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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066784
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/46 20060101AFI20240509BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20240509BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01Q1/46
H01Q1/24 Z
H04M1/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176474
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 智則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 泰亮
(72)【発明者】
【氏名】篠島 貴裕
【テーマコード(参考)】
5J046
5J047
5K023
【Fターム(参考)】
5J046AA02
5J046TA05
5J047AA02
5J047FD02
5K023AA07
5K023BB28
5K023LL01
5K023LL05
5K023LL06
5K023RR08
(57)【要約】
【課題】アンテナに接続された同軸ケーブルに対する共振の影響を簡易な構成で抑制する。
【解決手段】本電子機器は、導体で形成され、少なくとも一部の内側面に溝が形成された筐体と、700MHz以上の周波数の電波を送信または受信するアンテナと、上記アンテナによって送受信される信号を処理する処理回路と、上記アンテナと上記処理回路とを接続する同軸ケーブルと、を備える。そして、上記同軸ケーブルは、上記同軸ケーブルの長さの内の85mm以上を上記溝の内部に配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体で形成され、少なくとも一部の内側面に溝が形成された筐体と、
700MHz以上の周波数の電波を送信または受信するアンテナと、
前記アンテナによって送受信される信号を処理する処理回路と、
前記アンテナと前記処理回路とを接続する同軸ケーブルと、を備え、
前記同軸ケーブルは、前記同軸ケーブルの長さの内の85mm以上を前記溝の内部に配置される、
電子機器。
【請求項2】
前記溝の高さは、前記同軸ケーブルの直径の1.5倍以上である、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記同軸ケーブルの保護被膜の厚さは、0.1mm以下である、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記溝の開口は、導体で形成された封止部材によって封止される、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記同軸ケーブルは、第1の同軸ケーブルと第2の同軸ケーブルとを含み、
前記第1の同軸ケーブルと前記第2の同軸ケーブルとは、前記溝の内部において互いに接触する、
請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記溝の内面に前記同軸ケーブルを押し当てる弾性部材が、前記溝の内部に配置される、
請求項1から5のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項7】
前記弾性部材は、前記溝の内部に1または複数配置され、
前記1または複数の前記弾性部材の前記溝の長手方向に沿った長さの合計は、20mm以上である、
請求項6に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術が広く利用されており、アンテナを実装した電子機器が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-280817号公報
【特許文献2】特開2002-297262号公報
【特許文献3】特開2009-141433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無線通信では、より高い周波数の電波が通信に用いられることでより大容量でより高速な通信が可能となる。その一方で、通信に用いる電波の周波数が高くなる程、共振や反射などの影響を受けやすくなる。例えば、アンテナに接続される同軸ケーブルが共振の影響を受けることで、無線通信の伝送速度が低下することがある。そこで、同軸ケーブルの一部の保護被膜をはがし、当該はがした領域をグランド部材に接続して接地することも行われるが、高い加工精度が要求されるとともに、電子機器の構造も複雑化していた。
【0005】
