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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066806
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】テストピース
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20240509BHJP
   G01N 15/00 20240101ALN20240509BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176518
(22)【出願日】2022-11-02
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】田中 修
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001FA01
2G001GA01
2G001GA06
2G001HA13
(57)【要約】
【課題】透光性のカバーで覆われた標準物質の外径を正確に計測できるテストピースを提供する。
【解決手段】テストピース1は、台紙3に固定された標準物質2と、台紙3及び標準物質2を覆う透光性の上側カバー5及び下側カバー6を有する。上側カバー5は、測定方向から見た平面視で標準物質2よりも大きい平坦部7と、平坦部7の外周縁に連続する側周部8を有する。標準物質2は、側周部8から離間した中央位置に固定されている。反射光で標準物質の外形を測定する場合には、標準物質で反射した光は、側周部8を透過して屈折することなく平坦部7のみを透過して直進するため、標準物質2の外形を正確に測定することができる(図4)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線検査装置による異物検出の精度を確認するためのテストピース(1,1a,21,31)であって、
所定の材料によって所定の形状に形成された標準物質(2)と、
前記標準物質を覆う部分に前記標準物質よりも大きい平坦部(7)が設けられた透光性のカバー(5,6)と、
を具備することを特徴とするテストピース(1,1a,21,31)。
【請求項2】
前記平坦部(7)と交差する測定方向から見た前記平坦部の大きさが、前記測定方向から見た前記標準物質(2)の外形よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のテストピース(1,1a,21,31)。
【請求項3】
前記標準物質(2)は、前記平坦部(7)の外周に連続する側周部(8)から離間した位置に固定されていることを特徴とする請求項2に記載のテストピース(1,21,31)。
【請求項4】
前記標準物質(2)は、前記側周部(8)の中央に固定されていることを特徴とする請求項3に記載のテストピース(1,21,31)。
【請求項5】
前記カバー(5,6)は、平板状の第1部材(6)と、前記側周部(8)と前記平坦部(7)が形成された第2部材(5)とによって構成されていることを特徴とする請求項4に記載のテストピース(1,21,31)。
【請求項6】
前記平坦部(7)と対面するように前記第1部材(6)と前記第2部材(7)の間に挟持された基体(3)をさらに有し、前記標準物質(2)は前記基体に固定されていることを特徴とする請求項5に記載のテストピース(1,21,31)。
【請求項7】
前記標準物質(2)は前記平坦部(7)と対面するように前記第1部材(6)に固定されていることを特徴とする請求項5に記載のテストピース(21)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性のカバーで標準物質を覆った構造を備えており、X線検査装置による異物検出の精度を確認するためのテストピースに係り、特に、カバー外から標準物質の外形を正確に計測できるテストピースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
被検査物に混入した異物をX線検査装置によって検出する作業では、異物の検出精度を確認するためにテストピースが使用されている。具体的には、所定の材質、外形(形状、外径等)の標準物質を透光性のカバーで覆った構造のテストピースを被検査物に付してX線検査装置でX線検査を行ない、そのX線透過画像における標準物質の表れ方(写り方)によって検出可能な異物のサイズ等を確認することができる。
【0003】
下記特許文献1には、このようなテストピースの発明が開示されている。
このテストピース(特許文献1では試験体10)は、種々の外径を有する複数個の球形の標準物質(特許文献1ではサンプル11a等)と、これら標準物質を覆う透光性のカバー(特許文献1ではラミネートフィルム13a,13b)を備えている。
【0004】
