(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066781
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】皮膚外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20240509BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240509BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176466
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】399101201
【氏名又は名称】健栄製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100131587
【弁理士】
【氏名又は名称】飯沼 和人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 崇寛
(72)【発明者】
【氏名】筒井 優
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC482
4C083AD092
4C083AD311
4C083AD312
4C083AD352
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD451
4C083AD452
4C083AD532
4C083CC04
4C083DD27
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物であって、高い皮膚の保湿作用を有しつつ、好ましくは、敏感肌にも刺激が少ない皮膚外用組成物を提供すること。
【解決手段】ヘパリン類似物質と、加水分解エラスチン、加水分解シルク、及び加水分解コンキオリンから選ばれる加水分解タンパク質と、液状担体と、を含有する皮膚外用組成物を提供する。好ましくは、加水分解タンパク質が、皮膚外用組成物に対して、有効成分含量として0.0001(1×10-4)~10質量%の範囲で含まれ;ヘパリン類似物質の含有量は、皮膚外用組成物に対して、0.005質量%~5質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘパリン類似物質と、中性アミノ酸を主要成分とするアミノ酸組成を有する加水分解タンパク質と、液状担体と、を含有する皮膚外用組成物。
【請求項2】
ヘパリン類似物質と、加水分解エラスチン、加水分解シルク、及び加水分解コンキオリンから選ばれる加水分解タンパク質と、液状担体と、を含有する皮膚外用組成物。
【請求項3】
前記加水分解タンパク質が、前記皮膚外用組成物に対して、有効成分含量として0.0001(1×10-4)~10質量%の範囲で含まれる、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項4】
前記ヘパリン類似物質の含有量は、前記皮膚外用組成物に対して、0.005質量%~5質量%である、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項5】
保湿剤である、請求項1又は2に記載の皮膚外用組成物。
【請求項6】
ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物の保湿作用を増強する方法であって、
前記皮膚外用組成物に、加水分解エラスチン、加水分解シルク、及び加水分解コンキオリンから選ばれる加水分解タンパク質を配合することを含む、保湿作用増強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用組成物及び保湿作用増強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパリン類似物質を含む組成物は、外用剤として皮膚に適用されると、皮膚の保湿作用や、皮膚の抗炎症作用や、血行促進作用などが得られることが知られている(非特許文献1)。そのため、ヘパリン類似物質を含む外用組成物がいくつか提案されており、例えば、特許文献1には、ヘパリン類似物質とアミノ酸成分を含む外用組成物が記載されており、特許文献2には、ヘパリン類似物質と、トコフェロール、抗炎症剤及び鎮痒剤を含む皮膚外用剤が記載されている。
【0003】
また、タンパク質又は加水分解タンパク質を含有する皮膚外用剤も提案されており、例えば、水溶性ルチンとコラーゲン等のタンパク質を含む皮膚外用剤(特許文献3)、加水分解エラスチンとステロイド類などを含有する皮膚外用剤(特許文献4)、ポリフェノール誘導体と水溶性エラスチンなどを含有する化粧料組成物(特許文献5)、シロキクラゲ科キノコの抽出物とエラスチンなどを含有する皮膚外用剤(特許文献6)、絹タンパクと水溶性高分子化合物などを含有する化粧料(特許文献7)、加水分解シルクと特定のアミノ酸を含有する皮膚外用剤(特許文献8)、シルクフィブロインゲルを含有する熱傷又は創傷処置剤(特許文献9)、コンキオリン加水分解物などとα-ヒドロキシカルボン酸とを含有する皮膚化粧料(特許文献10)、真珠又は真珠層を含む貝類とコンキオリンなどを含有する皮膚外用剤(特許文献11)、真珠層粉末とコラーゲン又はプロテオグリカンを含有する皮膚外用剤(特許文献12)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-59524号公報
【特許文献2】特開2016―196419号公報
【特許文献3】特開平8-99861号公報
【特許文献4】特開2001-72570号公報
【特許文献5】特開2002-205913号公報
【特許文献6】特開2006-131557号公報
【特許文献7】特開2004-250405号公報
【特許文献8】特開2008-56568号公報
【特許文献9】特表2012-509252号公報
【特許文献10】特開平7-291850号公報
【特許文献11】特開2003-300821号公報
