IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KISCO株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図1
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図2
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図3
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図4
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図5
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図6
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図7
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図8
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図9
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図10
  • 特開-インモールドラベル付き容器 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066823
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】インモールドラベル付き容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20240509BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20240509BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B65D1/00 111
B65D1/26 110
B65D25/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176557
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000157887
【氏名又は名称】KISCO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(74)【代理人】
【識別番号】100095463
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 潤三
(72)【発明者】
【氏名】冨上 資治
【テーマコード(参考)】
3E033
3E062
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033BA21
3E033BA22
3E033BB01
3E033BB08
3E033CA02
3E033DA08
3E033DB03
3E033FA02
3E033GA02
3E062AA10
3E062AC02
3E062DA02
3E062DA07
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB04
3E062JC07
3E062JD08
(57)【要約】
【課題】 落下による衝撃等の外力が加わってもラベル隙間部の割れ発生が抑制されるインモールドラベル付き容器を提供することを課題とする。
【解決手段】 インモールドラベル付き容器1を、有底の胴部12と、該胴部12の開口部に位置するフランジ部14とを有する容器本体11と、該容器本体11の胴部12の周面にインモールド成形され一体化されたインモールドラベル21とを備え、前記インモールドラベル21の対向する側端縁の間に胴部12の一部が露出するラベル隙間部16を有し、インモールドラベル21は、前記側端縁から所定の幅で、胴部12との接着力が弱い弱接着部位26、26a、26bを有するものとする。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底の胴部と、該胴部の開口部に位置するフランジ部とを有する容器本体と、該容器本体の前記胴部の周面にインモールド成形され一体化されたインモールドラベルとを備え、
前記インモールドラベルの対向する側端縁の間に前記胴部の一部が露出するラベル隙間部を有し、
前記インモールドラベルは、前記側端縁から所定の幅で、前記胴部との接着力が弱い弱接着部位を有することを特徴とするインモールドラベル付き容器。
【請求項2】
前記インモールドラベルの前記弱接着部位と前記胴部との接着力は、前記インモールドラベルの前記弱接着部位を除く部位と胴部との接着力の50%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のインモールドラベル付き容器。
【請求項3】
前記弱接着部位は、前記ラベル隙間部を介して対向する前記側端縁の全域に存在する、請求項1又は2に記載のインモールドラベル付き容器。
【請求項4】
前記弱接着部位は、前記ラベル隙間部を介して対向する前記側端縁のそれぞれの側端縁に沿って1箇所以上存在する、請求項1又は2に記載のインモールドラベル付き容器。
【請求項5】
一方の前記側端縁に沿って位置する前記弱接着部位と、他方の前記側端縁に沿って位置する前記弱接着部位は、前記ラベル隙間部を介して少なくとも一部が対向する、請求項4に記載のインモールドラベル付き容器。