下記特許文献1に開示されたテストピースは、複数個の標準物質を有する多連タイプであり、その一例を図9に示す。このテストピース100は、台紙101と、台紙101の上に一列に取りつけられた複数個の球形の標準物質102と、各標準物質102を覆う複数個の半球状(又は砲弾状)の収容部103が一列に形成された上側カバー104と、平板状の下側カバー105を備えている。複数個の標準物質102は、その外径が互いに異なっており、外径の大きさの順に並んでいる。上側カバー104の複数の収容部103は、各標準物質102の外径と対応するように内径が定められており、内径の大きさの順に並んでいる。そして、各標準物質102が、対応する内径の収容部103に収容されるように、標準物質102を取りつけた台紙101を上側カバー104と下側カバー105で挟み、上側カバー104と下側カバー105の外周縁部をヒートシールして一体化すれば、大きさの順に並べられた外径が異なる複数個の標準物質102をカバー104,105で覆った構造のテストピース100が得られる。
【0005】
テストピースには、標準物質が1個である単品タイプもあり、その一例を図10に示す。図10に示すように、単品タイプのテストピース200は、台紙201と、台紙201の上に取りつけた球形の標準物質202と、標準物質202を覆う半球状(又は砲弾状)の収容部203が形成された上側カバー204と、平板状の下側カバー205を備えており、上側カバー204と下側カバー205は台紙201を挟んで外周縁部で一体化されている。
【0006】
単品タイプのテストピース200を製造する場合には、図11(a)に示すように、標準物質200を取りつけた台紙201を下側カバー205の上に配置し、標準物質202が収容部203に覆われるように上側カバー204を台紙201の上に被せ、図11(b)に示すように、上側カバー204と下側カバー205の外周縁部を加熱圧着装置300で挟持してヒートシールすればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2020-46342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
テストピースはX線検査装置による異物検出の精度を確認するための重要なツールである。このため、カバーに覆われた標準物質は、その外形が定められた所定の形状、外径等となるよう正確に製造されている必要がある。例えば標準物質が球形である場合、仮に、カバー又は台紙に表示された標準物質の外径と、実際にカバーに覆われている標準物質の外径が異なると、X線透過画像による異物検出の精度を保証することができなくなる可能性がある。また、テストピースが前述した多連タイプであれば、複数の標準物質の各外径が正しく、かつ各標準物質が大きさの順に並べられている必要がある。仮に、複数の標準物質の各外径が正しくても、標準物質を台紙上に並べる際に位置の入れ違いがあり、複数の標準物質が大きさの順に並べられていないと、X線透過画像に表れた標準物質の画像を誤って評価する事態が想起され、この場合もまた、X線透過画像による異物検出の精度を保証することができなくなる可能性がある。
【0009】
そこで、テストピースを用いたX線検査装置による異物検出の精度を保証するために、テストピースが正規の製品として製造されているかを確認する作業が、製造時点において実施されている。この場合、標準物質を覆う上側カバーと下側カバーの外周縁部をヒートシールしてテストピースの製造工程が完了した後に、カバーの外側から標準物質の外径を測定して確認するのが一般的である。
【0010】
図12は、テストピース200の上側カバー204の側からカメラで標準物質202を撮影して、その外径を計測する手法を示す図である。図12において、図示しないカメラは撮影方向を下向きとしてテストピース200の収容部203の上方に配置されており、下方の標準物質202を収容部203越しに撮影している。テストピース200の周囲から標準物質202に来る光は標準物質202で反射して周囲のあらゆる方向に反射しているが、カメラは、図中の縦方向の矢印で示す上向きに反射してくる光を捉えて標準物質202を撮影する。この際、標準物質202で反射してカメラに向かう光の少なくとも一部は、図中の縦方向の矢印で示すように、上側カバー204の収容部203を透過する際に屈折して経路が変化するため、撮影した標準物質202の外径が実寸よりも大きい長さDFとして測定される場合があった。このように、従来のテストピース200において、反射光を用いて標準物質202の外径を正確に計測することは難しい場合があるという問題点があった。
【0011】
