(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000668
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】音響イコライザー装置
(51)【国際特許分類】
H04R 3/04 20060101AFI20231226BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H04R3/04
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099495
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】304022333
【氏名又は名称】古本 哲男
(72)【発明者】
【氏名】古本 哲男
【テーマコード(参考)】
5D220
【Fターム(参考)】
5D220AB04
(57)【要約】
【課題】スピーカーシステムの低音域の周波数特性の平坦化・改善が容易に図れる音響イコライザー装置を提供する。
【解決手段】A<Bの関係にある周波数Aと周波数Bにおいて,Aの周波数における利得>B以上の周波数における利得なる関係があり,周波数Aと周波数Bの間の利得は6dB/octで変化する周波数対利得特性と,C<Bの関係にある周波数Cを中心とするBEF(バンド・エリミネーション・フィルター)の周波数対利得特性を備え,周波数A,周波数B,周波数Cは対象とするスピーカーユニットの口径から一義的に設定,選択もしくは調整操作できる手段を備えた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低音域を受け持つスピーカーユニットの低音域の周波数対音圧特性をコントロールする装置であって,A<Bの関係にある周波数Aと周波数Bにおいて,Aの周波数における利得>B以上の周波数における利得なる関係があり,周波数Aと周波数Bの間の利得は6dB/octで変化する周波数対利得特性と,C<Bの関係にある周波数Cを中心とするBEF(バンド・エリミネーション・フィルター)の周波数対利得特性を備え,周波数A,周波数B,周波数Cは対象とするスピーカーユニットの口径から一義的に設定,選択もしくは調整操作できる手段を備えたことを特徴とする音響イコラーザー装置。
【請求項2】
前記周波数Aは周波数を調整する手段を備えることを特徴とする請求項1の音響イコラーザー装置。
【請求項3】
前記周波数Cを中心とするBEFの周波数Cにおける利得を調整する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項2の音響イコライザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件の発明は音響装置に属し,使用者がスピーカーシステムと増幅器を別々に用意してそれらを組み合わせて使用する形態の音響装置で用いるものであって,且つスピーカーや増幅器についての音響的・電気的専門的知識が浅い使用者でも,スピーカーから発生する低音域の音圧の周波数特性を容易に平坦化・改善・調整できるようにする装置に係る。
【背景技術】
【0002】
第一の背景技術として,本件発明の発明者が取得した特許について説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1によれば,例えば発泡ウレタンのような小孔を有する弾性体や,柔軟で適当な密度で圧縮された繊維材で構成される音響抵抗物質により低音域の共振を機械的に抑制したスピーカーユニットをボックスに組み込み,それにより不足する低音の音圧を音圧が不足しはじめる周波数から低い周波数に向けて,スピーカーの最低共振周波数の0.5〜2倍まで6dB/octの利得の傾きで増加させるような周波数対利得特性を有するイコライザー回路で補正し,補正後にさらに不足する低い周波数の音圧をエンクロージャーの共振手段,例えばバスレフボックスのバスレフ共振で補うことで,小型のスピーカーユニットと当該スピーカーユニットを使用したスピーカーシステムでも従来にない低い周波数を再生可能な音響装置を構成することができる。
【0005】
しかしながらこのような音響装置は,スピーカーユニットとボックス,およびイコライザー回路を含む増幅器を,例えばテレビ受像器あるいはラジオ受信器のように一体で機能が完結する製品の一部分としてセット提供しなければ,専門知識のない一般ユーザーには十分な性能を提供できない。
【0006】
また,スピーカーシステム,増幅装置(アンプ),CDプレイヤー等の装置を別々に提供し,使用者が個人の嗜好に応じてこれらを組み合わせて使用する形態のオーディオ装置においても,これらの装置類のうち,少なくとも前述の機械的に共振を抑制したスピーカーユニットを組み込んだスピーカーシステムと,当該スピーカーシステム用の低音の音圧不足を補正するイコラーザー装置だけはセットで提供しなければ,目的とする低音から高音までの一葉な再生音圧を保証できない。
【0007】
なぜならば,低音用に使用するスピーカーシステムのスピーカーユニットや,それを組み込むボックス,共振抑制の程度等の諸元に応じて補正回路の補正特性を合せ込まなければならず,その補正特性の調整は,専門的な知識や相応の測定器具を使用する技術を有する者でなければはできないからである。
【0008】
前述の技術を有する者でなく音響的・電気的専門的知識が浅い層の一部にも,公開された製作事例やマニュアルを参考に,部品としてスピーカーユニットやボックス用の板材を購入し,自身でスピーカーシステムを組み上げる自作マニアが一般的に存在している。
【0009】
しかしながら,そのような自作マニアとよばれる層でさえ,前述した理由により特許文献1のような音響装置においては,低音域の周波数対音圧特性をうまく平坦化するイコライザーの製作や補正特性の調整は困難と考えられる。
【0010】
また,第二の背景技術としては,特許文献1によらない周知の技術,すなわち,共振を抑制しない在来技術による通常のスピーカーユニットとボックスによる,すなわち一般的なバスレフ形スピーカーシステム,あるいは一般的な密閉形スピーカーシステムと呼ばれるスピーカーシステムが存在する。
【0011】
それらは,増幅装置(アンプ)と組み合わせて使用されるが,スピーカーユニットとボックスのパラメータ設計が不適切で低音域の周波数対音圧特性が望ましくない場合は,例えばアンプ側にグラフィックイコライザーのような周波数対利得特性の調整装置を用いて特性を改善することが考えられる。その場合もやはり相応の専門知識や測定器具を使用する技術を有する者でなければ対応は困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで本件発明は,スピーカーユニットの低域共振を抑制したスピーカーユニットを使用したバスレフ形スピーカーシステムやその他の在来の一般的なバスレフ形あるいは密閉形ボックスによるスピーカーシステムにおいて,前述の音響的・電気的専門的知識が浅い自作マニア,さらにはマニアではないがはじめてスピーカーユニットとボックス製作キットを購入してスピーカーシステムを製作してみようとする者でも,容易にスピーカーシステムの低音域の周波数特性の平坦化・改善が図れる音響イコライザー装置を提供することを課題としている。
【0013】
また,測定器具を使用する技術を有する者においても容易且つ精緻に低音域の周波数特性の平坦化・改善が図れる音響イコライザー装置を提供することを課題としている。