【特許文献12】特表2003-510364号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】商品名ヒルマイルド添付文書URL:https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/J2001000156_02_A.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、ヘパリン類似物質を含む従来の皮膚外用組成物は、皮膚の保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用を有しているものの、これらの外用組成物には、さらなる高い作用、とりわけ、さらに高い保湿作用が求められることがあった。そこで本発明は、ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物であって、高い皮膚の保湿作用を有しつつ、好ましくは、敏感肌にも刺激が少ない皮膚外用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、以下に示す皮膚外用組成物に関する。
[1]ヘパリン類似物質と、中性アミノ酸を主要成分とするアミノ酸組成を有する加水分解タンパク質と、液状担体と、を含有する皮膚外用組成物。
[2]ヘパリン類似物質と、加水分解エラスチン、加水分解シルク、及び加水分解コンキオリンから選ばれる加水分解タンパク質と、液状担体と、を含有する皮膚外用組成物。
[3]前記加水分解タンパク質が、前記皮膚外用組成物に対して、有効成分含量として0.0001(1×10-4)~10質量%の範囲で含まれる、前記[1]又は[2]に記載の皮膚外用組成物。
[4]前記ヘパリン類似物質の含有量は、前記皮膚外用組成物に対して、0.005質量%~5質量%である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の皮膚外用組成物。
[5]保湿剤である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の皮膚外用組成物。
【0008】
さらに本発明は、以下に示す保湿作用を増強する方法に関する。
[6]ヘパリン類似物質を含む皮膚外用組成物の保湿作用を増強する方法であって;前記皮膚外用組成物に、加水分解エラスチン、加水分解シルク、及び加水分解コンキオリンから選ばれる加水分解タンパク質を配合することを含む、保湿作用増強方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の皮膚外用組成物は、皮膚に適用されることで、従来のヘパリン類似物質含有組成物と比較して、皮膚の保湿性をより高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.皮膚外用組成物]
本発明の皮膚外用組成物は、1)ヘパリン類似物質と、2)特定の加水分解タンパク質と、3)液状担体と、を含有し、さらに、他の配合成分を含んでいてもよい。
【0011】
[1-1.ヘパリン類似物質]
ヘパリン類似物質とは、ムコ多糖類の多硫エステル体である。ムコ多糖類とは、動物組織や体液に広く分布するアミノ糖を含む複合多糖であり、例えば、コンドロイチン硫酸などである。ヘパリン類似物質は、ムコ多糖類を多硫酸化することにより得てもよく、食用獣の組織(例えば、ウシの気管軟骨を含む肺臓)から抽出して得てもよい。また、本発明の皮膚外用組成物に含まれるヘパリン類似物質は、日本薬局方外医薬品規格に収戴されているヘパリン類似物質であってもよい。
【0012】
本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質を、組成物に対して0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上含む。また、本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質を、組成物に対して5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下含む。本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質を、例えば0.1質量%、又は0.3質量%含む。なお、ヘパリン類似物質の含有量は、皮膚外用組成物が適切な保湿作用を有するように、適宜設定することができる。
【0013】
[1-2. 加水分解タンパク質]
タンパク質は、皮膚の構成成分であり、従来から化粧料等の皮膚外用組成物にも配合されることがあった。天然のタンパク質を加水分解して得られる加水分解タンパク質(つまり、オリゴペプチド)は、表皮中の天然ペプチドと類似のアミノ酸構造を有することがあり、また、これらのオリゴペプチドは、角層成分であるNMF (天然保湿成分)のアミノ酸組成と類似することもあり、保湿剤などとして期待されることがあった。
【0014】
本発明の皮膚外用組成物に含まれる加水分解タンパク質は、ヘパリン類似物質の保湿作用を相乗的に増強するものであればよいが、中性アミノ酸を主要成分とするアミノ酸組成を有することが好ましい。NMF (天然保湿成分)も、セリン、グリシン、アラニンなどの中性アミノ酸を主要成分として有するため、中性アミノ酸を主要成分とするアミノ酸組成を有する加水分解タンパク質は強い保湿効果を示すと考えられるからである。ここで、中性アミノ酸とは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンなどが含まれる。本発明の皮膚外用組成物に含まれる加水分解タンパク質のアミノ酸組成において、アミノ酸残基の合計に対して75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上が中性アミノ酸残基である。
【0015】
本発明の皮膚外用組成物に含まれる加水分解タンパク質は、加水分解エラスチン、加水分解シルク、加水分解コンキオリン、加水分解コラーゲン、加水分解ゼラチンなどが挙げられるが;好ましくは、加水分解エラスチン、加水分解シルク及び加水分解コンキオリンから選択されることが好ましい。これらの加水分解タンパク質は、中性アミノ酸を主要成分とするアミノ酸組成を有しており、ヘパリン類似物質の保湿作用を相乗的に増強する効果を有することが、後述の実施例に示されている。本発明の皮膚外用組成物は、1又は2種以上の加水分解タンパク質を含有することができる。