図13は、テストピース200の下側カバー205の下方から光を上向きに照射し、上側カバー204の収容部203の上方に下向きで配置したカメラによって標準物質202を撮影し、その外径を計測する手法を示す図である。図13(b)において、上向きの矢印で示すように、テストピース200の下方から上方に向けて照射された光は、テストピース200の透過光としてカメラにより撮影される。ここで透過光の少なくとも一部は、図中の矢印で示すように上側カバー204の収容部203を透過する際に屈折して経路が変化するため、図13(a)に示すように、上側カバー204の半球状の収容部203によって生成される環状の影S1の内縁と、標準物質202によって生成される円形の影S2の外縁が互いに重なる場合があるため、標準物質202の外縁又は輪郭が画像から認識しにくくなることがあった。このように、従来のテストピース200において、透過光を用いて標準物質202の外径を正確に計測するには困難が伴う場合があるという問題点があった。
【0012】
このため、テストピースの製造工程が完了した後ではなく、テストピースの製造工程の途中で標準物質の外径を測定することも考えられる。例えば、上側カバーと下側カバーをヒートシールする作業の前工程で、台紙上に配置した標準物質を直接カメラで撮影することも考えられる。しかしながら、これでは、製造工程が単に一工程増加するだけではなく、通常の製造工程の途中に検査工程を挟むために製造ラインの再配置が必要となり、また製造途中であってカバーで覆われていない標準物質の取り扱い乃至搬送等については、標準物質の紛失や取り間違え、さらに汚染等に関しても特段の配慮が必要となるため、非常に煩雑となることが予想される。
【0013】
次に、正規に製造されたテストピースであっても、X線検査装置による異物検査において使用されるテストピースの標準物質が、検査の基準に適合した外径のものであるか否かを定期的(例えば1年に1回)に確認することが求められる場合がある。そのような場合には、図12及び図13を参照して説明したように、反射光又は透過光を用いてカバー越しに標準物質202の外径を測定して基準に適合しているか否かを確認することになるが、上述したように上側カバー204の収容部203により光が屈折するため、この場合にも、正確な測定が困難である場合があるという問題があった。
【0014】
本発明は、以上説明した従来の技術における課題を解決するためになされたものであって、透光性のカバーで覆われた標準物質の外径を正確に計測できるテストピースを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載されたテストピース1,1a,21,31は、
X線検査装置による異物検出の精度を確認するためのテストピース1,1a,21,31であって、
所定の材料によって所定の形状に形成された標準物質2と、
前記標準物質2を覆う部分に前記標準物質2よりも大きい平坦部7が設けられた透光性のカバー5,6と、
を具備することを特徴としている。
【0016】
請求項2に記載されたテストピース1,1a,21,31は、請求項1に記載のテストピースにおいて、
前記平坦部7と交差する測定方向から見た前記平坦部7の大きさが、前記測定方向から見た前記標準物質2の外形よりも大きいことを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載されたテストピース1,21,31は、請求項2に記載のテストピースにおいて、
前記標準物質2は、前記平坦部7の外周に連続する側周部8から離間した位置に固定されていることを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載されたテストピース1,21,31は、請求項3に記載のテストピースにおいて、
前記標準物質2は、前記側周部8の中央に固定されていることを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載されたテストピース1,21,31は、請求項4に記載のテストピースにおいて、
前記カバー5,6は、平板状の第1部材6と、前記側周部8と前記平坦部7が形成された第2部材5とによって構成されていることを特徴としている。
【0020】
請求項6に記載されたテストピース1,31は、請求項5に記載のテストピースにおいて、
前記平坦部7と対面するように前記第1部材6と前記第2部材5の間に挟持された基体3をさらに有し、前記標準物質2が前記基体3に固定されていることを特徴としている。
【0021】
請求項7に記載されたテストピース21は、請求項5に記載のテストピースにおいて、
前記標準物質2が前記平坦部7と対面するように前記第1部材6に固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載されたテストピースによれば、標準物質を覆うカバーの一部分には、標準物質よりも大きい平坦部が設けられているため、平坦部の外縁の内方に標準物質を配置する構成を採用できるため、標準物質の外形を正確に測定することができる。
【0023】
