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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066785
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】脳波計測用アダプタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/386 20210101AFI20240509BHJP
【FI】
A61B5/386
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176475
(22)【出願日】2022-11-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、高度通信・放送研究開発委託研究/研究開発課題名「国際共同研究プログラムに基づく日米連携による脳情報通信研究」、副題「月面ジャグリング課題を用いたスキル獲得の脳内メカニズムの解明」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304000836
【氏名又は名称】学校法人 名古屋電気学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】香川 高弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙太
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA03
4C127CC01
4C127KK01
(57)【要約】
【課題】高い空間分解能が必要な脳波計測において脳波計測精度を向上させる。
【解決手段】脳波計測用アダプタ1は、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を装着している被験者の脳波を計測するためにHMDに取り付けられ、ヘッドバンド2、右側連結部3および左側連結部4と、前側連結部5とを備える。ヘッドバンド2、右側連結部3および左側連結部4は、右側装着部材と左側装着部材との間で掛け渡されるようにして被験者の頭部の上方に配置される。右側装着部材は、HMDの表示部が頭部の前側で固定されるように表示部から頭部の右側において頭部に沿って延びるように形成される。左側装着部材は、表示部が頭部の前側で固定されるように表示部から頭部の左側において頭部に沿って延びるように形成される。前側連結部5は、ヘッドバンド2と表示部との間で掛け渡されるようにして頭部の上方に配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドマウントディスプレイを装着している被験者の脳波を計測するために前記ヘッドマウントディスプレイに取り付けられる脳波計測用アダプタであって、
前記ヘッドマウントディスプレイの表示部が前記被験者の頭部の前側で固定されるように前記表示部から前記頭部の右側において前記頭部に沿って延びるように形成された右側装着部材と、前記表示部が前記被験者の前記頭部の前側で固定されるように前記表示部から前記頭部の左側において前記頭部に沿って延びるように形成された左側装着部材との間で掛け渡されるようにして、前記頭部の上方に配置される第1掛渡部材と、
前記第1掛渡部材と前記表示部との間で掛け渡されるようにして、前記頭部の上方に配置される第2掛渡部材と
を備える脳波計測用アダプタ。
【請求項2】
請求項1に記載の脳波計測用アダプタであって、
前記第1掛渡部材と前記頭部との間に配置されるスペーサを更に備える脳波計測用アダプタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の脳波計測用アダプタであって、
前記被験者の脳波を検出する複数の電極によって検出される脳波信号を伝送するために前記複数の電極のそれぞれに接続された複数の電線を纏めて挟持するように構成されたクリップを更に備える脳波計測用アダプタ。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の脳波計測用アダプタであって、
