(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066821
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】飛翔体およびその製造方法、並びに、飛翔体用部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B64B 1/58 20060101AFI20240509BHJP
B64F 5/10 20170101ALI20240509BHJP
【FI】
B64B1/58
B64F5/10
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176554
(22)【出願日】2022-11-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】520365229
【氏名又は名称】株式会社岩谷技研
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 圭介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智範
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、気嚢に対して上向きにかかる力などが作用しても、気嚢を構成する球皮が局所的に気嚢の天頂部側にずり上がるのを抑制することができ、これにより、気嚢の特定箇所での応力集中を低減することができる飛翔体を得ることである。
【解決手段】本発明の飛翔体100は、浮力を発生する気嚢110と、気嚢の緯線Lに沿って気嚢の外側に取り付けられた第1の筒状部材40bと、第1の筒状部材の内側に通された、飛翔時に気嚢の局所的な変形を抑制する第1の索体40aとを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力を発生する気嚢と、
前記気嚢の緯線に沿って前記気嚢の外側に取り付けられた第1の筒状部材と、
前記第1の筒状部材の内側に通された第1の索体と
を備えた、飛翔体。
【請求項2】
前記第1の筒状部材は、前記気嚢の下半部側に配置されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項3】
前記第1の筒状部材には、両端部に有する開孔とは別に前記第1の筒状部材の内部から前記第1の索体を取り出すための開孔部が形成されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項4】
前記第1の筒状部材は、その両端部の厚さは、その両端部以外の部分の厚さよりも厚くなっている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項5】
前記第1の筒状部材は、前記気嚢に熱溶着されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項6】
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通す筒体部と、前記気嚢に固着された固着部とを含み、前記筒体部と前記固着部との境界部分が前記固着部のうちの前記境界部分とは反対側の端部よりも下側に位置するように構成されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項7】
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通す筒体部と、前記気嚢に固着された固着部とを含み、前記筒体部と前記溶固着部との境界部分が前記固着部のうちの前記境界部分とは反対側の端部よりも上側に位置するように構成されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項8】
前記気嚢に対する荷重となる負荷部を備え、
前記気嚢の頂部から経線に沿って前記気嚢の外側に取り付けられた第2の筒状部材と、
前記第2の筒状部材の内側に通された第2の索体と
をさらに備えた、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項9】
前記第1の筒状部材は、前記緯線に沿って所定の間隔を空けて複数配置されており、
前記第2の索体は、前記緯線に沿って配置されている隣接する前記第1の筒状部材の間で前記第1の索体と交差している、請求項8に記載の飛翔体。
【請求項10】
前記第1の索体と前記第2の索体との交差部では、前記第1の索体と前記第2の索体とが接合されている、請求項9に記載の飛翔体。
【請求項11】
前記第2の筒状部材は、前記気嚢に熱溶着されている、請求項8に記載の飛翔体。
【請求項12】
前記飛翔体は、
前記気嚢の頂部から経線に沿って前記気嚢の内側に取り付けられた、前記気嚢の内側に気体を導入するためのダクト部材をさらに備えた、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項13】
前記飛翔体は、前記気嚢に静的浮力を有するガスが充填されることにより浮力が発生するガス気球、あるいは前記気嚢に熱した空気が充填されることにより浮力が発生する熱気球である、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項14】
請求項1の飛翔体を製造する方法であって、
前記気嚢の構成部材である複数の気嚢片として、前記第1の筒状部材を固着した複数のシート状気嚢片を形成する工程と、
前記複数のシート状気嚢片を順次つなぎ合わせて前記気嚢を形成する工程と
を含む、飛翔体の製造方法。
【請求項15】
前記気嚢片の形成工程では、
気嚢片下部と気嚢片上部とを前記第1の筒状部材とともに接合することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項16】
前記気嚢片の形成工程では、
1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成し、前記折畳部に前記第1の筒状部材を接合することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項17】
前記気嚢片の形成工程では、
1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部の少なくとも一部を折り畳んでさらに第2の折畳部を形成し、その後、筒状部が形成されるように前記第2の折畳部の少なくとも一部を溶着することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項18】
前記気嚢を形成した後、前記気嚢を構成する複数の気嚢片に固着されている複数の第1の筒状部材に前記第1の索体を通す工程をさらに含む、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項19】
前記気嚢の形成工程では、
前記複数のシート状気嚢片のうちの2つのシート状気嚢片を重ねてそれらの一方の側縁部を熱溶着することで前記隣接するシート状気嚢片を接合する、請求項18に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項20】
前記気嚢の形成工程では、
前記気嚢の頂部から所定の経線に沿って延びる第2の筒状部材を、前記重ねた2つのシート状気嚢片の一方側側縁部に重ねて熱溶着して前記気嚢を形成し、
その後、前記気嚢に取り付けられた前記複数の第2の筒状部材の内側に、飛翔時に荷重がかかる第2の索体を通す、請求項19に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項21】
前記第1の索体を前記第1の筒状部材に通し、かつ前記第2の索体を前記第2の筒状部材に通した後、前記第1の索体と前記第2の索体とを両索体の交差部で接合する接合工程をさらに含み、
前記接合工程では、前記第2の索体の端部をこれが前記第1の索体を囲むようにループ状に折り返して、折り返した部分と、前記第2の索体のうちの折り返した部分に重なる部分とを縫合により接合する、請求項20に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項22】
請求項1に記載の飛翔体で用いられる部材であって、
前記気嚢を構成する複数の気嚢片と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられた前記第1の筒状部材と
を含み、
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通すことが可能に構成されている、飛翔体用部材。
【請求項23】
請求項8に記載の飛翔体で用いられる部材であって、
前記気嚢を構成する複数の気嚢片と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられた前記第1の筒状部材と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられる前記第2の筒状部材と、
前記第2の筒状部材の内側に通された索体と
を含み、
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通すことが可能に構成されており、
前記第1の筒状部材および前記第2の筒状部材は、熱溶着可能な素材を含み、
前記索体は、前記第2の筒状部材よりも耐熱性が高い、飛翔体用部材。
【請求項24】
請求項22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、下側気嚢片および上側気嚢片の側縁部と前記第1の筒状部材の端部とを固着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項25】
請求項22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成するとともに、前記折畳部に前記第1の筒状部材の端部を固着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項26】
請求項22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片として、前記第1の筒状部材が取り付けられた気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部の少なくとも一部を折り畳んで第2の折畳部を形成するとともに、前記第2の折畳部に筒隊部が形成されるように前記第2の折畳部の少なくとも一部を溶着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項27】
請求項23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、下側気嚢片および上側気嚢片の側縁部と前記第1の筒状部材の端部とを固着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項28】
請求項23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成するとともに、前記折畳部に前記第1の筒状部材の端部を固着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項29】
請求項23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片として、前記第1の筒状部材が取り付けられた複数の気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部を折り畳んでさらに第2の折畳部を形成するとともに、前記第2の折畳部に筒体部が形成されるように前記第2の折畳部を溶着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静的浮力のある気体(いわゆる、空気より軽い気体、以下「軽量ガス」と呼ぶ)の充填により浮力を発生する気嚢を備えた飛翔体の構造およびその製造方法、並びに、このような飛翔体で用いられる飛翔体用部材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このように気嚢内に生じる浮力で飛行する気球、飛行船などの飛翔体では、気嚢は軽量であることが好ましいが、気嚢の軽量化を図るとその強度が低下する。
【0003】
このような気嚢の軽量化と強度とのトレードオフの課題に対しては、従来から、気嚢にかかる荷重を分散させるという対策が採られている(例えば、特許文献1の段落0010参照)。これは、気嚢にかかる荷重を分散することで、強度の低い気嚢であっても荷重に耐えることが可能となるからである。
【0004】
具体的には、その対策は、ロードテープと呼ばれる索体を気嚢の天頂部からその下半部側に跨るようにいくつかの経線に沿って取り付け、ロードテープの下端を荷重となる負荷部に接続するというものである。このような構造の気球では、飛行時には負荷部の荷重はロードテープにかかり、その結果、気嚢にかかる荷重は、気嚢のうちのロードテープが接触している部分に分散されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような構成の飛翔体においても、気嚢に上向きにかかる力(浮力あるいは上昇気流)などが作用すると、気嚢を構成するシート状部材(いわゆる球皮)が、隣接するロードテープ間で気嚢の天頂側にずり上がることによって、気嚢のうちのロードテープとの接合部分に応力が集中するといった問題がある。
【0007】
本発明は、気嚢に対して上向きにかかる力などが作用しても、気嚢を構成する球皮(シート状部材)が局所的に気嚢の天頂部側にずり上がるのを抑制することができ、これにより、気嚢の特定箇所での応力集中を低減することができる飛翔体およびこのような飛翔体の製造方法を得ることを目的とする。
【0008】
また、本発明は、このような飛翔体で用いられる、気嚢を構成する球皮のずり上がりを抑制することができる飛翔体用部材およびその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
浮力を発生する気嚢と、
前記気嚢の緯線に沿って前記気嚢の外側に取り付けられた第1の筒状部材と、
前記第1の筒状部材の内側に通された第1の索体と
を備えた、飛翔体。
(項目2)
前記第1の筒状部材は、前記気嚢の下半部側に配置されている、項目1に記載の飛翔体。
(項目3)
前記第1の筒状部材には、両端部に有する開孔とは別に前記第1の筒状部材の内部から前記第1の索体を取り出すための開孔部が形成されている、項目1に記載の飛翔体。
(項目4)
前記第1の筒状部材は、その両端部の厚さは、その両端部以外の部分の厚さよりも厚くなっている、項目1に記載の飛翔体。
(項目5)
前記第1の筒状部材は、前記気嚢に熱溶着されている、項目1に記載の飛翔体。
(項目6)
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通す筒体部と、前記気嚢に固着された固着部とを含み、前記筒体部と前記固着部との境界部分が前記固着部のうちの前記境界部分とは反対側の端部よりも下側に位置するように構成されている、項目1に記載の飛翔体。
(項目7)
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通す筒体部と、前記気嚢に固着された固着部とを含み、前記筒体部と前記溶固着部との境界部分が前記固着部のうちの前記境界部分とは反対側の端部よりも上側に位置するように構成されている、項目1に記載の飛翔体。
