(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066801
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0585 20100101AFI20240509BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240509BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240509BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20240509BHJP
H01M 50/56 20210101ALI20240509BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20240509BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
H01M50/548 101
H01M50/56
H01M50/562
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176512
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宇人
(72)【発明者】
【氏名】清水 崇史
【テーマコード(参考)】
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AM12
5H029BJ02
5H029BJ12
5H029DJ05
5H029DJ12
5H029EJ01
5H029HJ04
5H043AA01
5H043BA19
5H043BA20
5H043CA04
5H043CA13
5H043CB02
5H043CB03
5H043CB07
5H043CB08
5H043DA03
5H043DA13
5H043JA07D
5H043KA07D
5H043KA08D
5H043KA09D
5H043KA12D
5H043LA02D
(57)【要約】
【課題】 クラックの発生を抑制することができる全固体電池を提供する。
【解決手段】 全固体電池は、長さLを有する全固体電池であって、固体電解質層と、電極活物質を含む内部電極と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極が、対向する2端面に交互に露出するように形成された積層チップと、前記2端面に設けられた第1外部電極および第2外部電極と、を備え、前記長さLの方向において前記第1外部電極および前記第2外部電極が延在する距離をそれぞれ距離E1および距離E2とした場合に、0.5L≦(E1+E2)≦0.8Lを満たすことを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さLを有する全固体電池であって、
固体電解質層と、電極活物質を含む内部電極と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極が、対向する2端面に交互に露出するように形成された積層チップと、
前記2端面に設けられた第1外部電極および第2外部電極と、を備え、
前記長さLの方向において前記第1外部電極および前記第2外部電極が延在する距離をそれぞれ距離E1および距離E2とした場合に、0.5L≦(E1+E2)≦0.8Lを満たすことを特徴とする全固体電池。
【請求項2】
距離E1および距離E2は、それぞれ、0.15L以上0.65L以下であることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記第1外部電極および前記第2外部電極の厚みは、10μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記第1外部電極および前記第2外部電極の主成分は、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、C(炭素)、Al(アルミニウム)、またはAu(金)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型の全固体電池は、発火や漏液の心配がなく、またリフロー半田付けが可能であり、安全で取り扱いが容易な二次電池である(例えば、特許文献1~4参照)。従来の電解液を使用したリチウムイオン電池からの移行が検討されており、幅広い分野での利用に展開されることが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/186449号
【特許文献2】国際公開第2020/070989号
【特許文献3】国際公開第2021/070927号
【特許文献3】特開2017-182945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、曲げ応力が加わった場合に全固体電池にクラックが発生するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、クラックの発生を抑制することができる全固体電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る全固体電池は、長さLを有する全固体電池であって、固体電解質層と、電極活物質を含む内部電極と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極が、対向する2端面に交互に露出するように形成された積層チップと、前記2端面に設けられた第1外部電極および第2外部電極と、を備え、前記長さLの方向において前記第1外部電極および前記第2外部電極が延在する距離をそれぞれ距離E1および距離E2とした場合に、0.5L≦(E1+E2)≦0.8Lを満たすことを特徴とする。