開示の技術の1つの側面は、アンテナに接続された同軸ケーブルに対する共振の影響を簡易な構成で抑制できる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の1つの側面は、次のような電子機器によって例示される。本電子機器は、導体で形成され、少なくとも一部の内側面に溝が形成された筐体と、700MHz以上の周波数の電波を送信または受信するアンテナと、上記アンテナによって送受信される信号を処理する処理回路と、上記アンテナと上記処理回路とを接続する同軸ケーブルと、を備える。そして、上記同軸ケーブルは、上記同軸ケーブルの長さの内の85mm以上を上記溝の内部に配置される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、アンテナに接続された同軸ケーブルに対する共振の影響を簡易な構成で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るスマートフォンの外観の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るスマートフォンのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係るスマートフォンの第1の分解斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るスマートフォンの第2の分解斜視図である。
図5図5は、実施形態に係るスマートフォンの第3の分解斜視図である。
図6図6は、実施形態において、封止部材によって封止された溝の様子を例示する第1の図である。
図7図7は、実施形態において、封止部材によって封止された溝の様子を例示する第2の図である。
図8図8は、実施形態において、封止部材によって封止された溝の様子を例示する第3の図である。
図9図9は、実施形態における同軸ケーブルのS21(通過損失)を例示する図である。
図10図10は、同軸ケーブルを溝内に配置する長さと、溝と同軸ケーブルとの間に生じる容量結合の結合容量との関係を例示する図である。
図11図11は、比較例に係るスマートフォンの分解斜視図を例示する図である。
図12図12は、比較例におけるバンキンホルダへの同軸ケーブルの取り付けを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態>
以下、図面を参照して実施形態についてさらに説明する。図1は、実施形態に係るスマートフォン100の外観の一例を示す図である。図1は、スマートフォン100の一方から見た外観(前面側の外観とする)と、他方から見た外観(背面側の外観とする)を例示する。図1では、矢印によって、スマートフォン100の前面側と背面側が入れ替えて配置され、例示される。スマートフォン100は、板状の筐体110を有する。したがって、図1には描かれていないが、筐体110の前面と背面との間の距離(厚み)は、前面または背面の外形寸法と比較して短い。以下、本明細書において、筐体110の縦方向をY方向、Y方向と直交する筐体110の幅方向をX方向、筐体110の厚さ方向をZ方向とも称する。また、+Z方向を上方向、-Z方向を下方向とも称する。
【0010】
スマートフォン100は、可搬型の電子機器である。筐体110の前面にはスピーカー111、マイクロフォン112、ディスプレイ113及びインカメラ114が設けられる。スピーカー111及びマイクロフォン112は、ディスプレイ113の背後に設けられる。図1では、正面から目視されないスピーカー111及びマイクロフォン112は、点線で図示される。筐体110の背面にはアウトカメラ121が設けられる。インカメラ114は、例えば、スマートフォン100を操作するユーザーの動画像を撮影する。アウトカメラ121は、例えば、ユーザーがアウトカメラ121を向けた被写体の動画像を撮影する。筐体110は、「筐体」の一例である。
【0011】
筐体110は、スマートフォン100の側面を覆うカバーである。筐体110は、Z方向視において長方形の枠状に形成され、Y方向に沿った長辺110Aを有する。長方形に形成された筐体110の長辺はY方向と一致し、短辺はX方向と一致する。筐体110は、金属等の導体で形成される。筐体110の外側は、例えば、樹脂等で覆われてもよい。筐体110の背面は背面カバー120によって覆われる。背面カバー120は、例えば、Z方向視において筐体110の外形と略一致する板状の部材である。背面カバー120は、例えば、金属や樹脂等で形成される。
【0012】
図2は、実施形態に係るスマートフォン100のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に例示される各ハードウェアは、筐体110内に収容される。スマートフォン100は、CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、信号処理回路104、アンテナ105、アンテナ106、スピーカー111、マイクロフォン112、ディスプレイ113、インカメラ114及びアウトカメラ121を備える。CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、信号処理回路104、スピーカー111、マイクロフォン112、ディスプレイ113、インカメラ114及びアウトカメラ121は、接続バスB1によって接続される。信号処理回路104とアンテナ105とは、同軸ケーブルC1によって接続される。また、信号処理回路104とアンテナ106とは、同軸ケーブルC2によ
って接続される。同軸ケーブルC1、C2は、「同軸ケーブル」の一例である。同軸ケーブルC1は、「第1の同軸ケーブル」の一例である。同軸ケーブルC2は、「第2の同軸ケーブル」の一例である。