【請求項6】
前記弱接着部位は、前記インモールドラベルの前記側端縁からの幅Wが0.5mm~20mmの範囲である、請求項1又は2に記載のインモールドラベル付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドラベル付き容器に係り、特に、外力による割れ発生が抑制されるインモールドラベル付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、樹脂材料を用いて真空成形した樹脂容器は、真空成形時の引き伸ばしにより容器形状の歪を生じることがあった。また、このような真空成形容器は、多色で高精細な印刷が困難であった。一方、予め印刷を行った板状の樹脂材料を用いて真空成形することは可能であるが、真空成形時の引き伸ばしにより絵柄等に歪みが生じるという問題があった。
【0003】
これに対して、射出成形金型内に所定の形状のラベルを配し、熱可塑性樹脂を射出して樹脂部材を成形することにより胴部にラベルを一体化したインモールドラベル付き容器は、上記のような問題を生じることがなく、種々の分野で採用されている。
【0004】
このようなインモールドラベル付き容器には、インモールドラベルの合わせ目に胴部の一部が露出するラベル隙間部が存在し、このラベル隙間部は他の部位に比べて強度が低く、落下による衝撃等の外力が胴部に加わると、ラベル隙間部に変形が生じて容器に割れが発生し易いという問題がある。
【0005】
このため、ラベル隙間部を曲線形、波形等の非直線形状としたり(特許文献1)、胴部の内周面に多数の突条リブを設けて補強することにより(特許文献2)、ラベル隙間部に外力が集中することを防止したインモールドラベル付き容器が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-76315号公報
【特許文献2】特許第5458432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ラベル隙間部を非直線形状としたインモールドラベル付き容器では、インモールドラベルの合わせ目にズレが生じると容器外観が大きく損なわれるので、ラベルを射出成形金型内に配置する際の精度が要求され、作業が煩雑になるという問題があった。また、胴部の内周面に多数の突条リブを設けたインモールドラベル付き容器では、射出に要する熱可塑性樹脂量が多くなり、また、内容物が粘性を有する場合、突条リブに内容物が絡んで容器から取り出しにくくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上述のような実状に鑑みてなされたものであり、落下による衝撃等の外力が加わっても、ラベル隙間部の割れ発生が抑制されるインモールドラベル付き容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明は、有底の胴部と、該胴部の開口部に位置するフランジ部と、を有し合成樹脂が射出成形された容器本体と、該容器本体の前記胴部の周面にインモールド成形され一体化されたインモールドラベルと、を備え、前記インモールドラベルの対向する側端縁の間に前記胴部の一部が露出するラベル隙間部を有し、前記インモールドラベルは、前記側端縁から所定の幅で、前記胴部との接着力が弱い弱接着部位を有する構成とした。
【0010】
本発明の他の態様として、前記インモールドラベルの前記弱接着部位と前記胴部との接着力は、前記インモールドラベルの前記弱接着部位を除く部位と胴部との接着力の50%以下であるような構成とした。
【0011】
本発明の他の態様として、前記弱接着部位は、前記ラベル隙間部を介して対向する前記側端縁の全域に存在するような構成とした。
【0012】
本発明の他の態様として、前記弱接着部位は、前記ラベル隙間部を介して対向する前記側端縁のそれぞれの側端縁に沿って1箇所以上存在するような構成とした。また、一方の前記側端縁に沿って位置する前記弱接着部位と、他方の前記側端縁に沿って位置する前記弱接着部位は、前記ラベル隙間部を介して少なくとも一部が対向するような構成とした。
【0013】
本発明の他の態様として、前記弱接着部位は、前記インモールドラベルの前記側端縁からの幅Wが0.5mm~20mmの範囲であるような構成とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明のインモールドラベル付き容器は、インモールドラベルの側端縁から所定の幅で、胴部との接着力が弱い弱接着部位を有する構成であるため、落下による衝撃等の外力が加わってもラベル隙間部の割れ発生が抑制されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のインモールドラベル付き容器の一例を示す斜視図である。
図2図1に示されるインモールドラベル付き容器の側面図である。
図3図2のA-A線におけるインモールドラベル付き容器の縦断面の部分拡大断面図である。
図4図2のB-B線におけるインモールドラベル付き容器の縦断面の部分拡大断面図である。
図5図2のC-C線におけるインモールドラベル付き容器の横断面の部分拡大断面図である。
図6】本発明のインモールドラベル付き容器を構成するラベルの平面視形状を示す図である。
図7】本発明のインモールドラベル付き容器を構成するラベルの層構成の一例を示す断面図である。
図8】従来のインモールドラベル付き容器に落下による衝撃等の外力が加わった際のラベル隙間部の状態を説明するための図5相当の図である。