【0007】
上記全固体電池において、距離E1および距離E2は、それぞれ、0.15L以上0.65L以下であってもよい。
【0008】
上記全固体電池において、前記第1外部電極および前記第2外部電極の厚みは、10μm以上200μm以下であってもよい。
【0009】
上記全固体電池において、前記第1外部電極および前記第2外部電極の主成分は、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、C(炭素)、Al(アルミニウム)、またはAu(金)であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クラックの発生を抑制することができる全固体電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】全固体電池の基本構造を示す模式的断面図である。
【
図2】複数の電池単位が積層された積層型の全固体電池の外観図である。
【
図4】積層型の他の全固体電池の模式的断面図である。
【
図7】外部電極の厚みの測定手法について説明するための図である。
【
図8】全固体電池の製造方法のフローを例示する図である。
【
図9】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0013】
(実施形態)
図1は、全固体電池200の基本構造を示す模式的断面図である。
図1で例示するように、全固体電池200は、第1内部電極10(第1電極層)と第2内部電極20(第2電極層)とによって、固体電解質層30が挟持された構造を有する。第1内部電極10は、固体電解質層30の第1主面上に形成されている。第2内部電極20は、固体電解質層30の第2主面上に形成されている。例えば、第1内部電極10、第2内部電極20、および固体電解質層30は、粉末材料を焼結させることによって得られる焼結体である。
【0014】
全固体電池200を二次電池として用いる場合には、第1内部電極10および第2内部電極20の一方を正極として用い、他方を負極として用いる。本実施形態においては、一例として、第1内部電極10を正極層として用い、第2内部電極20を負極層として用いるものとする。
【0015】
固体電解質層30は、NASICON型の結晶構造を有し、イオン伝導性を有する酸化物系固体電解質を主成分とする。固体電解質層30の固体電解質は、例えばリチウムイオン伝導性を有する酸化物系固体電解質である。当該固体電解質は、例えば、リン酸塩系固体電解質である。NASICON型の結晶構造を有するリン酸塩系固体電解質は、高い導電率を有するとともに、大気中で安定しているという性質を有している。リン酸塩系固体電解質は、例えば、リチウムを含んだリン酸塩である。当該リン酸塩は、特に限定されるものではないが、例えば、Tiとの複合リン酸リチウム塩(例えば、LiTi2(PO4)3)などが挙げられる。または、TiをGe,Sn,Hf,Zrなどといった4価の遷移金属に一部あるいは全部置換することもできる。また、Li含有量を増加させるために、Al,Ga,In,Y,Laなどの3価の遷移金属に一部置換してもよい。より具体的には、例えば、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3や、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3、Li1+xAlxTi2-x(PO4)3などが挙げられる。例えば、第1内部電極10および第2内部電極20に含有されるオリビン型結晶構造をもつリン酸塩が含む遷移金属と同じ遷移金属を予め添加させたLi-Al-Ge-PO4系材料が好ましい。例えば、第1内部電極10および第2内部電極20にCoおよびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、Coを予め添加したLi-Al-Ge-PO4系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。この場合、電極活物質が含む遷移金属の電解質への溶出を抑制する効果が得られる。第1内部電極10および第2内部電極20にCo以外の遷移元素およびLiを含むリン酸塩が含有される場合には、当該遷移金属を予め添加したLi-Al-Ge-PO4系材料が固体電解質層30に含まれることが好ましい。
【0016】
正極として用いられる第1内部電極10は、オリビン型結晶構造をもつ物質を電極活物質として含有する。第2内部電極20も、当該電極活物質を含有していることが好ましい。このような電極活物質として、遷移金属とリチウムとを含むリン酸塩が挙げられる。オリビン型結晶構造は、天然のカンラン石(olivine)が有する結晶であり、X線回折において判別することができる。
【0017】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質の典型例として、Coを含むLiCoPO4などを用いることができる。この化学式において遷移金属のCoが置き換わったリン酸塩などを用いることもできる。ここで、価数に応じてLiやPO4の比率は変動し得る。なお、遷移金属として、Co,Mn,Fe,Niなどを用いることが好ましい。
【0018】
オリビン型結晶構造をもつ電極活物質は、正極として作用する第1内部電極10においては、正極活物質として作用する。例えば、第1内部電極10にのみオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合には、当該電極活物質が正極活物質として作用する。第2内部電極20にもオリビン型結晶構造をもつ電極活物質が含まれる場合に、負極として作用する第2内部電極20においては、その作用メカニズムは完全には判明してはいないものの、負極活物質との部分的な固溶状態の形成に基づくと推察される、放電容量の増大、ならびに、放電に伴う動作電位の上昇という効果が発揮される。