【0013】
CPU101は、マイクロプロセッサーユニット(MPU)、プロセッサーとも呼ばれる。CPU101は、単一のプロセッサーに限定される訳ではなく、マルチプロセッサー構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一のCPU101がマルチコア構成を有していてもよい。CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路によって実行されてもよい。また、CPU101の少なくとも一部にアナログ回路が含まれてもよい。集積回路は、Large Scale
Integrated circuit(LSI)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)を含む。PLDは、例えば、Field-Programmable Gate Array(FPGA)を含む。CPU101は、プロセッサーと集積回路との組み合わせであってもよい。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラーユニット(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれる。スマートフォン100では、CPU101が補助記憶部103に記憶されたプログラムを主記憶部102の作業領域に展開し、プログラムの実行を通じて周辺装置の制御を行う。これにより、スマートフォン100は、所定の目的に合致した処理を実行することができる。主記憶部102及び補助記憶部103は、スマートフォン100が読み取り可能な記録媒体である。
【0014】
主記憶部102は、CPU101から直接アクセスされる記憶部として例示される。主記憶部102は、Random Access Memory(RAM)及びRead Only Memory(ROM)を含む。
【0015】
補助記憶部103は、各種のプログラム及び各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部103は外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶部103には、オペレーティングシステム(Operating System、OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。外部装置等には、例えば、コンピューターネットワーク等で接続された、他の情報処理装置及び外部記憶装置が含まれる。
【0016】
補助記憶部103は、例えば、Erasable Programmable ROM(EPROM)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)等である。
【0017】
信号処理回路104は、第4世代移動通信システム(4G)や第5世代移動通信システム(5G)による無線通信をアンテナ105、106を介して行う。信号処理回路104によって変調された信号は、例えば、アンテナ105を介して電波として出力される。また、アンテナ106によって受信された電波は、例えば、信号処理回路104によって復調されてCPU101に出力される。アンテナ105、106は、「アンテナ」の一例である。信号処理回路104は、「処理回路」の一例である。
【0018】
スピーカー111は、音を出力する音源である。スピーカー111は、スマートフォン100を用いた通話において、通話相手の音声等の音を出力する。マイクロフォン112は、通話や動画の音取得に用いられるマイクロフォンである。
【0019】
ディスプレイ113は、CPU101で処理されるデータや主記憶部102に記憶されるデータを表示する。ディスプレイ113は、例えば、Liquid Crystal
Display(LCD)、Plasma Display Panel(PDP)、無機Electroluminescence(EL)パネル、有機ELパネルである。ディスプレイ113には、例えば、ユーザーの指等によるタッチ操作を検知するタッチパネルが重畳して設けられてもよい。スマートフォン100は、ディスプレイ113にタッチパネルが重畳して設けられることで、直感的な操作環境をユーザーに提供することができる。
【0020】
インカメラ114及びアウトカメラ121は、Charge Coupled Device(CCD)イメージセンサーやComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)イメージセンサーを有するデジタルカメラである。インカメラ114及びアウトカメラ121は、静止画像及び動画像を撮影可能である。
【0021】
図3から図5は、実施形態に係るスマートフォン100の分解斜視図である。図3では、筐体110の背面が開けられた状態が例示される。図3では、筐体110内に配置される同軸ケーブルC1、C2、溝21、弾性部材31、32及び封止部材41が例示される。図4では、同軸ケーブルC1、C2、弾性部材31、32及び封止部材41の溝21への組み込み方向が例示される。図5では、同軸ケーブルC1、C2及び弾性部材31、32が溝21に収容され、溝21が封止部材41によって封止された状態が例示される。
【0022】
