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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066773
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240509BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L97/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176456
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】501218566
【氏名又は名称】学校法人片柳学園
(71)【出願人】
【識別番号】521166319
【氏名又は名称】株式会社リグノマテリア
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加柴 美里
(72)【発明者】
【氏名】山下 俊
(72)【発明者】
【氏名】入谷 康平
(72)【発明者】
【氏名】見正 大祐
(72)【発明者】
【氏名】桝田 剛
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA00W
4J002AH00X
4J002CB00W
4J002CD05W
4J002CF03W
(57)【要約】
【課題】抗酸化作用を有する樹脂組成物の提供。
【解決手段】樹脂と、グリコールリグニン及びサルファイトリグニンからなる群から選択される少なくとも1種と、を含有する樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、
グリコールリグニン及びサルファイトリグニンからなる群から選択される少なくとも1種と、を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂組成物全体の質量に対する、前記グリコールリグニン及び前記サルファイトリグニンの合計の含有量が5質量%以上80質量%以下である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
強化繊維を含む請求項1に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リグニン誘導体を含む樹脂組成物の開発がなされている。
樹脂組成物中にリグニン誘導体を含有させる目的は様々であるが、例えば、樹脂組成物のバイオマス度の向上等である。
特許文献1には、「ポリマーと、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリビニルエステルおよびナイロンからなる群から選択される1種または複数の材料とを含む複合材料であって、前記ポリマーが、リグニン組成物である繊維で補強されている複合材料。」が提案されている。
特許文献2には、「環境分解性高分子複合材料であって、20~80重量部の、適度に架橋された脂肪族ポリエステルアミド・ランダム・ブロック共重合体、10~70重量部の再生可能原材料、5~20重量部の添加剤、及び0~30重量部の充填剤を含む、環境分解性高分子複合材料。」が提案されており、再生可能原材料としてリグニンが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-522850号公報
【特許文献2】特表2011-516719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、抗酸化作用を有する樹脂組成物の開発が求められている。その理由としては、食器、カトラリー、子供用の玩具等の用途において抗酸化作用があるものが衛生的とされ、安心感を与えるためである。
本開示が解決しようとする課題は、抗酸化作用を有する樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> 樹脂と、
グリコールリグニン及びサルファイトリグニンからなる群から選択される少なくとも1種と、を含有する樹脂組成物。
<2> 樹脂組成物全体の質量に対する、前記グリコールリグニンの含有量が5質量%以上80質量%以下である<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 強化繊維を含む<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、抗酸化作用を有する樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0008】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0009】
<樹脂組成物>
本開示に係る樹脂組成物は、樹脂と、グリコールリグニンと、を含有する。
本開示に係る樹脂組成物は、上記構成により、抗酸化作用を有する。その理由は以下の通り推測される。
【0010】
グリコールリグニンは、その構造により、樹脂との相溶性が高い。そのため、本開示に係る樹脂組成物はグリコールリグニンと、樹脂と、が均一に近い状態で混合している。更には樹脂組成物中においてグリコールリグニンの抗酸化性を示す水酸基が組成物表面に存在する状態にあることによって、例えば、樹脂成形体とした際に良好な抗酸化作用を有すると推測される。
【0011】
(樹脂)
本開示に係る樹脂組成物は樹脂を含有する。
樹脂としては特に限定されず、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂が適用可能である。
熱可塑性樹脂とは、加熱すると軟化して可塑性を示し、室温(25℃)まで冷却すると固化する樹脂である。