【0016】
[1-2-1. 加水分解エラスチン]
本発明の皮膚外用組成物は、加水分解エラスチンを含むことができる。加水分解エラスチンは、タンパク質であるエラスチンを加水分解して、水溶性としたものである。エラスチンは、弾性繊維の主成分であり、靭帯,皮膚等の伸縮性に富む臓器に存在し、コラーゲン繊維とともに皮膚の弾力性に関わる成分であり、体内では不溶性物質である。
【0017】
加水分解エラスチンは、好ましくは、分子量2000~5000程度のものを中心とした加水分解性タンパク質であり、水への溶解性が高く、アミノ酸組成としてはグリシンが全体の約30%を占め、グリシン、アラニン、バリン、プロリンを主要アミノ酸とする。
【0018】
本発明の加水分解エラスチンは、その基原は特に限定されず、ウシ、ブタ、ウマ、トリなど家畜動物を基原にするもの、魚類を基原とするものなどであり得る。加水分解エラスチンの好ましい基原は、1)第1はウシであり、より具体的にはウシ(Bos taurus Linne var. domesticus Gmelin (Bovidae))の靭帯(項靭帯)が好ましく、2)第2は魚皮であり、魚の種類は特に限定されず、例えばタラ,サバ,サケ,ニシン,タイ,マグロ,イワシなどが挙げられる。
【0019】
ウシの項靭帯から抽出したエラスチンを、酸若しくはアルカリにより、及び/又はエラスターゼ、ペプシン、トリプシンなどの蛋白分解酵素を用いた酵素処理により加水分解して、加水分解エラスチンを得ることができる。例えば、項靭帯を水洗した後に細切し、pHを10.5に調整した水酸化ナトリウム水溶液中にて1~2時間煮沸する。これを遠心分離して残留物を回収し、pH2に調整した希硫酸水溶液中にて1~2時間煮沸する。再度、遠心分離にて残留物を回収し、十分に水洗したあと、蛋白分解酵素液中において55~60℃で6~8時間加水分解し、次に100℃にまで加熱して酵素を失活させ、メンブランフィルターにて除菌濾過を行うことにより、水溶性エラスチン水溶液を得ることができる。
【0020】
また、魚皮由来加水分解エラスチン溶液は、例えば、魚(例えば、タラ)の皮を粉砕し精製水と混合して、95℃にて1時間加熱した後、エラスターゼを添加して40℃で30時間部分加水分解を行い、次いで95℃で1時間加熱して酵素反応を停止し、pHを4.0に調整し、メンブランフィルターにて除菌濾過を行うことにより、調製することができる。
【0021】
加水分解エラスチンは、溶液(例えば、水溶液又はエタノール水溶液)として用意されてもよいし、粉末として用意されてもよい。加水分解エラスチン水溶液のpHは、皮膚外用剤に配合するその他の成分及び製剤への影響を考慮して、3.5~4.5の範囲に調整することが好ましい。また、加水分解エラスチン溶液の濃度は、例えば1~20%の範囲であることが好ましい。また、加水分解エラスチンの乾燥物は、窒素(N:14.01)として12.5~17.0%を含むことが好ましい。窒素の定量は、窒素定量法(第1法)による試験で行えばよい(0.005 mol/L硫酸1ml = 0.1401 mg N)。
【0022】
加水分解エラスチンは、市場から入手可能なものもあり:例えば、エラスオーシャン4%MP、エラスオーシャン4%PE、エラスチンパウダーEco、加水分解α-エラスチン、加水分解エラスチン10%MP(高研);エラスチンクリア(イクノス);ハイドロライズド エラスチン20% PF、マリン エラスチン PF(I.R.A S.r.l.);ホルス エラスチンTK-F(ホルス)などが入手可能である。
【0023】
本発明の皮膚外用組成物において加水分解エラスチンの含有量は、有効成分含量として、好ましくは0.0001(1×10-4)質量%以上であり、より好ましくは0.001質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上であり;一方、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは3質量%以下であり、特に好ましくは1質量%以下である。ただし、当該含有量は、その効果や製剤の安定性の点から調整することができる。
【0024】
また、本発明の皮膚外用組成物における加水分解エラスチンの有効成分含有量は、ヘパリン類似物質1質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.01質量部以上であり、更に好ましくは0.1質量部以上であり;一方、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下であり、更に好ましくは30質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以下である。
【0025】
[1-2-2. 加水分解シルク]
本発明の皮膚外用組成物は、加水分解シルクを含むことができる。加水分解シルクとは、フィブロインと称される絹タンパク質を加水分解して得られるものである。絹タンパク質は、蚕(かいこ、カイコガ科カイコ(学名:Bombyx mori 英名:Silkworm))の繭(まゆ)から得られる絹繊維又はその主成分のタンパク質(絹タンパク質)である。加水分解シルクは、絹タンパク質を酸、酵素又は他の方法により加水分解して得られるが、加水分解の方法について特に制限はない。
【0026】
加水分解シルクは、不溶性の絹タンパク質を加水分解して水溶性としたものであるが、その平均分子量は目的に応じて調整され、本発明の皮膚外用組成物に含まれる加水分解シルクは、例えば、350~10000の範囲に調整されうる。加水分解シルクのアミノ酸組成は、特に限定されないが、典型的には、グリシン、アラニン、セリン、チロシンなどを主なアミノ酸とすることが多い。
【0027】
絹繊維又は絹タンパク質は、約70%のフィブロインと約30%のセリシンとを含むことが多い(セリシンがフィブロインを覆っている二層構造である)。加水分解シルクは、フィブロインとセリシンとを含む絹繊維又は絹タンパク質を加水分解して得られたものでもよいし、絹繊維又は絹タンパク質からセリシンを除去したフィブロインを、加水分解して得られたものでもよい。
【0028】
加水分解シルクは、化学修飾されたタンパク質であってもよい。例えば、加水分解シルクのC末端をエチル化したもの、加水分解シルクをアシル化したもの、加水分解シルクのN末端をカチオン化したもの、などであってもよい。