筐体110の長辺110Aの内側面110Bには、溝21が形成される。溝21は、長辺110Aの長手方向に沿って85mm以上の長さに渡って形成される。溝21には、同軸ケーブルC1、C2及び弾性部材31、32が収容される。同軸ケーブルC1、C2の長さのうち85mm以上の範囲が溝21に収容される。弾性部材31、32は、例えば、ゴム等の弾性部材によって形成される。弾性部材31のY方向(溝21の長手方向)に沿った長さ及び弾性部材32のY方向の長さの合計は、例えば、20mm以上である。弾性部材31、32は、「弾性部材」の一例である。
【0023】
封止部材41は、例えば、導体で形成される片面テープ(シール)である。封止部材41は、接着面を溝21に向けた状態で、溝21上に貼り付けられる。溝21は、同軸ケーブルC1、C2及び弾性部材31、32が収容された状態で、封止部材41によって封止される。封止部材41は、「封止部材」の一例である。
【0024】
図6から図8は、実施形態において、封止部材41によって封止された溝21の様子を例示する図である。図6及び図7は、溝21をX方向で切断した断面図を例示する。図7は、図6の溝21付近を拡大した図である。また、図8は、溝21をY方向から見た状態を例示する。
【0025】
同軸ケーブルC1、C2は、X方向に一列に並んで溝21内に配置される。弾性部材31は、接着面31Aが床面21Bに接着された状態で、溝21内に配置される。溝21内に配置された同軸ケーブルC1、C2は、弾性部材31によって下方から支持される。同軸ケーブルC1、C2は、弾性部材31の弾性力によって下方から天井21Aに押し当てられることが好ましい。図6及び図7では、同軸ケーブルC1は溝21の奥壁21Cから離れているが、同軸ケーブルC1は奥壁21Cと接触してもよい。また、図8では、同軸ケーブルC1、C2は互いに離れているが、同軸ケーブルC1、C2は互いに接触してもよい。
【0026】
ここで、溝21及び同軸ケーブルC1、C2の寸法及び同軸ケーブルC1、C2の誘電率の一例について説明する。同軸ケーブルC1、C2は、図8に例示するように、内部導体1、内部誘電体2、外部導体3及び保護被膜4を有する。同軸ケーブルC1、C2では
、信号を伝送する内部導体1がY方向視における中心に配置され、その周囲を囲むように内部誘電体2が配置される。さらに、その内部誘電体2の周囲を外部導体3が囲むように配置される。同軸ケーブルC1、C2において、外部導体3は、接地電位(グランド)となる。また、同軸ケーブルC1、C2の最も外側には、外部導体3を覆うように誘電体で形成された保護被膜4が設けられる。
【0027】
ここで、保護被膜4の比誘電率は、例えば、3.0である。また、内部導体1の直径は、例えば、0.15mmである。内部誘電体2の直径は、例えば、0.44mmである。外部導体3の直径は、例えば、0.54mmである。保護被膜4の直径は、例えば、0.64mmである。また、保護被膜4の厚さは、例えば、0.1mm以下である。また、溝21の開口の高さH1は、例えば、同軸ケーブルC1、C2の直径の1.5倍から2倍程度に形成される。高さH1は、例えば、1.6mmである。溝21の深さD1は、溝21への収容対象となる同軸ケーブルC1、C2を収容可能な深さであればよい。溝21の深さD1は、例えば、2.2mmである。
【0028】
図9は、実施形態における同軸ケーブルC1、C2のS21(通過損失)を例示する図である。図9の縦軸は通過損失(dB)を例示し、横軸は周波数(GHz)を例示する。所望の周波数を700MHz以上と仮定すると、700MHz以上の周波数における通過損失を0.5dB以下に抑制するには、同軸ケーブルC1、C2と天井21A、床面21B、奥壁21C及び封止部材41のいずれかとの容量結合が7pF以上であることが好ましいことが理解できる。
【0029】
図10は、同軸ケーブルC1、C2を溝21内に配置する長さと、溝21と同軸ケーブルC1、C2との間に生じる容量結合の結合容量との関係を例示する図である。図10の縦軸は結合容量(pF)を例示し、横軸は同軸ケーブルC1、C2を溝21内に配置する長さ(mm)を例示する。図10を参照すると、7pF以上の結合容量を得るには、同軸ケーブルC1、C2を溝21内に84mm以上配置すればよいことが理解できる。同軸ケーブルC1、C2を溝21内に配置する長さは、85mm以上であればより好ましいと考えられる。
【0030】
<比較例>
以上では、同軸ケーブルC1、C2を筐体110に形成した溝21内に配置することで同軸ケーブルC1、C2を共振から保護する実施形態について説明した。ここで、比較例について説明する。図11は、比較例に係るスマートフォン500の分解斜視図を例示する。スマートフォン500では、筐体510に溝21は設けられない。スマートフォン500では、図12にも例示するように、同軸ケーブルC1、C2をバンキンホルダ551のクリップ部552に嵌合する。
【0031】
さらに、グランド部が設けられたフレキシブル基板554をバンキンホルダ551に貼り付けるとともに、クリップ部552に嵌合した同軸ケーブルC1、C2とフレキシブル基板554のグランド部とを銅箔テープ553によって接続する。さらに、スマートフォン500では、クリップ部552に同軸ケーブルC1、C2を嵌合したバンキンホルダ551を筐体110の内壁に接触させることで、同軸ケーブルC1、C2が接地される。
【0032】
<実施形態と比較例との比較>