(項目8)
前記気嚢に対する荷重となる負荷部を備え、
前記気嚢の頂部から経線に沿って前記気嚢の外側に取り付けられた第2の筒状部材と、
前記第2の筒状部材の内側に通された第2の索体と
をさらに備えた、項目1に記載の飛翔体。
(項目9)
前記第1の筒状部材は、前記緯線に沿って所定の間隔を空けて複数配置されており、
前記第2の索体は、前記緯線に沿って配置されている隣接する前記第1の筒状部材の間で前記第1の索体と交差している、項目8に記載の飛翔体。
(項目10)
前記第1の索体と前記第2の索体との交差部では、前記第1の索体と前記第2の索体とが接合されている、項目9に記載の飛翔体。
(項目11)
前記第2の筒状部材は、前記気嚢に熱溶着されている、項目8に記載の飛翔体。
(項目12)
前記飛翔体は、
前記気嚢の頂部から経線に沿って前記気嚢の内側に取り付けられた、前記気嚢の内側に気体を導入するためのダクト部材をさらに備えた、項目1に記載の飛翔体。
(項目13)
前記飛翔体は、前記気嚢に静的浮力を有するガスが充填されることにより浮力が発生するガス気球、あるいは前記気嚢に熱した空気が充填されることにより浮力が発生する熱気球である、項目1に記載の飛翔体。
(項目14)
項目1の飛翔体を製造する方法であって、
前記気嚢の構成部材である複数の気嚢片として、前記第1の筒状部材を固着した複数のシート状気嚢片を形成する工程と、
前記複数のシート状気嚢片を順次つなぎ合わせて前記気嚢を形成する工程と
を含む、飛翔体の製造方法。
(項目15)
前記気嚢片の形成工程では、
気嚢片下部と気嚢片上部とを前記第1の筒状部材とともに接合することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、項目14に記載の飛翔体の製造方法。
(項目16)
前記気嚢片の形成工程では、
1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成し、前記折畳部に前記第1の筒状部材を接合することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、項目14に記載の飛翔体の製造方法。
(項目17)
前記気嚢片の形成工程では、
1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部の少なくとも一部を折り畳んでさらに第2の折畳部を形成し、その後、筒状部が形成されるように前記第2の折畳部の少なくとも一部を溶着することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、項目14に記載の飛翔体の製造方法。
(項目18)
前記気嚢を形成した後、前記気嚢を構成する複数の気嚢片に固着されている複数の第1の筒状部材に前記第1の索体を通す工程をさらに含む、項目14に記載の飛翔体の製造方法。
(項目19)
前記気嚢の形成工程では、
前記複数のシート状気嚢片のうちの2つのシート状気嚢片を重ねてそれらの一方の側縁部を熱溶着することで前記隣接するシート状気嚢片を接合する、項目18に記載の飛翔体の製造方法。
(項目20)
前記気嚢の形成工程では、
前記気嚢の頂部から所定の経線に沿って延びる第2の筒状部材を、前記重ねた2つのシート状気嚢片の一方側側縁部に重ねて熱溶着して前記気嚢を形成し、
その後、前記気嚢に取り付けられた前記複数の第2の筒状部材の内側に、飛翔時に荷重がかかる第2の索体を通す、項目19に記載の飛翔体の製造方法。
(項目21)
前記第1の索体を前記第1の筒状部材に通し、かつ前記第2の索体を前記第2の筒状部材に通した後、前記第1の索体と前記第2の索体とを両索体の交差部で接合する接合工程をさらに含み、
前記接合工程では、前記第2の索体の端部をこれが前記第1の索体を囲むようにループ状に折り返して、折り返した部分と、前記第2の索体のうちの折り返した部分に重なる部分とを縫合により接合する、項目20に記載の飛翔体の製造方法。
(項目22)
項目1に記載の飛翔体で用いられる部材であって、
前記気嚢を構成する複数の気嚢片と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられた前記第1の筒状部材と
を含み、
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通すことが可能に構成されている、飛翔体用部材。
(項目23)
項目8に記載の飛翔体で用いられる部材であって、
前記気嚢を構成する複数の気嚢片と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられた前記第1の筒状部材と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられる前記第2の筒状部材と、
前記第2の筒状部材の内側に通された索体と
を含み、
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通すことが可能に構成されており、
前記第1の筒状部材および前記第2の筒状部材は、熱溶着可能な素材を含み、
前記索体は、前記第2の筒状部材よりも耐熱性が高い、飛翔体用部材。
(項目24)
項目22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、下側気嚢片および上側気嚢片の側縁部と前記第1の筒状部材の端部とを固着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
(項目25)
項目22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成するとともに、前記折畳部に前記第1の筒状部材の端部を固着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
(項目26)
項目22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片として、前記第1の筒状部材が取り付けられた気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部の少なくとも一部を折り畳んで第2の折畳部を形成するとともに、前記第2の折畳部に筒隊部が形成されるように前記第2の折畳部の少なくとも一部を溶着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
(項目27)
項目23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、下側気嚢片および上側気嚢片の側縁部と前記第1の筒状部材の端部とを固着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
(項目28)
項目23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成するとともに、前記折畳部に前記第1の筒状部材の端部を固着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
(項目29)
項目23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片として、前記第1の筒状部材が取り付けられた複数の気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部を折り畳んでさらに第2の折畳部を形成するとともに、前記第2の折畳部に筒体部が形成されるように前記第2の折畳部を溶着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、気嚢に対して上向きにかかる力などが作用しても、気嚢を構成する球皮が局所的に気嚢の天頂部側にずり上がるのを抑制することができ、これにより、気嚢の特定箇所での応力集中を低減することができる飛翔体およびこのような飛翔体の製造方法を得ることができる。
【0011】
また、本発明によれば、このような飛翔体で用いられる、気嚢を構成する球皮のずり上がりを抑制することができる飛翔体用部材およびその製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1による飛翔体100を示す斜視図であり、飛翔体100をその上側から見た構造、および飛翔体100をその下側から見た構造を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示す接続部材130と補強部材140との位置関係を示す図。
【
図3】
図3は、
図2に示す補強部材140を構成する第1の筒状部材(水平スリーブ)40bが一体化された気嚢110の構造を示す図。
【
図4】
図4は、
図3に示す第1の筒状部材(水平スリーブ)40bに第1の索体(水平ロードケーブル)40aを通した状態を示す図。
【
図4A】
図4Aは、第1の筒状部材40bの接合部10cへの取付状態について、
図4に示す方法とは別の取付状態を示す図。
【
図4B】
図4Bは、
図4Aに示す第1の筒状部材40bとは別の第1の筒状部材41bを示す図。
【
図4C】
図4Cは、
図4Bに示す第1の筒状部材41bを使用した場合における第1の筒状部材41b間を挿通する第1索体40aの状態を示す図。
【
図4D】
図4Dは、
図3に示すシート状気嚢片10とは別のシート状気嚢片61の製作工程を示す図。
【
図4E】
図4Eは、
図4Dに示すシート状気嚢片61とは別のシート状気嚢片71の製作工程を示す図。
【
図5】
図5は、
図2に示す気嚢110における第2の筒状部材(垂直スリーブ)30bおよび第2の索体(垂直ロードケーブル)30aの配置部分(
図2のA部分)の構造、およびこれらの部材の構造を拡大して具体的に示す図。
【
図6】
図6は、
図2に示す垂直ロードケーブル30aの端部の構造(
図2(a)のB部分およびC部分)を拡大して示す図。
【
図7】
図7は、シート状素材50から気嚢片10の部品である下側気嚢片10aおよび上側気嚢片10bを切り出す工程を示す図。
【
図8】
図8は、水平スリーブ40bが一体化された気嚢片10(
図3)を形成する工程を示す図。
【
図8A】
図8Aは、
図8に示す気嚢片10に代わる気嚢片61の部品として1つの気嚢片材料60aを切り出す工程を示す図。
【
図9】
図9は、
図5に示すように垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bを作製する方法の一例を示す図。
【
図10】
図10は、2つの気嚢片11および12の接合と、垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bの固着とを同時に行う工程を模式的に示す図。
【
図11】
図11は、2つの気嚢片11および12の側縁部を、垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bとともに接合する様子を示す図。
【
図12】
図12は、先導索体33が通された垂直スリーブ30bを作製する方法の一例を説明するための図。
【
図13】
図13は、先導索体33が通された複数の垂直スリーブ30bを用いて垂直スリーブ30bおよび垂直ロードケーブル30aを気嚢110に取り付ける方法の一例を示す図。
【
図14】
図14は、気嚢110に固着された水平スリーブ40bおよびこれに通された水平ロードケーブル40aの作用を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0014】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0015】
そして、本発明の対象は、飛翔体およびその製造方法、並びに飛翔体で用いられる部品(飛翔体用部品)およびその製造方法であり、以下にこれらの発明の範疇を説明する。
【0016】
〔本発明の飛翔体〕
本発明は、気嚢に対して上向きにかかる力などが作用しても、気嚢を構成する球皮が気嚢の天頂部側にずり上がるのを抑制することができ、これにより、気嚢の特定箇所での応力集中を低減することができる飛翔体を得ることを課題とし、
浮力を発生する気嚢と、
気嚢の緯線に沿って気嚢の外側に取り付けられた第1の筒状部材と、
第1の筒状部材の内側に通された第1の索体と
を備えた、飛翔体を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0017】
このように、気嚢の緯線に沿って気嚢の外側に第1の筒状部材を取り付け、第1の筒状部材に第1の索体を通すことにより、気嚢を構成する球皮は、第1の索体が通された第1の筒状部材により上下方向の移動が規制されることとなり、飛行時に気嚢に対してこれを構成する球皮がずり上がる方向に力が働いても、球皮のずり上がりを抑制できる。
【0018】
従って、本発明の飛翔体は、気嚢の外側にその緯線に沿って第1の筒状部材が取り付けられ、第1の筒状部材の内側に第1の索体が通されたものであれば、その他の構成は特に限定されるものではなく、任意であり得る。
【0019】
(第1の筒状部材)
すなわち、第1の筒状部材は、気嚢の1つの緯線に沿って1つ設けられていてもよいし、あるいは1つの緯線に沿って複数設けられていてもよい。第1の筒状部材が1つの緯線に沿って複数設けられている場合は、隣接する第1の筒状部材の間隔は一定であることが好ましい。なぜなら、第1の筒状部材の内側に通された第1の索体が第1の筒状部材を介して気嚢に及ぼす力を、緯線に沿った円周上でより均等に分散できるからである。これは、引いては第1の索体により球皮のずり上がりを抑制する作用の偏りを回避できるということである。
【0020】
また、第1の筒状部材は、気嚢の2以上の緯線に沿って設けられていてもよい。この場合、第1の筒状部材は、2以上の緯線の各々に沿って1つ設けられていてもよいし、あるいは、2以上の緯線の各々に沿って複数設けられていてもよい。さらには、第1の筒状部材は、2以上の緯線のうちの特定の1以上の緯線に沿っては複数設けられ、2以上の緯線のうちの別の1以上の緯線に沿っては、1つだけ設けられていてもよい。
【0021】
第1の筒状部材を気嚢のどの部分に設けるかは、気嚢に対して負荷部(ロード)を吊るす角度(ロードの吊り角度)に応じて任意であり得るが、1つの実施形態において、第1の筒状部材は、気嚢の下半部側に配置されている。
【0022】
このように第1の筒状部材を気嚢の下半部側の位置に配置することにより、気嚢が略球体形状に膨らんだ際に、
図2に示す様に、第1の筒状部材は、気嚢の最大直径よりも小さい直径となる緯線上に位置することになり、従って、この第1の筒状部材につながる球皮を構成するシート状部材が上方側へと移動するのを防止することが可能となる。
【0023】
なお、第1の筒状部材は、その素材は任意であり得る。1つの実施形態において樹脂製(例えばポリエチレン製)で構成されているが、第1の筒状部材を構成する素材は樹脂に限定されない。質量や強度などの所望の条件を満たす範囲で任意の素材であり得る。
【0024】
また、第1の筒状部材と気嚢との接続は任意の接続方法であり得る。第1の筒状部材は、気嚢の外側に熱溶着されていてもよいし、あるいは接着剤で固着されていてもよいし、縫製であってもよい。同様に、本件発明における接合部(後述する水平接合部および垂直接合部)の接合手段も任意の手段であり得、例えば、熱溶着されていてもよいし、あるいは接着剤で固着されていてもよいし、縫製であってもよい。
【0025】