【0029】
加水分解シルクは、溶液(水や水溶性エタノールなど)として用意されてもよいし、粉末などの固体形態で用意されてもよい。加水分解シルクの溶液は、窒素(N:14.01)として 0.015~2.5%を含むことが好ましい。窒素の定量は、窒素定量法(第1法)による試験で行えばよい(0.005 mol/L硫酸1ml = 0.1401 mg N)。
【0030】
加水分解シルクは市場から入手可能なものもあり、例えば、Promois SILK-1000F, Promois SILK-1000PD (成和化成、加水分解シルク液)、ゴールデンシルク抽出液BG30 (丸善製薬、加水分解シルク液)、加水分解シルク抽出液 (三省製薬、加水分解シルク液)、CROSILK 10000 (クローダジャパン、加水分解シルク液)、シルクゲンGソルブル, シルクゲンGソルブルKE, シルクゲンGソルブルS 30B (N), シルクゲンGソルブルS-E(N), シルクゲンGソルブルS-E(PF)(N), シルクゲンGソルブルS(N)(一丸ファルコス、加水分解シルク液)、シルベス原液(ベスト工房、加水分解シルク液);Promois S-720F, Promois SERICIN-N, Promois SILK-700SP (成和化成、加水分解シルク末);Promois SILK-A (成和化成、加水分解シルクエチル液(加水分解シルクエチルとは加水分解シルクのC末端をエチルエステル化したもの));Promois EFLS, Promois EFLS-F (成和化成、ラウロイル加水分解シルクナトリウム液(ラウロイル加水分解シルクナトリウムとは、加水分解シルクにラウリン酸を縮合させたもの));Promois SILK-1000Q, Promois S-CAQ (成和化成、加水分解シルクのN末端をカチオン化したもの)、などが含まれる。
【0031】
本発明の皮膚外用組成物において加水分解シルクの含有量は、有効成分含量として、好ましくは0.0001(1×10-4)質量%以上であり、より好ましくは0.0005(5×10-4)質量%以上であり、更に好ましくは0.001(1×10-3)質量%以上であり;一方、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。ただし、当該含有量は、その効果や製剤の安定性の点から調整することができる。
【0032】
また、本発明の皮膚外用組成物における加水分解シルクの有効成分含有量は、ヘパリン類似物質1質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.005質量部以上であり、更に好ましくは0.01質量部以上であり;一方、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下であり、特に好ましくは1質量部以下である。
【0033】
[1-2-3. 加水分解コンキオリン]
本発明の皮膚外用組成物は、加水分解コンキオリンを含むことができる。加水分解コンキオリンは、コンキオリンを加水分解したものである。コンキオリンは、貝殻や真珠類に含まれる硬タンパク質の一種であり、アコヤ貝、イガイ、カラスガイなどに多く含まれているといわれている。加水分解コンキオリンは、好ましくは、アコヤ貝(Pinctada fucata)の真珠層に含まれるタンパク質(コンキオリン)を酸加水分解したものである。
【0034】
加水分解コンキオリンは、不溶性タンパク質であるコンキオリンを水溶性としたものであるが、好ましくは、平均分子量600~2200を主要とする水溶性ポリペプチドである。水溶性ポリペプチドのアミノ酸組成は、例えば、アラニン、グリシン、システイン、ロイシン、アルギニン、リシンなどを主要としており、天然保湿因子(NMF: Natural Moisturizing Factor)のアミノ酸組成に類似していることが好ましい。
【0035】
加水分解コンキオリンの調製は、例えば特許1587730号、特許1560610号、特許1587734号などを参照することができる。例えば、貝殻(好ましくはアコヤ貝の貝殻)などを粉砕して、希塩酸などでカルシウム分を除去し、遠心分離、ろ過デカンテーションなどの固液分離手法によって不溶物であるコンキオリンを得る。得られたコンキオリンに塩酸水溶液を加えて、50~100℃で5時間から5日間加熱して加水分解コンキオリンを得ることができる。
【0036】
また、コンキオリンの酸加水分解は、希硫酸を用いて行ってもよい。希硫酸で加水分解した後に、水酸化バリウムなどで中和してから沈殿物を除去することで、加水分解コンキオリンを得ることができる。
【0037】
加水分解コンキオリンは、通常は溶液(特に水溶液)として用意されることが多いが、粉末などとして用意されてもよい。加水分解コンキオリン溶液の乾燥物は、窒素(N:14.01)として 7.0~18.0%を含むことが好ましい。窒素の定量は、窒素定量法(第1法)による試験で行えばよい(0.005 mol/L硫酸1ml = 0.1401 mg N)。
【0038】
加水分解コンキオリンは市場から入手可能なものもあり:例えば、パールプロテインエキス、プランテージ<リンクル>、真珠たん白抽出液-J、真珠たん白抽出液BG-J、真珠たん白抽出液BG-JC<NP>、真珠たん白抽出液LA-J (丸善製薬、加水分解コンキオリン液); Promois PEARL-PF 、Promois BLACK PEARL-PF (成和化成、加水分解コンキオリン液);Pealami(マツモト交商)などがある。
【0039】
本発明の皮膚外用組成物において加水分解コンキオリンの含有量は、有効成分含量として、好ましくは0.0001(1×10-4)質量%以上であり、より好ましくは0.0005(5×10-4)質量%以上であり、更に好ましくは0.001(1×10-3)質量%以上であり;一方、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下である。ただし、当該含有量は、その効果や製剤の安定性の点から調整することができる。
【0040】
