ本体と、
前記開口部を封止するための封止部材と、
熱源と、
を備え、
前記チップ本体における、前記熱源により加熱される加熱領域が、前記開口部が設けられる領域を含んでおり、
前記封止部材の軟化点Tsが、前記加熱領域の最高到達温度Tmax以下である、反応装置。
【請求項2】
前記チップ本体が、前記流路に接続されている反応チャンバーを有し、
前記加熱領域が、前記反応チャンバーが設けられる領域を含んでいる、請求項1に記載の反応装置。
【請求項3】
前記加熱領域の最高到達温度Tmaxと、前記封止部材の軟化点Tsとの差が、10℃以上、70℃以下である、請求項1又は2に記載の反応装置。
【請求項4】
平面視において、前記開口部と前記熱源とが重なっている部分を有する、請求項1又は2に記載の反応装置。
【請求項5】
前記チップ本体の厚みが、0.5mm以上、10.0mm以下である、請求項1又は2に記載の反応装置。
【請求項6】
前記封止部材は、前記チップ本体と接する面に溝部を有し、前記封止部材の溝部が前記開口部に接続されている状態と、前記封止部材の溝部以外の部分により前記開口部が封止されている状態とを取り得るように配置されており、
前記封止部材が、バルブを兼ねている、請求項1又は2に記載の反応装置。
【請求項7】
前記封止部材は、前記封止部材が回転軸周りに回転することにより、前記封止部材の溝部が前記開口部に接続されている状態と、前記封止部材の溝部以外の部分により前記開口部が封止されている状態とを取り得るように配置されており、
前記封止部材が、回転バルブを兼ねている、請求項6に記載の反応装置。
【請求項8】
少なくとも一端に開口部が設けられている流路を有する、チップ本体と、前記開口部を封止するための封止部材とを備える、反応装置において、前記流路内を封止する、封止方法であって、
前記チップ本体における前記開口部が設けられる領域を加熱する工程と、
前記加熱により溶融した前記封止部材の一部を、前記開口部に流入させることにより、前記流路内を封止する工程と、
を備える、流路の封止方法。
【請求項9】
少なくとも一端に開口部が設けられている流路を有する、チップ本体と、
前記開口部を封止するための封止部材と、
を備え、
前記封止部材の軟化点Tsが、100℃以下である、チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱反応が行われる反応装置、流路の封止方法、及びチップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体が送液される流路が設けられているチップを用いて、各種検体又は試料の送液や反応を制御することにより、血液検査や遺伝子検査などの検査が試みられている。このようなチップを備えた反応装置では、複数の試薬を別々の箇所に送るための流路切替手段として、バルブが用いられることがある。例えば、PCR(Polymerase Chain Reaction)等に用いる反応装置では、最終工程で行われる熱反応において、反応液の揮発を抑えるために熱反応部をバルブで密閉することがある。
【0003】
下記の特許文献1には、ロータリー部材を回転させることにより、ダイヤフラムを対応する隔壁と接触させたり、離したりすることにより、流路を開閉する方法が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、マイクロ検査チップの開口部を、開口封止部材を用いて封止する方法が開示されている。特許文献2では、開口部の封止蓋と、封止蓋を開口部に粘着させるための第1の粘着層を有する、開口封止部材が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6981762号
【特許文献2】特開2009-156741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のような回転バルブを用いた反応装置において、バルブの成型時の寸法公差等も加味した上で、再現性高く密閉性を発現させるためには、バルブをチップに強く押さえつける必要がある。しかしながら、この場合、回転時のトルクが上がってしまい、装置が大型化してしまうという問題がある。また、熱反応のときのみバルブの上から荷重を掛ける方法が考えられるが、この場合においても装置が大型化してしまう問題がある。また、特許文献2のように、粘着層を有する開口封止部材を用いた場合、流路内の封止性を十分に高めることが難しいという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、装置を大掛かりにせずとも、流路内の封止性を高めることができる、反応装置、流路の封止方法、及びチップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書において、以下の反応装置、流路の封止方法、及びチップを開示する。
【0009】
項1.少なくとも一端に開口部が設けられている流路を有する、チップ本体と、前記開口部を封止するための封止部材と、熱源とを備え、前記チップ本体における、前記熱源により加熱される加熱領域が、前記開口部が設けられる領域を含んでおり、前記封止部材の軟化点Tsが、前記加熱領域の最高到達温度Tmax以下である、反応装置。