また、第1の筒状部材は、その両端部に第1の索体から強い力を受ける可能性があることから、その両端部の強度を高めたものであることが好ましい。第1の筒状部材の両端部の強度を高める具体的な構造は、第1の筒状部材の両端部の厚さをその他の部分に比べて厚くすることであり、厚さを厚くする方法に限定されるものではないが、例えば、それぞれの端部は、第1の筒状部材のシート状構成部材を折り返した構造としてもよいし、あるいは第1の筒状部材の端部に別のシート状構成部材を貼り付けた構造としてもよい。
【0026】
また、第1の筒状部材は、第1の索体の出入口となる開孔部が形成したものでもよい。このような開孔部、つまり、第1の索体を通す孔を第1の筒状部材に設けることで、第1の筒状部材と気嚢を構成する球皮との溶着界面にかかる引張荷重を分散させて、第1の筒状部材の球皮裂けを抑制することが可能となる。
【0027】
開孔部を第1の筒状部材のどの位置に設けるかは任意であり得る。例えば、開孔部を第1の筒状部材の側壁から約5mm程度離れた端部に設けられるが、本発明はこれに限定されない。
【0028】
また、第1の筒状部材は、気嚢片のうちの第1の筒状部材が固着される部分(水平接合部)を下向きに折り込んだ状態でこの水平接合部に対して下向きなるように取り付けられていることが好ましい。つまり、下向きに折り込んだ水平接合部に固着される第1の筒状部材は、第1の索体を通す筒体部と、気嚢に固着された固着部とを含むものであるが、筒体部と固着部との境界部分が、固着部のうちの境界部分とは反対側の端部よりも下側に位置するように構成されていることが好ましい。この場合、気嚢片を第1の索体に対して相対的に引き上げる方向に力が気嚢に働いたときに、第1の筒状部材に対してこれを水平接合部から剥がす方向に力がかかるのを回避できる。
【0029】
あるいは、第1の筒状部材は、気嚢片の水平固着部を下向きに折り込んだ状態でこの水平接合部に対して上向きになるように取り付けられていてもよい。つまり、下向きに折り込んだ水平接合部に固着される第1の筒体部は、筒体部と固着部との境界部分が固着部のうちの境界部分とは反対側の端部よりも上側に位置するように構成されていてもよい。この場合、気嚢片の水平接合部の側縁と第1の筒状部材の固着部の側縁とを揃えて両者を溶着することができ、気嚢に対する第1の筒状部材の取り付け作業が簡単であり、気嚢に働く力が小さいことが想定される場合(例えば、飛翔体が小型である場合など)には有効である。
【0030】
(第1の索体)
第1の筒状部材が、気嚢の1つの緯線に沿って1つ以上設けられている場合は、1つのリング状の第1の索体が1以上の第1の筒状部材を挿通するようにその内側に設けられ得る。
【0031】
例えば、第1の筒状部材が、気嚢の1つの緯線に沿って所定間隔を空けて気嚢に複数固着されている場合は、複数の第1の筒状部材を貫通するように1つのリング状の第1の索体が移動可能に設けられ得る。
【0032】
また、第1の筒状部材が、気嚢の2以上の緯線に沿って設けられている場合は、リング状の第1の索体が、2以上の緯線のうちの個々の緯線毎に、緯線に沿って設けられている1以上の第1の筒状部材の内側に設けられ得る。
【0033】
なお、第1の索体には、従来はナイロン、テトロン、あるいはポリエステル製の帯状部材が用いられるが、これに限らず、第1の索体は、例えば、細い金属ワイヤ、あるいは金属メッシュ材を埋め込んだ樹脂製の帯状部材であってもよい。また、第1の索体は帯状部材に限定されず、紐状部材でもよい。
【0034】
また、飛翔体は、実質的に負荷部と接続部材とをさらに有し、接続部材は気嚢と負荷部とを接続することにより、飛行時に負荷部が気嚢に吊り下げられるようにするものであるが、この接続部材の構成は限定されるものではない。
【0035】
(接続部材)
この接続部材は、気嚢の頂部から経線に沿って気嚢の外側に固着された第2の索体を備え、飛翔時にこの第2の索体に負荷部の荷重がかかるようにしたものでもよい。
【0036】
この場合、飛行時には負荷部の荷重は、気嚢の複数の経線に沿って配置されている第2の索体にかかり、その結果、負荷部の荷重は、気嚢のうちの、第2の索体が配置されている部分に分散されることとなる。
【0037】
あるいは、接続部材は、気嚢に固着された第2の索体に代えて、気嚢の頂部から経線に沿って気嚢の外側に取り付けられた第2の筒状部材と、第2の筒状部材の内側に通された第2の索体とを備えるものでもよい。
【0038】
この場合、飛翔体では、第2の索体による負荷部の荷重の分散効果に加えて、第2の索体による荷重の分散の偏りを低減することができる効果が得られる。
【0039】
なぜなら、気嚢の複数の経線に沿って設けられている複数の第2の索体の長さにばらつきがあっても、複数の第2の索体の間でのテンションのばらつきが抑制されるように、第2の索体が第2の筒状部材の内側で移動するからである。
【0040】
より具体的には、気嚢に固定された第2の筒状部材内に移動可能に第2の索体を配置した場合、気嚢の個々の箇所に設けられている第2の索体の長さが正しく調整されていなくても、飛行時には、複数の第2の索体のテンションが均一になるように第2の索体が第2の筒状部材に対して移動する。このため、気嚢に吊下げられた負荷部の傾きをなくすように、第2の索体の長さ、あるいは第2の索体の他端と負荷部とをつなぐ接続索体(ロープなど)の長さを調整することにより、気嚢にかかる荷重が均等に分散される状態を容易に実現できる。
【0041】
さらに、第1の筒状部材は、緯線に沿って所定の間隔を空けて複数配置されており、第2の索体は、緯線に沿って配置されている隣接する第1の筒状部材の間で第1の索体と交差していることが好ましい。
【0042】
この場合、第1の索体と第2の索体との交差部では、第1の索体と第2の索体とが接合可能となり、これらの接合により、気嚢を構成するシート状部材が上方にずり上がる方向の力を、シート状部材に固着されている第1の筒状部材、およびこれに通されている第1の索体を介して、第1の索体に接合されている第2の索体で受け止めることができ、気嚢を構成するシート状部材が上方にずり上がるのをより効果的に抑制できる。
【0043】
さらに、第2の索体の他端は、直接負荷部に接続されていてもよいし、あるいは、接続索体を介して間接的に負荷部に接続されていてもよい。
【0044】
ここで、第2の筒状部材の内側に設けられた第2の索体の一端が、間接的に負荷部に接続される場合の接続部材の具体的構成としては、以下の構成が挙げられる。
【0045】
例えば、この場合の接続部材の構成は、複数の接続索体を有し、複数の第2の索体の各々の下端には、複数の接続索体のうちのいずれか1つの上端が接続され、複数の接続索体の下端は負荷部に接続されるというものである。ここで、接続索体はロープ、ワイヤなどである。
【0046】
なお、第2の筒状部材は、第1の筒状部材と同様、熱溶着により気嚢の外側に固着されていてもよいし、接着剤で気嚢の外側に固着されていてもよい。
【0047】
また、第2の筒状部材には、第1の筒状部材と同様、1つの実施形態において樹脂製(例えばポリエチレン製)が用いられるが、第2の筒状部材は、樹脂製のものに限定されない。
【0048】
また、第2の筒状部材ではその両端部に第2の索体から強い力を受ける可能性がある。そこで、第2の筒状部材はその両端部の強度を高めたものが好ましい。第2の筒状部材の両端部の強度を高める具体的な構造は、第2の筒状部材の両端部の厚さをその他の部分に比べて厚くすることであり、厚さを厚くする方法は限定されるものではないが、例えば、それぞれの端部は、例えば、第2の筒状部材のシート状構成部材を折り返した構造としてもよいし、あるいは第2の筒状部材の端部にのみ別のシート状構成部材を貼り付けた構造としてもよい。
【0049】
また、第2の索体の素材は、第1の索体と同様である。
【0050】
また、飛翔体は、気嚢の頂部から経線に沿って気嚢の内側に取り付けられた、気嚢の内側に気体を導入するためのダクト部材をさらに備えていてもよい。このように気嚢の内側に取り付けられるダクト部材の形状、配置する位置や設けられる数は任意であり得る。このようにダクト部材を設けることにより、気嚢への気体の導入を効率よく行うことができるようになる。
【0051】
さらに、飛翔体は、気嚢に軽量ガスが充填されることにより浮力が発生するガス気球でもよいし、あるいは気嚢に熱した空気が充填されることにより浮力が発生する熱気球でもよい。さらに、飛翔体は気球に限定されるものではなく、飛行船であってもよい。
【0052】
〔飛翔体の製造方法〕
本発明の飛翔体の製造方法は、上述した飛翔体を形成する方法であって、飛翔体における気嚢の構成要素である複数の気嚢片として、第1の筒状部材が固着した複数のシート状気嚢片を形成する工程と、複数のシート状気嚢片を順次つなぎ合わせて気嚢を形成する工程とを含むものであれば、その他の構成は任意であり得る。
【0053】
(シート状気嚢片の形成)
第1の筒状部材が固着したシート状気嚢片は、下側気嚢片と上側気嚢片とを重ねてそれぞれの側部を熱溶着し、さらに、下側気嚢片と上側気嚢片との接合部分に第1の筒状部材を接合することにより形成してもよい。 あるいは、シート状気嚢片は、下側気嚢片と上側気嚢片とを第1の筒状部材とともに固着することにより形成してもよい。
【0054】
また、第1の筒状部材が固着するシート状気嚢片は、上記のように2つの部品(下側気嚢片と上側気嚢片)を接合して形成する方法に限定されるものではなく、例えば、シート状気嚢片は、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳み、折り畳んだ部分に第1の筒状部材を接合することにより形成してもよい。
【0055】
これらの場合、得られるシート状気嚢片は、第1の筒状部材付きの構造となり、第1の索体は、このような第1の筒状部材付きのシート状気嚢片を複数つなぎ合わせて気嚢を形成した後に、それぞれのシート状気嚢片の第1の筒状部材に通すことにより気嚢に取り付け可能である。
【0056】
さらに、気嚢片の形成工程では、第1の筒状部材と一体のシート状気嚢片を形成してもよい。すなわち、気嚢片の形成工程では、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、第1の折畳部の少なくとも一部を折り畳んでさらに第2の折畳部(二重の折畳部)を形成し、その後、第1の索体を通す筒状部が形成されるように第2の折畳部の少なくとも一部を溶着してもよい。
【0057】
(気嚢の形成)
気嚢の形成工程は、複数のシート状気嚢片のうちの2つのシート状気嚢片を重ねてそれぞれの一方側の側縁部を熱溶着することで隣接するシート状気嚢片を接合する工程であってもよいし、あるいは、2つのシート状気嚢片を重ねてそれぞれの一方側の側縁部を接着剤で固着してもよい。
【0058】
(気嚢における第1の索体および第1の筒状部材の取り付け)
ここで、第1の索体の取付工程は、第1の筒状部材付きの気嚢片をつなぎ合わせて気嚢を形成した後に、気嚢を構成する複数の気嚢片に取り付けられている複数の第1の筒状部材に第1の索体を挿通させる工程でもよい。
【0059】
あるいは、第1の索体の取付工程は、第1の筒状部材が取り付けられていない気嚢片をつなぎ合わせて気嚢を形成して、気嚢の表面の下半部側に緯線に沿って複数の第1の筒状部材を取り付けた後に、複数の第1の筒状部材に第1の索体を挿通させる工程でもよい。
【0060】
(気嚢における第2の索体および第2の筒状部材の取り付け)
さらに、第2の索体の取付工程は、気嚢の複数の経線のそれぞれに沿って気嚢の外側に直に第2の索体を固着する工程でもよいし、あるいは、気嚢の複数の経線のそれぞれに沿って気嚢の外側に、第2の索体が挿入された第2の筒状部材を固着する工程でもよい。
【0061】
あるいは、第2の索体の取付工程は、複数の経線のそれぞれに沿った複数の第2の筒状部材が固着された気嚢を形成した後、それぞれの第2の筒状部材の内側に第2の索体を挿入する工程でもよい。
【0062】
ここで、気嚢に対する第2の筒状部材の固着は、複数のシート状気嚢片のうちの2つのシート状気嚢片を重ねてそれぞれの一方側の側縁部を熱溶着して気嚢を形成する際に、2つのシート状気嚢片の側縁部に第2の筒状部材を重ねてこれらを同時に熱溶着することにより行ってもよい。
【0063】
このように、気嚢に第1の索体に加えて第2の索体を取り付けた場合、第2の索体と第1の索体とを接合する接合工程が必要となるが、索体の接合工程は、1つの実施形態では、第2の索体の端部を第1の索体を囲むようにループ状に折返して第1の索体に連結する工程である。第1の索体および第2の索体が帯状の布部材である場合、第1の索体と第2の索体との連結は縫合を用いることができる。
【0064】
特に、第1の索体を第1の筒状部材に通し、かつ第2の索体を第2の筒状部材に通した後、第1の索体と第2の索体とを両索体の交差部で接合する接合工程では、第2の索体の端部をこれが第1の索体を囲むようにループ状に折り返して、折り返した部分と、第2の索体のうちの折り返した部分に重なる部分とを縫合により接合することが好ましい。第1の索体と第2の索体とを単に重ね合わせて縫合する場合に比べて、第2の索体の端部を折り返している分だけ、縫合部分にかかる荷重が軽減されるからである。
【0065】
〔飛翔体用部材〕
本願では、上述した本発明の飛翔体で用いられる部材(飛翔体用部材)も発明の対象となっており、以下、本発明の飛翔体用部材について説明する。
【0066】
本発明の飛翔体用部材は、気嚢を構成する複数の気嚢片と、複数の気嚢片の各々に取り付けられた第1の筒状部材とを含み、第1の筒状部材が、第1の索体を通すことが可能に構成されているものであればよく、その他の構成は限定されるものではなく任意であり得る。なぜなら、このような構成の飛翔体用部材を用いて飛翔体を構成することで、飛翔体では、気嚢を構成する複数の気嚢片の各々は、第1の索体が緯線に沿って位置するように第1の索体を通すための第1の筒状部材を含むこととなり、その結果、第1の筒状部材および第1の索体により、気嚢を構成するシート状部材が上向きにかかる力(浮力あるいは上昇気流などの外力)によってずり上がるのを抑制できる飛翔体を実現可能となるからである。
【0067】
ここで、第1の筒状部材は、1つの緯線の全体に沿って設けられるリング状の1つの部材でもあってもよいし、1つの緯線の一部に沿って一定間隔で設けられる円弧状の複数の部材であってもよい。また、第1の筒状部材は、熱溶着可能な素材を含み、気嚢に熱溶着されるものでもよいし、あるいは、熱溶解しない素材を含み、気嚢には接着剤で固着されるものでもよい。
【0068】
また、飛翔体用部材に含まれる第1の筒状部材は、第1の索体の出し入れをその両端部に形成されている開孔で行うものでもよいが、第1の筒状部材は、上述したように、両端部の開孔ではなく別の開孔部を設け、その開孔部を第1の索体の出入口とするものでもよい。
【0069】
また、第1の筒状部材は、その厚さが均一な構造のものであってもよいが、上述したように、両端部の厚さをその両端部以外の部分の厚さよりも厚い構造としたものでもよい。
【0070】
なお、第1の筒状部材に通す第1の索体は、形状あるいは材質が限定されるものではなく任意であり得る。例えば、第1の索体の形状として、線状部材であってその断面が略円形状、略四角形状、略楕円状などであり得る。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0071】
また、第1の索体の素材としては、例えば、布製、繊維製、金属製、あるいは樹脂製のものであり得る。
【0072】
さらに、飛翔体用部材は、気嚢片および第1の筒状部材に加えて、隣接する気嚢片の接合縁部に取り付けられる第2の筒状部材と、第2の筒状部材の内側に通された索体とを含み、第2の筒状部材は、熱溶着可能な素材を含み、索体は、第2の筒状部材よりも耐熱性が高いことが好ましい。この場合、熱溶着により第2の筒状部材を気嚢片に固着でき、また、第2の筒状部材の熱溶着の際に、第2の筒状部材に通されている索体が溶融するのを回避できる。
