(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066776
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】データ送受信システム及びデータ送受信方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/26 20240101AFI20240509BHJP
G06Q 40/00 20230101ALI20240509BHJP
【FI】
G06Q50/26
G06Q40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176461
(22)【出願日】2022-11-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 下記のサイトにて公開(公開日:令和4年10月7日) https://jabi.jp/(日本ベーシックインカム学会のホームページ)
(71)【出願人】
【識別番号】300076633
【氏名又は名称】コグニティブリサーチラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100096105
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 広
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】苫米地 英人
【テーマコード(参考)】
5L040
5L049
5L050
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB00
5L049CC35
5L050CC35
5L055BB00
(57)【要約】
【課題】国家の経済政策に有効なデータ送受信システムを提供する。
【解決手段】データ送受信システム(100)は、第一のサーバー(110)と、第一のサーバー(110)から暗号通貨(170)を受信する第二のサーバー(120)と、第一のサーバーと第二のサーバーとを接続するネットワーク(130)と、時間の経過を計測する計時手段(150)と、を備える。暗号通貨(170)は一定時間(例えば、半減期)の経過とともに通貨量が減少する。第二のサーバー(120)は、第一のサーバー(110)から第二のサーバー(120)に暗号通貨(170)が送信された時点を起点として予め定められた時間(例えば、24時間)が経過するごとに、暗号通貨(170)の減少分を第一のサーバー(110)に送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送信する第一のサーバーと、
前記第一のサーバーから前記データを受信する少なくとも1個の第二のサーバーと、
前記第一のサーバーと前記第二のサーバーとを接続するネットワークと、
時間の経過を計測する計時手段と、
を備えるデータ送受信システムであって、
前記データは一定時間の経過とともにその価値及び量のうち少なくとも量が減少するようなデータ構造を有しており、
前記計時手段は、前記ネットワークを介して前記第一のサーバーから前記第二のサーバーに前記データが送信された時点を起点として予め定められた時間が経過するごとに前記予め定められた時間が経過したことを示す時間経過信号を前記第二のサーバーに送信し、
前記第二のサーバーは、前記時間経過信号を受信したときには、前記データの減少分のデータ量を前記第一のサーバーに送信するものであるデータ送受信システム。
【請求項2】
前記第一のサーバーから前記第二のサーバーへの前記データの送信は前記第二のサーバーが予め定められた条件を満足したときにのみ実行されることを特徴とする請求項1に記載のデータ送受信システム。
【請求項3】
前記予め定められた条件は前記第二のサーバーの所有者が無形の情報的な価値を社会に提供していることであることを特徴とする請求項2に記載のデータ送受信システム。
【請求項4】
前記予め定められた条件は前記第二のサーバーの所有者が他者から知識を取得したことであることを特徴とする請求項2に記載のデータ送受信システム。
【請求項5】
前記第一のサーバーは、前記第二のサーバーの所有者が取得した知識量に応じた量の前記データを前記第二のサーバーに送信することを特徴とする請求項4に記載のデータ送受信システム。
【請求項6】
前記データは暗号通貨を構成するものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のデータ送受信システム。
【請求項7】
前記一定時間は半減期であり、前記データは前記半減期経過時にデータ量が半分になることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のデータ送受信システム。
【請求項8】
前記第二のサーバーは携帯式電話装置からなるものであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のデータ送受信システム。
【請求項9】
前記計時手段(150)は前記第二のサーバーに備えられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のデータ送受信システム。
【請求項10】
前記第一のサーバーはある国家の中央銀行のサーバーであり、前記第二のサーバーはその国家の国民のサーバーであることを特徴とする請求項6に記載のデータ送受信システム。
【請求項11】
前記暗号通貨は他の暗号通貨及び法定通貨とは交換が禁止されるものであることを特徴とする請求項6に記載のデータ送受信システム。
【請求項12】
ネットワークを介して第一のサーバーと第二のサーバーとの間においてデータを送受信する方法であって、
前記データは一定時間の経過とともにその価値及び量のうち少なくとも量が減少するようなデータ構造を有しており、
前記方法は、
前記ネットワークを介して前記第一のサーバーから前記第二のサーバーに前記データを送信する第一の過程と、
前記第二のサーバーによる前記データの受信を始点として予め定められた時間の経過を連続的に計測する第二の過程と、
前記予め定められた時間が経過したときには前記予め定められた時間の経過ごとに前記第二のサーバーが前記データの減少分のデータ量を前記第一のサーバーに送信する第三の過程と、
を備えるデータ送受信方法。
【請求項13】
前記第一の過程は前記第二のサーバーが予め定められた条件を満足したときにのみ実行されることを特徴とする請求項12に記載のデータ送受信方法。
【請求項14】
前記予め定められた条件は前記第二のサーバーの所有者が無形の情報的な価値を社会に提供していることであることを特徴とする請求項13に記載のデータ送受信方法。
【請求項15】
前記予め定められた条件は前記第二のサーバーの所有者が他者から知識を取得したことであることを特徴とする請求項13に記載のデータ送受信方法。
【請求項16】