請求項2に記載されたテストピースによれば、測定方向から見た平坦部の大きさが、測定方向から見た標準物質の外形よりも大きいため、平坦部の外縁と標準物質の間に間隙が生じるように標準物質を配置する構成が採用できるため、標準物質の外形を正確に測定することができる。
【0024】
請求項3に記載されたテストピースによれば、平坦部を囲む側周部から離れた内方の位置に標準物質が固定されている。このため、反射光で標準物質の外形を測定する場合には、標準物質で反射した光は、側周部を透過して屈折することなく平坦部のみを透過して直進するため、標準物質の外形を正確に測定することができる。また、透過光で標準物質の外形を測定する場合には、標準物質の影と、側周部の影は、標準物質と側周部の間を通過して平坦部を透過する環状の光によって区分され、互いに重なることがないため、標準物質の外縁又は輪郭を画像から正確に認識することができ、標準物質の外形を正確に測定することができる。
【0025】
請求項4に記載されたテストピースによれば、標準物質は側周部の中央に固定されているため、標準物質の影と、側周部の影は、標準物質と側周部の間を通過して平坦部を透過して直進する環状の光によって区分され、互いに重なることがない。このため、標準物質の外縁又は輪郭を画像から正確に認識することができ、標準物質の外形を正確に測定することができる。
【0026】
請求項5に記載されたテストピースによれば、請求項1乃至4に記載されたテストピースによる効果を、平板状の第1部材と、側周部と平坦部が形成された平板状の第2部材からなる部品点数の少ない簡易な構成によって容易に達成することができる。
【0027】
請求項6に記載されたテストピースによれば、標準物質が基体に固定されているため、第1部材と第2部材の間に基体を挟むだけで標準物質を側周部の中央に容易に位置決めでき、比較的小さい部品である標準物質の取り扱いが容易である。
【0028】
請求項7に記載されたテストピースによれば、標準物質を第1部材に直接固定しているため、第1部材と第2部材の間に標準物質を固定するための第3の部材を必要とすることなく、少ない部品点数でテストピースを構成することができる。また、透過光で標準物質の外径を測定する場合、光が透過する部材が標準物質と第1及び第2部材のみなので、撮影により得られる標準物質の影と側周部の影のコントラストが強くなり、標準物質の外縁又は輪郭がより明瞭となり、標準物質の外径の測定をより正確に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第1実施形態のテストピースの断面図である。
図2】第1実施形態のテストピースを構成する第2部材の製造工程図である。
図3】第1実施形態のテストピースの製造工程図である。
図4】第1実施形態のテストピースにおける反射光を用いた標準物質の外形の測定を説明するための断面図である。
図5】第1実施形態のテストピースにおける透過光を用いた標準物質の外形の測定を説明するための断面図である。
図6】第1実施形態の変形例のテストピースにおける透過光を用いた標準物質の外形の測定を説明するための断面図である。
図7】第2実施形態のテストピースの製造工程図である。
図8】第3実施形態のテストピースの断面図である。
図9】多連タイプである従来のテストピースの断面図である。
図10】単品タイプである従来のテストピースの断面図である。
図11】単品タイプである従来のテストピースの製造工程図である。
図12】単品タイプである従来のテストピースにおける反射光を用いた標準物質の外形の測定を説明するための断面図である。
図13】多連タイプである従来のテストピースにおける透過光を用いた標準物質の外形の測定を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図1図8を参照して説明する。各図面に示す実施形態の構成要素は、必ずしも実物・現物と同一の構成を忠実に表すものではなく、明細書の記載と整合的に理解されるように模式的に表現している場合もあり、また各構成要素の寸法比は、実際の寸法比と必ずしも一致するものではない。
【0031】
図1図5を参照して第1実施形態のテストピース1について説明する。
図1を参照して第1実施形態のテストピース1の構造を説明する。
図1は、第1実施形態のテストピース1の断面図である。このテストピース1は標準物質2が1個である単品タイプである。図1に示すように、このテストピース1は、基体としての平板状の台紙3と、図示しない接着剤等の固定手段で台紙3の上に取りつけられた球形の標準物質2と、テストピース1を覆う収容部4が形成された第2部材としての上側カバー5と、略平板状である第1部材としての下側カバー6を備えており、上側カバー5と下側カバー6は、台紙3の外周を挟んで外周縁部で一体化されて標準物質2を覆っている。
【0032】