【0073】
ここで、第2の筒状部材は、熱溶解しない素材を含み、気嚢には接着剤で固着されるものでもよい。
【0074】
さらに、この索体は、第2の筒状部材の内側に通されて、気嚢にかかる負荷部の荷重を分散させる第2の索体として用いられるものであってもよいし、あるいは、第2の筒状部材に第2の索体を引き入れるための先導索体であってもよい。
【0075】
なお、第2の筒状部材に通す第2の索体は、第1の索体と同様に形状あるいは材質は任意であり得る。なお、第1の索体と第2の索体とを有する場合に、第1の索体および第2の索体の形状および/または素材を同じとしてもよいし、それぞれ異なるようにしてもよい。
【0076】
〔飛翔体用部材の製造方法〕
本発明の飛翔体用部材の製造方法は、上述した飛翔体用部材を形成する方法であって、気嚢を構成するための気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含むものである。気嚢片形成工程は任意の方法であり得る。例えば、気嚢片を、下側気嚢片および上側気嚢片の側縁部と第1の筒状部材の端部とを固着することにより形成するものでもよいし、あるいは、気嚢片を、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成してこの折畳部に第1の筒状部材の端部を固着することにより形成するものでもよい。
【0077】
あるいは、気嚢片を、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、第1の折畳部の少なくとも一部を折り畳んで第2の折畳部(二重の折畳部)を形成するとともに、第2の折畳部に筒状部が形成されるように第2の折畳部の少なくとも一部を溶着することにより形成するものでもよい。
【0078】
また、本発明の飛翔体用部材の製造方法は、上述した気嚢片形成工程に加えて、索体が通された第2の筒状部材を形成する部材形成工程を含むことが好ましい。この場合、気嚢を、索体が通された第2の筒状部材が経線に沿って固着された構造とすることができ、この構造では、第2の索体により気嚢にかかる荷重を分散することが可能となるからである。
【0079】
ただし、第2の索体が通された第2の筒状部材の形成方法は限定されるものではない。例えば、1つの実施形態では、部材形成工程は、帯状部材に接するように索体を配置する工程と、索体を挟み込むように帯状部材をその長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、帯状部材で、折り目から所定距離を超えない第1の領域内に索体を配置した状態で、折り目から一定距離を超える第2の領域(第1の領域以外の領域)にて、帯状部材のうちの折り重なっている部分を溶着する工程とを含む。
【0080】
ここでは、索体は、飛翔体の飛翔時に負荷部を気嚢から吊下げるための第2の索体であってもよいし、あるいは、飛翔体の飛翔時に気嚢を吊下げるための第2の索体を第2の筒状部材に通すための先導索体であってもよい。第2の筒状部材に通された索体が先導索体である場合は、これを用いて、気嚢を吊下げるための第2の索体を複数の第2の筒状部材に通すことが可能である。
【0081】
このように本発明の飛翔体は、第1の筒状部材と第1の索体とを含み、第1の筒状部材が気嚢の所定の緯線に沿って気嚢の外側に設けられ、第1の筒状部材の内側には第1の索体が移動可能に設けられているものであれば、その他の構成は特に限定されるものではないが、以下の実施形態では、飛翔体として、複数の第1の筒状部材と、1つのリング状の第1の索体と、複数の第2の筒状部材と、複数の第2の索体とを有し、複数の第2の索体の一端が気嚢の天頂部に接続され、その他端が接続索体を介して負荷部に接続された気球を挙げる。また、この実施形態では、第1の筒状部材および第2の筒状部材には、ポリエチレン樹脂製のスリーブ(水平スリーブおよび垂直スリーブ)が用いられ、第1の索体および第2の索体には、ナイロン、テトロン、あるいはポリエステル製の帯状部材が用いられるものとする。
【0082】
なお、気球における第1の筒状部材および第2の筒状部材は一般にはガイドスリーブと呼ばれ、気球における第1の索体および第2の索体は一般にロードテープと呼ばれるが、以下の実施形態の説明では、第1の筒状部材は水平スリーブ、第2の筒状部材は垂直スリーブという。また、第1の索体は使用状況において水平方向に配置されるものであることから水平ロードケーブル、第2の索体は、垂直方向に配置されるものであることから垂直ロードケーブルともいう。
【0083】
(実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0084】
〔飛翔体100の構造〕
図1は、本発明の一実施形態による飛翔体100の外観を示す斜視図であり、
図1(a)は、飛翔体100をその上側から見た構造を示し、
図1(b)は、飛翔体100をその下側から見た構造を示す。
【0085】
この飛翔体100は、軽量ガスを用いて浮力を発生するガス気球である。ここで、軽量ガスとしては、例えば、ヘリウムガス、水素ガスなどがある。また、この飛翔体100はガス気球に限定されるものではなく、加熱した空気の浮力を利用する熱気球であってもよいし、さらには、飛翔体100は、気球に限定されるものではなく、飛行船であってもよい。つまり、本発明の飛翔体100は、実施形態で例示した気球あるいは飛行船だけでなく、軽量ガスの浮力を利用して飛行するものを含む。
【0086】
この飛翔体100は、浮力を発生する気嚢110と、気嚢110に対する荷重となる負荷部120と、気嚢110と負荷部120とを接続する接続部材130と、気嚢110に対する補強部材140とを有している。
【0087】
図2は、
図1に示す飛翔体100の構成要素の配置を示す側面図であり、
図2(a)は、気嚢110における接続部材130と補強部材140との位置関係を示し、
図2(b)は、接続部材130に含まれる垂直スリーブ(第2の筒状部材)30bと補強部材140に含まれる水平スリーブ(第1の筒状部材)40bとの位置関係を示す。
【0088】
(気嚢110)
気嚢110は、静的浮力のある空気より軽いガス(軽量ガス)を充填することにより膨らませたときに中空の略球体構造となって浮力を発生させる袋状シート体であり、この袋状シート体は、
図1および
図2に示すように、複数のシート状の気嚢片(以下シート状気嚢片ともいう。)10で構成されている。ここでは、気嚢110を構成する複数のシート状気嚢片として6個のシート状気嚢片10を示しているが、気嚢110を構成する複数のシート状気嚢片の数は限定されるものではなく、6個以上(例えば、12個、16個など)でもそれ以下(例えば、4個など)でもよい。
【0089】
ここで、シート状気嚢片10は、両端を徐々に細くした船形形状を有しており、従って、このような形状のシート状気嚢片を、円弧状の側縁部が隣り合うように複数個環状に並べて、隣接するものの側縁部同士を接合することにより、膨らましたときに中空の略球体構造となる袋状シート体(気嚢)が形成される。なお、シート状気嚢片10の船形形状は、紡錘体の側面をその中心軸に直交する方向から見たときの形状(
図3(b)参照)である。
【0090】
このシート状気嚢片10の素材は、気球の球皮に使用される一般的な素材として任意であり得る。例えば、ナイロン、ポリエステル、あるいはポリエチレンなどである。
【0091】
(負荷部120)
負荷部120は、ガス気球の場合、搭乗者、測位のための器具、観測機材などを載せる部分であり、具体的には、上面が開口した容器(バスケット)、あるいは内部を密閉可能な容器(気密キャビン)などが用いられる。なお、熱気球の場合は、負荷部には、気嚢内の空気を加熱する加熱装置(バーナ)が搭載される。
【0092】
(接続部材130)
接続部材130は、
図2(a)に示すように、複数の垂直スリーブ(第2の筒状部材)30bと、複数の垂直ロードケーブル(第2の索体)30aと、複数の接続ロープ(接続索体)30cとを有している。ここでは、垂直スリーブ30b、垂直ロードケーブル30a、および接続ロープ30cは、それぞれ6個設けられている。なお、垂直スリーブ30b、垂直ロードケーブル30a、および接続ロープ30cの個数は、通常、気嚢110を構成するシート状気嚢片10の個数に相当する個数設けられる。なぜなら、垂直スリーブ30bおよび垂直ロードケーブル30aは、後述のとおり、隣接するシート状気嚢片10の接合部に沿って設けられるからである。なお、垂直スリーブ30b、垂直ロードケーブル30a、および接続ロープ30cは、気嚢110を構成する複数のシート状気嚢片10に対して、それぞれ1つ有する場合の他、シート状気嚢片10が存在する数よりも少なくなるように所定の間隔で設けるようにしてもよく、一個飛ばしなどの間隔で設けられることもある。
【0093】
垂直スリーブ30bは、
図2(b)に示すように、気嚢110に所定の複数の経線M(ここでは、隣接する経線の離間角度が60°である6個の経線)に沿って固着されており、それぞれの垂直スリーブ30bの内側には、垂直ロードケーブル30aが移動可能に設けられている。ここで、垂直ロードケーブル30aの上端は、気嚢110の天頂部110aに接続され、垂直ロードケーブル30aの下端は、接続ロープ30cの上端に接続され、接続ロープ30cの下端は負荷部120に接続されている(
図2(a)参照)。
【0094】
このように飛翔体100では、負荷部120は接続部材130により気嚢110に接続されていることから、飛翔体100の飛行時には、
図1(a)および
図1(b)に示すように、負荷部120は浮力を発生する気嚢110に吊下げられた状態となる。
【0095】
なお、垂直スリーブ30bでは、その上下の端部に垂直ロードケーブル30aから強い力を受ける可能性があり、垂直スリーブ30bはその上下の端部の強度を高めたものが好ましい。具体的な補強の仕方は、垂直スリーブ30bの端部の厚さを厚くすることである。厚さを厚くする方法は限定されるものではないが、それぞれの端部は、構成部材であるシート状構成部材を折り返した構造としてもよいし、あるいは端部のみ別のシート状構成部材を貼り付けた構造としてもよい。
【0096】
(補強部材140)
補強部材140は、複数(ここでは、6個)の水平スリーブ40bと1つの水平ロードケーブル40aとを有しており、複数の水平スリーブ40bは、
図2(b)に示すように、気嚢110の下半部側の1つの緯線Lに沿って所定の間隔(約60°間隔)で緯線Lの全周に渡って取り付けられている。この緯線Lは、気嚢110の天頂を0°として約135°の位置に位置している。これらの複数の水平スリーブ40bの内側には1つのリング状の水平ロードケーブル40aが移動可能に挿入されており、水平ロードケーブル40aのうちの隣接する水平スリーブ40bの間で露出する部分は、垂直ロードケーブル30aの下端と交差しており、この交差部で水平ロードケーブル40aと垂直ロードケーブル30aとが接合されている。
【0097】
このように、気嚢110の全周に渡って複数の水平スリーブ40bを所定の間隔で気嚢110に取り付けてこれらの水平スリーブ40bに水平ロードケーブル40aを通し、この水平ロードケーブル40aを隣接する水平スリーブ40bの間で垂直ロードケーブル30aの下端に接合することにより、飛行時に気嚢110に対してこれを構成するシート状部材がずり上がる方向に力が働いても、隣接する垂直ロードケーブル30aの間での球皮(シート状気嚢片10)のずり上がりを抑制可能となる。
【0098】
なぜなら、垂直ロードケーブル30aの下端が接続ロープ30cにより負荷部120に固定され、水平ロードケーブル40aが垂直ロードケーブル30aの下端に接合されているので、このような水平ロードケーブル40aが挿入されている水平スリーブ40bは、水平ロードケーブル40aにより上方への移動が規制されることとなるからである。
【0099】
なお、水平スリーブ40bではその両端部に水平ロードケーブル40aから強い力を受ける可能性があり、水平スリーブ40bはその両端部の強度を高めたものが好ましい。具体的な補強の仕方は、水平スリーブ40bの端部の厚さを厚くすることである。厚さを厚くする方法は限定されるものではないが、それぞれの端部は、構成部材であるシート状構成部材を折り返した構造としてもよいし、あるいは端部のみ別のシート状構成部材を貼り付けた構造としてもよい。
【0100】
また、水平スリーブ40bは、両端部の開孔とは別に水平スリーブ40bの筒状部材に対して水平ロードケーブル40aを出し入れするための開孔部が形成したものでもよい。このような開孔部、つまり、水平ロードケーブル40aを通す孔を水平スリーブ40bに設けることで、水平スリーブ40bと気嚢を構成する球皮との溶着界面にかかる引張荷重を分散させて、水平スリーブ40bの端部での球皮裂けを抑制することが可能となる。ここで、開孔部の形状は限定されるものではなく、円形の開孔部でも四角形あるいは六角形などの多角形の開孔部でもよい。
【0101】
このような構成の本実施形態の飛翔体100では、気嚢110は、接続部材130における垂直スリーブ30bおよび垂直ロードケーブル40a、並びに補強部材140を構成する水平スリーブ40bおよび水平ロードケーブル40aを、気嚢110を構成するシート状部材(複数の気嚢片10を接合したもの)に一体的に組み込んだ構造となっており、以下、複数の構成部材が一体化された気嚢110の具体的な構造を詳しく説明する。
【0102】
(気嚢110の具体的な構成)
図3は、水平スリーブ40bが一体化された気嚢110の構造を示す図であり、
図3(a)は、気嚢110の全体を示し、
図3(b)は、気嚢110を構成するシート状気嚢片10を示し、
図3(c)は、
図3(b)のIIIa-IIIa線断面の構造を拡大して示す。
【0103】
気嚢110は、
図3(a)に示すように、複数の(ここでは6枚の)船形形状のシート状気嚢片10で構成されており、隣接するシート状気嚢片10の側縁部同士が接合されている。なお、
図1~
図3などでは、気嚢110として、6枚のシート状気嚢片10で構成されているものを示しているが、実用的には、それより多い個数(例えば16個)のシート状気嚢片10で構成される。気嚢110をより多くのシート状気嚢片10で構成すると、膨らましたときにより球体に近い形状となり、気嚢110の強度が高まるが、組立に手間がかかる。逆に、気嚢110を構成するシート状気嚢片10の数を少なくすると、組立の手間は省けるが、気嚢110を膨らませたときの形状が球体から遠ざかることとなり、気嚢110にかかる荷重が特定の箇所に集中しやすくなり、その結果、気嚢110の強度が低下する。
【0104】
個々のシート状気嚢片10は、
図3(b)および
図3(c)に示すように、下側気嚢片10a、上側気嚢片10b、および水平スリーブ40bを含み、これらを熱溶着により一体的に接合したものである。
【0105】
ここで、下側気嚢片10aおよび上側気嚢片10bは、これらを接合すると船形形状のシート状気嚢片10となり、さらに、それらの接合部10cが、膨らませた気嚢110の天頂を0°として天頂から経線方向に約135°下った位置にくる形状となっている。
【0106】
また、下側気嚢片10aと上側気嚢片10bとの接合部10cは、気嚢110の外側に位置するように形成されており、この接合部10cには水平スリーブ40bが熱溶着により固着されている。
【0107】
水平スリーブ40bは、