前記第2掛渡部材は、前記第1掛渡部材および前記表示部のそれぞれに対して着脱可能に形成される脳波計測用アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脳波を計測するために用いられる脳波計測用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を用いたバーチャルリアリティ(以下、VR)システムが普及し、主にアミューズメント目的で使用されている。また、スポーツやリハビリテーションにおいて、現実には行えないようなトレーニングをVRで実現するシステムも開発されている。VRシステムを用いたトレーニングの有効性を評価するために脳活動を計測するニーズがある。また、VRシステムを利用して脳機能を調べる研究も行われている。
【0003】
脳活動を計測する手法の一つに脳波が挙げられる。脳波は、脳の神経活動と関連する信号である。例えば、脳波計測の被験者は、複数の電極ソケットが取り付けられたキャップを被る。そして、電線が接続された複数の電極が複数の電極ソケットに挿入される。これにより、複数の電極のそれぞれから電線を介して複数の脳波信号が脳波計測機器へ伝送され、脳波を計測することができる。しかし、脳活動に由来する信号は微弱であるため、計測中に電極または電線が動くと、電極から出力される脳波信号の値が大きく変動する。このように、計測中における動きが原因で発生する信号の変動をモーションアーチファクトという。
【0004】
VRシステムの使用中に脳波を計測する際には、HMDの頭部固定部が電極と干渉するため、頭部の動きによるモーションアーチファクトが脳波信号に混入するという問題がある。
【0005】
非特許文献1には、HMDの頭部固定部に電極を内蔵することで干渉を防ぎ、モーションアーチファクトを低減する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Startup Neurable Unveils the World's First Brain-Controlled VR Game > Neurable's brain-computer interfaces enable hands-free control in virtual reality」、[online]、[2022年7月23日検索]、インターネット<URL: https://spectrum.ieee.org/brainy-startup-neurable-unveils-the-worlds-first-braincontrolled-vr-game>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1に記載の技術では、内蔵できる電極の数が少ないため、高い空間分解能が必要な脳活動の解析には不向きであるという問題があった。
本開示は、高い空間分解能が必要な脳波計測において脳波計測精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、ヘッドマウントディスプレイを装着している被験者の脳波を計測するためにヘッドマウントディスプレイに取り付けられる脳波計測用アダプタであって、第1掛渡部材と、第2掛渡部材とを備える。
第1掛渡部材は、右側装着部材と、左側装着部材との間で掛け渡されるようにして、被験者の頭部の上方に配置される。右側装着部材は、ヘッドマウントディスプレイの表示部が被験者の頭部の前側で固定されるように表示部から頭部の右側において頭部に沿って延びるように形成される。左側装着部材は、表示部が被験者の頭部の前側で固定されるように表示部から頭部の左側において頭部に沿って延びるように形成される。
【0009】
第2掛渡部材は、第1掛渡部材と表示部との間で掛け渡されるようにして、頭部の上方に配置される。
このように構成された本開示の脳波計測用アダプタは、第1掛渡部材および第2掛渡部材により、被験者の頭部に対してヘッドマウントディスプレイの表示部の位置がずれないように表示部を支持することができる。そして、本開示の脳波計測用アダプタは、第1掛渡部材および第2掛渡部材を頭部の上方に配置しているため、被験者の脳波を計測するために被験者の頭部の表面に配置される多数の電極と、多数の電極のそれぞれに接続された多数の電線とが、第1掛渡部材および第2掛渡部材に接触してしまう事態の発生を抑制することができる。
【0010】
これにより、本開示の脳波計測用アダプタは、多数の電極を用いて被験者の脳波を計測する場合において、被験者の頭部の動きにより多数の電極と第1掛渡部材および第2掛渡部材とが干渉してモーションアーチファクトが脳波信号に混入してしまうという事態の発生を抑制することができる。このため、本開示の脳波計測用アダプタは、高い空間分解能が必要な脳波計測において脳波計測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】被験者に装着されたHMDおよび脳波計測用アダプタの斜視図である。