【0014】
さらには,スピーカーユニットの低域共振を抑制したスピーカーユニットを使用したバスレフ形スピーカーシステムを対象とする場合には,当該スピーカーシステムをスピーカーユニットの口径の違いやボックスの大きさの違いにより複数種類を製品として提供した場合に,容易に対応可能な音響イコライザー装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の課題を解決するために,請求項1では,低音域を受け持つスピーカーユニットの低音域の周波数対音圧特性をコントロールする装置であって,A<Bの関係にある周波数Aと周波数Bにおいて,Aの周波数における利得>B以上の周波数における利得なる関係があり,周波数Aと周波数Bの間の利得は6dB/octで変化する周波数対利得特性と,C<Bの関係にある周波数Cを中心とするBEF(バンド・エリミネーション・フィルター)の周波数対利得特性を備え,周波数A,周波数B,周波数Cは対象とするスピーカーユニットの口径から一義的に設定,選択もしくは調整操作できる手段を備えたことを特徴とする音響イコラーザー装置を提供したものである。
【0016】
前述の課題を解決するために,請求項2では,前記周波数Aは周波数を調整する手段を備えることを特徴とする請求項1の音響イコラーザー装置を提供したものである。
【0017】
前述の課題を解決するために,請求項3では,前記周波数Cを中心とするBEFの周波数Cにおける利得を調整する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項2の音響イコライザー装置を提供したものである。
【発明の効果】
【0018】
それにより請求項1では,スピーカーシステムに用いるスピーカーユニットやボックスの諸元から定まる周波数A,周波数B,周波数Cの値を知ることなく,専門知識や測定器具を使用する技術を有する者でなくとも,スピーカーユニットの口径情報だけから音響イコライザー装置の周波数A,周波数B,周波数Cを適正に設定でき,もってスピーカーシステムの低音域の周波数対音圧特性を容易に改善できる。
【0019】
請求項2では,請求項1による周波数Aをより精緻に調整でき,もってスピーカーシステムの低音域の周波数対音圧特性をより精緻に改善できる。
【0020】
請求項3では,周波数Cにおける音圧の山や谷を精緻に調整でき,もってスピーカーシステムの低音域の周波数対音圧特性をより精緻に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】特許文献1のスピーカーシステムの一実施例を示す図
【
図2】
図1に示すスピーカーシステムの周波数対音圧特性を示す図
【
図3】
図1に示すスピーカーシステムを駆動するための電気系ブロック構成を示す図
【
図4】本件発明のイコライザー装置の回路の一実施例を示す図
【
図5】
図4に示すイコライザー回路603の周波数対利得特性を示す図
【
図6】
図2に示す周波数対音圧特性を
図5に示す周波数対利得特性で補正した場合の周波数対音圧特性を示す図
【
図7】
図4に示すBEF回路605の周波数対利得特性を示す図
【
図8】
図6に示す周波数対音圧特性を
図7に示す周波数対利得特性で補正した場合の周波数対音圧特性を示す図
【
図9】
図4に示すイコライザー装置の回路の別の実施例を示す図
【
図11】一般的なバスレフ形スピーカーシステムの一実施例を示す図
【
図12】
図11のバスレフ形スピーカーシステムでスピーカーユニットとボックス内部空間容積による共振周波数とバスレフダクトとボックス内部空間容積によるバスレフ共振周波数の間で音圧の谷ができた場合の周波数対音圧特性を示す図
【
図13】
図12の周波数対音圧特性を
図5に示す周波数対利得特性で補正した場合の周波数対音圧特性を示す図
【
図14】
図13の周波数対音圧特性を
図7に示す周波数対利得特性で補正した場合の周波数対音圧特性を示す図
【
図15】
図14の周波数対音圧特性でバスレフ共振の強さを適正にした場合の周波数対音圧特性を示す図
【
図16】一般的な密閉形スピーカーシステムの一実施例を示す図
【
図17】
図16に示すスピーカーシステムの周波数対音圧特性を示す図
【
図18】
図17の周波数対音圧特性に対し
図5の周波数対利得特性で補正した場合の周波数対音圧特性を示す図
【
図19】
図18の周波数対音圧特性に対し
図7の周波数対利得特性で補正した場合の周波数対音圧特性を示す図
【
図20】
図16に示すスピーカーシステムでスピーカーユニットの諸元に対しボックス内部空間容積の設定を誤って音圧に山ができた場合の周波数対音圧特性を示す図
【
図21】
図17の周波数対音圧特性に対し
図5の周波数対利得特性で補正した場合の周波数対音圧特性を示す図
【
図22】
図18の周波数対音圧特性に対し
図7の周波数対利得特性で補正した場合の周波数対音圧特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に本件発明のイコライザー装置を,特許文献1に基づき,機械的な共振抑制を施したスピーカーユニットをバスレフ形スピーカーシステムに適用した場合の一実施例について説明する。
【0023】
図1は,機械的な共振抑制を施したスピーカーユニット1をバスレフボックス2に取り付けた一実施例の説明図で,スピーカーユニット1の振動板101のボックス内部空間201側には音響抵抗物質3が配され,該音響抵抗物質3は,ボックス内部空間201にその一部の表面301だけが露呈するよう仕切り壁4で覆われ,振動板101による空気振動は仕切り壁4によって音響抵抗物質3の表面301を通じてのみボックス内部空間201に伝わるように構成される。またボックス2にはバスレフダクト202を併設してある。
【0024】
なお,特許文献1の請求項3においては,エンクロージャーの共振手段を「エンクロージャーの主空間の等価機械スチフネスと別に設けた等価機械質量の組み合わせによる」としており,本件特許の説明のようにバスレフ形のボックスに限定はしていないが,代表形としてバスレフ形のボックスで説明する。
【0025】
また,
図1は特許文献1において
図24の実施例に相当するが,特許文献1の請求項1における「前記スピーカーユニットの振動板の振動を制動することによる機械的共振の抑制手段」は特許文献1の
図24では23,24の吸音材に,本件特許の
図1では音響抵抗物質3に相当する。さらに特許文献1の請求項2における「前記機械的共振の抑制手段は,前記スピーカーユニットの振動板の背面と該振動板背面から所定の距離を置く開口を含み,該開口を介してのみ前記振動板の振動による空気振動が前記エンクロージャー内部の主空間に伝搬するようにした小空間内の,前記振動板と開口間に通気性と吸音性のある音響抵抗物質を配した」は,特許文献1の
図24では,小空間を構成する壁20と小空間の開口2101内に吸音材23,24を配したものであるが,本件特許の
図1では,音響抵抗物質3をその表面301を残して仕切り壁4で覆った構造に相当する。
【0026】
図2は
図1に示すスピーカーシステムのスピーカーユニット1の図示しないボイスコイルを各周波数において均一な電圧で駆動した場合の周波数対音圧特性を示している。
図2において,周波数Aは