図3(c)に示すように、シート状気嚢片110に固着されるスリーブ固着部(単に固着部ともいう。)40b1と、水平ロードケーブル40aを通すためのスリーブ筒体部(単に筒体部ともいう。)40b2とを有しており、シート状気嚢片110の接合部10cの上側面には水平スリーブ40bの固着部40b1が熱溶着により固着され、スリーブ筒体部40b2は、その上側ほどシート状気嚢片110に近づくように、スリーブ固着部40b1から斜めに起立した姿勢となっている。なお、水平スリーブ40bには、例えば、熱溶着可能なポリエチレン製のチューブが用いられる。ただし、水平スリーブ40bは、熱溶着可能なものには限定されず、それ以外のプラスチック製のチューブでもよい。その場合、水平スリーブ40bは、接着材でシート状気嚢片10の接合部10cに固着される。
【0108】
図4は、
図3に示す気嚢110の水平スリーブ40bに水平ロードケーブル40aを通した状態を示す図であり、
図4(a)は、補強部材140(水平スリーブ40bおよび水平ロードケーブル40a)の全体を示し、
図4(b)は、1つの気嚢片10における補強部材140の構造を示し、
図4(c)は、
図4(b)のIVa-IVa線断面の構造を示す。
図4(d)は、接合部10cを下向きに折り込んだ状態を示し、
図4(e)は、
図4(d)に示す状態で水平ロードケーブル40aに対して相対的に気嚢片10を持ち上げる方向の力が作用した状態を示す。
【0109】
水平ロードケーブル40aは、緯線に沿って並ぶ複数の水平スリーブ40bの所定のものから順次ケーブル部材を通し、すべての水平スリーブ40bにケーブル部材を通した状態で、ケーブル部材の対向する先端部と後端部とを連結したものである。このケーブル部材の連結は、ケーブル部材が帯状の布製テープである場合は縫合により接合してもよいし、ケーブル部材が金属製の撚線ワイヤである場合は、ワイヤの撚線を解して接合する技術を用いて連結してもよし、あるいは、ケーブル部材が樹脂製テープである場合は熱溶着あるいは接着材で連結してもよい。
【0110】
図4(b)、
図4(c)に示すように、気嚢110を構成する複数のシート状気嚢片10の水平スリーブ40bに1つのリング状の水平ロードケーブル40aを通した状態では、隣接する水平スリーブ40bの間には、
図4(a)に示すように、水平ロードケーブル40aの一部が露出しており、この露出している部分に、垂直ロードケーブル30aの一端が接続される。
【0111】
(シート状気嚢片10に対する第1の筒状部材の取付方向の例示)
なお、
図3に示すシート状気嚢片10では、水平スリーブ40bは、下側気嚢片10aと上側気嚢片10bとの接合部(水平接合部)10cを
図4(d)に示すように下向きに折り込んだ状態で水平スリーブ40bが上向きになるように水平接合部10cに取り付けられている。
【0112】
ここで、水平スリーブ40bの上向きとは、水平スリーブ40bが、水平ロードケーブル40aを通すスリーブ筒体部40b2と、気嚢に熱溶着されたスリーブ固着部40b1とを含むとき、
図4(d)に示すように、筒体部40b2と固着部40b1との境界部分40b3が固着部40b1のうちの筒体部40b2とは反対側の端部よりも上側に位置する向きである。
【0113】
この場合、気嚢片の水平接合部の側縁と水平スリーブ40bの固着部の側縁とを揃えて両者を溶着することができ、気嚢に対する水平スリーブ40bの取り付け作業が簡単である。気嚢に働く力が小さいことが想定される場合(例えば、飛翔体が小型である場合など)には有効である。
【0114】
ただし、
図4(d)に示すように水平接合部10cを下向きに折り込んだ状態で、水平ロードケーブル40aに対して相対的に気嚢片10を持ち上げる方向の大きな力が作用すると、
図4(e)に示すように、水平接合部10cの根元部(
図4(e)のP2部分)から水平スリーブ40bを捲り取る方向の力が働き、水平スリーブ40bが剥がれるおそれがある。
【0115】
これに対しては、
図4Aに示すように、水平スリーブ40bは、下側気嚢片10aと上側気嚢片10bとの接合部(水平接合部)10cを
図4A(c)に示すように下向きに折り込んだ状態で水平スリーブ40bが下向きになるように水平接合部10cに取り付けられていることが好ましく、以下図面を用いて説明する。
【0116】
図4Aは、
図3に示す2つの部品(下側気嚢片10aと上側気嚢片10b)の接合により作製される1つのシート状気嚢片10の変形例として、2つの部品の接合部(水平接合部)10cに水平スリーブ40bを下向きに、つまり、その筒体部40b2がその固着部40b1の下側に位置するように取り付けた気嚢片を示す図である。
図4A(a)は、1つの気嚢片10における補強部材140aの構造を示し、
図4A(b)は、
図4A(a)のIVb-IVb線断面の構造を示し、
図4A(c)は、接合部10cを下向きに折り込んだ状態を示し、
図4A(d)は、
図4A(c)に示す状態で水平ロードケーブルに対して相対的に気嚢片を持ち上げる方向の力が作用した状態を示す。
【0117】
すなわち、シート状気嚢片10では、
図4A(a)、(b)に示すように、水平スリーブ40bは、下側気嚢片10aと上側気嚢片10bとの接合部(水平接合部)10cを
図4A(c)に示すように下向きに折り込んだときに、水平スリーブ40bが下向きになるように構成されていることが好ましい。ここで、水平スリーブ40bの下向きとは、水平スリーブ40bが、
図4A(c)に示すように、スリーブ筒体部40b2とスリーブ固着部40b1との境界部分40b3がスリーブ固着部40b1のうちのスリーブ筒体部40b2とは反対側の端部よりも下側に位置するときの向きである。
【0118】
この場合、
図4A(c)に示す状態で水平ロードケーブルに対して相対的に気嚢片を持ち上げる方向の力が作用したとき(
図4A(d))、シート状気嚢片10の水平接合部10cから水平スリーブ40bのスリーブ固着部40b1を引き剥がそうとする力は、これらの接合部(
図4A(d)のP1部分)の全体に分散され、水平スリーブ40bが剥がれるのを抑制できるからである。
【0119】
(水平スリーブ40bの形状の他の例示)
さらに、水平スリーブ40bの形状は、筒状であればよく、厚さが場所によって異なっていてもよいし、あるいは水平ロードケーブル40aを出し入れするためのスリーブ開孔部41b3は、スリーブの両端部に限定されず、スリーブの側壁に形成されたものでもよい。
【0120】
図4Bは、水平スリーブ41bとして、その両端部41b0の厚さをその両端部以外の部分の厚さよりも厚くし、かつ、両端部の側壁に、水平スリーブ41bに対して水平ロードケーブル40aを出し入れするためのスリーブ開孔部41b3を形成したものを示す図である。
図4B(a)は、1つの気嚢片10における補強部材141の取り付け状態を示し、
図4B(b)は、
図4B(a)のR1部分を拡大して示し、
図4B(c)は、
図4B(b)のIVc-IVc線断面を示し、
図4B(d)は、この補強部材141の水平スリーブ41bに水平ロードケーブル40aを通す様子を示す。
【0121】
図4Bに示す補強部材141に含まれる水平スリーブ41bでは、これを形成する側壁の両端部40b0に、水平スリーブ41bの内部から水平ロードケーブル40aを取り出すためのスリーブ開孔部41b3が形成されている。このような開孔部、つまり、水平ロードケーブル40aを通す孔を水平スリーブ41bの両端部(水平スリーブ両端部)41b0に設けることで、水平スリーブ41bと気嚢を構成する球皮との溶着界面にかかる引張荷重を分散させて、水平スリーブ41bの両端部41b0での球皮裂けを抑制することが可能となる。なお、
図4B中、41b1はスリーブ固着部、41b2はスリーブ筒体部である。
【0122】
図4Cは、
図4Bに示す水平スリーブ41bを用いた場合に、隣接する水平スリーブ41bの間でそれぞれの開孔部41b3を水平ロードケーブル40aが通過する様子を示す図であり、
図4C(a)は、垂直接合部30cにより接合された隣接するシート状気嚢片の間での水平ロードケーブルの配置を示し、
図4C(b)は、
図4C(a)のR2部分を拡大して示す。
【0123】
図4C(a)、(b)に示されるように、隣接する気嚢片の接合部である垂直接合部30cの両側に位置する水平スリーブ41bでは、水平ロードケーブル40aは、水平スリーブ41bの両端の開孔ではなく、両端よりも内側に位置する開孔部41b3を通して水平スリーブ41bの内外に出入りする。このため、水平スリーブ41bの両端部で構成部材(球皮)が裂けるのを抑制することができる。
【0124】
なお、ここでは、シート状気嚢片10は、
図3(b)、
図3(c)に示すように、2つの部品である下側気嚢片10aと上側気嚢片10bとの接合部(水平接合部)10cに水平スリーブ40bを接合したものであるが、この実施形態の気嚢110を構成するシート状気嚢片は、これに限定されるものではなく、気嚢110は、2つの部品から作製したシート状気嚢片10に代えて、1つの部品から作製したシート状気嚢片61を用いて構成してもよい。
【0125】
このシート状気嚢片61は、
図4D(a)~
図4D(f)に示すように、1つの部品である気嚢片材料60aの少なくとも一部(折畳部)61cを折り畳んで溶着した部分に水平スリーブ40bを一体的に接合したものでもよい。
【0126】
図4D(a)および(b)は、1つの気嚢片材料60aを示す図であり、
図4D(c)および(d)は、1つの気嚢片材料60aの折畳部61cを折り畳んでシート状気嚢片61を形成した状態を示す図であり、
図4D(e)および(f)は、シート状気嚢片61の折畳部61cに水平スリーブ40bを固着した状態を示す図である。
【0127】
図4D(a)~(d)に示すように、1つの気嚢片材料60aの少なくとも一部を折り畳んで形成したシート状気嚢片61は、気嚢片下部61a、気嚢片上部61b、およびこれらの間に位置して折り畳まれた部分(折畳部)61cを含んでいる。また、このシート状気嚢片61の折畳部61cには、
図4D(e)、(f)に示すように水平スリーブ40bが固着されている。
【0128】
ここで、折畳部61aは、1つの気嚢片材料60aの気嚢片下部61aと折畳部61cとの境界(一点鎖線で示す部分)、および気嚢片上部61bと折曲部61cとの境界(一点鎖線で示す部分)で、気嚢片材料60aが約90度谷折りされ、折曲部61cの中央(二点鎖線で示す部分)で気嚢片材料60aが約180度山折りされるように、気嚢片材料60aの折畳部61cを折り畳むことにより形成された部分である。
【0129】
さらに、この実施形態の気嚢110を構成するシート状気嚢片は、1つの部品から作製した第1の筒状部材付きのシート状気嚢片71を用いて構成してもよい。
【0130】
図4Eは、
図3に示す2つの部品の接合により作製される1つのシート状気嚢片10に代わるシート状気嚢片として、1つの部品を二重に折りたたむことにより作製したシート状気嚢片71を示すとともに、その製作工程を示す図である。
【0131】
図4E(a)および(b)は、1つの気嚢片材料70aを示し、
図4E(c)および(d)は、1つの気嚢片材料70aの一部(折り畳むべき部分)71cを折り畳んで折畳部71cを形成した状態を示し、
図4E(e)および(f)は、折畳部71cを折り畳んで二重の折畳部71dを形成した状態を示し、
図4E(g)は
図4E(f)のR3部分の拡大図であり、
図4E(h)は、二重折畳部71dの隙間Sp(
図4E(g))が水平ロードケーブル40aを通すスペースとなることを示す。
【0132】
図4E(a)~(f)に示すように、1つの気嚢片材料70aの少なくとも一部を折り畳んで形成したシート状気嚢片71は、気嚢片下部71a、気嚢片上部71b、およびこれらの間に位置して折り畳まれた部分(二重折畳部)71dを含んでいる。また、このシート状気嚢片71の二重折畳部71dには、
図4E(g)、(h)に示すように水平スリーブ42bが含まれている。
【0133】
ここで、折畳部(第1の折畳部)71cは、1つの気嚢片材料70aの気嚢片下部71aと折畳対象部71c0との境界(一点鎖線で示す部分)、および気嚢片上部71bと折畳対象部71c0との境界(一点鎖線で示す部分)で、気嚢片材料70aが約90度谷折りされ、折畳対象部71c0の中央(二点鎖線で示す部分)で気嚢片材料70aが約180度山折りされるように、気嚢片材料70aの折畳対象部71c0を折り畳んで形成された部分である。
【0134】
また、二重折畳部(第2の折畳部)71dは、折畳部71cの先端側711をその根元部712に対して
図4E(d)の矢印で示すように球皮上側に折り畳み、さらにその先端側部分(スリーブ固着部)42b1のみを熱溶着することにより形成した部分である(
図4E(e)~(g))。
【0135】
さらにこの二重折畳部71dに含まれるスリーブ固着部42b1以外の部分(スリーブ筒体部)42b2では、
図4E(h)に示すように、内部の隙間Spが水平ロードケーブル40aを通す通路となっている。
【0136】
図5は、垂直スリーブ30bおよび垂直ロードケーブル30aの具体的な構造を示す斜視図であり、
図5(a)は、
図2(a)のA部分を切り出して拡大して示し、
図5(b)は、
図5(a)に示される垂直ロードケーブル30aを抜き出して示し、
図5(c)は、
図5(a)に示される垂直スリーブ30bを抜き出して示す。
【0137】
気嚢110における隣接するシート状気嚢片10の垂直接合部10d(
図5(a)参照)には、
図2(b)に示すように、複数の経線Mに沿って垂直スリーブ30bが固着されており、垂直スリーブ30bの内側には、
図5(a)に示すように、垂直ロードケーブル30aが移動可能に通されている。ここで、垂直スリーブ30bは、
図2(b)に示すように、気嚢110の天頂の手前から、天頂を0°として約135°に対応する位置まで1つの経線Mに沿って延びており、また、垂直スリーブ30bの内側に通される垂直ロードケーブル30aは、
図2(a)に示すように、その両端部が、垂直スリーブ30bの両端部から露出するように、垂直スリーブ30bより若干長くなっている。
【0138】
また、水平ロードケーブル40aが通されている水平スリーブ40bは、隣接するシート状気嚢片10の溶着された側縁部(
図5(a)の垂直接合部10d)上にて水平ロードケーブル40aが露出するように、水平スリーブ40bが沿う緯線L(
図2(b)参照)の位置でのシート状気嚢片10の幅よりも短くなっている。
【0139】
つまり、垂直ロードケーブル30aの下端部(ケーブル下端部)32と水平ロードケーブル40aとの交差部では、両者は露出している。従って、垂直ロードケーブル30aの下端部は、隣接する水平スリーブ40bの間で水平ロードケーブル40aと接合されている。
【0140】
なお、垂直スリーブ30bは、
図5(c)に示すように、気嚢110に固着される固着片(スリーブ固着片ともいう。)30b1と、
図5(b)に示す垂直ロードケーブル30aを通す筒体片(スリーブ筒体片ともいう。)30b2とを有し、スリーブ固着片30b1は、
図5(a)に示すように、気嚢110における隣接するシート状気嚢片10の溶着された側縁部(垂直接合部10d)に溶着されている。ここで、
図5(a)のスリーブ固着片30b1の斜線で示した領域は、垂直スリーブ30bを2つのシート状気嚢片10の側縁部に重ねて熱溶着する際に加熱される部分である。
【0141】
また、垂直ロードケーブル30aの上端部(ケーブル上端部)31は天頂リング材101に固定され、垂直ロードケーブル30aの下端部32は、上述したように水平ロードケーブル40aに接合されるとともに、接続ロープ30cに接続されており、以下に詳述する。
【0142】
図6は、垂直ロードケーブル30aの端部の構造を説明するための図であり、
図6(a)は、
図2(a)のB部分(気嚢の天頂部110a)の具体的な構造を示す図であり、
図6(b)は、
図6(a)のVIa-VIa線断面図であり、
図6(c)は、