また、本発明の皮膚外用組成物における加水分解コンキオリンの有効成分含有量は、ヘパリン類似物質1質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.005質量部以上であり、更に好ましくは0.01質量部以上であり;一方、100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは50質量部以下であり、更に好ましくは10質量部以下であり、特に好ましくは1質量部以下である。
【0041】
[1-3. 液状担体]
本発明の皮膚外用組成物は、組成物の性状に応じて適切な液状担体を含むことができる。例えば、本発明の皮膚外用組成物が水溶液(例えば、化粧水や美容液)やジェルであれば主な担体を水とすることができるし、乳液であれば水とともに油分(例えば、ワセリンなど)を主な担体とすることができるし、軟膏や油性クリームであれば主な担体を油分とすることができる。
【0042】
本発明の皮膚外用組成物は、液状担体として、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコールを含むことができる。さらに、本発明の皮膚外用組成物は、液状担体として、エタノールやプロパノールなどの低級アルコールを含んでもよい。ただし、本発明の皮膚外用組成物を敏感肌に適用したときの皮膚への刺激を少なくすることが望まれる場合には、皮膚外用組成物が低級アルコール、特にエタノールを含まないか、または実質的に含まないことが好ましい。
【0043】
[1-4. 他の配合成分]
本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質、特定の加水分解タンパク質、及び液状担体に加えて、皮膚外用組成物に求められる効果、あるいは、所望とする製剤の剤形に応じて、他の配合成分を含んでいてもよい。
【0044】
本発明の皮膚外用組成物は、他の有効成分、例えば、アンチエイジング剤、抗炎症剤、アクネケア剤、抗ヒスタミン剤などを含んでいてもよい。アンチエイジング剤の例には、ナイアシンアミド(ニコチン酸アミドともいう)、アルブチン、トラネキサム酸、ビタミン類(例えば、トコフェロール誘導体、ビタミンC誘導体、パルミチン酸レチノール等)、エラグ酸、リノール酸などが含まれ;抗炎症剤の例には、アラントイン、グリチルリチン酸又はその塩(例えば、グリチルリチン酸ジカリウム)、ε-アミノカプロン酸などが含まれ;アクネケア剤の例には、イソプロピルメチルフェノール、サリチル酸などが含まれ;抗ヒスタミン剤の例には、ジフェンヒドラミンまたはその塩などが含まれる。
【0045】
本発明の皮膚外用組成物は、さらに湿潤剤を含んでいてもよい。前述の特定の加水分解タンパク質も湿潤剤として機能し得るが;さらに、1)セラミド又はセラミド類似成分、2)リン脂質ポリマー、3)植物エキス、4)アミノ酸系湿潤剤、5)スクワラン、6)多価アルコール、7)(前述の特定の加水分解タンパク質以外の)タンパク質加水分解物、8)異性化糖などが含まれうる。これらは、皮膚外用組成物に求められる保湿作用などに応じて、その配合量を設定することができる。
【0046】
1)セラミドとはスフィンゴ脂質の一種であり、スフィンゴイドに脂肪酸がアミド結合した化合物である。セラミド類似成分は、グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミドのような糖セラミドであっても、ソフケア(登録商標)セラミドSL-E(花王株式会社製、N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-(ヒドロキシエチルヘキサデカナミド))、CERACUTE(登録商標)-L(日油株式会社、グリセリル-N-(2-メタクリロイルオキシエチル)カルバメート・メタクリル酸ステアリル共重合体)のような合成セラミドであってもよい。本発明の皮膚外用組成物におけるセラミド及び/又はセラミド類似成分の含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0047】
2)リン脂質ポリマーとは、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン重合体であり、生体膜の主要な構成成分であるリン脂質に類似する生体適合性ポリマーである。リン脂質ポリマーの例には、リピジュア (登録商標)(日油株式会社、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体)、NIKKOL (登録商標) レシノール S-10(日光ケミカルズ株式会社、水素添加大豆リン脂質)などが含まれる。本発明の皮膚外用組成物におけるリン脂質ポリマーの含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0048】
3)植物エキスには、アマチャエキス、アルテア根エキス、アルニカ花エキス、アロエエキス、アロエベラエキス、イチョウエキス、ウイキョウエキス、ウワウルシエキス、エンドウエキス、オウゴンエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、カッコンエキス、カミツレエキス、カラスムギエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、キイチゴエキス、キダチアロエエキス、キュウリエキス、クインスシードエキス、クミンエキス、クレマティスエキス、ゲンチアナエキス、ゲンノショウコエキス、ゴボウエキス、コムギ胚芽エキス、コンドルスクリスプスエキス、シモツケソウエキス、シャクヤク根エキス、ジャノヒゲ根エキス、スイカズラ花エキス、スピルリナマキシマエキス、セイヨウオトギリソウエキス、セイヨウカノコソウ根エキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウネズエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、タイムエキス、タチジャコウソウエキス、チャ葉エキス、ツボクサエキス、テルミナリアエキス、トウガラシ果実エキス、トウキンセンカエキス、トマトエキス、トルメンチラエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、バクガエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、