図1のスピーカーユニット1の最低機械共振周波数foを中心として近傍の周波数(特許文献1ではfoの0.5〜2倍としている),周波数Bは使用したスピーカーユニットのfo共振を完全に抑制した場合に低音側音圧が高音側音圧より低下し始める周波数,周波数Cはスピーカーユニット1をボックス2に取り付けた場合のスピーカーユニット1とボックス内部空間201の共振周波数,周波数Dは,ボックス内部空間201とバスレフダクト202の共振周波数であり,経験的にはfoの約1/2程度に設定する。
【0027】
図2において,(イ)は,スピーカーユニット1の共振を音響抵抗物質3で完全に抑制した場合の周波数対音圧特性で,後述するスピーカーユニットの口径をパラメータとする周波数Bを起点として低い周波数に向け6dB/octで音圧が減少するが,周波数Aにおいて,周波数Dを中心とするバスレフダクト202とボックス内部空間201のバスレフ共振による音圧の山(二)との重なりにより減少が収まる。
【0028】
(ハ)は,音響抵抗物質3を省略してスピーカーユニット1の共振を抑制しない場合の周波数対音圧特性で,スピーカーユニット1とボックス2の内部空間201の容積で定まる共振周波数C以上の周波数では音圧がほぼ一定,周波数C以下ではそれより低い周波数に向けて理論的に12dB/octで音圧が減少する。
【0029】
ここでスピーカーユニット1の共振とは,スピーカーユニット1とボックス2の内部空間201の容積で定まる共振周波数Cの共振に等しい。つまりスピーカーユニット1の最低機械共振周波数foはスピーカーユニット1を有限のボックスに取り付けない場合の共振周波数であって,これを有限のボックスに取り付けると共振周波数はfoより上昇する。その共振周波数が
図2では周波数Cである。これをさらに別の言葉で説明すれば,
図1の音響抵抗物質3はスピーカーユニット1の機械的共振抑制を行っているが,この共振抑制はスピーカーユニット1とボックス2の内部空間201による共振の抑制である。
【0030】
(ロ)は,音響抵抗物質3によるスピーカーユニット1の機械的共振の抑制が完全でない場合の周波数対音圧特性で,(イ)と(ハ)の間に位置するが,共振抑制の程度によって(イ)もしくは(ハ)の特性に近づく。
【0031】
図3は
図1に示すスピーカーシステムを駆動する電気系回路のブロック構成図で,5はCDプレイヤーのような音源装置で周知のもの,6は本件発明のイコライザー装置,7はスピーカーシステムに接続される電力増幅装置(パワーアンプ)で周知のものである。
【0032】
図3には示さないが,俗にプリアンプ,あるいはコントロールアンプと呼ばれ,音源装置や録音装置の選択・接続の切り替え,音量調整,本件発明のイコラーザー装置とは別の意味での低音・高音のレベル調整(俗称トーンコントロール)などを行う装置が,5と7の間で用いられるが,それらは本件発明の説明には不要であって周知のものであるので便宜上図と説明を省略している。
【0033】
図4は,
図3における本件発明のイコライザー装置6の詳細回路の一実施例であり,オペアンプを中心とするアナログ回路で構成したものである。
図4における601はレベル調整用の可変抵抗,602は増幅器,603はCとRによるイコライザー回路,604はバッファアンプ,605は周波数バンド内で利得が減衰するBEF(バンド・エリミネーション・フィルター)回路である。
【0034】
図では,入力信号の周波数対利得特性の処理順はイコライザー回路603,BEF回路605の順としているが,その前後の順,その他の増幅回路やバッファアンプ等は必要に応じ変更を許容される。
【0035】
また602,603,604,605の基本の各回路はオペアンプやフィルターの回路として周知のものであって,改めて詳細な動作の説明は不要と考えるが,603のCRによるイコライザー回路の周波数対利得特性は,
図5のように周波数A以下の利得>周波数B以上の利得で,周波数Aと周波数Bの間は6dB/octで変化する。なお説明の都合上,
図5の周波数Aと周波数Bは
図2における周波数Aと周波数Bに対応し同一の関係としているが,実際は後述のように若干のずれを許容する。
【0036】
周波数Aと周波数Bは回路中のR1,C1,R2によって,周波数A=1/(2π(R1+R2)C1),周波数B=1/(2πR2C1)として定まるが,本実施例の回路ではSW1で接続されるC1をC11〜C13に切り替えることにより周波数Aと周波数Bの両方をセットで段階的に切り替え,且つR1内の可変抵抗r1で周波数Aを,R2内の可変抵抗r2で周波数Bを調整できるようにしている。その理由は後述する。
【0037】
図6は,イコライザー回路603の
図2に示す周波数対音圧特性に対する補正効果を説明する図で,
図2に示す(イ)〜(ニ)の各音圧特性は,
図5に示す周波数対利得特性の補正により(イ’)〜(ニ’)の各音圧特性となる。
【0038】
図5に示す周波数対利得特性で補正した場合に,音響抵抗物質3による機械的共振抑制が完全でない場合,すなわち補正前の特性が
図2における(ロ)(ハ)の場合では,補正後の
図6では,平坦特性(イ’)に対し(ロ’)(ハ’)のように周波数Cで音圧の山ができる。
【0039】
図4の605のBEF回路は一般的にはグラフィックイコライザーと呼ばれる装置に用いられるものであって,一般的なグラフィックイコライザーでは点線枠内の回路部分が複数の異なる中心周波数のバンド毎,例えば30,60,120,250,500・・・Hz毎に併設され,中心周波数での利得は減少と増加を可能としている。
【0040】
本件発明のイコライザー装置の構成要件では,中心周波数すなわちバンドは1つだけの回路となっており,且つ利得は減少方向のみ調整可能であれば必要十分条件となるが増加方向の調整を含んでもさし使えない。バンドの中心周波数Cは,説明の都合上
図2の中心周波数Cと同一の関係とするが,実際は後述するように若干のずれを許容する。また図の可変抵抗r3により
図7のように中心周波数Cの利得を調整できるようにしている。なお
図7に示す利得の調整はゼロから減少方向のみを表している。
【0041】
R3とr3は通常のグラフィックイコライザーではR3がなくr3のみであって(もしくはR3の抵抗値がゼロであって),C2に接続されるr3のスライダー(可変端子)位置が抵抗の中点で利得の変化がゼロ,図のスライダーより上側の抵抗値がゼロで利得が最小(利得の減衰が最大),スライダーより図の下側の抵抗がゼロで利得が最大(または利得の増大が最大)であるが,本件発明ではR3の抵抗値を0(ゼロ)〜r3までの範囲で選択して構成することができる。この理由も後述する。
【0042】
また該中心周波数Cは図のC2,C3,R4,R5により,中心周波数C=1/2π√(C2C3R4R5)の式で定まるが,図のSW2によりC21とC31,C22とC32,C23とC33のようにセットで段階的に切り替えるようにしている。この理由も後述する。
【0043】
なお,周波数Aと周波数Bのように周波数Cも調整できるようにすることができ,この場合r5の可変抵抗を設けることが考えられるがr5は必須の構成要件ではない。
【0044】
図7は先に述べたが,BEF回路605の周波数対利得特性を示す。BEFのバンド中心周波数Cは,前述のとおり
図2,
図6の周波数Cと同一であり,且つ減衰特性のバンド幅は,
図6の周波数DとBに概ね対応するよう適度に回路定数で設定されるものとする。
【0045】
中心周波数Cにおける利得の減衰度合は,前述のとおり
図4のr3にて調整するが,最大で