図2】HMDの斜視図である。
図3】脳波計測用アダプタを斜め前から見た斜視図である。
図4】脳波計測用アダプタを斜め後ろから見た斜視図である。
図5】脳波キャップを装着している被験者の斜視図である。
図6】HMDを装着している被験者の斜視図である。
図7】HMDおよび脳波計測用アダプタを装着している被験者を斜め前から見た斜視図である。
図8】HMDおよび脳波計測用アダプタを装着している被験者を斜め後ろから見た斜視図である。
図9】ケーブルクリップによりケーブルを固定する方法を説明する図である。
図10】脳波信号の時間変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態の脳波計測用アダプタ1は、図1に示すように、ヘッドマウントディスプレイ100(以下、HMD100)を装着している被験者200の脳波を計測するためにHMD100に取り付けられるアダプタである。HMDは、Head Mount Displayの略である。以下、HMD100を装着している被験者200の上側、下側、前側、後側、右側および左側をそれぞれ、単に上側、下側、前側、後側、右側および左側という。
【0013】
HMD100は、図2に示すように、表示部110と、右側装着部材120と、左側装着部材130と、連結調整部140とを備える。
表示部110は、被験者200の両眼を覆うようにして被験者200の頭部に装着され、仮想現実(以下、VR)の映像を被験者200に対して表示する。VRは、Virtual Realityの略である。
【0014】
右側装着部材120は、被験者200に装着されている表示部110における右側から、被験者200の頭部の右側を通って、被験者200の頭部の後側に延びるように形成された樹脂製の部材である。
【0015】
左側装着部材130は、被験者200に装着されている表示部110における左側から、被験者200の頭部の左側を通って、被験者200の頭部の後側に延びるように形成された樹脂製の部材である。
【0016】
連結調整部140は、被験者200の頭部の後側で、右側装着部材120における表示部110に連結されていない側の端部と、左側装着部材130における表示部110に連結されていない側の端部とを重ねて収容する。
【0017】
連結調整部140は、図8に示すように、調整ダイヤル141を備える。調整ダイヤル141を回転させることによって、連結調整部140内において右側装着部材120と左側装着部材130とが重なっている長さが変化する。これにより、表示部110と連結調整部140とによって被験者200の頭部を挟み込んで被験者200の頭部を締め付ける力を調整することができる。このため、被験者200は、被験者200の頭部に対して表示部110の位置がずれないように表示部110を装着することができる。
【0018】
本実施形態の脳波計測用アダプタ1は、図3および図4に示すように、ヘッドバンド2と、右側連結部3と、左側連結部4と、前側連結部5とを備える。
ヘッドバンド2は、弧状に形成された樹脂製の部材である。ヘッドバンド2は、被験者200の頭部の右側から、被験者200の頭部の上方を通り、被験者200の頭部の左側に至るようにして、被験者200に装着されているHMD100の右側装着部材120および左側装着部材130に連結される。
【0019】
右側連結部3は、右側装着部材120の一部分が挿入される貫通孔3bを備えた筒状に形成された樹脂製の部材である。右側連結部3は、ヘッドバンド2における右側の端部に固定される。
【0020】
右側連結部3は、第1右側板状部材11と、第2右側板状部材12と、第3右側板状部材13と、第4右側板状部材14とを備える。
第1右側板状部材11および第4右側板状部材14は、長辺の長さがW1であり短辺の長さがW2である長方形状に形成された板状部材である。
【0021】
第2右側板状部材12および第3右側板状部材13は、長辺の長さがW2であり短辺の長さがW3である長方形状に形成された板状部材である。
第2右側板状部材12は、第2右側板状部材12の第1長辺と第1右側板状部材11の第1短辺とが一致するように、且つ、第2右側板状部材12の面と第1右側板状部材11の面とが垂直になるようにして、第1右側板状部材11に固定される。
【0022】
第3右側板状部材13は、第3右側板状部材13の第1長辺と第1右側板状部材11の第2短辺とが一致するように、且つ、第3右側板状部材13の面と第1右側板状部材11の面とが垂直になるようにして、第1右側板状部材11に固定される。
【0023】