ハマメリスエキス、バラエキス、パリエタリアエキス、ビターオレンジ果皮エキス、ヒバマタエキス、ビルベリーエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、フユボダイジュ花エキス、プラセンタエキス、プルーンエキス、ヘイフラワーエキス、ベニバナエキス、ホップエキス、マグワ根皮エキス、マリアアザミエキス、マロニエエキス、メリッサエキス、メリロートエキス、モウコヨモギエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ヤマヨモギエキス、ユーカリエキス、ユリエキス、ヨーロッパシラカバエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、ラミナリアディギタータエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキスなどが含まれる。本発明の皮膚外用組成物は、任意の植物エキスを含むことができるが、例えば、アロエエキス、ツボクサエキス、モモエキス、ヨモギエキスなどが好適に例示される。
【0049】
植物エキスであるアロエエキスとは、ユリ科の薬用植物であるアロエ(ケープアロエ、アロエベラ、キダチアロエなど)の葉肉などからの抽出成分である。アロエエキスには、ウロン酸、脂質、蛋白、アミノ酸、アントラキノン系化合物(アロイン、アロエエモジン等)が含有しているとされている。本発明の皮膚外用組成物におけるアロエエキスの含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0050】
植物エキスであるモモエキスとは、バラ科(Rosaceae)に属するモモ(Prunus persica)の抽出物であればよく:白鳳系、白桃系、黄金桃系のモモの抽出物が挙げられる。モモの抽出物は、モモの葉、果実、核(内果皮)、花、全草等を抽出処理して得ることができ;好ましくはモモの葉、果実、核(内果皮)を、より好ましくはモモの葉を抽出処理して得ることができる。
【0051】
植物エキスであるヨモギエキスとは、ヨモギ属植物の抽出物におけるヨモギ属植物は、キク科 (Asteraceae) ヨモギ属(Artemisia) の植物の花,茎,葉,根の各部位及び全草を抽出処理することで得られる抽出物である。
【0052】
植物エキスであるツボクサエキスとは、セリ科の植物であるツボクサ(別名:積雪草)の一部または全草から抽出された生薬エキスである。ツボクサエキス抽出物は、アジアチコサイド、マデカシコサイドなどのトリテルペン誘導体の成分を含みうる。
【0053】
4)アミノ酸系湿潤剤とは、グルタミン酸などのアミノ酸から導かれる湿潤剤である。アミノ酸系湿潤剤としては、ピロリドンカルボン酸又はその塩類(例えば、ナトリウム塩)、ピロリジンカルボン酸又はその塩類、アシルピロリジンカルボン酸又はその塩類、アシル塩基性アミノ酸アルキルエステル又はその塩類などが挙げられる。アミノ酸系湿潤剤のアミノ酸は、ラセミ体であってもよいし、光学活性体であってもよい。アミノ酸系湿潤剤は、AJIDEW (登録商標)(味の素株式会社)、PRODEW (登録商標)(味の素株式会社)、アクアデュウ(登録商標) (味の素株式会社)、CAE(登録商標)(味の素ヘルシーサプライ社)などとして市場から入手可能である。本発明の皮膚外用組成物におけるアミノ酸系湿潤剤の含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0054】
5)スクワランとは、アイザメなど深海に生息するサメ類の肝油から得られる炭化水素であるスクワレンを還元(水素添加)させて得られる飽和炭化水素であり、無色液体である。本発明の皮膚外用組成物におけるアミノ酸系湿潤剤の含有量は、目的に応じて設定すればよく、特に限定されない。
【0055】
湿潤剤としての6)多価アルコールの例には、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが含まれる。
【0056】
7)(特定の加水分解タンパク質以外の)タンパク質加水分解物とは、特に限定されないが、加水分解カゼイン、加水分解ケラチン、加水分解コムギ、加水分解コラーゲン、加水分解ゼラチン、加水分解ダイズタンパク、加水分解トウモロコシタンパク、加水分解トサカ、加水分解バレイショタンパク、加水分解フィブロネクチンなどのうち、中性アミノ酸を主要成分としない加水分解タンパク質が含まれる。
【0057】
本発明の皮膚外用組成物は、粘稠剤を含んでいてもよい。粘稠剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム等の水溶性高分子;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース類等が挙げられる。これらの粘稠剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
本発明の皮膚外用組成物は、組成物のpHを所望の値に調整するためのpH調整剤を含んでいてもよい。pH調整剤の例には、無機酸(リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸、硫酸、硝酸、塩酸など)及びその塩;有機酸{モノカルボン酸(例えば、酢酸、ソルビン酸)、ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸)、オキシカルボン酸[例えば、ヒドロキシモノカルボン酸(例えば、グリコール酸、乳酸、グルコン酸)、ヒドロキシポリカルボン酸(例えば、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等)等]}及びその塩;無機塩基(金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等)等);有機塩基(アミン類[例えば、アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルエタノールアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等)等]、アミノ酸(例えば、グリシン等)等)が挙げられる。本発明の皮膚外用組成物は、複数種のpH調整剤を組み合わせて含んでいてもよい。