図6の周波数Cにおける(ハ’)と(イ’)の音圧の差以上とし,最小でゼロ,r3のスライダーの中間位置でほぼ最大と最小のほぼ中間に設定する。すなわち,
図7の(ハ”)は
図6の(ハ’)と(イ’)の差分(ハ’-イ’)の逆特性,
図7の(ロ”)は
図6の(ロ’)と(イ’)の差分(ロ’-イ’)の逆特性となるよう回路定数を構成する。
【0046】
図7の(イ”)の特性が利得減衰ゼロを表すが,これは
図4の回路図においてR3=r3としr3のスライダーを
図4の下方いっぱいの位置に調整して実現される。
【0047】
さて,以上のように構成した本件発明のイコライザー装置であるが,スピーカーシステム側の周波数対音圧特性
図2の周波数A,周波数B,周波数Cと
図4の切り替えSW1およびSW2の切り替えの関係について今一歩詳細な説明が必要である。実は,
図1のように構成したスピーカーシステムにおいて
図2の周波数A,周波数B,周波数Cは使用するスピーカーの口径によって概ね類似の値に集約され,イコライザー装置において
図7の周波数A,周波数B,周波数Cは口径毎に代表値を用い,それを中心値(基準値)としても差し支えないのである。
【0048】
そのことを,まず周波数Bについて説明すれば,公称10cmの口径のスピーカーでは周波数Bは約1000Hz,20cmの口径のそれでは約500Hzとなる。これは一般に円板の放射インピーダンスを表す関係式として Ka=2πa/λ(a:円板の半径,λ:波長)が知られておりKaが1以下では実効的な放射インピーダンスが低下し,振動板が同一の振幅で振動するとき,音圧はインピーダンスの低下に応じて低下すると言われている。このKaが1になる周波数が,円板の口径が10cm(半径a≒5cmとする)では約1000Hz,口径20cm(半径a≒10cmとする)では約500Hzとなるからである。実際にはスピーカーユニットの上市製品において,呼びの口径が同一といえども振動板の半径は製品毎に若干のばらつきがあり,周波数Bも若干のばらつきが生じるが,概ね周波数Bは使用するスピーカーの口径で一義的に代表値を定めて,それを中心値(基準値)としても差し支えない。
【0049】
次に周波数Aは前述のように,スピーカーユニットのfoを中心にその0.5〜2倍の範囲として考えているが,このfoも現在上市されているスピーカーユニットでは周波数Bと同様,口径により,例えば口径10cmのスピーカーユニットでは概ね80Hz程度,口径12〜16cmの口径のそれでは50〜70Hz程度,口径20cmのそれでは40Hz程度という具合に口径で類似のものとなっている(あくまでオーディオ用途として低音再生を十分に配慮した上市製品であって自作用でよく利用されているものを対象としている)。従って周波数Aは,使用するスピーカーユニットの口径毎における平均的なfoに対し0.5〜2倍の範囲に含まれる適当な倍率で一律に補正すれば,口径で一義的に代表値を定め,それを中心値(基準値)としても差し支えない。
【0050】
さらに周波数Cにおいても,周波数Cは使用するスピーカーユニットのfoに対し,10cmでは概ね1.5倍,20cmでは概ね2倍のように,使用するスピーカーユニットの口径によって概ね定まるのである。
【0051】
これは,第一の従来技術で提示した特許文献1において,バスレフボックスのバスレフダクトの共振周波数すなわち周波数Dは,経験的に使用するスピーカーユニットのfoの約1/2に設定することを先に述べたが,このときのバスレフダクトの共振周波数は,ダクトの断面積と長さおよびボックスの内容積から計算されるので,スピーカーユニットの口径毎に目的とするバスレフ共振周波数が定まれば,実用的なダクト断面積と長さを設定すればおのずとボックスの内容積は類似の大きさに制約を受けること。
【0052】
さらに使用する口径のスピーカーユニット外形寸法がボックスに適度の納まりを持って取り付け可能でなければならず,そのふたつの制約から妥当で実用的なボックス内容積はスピーカーユニットの口径毎にある範囲に集約されるからである。
【0053】
例えば,スピーカーユニットが10cm口径,foが80Hzであるとき,ボックスの内容積の設計は,先の制約から3L〜10L程度の範囲に集約されて設計される。このときのスピーカーユニットとボックス内部空間の共振周波数Cは,3Lで約130Hz(foの約1.6倍),5Lで約110Hz(foの約1.4倍),10Lで約100Hz(foの約1.3倍)となるが,共振周波数Cのfoに対する倍率は概ね1.5倍(120Hz)を代表値として定め,それを中心値(基準値)として差し支えない。
【0054】
同様にスピーカーユニットが20cm口径,foが40Hzであるとき,ボックスの内容積は,10cm口径の場合と同様の理由で,15L〜40L程度の範囲に集約されて設計されることが多い。このときのスピーカーユニットとボックス内部空間の共振周波数Cは,15Lで100Hz(foの約2.5倍),20Lで80Hz(foの約2倍),40Lで65Hz(foの約1.6倍)となるが,共振周波数Cのfoに対する倍率は概ね2倍(80Hz)を代表値として定め,それを中心値(基準値)として差し支えない。
【0055】
これは,上述の周波数Cの説明において,代表値を用いたイコライザー側の周波数Cとスピーカーシステム側の実際の周波数Cとで若干の周波数ズレが起きることを示しているが,このズレによる周波数対音圧特性への影響を検証すれば,スピーカーシステム側の周波数Cとイコライザー装置側の周波数Cの比,すなわち(スピーカーシステム側の周波数C)/(イコライザー装置側の周波数C)が0.5あるいは2のとき周波数対音圧特性において周波数Cの近傍で最大6dBの音圧段差が生じることになる。これは,
図6における(ハ)と(イ)の特性の音圧差が周波数Cの位置を除き6dB/octとなるからで,周波数が2倍変化するときの音圧差が6dBとなるからである。
【0056】
しかし,前述のいくつかの事例のうち(スピーカーシステム側の周波数C)/(イコライザー装置側の周波数C)が最大となる最悪条件は,20cm口径,ボックス内容積15Lの場合であり,その比は1.25である。そのときの音圧への影響は6dBの1/4,すなわち1.5dBの音圧段差が周波数Cの近傍に現れる程度にしかならない。実際に上市されているスピーカーシステムの周波数対音圧特性においては,その再生可能周波数範囲内において±6〜10dBの凸凹ができることは常であってそれでも正常範囲であるから1.5dBという音圧段差はさほど大きなものではない。したがってスピーカーシステム側の実際の周波数Cと,その代表値で定めたイコライザー側の周波数Cに若干の周波数ズレがあってもほとんど差し支えないのである。
【0057】
同様の理由で周波数A,周波数Bにおいても,イコライザー側は使用するスピーカーユニットの口径毎に代表値を用いても差し支えないのである。なお,説明で代表値をさらに中心値(基準値)と置き換えているのは,周波数A,周波数B,周波数CはSW1とSW2の切り替えのほかにr1,r2,r5による調整手段の存在を考慮しているためで,その調整位置に中心(基準)の位置を設けておき,調整がその位置にあるとき代表値となることを前提としているためである。むろん調整手段による調整で先の音圧段差を解消できることは言うまでもない。
【0058】
以上から,周波数Aと周波数Bと周波数Cは使用するスピーカーユニットの口径のみの情報で一義的に定めることが可能なのである。
【0059】