【0019】
第1内部電極10および第2内部電極20の両方ともオリビン型結晶構造をもつ電極活物質を含有する場合に、それぞれの電極活物質には、好ましくは、互いに同一であっても異なっていてもよい遷移金属が含まれる。「互いに同一であっても異なっていてもよい」ということは、第1内部電極10および第2内部電極20が含有する電極活物質が同種の遷移金属を含んでいてもよいし、互いに異なる種類の遷移金属が含まれていてもよい、ということである。第1内部電極10および第2内部電極20には一種だけの遷移金属が含まれていてもよいし、二種以上の遷移金属が含まれていてもよい。好ましくは、第1内部電極10および第2内部電極20には同種の遷移金属が含まれる。より好ましくは、両電極が含有する電極活物質は化学組成が同一である。第1内部電極10および第2内部電極20に同種の遷移金属が含まれていたり、同組成の電極活物質が含まれていたりすることにより、両内部電極層の組成の類似性が高まるので、全固体電池200の端子の取り付けを正負逆にしてしまった場合であっても、用途によっては誤作動せずに実使用に耐えられるという効果を有する。
【0020】
第2内部電極20は、負極活物質を含んでいる。一方の電極だけに負極活物質を含有させることによって、当該一方の電極は負極として作用し、他方の電極が正極として作用することが明確になる。なお、両方の電極に負極活物質として公知である物質を含有させてもよい。電極の負極活物質については、二次電池における従来技術を適宜参照することができ、例えば、チタン酸化物、リチウムチタン複合酸化物、リチウムチタン複合リン酸塩、カーボン、リン酸バナジウムリチウムなどの化合物が挙げられる。
【0021】
第1内部電極10および第2内部電極20の作製においては、これら電極活物質に加えて、イオン電導性を有する固体電解質や、導電性材料(導電助剤)などが添加されている。これらの部材については、バインダと可塑剤を水あるいは有機溶剤に均一分散させることで内部電極用ペーストを得ることができる。導電助剤として、カーボン材料などが含まれていてもよい。導電助剤として、金属が含まれていてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。第1内部電極10および第2内部電極20に含まれる固体電解質は、例えば、固体電解質層30の主成分固体電解質と同じとすることができる。
【0022】
固体電解質層30の厚さは、例えば、5μm以上30μm以下であり、7μm以上25μm以下であり、10μm以上20μm以下である。第1内部電極10および第2内部電極20の厚さは、例えば、5μm以上50μm以下であり、7μm以上45μm以下であり、10μm以上40μm以下である。各層の厚さは、例えば、1層の異なる10点の厚さの平均値として測定することができる。
【0023】
図2は、全固体電池200を電池単位として、複数の電池単位が積層された積層型の全固体電池100の外観図である。
図2で例示するように、全固体電池100は、略直方体形状を有する積層チップ70と、積層チップ70のいずれかの対向する2端面に設けられた第1外部電極40aおよび第2外部電極40bと、を備える。なお、積層チップ70の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。第1外部電極40aおよび第2外部電極40bは、積層チップ70の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bは、互いに離間している。全固体電池100のサイズは、例えば、長さ4.1mm~4.9mm、幅2.9mm~3.5mm、高さ2.9mm~3.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。なお、長さは、第1外部電極40aと第2外部電極40bとが対向する方向の長さである。高さは、積層方向の高さのことである。
【0024】
図3は、
図2のI-I線に沿う断面図である。以下の説明において、全固体電池200と同一の組成範囲、同一の厚み範囲、および同一の粒度分布範囲を有するものについては、同一符号を付すことで詳細な説明を省略する。
【0025】
全固体電池200においては、複数の第1内部電極10と複数の第2内部電極20とが、固体電解質層30を介して交互に積層されている。複数の第1内部電極10の端縁は、積層チップ70の第1端面に露出し、第2端面には露出していない。複数の第2内部電極20の端縁は、積層チップ70の第2端面に露出し、第1端面には露出していない。それにより、第1内部電極10および第2内部電極20は、第1外部電極40aと第2外部電極40bとに、交互に導通している。なお、固体電解質層30は、第1外部電極40aから第2外部電極40bにかけて延在している。このように、全固体電池100は、複数の電池単位が積層された構造を有している。
【0026】
第1内部電極10、固体電解質層30および第2内部電極20の積層体の上面に、カバー層50が積層されている。当該カバー層50は、最上層の内部電極(第1内部電極10および第2内部電極20のいずれか一方)に接するとともに、固体電解質層30の一部に接している。当該積層体の下面にも、カバー層50が積層されている。当該カバー層50は、最下層の内部電極(第1内部電極10および第2内部電極20のいずれか一方)に接するとともに、固体電解質層30の一部に接している。例えば、カバー層50は、粉末材料を焼結させることによって得られる焼結体である。