上記の通り、スマートフォン500では、同軸ケーブルC1、C2の接地において、バンキンホルダ551のような追加の部品が用いられるとともに、その構造も複雑化しやすい。そのため、比較例では、同軸ケーブルC1、C2の接地に高い加工精度が要求される。一方、本実施形態に係るスマートフォン100では、筐体110の内側面に溝21を形成し、溝21内に同軸ケーブルC1、C2を配置するものであることから、比較例よりも
容易な加工となる。また、本実施形態ではバンキンホルダ551のような追加の部品を省略できるため、スマートフォン100の小型化が容易となる。すなわち、本実施形態によれば、比較例よりも簡易な構成で同軸ケーブルC1、C2を接地させることができる。
【0033】
<実施形態の作用効果>
本実施形態では、同軸ケーブルC1、C2は、長さ85mm以上に渡って溝21内に収容される。図9及び図10を参照して説明したように、このように同軸ケーブルC1、C2が溝21内に収容されることで、700MHz以上の周波数の信号を同軸ケーブルC1、C2で伝送する際における同軸ケーブルC1、C2と溝21の内側面との容量結合を、同軸ケーブルC1、C2を共振から保護する上で好ましいものとすることができる。そのため、本実施形態によれば、アンテナ105、106に接続された同軸ケーブルC1、C2に対する共振の影響を簡易な構成で抑制できる。
【0034】
本実施形態では、溝21の開口の高さH1は、例えば、同軸ケーブルC1、C2の直径の1.5倍から2倍程度に形成される。溝21の開口の高さH1がこのように形成されることで、同軸ケーブルC1、C2を溝21内に収容することが、より容易となる。
【0035】
本実施形態では、溝21の開口は封止部材41によって封止される。そのため、同軸ケーブルC1は、四方を天井21A、床面21B、奥壁21C及び封止部材41といった導体に囲まれるようになる。そのため、同軸ケーブルC1、C2が溝21内で移動した場合であっても、天井21A、床面21B、奥壁21C及び封止部材41の少なくともいずれかの導体に近接することになる。そのため、同軸ケーブルC1、C2と、天井21A、床面21B、奥壁21C及び封止部材41の少なくともいずれかとの容量結合の確実性が向上する。
【0036】
本実施形態では、弾性部材31、32によって同軸ケーブルC1、C2は、溝21の天井21Aに押し当てられる。溝21の天井21Aに同軸ケーブルC1、C2が押し当てられることで、同軸ケーブルC1、C2と溝21の内側面とを、より強く容量結合させることができる。
【0037】
そして、溝21の長手方向に沿った弾性部材31の長さと弾性部材32の長さの合計が20mm以上であることから、同軸ケーブルC1、C2はより安定して溝21の天井21Aに押し当てられる。
【0038】
<変形例>
以上説明した実施形態では、弾性部材31、32は同軸ケーブルC1、C2の下方に配置されたが、弾性部材31、32は、同軸ケーブルC1、C2の下方以外の場所に配置されてもよい。弾性部材31、32は、例えば、同軸ケーブルC1、C2の上方に配置されて、同軸ケーブルC1、C2を溝21の床面21Bに押し当ててもよい。
【0039】
実施形態では、図8を参照して説明したように、同軸ケーブルC1、C2は互いに離れているが、同軸ケーブルC1、C2は互いに接触してもよい。同軸ケーブルC1、C2が互いに接触することで、同軸ケーブルC1の外部導体3と同軸ケーブルC2の外部導体3とが容量結合し、ひいては、同軸ケーブルC1、C2に対する共振の影響が、より抑制される。
【0040】
ここで、溝21内に配置する弾性部材は、弾性部材31、32の2つに限定されず、弾性部材31の一つであってもよいし、3つ以上であってもよい。例えば、溝21内に弾性部材31が配置される一方で弾性部材32が配置されない場合には、溝21の長手方向に沿った弾性部材31の長さを20mm以上とすればよい。
【0041】
以上では、スマートフォン100を用いて実施形態に係る技術について説明されたが、実施形態に係る技術はスマートフォン100以外の電子機器に適用されてもよい。スマートフォン100以外の電子機器としては、例えば、タブレット型端末、ノートブック型パーソナルコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、フィーチャーフォン等を挙げることができる。
【0042】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0043】
1・・内部導体
2・・内部誘電体
3・・外部導体
4・・保護被膜
21・・溝
21A・・天井
21B・・床面
21C・・奥壁
31・・弾性部材
31A・・接着面
32・・弾性部材
41・・封止部材
100・・スマートフォン
101・・CPU
102・・主記憶部
103・・補助記憶部
104・・信号処理回路
105・・アンテナ
106・・アンテナ
110・・筐体
110A・・長辺
110B・・内側面
111・・スピーカー
112・・マイクロフォン
113・・ディスプレイ
114・・インカメラ
120・・背面カバー
121・・アウトカメラ
500・・スマートフォン
510・・筐体
551・・バンキンホルダ
552・・クリップ部
553・・銅箔テープ
554・・フレキシブル基板
B1・・接続バス
C1・・同軸ケーブル
C2・・同軸ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12