従って,本件発明のイコラーザー装置においては,例えば使用するスピーカーユニットの口径の表示を施した切り替えスイッチをイコライザー装置に設けて置き,スイッチの切り替え位置に応じてイコライザー装置内部で周波数Aと周波数Bと周波数Cをその中心値(基準値)に切り替えるようにしておけば,使用者はイコライザー装置の切り替えSWのつまみを,使用するスピーカーユニットの口径により切り替え選択するだけで,本来スピーカーユニットやボックス大きさ等の諸元から計算や実験等によって設定されるべき周波数A,周波数B,周波数Cそのものを知ることなく概ね適切に各周波数の設定が行えるのである。
【0060】
本件発明の実施例では,SW1とSW2がそのスピーカーユニットの口径に応じた切り替えスイッチに該当する。
図4の実施回路例はLRステレオ両CHのLもしくはRの片側CHの回路のみを示しており,片側回路だけでSW1には1回路3接点のスイッチが,SW2は2回路3接点のスイッチが必要になる。従ってLR両CHを一度に切り替え選択するためにはSW1は2回路3接点,SW2は4回路3接点のスイッチが必要になる。このSW1とSW2は独立させてもよいし6回路3接点としてひとつにまとめてもよい。またSW2はC2側とC3側で個別に設けてもよく切り替え位置の指示がスピーカーユニットの口径で行えるようになっていれば問題ない。なお接点数は適用を想定するスピーカーユニットの口径の種類に応じて増減可能である。
【0061】
さらには,イコライザー装置表面ではSWの切り替え位置の指示は記号や周波数表記のみとし,取扱説明書等でスピーカーユニットの口径とSWの切り替え位置すなわち記号や周波数との対応関係を表として示してもよい。
【0062】
以上のような本件発明のイコライザー装置において,使用するスピーカーユニットの口径を切り替えSW1,SW2によって選択し,その内部において周波数Aと周波数Bと周波数Cがスピーカーユニットの口径に応じて切り替えられるとき,前述のとおり本来のスピーカーシステムの
図2に示す周波数対音圧特性は,
図5に示すイコライザー回路603の周波数対利得特性により,
図6の周波数Dと周波数Bの間は(イ’)〜(ハ’)の範囲に存在することになる。
【0063】
次に
図6の周波数Dと周波数Bの間が(イ’)〜(ハ’)の範囲の周波数対音圧特性であるとき,
図7に示すBEF回路605の周波数対利得特性により,
図8の周波数対音圧特性に補正される。
【0064】
図1に示すスピーカーシステムの音響抵抗物質3によるスピーカーユニット1の機械的共振の抑制が完全でなく,
図2に示す周波数対音圧特性が(ロ)のようであって,その特性が(イ)と(ハ)の中央に位置する特性であれば,BEF回路605のr3のスライダーは利得調整の中央位置にしておくことで,SW1とSW2の切り替えのみで,
図6に示す周波数対音圧特性の周波数Cの音圧の山(ロ’)は,
図8の(a)のように平坦化できる。
【0065】
もし,
図1に示すスピーカーシステムの音響抵抗物質3によるスピーカーユニット1の機械的共振の抑制が完全に近く,
図2に示す周波数対音圧特性が(イ)に近い場合,BEF回路605のr3のスライダーが利得調整の中央位置で,SW1とSW2を切り替えたのみでは,
図6に示す周波数対音圧特性の周波数Cの音圧(イ’)は,
図8の(b)のように周波数Cで音圧の谷ができる。そのときはr3のスライダーを調整して
図7の周波数対利得特性を(イ”)側に調整すれば
図8の(a)に近づけることが可能である。
【0066】
逆に,
図1に示すスピーカーシステムの音響抵抗物質3によるスピーカーユニット1の機械的共振の抑制がほとんど効いておらず
図2に示す周波数対音圧特性が(ハ)に近い場合,BEF回路605のr3のスライダーが利得調整の中央位置で,SW1とSW2を切り替えたのみでは,
図6に示す周波数対音圧特性の周波数Cの音圧(ハ’)は,
図8の(c)のように周波数Cで音圧の山ができる。そのときはr3のスライダーを調整して
図7の周波数対利得特性を(ハ”)側に調整すれば(a)に近づけることが可能である。
【0067】
この調整は,測定器具を用いて精緻に行うこともできるが,単に楽音の聴感のみにより好ましく聴こえるよう適当に行うこともできる。
【0068】
なぜこのような調整が必要であるかというと,現実的な機械的共振抑制では,その周波数対音圧特性は
図2の(ロ)に示すように特性曲線(ハ)と(イ)の中間に位置せざるを得ず,抑制の程度は使用するスピーカーユニットや音響抵抗物質,さらには音響抵抗物質の圧縮具合等によって変わり,(ハ)と(イ)の間の位置を限定できないからである。完全に共振を抑制できればこのような調整は不要であるが,完全に共振を抑制してしまうにはスピーカーユニットの振動板の振動を止めてしまうくらいに音響抵抗物質の内部を行き来する空気の流動を抑制しなければならないからであって,そうすると振動板の振動をも抑制して肝心な音の発生も抑制してしまうから機械的な共振抑制は自ずと中途半端にならざるを得ないのである。
【0069】
ここで,
図2の(ハ)に示す特性は,スピーカーユニットに音響抵抗物質による機械的共振抑制が全く講じられていない場合の周波数対音圧特性で,周波数Bからスピーカーユニットとボックスの内部空間容積で定まる共振周波数Cまでほぼ音圧は一定となり,周波数Cから12dB/octの傾斜で音圧が減少する特性である。
【0070】
従って,前述の
図4の605のBEF回路の中心周波数Cにおける利得を
図2の周波数Cにおける(ハ)と(イ)の音圧差の約1/2を中間点として,残り±1/2程度を調整できるようにしておけば,現実的な機械的共振抑制を講じた場合において概ね
図2の(イ)の特性に近づけることが可能であるし,製作したスピーカーシステムの機械的共振抑制の程度に応じ残り±1/2の調整で正確に(イ)の特性に合わせ込むことも可能になる。つまりr3のスライダーは利得調整の中央位置を中心値(基準値)とすれば良い。
【0071】
このことは,極端な場合,第一の従来技術で提示した特許文献1の構成要件から音響抵抗物質3による機械的共振抑制手段を外して構成したスピーカーシステムでも,605のBEF回路の中心周波数Cにおける利得調整で機械的共振を抑制したことと同様の効果を得て当該特許と同様の低音再生能力を備えた小型の音響装置を構成できることを示唆している。
【0072】
すなわち,
図2で説明したようにバスレフボックスのバスレフ共振の周波数をスピカーユニットのfoの約1/2に設定し,つぎに周波数Aを使用するスピーカーユニットのfoの1倍を基本として0.5〜2倍程度に調整することで,音響抵抗物質3による機械的共振抑制を行わなくても,使用するスピーカーユニットのfoの約1/2の周波数を再生可能な小型の音響装置を得ることができる。
【0073】
しかしその場合,振動板とボックス内部空間は音響抵抗物質がない状態で結ばれるから,ボックスを平行6面体で構成するとき,ボックス内部の平行壁面間の距離に応じて発生する共振が振動板に直接伝搬し,当該共振音が振動板からスピーカーシステムの外部空間に伝搬する,すなわち,いわゆる箱鳴りと呼ばれる共振音を箱の外部に放出しやすいという弊害が残る。
【0074】
周波数A,周波数Bの調整は,測定器具を用いて周波数を最適点に調整する場合や,取扱説明書で調整位置と周波数対音圧特性の関係を説明し,使用するスピーカーユニットとスピーカーユニットの機械的共振の抑制の程度,およびボックスの状況に応じ,単に使用者の感覚で聴感上の好ましい位置に調整するために用いることが考えられる。周波数Cに調整手段を設けた場合も同様である。
【0075】