【0027】
第1内部電極10および第2内部電極20は、集電体層を備えていてもよい。例えば、
図4で例示するように、第1内部電極10内に第1集電体層11が設けられていてもよい。また、第2内部電極20内に第2集電体層21が設けられていてもよい。第1集電体層11および第2集電体層21は、導電性材料を主成分とする。例えば、第1集電体層11および第2集電体層21の導電性材料として、金属、カーボンなどを用いることができる。第1集電体層11を第1外部電極40aに接続し、第2集電体層21を第2外部電極40bに接続することで、集電効率が向上する。
【0028】
図3や
図4の全固体電池100のような積層型全固体電池では、曲げ応力が加わった場合にクラックが発生するおそれがある。そこで、本実施形態では、クラックの発生を抑制することができる構成について説明する。
【0029】
図5で例示するように、全固体電池100において、第1外部電極40aと第2外部電極40bとが対向する方向の長さを長さLとする。第1外部電極40aが積層チップ70の上面、下面、および2側面で長さLの方向に延在する延在距離を距離E1とする。第2外部電極40bが積層チップ70の上面、下面、および2側面で長さLの方向に延在する延在距離を距離E2とする。距離E1および距離E2の合計量である距離Eが、0.5L≦距離E≦0.8Lの関係を満たす。0.5L≦距離Eの関係を満たすことで、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが、積層チップ70の上面、下面、および2側面に対して十分に回り込むようになる。それにより、全固体電池100に対する曲げの変位が第1外部電極40aおよび第2外部電極40bによって抑制され、クラックの発生を抑制することができるようになる。その結果、積層チップ10の内部への水分侵入などを抑制することができるようになる。また、距離E≦0.8Lの関係を満たすことで、第1外部電極40aと第2外部電極40bとの離間距離が十分に大きくなる。それにより、リーク電流が抑制され、全固体電池100のサイクル特性の劣化を抑制することができる。
【0030】
全固体電池100に対する曲げの変位を抑制する観点から、距離Eは、0.5L以上であることが好ましく、0.6L以上であることがより好ましい。
【0031】
一方、リーク電流の発生を抑制する観点から、距離Eは、0.8L以下であることが好ましく、0.7L以下であることがより好ましい。
【0032】
距離E1および距離E2が互いに等しく、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが対称な形状を有していてもよい。または、
図6で例示するように、距離E1および距離E2が互いに異なっており、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが非対称な形状を有していてもよい。例えば、
図6で例示するように、距離E1が距離E2よりも長くなっていてもよい。
【0033】
全固体電池100に対する曲げの変位を抑制する観点から、距離E1および距離E2は、それぞれ、0.15L以上であることが好ましく、0.2L以上であることがより好ましく、0.25L以上であることがさらに好ましい。
【0034】
一方、リーク電流の発生を抑制する観点から、距離E1および距離E2は、それぞれ、0.65L以下であることが好ましく、0.525L以下であることがより好ましく、0.4L以下であることがさらに好ましい。
【0035】
全固体電池100に対する曲げの変位を抑制する観点から、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが厚く形成されていることが好ましい。本実施形態においては、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの厚みは、10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。
【0036】
なお、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの厚みは、異なる9点の厚みの平均値のようにして測定することができる。例えば、
図7で例示するように、第2外部電極40bにおいて、積層チップ70の上面における端部(1)、角部(3)、端部(1)と角部(3)との中点(2)、積層チップ70の下面における端部(9)、角部(7)、端部(9)と角部(7)との中点(8)、角部(3)と角部(7)との間を等間隔の3点(4)~(6)の9点の厚みを測定することができる。第1外部電極40aの厚みについても同様に測定することができる。
【0037】
一方で、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bが厚すぎると、容量密度の低下のおそれがある。そこで、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの厚みに上限を設けることが好ましい。本実施形態においては、第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの厚みは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0038】
第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの主成分は、例えば、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、C(炭素)、Al(アルミニウム)、Au(金)などである。
【0039】
続いて、