図1に示すように、上側カバー5の収容部4は、その上面に平坦部7を備えている。平坦部7は、収容部4以外の下側カバー6の平坦な部分と略平行であり、その形状は平面視(図1において紙面に平行な下向き方向の視線)において円形である。上側カバー5の収容部4は、この平坦部7の外周に連続して形成された側周部8を備えている。側周部8は、収容部4以外の下側カバー6の平坦な部分と平坦部7を接続する部分である。従って、上側カバー5の収容部4は、全体として円錐台形状となっている。
【0033】
図1において、標準物質2をカメラで撮影して外径を測定する場合、その測定方向(撮影方向)は、平坦部7の平面と直交する方向、すなわち図1において紙面に平行な下向き方向である。この測定方向から見た場合、平坦部7の外径及び内径は、測定方向から見た標準物質2の外径よりも十分に大きい。そして、標準物質2は、周状である側周部8の略中央の位置に固定されている。従って、標準物質2は、側周部8から離間しており、標準物質2と側周部8の間には十分な間隔が設けられている。ここで、以上の説明における「十分」との語は、後述する標準物質2の外径の測定において、側周部8の影と標準物質2の影が分離して撮影できる程度に側周部8と標準物質2が離れていることを意味している。なお、標準物質2と平坦部7の間隔も、標準物質2と側周部8の間隔と同程度に離れている。
【0034】
図2及び図3を参照して第1実施形態のテストピース1の製造工程を説明する。
図2(a)に示すように、任意の加熱手段で加熱して軟化した樹脂製の上側カバー5を、真空成形装置10を用いて成形する。真空成形装置10は、上側カバー5の収容部4に対応した円錐台形状の突出部11と、突出部11に連続する平板部12とからなる成形型13を有している。突出部11の内部は空洞14であり、突出部11の上面には空洞14に連通する貫通孔15が形成されている。平板部12には、空洞14に連通する吸引管16の一端が接続されており、吸引管16の他端には図示しない吸引装置が接続されている。
【0035】
図2(b)に示すように、加熱されて軟化した樹脂製の上側カバー5を、真空成形装置10の成形型13に被せる。吸引装置を作動させ、矢印で示すように空洞14内に負圧を発生させる。軟化した樹脂製の上側カバー5は、空洞14内に発生した負圧によって成形型13に被着する。
【0036】
図2(c)に示すように、負圧による所定の成形時間が経過した後、成形型13の形状に成形された樹脂製の上側カバー5を、真空成形装置10の成形型13から取り外す。
【0037】
図3(a)に示すように、標準物質2を取りつけた台紙3を下側カバー6の上面の略中央に配置し、標準物質2が収容部4に覆われるように上側カバー5を台紙3の上に被せ、図3(b)に示すように、上側カバー5と下側カバー6の外周縁部を加熱圧着装置300で挟持してヒートシールすれば、第1実施形態のテストピース1が得られる。
【0038】
図4及び図5を参照して第1実施形態のテストピース1における標準物質2の外径の測定について説明する。
図4は、テストピース1の上側カバー5の側からカメラで標準物質2を撮影して、その外径を計測する手法を示す図である。図4において、図示しないカメラは撮影方向を下向きとしてテストピース1の収容部4の上方に配置されており、下方の標準物質2を上側カバー5の平坦部7を通して撮影する。テストピース1の周囲から標準物質2に来る光は標準物質2で反射して周囲のあらゆる方向に反射しているが、カメラは図中の矢印で示す上向きに反射してくる光を捉えて標準物質2を撮影する。この際、標準物質2で反射してカメラに向かう光は、図中の矢印で示すように、上側カバー5の平坦部7のみを透過してカメラに向かうため、撮影した標準物質2の外径Dは実寸の通りであり、反射光を用いた撮影により標準物質2の外径Dを正確に計測することができる。
【0039】
図5は、テストピース1の下側カバー6の下方から光を上向きに照射し、上側カバー5の平坦部7の上方に下向きで配置したカメラによって標準物質2を撮影し、その外径を計測する手法を示す図である。図5(b)において、上向きの矢印で示すように、テストピース1の下方から上方に向けて照射された光は、テストピース1の透過光としてカメラにより撮影される。ここで、標準物質2は、平坦部7を囲む側周部8から離れた内方の位置に固定されているので、図5(a)に示すように、標準物質2の影S1と、側周部8の影S2は、標準物質2と側周部8の間隔を通過して平坦部7を透過直進する環状光Lによって区分され、互いに重なることがない。従って、標準物質2の外縁又は輪郭を画像から正確に認識することができ、標準物質2の外径を正確に測定することができる。
【0040】
また、第1実施形態のテストピース1によれば、標準物質2が台紙3に固定されているため、台紙3の位置を決めて上側カバー5と下側カバー6の間に挟むだけで標準物質2を側周部8の中央に容易に位置決めできるので、小さい標準物質2であっても取り扱いが容易である。
【0041】
図6を参照して第1実施形態の変形例であるテストピース1aを説明する。