前記第一のサーバーは、前記第一の過程において、前記第二のサーバーの所有者が取得した知識量に応じた量の前記データを前記第二のサーバーに送信することを特徴とする請求項15に記載のデータ送受信方法。
【請求項17】
前記データは暗号通貨を構成するものであることを特徴とする請求項12乃至16の何れか一項に記載のデータ送受信方法。
【請求項18】
前記一定時間は半減期であり、前記データは前記半減期経過後にデータ量が半分になることを特徴とする請求項12乃至16の何れか一項に記載のデータ送受信方法。
【請求項19】
前記第二のサーバーは携帯式電話装置からなるものであることを特徴とする請求項12乃至16の何れか一項に記載のデータ送受信方法。
【請求項20】
前記第二の過程は前記第二のサーバーにおいて実行されることを特徴とする請求項12乃至16の何れか一項に記載のデータ送受信方法。
【請求項21】
前記第一のサーバーはある国家の中央銀行のサーバーであり、前記第二のサーバーはその国家の国民のサーバーであることを特徴とする請求項16に記載のデータ送受信方法。
【請求項22】
前記暗号通貨は他の暗号通貨及び法定通貨とは交換が禁止されるものであることを特徴とする請求項17に記載のデータ送受信方法。
【請求項23】
ネットワークを介してサーバーから送信されてきたデータを前記サーバーに送信する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記データは一定時間の経過とともにそのデータ量が減少するようなデータ構造を有しており、
前記プログラムが行う処理は、
計時手段を作動させ、前記サーバーからの前記データの受信を始点として予め定められた時間の経過を連続的に計測する第一の処理と、
前記計時手段によって前記予め定められた時間の経過が計測されたときには前記予め定められた時間の経過ごとに前記データの減少分のデータ量を前記サーバーに送信する第二の処理と、
を備えるプログラム。
【請求項24】
前記データは暗号通貨を構成するものであることを特徴とする請求項23に記載のプログラム。
【請求項25】
前記一定時間は半減期であり、前記データは前記半減期経過後にデータ量が半分になることを特徴とする請求項23に記載のプログラム。
【請求項26】
前記暗号通貨を他の暗号通貨及び法定通貨と交換することを禁止する第三の処理を行うことを特徴とする請求項24に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ(特に、暗号通貨を構成しているデータ)を送受信するシステム、同システムに使用されるプログラム及びデータを送受信する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などに代表される様々な暗号通貨(仮想通貨、デジタル通貨)が使用されている。これらの暗号通貨は日本円や米ドルなどの法定通貨と同様に物品の購入の支払いなどに使用されており、法定通貨の代替通貨として使われているのが実情である。暗号通貨は特定の国家のコントロール下にはないため、法定通貨とは異なる利点を有してはいるが、現時点では、法定通貨と同様の経済的価値を有するもの以上のものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
書籍「自然的経済秩序」(シルビオ・ゲゼル著)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
暗号通貨はその特性や設定の仕方によっては社会に貢献することができる潜在的な可能性を有するものであるが、現在の主要な暗号通貨であるビットコインやイーサリアムにはそのような側面は存在しない。
本発明はこのような暗号通貨の現状に鑑みてなされたものであり、社会に対して有用性を有する、あるいは、社会に貢献することが可能な暗号通貨その他のデータ構造を用いたシステム、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明は、データを送信する第一のサーバー(110)と、前記第一のサーバー(110)から前記データを受信する少なくとも1個の第二のサーバー(120)と、前記第一のサーバーと前記第二のサーバーとを接続するネットワーク(130)と、時間の経過を計測する計時手段(150)と、を備えるデータ送受信システム(100)であって、前記データは一定時間の経過とともにその価値及び量のうち少なくとも量が減少するようなデータ構造を有しており、前記計時手段(150)は、前記ネットワーク(130)を介して前記第一のサーバー(110)から前記第二のサーバー(120)に前記データが送信された時点を起点として予め定められた時間が経過するごとに前記予め定められた時間が経過したことを示す時間経過信号を前記第二のサーバー(120)に送信し、前記第二のサーバー(120)は、前記時間経過信号を受信したときには、前記データの減少分のデータ量を前記第一のサーバー(110)に送信するものであるデータ送受信システム(100)を提供する。
【0006】
例えば、前記第一のサーバーから前記第二のサーバーへの前記データの送信は前記第二のサーバーが予め定められた条件を満足したときにのみ実行されるように構成することができる。
前記予め定められた条件の第一の例は前記第二のサーバーの所有者が無形の情報的な価値を社会に提供していることである。
前記予め定められた条件の第二の例は前記第二のサーバーの所有者が他者から知識を取得したこと(S320)である。この場合、前記第一のサーバー(110)は、前記第二のサーバー(120)の所有者が取得した知識量に応じた量の前記データを前記第二のサーバー(120)に送信することように構成することができる。
【0007】
前記データは暗号通貨(170, 172, 173, 174)を構成するものであることが好ましい。
例えば、前記一定時間は半減期であり、この場合には、前記データは前記半減期経過時にデータ量が半分になる。
前記第二のサーバー(120)は無線信号を受信できる装置であれば任意のものを用いることができ、例えば、前記第二のサーバー(120)は携帯式電話装置(400)からなるものであることが好ましい。
前記計時手段(150)は、例えば、前記第二のサーバー(120)に備えられていることが好ましい。
例えば、前記第一のサーバー(110)はある国家の中央銀行のサーバーであり、前記第二のサーバー(120)はその国家の国民のサーバーであるとすることができる。
前記暗号通貨(170, 172, 173, 174)は他の種類の暗号通貨及び法定通貨とは交換が禁止されるものであることが好ましい。
【0008】