熱硬化性樹脂とは、加熱すると硬化する樹脂である。
【0012】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニル樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合化合物樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル-スチレン共重合化合物樹脂)、(メタ)アクリル樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0013】
ポリオレフィン樹脂とは、オレフィン(ビニル化合物を除く)由来の構成単位を、樹脂全体に含まれる構成単位全体に対して、50質量%以上含む樹脂である。
ポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレンプロピレンゴム(EPR)等のエチレン-プロピレン共重合体;エチレン-プロピレン-ブテン共重合体;エチレン-ブテン共重合体;エチレン-ビニルアルコール共重合体;エチレン-エチルアクリレート共重合体;等が挙げられる。
【0014】
ポリエーテル樹脂とは、主鎖に連続したエーテル結合を有する重合体である。
ポリエーテル樹脂としては、ポリアセタール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールフェニルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールフェニルエーテル、ポリオキシエチレングリコールフェニルエーテル、ポリオキシテトラメチレングリコールブチルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールブチルエーテル、ポリオキシエチレングリコールブチルエーテル等が挙げられる。
【0015】
ポリビニル樹脂とは、ビニル化合物由来の構成単位を、樹脂全体に含まれる構成単位全体に対して、50質量%以上含む樹脂である。
ポリビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0016】
フッ素樹脂とは、フッ素原子を含む構成単位を、樹脂全体に含まれる構成単位全体に対して、50質量%以上含む樹脂である。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)などが挙げられる。
【0017】
(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する単量体単位を、樹脂全体に含まれる構成単位全体に対して、50質量%以上含む樹脂である。
(メタ)アクリル樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル等が挙げられる。
【0018】
熱可塑性エポキシ樹脂とは、熱可塑性樹脂であり、かつ、オキシラン環(エポキシ基)を有する構成単位を有する樹脂である。
熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
熱可塑性エポキシ樹脂としては、ナガセケムテック社製のXNR6850A、XNH6850EY等が挙げられる。
【0019】
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0020】
フェノール樹脂とは、ホルムアルデヒドとフェノール類とを、酸触媒又はアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるものである。
フェノール樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂等が挙げられる。
【0021】
ポリウレタン樹脂とは、ウレタン結合(-NHCOO-)を有する構成単位を、樹脂全体に含まれる構成単位全体に対して、50質量%以上含む樹脂である。
ポリウレタン樹脂としては、公知のポリイソシアネートと公知のポリオールとを反応して得られる化合物が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。
【0022】
このうち、相溶性の観点で、樹脂としては熱可塑性エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0023】
樹脂の含有量は、樹脂組成物全体の質量に対して、20質量%以上95質量%以下であることが好ましく、25質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。
【0024】
(グリコールリグニン)
本開示に係る樹脂組成物はグリコールリグニンを含有する。
グリコールリグニンとは、リグニンの少なくとも一部が、後述するアルコール化合物から少なくとも1つのヒドロキシ基を除いた残基で置換されている化合物をいう。
つまり、グリコールリグニンは、後述のアルコール化合物で誘導体化された化合物である。
【0025】
ここでアルコール化合物としては、1分子内にヒドロキシ基を1個以上有するアルコールが挙げられる。
アルコール化合物としては、1分子内にヒドロキシ基を1個以上3個以下有するアルコールであることが好ましく、1分子内にヒドロキシ基を2個以上3個以下有するアルコールであることが好ましく、1分子内にヒドロキシ基を2個有するアルコールであることがより好ましい。
【0026】
1分子内にヒドロキシ基を1個有するアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等が挙げられる。