図2(a)のC部分(垂直ロードケーブル30aと水平ロードケーブル40aとの接合部分)の構造を具体的に示す斜視図である。
【0143】
気嚢110の天頂部110aには、リング状固定具101が取り付けられており、このリング状固定具101に複数の垂直ロードケーブル30aの上端部31が固定されている。
【0144】
具体的には、リング状固定具101は、
図6(b)に示すように、気嚢110の内側に位置する内側リング片101bと、気嚢110の外側に位置する外側リング片101aとを有し、内側リング片101bと外側リング片101aとで、気嚢110を構成するシート状部材(つまり、シート状気嚢片10)を挟んで両リング片を固定ボルト103aと固定ナット103bとで締め付けることにより気嚢110に固定されている。
【0145】
ここで、外側リング片101aには、
図6(a)に示すように、垂直ロードケーブル30aの上端部31が固定バックル102で固定されている。具体的には、
図6(b)に示すように、垂直ロードケーブル30aの上端部31は外側リング片101aに巻き付けて折り返されており、この折り返し部分と、垂直ロードケーブル30aの上端部31のうちの折り返し部分が重なる部分とが、固定バックル102で固定されている。
【0146】
一方、垂直ロードケーブル30aの下端部32は、隣接する水平スリーブ40bの間の、水平ロードケーブル40aと交差する部分で接合されている。具体的には、垂直ロードケーブル30aの下端部32を水平ロードケーブル40aに巻き付けて折り返した部分(折り返し部分)32aが、垂直ロードケーブル30aのうちの折り返し部分32aと対向する部分(対向部分)32bに縫合により固定される。なお、
図6(c)中、32dは縫合糸(太い点線で表示)を示す。
【0147】
また、垂直ロードケーブル30aの下端部32の折り返しでできたループ部分32cには、連結器具30dにより接続ロープ30cの上端部(ロープ上端部)30c1が接続される。なお、連結器具30dは、垂直ロードケーブル30aのループ部分32cに装着されるリング状連結具30d1と、接続ロープ30cのロープ上端部30c1のうちのリング状連結具30d1に巻き付けたワイヤ端部を留めるワイヤ留め具(ワイヤクリップ)30d2とを含んでいる。
【0148】
なお、ここでは、飛翔体100はリング状固定具101を備えるものとしているが、飛翔体100はリング状固定具101を備えていなくてもよい。その場合、複数の垂直ロードケーブル30aの上端部31は結び付けなどの方法によりまとめて直接接続されていてもよし、あるいは、複数の垂直ロードケーブル30aの上端部31は、接着剤、両面テープなどで気嚢110の天頂部100aに接続されていてもよい。
【0149】
また、上述した実施形態の飛翔体100は、軽量ガスを気嚢110の外部からその内部に送り込むための送気ダクト(筒状部材)を有していてもよい。この場合、この送気ダクトは、例えば、気嚢110を構成するシート状部材(接合されて気嚢を構成している複数のシート状気嚢片10)の内側に、隣接するシート状気嚢片の接合部分に沿って、つまり気嚢の経線に沿って、気嚢の天頂部から底部に跨って気嚢の内側に取り付けられる。この送気ダクトを有する飛翔体では、軽量ガスが充填されたガスボンベを送気管(ガスホースなど)を介して送気ダクトの下端の開口部に接続することで、気嚢の内部への軽量ガスの充填をガスボンベから簡単に行うことができる。
【0150】
〔飛翔体100の製造方法〕
次に、飛翔体100を製造する方法を説明する。
【0151】
図7~
図13は、飛翔体100を製造する方法を示す図である。
【0152】
上述した飛翔体100の製造では、まず、飛翔体100で用いられる部材(飛翔体用部材)を作製しておき、飛翔体100は、既に作製した飛翔体用部材を組み合わせて作製する。
【0153】
この飛翔体100に用いられている主な構成部材は、シート状気嚢片10、水平スリーブ(第1の筒状部材)40b、垂直スリーブ(第2の筒状部材)30b、水平ロードケーブル(第1の索体)40a、垂直ロードケーブル(第2の索体)30a、接続ロープ(接続索体)30c、および負荷部120などであるが、この実施形態の飛翔体100の製造方法では、飛翔体用部材として予め作製しておくべき主な部材は、水平スリーブ40bが一体化された複数のシート状気嚢片10と、垂直ロードケーブル30aが通された複数の垂直スリーブ30bとであり、以下これらの作製方法を説明する。
【0154】
図7は、シート状気嚢片10の部品(下側気嚢片10aおよび上側気嚢片10b)を切り出す工程を示し、
図8は、シート状気嚢片10を作製する工程を示し、
図8(a)はシート状気嚢片10の形成工程を示し、
図8(c)はシート状気嚢片10に水平スリーブ40bを付加する工程を示し、
図8(b)および
図8(d)はそれぞれ
図8(a)のVIIIa-VIIIa線断面、
図8(c)のVIIIb-VIIIb線断面の構造を示す。
【0155】
(気嚢片10の作製)
まず、軽量かつ強度の高い素材であるポリエチレンなどのプラスチック製のシート状素材50を準備し、このシート状素材50から、飛翔体100における気嚢110の構成部材である船形形状のシート状気嚢片10の部品、つまり、下側気嚢片10aおよび上側気嚢片10bを、気嚢110の大きさに合わせた形状に切り出す(
図7)。ここで、下側気嚢片10aおよび上側気嚢片10bは、熱溶着のための溶着代10a1および10b1を有している。
【0156】
次に、下側気嚢片10aの溶着代10a1と上側気嚢片10bの溶着代10b1とを熱溶着により固着することにより船形形状のシート状気嚢片10を形成する(
図8(a)、(b)参照)。さらに、下側気嚢片10aと上側気嚢片10bの接合部(水平接合部)10cに水平スリーブ40bのスリーブ固着部40b1を熱溶着により固着する(
図8(c)、(d)参照)。
【0157】
これにより、水平スリーブ40bが一体化されたシート状気嚢片10が得られる。
【0158】
なお、水平スリーブ40bが一体化されたシート状気嚢片の形成方法は、
図7および
図8で説明したようにシート状材料50から2つの部品(下側気嚢片10aおよび上側気嚢片10b)を切り出してこれらを接合する接合工程を含むものに限定されず、この接合工程に代えて、シート状材料50から気嚢片作成のための1つの部品(気嚢片材料)を切り出してその少なくとも一部を折り畳む折畳工程を含むのでもよく、以下、この折畳工程を具体的に説明する。
【0159】
図8Aは、シート状気嚢片61の部品として1つの気嚢片材料60aを切り出す工程を示し、
図4Aは、シート状気嚢片61の部品として切り出された1つの気嚢片材料60aを用いて水平スリーブ40b付きのシート状気嚢片61を作製する工程を示している。
【0160】
図8Aに示す方法では、
図7に示す方法と同様にシート状材料50を準備し、このシート状材料50から、飛翔体100における気嚢110の構成部材である船形形状のシート状気嚢片61の部品として一体構造の1つの気嚢片材料60aを、気嚢110の大きさに合わせた形状に切り出す。ここで、気嚢片材料60aは、気嚢片61の下部となる部分(気嚢片下部)61a、その上部となる部分(気嚢片上部)61b、およびこれらの間に位置して折り畳まれる部分(折畳対象部)61c0を含んでいる。
【0161】
次に、気嚢片下部61aと折畳部60c0との境界(一点鎖線で示す部分)、および気嚢片上部61bと折曲対象部60c0との境界(一点鎖線で示す部分)で、気嚢片材料60aが約90度谷折りされ、折曲対象部60c0の中央(二点鎖線で示す部分)で気嚢片材料60aが約180度山折りされるように、折畳対象部60c0を折り畳む。このとき、折畳対象部61c0の気嚢片下部61a側に位置する部分60c1と、折畳対象部61c0の気嚢片上部61b側に位置する部分60c2とが重なった部分が折畳部61cとなり、折畳部61cを熱溶着により固着して、シート状気嚢片61を形成する(
図4D(a)~(d)参照)。さらに、シート状気嚢片61の折畳部61cに水平スリーブ40bのスリーブ固着部40b1を熱溶着により固着する(
図4D(e)、(f)参照)。ここで、シート状気嚢片61の折畳部61cは、水平接合部10cに対応する部分である。
【0162】
これにより、水平スリーブ40bが一体化されたシート状気嚢片61が、
図7および
図8に示す方法とは異なる方法で作製される。
【0163】
さらに、1つの部品(気嚢片材料)からシート状気嚢片を形成する方法は、
図4Dおよび
図8Aで説明したものに限定されず、シート状気嚢片をこれに接続される水平スリーブ40bと一体的に作製するものでもよい。この方法は、1つの部品である気嚢片材料の2回の折畳工程を含み、以下、
図4Eを用いて具体的に説明する。
【0164】
この気嚢片の形成工程では、
図4E(a)~(b)に示すように、シート状気嚢片61の形成の場合と同様に、1つの気嚢片材料70aの一部(折畳対象部)71c0を折り畳んで第1の折畳部71c(
図4E(c)~(d))を形成して中間形成体70bを形成する。さらに、この中間形成体70bの第1の折畳部71cの一部を折り畳んで第2の折畳部71dを形成し、その後、筒体部42b2が形成されるように第2の折畳部の一部(固着部となる部分)42b1を溶着する(
図4E(e)~(f))。これにより、第1の筒状部材42bを固着したシート状気嚢片71を形成する。このシート状気嚢片71では、
図4E(g)に示すように、第1の筒状部材42bが一体的に含まれており、
図4E(h)に示すように、第2の折畳部71dの溶着されていない部分の隙間Spには、水平ロードケーブル40aを挿入可能となっている。
【0165】
次に、垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bを作製する工程を説明する。
【0166】
図9は、垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bを作製する方法の一例を説明するための図であり、
図9(a)は、帯状シート30上に垂直ロードケーブル30aを配置した状態を示し、
図9(b)は、帯状シート30を折り畳んだ状態を示し、
図9(c)は、折り畳んだ帯状シート30を熱溶着した状態を示す。
【0167】
垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bを作製する場合、まず、
図9(a)に示すように、帯状シート30上に垂直ロードケーブル30aを帯状シート30の長手方向に沿って載せる。その際、垂直ロードケーブル30aは帯状シート30の中央の折り目X1にできるだけ近づけて配置する。これはその後の加熱工程で垂直ロードケーブル30aへの熱の影響をできるだけ少なくするためである。
【0168】
次に、
図9(b)に示すように、垂直ロードケーブル30aを帯状シート30で挟むように帯状シート30をその長手方向に沿った折り目X1で折り畳む。
【0169】
続いて、折り畳まれて帯状シート30同士が接触している部分、つまり、垂直ロードケーブル30aが配置されていない領域R4を加熱して溶着することにより、垂直ロードケーブル30aが通された複数の垂直スリーブ30bを作製する(
図9(c)参照)。
【0170】
その後、作製した水平スリーブ40bが付加されたシート状気嚢片10、および垂直ロードケーブル30aが通された複数の垂直スリーブ30bを用いて、水平スリーブ40b、垂直スリーブ30bおよび垂直ロードケーブル30aが一体化された気嚢110を作製する。
【0171】
図10は、2つのシート状気嚢片11および12をそれぞれの円弧状の側縁部で接合すると同時に、2つのシート状気嚢片11および12の円弧状の側縁部に、垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bを固着する工程を示す図である。
図11は、
図10のD部分の断面構造を説明するための斜視図であり、
図11(a)は、2つのシート状気嚢片11および12の側縁部に、垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bを重ねた状態を具体的に示し、
図11(b)は、2つのシート状気嚢片11および12と垂直スリーブ30bとを溶着した後にシート状気嚢片12を折り返した状態を示す。なお、
図10および
図11では、2つのシート状気嚢片10の一方をシート状気嚢片11とし、その他方をシート状気嚢片12とする。
【0172】
図10に示すように、2つのシート状気嚢片11および12の側縁部と、垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bとを接合する処理を、気嚢110を構成するすべての隣接するシート状気嚢片10に対して施す。
【0173】
具体的には、
図11(a)に示すように、2つのシート状気嚢片11および12の円弧状の側縁部を裏面同士が対向するように重ね合わせ、さらに、一方のシート状気嚢片11の側縁部の表面上に、垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bを重ね合わせる。
【0174】
続いて、
図11(a)の斜線領域R5の部分(つまり、垂直ロードケーブル30aが配置されていない領域)を加熱して2つのシート状気嚢片11および12の側縁部と垂直スリーブ30bの固着片30b1(
図5(b)参照)をまとめて溶着により固着する。
【0175】
その後、
図11(b)に示すように、2つのシート状気嚢片のうちの垂直スリーブ30bが固着されていない下側のシート状気嚢片12を折り返して気嚢110の少なくとも一部を形成する。
【0176】
このような溶着処理を、気嚢110を構成することとなるすべての隣接する2つのシート状気嚢片に対して施すことにより、水平スリーブ40b、垂直スリーブ30b、および垂直ロードケーブル30aが一体化された気嚢110を形成し、最後に、複数のシート状気嚢片10の水平スリーブ40bに水平ロードケーブル40aを通して気嚢110を完成する。
【0177】
その後、気嚢110の気嚢天頂部100aにはリング状固定具101を取り付け、複数の垂直ロードケーブル30aの上端部31をリング状固定具101に接続し、複数の垂直ロードケーブル30aの下端部32を隣接する水平スリーブ40bの間で水平ロードケーブル40aに接続するとともに、複数の接続索体30cのうちの対応する接続索体30cのロープ上端部30c1に接続する。ここで、複数の接続索体30cの下端部は、負荷部120に接続する。
【0178】
このようにして飛翔体100が完成される。
【0179】
なお、垂直ロードケーブル30aを気嚢110に取り付ける方法としては、上述したように、垂直スリーブ30bに垂直ロードケーブル30aを通した状態で、垂直スリーブ30bおよび垂直ロードケーブル30aを同時に気嚢110に取り付ける方法だけでなく、垂直スリーブ30bを気嚢110に取り付けた後に、垂直ロードケーブル30aを垂直スリーブ30bに通す別の方法もある。
【0180】
この方法で垂直ロードケーブル30aを取り付ける場合は、垂直スリーブ30bに垂直ロードケーブル30aを引き込むための先導索体33を垂直スリーブ30bに通した状態で垂直スリーブ30bを気嚢110に取り付ける必要があり、以下、先導索体33が通された垂直スリーブ30bを作製する方法を説明する。なお、先導索体33としては、例えば、耐熱性が高く熱溶解しない綿製ロープなどが用いられる。
【0181】
図12は、先導索体33が通された複数の垂直スリーブ30bを作製する方法の一例を説明するための斜視図であり、
図12(a)は、帯状シート30上に先導索体33を配置した状態を示し、
図12(b)は、帯状シート30を折り畳んだ状態を示し、
図12(c)は、折り畳んだ帯状シート30を熱溶着した状態を示す。
【0182】