本発明は、さらに、ネットワークを介して第一のサーバーと第二のサーバーとの間においてデータを送受信する方法であって、前記データは一定時間の経過とともにその価値及び量のうち少なくとも量が減少するようなデータ構造を有しており、前記方法は、前記ネットワークを介して前記第一のサーバーから前記第二のサーバーに前記データを送信する第一の過程(S100)と、前記第二のサーバーによる前記データの受信を始点として予め定められた時間の経過を連続的に計測する第二の過程(S120, S130, S140)と、前記予め定められた時間が経過したときには前記予め定められた時間の経過ごとに前記第二のサーバーが前記データの減少分のデータ量を前記第一のサーバーに送信する第三の過程(S160)と、を備えるデータ送受信方法を提供する。
【0009】
前記第一の過程は前記第二のサーバーが予め定められた条件を満足したときにのみ実行されることが好ましい。
本発明に係るデータ送受信方法において、前記予め定められた条件の第一の例は前記第二のサーバーの所有者が無形の情報的な価値を社会に提供していることである。
本発明に係るデータ送受信方法において、前記予め定められた条件の第二の例は前記第二のサーバーの所有者が他者から知識を取得したことである。この場合、前記第一のサーバーは、前記第一の過程において、前記第二のサーバーの所有者が取得した知識量に応じた量の前記データを前記第二のサーバーに送信することが好ましい。
前記データは暗号通貨を構成するものであることが好ましい。
【0010】
例えば、前記一定時間は半減期であり、この場合、前記データは前記半減期経過後にデータ量が半分になる。
本発明に係るデータ送受信方法において、前記第二のサーバー(120)は無線信号を受信できる装置であれば任意のものを用いることができ、例えば、前記第二のサーバー(120)は携帯式電話装置(400)からなるものであることが好ましい。
本発明に係るデータ送受信方法において、前記第二の過程は前記第二のサーバーにおいて実行されることが好ましい。
【0011】
本発明に係るデータ送受信方法において、例えば、前記第一のサーバーはある国家の中央銀行のサーバーであり、前記第二のサーバーはその国家の国民のサーバーであることが好ましい。
本発明に係るデータ送受信方法において、前記暗号通貨(170, 172, 173, 174)は他の暗号通貨及び法定通貨とは交換が禁止されるものであることが好ましい。
【0012】
本発明は、さらに、ネットワークを介してサーバーから送信されてきたデータを前記サーバーに送信する方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記データは一定時間の経過とともにそのデータ量が減少するようなデータ構造を有しており、前記プログラムが行う処理は、計時手段を作動させ、前記サーバーからの前記データの受信を始点として予め定められた時間の経過を連続的に計測する第一の処理と、前記計時手段によって前記予め定められた時間の経過が計測されたときには前記予め定められた時間の経過ごとに前記データの減少分のデータ量を前記サーバーに送信する第二の処理と、を備えるプログラムを提供する。
【0013】
本発明に係るプログラムにおいて、前記データは暗号通貨を構成するものであることが好ましい。
本発明に係るプログラムにおいて、例えば、前記一定時間は半減期であり、この場合、前記データは前記半減期経過後にデータ量が半分になる。
本発明に係るプログラムは前記暗号通貨を他の暗号通貨及び法定通貨と交換することを禁止する第三の処理を行うことが好ましい。
括弧内の符号は後述する実施形態との対応関係を示すために付したものであり、特許請求の範囲をこれに限定する意図ではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るデータ送受信システムは、例えば、国家の経済政策に応用することが可能であり、経済的有用性を社会に与えることができる。
例えば、第一のサーバーは日本の中央銀行である日本銀行、第二のサーバーの各々は日本国民、第一のサーバーから第二のサーバーに送られるデータは暗号通貨を構成しているものと想定する。日本国民の各々には毎月(あるいは毎週)日本銀行から決まった額の暗号通貨が送られてくる。日本国民はこの暗号通貨で生活費を賄い、さらに、種々の消費活動を行い、これによって、実体経済が活性化される。第一のサーバーから送られてきた暗号通貨の通貨量は日々減少するように構成されており、減少した分は第一のサーバーに送り返される。第一のサーバーに送り返された暗号通貨により日本国の一般会計が賄われ、形式的には、無税の国家を誕生させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係るデータ送受信システムのブロック図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係るデータ送受信システムにおける各第二のサーバーを構成する携帯式電話装置の構造の一例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の第一の実施形態に係るデータ送受信システムの作動を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第二の実施形態に係るデータ送受信システムのブロック図である。
【
図5】本発明の第三の実施形態に係るデータ送受信システムのブロック図である。
【
図6】本発明の第四の実施形態に係るデータ送受信システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係るデータ送受信システム100のブロック図である。
図1に示すように、データ送受信システム100は、データを送信する第一のサーバー110と、各々が第一のサーバー110からデータを受信する複数個の第二のサーバー120と、第一のサーバー110と第二のサーバー120とを接続するネットワーク130とから構成されている。
第一のサーバー110は、当該第一のサーバー110の作動を制御する制御装置115と、後述する暗号通貨170を保存するアプリケーションとしてのウォレット116と、を備えている。
第二のサーバー120の各々は、当該第二のサーバー120の作動を制御する制御装置140と、時間の経過を計測し、計測結果を制御装置140に送信する計時手段150と、後述する暗号通貨170を保存するアプリケーションとしてのウォレット160と、を備えている。
【0017】
ネットワーク130は、例えば、インターネットから構成される。
第二のサーバー120の各々は携帯式電話装置として構成することが可能である。
図2は各第二のサーバー120を構成する携帯式電話装置400の構造の一例を示すブロック図である。
携帯式電話装置400は、例えば、通信部410と、制御装置140と、メモリ430と、入出力部440と、アンテナ450と、各部位に電力を供給するバッテリ(図示せず)と、計時手段150と、ウォレット160と、を備えている。
【0018】
通信部410はアンテナ450に接続されており、アンテナ450を介して、他の携帯式電話装置と無線通信によるデータの送信及び受信を行う。
通信部410は、無線受信部411と、無線送信部412と、切り替えスイッチ413と、を備えている。