【0059】
本発明の皮膚外用組成物は、防腐剤を含んでいてもよい。防腐剤の例には、いわゆる「パラベン」と称されるパラオキシ安息香酸エステルが含まれる。具体的には、メチルパラベン(パラオキシ安息香酸メチル)、エチルパラベン(パラオキシ安息香酸エチル)、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン等、及びそれらの塩が防腐剤として例示される。本発明の皮膚外用組成物は、複数種のパラベンを組み合わせて含んでいてもよく、例えば、メチルパラベンと、エチルパラベンまたはプロピルパラベンとを組み合わせてもよい。本発明の皮膚外用組成物にパラベンが含まれる場合には、組成物に対するパラベンの含有量は、1w/v%以下、好ましくは 0.5 w/v%以下、さらに好ましくは0.25w/v%以下でありうる。
【0060】
本発明の皮膚外用組成物は、剤形が乳液である場合には乳化剤を含む。乳化剤は、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性界面活性剤のいずれかでありうる。乳化剤の例には、モノステアリン酸グリセリン、ステアリン酸ポリオキシル、ジステアリン酸グリコール、レシチン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ステアレス-2、ヤシ油脂肪酸PEG-7グリセリルなどが含まれるが、特に限定されない。
【0061】
本発明の皮膚外用組成物は、軟化剤、着色剤や香料などを含有してもよい。
【0062】
[1-5. 皮膚外用組成物の剤形]
本発明の皮膚外用組成物は液状製剤であることが好ましいが、水性製剤、油性製剤、エマルション製剤(水中油型エマルション、油中水型エマルションのいずれもよい)、サスペンション製剤、エアゾール製剤、ゲル製剤など、剤形は特に限定されない。また、本発明の皮膚外用組成物は、化粧品の剤形として、固型(ソリッド)、プレスト、オイル(油)、液状(リキッド)、ジェル、練り(バーム)、マッド、クリーム、乳液、ローション、フォーム(バブル)、フィルム、パウダー(粉)、水、ペンシル、スプレー(ミスト)、スティック、シート等であり得る。
【0063】
本発明の皮膚外用組成物のpHは5~7の範囲に調整されていることが好ましい。皮膚外用組成物の皮膚への浸透性を高めやすいからである。
【0064】
本発明の皮膚外用組成物の粘度は、製剤の剤形、及び組成物を皮膚に適用するときに求められる使用感に応じて、適宜調整されうる。例えば、組成物の粘度が低い方が、皮膚に適用されたときに濡れ広がりやすさを有しやすく;組成物の粘度が高い方が、皮膚に適用されたときに馴染みやすさを有しやすい。例えば目安として、本発明の皮膚外用組成物が水溶液であれば粘度400~1300mPa・sの範囲にあり、乳液であれば粘度2000~12000mPa・sの範囲にあり得る。粘度は、レオメーター条件:25℃、0.33rpm 90秒後の粘度として測定される。
【0065】
本発明の皮膚外用組成物は、容器に充填されているが、例えば、遮光容器に充填されている。また、本発明の皮膚外用組成物はポンプ又はスプレータイプの容器に充填されることで、皮膚への適用を簡便にすることができる。
【0066】
[2. 皮膚外用組成物の用途]
本発明の皮膚外用組成物は、皮膚に適用、例えば、皮膚に塗布されることで使用される。例えば、皮膚外用組成物を直接皮膚にすりこんだり、皮膚外用組成物を染み込ませたガーゼなどを皮膚に貼ったりすることができる。本発明の皮膚外用組成物を適用する患部は、皮膚である限り特に限定されず、例えば、特に保湿が求められる患部、例えば、顔、粉ふきがあるひざやかかと、背中、などが例示されるが、特に限定されない。皮膚に適用する頻度は、特に限定されないが、1日1~数回程度でありうる。
【0067】
本発明の皮膚外用組成物は、皮膚に適用されることで、保湿作用、抗炎症作用、血行促進作用などを発揮することが期待され;それにより、肌荒れやあれ性の改善、あせも・しもやけ・ひび・あかぎれ・にきびを防いだり、肌を整えて皮膚をすこやかに保つ、皮膚にうるおいを与える、皮膚を保護する、皮膚の乾燥を防ぐ、などの効果が得られうる。
【0068】
本発明の皮膚外用組成物は、特に、皮膚への保湿作用が高いため、皮膚の保湿剤として用いられることが好ましい。本発明の皮膚外用組成物は、ヘパリン類似物質と特定の加水分解タンパク質(加水分解エラスチン、加水分解シルク、加水分解コンキオリンなど)を含み、即効的な(例えば、皮膚に適用されてから1時間以内に)保湿作用も、中長期的な(例えば、皮膚に適用されてから1日後に)保湿作用も増強されうる。特に、即効的な保湿作用の増強は後述の実施例で示されているが;さらに、これら特定の加水分解タンパク質は、インボルクリン発現促進、トランスグルタミナーゼ-1発現促進、エラスチン産生促進などの効果も知られており、それらの効果が、ヘパリン類似物質の保湿作用を増強すると考えられる。
【0069】
[3. 皮膚外用組成物の製造方法]
本発明の皮膚外用組成物の製法は、特に限定されず、剤形に応じて常法にしたがって製造することができる。例えば、所定量の各配合成分(少なくとも、ヘパリン類似物質及び特定の加水分解タンパク質を含む)を、液状担体に順次、添加・混合することで得ることができる。各剤形の組成物の製造方法は、例えば、「エマルションの調製技術事例集(出版社:技術情報協会、著者:水野朝子, 寺田千春 企画編集)」に記載がされており、参照することができる。
【実施例0070】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、これら実施例によって本発明は限定して解釈されない。
【0071】
[実施例1]及び[実施例2]の検体:精製水に、表1及び表2に示す通りの配合量のヘパリン類似物質(局外規収載品)と加水分解エラスチン溶液(加水分解エラスチン10% MP(株式会社 高研), 10%水溶液)とを添加して、常温で溶解させた。
[比較例1]の検体:精製水に、表1~6に示す通りの配合量のヘパリン類似物質(局外規収載品)を添加して常温で溶解させた。
[比較例2]及び[比較例3]の検体:精製水に、表1及び2に示す通りの配合量の加水分解エラスチン水溶液(加水分解エラスチン10% MP(株式会社 高研), 10%水溶液)を添加して常温で溶解させた。