【0010】
項2.前記チップ本体が、前記流路に接続されている反応チャンバーを有し、前記加熱領域が、前記反応チャンバーが設けられる領域を含んでいる、項1に記載の反応装置。
【0011】
項3.前記加熱領域の最高到達温度Tmaxと、前記封止部材の軟化点Tsとの差が、10℃以上、70℃以下である、項1又は2に記載の反応装置。
【0012】
項4.平面視において、前記開口部と前記熱源とが重なっている部分を有する、項1~3のいずれか1項に記載の反応装置。
【0013】
項5.前記チップ本体の厚みが、0.5mm以上、10.0mm以下である、項1~4のいずれか1項に記載の反応装置。
【0014】
項6.前記封止部材は、前記チップ本体と接する面に溝部を有し、前記封止部材の溝部が前記開口部に接続されている状態と、前記封止部材の溝部以外の部分により前記開口部が封止されている状態とを取り得るように配置されており、前記封止部材が、バルブを兼ねている、項1~5のいずれか1項に記載の反応装置。
【0015】
項7.前記封止部材は、前記封止部材が回転軸周りに回転することにより、前記封止部材の溝部が前記開口部に接続されている状態と、前記封止部材の溝部以外の部分により前記開口部が封止されている状態とを取り得るように配置されており、前記封止部材が、回転バルブを兼ねている、項6に記載の反応装置。
【0016】
項8.少なくとも一端に開口部が設けられている流路を有する、チップ本体と、前記開口部を封止するための封止部材とを備える、反応装置において、前記流路内を封止する、封止方法であって、前記チップ本体における前記開口部が設けられる領域を加熱する工程と、前記加熱により溶融した前記封止部材の一部を、前記開口部に流入させることにより、前記流路内を封止する工程とを備える、流路の封止方法。
【0017】
項9.少なくとも一端に開口部が設けられている流路を有する、チップ本体と、前記開口部を封止するための封止部材とを備え、前記封止部材の軟化点Tsが、100℃以下である、チップ。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、装置を大掛かりにせずとも、流路内の封止性を高めることができる、反応装置、流路の封止方法、及びチップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る反応装置を示す模式的断面図である。
図2図2は、図1の反応装置において、封止部材により流路内が封止された状態を示す模式的断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係るチップを示す模式的断面図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に係る反応装置において、封止部材の溝部に流路の開口部が接続している状態を示す模式的断面図である。
図5図5は、図4の反応装置において、封止部材の溝部以外の部分により流路の開口部が閉じられている状態を示す模式的断面図である。
図6図6は、図4の反応装置において、封止部材により流路内が封止された状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0021】
[第1の実施形態]
(反応装置)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る反応装置を示す模式的断面図である。
【0022】
図1に示すように、反応装置10は、チップ1と、熱源7とを備える。チップ1は、各種反応試験や検査を行うことができる検査チップである。また、チップ1は、チップ本体2と、封止部材6とを有する。
【0023】
チップ本体2は、矩形板状の形状を有する。チップ本体2は、対向している第1の主面2a及び第2の主面2bを有する。なお、チップ本体の形状は、矩形板状に限定されず、他の形状を有していてもよい。
【0024】
チップ本体2の内部には、流路3が設けられている。流路3の一端は、第1の主面2aに開口しており、第1の主面2aにおいて開口部4を形成している。また、流路3の他端は、反応チャンバー5に接続されている。
【0025】
チップ本体2の第1の主面2a上には、封止部材6が設けられている。封止部材6は、流路3の開口部4を封止するための部材である。なお、図1においては、流路3の開口部4が、封止部材6により封止される前の状態を示している。
【0026】
チップ本体2の第2の主面2b上には、熱源7が設けられている。チップ本体2における、熱源7により加熱される加熱領域Aは、開口部4が設けられる領域Bと、反応チャンバー5が設けられる領域Cとを含んでいる。従って、熱源7により、開口部4が設けられる領域Bと、反応チャンバー5が設けられる領域Cとを加熱することができる。
【0027】