1分子内にヒドロキシ基を2個有するアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール;ポリアルキレングリコール;ポリグリセリン;等が挙げられる。
1分子内にヒドロキシ基を3個有するアルコールとしては、例えば、グリセリン;グリセリンにアルキレンオキサイドを付加重合した化合物等が挙げられる。
また、アルコール化合物としては、例えば、ポリグリセリンを用いてもよい。
【0027】
アルコール化合物としてはポリエチレングリコール、グリセリン、及びポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
つまり、グリコールリグニンとしてはポリエチレングリコール、グリセリン、及びポリグリセリンからなる群から選択される少なくとも1種で誘導体化されたグリコールリグニンであることが好ましい。
【0028】
グリコールリグニンはアシル化されたグリコールリグニンであってもよい。
ここで、アシル化されたグリコールリグニンをアシル化グリコールリグニンと呼ぶ。
【0029】
アシル化グリコールリグニンが有するアシル基としては、炭素数1以上6以下のアシル基が挙げられ、抗酸化作用向上の観点から、炭素数1以上4以下のアシル基が好ましく、炭素数1以上2以下のアシル基がより好ましい。
アシル基としては、具体的には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)、プロペノイル基、ヘキサノイル基等が挙げられる。これらの中でもアシル基としては、抗酸化作用向上の観点から、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基(ブタノイル基)及びプロペノイル基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ホルミル基、及びアセチル基からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0030】
相溶性の観点から、グリコールリグニンの数平均分子量は、例えば、300以上100000以下であることが好ましく、500以上70000以下であることがより好ましく、1000以上50000以下であることが更に好ましい。
【0031】
グリコールリグニンの数平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される値である。
・カラム:TSKgel SuperAWM-H x2 (6.0mm I.D. x 15cm x 2)
・カラム温度:40℃
・溶離液:50mM LiBr + 100mM リン酸 DMF
・流速:0.6mL/min
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0032】
グリコールリグニンは、例えば、アルコール化合物を溶媒として用い、リグノセルロースを触媒の存在下で加溶媒分解した後、得られた反応溶液からグリコールリグニンを分離することで得られる。
グリコールリグニンの製造方法としては、例えば、特開2017-197517号公報に記載された方法が挙げられる。
【0033】
グリコールリグニンをアシル化する場合、グリコールリグニンをアシル化する方法としては、上記方法にて製造されたグリコールリグニンとアシル化剤とを反応させる方法が挙げられる。
アシル化剤としては、例えば、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物などが挙げられる。
【0034】
(サルファイトリグニン)
サルファイトリグニンとは、リグニン及び多糖類を含む原料(例えば、リグノセルロース)を亜硫酸塩水溶液中で高温煮沸して得られるリグニンである。
サルファイトリグニンとしては、例えば、サルファイト法による製紙工程において木材中のリグニンを溶解し、紙の原料となるパルプを抽出した残滓(黒液)から精製して抽出されるサルファイトリグニンが挙げられる。
【0035】
サルファイトリグニンは、塩を形成していることが好ましい。
具体的には、サルファイトリグニンは、スルホニルアニオン(-SO )と、陽イオンと、が塩を形成していることが好ましい。
サルファイトリグニンが形成する塩が含有する対イオンとしては、アルカリ金属元素の陽イオン、アルカリ土類金属元素の陽イオン、アンモニウムイオン(NH )などが挙げられる。
サルファイトリグニンが形成する塩が含有する対イオンとしては、具体的には、Na、Ca2+、及びアンモニウムイオンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
サルファイトリグニンの数平均分子量は50以上100,000以下であることが好ましく、100以上9000以下であることがより好ましく、300以上1000以下であることが更に好ましい。
【0037】
サルファイトリグニンの数平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される値である。
・カラム:TSKgel SuperAWM-H x2 (6.0mm I.D. x 15cm x 2)
・カラム温度:40℃
・溶離液:50mM LiBr + 100mM リン酸 DMF
・流速:0.6mL/min
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0038】
サルファイトリグニンは、リグニン及び多糖類を含む原料(例えば、リグノセルロース)を亜硫酸塩水溶液中で高温煮沸した後、得られた反応溶液からサルファイトリグニンを分離することで製造される。
サルファイトリグニンの製造方法としては、具体的には、従来公知のサルファイト法による製紙工程において木材中のリグニンを溶解し、紙の原料となるパルプを抽出した残滓(黒液)から精製して抽出する方法が挙げられる。
【0039】