【0072】
[実施例3]及び[実施例4]の検体:精製水に、表3及び表4に示す通りの配合量のヘパリン類似物質(局外規収載品)と加水分解シルク溶液(ゴールデンシルク抽出液BG30(丸善製薬株式会社), 1.00 %溶液)とを添加して常温で溶解させた。
[比較例4]及び[比較例5]の検体:精製水に、表3及び表4に示す通りの配合量の加水分解シルク溶液(ゴールデンシルク抽出液BG30(丸善製薬株式会社), 1.00 %溶液)を添加して常温で溶解させた。なお、ゴールデンシルク抽出液BG30(丸善製薬株式会社)の組成は、加水分解シルク1.00質量%、1,3-ブチレングリコール30.00質量%、水69.00質量%である。
【0073】
[実施例5]及び[実施例6]の検体:精製水に、表5及び表6に示す通りの配合量のヘパリン類似物質(局外規収載品)と加水分解コンキオリン溶液(真珠たん白抽出液BG-JC〈NP〉(丸善製薬株式会社), 1.00 %溶液)とを添加して常温で溶解させた。
[比較例6]及び[比較例7]の検体:精製水に、表5及び表6に示す通りの配合量の加水分解コンキオリン溶液(真珠たん白抽出液BG-JC〈NP〉(丸善製薬株式会社), 1.00 %溶液)を添加して常温で溶解させた。なお、真珠たん白抽出液BG-JC〈NP〉(丸善製薬株式会社)の組成は、加水分解コンキオリン1.00質量%、1,3-ブチレングリコール50.00質量%、水49.00質量%である。
【0074】
各実施例及び各比較例で調製した検体、及び水(対照検体)について、被験者(ヒト2名)の皮膚における保湿作用を確認した。まず、各検体の塗布前に、被験者の皮膚塗布部位(前腕内側)の皮膚水分量について5回の測定を行い、最大値及び最小値を除いた3回の水分上昇率の平均を塗布前水分量Xとした。そして、当該部位の直径約0.8 cmの円領域に、各検体5μLを塗布した。塗布後1時間(試験例1~4)または30分間(試験例5及び6)経過した時点で、皮膚塗布部位の皮膚水分量について5回の測定を行い、最大値及び最小値を除いた3回の水分上昇率の平均を塗布後水分量Yとした。
【0075】
各検体について、「(塗布後水分量Y-塗布前水分量X)/塗布前水分量X×100」を算出して水分上昇率Z(%)とした。各検体での水分上昇率Z(%)から、対照検体である水での水分上昇率(%)を差し引いた値を、各表の「皮膚水分量の上昇率」として示した。
【0076】
皮膚水分量の測定は、皮表角層水分量測定装置SKICON(登録商標)-200EX (株式会社ヤヨイ)を用いて行った。本装置は、高周波を用いた交流電流に対する伝導度(conductanceμS)を測定することで、「表層」の角層の水分量を測定することができる。高周波電流は物の表面を流れやすく、伝導度と水分含有量の間には密接な相関関係があるからである。このように、本実施例では、「表層」の角層の水分量を測定することで、皮膚の柔らかさや滑らかさを適切に評価している。
【0077】
【0078】
【0079】
表1に示される試験例1の結果の通り、ヘパリン類似物質を0.1質量%含有する比較例1の検体では13%の水分上昇率、加水分解エラスチン10%MPを有効成分含量として0.01質量%含む比較例2の検体では8%の水分上昇率であったのに対して、実施例1の検体では31%の水分上昇率が認められた。同様に、表2に示される試験例2の結果の通り、ヘパリン類似物質を0.1質量%含有する比較例1の検体では18%の水分上昇率、加水分解エラスチン10%MPを有効成分含量として1質量%含む比較例3の検体では26%の水分上昇率であったのに対して、実施例2の検体では55%の水分上昇率が認められた。これらの結果は、ヘパリン類似物質と加水分解エラスチンとが相乗作用をすることで、検体の保湿作用を増強していることを示す。
【0080】
【0081】
【0082】
表3に示される試験例3の結果の通り、ヘパリン類似物質を0.1質量%含有する比較例1の検体では13%の水分上昇率、ゴールデンシルク抽出液BG30を有効成分含量として0.001質量%含む比較例4の検体では8%の水分上昇率であったのに対して、実施例3の検体では37%の水分上昇率が認められた。同様に、表4に示される試験例4の結果の通り、ヘパリン類似物質を0.1質量%含有する比較例1の検体では18%の水分上昇率、ゴールデンシルク抽出液BG30を有効成分含量として0.1質量%含む比較例5の検体では29%の水分上昇率であったのに対して、実施例4の検体では57%の水分上昇率が認められた。これらの結果は、ヘパリン類似物質と加水分解シルクとが相乗作用をすることで、検体の保湿作用を増強していることを示す。
【0083】
【0084】
【0085】
表5に示される試験例5の結果の通り、ヘパリン類似物質を0.1質量%含有する比較例1の検体では11%の水分上昇率、真珠たん白抽出液BG-JC<NP>を有効成分含量として0.001質量%含む比較例6の検体では16%の水分上昇率であったのに対して、実施例5の検体では57%の水分上昇率が認められた。また、表6に示される試験例6の結果の通り、ヘパリン類似物質を0.1質量%含有する比較例1の検体では12%の水分上昇率、真珠たん白抽出液BG-JC<NP>を有効成分含量として0.1質量%含む比較例7の検体では8%の水分上昇率であったのに対して、実施例6の検体では42%の水分上昇率が認められた。これらの結果は、ヘパリン類似物質と加水分解コンキオリンとが相乗作用をすることで、検体の保湿作用を増強していることを示す。
【0086】
なお、試験例1~6において、比較例1の検体での水分上昇率が若干異なるのは、被験者の個人差によるものである。
【0087】
ヘパリン類似物質とこれらの加水分解タンパク質との相乗作用のメカニズムは定かではない。ただし、ヘパリン類似物質の保湿メカニズムとして推定される角層細胞間脂質のラメラ構造の回復促進と2次結合水量の増加作用とは別途の保湿メカニズムを、これらの加水分解タンパク質が有しており、作用メカニズムの違いによる保湿効力の相乗効果があると考えられた。
【0088】
以下に、本発明の皮膚外用組成物を化粧水として調製する例を示す。
【0089】
本発明によれば、保湿作用が増強された皮膚外用組成物を提供することができるため、皮膚にうるおいを与えたり、皮膚を保護したり、皮膚の乾燥を防いだりするための化粧料
等として本発明を利用することができる。