周波数Aと周波数Bの調整は,SW1による隣り合う切り替え位置での周波数を連続的にカバーできるように設定することが可能である。例えば周波数Aの調整においては,SW1による切り替えが口径で10cm,13cm,20cmの指示であって,周波数Aが口径10cm位置で80Hz,13cm位置で60Hzを中心値として設定してあるとき,10cm位置での調整が周波数マイナス側で概ね10Hz,13cm位置で調整が周波数プラス側で概ね10Hzを最低調整できるように構成すれば周波数Aは口径10cmと13cmの間をほぼ連続的に調整できることになる。13cmと20cmの間も同様である。
【0076】
さらに周波数Aの調整は,中心値(基準値)をfoとして,その1/2から2倍程度の調整が可能なように構成すれば非常に好ましい。なぜなら,特許文献1では,周波数Aは使用するスピーカーユニットのfoの0.5〜2倍としているが,調整の中心値をfoの1倍としておき調整の範囲を中心値からマイナス側を0.5倍〜1倍,プラス側を1倍〜2倍に調整できるようにして常時は中心値に設定しておけば,SW1の切り替えだけでまず使用スピーカーユニットのfoに設定し,次に調整でマイナス側には最大0.5倍,プラス側には最大2倍の調整を口径毎にできる。
【0077】
前述のとおり,バスレフダクトとボックス内部空間の共振周波数Dは使用するスピーカーユニットのfoの約1/2に設定することを基本にすると説明しているが,スピーカーユニットの口径が5cmクラスでは,foが200Hz程度である。このようなスピーカーユニットにおいて試作した経験値では,共振周波数Dを70Hzに設定し,周波数Aを130Hz近傍に調整してもうまく周波数対音圧特性を平坦にできた実績がある。
【0078】
この実績では,周波数Dは使用するスピーカーユニットのfoの0.35倍,そのときの周波数Aはfoの0.65倍であって,周波数Aの調整はfoの0.5倍〜1倍の範囲設定で調整可能である。
【0079】
また,スピーカーユニットの口径が10cmで,foが80Hzのものを使用した経験値では,周波数Dを40Hzに,周波数Aを160Hz近傍に調整しうまく周波数対音圧特性を平坦にできた実績がある。この実績では,周波数Dはスピーカーユニットのfoの1/2,そのときの周波数Aはfoの2倍であって,周波数Aの調整はfoの1倍〜2倍の範囲設定で調整可能である。このように周波数Aの調整を使用できる。
【0080】
一方で周波数Bの調整範囲は,前述のとおり周波数Bがスピーカーユニットの振動板の口径から唯一の値が計算されるようなものなので,周波数Aほど調整範囲を広くする必要がないが,口径毎に計算される中心値(基準値)に対し最大でもマイナス側は0.5倍〜1倍.プラス側は1倍〜1.5倍の調整ができれば十分と考える。
【0081】
この調整機能は,すでに述べたことの繰り返しになるが,周波数Aと周波数Bのr1とr2,周波数Cのr3とさらにr5の調整位置をまず中心点(基準点)にしておけば,口径によるSW1とSW2の切り替えのみで,専門知識や測定器具を使用する技術を持たない者でも概ね適正に周波数Aと周波数B,周波数Cを設定できるというメリットがあるほか,使用するスピーカーユニットの口径や機械的共振抑制の程度,ボックスの容積,ダクトの共振周波数等の諸元と調整範囲の関係について装置の取り扱い説明書に記載しておけば,専門知識や測定器具を使用する技術を有する者のほか,そのような知識や技術を保有しない者でも,より精緻に周波数Aと周波数Bを好ましく調整できようになるという効果がある。
【0082】
なお,
図4においてレベル調整回路601の前のコンデンサC0は,低音カット用に設けたもので設けてもよいし設けなくてもよいが,設ける場合はそのカットオフ周波数を前述の周波数Aより高くすることは好ましくない。なぜなら周波数Aが請求項の構成要件のひとつとして重要であるからである。
【0083】
図4の実施例のようにスピーカーユニットの口径によって周波数A,周波数B,周波数Cを切り替えるよう構成する場合は,C0を数種類用意してC1,C2,C3と同様に切り替えるようにすることもできるし,ただ1種類の値だけ設けてカットオフ周波数を一番大きな口径のスピーカーユニットにおける周波数A以下としておくことや有なしを選択できるようにすることも考えられる。経験的にC0のコンデンサを設けることで音がスッキリする場合がある。
【0084】
図9にイコライザー装置の
図4とは別の回路の実施例を示す。
図9と
図4の違いは,CとRによるイコライザー回路の周波数Aと周波数Bの切り替えをC1の容量の切り替えによらず,R1,R2の値によって行うもので,単にR1全体,R2全体を可変抵抗として連続的に周波数を変えられるようにしてもよいし,段階的に切り替えるようにすることも考えられる。
【0085】
R1やR2を連続的に変化させる場合は,周波数Aと周波数Bの変更は点での切り替えにはならないが,R1とR2の抵抗が必要な抵抗値となる位置における可変抵抗のつまみの指示位置にスピーカーユニットの口径や記号を表示するようにしておけば,切り替えSWと同様に扱えるものにできる。
【0086】
また別の方法としては,
図10のようにC1,C2とC3のセット(C2&C3)でプラグイン部品として構成し,当該プラグイン部品はスピーカーユニットの口径毎に複数種用意提供しておいて,イコライザー装置側で当該プラグイン部品を交換接続できるようにしておけば,使用者はスピーカーユニットの口径に応じてプラグイン部品を選択してイコライザー装置に取り付け接続することで周波数A,周波数B,周波数Cを適切に設定できるようにする構造でも問題ない。
【0087】
極端な場合,C1,C2,C3は切り替えとせず,イコライザー装置の周波数A,周波数B,周波数Cは唯一種類の固定として,イコライザー装置そのものをスピーカーユニットの口径に応じて,これは10cm口径用,これは20cm口径用として構成してもよい。
【0088】
次に,第二の従来技術で述べた,機械的共振抑制を講じないスピーカーユニットをバスレフボックスに組み合わせた一般的なバスレフ形スピーカーシステム,同じく機械的共振抑制を講じないスピーカーユニットを密閉形ボックスに組み合わせた一般的な密閉形スピーカーシステムの,本件発明のイコライザー装置を用いた周波数対音圧特性の改善について説明する。
【0089】
図11は,第二の従来技術による一般的バスレフ形スピーカーシステムを示し,
図12は,その設計を失敗した事例の周波数対音圧特性を説明する図である。
【0090】
この失敗事例は,一般的なバスレフボックスの設計において,
図11のスピーカーユニット1’とバスレフボックス2’の共振周波数(周波数C’)に対し,バスレフダクト202’の共振周波数(周波数D’)の設定が低すぎた場合で,
図12においてバスレフダクトを考慮しない音圧特性(ホ)とバスレフダクトの音圧特性(ヘ)の合成音圧特性(ト)において,周波数C’と周波数D’の間に音圧の谷ができてしまった事例である。
【0091】
このような場合に,本件発明のイコライザー装置を使用して周波数対音圧特性を改善する場合,まず本件発明のイコライザー装置を
図3に示す位置に接続し,次にSW1とSW2をスピーカーユニットの口径にセットする。そのとき周波数Aは中心位置(基準値)で調整なしのままとする。次に周波数Cの利得調整を利得最小(利得の減少が最大)に調整する。その後バスレフダクト内にグラスウール等の音響抵抗物質を詰め込んでバスレフ共振の度合を調整しながら,周波数Aを調整して聴感,または測定器で全体の音圧バランスの調整を行う。