図2で例示した全固体電池100の製造方法について説明する。
図8は、全固体電池100の製造方法のフローを例示する図である。
【0040】
(固体電解質層用の原料粉末作製工程)
まず、上述の固体電解質層30を構成する固体電解質層用の原料粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、酸化物系固体電解質の原料粉末を作製することができる。得られた原料粉末を乾式粉砕することで、所望の平均粒径に調整することができる。例えば、5mmφのZrO2ボールを用いた遊星ボールミルで、所望の平均粒径に調整する。
【0041】
(カバー層用の原料粉末作製工程)
まず、上述のカバー層50を構成するセラミックスの原料粉末を作製する。例えば、原料、添加物などを混合し、固相合成法などを用いることで、カバー層用の原料粉末を作製することができる。
【0042】
(電極層用ペースト作製工程)
次に、上述の第1内部電極10および第2内部電極20の作製用の内部電極用ペーストを個別に作製する。例えば、導電助剤、電極活物質、固体電解質材料、焼結助剤、バインダ、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで内部電極用ペーストを得ることができる。固体電解質材料として、上述した固体電解質ペーストを用いてもよい。導電助剤として、カーボン材料などを用いる。導電助剤として、金属を用いてもよい。導電助剤の金属としては、Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金などが挙げられる。Pd、Ni、Cu、Fe、これらを含む合金や各種カーボン材料などをさらに用いてもよい。
【0043】
内部電極用ペーストの焼結助剤として、例えば、Li-B-O系化合物、Li-Si-O系化合物、Li-C-O系化合物、Li-S-O系化合物,Li-P-O系化合物などのガラス成分のどれか1つあるいは複数などのガラス成分が含まれている。
【0044】
(外部電極用ペースト作製工程)
次に、上述の第1外部電極40aおよび第2外部電極40bの作製用の外部電極用ペーストを作製する。例えば、導電性材料、ガラスフリット、バインダ、可塑剤などを水あるいは有機溶剤に均一分散させることで外部電極用ペーストを得ることができる。
【0045】
(固体電解質グリーンシート作製工程)
固体電解質層用の原料粉末を、結着材、分散剤、可塑剤などとともに、水性溶媒あるいは有機溶媒に均一に分散させて、湿式粉砕を行うことで、所望の平均粒径を有する固体電解質スラリを得る。このとき、ビーズミル、湿式ジェットミル、各種混練機、高圧ホモジナイザーなどを用いることができ、粒度分布の調整と分散とを同時に行うことができる観点からビーズミルを用いることが好ましい。得られた固体電解質スラリにバインダを添加して固体電解質ペーストを得る。得られた固体電解質ペーストを塗工することで、固体電解質グリーンシート51を作製することができる。塗工方法は、特に限定されるものではなく、スロットダイ方式、リバースコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ドクターブレード方式などを用いることができる。湿式粉砕後の粒度分布は、例えば、レーザ回折散乱法を用いたレーザ回折測定装置を用いて測定することができる。
【0046】
(積層工程)
図9(a)で例示するように、固体電解質グリーンシート51の一面に、内部電極用ペースト52を印刷する。固体電解質グリーンシート51上で内部電極用ペースト52が印刷されていない領域には、逆パターン53を印刷する。逆パターン53として、固体電解質グリーンシート51と同様のものを用いることができる。印刷後の複数の固体電解質グリーンシート51を、交互にずらして積層する。
図9(b)で例示するように、積層方向の上下から、カバーシート54を圧着することで、積層体を得る。この場合、当該積層体において、一方の端面に第1内部電極10用の内部電極用ペースト52が露出し、他方の端面に第2内部電極20用の内部電極用ペースト52が露出するように、略直方体形状の積層体を得る。カバーシート54は、固体電解質グリーンシート作製工程と同様の手法でカバー層用の原料粉末を塗工することで形成することができる。カバーシート54は、固体電解質グリーンシート51よりも厚く形成しておく。塗工時に厚くしてもよく、塗工したシートを複数枚重ねることで厚くしてもよい。
【0047】
次に、2端面のそれぞれに、ディップ法等で外部電極用ペースト55を塗布して乾燥させる。これにより、全固体電池100を形成するための成型体が得られる。
【0048】
(焼成工程)
次に、得られたセラミック積層体を焼成する。焼成の条件は酸化性雰囲気下あるいは非酸化性雰囲気下で、最高温度を好ましくは400℃~1000℃、より好ましくは500℃~900℃などとすることが特に限定なく挙げられる。最高温度に達するまでにバインダを十分に除去するために酸化性雰囲気において最高温度より低い温度で保持する工程を設けてもよい。プロセスコストを低減するためにはできるだけ低温で焼成することが望ましい。焼成後に、再酸化処理を施してもよい。以上の工程により、全固体電池100が生成される。
【0049】
なお、内部電極用ペーストと、導電性材料を含む集電体用ペーストと、内部電極用ペーストとを順に積層することで、第1内部電極10および第2内部電極20内に集電体層を形成することができる。
【実施例0050】
(実施例1)