これにより、第1右側板状部材11を底面とし、第2右側板状部材12および第3右側板状部材13が両側面となる溝3a(以下、右側溝3a)が形成される。
そして第4右側板状部材14は、第4右側板状部材14の第1短辺が第2右側板状部材12の第2長辺と一致し、且つ、第4右側板状部材14の第2短辺が第3右側板状部材13の第2長辺と一致するようにして設置される。
【0024】
これにより、第1右側板状部材11、第2右側板状部材12、第3右側板状部材13および第4右側板状部材14により囲まれる貫通孔3bが形成される。
なお、第4右側板状部材14は、第2右側板状部材12および第3右側板状部材13に対して着脱可能に形成されている。また、ヘッドバンド2における右側の端部は、第2右側板状部材12に固定される。
【0025】
次に左側連結部4は、左側装着部材130の一部分が挿入される貫通孔4bを備えた筒状に形成された樹脂製の部材である。左側連結部4は、ヘッドバンド2における左側の端部に固定される。
【0026】
左側連結部4は、第1左側板状部材21と、第2左側板状部材22と、第3左側板状部材23と、第4左側板状部材24とを備える。
第1左側板状部材21および第4左側板状部材24は、長辺の長さがW1であり短辺の長さがW2である長方形状に形成された板状部材である。
【0027】
第2左側板状部材22および第3左側板状部材23は、長辺の長さがW2であり短辺の長さがW3である長方形状に形成された板状部材である。
第2左側板状部材22は、第2左側板状部材22の第1長辺と第1左側板状部材21の第1短辺とが一致するように、且つ、第2左側板状部材22の面と第1左側板状部材21の面とが垂直になるようにして、第1左側板状部材21に固定される。
【0028】
第3左側板状部材23は、第3左側板状部材23の第1長辺と第1左側板状部材21の第2短辺とが一致するように、且つ、第3左側板状部材23の面と第1左側板状部材21の面とが垂直になるようにして、第1左側板状部材21に固定される。
【0029】
これにより、第1左側板状部材21を底面とし、第2左側板状部材22および第3左側板状部材23が両側面となる溝4a(以下、左側溝4a)が形成される。
そして第4左側板状部材24は、第4左側板状部材24の第1短辺が第2左側板状部材22の第2長辺と一致し、且つ、第4左側板状部材24の第2短辺が第3左側板状部材23の第2長辺と一致するようにして設置される。
【0030】
これにより、第1左側板状部材21、第2左側板状部材22、第3左側板状部材23および第4左側板状部材24により囲まれる貫通孔4bが形成される。
なお、第4左側板状部材24は、第2左側板状部材22および第3左側板状部材23に対して着脱可能に形成されている。また、ヘッドバンド2における左側の端部は、第2左側板状部材22に固定される。
【0031】
前側連結部5は、弧状に形成された樹脂製の部材である。前側連結部5は、その第1端が被験者200の頭頂部付近でヘッドバンド2に連結される。そして前側連結部5は、ヘッドバンド2から、被験者の頭部の上方を通り、被験者の頭部の前側に至るようにしてHMD100の表示部110に連結される。
【0032】
図5に示すように、被験者200は、脳波キャップ300を頭部に被る。脳波キャップ300は、キャップ本体301と、右あご紐302と、左あご紐303とを備える。
キャップ本体301は、被験者200の顔面および顎を除く頭部全体(すなわち、被験者200の頭頂部、後頭部および側頭部)を覆うことが可能な形状に形成された布製の部材である。
【0033】
右あご紐302は、キャップ本体301の開口部において、被験者200がキャップ本体301を被ると被験者200の右耳付近となる箇所から延びる紐状の部材である。左あご紐303は、キャップ本体301の開口部において、被験者200がキャップ本体301を被ると被験者200の左耳付近となる箇所から延びる紐状の部材である。
【0034】
右あご紐302には雄型面ファスナーが貼り付けられ、左あご紐303には雌型面ファスナーが貼り付けられている。
被験者200は、キャップ本体301を被った後に、右あご紐302の雄型面ファスナーと左あご紐303の雌型面ファスナーとを接触させて、右あご紐302と左あご紐303とが重なっている長さを調整する。これにより、被験者200は、キャップ本体301が被験者200の頭部に対してずれないように脳波キャップ300を装着することができる。
【0035】
脳波キャップ300は、キャップ本体301の表面に取り付けられた複数の電極ソケット310を備える。