【0092】
この調整について
図12〜
図16を用いて詳細に説明する。
図12において音圧特性(ホ)は,スピーカーユニットとボックス内部空間の共振により,当該共振の中心周波数C’における音圧が,周波数B’における音圧と同一レベルにまで持ち上げられ,中心周波数C’より低い周波数では音圧が急激に低下する特性になっている。周波数C’より低い周波数における音圧低下は12dB/octで起こると一般的には言われている。
【0093】
そのため,周波数C’と周波数D’の間の周波数間隔が広い場合,音圧特性(ホ)と音圧特性(へ)の重なり部分の音圧が双方とも低いため,合成の音圧特性は(ト)のように周波数C’と周波数D’の間で音圧の谷が生じるのである。
【0094】
本件発明のイコライザー装置を使用した場合,まず装置内の
図4の603のイコライザー回路の
図5に示す周波数対利得特性により,
図12のスピーカーシステムの周波数対音圧特性は
図13のように補正される。
【0095】
このとき
図12の周波数B’は前述の如くほぼスピーカーユニットの口径だけに依存するので,口径が同一であれば
図5の周波数Bも同一となり,一般的なバスレフ形スピーカーシステムにおいてもイコライザー装置をそのまま適用可能である。
【0096】
つぎに,
図13の周波数対音圧特性は,
図4のBEF回路605の
図7に示す周波数対利得特性により,
図14のように補正される。このときBEF回路605のr3による中心周波数Cにおける利得の調整を利得最小(利得の減少を最大)とすることで,
図6〜
図8の説明と同一の内容で
図14の周波数C’の音圧の山を平坦化することができる。
【0097】
図14に示すように,イコライザー装置の周波数Cは,前述のように厳密には改善対象の一般的なバスレフ形スピーカーシステムの周波数C’とは一致しない。これは使用するスピーカーユニットのfoが製品によって若干の違いがあるほか,主には一般的なバスレフ形ボックスと,本イコライザー装置の本来の使用目的である第一の従来技術で提示した特許文献1に示すバスレフ形ボックスとで,その構成の考え方の違いから,ボックス内部空間の容積の設定に違いが出るためである。
【0098】
図14の例では,周波数Cが周波数C’より若干高い場合を説明しているが,一般的にはボックス内部空間の容積の違いによるスピーカーユニットとボックス内部空間の容積の共振周波数の違いは,前述のとおり数十%程度にしかならず,それによる周波数Cと周波数C’の音圧差は僅か数dB未満にしかならないので,周波数C’と周波数Cの不一致は周波数対音圧特性にはほとんど影響せず,中心周波数C’の音圧の山を中心周波数CのBEF回路で概ね補正可能なのである。
【0099】
図14において,中心周波数D’のバスレフダクト202’とボックス内部空間201’によるバスレフ共振の音圧(ヘ’)の山のピークの音圧は,
図4のイコラーザー回路603とBEF回路605の補正により,
図14の周波数C’における補正後の音圧に対し高くなることが予想される。
【0100】
従って,もしバスレフ共振の音圧が
図14のように周波数C’における補正後の音圧に対し高くなった場合は,この音圧の山を適度に下げる必要がある。
図15はその様子を示す図で,
図14の共振周波数D’の音圧の山(ヘ’)を
図11のバスレフダクト202’内にグラスウールのような音響抵抗物質をつめて共振度合を弱く調整し,併せて周波数Aの調整も行い(ヘ”)のように山の高さを下げる操作を行う。この調整も測定器によって行うこともできるし,単に聴感によって適当に調整することもできる。
【0101】
以上
図11〜
図15の説明のように,一般のバスレフ形スピーカーシステムにおいて図
12のように,周波数D’と周波数C’の間に音圧の谷があるような場合でも,本件発明によるイコラーザー装置を用いて,
図15のように音圧の谷が無い状態に改善することが比較的容易にできる。もし本件発明のイコライザーを用いない場合は,スピーカーユニットを変更するか,ボックスを作り変えて共振周波数C’を低く変更するか,バスレフダクトのダクト長を短くして共振周波数D’を高く変更するか,いずれにしても機械系の造作をやりかえなければならなくなり,かなりの労力が必要である。
【0102】
これは,
図12示す中心周波数C’のスピーカーユニットとボックス内部空間による機械的な共振を,
図4に示す電気的補正手段BEF回路605とイコライザー回路603で平坦化し特性を再構築する効果であって,機械系の造作はそのままで特性だけを改善できる。
【0103】
なお
図11〜
図15の説明において,周波数Bや周波数Cの調整は説明しなかったが,状況に応じ適宜調整することでより補正を精緻に適正化できることは言うまでもない。
【0104】
以上から,周波数D’におけるバスレフダクトの共振度合の音響抵抗物質による調整,あるいは周波数Aの調整という手間はあるが,従来の一般的なバスレフ形スピーカーシステムにおいて,そのパラメータ設計を失敗した場合に,専門知識や測定装置を有する技術者でなくても低音域の周波数対音圧特性を改善可能なのである。
【0105】
このことを逆に言えば,従来の一般的なバスレフ形スピーカーシステムにおいて,ボックス内容積を意図的に通常より小さく設定しても本件発明のイコライザー装置を用いれば適正な設定と同じだけの低音の周波数再生能力を得ることができるということであるし,また内容積を適正に設定された一般的なバスレフ形スピーカーシステムであれば,スピーカーシステムのバスレフダクトをより長く改造してバスレフ共振の周波数D’をより低くして,
図12に示すような周波数対音圧特性の谷を故意に作り,そこに本件発明のイコライザー装置を適用すれば,手元にある一般的なバスレフ式スピーカーシステムの低音再生周波数の拡大が図れるということである。これは,第一の従来技術の特許でスピーカーユニットに音響抵抗物質による機械的共振抑制手段を施さなかった場合に等しい。
【0106】
図16は,第二の従来技術による密閉形ボックスによるスピーカーシステムで,
図17はその周波数対音圧特性を説明する図である。
【0107】
図17において,周波数C”はスピーカーユニット1”とボックス内容積201”の共振周波数であって,理論的にスピーカーユニット1”のfoより高くなるが,スピーカーユニット1”のfoやQに対し,内容積201”を適正に選定すれば,
図17に示すように周波数C”以上の周波数では音圧を平坦化できる。
【0108】
このような密閉形スピーカーシステムに本件発明のイコライザー装置を適用し,かつSW1とSW2の切り替え位置をスピーカーユニット1”の口径に合わせた場合,まずイコライザー回路603の
図5に示す補正特性により周波数対音圧特性は
図18の(チ’)ように周波数C”に音圧の山が生じ,次にBEF回路605の
図7に示す補正特性により
図19の(チ”)のように,周波数Aまで平坦な特性に改善が可能である。
【0109】
図18と
図19において,周波数C”は周波数Cに,周波数B”は周波数Bに置き換えてもほぼ問題ないことは前述したとおりなので,ここではC”≒C,B”=Bとして説明する。
【0110】
このとき,周波数Aをスピーカーユニット1”のfo周波数と同じ,もしくはより低く設定すれば,中高音と同じ音圧で再生可能な低音周波数の限界を,スピーカーユニット1”のfo周波数より高い周波数C”からfo周波数以下の周波数Aに改善できることになる。例えば,foが80Hzで10cm口径のスピーカーユニットを,5Lの密閉形ボックスに取り付けた場合の周波数C”は120Hz程度となるが,これを80Hz以下に改善できる。