先導索体33が通された垂直スリーブ30bを作製する方法は、
図12(a)~
図12(c)に示すように、垂直ロードケーブル30aが通された複数の垂直スリーブ30bを作製する方法において、垂直ロードケーブル30aを先導索体33に置き換えたものである。この先導索体33は垂直ロードケーブル30aよりも耐熱性が高いものである。
【0183】
すなわち、
図12に示す方法では、垂直ロードケーブル30aの代わりに先導索体33を帯状シート30上に載せ(
図12(a))、先導索体33を帯状シート30で挟むように帯状シート30を折り目X1で折り畳み(
図12(b))、その後、折り畳んだ帯状シート30のうちの、先導索体33が配置されていない領域(斜線領域)R6を加熱して溶着することにより、先導索体33が通された複数の垂直スリーブ30bが作製される。
【0184】
また、先導索体33が通された垂直スリーブ30bを用いて気嚢110に垂直スリーブ30bおよび垂直ロードケーブル30aを取り付ける方法では、垂直ロードケーブル30aが通された垂直スリーブ30bを用いる場合と同様に、隣接するシート状気嚢片10の重ね合わせた円弧状の側縁部に垂直スリーブ30bを溶着した後に、先導索体33を用いて垂直ロードケーブル30aを垂直スリーブ30bに引き入れる工程がある。
【0185】
図13は、先導索体33が通された複数の垂直スリーブ30bを用いて垂直スリーブ30bおよび垂直ロードケーブル30aを気嚢110に取り付ける方法の一例を説明するための図であり、
図13(a)は、気嚢110に垂直スリーブ30bを取り付けた状態を示し、
図13(b)は、先導索体33の下端に垂直ロードケーブル30aの上端を接続した状態を示し、
図13(c)は、垂直スリーブ30bに垂直ロードケーブル30aを引き入れた状態を示す。
【0186】
すなわち、先導索体33が通された垂直スリーブ30bを用いて垂直スリーブ30bおよび垂直ロードケーブル30aを気嚢110に取り付ける場合、まず、隣接するシート状気嚢片11および12の円弧状の側縁部を溶着するのと同時にこれらの側縁部に、先導索体33が通された垂直スリーブ30bを溶着する(
図13(a))。
【0187】
このようにして気嚢110を作製した時点で、気嚢110の気嚢天頂部100aにはリング状固定具101を取り付ける。
【0188】
次に、垂直スリーブ30bに通された先導索体33の下端を垂直ロードケーブル30aの上端部31に接続し(
図13(b))、先導索体33を垂直スリーブ30bから引き抜くことにより、先導索体33に接続されている垂直ロードケーブル30aを垂直スリーブ30bに引き入れる(
図13(c))。
【0189】
その後は、垂直ロードケーブル30aの上端部31を、気嚢110の気嚢天頂部100に取り付けたリング状固定具101に接続し、垂直ロードケーブル30aの下端部32を水平ロードケーブル40aの露出部分および接続索体30cの上端部に接続し、さらに接続索体30cの下端部を負荷部120に接続する。これにより飛翔体100が完成する。
【0190】
〔垂直ロードケーブル30aおよび水平ロードケーブル40aの働き〕
次に、飛翔体100の飛行時における垂直スリーブ30bに通された垂直ロードケーブル30a、および水平スリーブ40bに通された水平ロードケーブル40aの働きを説明する。
【0191】
気嚢110に固定された垂直スリーブ30bの内側には、垂直ロードケーブル30aが移動可能に挿通されており、垂直ロードケーブル30aの上端は、気嚢110の天頂部100aに取り付けられたリング状固定具101に接続され、垂直ロードケーブル30aの下端は、接続索体30cの上端に接続されており、接続索体30cの下端は負荷部120に接続されている。
【0192】
このように、実施形態1の飛翔体100では、気嚢110に固着された垂直スリーブ30bに移動可能に挿入された垂直ロードケーブル30aにより、気嚢110に対する荷重となる負荷部120が支持されており、このため、複数の垂直ロードケーブル30aの間で長さにばらつきがあっても、負荷部120の姿勢の傾きがなくなるように、つまり、複数の垂直ロードケーブル30a間でのテンションのばらつきがなくなるように、垂直ロードケーブル30aと、垂直スリーブ30bが固定されている気嚢110との位置関係を相対的に変化させることができ、その結果、気嚢110にかかる負荷部120の荷重が均等に分散される状態を容易に実現することができる。
【0193】
また、本実施形態1の飛翔体100では、気嚢110に対して浮力あるいは上昇気流による外力が作用しても、気嚢110を構成するシート状部材が気嚢110の天頂部側にずり上がるのを抑制することができ、これにより、気嚢110の特定箇所、具体的には、垂直スリーブ30bのうちの垂直ロードケーブル30aの出口となる部分への応力集中を低減することができる。また、隣接する垂直スリーブ30b間での球皮のずり上がりにより、気嚢110の半径が小さくなって、飛翔体100が落下(下降)するときに気嚢110がパラシュートとして機能するパラシュート効果が損なわれてしまうのを抑制することができ、以下詳述する。
【0194】
図14は、水平ロードケーブル40aの作用を示す図であり、
図14(a)は、
図2(a)に示す気嚢110に浮力あるいは上昇気流などの外力(白抜き矢印)が作用する様子を示す図、
図14(b)は、水平ロードテープ40aにより、浮力あるいは上昇気流などによる気嚢110の球皮のずり上がりが抑制される様子を示す図(
図14(a)のE部分の拡大図)である。
【0195】
この飛翔体100では、気嚢110の全周に渡って複数の水平スリーブ40bを所定の間隔で気嚢110に取り付けてこれらの水平スリーブ40bに水平ロードケーブル40aを通し、この水平ロードケーブル40aを隣接する水平スリーブ40bの間で垂直ロードケーブル30aの下端に接合しており、垂直ロードケーブル30aの下端部32は接続ロープ30cにより負荷部120に接続されている。このため、飛行時に気嚢110に対してこれを構成するシート状部材がずり上がる方向に力が働いても、隣接する垂直ロードケーブル30a間での球皮のずり上がりを抑制できる。
【0196】
なぜなら、垂直ロードケーブル30aの下端が接続ロープ30cにより負荷部120に固定され、水平ロードケーブル40aが垂直ロードケーブル30aの下端に接合されているので、このような水平ロードケーブル40aが挿入されている水平スリーブ40bは、水平ロードケーブル40aにより上方側への移動が規制されることとなるからである。
【0197】
さらに、水平スリーブ40bは、気嚢110の下半部側に配置されているので、膨らんだとき略球体形状となる気嚢では、気嚢の下半部側に位置する水平スリーブ40bは、気嚢の直径より小さい直径の緯線上に位置しており、従って、水平スリーブ40bはその上方側へ移動し難い配置となっており、より一層球皮のずり上がりを抑制できる。
【0198】
また、負荷部120の荷重がかかる垂直ロードケーブル30aは、気嚢110に固定された垂直スリーブ30bの内部に移動可能に通されているので、気嚢110の全体に渡って設けられている複数の垂直ロードケーブル30aの長さにばらつきがあっても、複数の垂直ロードケーブル30aの間でのテンションにばらつきを抑制することができ、これにより垂直ロードケーブル30aによる荷重の分散での偏りを低減することができる。
【0199】
つまり、気嚢に固定された垂直スリーブ30b内に移動可能に垂直ロードケーブル30aを配置した場合、気嚢の個々の箇所に設けられている垂直ロードケーブル30aの長さが正しく調整されていなくても、飛行時には、複数の垂直ロードケーブル30aのテンションが均一になるように垂直ロードケーブル30aが垂直スリーブ30bに対して移動する。このため、気嚢110に吊下げられた負荷部120の傾きをなくすように、第2の索体の他端と負荷部とをつなぐ接続ロープ(接続索体)30cの長さを調整することにより、気嚢にかかる荷重が均等に分散される状態を容易に実現できる。
【0200】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0201】
本発明は、気嚢に対して上向きにかかる力などが作用しても、気嚢を構成するシート状部材(いわゆる球皮)が局所的に気嚢の天頂部側にずり上がるのを抑制することができ、これにより、気嚢の特定箇所での応力集中を低減することができる飛翔体およびこのような飛翔体の製造方法を得ることができるものとして有用である。
【0202】
また、本発明は、このような飛翔体で用いられる、気嚢を構成する球皮のずり上がりを抑制することができる飛翔体用部材およびその製造方法を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0203】
10、61、71 気嚢片
10a 下側気嚢片
10b 上側気嚢片
10c 水平接合部
10d 垂直接合部
30 帯状シート
30a 垂直ロードケーブル(第2の索体)
30b 垂直スリーブ(第2の筒状部材)
30b1 スリーブ固着片(垂直スリーブの固着片)
30b2 スリーブ筒体片(垂直スリーブの筒体片)
30c 接続ロープ(接続索体)
30c1 ロープ上端部
30d 連結器具
30d1 リング状連結具
30d2 ワイヤ留め具
31 ケーブル上端部
32 ケーブル下端部
32a 折り返し部分
32b 対向部分
32c ループ部分
32d 縫合糸
33 先導索体
40a 水平ロードケーブル(第1の索体)
40b、41b、42b 水平スリーブ(第1の筒状部材)
40b1 スリーブ固着部(水平スリーブの固着部)
40b2 スリーブ筒体部(水平スリーブの筒体部)
41b0 水平スリーブ両端部
41b1、42b1 スリーブ固着部
41b2、42b2 スリーブ筒体部
41b3 スリーブ開孔部
50 シート状素材
60a 気嚢片材料
61a 気嚢片下部
61b 気嚢片上部
61c 折畳部
61c0 折畳対象部61c0
61c1 折畳部の下側部分
61c2 折畳部の上側部分
70a 気嚢片材料
71a 気嚢片下部
71b 気嚢片上部
71c 第1の折畳部
71c0 折畳対象部
71c1 折畳部の下側部分
71c2 折畳部の上側部分
71d 第2の折畳部
100 飛翔体
100a 気嚢天頂部
101 リング状固定具
101a 外側リング片
101b 内側リング片
102 固定バックル
103a 固定ボルト
103b 固定ナット
110 気嚢(袋状シート体)
120 負荷部
130 接続部材
140 補強部材
L 緯線
M 経線
R1~R6 領域
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力を発生する気嚢と、
前記気嚢の緯線に沿って前記気嚢の外側に取り付けられた第1の筒状部材と、
前記第1の筒状部材の内側に通された第1の索体と
を備えた、飛翔体。
【請求項2】
前記第1の筒状部材は、前記気嚢の下半部側に配置されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項3】
前記第1の筒状部材には、両端部に有する開孔とは別に前記第1の筒状部材の内部から前記第1の索体を取り出すための開孔部が形成されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項4】
前記第1の筒状部材は、その両端部の厚さが、その両端部以外の部分の厚さよりも厚くなっている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項5】
前記第1の筒状部材は、前記気嚢に熱溶着されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項6】
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通す筒体部と、前記気嚢に固着された固着部とを含み、前記筒体部と前記固着部との境界部分が前記固着部のうちの前記境界部分とは反対側の端部よりも下側に位置するように構成されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項7】
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通す筒体部と、前記気嚢に固着された固着部とを含み、前記筒体部と前記固着部との境界部分が前記固着部のうちの前記境界部分とは反対側の端部よりも上側に位置するように構成されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項8】
前記気嚢に対する荷重となる負荷部を備え、
前記気嚢の頂部から経線に沿って前記気嚢の外側に取り付けられた第2の筒状部材と、
前記第2の筒状部材の内側に通された第2の索体と
をさらに備えた、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項9】
前記第1の筒状部材は、前記緯線に沿って所定の間隔を空けて複数配置されており、
前記第2の索体は、前記緯線に沿って配置されている隣接する前記第1の筒状部材の間で前記第1の索体と交差している、請求項8に記載の飛翔体。
【請求項10】
前記第1の索体と前記第2の索体との交差部では、前記第1の索体と前記第2の索体とが接合されている、請求項9に記載の飛翔体。
【請求項11】
前記第2の筒状部材は、前記気嚢に熱溶着されている、請求項8に記載の飛翔体。
【請求項12】
前記飛翔体は、
前記気嚢の頂部から経線に沿って前記気嚢の内側に取り付けられた、前記気嚢の内側に気体を導入するためのダクト部材をさらに備えた、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項13】
前記飛翔体は、前記気嚢に静的浮力を有するガスが充填されることにより浮力が発生するガス気球、あるいは前記気嚢に熱した空気が充填されることにより浮力が発生する熱気球である、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項14】
請求項1の飛翔体を製造する方法であって、
前記気嚢の構成部材である複数の気嚢片として、前記第1の筒状部材を固着した複数の
シート状気嚢片を形成する工程と、
前記複数のシート状気嚢片を順次つなぎ合わせて前記気嚢を形成する工程と
を含む、飛翔体の製造方法。
【請求項15】
前記気嚢片の形成工程では、
気嚢片下部と気嚢片上部とを前記第1の筒状部材とともに接合することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項16】
前記気嚢片の形成工程では、
1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成し、前記折畳部に前記第1の筒状部材を接合することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項17】
前記気嚢片の形成工程では、
1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部の少なくとも一部を折り畳んでさらに第2の折畳部を形成し、その後、筒状部が形成されるように前記第2の折畳部の少なくとも一部を溶着することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項18】
前記気嚢を形成した後、前記気嚢を構成する複数の気嚢片に固着されている複数の第1の筒状部材に前記第1の索体を通す工程をさらに含む、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項19】
前記気嚢の形成工程では、