上記実施形態に従って積層型の全固体電池を作製した。第1固体電解質グリーンシート上に、第1内部電極層(正極層)用の第1内部電極用ペーストをスクリーン印刷法により塗布形成した。第1固体電解質グリーンシート上において、第1内部電極用ペーストの周囲に、第1余白層用の余白層用ペーストを印刷した。第2固体電解質グリーンシート上に、第2内部電極層(負極層)用の第2内部電極用ペーストをスクリーン印刷法により塗布形成した。第2固体電解質グリーンシート上において、第2内部電極用ペーストの周囲に、第2余白層用の余白層用ペーストを印刷した。正極層用の第1内部電極用ペーストと、負極層用の第2内部電極用ペーストとが同じ厚みになるようにした。複数の第1固体電解質グリーンシートと、複数の第2固体電解質グリーンシートとを、正極層と負極層とが交互に左右に引き出されるように積層した。所定のサイズにカットし、積層型全固体電池のグリーンチップを得た。グリーンチップを脱脂・焼成することで焼結し、外部電極用ペーストを塗布形成・硬化することで第1外部電極および第2外部電極を形成し、積層型全固体電池を得た。第1外部電極としてAg(銀)を用い、第2外部電極の材料としてCu(銅)を用いた。第1外部電極の厚みは30μmであり、第2外部電極の厚みは50μmであった。
【0051】
第1外部電極における距離E1は、0.3Lであった。第2外部電極における距離E2は、0.3Lであった。距離E=E1+E2は、0.6Lであった。
【0052】
(実施例2)
実施例2では、第1外部電極における距離E1を0.4Lとした。第2外部電極における距離E2を0.2Lとした。距離E=E1+E2は、0.6Lであった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0053】
(実施例3)
実施例3では、第1外部電極における距離E1を0.15Lとした。第2外部電極における距離E2を0.35Lとした。距離E=E1+E2は、0.5Lであった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0054】
(実施例4)
実施例4では、第1外部電極における距離E1を0.25Lとした。第2外部電極における距離E2を0.25Lとした。距離E=E1+E2は、0.5Lであった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0055】
(実施例5)
実施例5では、第1外部電極における距離E1を0.15Lとした。第2外部電極における距離E2を0.65Lとした。距離E=E1+E2は、0.8Lであった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0056】
(実施例6)
実施例6では、第1外部電極における距離E1を0.4Lとした。第2外部電極における距離E2を0.4Lとした。距離E=E1+E2は、0.8Lであった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0057】
(比較例1)
比較例1では、第1外部電極における距離E1を0.1Lとした。第2外部電極における距離E2を0.1Lとした。距離E=E1+E2は、0.2Lであった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0058】
(比較例2)
比較例2では、第1外部電極における距離E1を0.45Lとした。第2外部電極における距離E2を0.45Lとした。距離E=E1+E2は、0.9Lであった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0059】
(サイクル特性試験)
実施例1~6および比較例1,2の各全固体電池について、サイクル特性試験を行った。サイクル特性試験では、25℃の環境において、上限電圧を3.3Vとし、下限電圧を2.0Vとし、0.2Cで充放電サイクル試験を行なった。
【0060】
サイクル特性試験を行った結果、1stサイクルに対する2000サイクル後の放電容量の維持率が、85%以上100%以下であれば合格「〇」と判定し、60%以上85%未満であればやや良好「△」と判定し、60%未満であれば不合格「×」と判定した。実施例1~6および比較例1では、サイクル特性試験が合格「〇」と判定された。これは、E≦0.8Lの条件を満たしてリーク電流が抑制されたからであると考えられる。
【0061】
(耐プリント板曲げ性試験)
実施例1~6および比較例1,2の各全固体電池について、耐プリント板曲げ性試験を行った。耐プリント板曲げ性試験では、素子が実装された試験基板を曲げ試験に置き、1.0mm/s±0.5mm/sの速度で曲げ深さの値が1mm、2mm、3mm、4mmに達するまで徐々に曲げた。試験基板は、曲げた状態に20秒±1秒間保持した。曲げ試験後の素子に対して先述のサイクル試験を行い、放電容量の維持率を評価した。
【0062】
耐プリント板曲げ性試験を行った結果、1stサイクルに対する2000サイクル後の放電容量の維持率が85%以上100%以下であれば合格「〇」と判定し、60%以上85%未満であればやや良好「△」と判定し、60%未満であれば不合格「×」と判定した。実施例1~6および比較例2では、耐プリント板曲げ性試験が合格「〇」と判定された。これは、0.5L≦Eの条件を満たして曲げを抑制できたからであると考えられる。
【0063】
サイクル特性試験および耐プリント板曲げ性試験の両方において不合格と判定されなければ、総合評価を合格「〇」と判定した。サイクル特性試験および耐プリント板曲げ性試験のいずれか一方でも不合格になっていれば、総合評価を不合格「×」と判定した。実施例1~6では、総合評価が合格「〇」と判定された。これは、0.5L≦E≦0.8Lの条件を満たしたからであると考えられる。一方、比較例1,2では、総合評価が不合格「×」と判定された。これは、0.5L≦E≦0.8Lの条件を満たさなかったからであると考えられる。
【表1】
【0064】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。