本実施形態では、封止部材6の軟化点Tsが、加熱領域Aの最高到達温度Tmax以下である。また、封止部材6が開口部4に接する部分は、開口部4が設けられる領域Bに含まれているので、熱源7により加熱領域Aを加熱すると、封止部材6が開口部4に接する部分も加熱されることとなる。このとき、封止部材6の軟化点Tsは、加熱領域Aの最高到達温度Tmax以下であるため、封止部材6が開口部4に接する部分が加熱されると、封止部材6の一部が溶融する。これにより、図2に示すように、加熱により溶融した封止部材6の一部を、開口部4から流路3内に流入させ、流路3内を封止することができる。
【0028】
また、反応チャンバー5が設けられる領域Cも加熱領域Aに含まれているので、熱源7により加熱領域Aを加熱することにより、反応チャンバー5を加熱することもできる。これにより、反応チャンバー5において、PCR等の加熱を伴う反応を行うことができる。
【0029】
本実施形態の反応装置10では、反応チャンバー5を加熱するための熱を利用して、封止部材6の一部を溶融させることができ、それによって流路3に接続される反応チャンバー5内を封止することができる。このように、反応装置10では、流路3の一端に設けられる開口部4の上に封止部材6を設けるだけで、反応チャンバー5内を封止することができるので、封止のために大掛かりな装置を必要としない。また、反応装置10では、加熱により溶融した封止部材6の一部を開口部4から流路3内に流入させることにより、開口部4を封止するので、流路3内の封止性を高めることができる。よって、反応装置10によれば、装置を大掛かりにせずとも、流路3内の封止性を高めることができる。
【0030】
本実施形態においては、加熱領域Aの最高到達温度Tmaxと、封止部材6の軟化点Tsとの差(Tmax-Ts)が、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、さらに好ましくは30℃以上であり、好ましくは70℃以下、より好ましくは50℃以下である。差(Tmax-Ts)が上記下限値以上である場合、流路3内をより確実に封止することができる。また、差(Tmax-Ts)が上記上限値以下である場合、溶融した封止部材6が反応チャンバー5に混入することをより一層確実に防止することができる。
【0031】
加熱領域Aの最高到達温度Tmaxは、特に限定されないが、好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上であり、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下である。加熱領域Aの最高到達温度Tmaxが上記下限値以上である場合、流路3内をより確実に封止することができる。また、加熱領域Aの最高到達温度Tmaxが上記上限値以下である場合、溶融した封止部材6が反応チャンバー5に混入することをより一層確実に防止することができる。もっとも、加熱領域Aの最高到達温度Tmaxは、反応チャンバー5内で行われる反応の種類により適宜設定することができる。
【0032】
熱源7により加熱されたときの開口部4が設けられる領域Bの温度は、特に限定されないが、好ましくは75℃以上、より好ましくは80℃以上であり、好ましくは110℃以下、より好ましくは95℃以下である。領域Bの温度が上記下限値以上である場合、流路3内をより確実に封止することができる。また、領域Bの温度が上記上限値以下である場合、溶融した封止部材6が反応チャンバー5に混入することをより一層確実に防止することができる。
【0033】
封止部材6の軟化点Tsは、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは70℃以下である。封止部材6の軟化点Tsが上記下限値以上である場合、溶融した封止部材6が反応チャンバー5に混入することをより一層確実に防止することができる。また、封止部材6の軟化点Tsが上記上限値以下である場合、流路3内をより確実に封止することができる。
【0034】
本実施形態においては、平面視において、開口部4と熱源7とが重なっている。本実施形態のように、平面視において、開口部4と熱源7との少なくとも一部が重なっていることが好ましく、開口部4が熱源7に完全に重なっていることがより好ましい。この場合、加熱領域A内に開口部4が設けられる領域Bをより確実に包含させることができる。
【0035】
また、チップ本体2の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1.0mm以上であり、好ましくは10.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下である。この場合においても、加熱領域A内に開口部4が設けられる領域Bをより確実に包含させることができる。
【0036】
以下、反応装置10を構成する各部材の詳細について説明する。
【0037】
(チップ本体)
チップ本体2の材料は、特に限定されず、例えば、合成樹脂、ゴム、金属などを用いることができる。合成樹脂としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。なかでも、熱可塑性樹脂としては、例えば、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、又はポリプロピレンなどを用いることができる。
【0038】