複数の電極ソケット310には、各電極ソケット310に対応した電極320が挿入される。各電極320には、電線330が接続されている。各電線330は、対応する電極320が検出した電気信号を、図示しない脳波計測機器へ伝送する。
【0036】
被験者200の頭部の右側に設置されている複数の電極320のそれぞれに接続されている複数の電線330は、電極320に接続されていない側で連結され、右側フレキシブルフラットケーブル340を形成している。
【0037】
被験者200の頭部の左側に設置されている複数の電極320のそれぞれに接続されている複数の電線330は、電極320に接続されていない側で連結され、左側フレキシブルフラットケーブル350を形成している。
【0038】
脳波計測用アダプタ1は、更に、右側スペーサ6と、左側スペーサ7とを備える。
右側スペーサ6は、脳波キャップ300のキャップ本体301の表面において、被験者200がキャップ本体301を被ったときに被験者200の頭頂部の右側となる箇所に設置される部材である。
【0039】
左側スペーサ7は、脳波キャップ300のキャップ本体301の表面において、被験者200がキャップ本体301を被ったときに被験者200の頭頂部の左側となる箇所に設置される部材である。
【0040】
本実施形態の右側スペーサ6および左側スペーサ7は、直方体状に形成されたスポンジである。
図6に示すように、脳波キャップ300を被った被験者200は、表示部110が被験者200の両眼を覆うようにして、被験者200の頭部にHMD100を装着する。
【0041】
次に、図7に示すように、前側連結部5が取り外されている状態の脳波計測用アダプタ1がHMD100に取り付けられる。
具体的には、HMD100の右側装着部材120の一部分を右側連結部3の貫通孔3b内に挿入し、HMD100の左側装着部材130の一部分を左側連結部4の貫通孔4b内に挿入することにより、脳波計測用アダプタ1がHMD100に取り付けられる。
【0042】
なお、右側連結部3から第4右側板状部材14が取り外されている状態で、HMD100の右側装着部材120の一部分が、右側連結部3の右側溝3aに収容され、その後に、第4右側板状部材14が右側連結部3に取り付けられる。これにより、右側連結部3がHMD100の右側装着部材120に連結される。
【0043】
同様に、左側連結部4から第4左側板状部材24が取り外されている状態で、HMD100の左側装着部材130の一部分が、左側連結部4の左側溝4aに収容され、その後に、第4左側板状部材24が左側連結部4に取り付けられる。これにより、左側連結部4がHMD100の左側装着部材130に連結される。
【0044】
このようにして、右側連結部3がHMD100の右側装着部材120に連結され、左側連結部4がHMD100の左側装着部材130に連結されると、ヘッドバンド2は、被験者200の頭部の右側から、被験者200の頭部の上方を通り、被験者200の頭部の左側に至るように設置される。またヘッドバンド2は、被験者200の頭頂部付近で、ヘッドバンド2と脳波キャップ300との間で右側スペーサ6および左側スペーサ7を挟んだ状態で、右側スペーサ6および左側スペーサ7と接触している。このため、脳波計測用アダプタ1は、脳波キャップ300(すなわち、複数の電極320)と接触しない状態を保持することができる。
【0045】
次に、図1に示すように、前側連結部5の第1端が、被験者200の頭頂部付近でヘッドバンド2に連結され、前側連結部5の第2端が、被験者200の額付近でHMD100の表示部110に連結される。これにより、脳波計測用アダプタ1は、被験者200の頭部に対して表示部110の位置がずれないように表示部110を支持することができる。
【0046】
図8に示すように、脳波計測用アダプタ1は、更に、ケーブルクリップ8を備える。ケーブルクリップ8は、連結調整部140に取り付けられる。
図9に示すように、ケーブルクリップ8は、第1挟持部41と、第2挟持部42と、係合部43と、取付部44とを備える。ケーブルクリップ8は、第1挟持部41と第2挟持部42と係合部43と取付部44とが一体成形された樹脂製の部材である。
【0047】
第1挟持部41は、長方形状の部材である。第2挟持部42は、第1挟持部41と略同一の長方形状に形成された部材である。第2挟持部42は、その第1端が、第1挟持部41における長手方向に沿った第1端の付近で第1挟持部41に連結されている。このため、第2挟持部42は、その長手方向に沿った第2端が第1挟持部41から離れることにより、第1端以外が第1挟持部41から離れる離脱位置と、第2端が第1挟持部41に接触することにより、第2挟持部42の全体が第1挟持部41に接触する接触位置との間で移動することができる。