【0111】
次に,同じ密閉形スピーカーボックスによるスピーカーシステムでも設計を失敗した場合に本件発明によるイコライザー装置を用いて特性改善を図った事例について説明する。この場合の周波数対音圧特性の一例を
図20に示す。この例は,一般的な密閉形ボックスで,スピーカー1”の諸元とボックス内容積201”の選定に無理があり,低音の周波数C”が希望の周波数より高めで且つ周波数C”を中心として音圧の山ができてしまった事例である。
【0112】
このような事例は,使用するスピーカーユニットのfoや口径,振動板質量,Qに対し,ボックスサイズを小さめに設計してしまった場合に起こり,特にスピーカーユニットの振動板質量が軽く,Qが大きいスピーカーユニットで起こりやすい。
【0113】
このような場合に,本件発明のイコライザー装置を使用して周波数対音圧特性を改善するには,
図4の604のBEF回路の周波数Cにおける利得調整のマイナス(利得減少側)の調整範囲をこれまでの説明以上に拡大設定しておかねばならない。そのためには相応にBEF共振回路のQを上げるような回路定数の設定が必要となるが,あらかじめBEF回路605のC2とC3,R4とR5を含め他のCR素子の定数がそのように設定されている前提での説明とする。
【0114】
そのようなイコライザー装置を,
図3の位置に接続し,まずSW1とSW2をスピーカーユニットの口径にセットする。そのとき各周波数の調整は中心(基準)位置のままとする。次に周波数Cの利得調整をマイナス側最大に調整する。
【0115】
これついて
図20〜
図22を用いて詳細に説明するが,結論的には,イコライザー装置のBEF回路の周波数Cにおける利得の調整範囲がマイナス側に拡大されたことを除き
図17〜
図19の場合に同じである。
【0116】
図20において音圧特性(チ)は,スピーカーユニット1”とボックス内部空間201”の共振により中心周波数C”において音圧が周波数B”における音圧より高いレベルにまで持ち上げられ,中心周波数C”より低い周波数では急激に音圧が低下する特性になっている。
【0117】
これに本件発明のイコライザー装置を使用すれば,まず装置内の
図4の603のイコライザー回路の
図5に示す補正特性により,その周波数対音圧特性は
図21のようになる。
【0118】
次にBEF回路605の
図7の補正特性により
図21の周波数対音圧特性は
図22のように補正される。
【0119】
つまり,本件発明のイコライザー装置を使用することで,密閉形スピーカーシステムで再生可な低音の周波数を下方に拡大できるのみならず,スピーカーユニットとボックス内容積の設定に失敗した場合の低音域における音圧の山をも改善できるのである。
【0120】
以上において,周波数A,周波数B,周波数Cの中心値の設定はあくまで事例であって,適用スピーカーの口径情報のみから,その設定や切り替え,周波数Aの調整ができるようになっていれば,権利範囲内に属するものとする。
【0121】
また実施例の説明は,イコライザー装置をアナログ回路で構成しているが,コンピューターシステムを用いてデジタルフィルターとし,周波数A,周波数B,周波数Cの設定を適用スピーカーユニットの口径情報で行えるようになっているものも権利範囲に含まれるものとする。
【0122】
以上の説明を改めて整理して説明すれば,本件発明による音響イコライザー装置は,イコライザー装置の周波数A,周波数B,周波数Cを,使用するスピーカーユニットの口径から一義的に代表値に選択,調整する手段を備えたので,イコライザー装置の周波数A,周波数B,周波数Cが当該スピーカーユニットを使用したスピーカーシステムに厳密に必要な周波数A,周波数B,周波数Cとの間に若干のズレがあっても,使用者は必要な周波数A,周波数B,周波数Cを知ることなく,使用するスピーカーユニットの口径によってのみイコライザー装置を選択,あるいは装置の切り替え手段を操作すれば容易に概ね当該スピーカーシステムの低音域の周波数対音圧特性を平坦化し改善を図ることが可能となる。
【0123】
この周波数A,周波数B,周波数Cのスピーカーユニットの口径による選択,切り替えは一括もしくは個別の切り替えSWや部品のプラグインによる交換式によることができるし,口径や記号を付した連続的な調整でも可能である。また全く切り替えや調整がなくスピーカーユニットの口径とイコライザー装置が1対1で対応するようにしてイコライザー装置そのものを取捨選択するようにもできる。
【0124】
このとき,イコライザー装置の周波数A,周波数B,周波数Cは代表値として調整手段を持たない固定式としても前述のように概ね低音域の周波数対音圧特性を平坦化改善が可能であるが,調整の中心値(基準値)位置を明確にした調整手段を備えることもできる。このような調整手段を備えれば,まず調整手段は中心値(基準値)位置でスピーカー口径の選択を行い,その後楽音の聴感や測定により調整手段を調整することでより精緻に周波数対音圧特性を平坦化改善が可能となる。
【0125】
調整手段は,周波数Aにおいて,その存在価値が大きい。なぜならば,特許文献1では使用するスピーカーユニットの口径やfo,バスレフ共振の周波数や音圧の山との関係で適正な周波数Aのfoに対する倍率に幅があるからで,特許文献1では周波数Aをfoの0.5〜2倍としているが,本件特許では特許文献1の範囲に限定するものではないしその中心値(基準値)をfoの1倍に固定するものでもない。
【0126】
周波数CにおけるBEF回路の減衰量は,対象とするスピーカーシステムをある程度制約すれば,一定値として固定可能である。例えば,特許文献1により,スピーカーユニットに音響抵抗手段による機械的共振抑制を行うようなスピーカーシステムでの使用に限定する場合では,
図7の(イ”)と(ハ”)の間の(ロ”)のように,あるいは想定する機械的共振の抑制の程度により(ロ”)を(イ”)もしくは(ハ”)に近づけて固定することができる。また従来の一般的バスレフ形スピーカーシステムでの使用に限定する場合は,
図7の(ハ”)に固定することができる。
【0127】
しかし,対象とするスピーカーシステムを制約しない場合は,BEF回路の減衰量を調整できるようにすることができる。この場合,その調整量は
図7の(ロ”)のように(イ”)と(ハ”)のほぼ中間位置を中心値(基準値)としておき,(イ”)〜(ハ”)の範囲で調整できるようにすることが可能である。むろんこの中心値(基準値)と調整範囲を限定するものでもない。
【産業上の利用可能性】
【0128】
オーディオ装置を提供する産業において,スピーカーシステムを自作する場合,あるいは特許文献1に示す音響装置のうちスピーカーシステムのみを製品化する場合のイコライザー装置を提供する。
【符号の説明】
【0129】
1,1’,1”・・・スピーカーユニット
101・・・スピーカーユニット1の振動板
2,2’,2”・・・ボックス
201,201’,201”・・・ボックス2の内部空間
202・・・バスレフダクト
3・・・音響抵抗物質
301・・・内部空間201に路傍する音響抵抗物資3の面
4・・・仕切り壁
5・・・音源(信号発生)装置
6・・・本件発明のイコライザー装置
601・・・信号レベル調整
602・・・増幅回路
603・・・イコライザー(CRフィルター)回路
604・・・バッファアンプ
605・・・BEF回路
7・・・増幅器(アンプ)