チップ本体2は、例えば、合成樹脂の射出成形体により構成することができる。また、チップ本体2は、複数枚の合成樹脂シートを積層することにより構成されていてもよく、その構造や材質は特に限定されない。
【0039】
チップ本体2の内部には、流路3が設けられている。流路3は、マイクロ流路であってもよい。マイクロ流路とは、流体の搬送に際し、マイクロ効果が生じるような微細な流路をいう。このようなマイクロ流路では、流体は、表面張力の影響を強く受け、通常の大寸法の流路を流れる流体とは異なる挙動を示す。
【0040】
マイクロ流路の横断面形状及び大きさは、上記のマイクロ効果が生じる流路であれば特に限定はされない。例えば、マイクロ流路に流体を流す際、ポンプや重力を用いるときに、流路抵抗を低下させる観点から、マイクロ流路の横断面形状がおおむね長方形(正方形を含む)の場合には、小さい方の辺の寸法で、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。反応装置10をより一層小型化する観点から、小さい方の辺の寸法で、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0041】
また、マイクロ流路の横断面形状がおおむね円形の場合には、直径(楕円の場合には、短径)が、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましく、100μm以上がさらに好ましい。反応装置10をより一層小型化する観点から、直径(楕円の場合には、短径)は、5mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、500μm以下がさらに好ましい。
【0042】
一方、例えば、マイクロ流路に流体を流す際、毛細管現象を有効に活用する場合には、マイクロ流路の横断面形状がおおむね長方形(正方形を含む)の場合には、小さい方の辺の寸法で、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。また、小さい方の辺の寸法で、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0043】
チップ本体2の内部には、反応チャンバー5が設けられている。反応チャンバー5の寸法は、特に限定されないが、例えば、長さ3mm~30mm、幅0.5mm~5mm、高さ0.05mm~2.0mmとすることができる。
【0044】
反応チャンバー5には、例えば、検体から抽出した核酸を含む回収液と、PCR反応試薬などの反応試薬との混合液が送液され、反応チャンバー5内においてPCR等の加熱を伴う反応を行うことができる。
【0045】
(封止部材)
封止部材6の材料としては、特に限定されないが、例えば、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー等のエラストマーを用いることができる。これらのエラストマーの材料は、1種を単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。
【0046】
封止部材6の形状は、開口部4を封止できる限りにおいて、特に限定されない。封止部材6の形状は、例えば、矩形板状又は円板状とすることができる。また、封止部材6の厚みも特に限定されず、例えば、1mm以上、10mm以下とすることができる。
【0047】
(熱源)
熱源7としては、例えば、ペルチェヒーター、ランプヒーター等を用いることができる。また、温度の異なる複数のヒーターを順次接触させてもよい。
【0048】
(流路の封止方法)
本実施形態の流路3の封止方法では、まず、上述した反応装置10を用意する。次に、反応装置10を構成するチップ本体2における開口部4が設けられる領域Bを加熱する。次に、開口部4が設けられる領域Bを加熱することにより、溶融した封止部材6の一部を開口部4に流入させることにより、開口部4を封止する。それによって、流路3内を封止することができる。
【0049】
本実施形態の流路3の封止方法では、流路3の一端に設けられる開口部4の上に封止部材6を設けるだけで、反応チャンバー5内を封止することができるので、封止のために大掛かりな装置を必要としない。また、流路3の封止方法では、加熱により溶融した封止部材6の一部を開口部4から流路3内に流入させることにより、開口部4を封止するので、流路3内の封止性を高めることができる。よって、本実施形態の流路3の封止方法によれば、装置を大掛かりにせずとも、流路3内の封止性を高めることができる。
【0050】
(チップ)
図3は、本発明の第1の実施形態に係るチップを示す模式的断面図である。図3に示すチップ1は、例えば、各種反応試験や検査を行うことができる検査チップに用いることができる。
【0051】
チップ1は、チップ本体2と、チップ本体2の第1の主面2a上に設けられている、封止部材6とを備える。なお、チップ本体2及び封止部材6は、反応装置10の欄で説明したものと同様のものを用いることができる。
【0052】