【0048】
係合部43は、第1挟持部41における長手方向に沿った第2端の付近で第1挟持部41に連結されている。係合部43は、第2挟持部42が上記の接触位置に位置しているときに、第2挟持部42における長手方向に沿った第2端と係合して、第2挟持部42を接触位置に保持する。
【0049】
取付部44は、第1挟持部41における長手方向に沿った第1端および第2端で第1挟持部41に連結された部材である。第1挟持部41における長手方向に沿った第1端および第2端で取付部44を連結調整部140に係合させることにより、第1挟持部41が連結調整部140に取り付けられる。
【0050】
脳波計測のためにHMD100と脳波計測用アダプタ1とを被験者200に装着した後に、計測作業者は、ケーブルクリップ8の第2挟持部42を離脱位置に移動させ、右側フレキシブルフラットケーブル340の一部分が第1挟持部41と第2挟持部42との間に位置するように、右側フレキシブルフラットケーブル340を移動させる。さらに計測作業者は、左側フレキシブルフラットケーブル350の一部分が第1挟持部41と第2挟持部42との間に位置するように、左側フレキシブルフラットケーブル350を移動させる。そして計測作業者は、ケーブルクリップ8の第2挟持部42を接触位置に移動させ、第2挟持部42の第2端を係合部43に係合させる。
【0051】
これにより、右側フレキシブルフラットケーブル340および左側フレキシブルフラットケーブル350は、互いに重なった状態で、第1挟持部41と第2挟持部42との間に挟まれた状態で、ケーブルクリップ8に固定される。
【0052】
このように構成された脳波計測用アダプタ1は、HMD100を装着している被験者200の脳波を計測するためにHMD100に取り付けられ、ヘッドバンド2、右側連結部3および左側連結部4と、前側連結部5とを備える。
【0053】
ヘッドバンド2、右側連結部3および左側連結部4は、右側装着部材120と、左側装着部材130との間で掛け渡されるようにして、被験者200の頭部の上方に配置される。右側装着部材120は、HMD100の表示部110が被験者200の頭部の前側で固定されるように表示部110から被験者200の頭部の右側において頭部に沿って延びるように形成される。左側装着部材130は、表示部110が被験者200の頭部の前側で固定されるように表示部110から被験者200の頭部の左側において頭部に沿って延びるように形成される。
【0054】
前側連結部5は、ヘッドバンド2と表示部110との間で掛け渡されるようにして、被験者200の頭部の上方に配置される。
このような脳波計測用アダプタ1は、ヘッドバンド2、右側連結部3、左側連結部4および前側連結部5により、被験者200の頭部に対してHMD100の表示部110の位置がずれないように表示部110を支持することができる。そして脳波計測用アダプタ1は、ヘッドバンド2および前側連結部5を頭部の上方に配置しているため、被験者200の脳波を計測するために被験者200の頭部の表面に配置される多数の電極320と、多数の電極320のそれぞれに接続された多数の電線330とが、ヘッドバンド2および前側連結部5に接触してしまう事態の発生を抑制することができる。
【0055】
これにより、脳波計測用アダプタ1は、多数の電極320を用いて被験者200の脳波を計測する場合において、被験者200の頭部の動きにより多数の電極320および多数の電線330とヘッドバンド2および前側連結部5とが干渉してモーションアーチファクトが脳波信号に混入してしまうという事態の発生を抑制することができる。
【0056】
図10の線L1は、脳波計測用アダプタ1を用いずに計測された脳波信号の時間変化を示す。図10の線L2は、脳波計測用アダプタ1を用いて計測された脳波信号の時間変化を示す。図10に示すように、脳波計測用アダプタ1を用いることにより、モーションアーチファクトを大幅に低減することができる。
【0057】
このため、脳波計測用アダプタ1は、高い空間分解能が必要な脳波計測において脳波計測精度を向上させることができる。
また脳波計測用アダプタ1は、ヘッドバンド2と被験者200の頭部との間に配置される右側スペーサ6および左側スペーサ7を更に備える。これにより、脳波計測用アダプタ1は、多数の電極320と、多数の電線330とが、ヘッドバンド2および前側連結部5に接触してしまう事態の発生を更に抑制することができる。このため、脳波計測用アダプタ1は、多数の電極320を用いて被験者200の脳波を計測する場合において、被験者200の頭部の動きにより多数の電極320とヘッドバンド2および前側連結部5とが干渉してモーションアーチファクトが脳波信号に混入してしまうという事態の発生を更に抑制することができ、高い空間分解能が必要な脳波計測において脳波計測精度を更に向上させることができる。