無線受信部411は他の携帯式電話装置から受信したデータを復調し、制御装置140に送る。無線送信部412は、制御装置140から出力されたデータを変調し、アンテナ450を介して、他の携帯式電話装置に送信する。切り替えスイッチ413は制御装置140からの指示信号を受信し、その指示信号に応じて、送信及び受信の切り替えを実施する。
【0019】
制御装置140は、中央処理装置(CPU: Central Processing Unit)421と、ROMからなる第一メモリ422と、RAMからなる第二メモリ423と、制御装置140に入力された各種命令及びデータを中央処理装置121に転送するための入力インターフェイス424と、中央処理装置421により実行された処理結果を外部に出力する出力インターフェイス425と、中央処理装置421と第一メモリ422、第二メモリ423、入力インターフェイス424及び出力インターフェイス425の各々とを接続するバス426と、から構成されている。
第一メモリ422は中央処理装置421が実行する各種の制御用プログラムその他書き換え不能なデータを格納している。
【0020】
第二メモリ423は様々なデータ及びパラメータを記憶しているとともに、中央処理装置421に対する作動領域を提供する。すなわち、第二メモリ423は中央処理装置421が各種の制御用プログラムを実行する上で一時的に必要とされるデータを格納している。
中央処理装置421は第一メモリ422からプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。すなわち、中央処理装置421は第一メモリ422に格納されているプログラムに従って作動する。本実施形態においては、第一メモリ422には、後述する
図3に示したプロセスを実行するプログラム、すなわち、暗号通貨170の通貨量の減少分を第一のサーバー110に送り返すことを実行するためのプログラムが格納されており、中央処理装置421はこのプログラムに従って
図3に示した方法を実行する。
入出力部440は、操作部441と、ディスプレイ442と、スピーカー443と、から構成されている。
【0021】
操作部441は、例えば、テンキーからなり、各種データは操作部441を介して携帯式電話装置400に入力される。
ディスプレイ442は、例えば、液晶ディスプレイからなり、制御装置140が行った演算の結果やその他のデータを画面に表示する。
他の携帯式電話装置から送信されてきた音声データはスピーカー443を通して出力される。
メモリ430は制御装置140に対する外部メモリである。制御装置140が行った演算の結果やその他のデータはメモリ430に記憶される。
計時手段150は時間の経過を計測し、計測結果を制御装置140に送信する。特に、計時手段150は、予め定められた時間が経過するごとに、予め定められた時間の経過を制御装置140に送信する。
【0022】
ウォレット160は第一のサーバー110から送信されてきた暗号通貨170(後述)を保存するアプリケーションからなる。
なお、第一のサーバー110が備える制御装置115は第二のサーバー120の制御装置140と同様の構造及び機能を有している。
第一のサーバー110が各第二のサーバー120に送信するデータは一定時間の経過とともにそのデータ量が減少するようなデータ構造を有するものとして設定されている。例えば、データ量の減少のアルゴリズムとしては半減期性を採用することができる。半減期(Half-Life)とは、物理学において放射性同位体の半分が放射性崩壊で別核種に変化するまでの期間を指す。各第二のサーバー120が受信したデータは半減期が経過するごとにそのデータ量が半減する。
【0023】
例えば、このデータは特定の暗号通貨として構成することができる。以下、データは暗号通貨170として構成されているものとする。
暗号通貨170は第一のサーバー110から各第二のサーバー120に送信され、各第二のサーバー120のウォレット160に保存される。
前述のように、この暗号通貨170は一定時間の経過とともにその通貨量が減少する。減少のアルゴリズムとして半減期性を採用した場合、半減期を1年(365日)とすれば、通貨量は翌日比で2の365乗根(21/365):1になる。すなわち、通貨量は1日で(21/365-1)の比率で減少する。例えば、10,000円分の暗号通貨は翌日には9,981円となり、1週間後には9,439円、半年後には7,492円、1年後には5,000円、2年後には2,500円となる。
【0024】
半減期に基づく暗号通貨170の減少は暗号通貨170が発行された翌日から開始し、発行された暗号通貨170は全て半減期に従って1日ごとに減少する。このように、第二のサーバー120が受け取った暗号通貨170の額も受け取った翌日から減少を始める。
以上のような構造を有する本実施形態に係るデータ送受信システム100は以下のように作動する。
図3はデータ送受信システム100の作動を示すフローチャートである。
第一のサーバー110は定期的に暗号通貨170を第二のサーバー120の各々に送信する。例えば、第一のサーバー110は1日、1週間または1か月に1回の頻度で暗号通貨170を各第二のサーバー120送信する(
図3のステップS100)。
各第二のサーバー120において受信された暗号通貨170はウォレット160に保存される(
図3のステップS110)。
【0025】
前述のように、第二のサーバー120のウォレット160に保存された暗号通貨170の通貨量は発行(保存)された翌日から減少を開始し、半減期に従って1日ごとに減少する。
暗号通貨170が第一のサーバー110から各第二のサーバー120に送信されると、各第二のサーバー120の計時手段150は各第二のサーバー120における暗号通貨170の受信時を始点として時間の経過の計測を開始する(
図3のステップS120)。
計時手段150は計測結果を、例えば、1時間毎に制御装置140に送信する(
図3のステップS130)。
制御装置140の中央処理装置421は計時手段150から送信されてくる計測結果に基づいて1日(24時間)が経過したか否かを判定する(
図3のステップS140)。
【0026】
暗号通貨170の受信時から1日(24時間)が経過していない場合には、1日(24時間)が経過したか否かの判定を繰り返して継続する(
図3のステップS140のNO)。
第二のサーバー120による暗号通貨170の受信時から1日(24時間)が経過した場合には(
図3のステップS140のYES)、中央処理装置421は暗号通貨170の一日の減少分を計算する(
図3のステップS150)。
暗号通貨170は半減期を1年(365日)としてその通貨量が減少する。このため、一日の減少分Dは次の計算式(A)で計算される。
D=R×2
1/365 (R:暗号通貨170の額)
例えば、第一のサーバー110から第二のサーバー120に送信されてきた暗号通貨170が1万円とすると、暗号通貨170は最初の一日で19円減少する。
【0027】