抗酸化作用の観点から、樹脂組成物全体の質量に対する、グリコールリグニン及び前記サルファイトリグニンの合計の含有量が5質量%以上80質量%以下であることが好ましく、10質量%以上75質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上70質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
樹脂組成物全体の質量に対する、グリコールリグニン及び前記サルファイトリグニンの合計の含有量を10質量%以上とすることで抗酸化作用が向上する。
樹脂組成物全体の質量に対する、グリコールリグニン及び前記サルファイトリグニンの合計の含有量を80質量%以下とすることで樹脂組成物としての機械的強度が保証されやすくなる。
【0041】
(その他の成分)
本開示に係る樹脂組成物は、本開示の効果を著しく損なわない範囲で樹脂及びグリコールリグニン以外のその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、特に限定されず、樹脂に対する添加剤として一般的に使用される添加剤が挙げられる。
その他の成分としては、具体的には、酸化防止剤、難燃剤、フィラー、着色剤、可塑剤、溶剤等が挙げられる。
【0042】
本開示に係る樹脂組成物の強度向上の観点から、その他の成分としては、フィラーを含むことが好ましい。
フィラーとしては、強化繊維が好ましい。即ち本開示に係る樹脂組成物は強化繊維を含むことが好ましい。
強化繊維としては、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、炭素繊維、ボロン繊維等が挙げられる。
【0043】
本開示に係る樹脂組成物が強化繊維を含む場合、強化繊維の含有量は、樹脂組成物全体の質量に対して、0質量%以上70質量%以下であることが好ましく、10質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
(樹脂組成物の製造方法)
本開示に係る樹脂組成物の製造方法は、例えば、樹脂と、グリコールリグニンと、必要に応じてその他の成分と、を溶融混練する方法が挙げられる。
溶融混練するために好適に用いられる装置としては、例えば、押出機、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられ、各成分の均一性の観点から、押出機であることが好ましい。
【0045】
(樹脂組成物の用途)
本開示に係る樹脂組成物の用途は特に限定されないが、例えば、食器、カトラリー、子供用の玩具、アウトドア用品、保存容器等が挙げられる。
【実施例0046】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
リグノセルロースをアルコール化合物である分子量400のポリエチレングリコール中で、酸触媒の存在下、常圧下で加溶媒分解し、グリコールリグニンを含む溶液画分と固形分とを分離し、更に硫酸で酸性化することにより、グリコールリグニンを沈殿物として得た。その後、グリコールリグニンの沈殿物を分離し、グリコールリグニンの沈殿物を分離した後の上清液を集積し、その集積溶液に水酸化ナトリウムを添加して、集積溶液を中和することによって分子量400のポリエチレングリコールで誘導体化されたグリコールリグニン1(以下、GL1とも称する。)を得た。得られたグリコールリグニン1の数平均分子量は10000であった。
具体的には、特開2017-197517号公報の実施例1に記載された方法と同一の方法により製造した。なお、溶媒として分子量400のポリエチレングリコ―ルを使用した。
【0047】
<実施例1~7、比較例1>
表1に示す配合比率で、表1に示す種類の樹脂及びグリコールリグニン、必要に応じてその他の成分を2軸押出機に供給し、混練及び押出しを行うことで、樹脂組成物を製造した。
得られた樹脂組成物の形状はプレート状であり、寸法は縦300mm、横210mm、高さ3mmであった。
【0048】
<抗酸化作用の評価>
各例で得た樹脂組成物80mgを1.25×10-4Mのジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)溶液3mLに添加し、30分間撹拌を行った。その後、撹拌後の溶液の上澄みの紫外可視吸光スペクトルを測定し、波長523.5nmの吸光度を算出し、その値を吸光度Aとした。
続いて、1.25×10-4Mのジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)溶液の紫外可視吸光スペクトルを測定し、波長523.5nmの吸光度を算出し、その値を吸光度Bとした。
続いて、各例で得た樹脂組成物80mgを溶媒中において紫外可視吸光スペクトルを測定し、波長523.5nmの吸光度を算出し、その値を吸光度Cとした。
そして、下記式より抗酸化率を算出する。
式:抗酸化率(%)=[(吸光度B-(吸光度A-吸光度C))/吸光度B]×100
抗酸化率の値が大きいほど抗酸化作用が大きいことを意味する。
【0049】
【表1】
【0050】
表1中の略称は以下の通りである。
・樹脂A:ナガセケムテック社製、XNR6850A(主剤)、XNH6850EY(硬化剤)の熱可塑性エポキシ樹脂
・樹脂B:ポリプラスチックス株式会社製のポリエーテル樹脂(ポリアセタール)
・樹脂C:三菱ケミカル株式会社製のポリブチレンサクシネート(PBS)
・GL1:グリコールリグニン1
・サルファイトリグニン:Borregaard社製、品名Borresperse AM 870P
・強化繊維:東レ社製の炭素繊維、品名:T700SC-12-50C
なお、表1中の「-」は該当する成分を含有しないことを意味する。
【0051】
上記結果から、本実施例の樹脂組成物は、抗酸化作用を有することがわかる。