図6(b)に示すように、このテストピース1aは、第1実施形態のテストピース1と1点を除いて同一の構造である。異なる点は、標準物質2が、前記撮影方向から見て、テストピース1aの平坦部7の中央又は側周部8の中央から外れた位置に固定されており、標準物質2が側周部8の内面に実質的に接している点である。なお各構成要素には第1実施形態の図面と同一の符号を付して第1実施形態の説明を援用する。
【0042】
図6(b)に示すように、変形例のテストピース1aによれば、標準物質2が側周部8に接している部分ではテストピース1aの上方に光が透過しない。このため、図6(a)に示すように、標準物質2の影S1と、側周部8の影S2は、標準物質2と側周部8の間隔を通過して平坦部7を透過する環状光Lによって大部分では区分されるが、標準物質2が側周部8に接している部分では互いに接しているため、当該部分については標準物質2の外縁又は輪郭が若干不明瞭になる。
【0043】
従って、標準物質2の外縁又は輪郭を画像から正確に認識しうる効果は、第1実施形態に較べれば若干弱いが、標準物質2の影S1が円形であることは認識できる。従って、影S1に対して適当な測定位置を設定すれば、標準物質2の影S1と側周部8の影S2が全周で重なる図13に示した従来のテストピース1とは異なり、円形の影S1の外径を測定することは可能であり、従来のテストピース1に較べれば標準物質2の外径の測定をより正確に行なうことができる。
【0044】
図7を参照して第2実施形態のテストピース21を説明する。
このテストピース21は、第1実施形態と同様、標準物質2が1個である単品タイプである。但し、図7から理解されるように、第2実施形態のテストピース21は、第1実施形態とは異なり、標準物質2が取りつけられる基体としての台紙3を有しない。標準物質2は、接着剤等の固定手段によって下側カバー6の上面に直接固定されている。
【0045】
第2実施形態のテストピース21を製造する手順は次の通りである。第1実施形態の場合と同様に、平坦部7を備えた収容部4を有する上側カバー5を成形工程により作製しておく。図7(a)に示すように、下側カバー6の所定位置に標準物質2を固定し、前記撮影方向から見て平坦部7又は側周部8の中央に標準物質2が配置されるように、上側カバー5を下側カバー6の上に被せる。そして、図7(b)に示すように、上側カバー5と下側カバー6の外周縁部を加熱圧着装置300で挟持してヒートシールすれば、第2実施形態のテストピース21が得られる。
【0046】
第2実施形態のテストピース21によれば、標準物質2を下側カバー6に直接固定しているため、台紙3が不要であり、少ない部品点数でテストピース21を構成することができる。また、透過光で標準物質2の外径を測定する場合、光が透過する部材が標準物質2と上下のカバー5,6のみなので、撮影により得られる標準物質2の影と側周部8の影のコントラストが強くなり、標準物質2の外縁又は輪郭がより明瞭となり、標準物質2の外径の測定をより正確に行なうことができる。
【0047】
図8を参照して第3実施形態のテストピース31を説明する。
図8は、第3実施形態のテストピース31の断面図である。このテストピース31は5個の標準物質2を有する多連タイプである。このテストピース31は、台紙3と、台紙3の上に一列に取りつけられた5個の球形の標準物質2と、各標準物質2を覆う平坦部7を備えた5個の収容部4が一列に形成された上側カバー5と、平板状の下側カバー6を備えている。5個の標準物質2は、その外径が互いに異なっており、外径の大きさの順に並んでいる。上側カバー5の5個の収容部4は、各標準物質2の外径と対応するように内径が定められており、内径の大きさの順に並んでいる。そして、各標準物質2が、対応する内径の収容部4に収容されるように、標準物質2を取りつけた台紙3を上側カバー5と下側カバー6で挟み、上側カバー5と下側カバー6の外周縁部をヒートシールして一体化すれば、大きさの順に並べられた外径が異なる5個の標準物質2をカバーで覆った構造のテストピース31が得られる。
【0048】
第3実施形態のテストピース31においても、前述した単品タイプの実施形態のテストピース1と同様の効果を得ることができる。
【0049】
以上説明した実施形態及び変形例では、標準物質2の外形を球状としたが、その外形を球状に限定するものではなく、例えば線状、円板形等でもよく、線状であれば直径と長さを測定して標準物質2としての種類を確認することができ、また円板形であれば直径と厚さを測定して標準物質2としての種類を確認することができる。また、標準物質2の材質も特に限定しない。また、多連タイプの場合は、標準物質2の個数も特に限定しない。
【符号の説明】
【0050】
1,1a,21,31…テストピース
2…標準物質
3…基体としての台紙
4…収容部
5…第2部材としての上側カバー
6…第1部材としての下側カバー
7…平坦部
8…側周部
10…真空成形装置
300…加熱圧着装置
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