従って、暗号通貨170の受信時から一日(24時間)経過後の時点では、
10,000-19=9,981円
の暗号通貨170がウォレット160に残る。
あるいは、暗号通貨170は最初の一週間(7日)で561円減少する。
従って、暗号通貨170の受信時から一週間(7日)経過後の時点では、
10,000-561=9,439円
の暗号通貨170がウォレット160に残る。
次いで、各第二のサーバー120の制御装置140はネットワーク130を介して暗号通貨170の第一日目の減少分Dを第一のサーバー110に送信する(
図3のステップS160)。
【0028】
暗号通貨170の減少分Dを第一のサーバー110に送信した後も、各第二のサーバー120の計時手段150は第二のサーバー120が暗号通貨170を受け取った時点を始点として引き続き時間の経過の計測を開始し、計測結果を、例えば、1時間毎に制御装置140に送信する(
図3のステップS170)。
制御装置140の中央処理装置421は計時手段150から送信されてくる計測結果に基づいて1日(24時間)が経過したか否かを判定する(
図3のステップS180)。
前回の暗号通貨170の減少分の送信時から1日(24時間)が経過していない場合(すなわち、第二のサーバー120が暗号通貨170を受け取った時点から2日(48時間)が経過していない場合)には、1日(24時間)が経過したか否かの判定を継続する(
図3のステップS180のNO)。
【0029】
前回の暗号通貨170の減少分の送信時から1日(24時間)が経過した場合には(
図3のステップS180のYES)、中央処理装置421は暗号通貨170の一日の減少分を前述の式(A)に従って計算する(
図3のステップS190)。
次いで、各第二のサーバー120の制御装置140はネットワーク130を介して暗号通貨170の第二日目の減少分Dを第一のサーバー110に送信する(
図3のステップS200)。
このように、暗号通貨170の減少分Dは1日(24時間)が経過するごとに各第二のサーバー120から第一のサーバー110に送り返される。
以後、
図3のステップS170からステップS200までの各ステップが繰り返し実行される。
【0030】
各第二のサーバー120の所有者は暗号通貨170を使って物品購入などの消費活動を行うことができ、この消費活動によってウォレット160に保存されている暗号通貨170の通貨量は減少する。さらに、各第二のサーバー120の所有者が消費活動を行わなくても、上記のように、各第二のサーバー120のウォレット160に保存されている暗号通貨170の量は日数の経過とともに減少する。
制御装置140は常にウォレット160に保存されている暗号通貨170の残存通貨量を監視しており、残存通貨量が予め定めたしきい値(例えば、1000円)を下回ったときには、第一のサーバー110に暗号通貨170の追加送信を依頼する依頼信号を送信する。この依頼信号を受信した第一のサーバー110は、定期的に暗号通貨170を第二のサーバー120に送ることに加えて、追加の暗号通貨170(例えば、一万円)を第二のサーバー120に送信する。
【0031】
このように、ウォレット160に保存されている暗号通貨170の残存通貨量がゼロに近くなったときには、第一のサーバー110から追加の暗号通貨170が補充される。
あるいは、第一のサーバー110は定期的に各第二のサーバー120に一定額の暗号通貨170を送信することができる。例えば、第一のサーバー110は一週間に1回の頻度で各第二のサーバー120に3万円を送信し、あるいは、一か月に1回の頻度で各第二のサーバー120に10万円を送信することができる。
第一のサーバー110と各第二のサーバー120との間の暗号通貨170の送信は、ビットコインなどの一般的な暗号通貨と同様に、ブロックチェーンを介して実行される。
【0032】
以上のように作動するデータ送受信システム100は国家の経済政策に応用することが可能である。以下、データ送受信システム100を応用した経済政策について説明する。
例えば、第一のサーバー110は日本国の中央銀行である日本銀行のサーバーであり、各第二のサーバー120は日本国民一人一人が有する携帯式電話装置400(
図2)であるとする。
現在の社会で使われている通貨は、価値が減少しない、すなわち、価値が保存されることが前提とされている。そのため、富める者は資金を貯め込み、金利での運用を行う。このため、資金の一部のみしか市場に流されず、市場への刺激は少なく、経済は活性化しづらい状況になることがある。換言すれば、金融経済のみが活性化し、実体経済は活性化されないという状況に陥ることがある。
【0033】
しかしながら、暗号通貨170に「時間経過とともに量が減少する」という特性をもたせることによって、消費行動を刺激し、消費行動を促すことが可能になる。
その結果として、半減期性をもたせた暗号通貨170の経済圏においては、通貨(暗号通貨170)はより流通し、経済は刺激され、市場全体が豊かになる。富めるものがより富める現在の社会から、市場全体に関わる全員が豊かになれる社会への転換を期待することができる。
2020年、日本銀行は量的緩和政策(QE: Quantitative Easing)によって約120兆円の通貨(日本円)の発行を行った。これらの資金は市中銀行などの金融機関に流れている。
【0034】
データ送受信システム100を応用した経済政策としては、これと同額の暗号通貨170をユニバーサルベーシックインカム(UBI: Universal Basic Income)として国民に直接的に分配する。例えば、日本銀行(中央銀行)が月額20万円などの一定額を国民一人一人のウォレット160に毎月直接送金する。これによって、一か月当たり200、000×国民総数に相当する信用創造がなされる。
国民の観点からも「市中銀行から国債を買い取る代わりに、直接資金が分配される」という取り組みは高い支持を受けられる。半減期による減少率が金利より大きければ、暗号通貨170は貯蓄に回ることなく、消費が促進され、経済は刺激され、市場全体が、具体的には、実体経済が活性化される。
また、イングランド銀行(英国中央銀行)の発表によると、法定通貨(通貨価値及び通貨量が減少しない通貨)を用いての国民への直接の買いオペを実施することにより国民の消費行動は促進され、GDPは3%上昇すると言われている。このため、景気刺激の効果もある。
【0035】
このように通貨価値及び通貨量が減少しない通貨であっても、買いオペを実施することにより国民の消費行動は促進されることに加えて、暗号通貨170(時間の経過とともに通貨量が減少する通貨)による消費促進も加わるので、さらなるGDPの上昇を期待することができる。
ユニバーサルベーシックインカム(UBI)により国民に配られた月額20万円分の暗号通貨170は半減期により日々減少する。データ送受信システム100においては、暗号通貨170の減少分は全てのウォレット160から中央銀行(第一のサーバー110)に自動的に送金される。すなわち、半減期の1年が経過すれば、信用創造総額(一か月当たり200、000×国民総数)の半分が中央銀行に戻ることになる。