【0058】
また脳波計測用アダプタ1は、被験者200の脳波を検出する複数の電極320によって検出される脳波信号を伝送するために複数の電極320のそれぞれに接続された複数の電線330を纏めて挟持するように構成されたケーブルクリップ8を更に備える。これにより、脳波計測用アダプタ1は、被験者200の頭部の動きにより多数の電線330とヘッドバンド2および前側連結部5とが干渉してモーションアーチファクトが脳波信号に混入してしまうという事態の発生を更に抑制することができる。このため、脳波計測用アダプタ1は、高い空間分解能が必要な脳波計測において脳波計測精度を更に向上させることができる。
【0059】
また脳波計測用アダプタ1の前側連結部5は、ヘッドバンド2および表示部110のそれぞれに対して着脱可能に形成される。これにより、ヘッドバンド2、右側連結部3および左側連結部4をHMD100の右側装着部材120および左側装着部材130に連結させた後に、前側連結部5をヘッドバンド2および表示部110のそれぞれに連結させるという手順で、脳波計測用アダプタ1をHMD100に取り付けることができる。このため、脳波計測用アダプタ1は、ヘッドバンド2、右側連結部3および左側連結部4をHMD100に連結する際に前側連結部5が邪魔にならず、脳波計測用アダプタ1の取り付けを容易にすることができる。
【0060】
以上説明した実施形態において、ヘッドバンド2、右側連結部3および左側連結部4は第1掛渡部材に相当し、前側連結部5は第2掛渡部材に相当し、右側スペーサ6および左側スペーサ7はスペーサに相当し、ケーブルクリップ8はクリップに相当する。
【0061】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
[変形例1]
例えば上記実施形態では、脳波計測用アダプタ1が樹脂を材料として形成されている形態を示したが、樹脂製に限定されるものではなく、ヘッドバンド2および前側連結部5が被験者200の頭部と接触しない状態を保持することができる材料であればよい。
【0062】
[変形例2]
上記実施形態では、右側スペーサ6および左側スペーサ7がスポンジで形成されている形態を示したが、右側スペーサ6および左側スペーサ7の材料は、ヘッドバンド2が被験者200の頭部と接触しない状態を保持することができる材料であればよい。
【0063】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
ヘッドマウントディスプレイを装着している被験者の脳波を計測するために前記ヘッドマウントディスプレイに取り付けられる脳波計測用アダプタであって、
前記ヘッドマウントディスプレイの表示部が前記被験者の頭部の前側で固定されるように前記表示部から前記頭部の右側において前記頭部に沿って延びるように形成された右側装着部材と、前記表示部が前記被験者の前記頭部の前側で固定されるように前記表示部から前記頭部の左側において前記頭部に沿って延びるように形成された左側装着部材との間で掛け渡されるようにして、前記頭部の上方に配置される第1掛渡部材と、
前記第1掛渡部材と前記表示部との間で掛け渡されるようにして、前記頭部の上方に配置される第2掛渡部材と
を備える脳波計測用アダプタ。
【0064】
[項目2]
項目1に記載の脳波計測用アダプタであって、
前記第1掛渡部材と前記頭部との間に配置されるスペーサを更に備える脳波計測用アダプタ。
【0065】
[項目3]
項目1または項目2に記載の脳波計測用アダプタであって、
前記被験者の脳波を検出する複数の電極によって検出される脳波信号を伝送するために前記複数の電極のそれぞれに接続された複数の電線を纏めて挟持するように構成されたクリップを更に備える脳波計測用アダプタ。
【0066】
[項目4]
項目1~項目3の何れか1項に記載の脳波計測用アダプタであって、
前記第2掛渡部材は、前記第1掛渡部材および前記表示部のそれぞれに対して着脱可能に形成される脳波計測用アダプタ。
【符号の説明】
【0067】
1…脳波計測用アダプタ、2…ヘッドバンド、3…右側連結部、4…左側連結部、5…前側連結部、100…HMD、110…表示部、120…右側装着部材、130…左側装着部材、200…被験者
図1
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図10