前記複数のシート状気嚢片のうちの2つのシート状気嚢片を重ねてそれらの一方の側縁部を熱溶着することで、前記複数のシート状気嚢片のうちの重ねた2つのシート状気嚢片を接合する、請求項18に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項20】
前記気嚢の形成工程では、
前記気嚢の頂部から所定の経線に沿って延びる第2の筒状部材を、前記重ねた2つのシート状気嚢片の一方側側縁部に重ねて熱溶着して前記気嚢を形成し、
その後、前記気嚢に取り付けられた前記複数の第2の筒状部材の内側に、飛翔時に荷重がかかる第2の索体を通す、請求項19に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項21】
前記第1の索体を前記第1の筒状部材に通し、かつ前記第2の索体を前記第2の筒状部材に通した後、前記第1の索体と前記第2の索体とを両索体の交差部で接合する接合工程をさらに含み、
前記接合工程では、前記第2の索体の端部をこれが前記第1の索体を囲むようにループ状に折り返して、折り返した部分と、前記第2の索体のうちの折り返した部分に重なる部分とを縫合により接合する、請求項20に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項22】
請求項1に記載の飛翔体で用いられる部材であって、
前記気嚢を構成する複数の気嚢片と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられた前記第1の筒状部材と
を含み、
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通すことが可能に構成されている、飛翔体用部材。
【請求項23】
請求項8に記載の飛翔体で用いられる部材であって、
前記気嚢を構成する複数の気嚢片と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられた前記第1の筒状部材と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられる前記第2の筒状部材と、
前記第2の筒状部材の内側に通された索体と
を含み、
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通すことが可能に構成されており、
前記第1の筒状部材および前記第2の筒状部材は、熱溶着可能な素材を含み、
前記索体は、前記第2の筒状部材よりも耐熱性が高い、飛翔体用部材。
【請求項24】
請求項22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、下側気嚢片および上側気嚢片の側縁部と前記第1の筒状部材の端部とを固着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項25】
請求項22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成するとともに、前記折畳部に前記第1の筒状部材の端部を固着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項26】
請求項22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片として、前記第1の筒状部材が取り付けられた気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部の少なくとも一部を折り畳んで第2の折畳部を形成するとともに、前記第2の折畳部に筒隊部が形成されるように前記第2の折畳部の少なくとも一部を溶着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項27】
請求項23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、下側気嚢片および上側気嚢片の側縁部と前記第1の筒状部材の端部とを固着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項28】
請求項23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成するとともに、前記折畳部に前記第1の筒状部材の端部を固着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項29】
請求項23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片として、前記第1の筒状部材が取り付けられた複数の気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部を折り畳んでさらに第2の折畳部を形成するとともに、前記第2の折畳部に筒体部が形成されるように前記第2の折畳部を溶着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力を発生する気嚢と、
前記気嚢の緯線に沿って前記気嚢の外側に取り付けられた第1の筒状部材と、
前記第1の筒状部材の内側に通された第1の索体と
を備えた、飛翔体。
【請求項2】
前記第1の筒状部材は、前記気嚢の下半部側に配置されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項3】
前記第1の筒状部材には、両端部に有する開孔とは別に前記第1の筒状部材の内部から前記第1の索体を取り出すための開孔部が形成されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項4】
前記第1の筒状部材は、その両端部の厚さが、その両端部以外の部分の厚さよりも厚くなっている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項5】
前記第1の筒状部材は、前記気嚢に熱溶着されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項6】
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通す筒体部と、前記気嚢に固着された固着部とを含み、前記筒体部と前記固着部との境界部分が前記固着部のうちの前記境界部分とは反対側の端部よりも下側に位置するように構成されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項7】
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通す筒体部と、前記気嚢に固着された固着部とを含み、前記筒体部と前記固着部との境界部分が前記固着部のうちの前記境界部分とは反対側の端部よりも上側に位置するように構成されている、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項8】
前記気嚢に対する荷重となる負荷部を備え、
前記気嚢の頂部から経線に沿って前記気嚢の外側に取り付けられた第2の筒状部材と、
前記第2の筒状部材の内側に通された第2の索体と
をさらに備えた、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項9】
前記第1の筒状部材は、前記緯線に沿って所定の間隔を空けて複数配置されており、
前記第2の索体は、前記緯線に沿って配置されている隣接する前記第1の筒状部材の間で前記第1の索体と交差している、請求項8に記載の飛翔体。
【請求項10】
前記第1の索体と前記第2の索体との交差部では、前記第1の索体と前記第2の索体とが接合されている、請求項9に記載の飛翔体。
【請求項11】
前記第2の筒状部材は、前記気嚢に熱溶着されている、請求項8に記載の飛翔体。
【請求項12】
前記飛翔体は、
前記気嚢の頂部から経線に沿って前記気嚢の内側に取り付けられた、前記気嚢の内側に気体を導入するためのダクト部材をさらに備えた、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項13】
前記飛翔体は、前記気嚢に静的浮力を有するガスが充填されることにより浮力が発生するガス気球、あるいは前記気嚢に熱した空気が充填されることにより浮力が発生する熱気球である、請求項1に記載の飛翔体。
【請求項14】
請求項1の飛翔体を製造する方法であって、
前記気嚢の構成部材である複数の気嚢片として、前記第1の筒状部材を固着した複数の
シート状気嚢片を形成する工程と、
前記複数のシート状気嚢片を順次つなぎ合わせて前記気嚢を形成する工程と
を含む、飛翔体の製造方法。
【請求項15】
前記気嚢片の形成工程では、
気嚢片下部と気嚢片上部とを前記第1の筒状部材とともに接合することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項16】
前記気嚢片の形成工程では、
1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成し、前記折畳部に前記第1の筒状部材を接合することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項17】
前記気嚢片の形成工程では、
1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部の少なくとも一部を折り畳んでさらに第2の折畳部を形成し、その後、筒状部が形成されるように前記第2の折畳部の少なくとも一部を溶着することにより、前記第1の筒状部材を固着したシート状気嚢片を形成する、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項18】
前記気嚢を形成した後、前記気嚢を構成する複数の気嚢片に固着されている複数の第1の筒状部材に前記第1の索体を通す工程をさらに含む、請求項14に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項19】
前記気嚢の形成工程では、
前記複数のシート状気嚢片のうちの2つのシート状気嚢片を重ねてそれらの一方の側縁部を熱溶着することで、前記複数のシート状気嚢片のうちの重ねた2つのシート状気嚢片を接合する、請求項18に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項20】
前記気嚢の形成工程では、
前記気嚢の頂部から所定の経線に沿って延びる第2の筒状部材を、前記重ねた2つのシート状気嚢片の一方側側縁部に重ねて熱溶着して前記気嚢を形成し、
その後、前記気嚢に取り付けられた複数の前記第2の筒状部材の内側に、飛翔時に荷重がかかる第2の索体を通す、請求項19に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項21】
前記第1の索体を前記第1の筒状部材に通し、かつ前記第2の索体を前記第2の筒状部材に通した後、前記第1の索体と前記第2の索体とを両索体の交差部で接合する接合工程をさらに含み、
前記接合工程では、前記第2の索体の端部をこれが前記第1の索体を囲むようにループ状に折り返して、折り返した部分と、前記第2の索体のうちの折り返した部分に重なる部分とを縫合により接合する、請求項20に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項22】
請求項1に記載の飛翔体で用いられる部材であって、
前記気嚢を構成する複数の気嚢片と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられた前記第1の筒状部材と
を含み、
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通すことが可能に構成されている、飛翔体用部材。
【請求項23】
請求項8に記載の飛翔体で用いられる部材であって、
前記気嚢を構成する複数の気嚢片と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられた前記第1の筒状部材と、
前記複数の気嚢片の各々に取り付けられる前記第2の筒状部材と、
前記第2の筒状部材の内側に通された索体と
を含み、
前記第1の筒状部材は、前記第1の索体を通すことが可能に構成されており、
前記第1の筒状部材および前記第2の筒状部材は、熱溶着可能な素材を含み、
前記索体は、前記第2の筒状部材よりも耐熱性が高い、飛翔体用部材。
【請求項24】
請求項22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、下側気嚢片および上側気嚢片の側縁部と前記第1の筒状部材の端部とを固着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項25】
請求項22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成するとともに、前記折畳部に前記第1の筒状部材の端部を固着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項26】
請求項22に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片として、前記第1の筒状部材が取り付けられた気嚢片を形成する気嚢片形成工程を含み、
前記気嚢片形成工程では、
前記複数の気嚢片の各々は、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部の少なくとも一部を折り畳んで第2の折畳部を形成するとともに、前記第2の折畳部に筒隊部が形成されるように前記第2の折畳部の少なくとも一部を溶着することにより形成される、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項27】
請求項23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、下側気嚢片および上側気嚢片の側縁部と前記第1の筒状部材の端部とを固着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項28】
請求項23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで折畳部を形成するとともに、前記折畳部に前記第1の筒状部材の端部を固着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。
【請求項29】
請求項23に記載の飛翔体用部材を製造する方法であって、
前記気嚢を構成するための複数のシート状気嚢片として、前記第1の筒状部材が取り付けられた複数の気嚢片を形成する気嚢片形成工程と、
前記索体が通された前記第2の筒状部材を形成する部材形成工程と
を含み、
前記気嚢片形成工程は、
前記複数の気嚢片の各々を、1つの気嚢片材料の少なくとも一部を折り畳んで第1の折畳部を形成し、前記第1の折畳部を折り畳んでさらに第2の折畳部を形成するとともに、前記第2の折畳部に筒体部が形成されるように前記第2の折畳部を溶着することにより形成する工程を含み、
前記部材形成工程は、
帯状部材に接するように前記索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材のうちの前記折り目から所定距離を超えない第1領域内に前記索体が配置された状態で、前記帯状部材のうちの前記第1領域以外の第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を含む、飛翔体用部材の製造方法。