【0036】
【0037】
表1はUBI発行量、回収量、一般会計及び余剰量の相互関係を示す。
例えば、国民への配布額が年額200万円ならば、国民1億2000万人の全ウォレット160に毎年総額で240兆円が発生し、表1に示すように、1年後には120兆円(2年目以降は180兆円+α)が中央銀行(第一のサーバー110)に戻る。これを法定通貨としての日本円に変換して国庫に入れれば、毎年の一般会計(120兆円)を賄うことができ、形式上は無税国家を誕生させることができる。
半減期による暗号通貨170の減少分は実体として税であるとみることもできる。現行の消費税の方式は、消費者の消費行動により左右される税収入であり、「消費をすることによるペナルティ」であると捉えることもでき、消費を鈍らせる矛盾をはらんでいる。
【0038】
一方で、半減期により通貨量が減少する暗号通貨170を用いるデータ送受信システム100においては、税(暗号通貨170の減少分)収入は自動的に行われるため、安定財源となる。半減期による暗号通貨170の減少は「消費をしないことによるペナルティ」と捉えられるため、当然消費を促進させる効果が見込まれる。
【0039】
国民(第二のサーバー120)から中央銀行(第一のサーバー110)に回収された暗号通貨170は半減期により通貨量が減少することを停止させる、すなわち、通貨量が保存されるように設定することが可能である。暗号通貨170をこのように設定することにより、中央銀行または国家は回収した暗号通貨170をその通貨量を減らすことなく使うことができる。例えば、最初に、回収した暗号通貨170で一般会計を賄い、余剰金が出た場合には、その余剰金は海外に渡せば、日本国内はインフレにはならない。ODAなどの海外援助、米財務省証券、EU債や中国政府債の購入に回すことができる。
時間経過に伴い通貨価値及び通貨量が減少しない従来の通貨(法定通貨)では、資産を持つ者は資金を金利で運用させ、さらなる富を得る選択をする。市場への流通はしないため、景気は刺激されない。景気が良くならない社会の労働者には資財を貯め込む余裕はない。そのため、貧富の格差は広がる傾向となる。
【0040】
これに対して、半減期により通貨量が減少する暗号通貨170が導入された社会では、消費行動が促進され、景気が刺激され、市場に関わる全ての人に恩恵がある。いわば、現行の法定通貨から暗号通貨170への切り替えは、「個人の利益が優先される」という低い抽象度の社会から、より高い抽象度である「全員の利益が優先される」社会への大きな転換期となる。
半減期により通貨量が減少する暗号通貨170を使用するUBIの特徴は、個人のウォレット160に直接入金ができることと、消費行動を促進させることを目的としていることにある。そのため、暗号通貨170を用いて、日本円や米国ドルなどの法定通貨との交換、有価証券や貴金属といった「蓄財」のための商品の購入は禁止することができる。基本的には、蓄財できない消耗品、食料品、生活必需品、衣料などの購入、ライフラインの公共料金や賃貸住宅の家賃の支払い、あるいは、旅行費用への補填などに暗号通貨170を使用することを想定している。
【0041】
暗号通貨170の他の通貨との交換禁止や蓄財商品の購入禁止は、例えば、暗号通貨170を規定するプログラムにそのような制限を組み込むことにより、実現することが可能である。暗号通貨170による商品購入はネットワーク130を通じて行われるが、その際に、購入しようとしている商品が蓄財商品であるとプログラムが判断した場合には、プログラムはその購入プロセスを進めずに、購入手続を打ち切ることになる。
ドイツ人の経済学者・実業家であるシルビオ・ゲゼル(Silvio Gesell, 1862-1930)は、あらゆるものが減価するのに通貨だけが減価しないために金利が正当化され、ある程度以上の資産家が金利生活者として大した労働をすることもなく生きている現状を問題視し、これを解決するために、その著書「自然的経済秩序」の中で自由貨幣の概念を提唱している。
自由貨幣は、一定期間ごと(例えば、1週間または1ヶ月ごと)に紙幣に一定額のスタンプ(印紙)を貼ることを使用の条件とすることにより、通貨の退蔵を防ぎ、流通を促進させ、貸出金利を下げることを目的とするものである。これは「通貨の価値」を下げる考え方であり、暗号通貨170のような「通貨量の減少」とは本質的に異なるものである。
【0042】
以上のように、本実施形態に係るデータ送受信システム100は社会に極めて有用な政策のベースとなり得るものであり、現在の経済的諸問題を解決する可能性を有するものである。
本実施形態に係るデータ送受信システム100は上記の構造に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
データ送受信システム100は1個の第一のサーバー110を有するものとして構成されているが、データ送受信システム100を2個以上の第一のサーバー110を有するものとして構成することも可能である。
【0043】
例えば、データ送受信システム100を2個の第一のサーバー110を有するものとして構成する場合、一方の第一のサーバー110は半減期性の暗号通貨170を扱い、他方の第一のサーバー110は後述する第二及び第三の実施形態において述べられる種々の暗号通貨を扱うものとすることが可能である。
本実施形態に係るデータ送受信システム100においては、第二のサーバー120は携帯式電話装置400として構成されているが、第二のサーバー120をパソコン、タブレットまたは携帯式の暗号通貨受信専用装置として構成することも可能である。
本実施形態に係るデータ送受信システム100においては、計時手段150は第二のサーバー120に内蔵されているが、計時手段150は第二のサーバー120とは独立したものとして第二のサーバー120の外部に設定することが可能であり、その場合には、計時手段150は計測結果を第二のサーバー120の制御装置140に無線信号で送信する。
【0044】
本実施形態に係るデータ送受信システム100においては、暗号通貨170は1年(365日)で通貨量が半分になるものと設定されているが、通貨量の減少を司るアルゴリズムは半減期には限定されない。通貨量の減少率を決定するアルゴリズムは第一のサーバー110の管理者(通貨発行者)が任意に決めることができる。
本実施形態に係るデータ送受信システム100においては、計時手段150は計測結果を1時間毎に制御装置140に送信するものとして設定されているが、半減期である1日(24時間)を経過したときに、計時手段150が制御装置140に1日の経過を知らせる信号を送信するように構成することも可能である。
【0045】
また、第二のサーバー120から第一のサーバー110に戻ってきた暗号通貨170については、第一のサーバー110の管理者(通貨発行者または日本銀行)は通貨量を減少させないと決めることができる。