本実施形態のチップ1では、封止部材6の軟化点Tsが、100℃以下である。そのため、反応装置10の熱源7によってチップ1を加熱することにより、封止部材6の一部を溶融させることができ、それによって流路3に接続される反応チャンバー5内を封止することができる。このように、チップ1では、流路3の一端に設けられる開口部4の上に封止部材6を設けるだけで、反応チャンバー5内を封止することができるので、封止のために大掛かりな装置を必要としない。また、チップ1では、加熱により溶融した封止部材6の一部を開口部4から流路3内に流入させることにより、開口部4を封止するので、流路3内の封止性を高めることができる。よって、チップ1によれば、装置を大掛かりにせずとも、流路3内の封止性を高めることができる。
【0053】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る反応装置において、封止部材の溝部に流路の開口部が接続している状態を示す模式的断面図である。図5は、図4の反応装置において、封止部材の溝部以外の部分により流路の開口部が閉じられている状態を示す模式的断面図である。また、図6は、図4の反応装置において、封止部材により流路内が封止された状態を示す模式的断面図である。
【0054】
図4に示すように、反応装置20は、チップ21と、熱源7とを備える。チップ21は、チップ本体22と、封止部材26とを備える。チップ本体22の第1の主面22a上に、封止部材26が設けられている。また、チップ本体22の第2の主面22b上に、熱源7が設けられている。
【0055】
本実施形態では、封止部材26が回転バルブを兼ねている。封止部材26は、円板状の形状を有しており、回転軸Xの周りを回転可能にチップ本体22に取り付けられている。封止部材26のチップ本体22と接する面26aには、溝部28が設けられている。また、チップ本体22には、流路3とは異なる他の流路23が設けられている。なお、本実施形態において、他の流路23は、回転軸Xを含むように設けられている。このとき、他の流路23の中心軸は、回転軸Xに一致することが好ましい。また、封止部材26の形状は、特に限定されず、矩形板状等の形状を有していてもよい。
【0056】
図4に示すように、封止部材26の溝部28が開口部4に接続される際には、溝部28が、流路3と、他の流路23とを接続する接続流路を構成している。溝部28は、封止部材26の回転軸Xから、封止部材26の径方向外側に延ばされている。なお、本実施形態において、溝部28は、直線状であるが、曲線状、ミアンダ状またはL字状などの他の平面形状を有していてもよい。
【0057】
図4の状態において、封止部材26を回転軸Xの周りに回転させることにより、図5に示すように、封止部材26の溝部以外の部分により流路3の開口部4を閉じられた状態とすることができる。この状態においては、流路3と、他の流路23とが溝部28を介して接続されていない。もっとも、他の流路23は、溝部28を介して、図示しない他の流路に接続されていてもよい。その他の点は、第1の実施形態と同様である。
【0058】
第2の実施形態においても、封止部材26の軟化点Tsが、熱源7による加熱領域Aの最高到達温度Tmax以下である。また、封止部材26が開口部4に接する部分は、開口部4が設けられる領域Bに含まれているので、熱源7により加熱領域Aを加熱すると、封止部材26が開口部4に接する部分も加熱されることとなる。このとき、封止部材26の軟化点Tsが、加熱領域Aの最高到達温度Tmax以下であるため、封止部材26が開口部4に接する部分も加熱されると、封止部材26の一部が溶融する。これにより、図6に示すように、加熱により溶融した封止部材26の一部を、開口部4から流路3内に流入させ、流路3内を封止することができる。
【0059】
第2の実施形態のように、封止部材26の溝部28が開口部4に接続されている状態と、封止部材26の溝部以外の部分により開口部4が封止されている状態とを取り得るように配置され、封止部材26が、バルブを兼ねていてもよい。もっとも、第2の実施形態のように、封止部材26が回転バルブを兼ねていることが好ましい。
【0060】
第2の実施形態の反応装置20においても、反応チャンバー5を加熱するための熱を利用して、封止部材26の一部を溶融させることができ、それによって流路3に接続される反応チャンバー5内を封止することができる。このように、反応装置20では、流路3の一端に設けられる開口部4の上に封止部材26を設けるだけで、反応チャンバー5内を封止することができるので、封止のために大掛かりな装置を必要としない。また、反応装置20では、加熱により溶融した封止部材26の一部を開口部4から流路3内に流入させることにより、開口部4を封止するので、流路3内の封止性を高めることができる。よって、反応装置20によれば、装置を大掛かりにせずとも、流路3内の封止性を高めることができる。
【符号の説明】
【0061】
1,21…チップ
2,22…チップ本体
2a,22a…第1の主面
2b,22b…第2の主面
3…流路
4…開口部
5…反応チャンバー
6,26…封止部材
7…熱源
10,20…反応装置
23…他の流路
26a…面
28…溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6