本実施形態に係るデータ送受信システム100においては、暗号通貨170の通貨量は時間の経過とともに減少するものとして設定されているが、通貨量のみならず、通貨価値をも減少するものとして設定することも可能である。例えば、半減期経過時には暗号通貨170の通貨量は半分になるとともに、暗号通貨170の通貨価値は半分になるようにすることも可能である。
この場合、通貨量の減少速度と通貨価値の減少速度は同じである必要はなく、相互に異なる減少速度とすることも可能である。例えば、通貨量の減少速度としては半減期を選択し、通貨価値の減少速度としては半減期以外の他のファクター(例えば、物価上昇率、GDPの増減率、平均年間収入の変動率など)を選択することもできる。
【0046】
(第二の実施形態)
例えば、自動車について、国産普通車とイタリアのスポーツカーとでは販売価格に大きな差がある。しかしながら、原材料の原価(物理的な価値)には大きな差はない。そのため、販売価格に差を生んでいる要素は、ブランドやデザインなどの情報的な価値と考えられる。本例のように、世の中の価格は「物理的な価値+情報的な価値」により構成される、と考えることができる。
日常生活における大半の物の価格には、ほぼ確実に情報的な価値が上乗せされている。このため、物理的な価値と情報的な価値を分けることができれば、日常生活における大半の物の価格を大幅に引き下げることができる。すなわち、物理的な価値に近い価格にすることができる。
【0047】
ここで、情報的な価値には、ブランドやデザインだけではなく、社会に有用な企業活動によるサービスも含まれる。
例えば、日本の電車は時刻表の通りに寸分違いない運行をしているというサービス価値を提供している。また、宅配企業は、届け物を安全に適切な時間と場所に届けるというサービス価値を提供している。
このような企業活動における「サービス」という情報的な価値を担保として、暗号通貨を発行することが可能である。すなわち、「サービス」という情報的な価値を本位とした暗号通貨(例えば、「情報通貨」という名称の通貨)を作ることが可能である。
図4は第二の実施形態に係るデータ送受信システム200のブロック図である。
【0048】
本実施形態に係るデータ送受信システム200においては、第一の実施形態における暗号通貨170に代えて暗号通貨171を用いる。暗号通貨171は、暗号通貨170と同様に、半減期経過時に通貨量が半分になる特性を有していることに加えて、上記のような情報的価値を本位とする特性を有している。
データ送受信システム200においては、第二のサーバー120は、例えば、鉄道会社である。この鉄道会社は時刻表の通りに鉄道の運行を行っているというサービス価値を社会に提供している。時刻表の通りに鉄道を運行するという行為には無形の価値がある。このため、この無形価値を担保として、第一のサーバー110の管理者である中央銀行機関(国家、中央銀行または中央銀行に相当する金融機関)が暗号通貨171(例えば、「鉄道運行通貨」という名称の通貨)を新たに発行し、鉄道会社に貸付(信用創造)を行う。
【0049】
鉄道会社の観点から見れば、株式発行による資本金の獲得と同様に、返済の必要のない資金を獲得することができ、この資金を元に鉄道事業を強化することができる。
上記の情報通貨の一例を以下に掲げる。
本出願人は、2021年末から、情報通貨の実証実験として、コーチング知識を扱うための情報通貨「コーチングコイン」の運用を開始している。2022年10月時点での利用者は約200人であり、今までに約2万件のコーチング知識に対して、コーチングコインを発行している。コーチングコインの発行主体は中央銀行にあたるコーチングコイン銀行(コーチングコイン事務局)である。
【0050】
コーチングコインが発行されるコーチング活動の対象やコイン発行額は、事務局が決める場合、または、利用者による重み付き直接投票によって決定される場合がある。
コーチングコイン発行の対象としては、 コーチングセミナーの受講、セッションへの参加、本、動画またはDVDの購入などがある。
コーチングコイン発行額は、例えば、セッションへの参加の場合はコーチ保有量の3%ほどのコイン、本の購入は1冊あたり3コイン、セミナー受講は時間あたり6コイン、である。
【0051】
(第三の実施形態)
第一の実施形態に係るデータ送受信システム100においては、暗号通貨170は第一のサーバー110から第二のサーバー120へ無条件で供給されていたが、暗号通貨170の供給に対して条件を付けることも可能である。すなわち、第二のサーバー120の所有者が予め定められた条件を満足した場合にのみ、第一のサーバー110が第二のサーバー120に暗号通貨170を送信するようにすることもできる。
第三の実施形態に係るデータ送受信システム300においては、以下の例に示すように、第二のサーバー120の所有者が予め定められた条件を満足した場合にのみ、第一のサーバー110から第二のサーバー120に暗号通貨が供給される。
【0052】
第二の実施形態において示した暗号通貨171も第二のサーバー120の所有者が予め定められた条件を満足した場合に付与されると捉えることができる。すなわち、第二のサーバー120の所有者である鉄道会社が時刻表の通りに鉄道を運行しているという条件である。
図5は本実施形態に係るデータ送受信システム300のブロック図である。
図5に示すように、データ送受信システム300は、データ送受信システム100の構造に加えて、第三者機関のサーバー310を追加的に備えている。
第三者機関または第一のサーバー110の管理者が予め定めた条件を第二のサーバー120の所有者がクリアーすると、第三者機関のサーバー310はその旨の信号を第一のサーバー110に送信する。この信号を受信した第一のサーバー110の制御装置115は第二のサーバー120に対して後述の暗号通貨172、173または174を送信する。暗号通貨172-174は暗号通貨170と同様の通貨であるが、発行条件が異なるため、暗号通貨170とは区別されている。
【0053】
本実施形態における第一のサーバー110の管理者は国家(日本銀行)でもよく、あるいは、第三者機関が運営する銀行などの金融機関でもよい。本実施形態のみならず、全ての実施形態において第一のサーバー110の管理者は国家の他に個人または法人のいずれもがなり得る。例えば、ある事業を行っている法人(例えば、前述のコーチングコインを発行している主体)は、その事業に関して、第一のサーバー110の管理者として種々の暗号通貨170を発行することができる。
第二のサーバー120の所有者がクリアーすべき条件の例を以下に掲げる。
【0054】
(第一の例)
現在の社会では、高等教育を受けるためにはかなりの学費がかかる。そのため、多くの人が学費を払えずに、学ぶ機会を得られないという問題が起きている。暗号通貨を用いてこの問題を解決することができる。
第二のサーバー120の所有者がクリアーすべき条件の第一の例は、第二のサーバー120の所有者が何らかの知識を取得することである。
第二のサーバー120の所有者が第三者機関から知識の伝授を受けた場合(
図5のステップS320)、例えば、第二のサーバー120の所有者が第三者機関で講義(音楽、美術などの芸術の授業、スポーツの技術の練習なども含む)を受けた場合または第三者機関から書籍その他の教材を購入した場合には、第三者機関のサーバー310から第一のサーバー110に報告が行われ、第一のサーバー110から、例えば、講義の時間や難易度または書籍の値段や頁数に応じて、第二のサーバー120に暗号通貨172(例えば、「知識通貨」という名称の通貨)が支払われる。暗号通貨172の支払い額は第一のサーバー110の管理者が任意に定めることができる。
【0055】
第二のサーバー120の所有者はこのようにして取得した暗号通貨172を用いて新たな知識を習得することができる。例えば、暗号通貨172の通貨圏において、他の講義を受けたり、あるいは、新たな教材を入手することができ、これにより、さらに新たな暗号通貨172を取得することができる。すなわち、知識を得れば得るほど、暗号通貨172の取得量も大きくなる。
このように、第一の例によれば、学びたい人がより多くを学ぶことができる仕組みを実現することができる。
また、日本では、子供たちは義務教育として小学校と中学校で多くの知識を得ているため、例えば、国家(第一のサーバー110)がそれらの知識の習得に対して子供たちに暗号通貨172を送ることもできる。この暗号通貨172を使って高等学校や大学に通えることができるようになれば、「学びたい人は誰でも、より学べる社会」を実現することができる。
【0056】
(第二の例)
現在、二酸化炭素(CO
2)が地球の温暖化の原因であるとして、CO
2排出量を削減することが求められている。この問題も暗号通貨を用いて解決することが可能である。
例えば、第二のサーバー120の所有者が第三者機関からCO
2を回収する装置を購入した場合や第三者機関においてCO
2回収のためのボランティア活動を行った場合(
図5のステップS330)には、第三者機関のサーバー310から第一のサーバー110に報告が行われ、第一のサーバー110から、例えば、CO
2回収装置の購入個数や値段またはボランティア活動を行った時間に応じて、第二のサーバー120に暗号通貨173(例えば、「CO
2通貨」という名称の通貨)が支払われる。
【0057】
この第二の例の目的は「生産するためにCO2を多く排出してしまう製品の購入には、購入代金(法定通貨)の他に暗号通貨173の支払いを義務付ける」という社会の実現である。
このような社会では、例えば、コンビニエンスストアでコーヒーを買う場合には、コーヒーの代金100円(法定通貨)の他に、コーヒー豆やカップの生産や輸送、湯を沸かすためのエネルギーによって排出されたCO2量に相当する暗号通貨173の支払が必要となる。
現在、各国ではCO2排出権の売買や炭素税などのCO2削減策が進められているが、それらは言い換えれば、「金(税金)を払えばCO2を出していい」ということであり、CO2排出を容認しているとも言え、本来のCO2削減への直接的な行動とは見なし難い。
暗号通貨173はCO2削減というサスティナブルな社会を実現するための行動に対してのみ付与されるため、暗号通貨173を導入することはCO2削減への直接的な行動となり得るものである。
【0058】
(第三の例)
世界が抱える問題の一つに食料問題がある。暗号通貨はこの食料問題に対しても有効である。
例えば、第二のサーバー120の所有者が第三者機関(食料品店)で賞味期限(または消費期限)が近い食料品を購入した場合(
図5のステップS340)には、第三者機関のサーバー310から第一のサーバー110に報告が行われ、第一のサーバー110から、例えば、賞味期限までの日数に応じて、第二のサーバー120に暗号通貨174(例えば、「フードロスコイン」という名称の通貨)が支払われる。賞味期限までの日数が短いほど、多くの暗号通貨174が支払われる。
第三の例によれば、賞味期限が過ぎた食料品が廃棄されるというフードロス問題の解決の一助となる。
【0059】
第二のサーバー120の所有者はこのようにして得た暗号通貨174で新たな食料品を購入することができる。すなわち、フードロスの削減に貢献する行為を行うと、新たな食料を得ることができるシステムができあがる。ここでは、従来の法定通貨の授受は必要ない。
なお、前述のように、暗号通貨170は他の暗号通貨との交換は禁止されることが原則であるが、例外として、第一乃至第三の実施形態における暗号通貨170-174は相互に交換可能と設定することができる。
例えば、知識の習得により得られた暗号通貨172とフードロスコイン174とが交換可能であれば、学ぶ行為によって暗号通貨172を得ることができ、この暗号通貨172をフードロスコイン174と交換し、フードロスコイン174を使って食料品を得ることができる。
現在の社会課題の一つとして、発展途上国の金銭的に恵まれない子どもたちは、労働力として駆り出されて、学校に通えず適切な教育を受けられていないという状況があり、教育格差が広がる原因の一つとなっている。本例によれば、勉強が食料品に直結するので、教育格差を解消する一助になり得る。
【0060】
(第四の実施形態)
物理的な空間の価値を固有情報として捉え、これを暗号通貨を介して価値化することができる。
例えば、レアメタルの資源国は、地下資源を発掘していなくても、未発掘資源に対して「地面の下には資源がある」という情報的な価値を有している。そこで、この情報的な価値をNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)化し、暗号通貨175(例えば、「NFT通貨」という名称の通貨)を発行することができる。すなわち、埋蔵資産を担保とした通貨である。NFTは、例えば、埋蔵量の単位(キログラムやトン)ごとに発行することができる。
埋蔵資源を直接採掘する必要がないため、既存の経済大国に資源が流出することがない。
【0061】
図6は本実施形態に係るデータ送受信システム500のブロック図である。
図6に示すように、データ送受信システム300は第一の実施形態に係るデータ送受信システム100と同一の構造を有している。
第一のサーバー110の管理者はレアメタル資源国の政府であり、各第二のサーバー120の所有者はNFT通貨175の購入者である。
例えば、第一のサーバー110の管理者であるレアメタル資源国の政府はNFT通貨175の市場価格が予め決められた価格を下回った場合のみ、資源を採掘する。そのため、健全な経済運営を継続することができ、為替が維持されれば、地下資源を発掘する必要はなく、サスティナブルである。
【符号の説明】
【0062】
100 第一の実施形態に係るデータ送受信システム
110 第一のサーバー
120 第二のサーバー
130 ネットワーク
140 制御装置
150 計時手段
160 ウォレット
400 携帯式電話装置
200 第二の実施形態に係るデータ送受信システム
300 第三の実施形態に係るデータ送受信システム
310 第三者機関のサーバー
500 第四の実施形態に係るデータ送受信システム