図9】本発明のインモールドラベル付き容器に落下による衝撃等の外力が加わった際のラベル隙間部の状態を説明するための図5相当の図である。
図10】本発明のインモールドラベル付き容器の他の例を示す側面図である。
図11図10のD-D線におけるインモールドラベル付き容器の横断面の部分拡大断面図であり、落下による衝撃等の外力が加わった際のラベル隙間部の状態を説明するための図5相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1図5において、インモールドラベル付き容器1は、底部13を有する胴部12と、この胴部12の開口部15に位置するフランジ部14とを有し、合成樹脂が射出成形されて成る容器本体11と、この容器本体11の胴部12の周面にインモールド成形されて一体化されたインモールドラベル21と、を備えている。また、インモールドラベル21の対向する側端縁24a,24bの間には、胴部12の一部が露出するラベル隙間部16を有している。そして、インモールドラベル21は、ラベル隙間部16を介して対向する側端縁24a,24bから所定の幅で、胴部12との接着力が弱い弱接着部位26a,26bを有している(図2,3参照)。なお、図2では、インモールドラベル21における弱接着部位26a,26bとインモールドラベル21の他の部位との境界が一点鎖線で示されている。
【0017】
容器本体11を構成する胴部12は、横断面形状が円形環状であり、底部13における円形環状よりも、開口部15における円形環状が大きいテーパー形状の筒体である。
【0018】
容器本体11を構成する底部13は、平面視が円形状であり、この底部13の周縁13aから下方には脚部17が突設されている。
【0019】
容器本体11を構成するフランジ部14は、胴部12の上端縁12bから胴部12の軸方向(図2に矢印⇒で示される方向)に対して直角方向に突設された環状構造であり、平坦な上面14aを備えている。
【0020】
このように胴部12、底部13、フランジ部14を有する容器本体11は、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ乳酸樹脂等の樹脂単独で射出成形されたものであってよく、また、混合樹脂、共重合樹脂で射出成形されたものであってもよい。
【0021】
インモールドラベル付き容器1を構成するラベル21は、図6に示されるような平面視形状であり、上端縁22、下端縁23、側端縁24a,24bを有している。そして、ラベル21の胴部12に溶着する面には、側端縁24a,24bから所定の幅Wで弱接着部位26a,26b(図6では、梨地模様を付して示している)が設けられている。
【0022】
インモールドラベル付き容器1を構成するラベル21における弱接着部位26a,26bの幅Wは、0.5mm~20mm、好ましくは2mm~5mmの範囲とすることができる。弱接着部位26a,26bの幅Wが0.5mm未満であると、インモールドラベル付き容器1に落下による衝撃等の外力が加わった際に、ラベル隙間部16の割れ発生の防止効果が奏されないことがあるので、好ましくない。また、幅Wが20mmを超えると、インモールドラベル付き容器1の通常の取り扱いにおいて、弱接着部位26a,26bからのインモールドラベル21の剥離が生じる場合があるので、好ましくない。
【0023】
インモールドラベル付き容器1では、ラベル21の側端縁24aと側端縁24bが対向するように、ラベル21が容器本体11の胴部12の周面にインモールド成形され一体化されている。また、図3図4に示されるように、ラベル21の上端縁22側がフランジ部14の裏面14bに沿って折れ曲がり、上端縁22はフランジ部14の裏面14bに当接し、ラベル21の下端縁23は脚部17に位置している。
【0024】
そして、インモールドラベル付き容器1では、図2図3に示されるように、胴部12の一部が露出するラベル隙間部16を介して対向する側端縁24a,24bのそれぞれの側端縁の全域に、弱接着部位26a,26bが存在している。したがって、図6で示される弱接着部位26a,26bの長さLは、ラベル21の上端縁22側のフランジ部14の裏面14bへの折れ曲がり幅と、ラベル21の下端縁23側が脚部17に位置している長さを考慮したうえで、図3に示されるように、胴部12の底部13側の部位12aから、胴部12のフランジ部14側の部位12bに至る長さに設定することができる。なお、図3図5では、インモールドラベル21の弱接着部位26a,26bと胴部12との接着界面を鎖線で示し、インモールドラベル21の弱接着部位26を除く部位と胴部12との接着界面を実線で示している。
【0025】
ここで、弱接着部位26a,26bと胴部12との接着力について説明する。本発明では、インモールドラベル21の弱接着部位26a,26bと胴部12との接着力が、インモールドラベル21の弱接着部位26a,26bを除く部位と胴部12との接着力の50%以下、好ましくは30%以下とすることができる。胴部12に対する弱接着部位26a,26bの接着力が、胴部12に対する弱接着部位26a,26bを除く部位の接着力の50%を超えると、後述するように、製品出荷されたインモールドラベル付き容器1に対して、落下による衝撃等の外力が加わった際に、ラベル隙間部16の割れ発生の防止効果が奏されないことがあるので、好ましくない。
【0026】
上記の胴部12に対する弱接着部位26a,26bの接着力と、胴部12に対する弱接着部位26a,26bを除く部位の接着力は、例えば、以下のように測定することができる。先ず、インモールドラベル21用のシートを用いて、胴部12に溶着する面側に弱接着部位26を設けて試料面とした幅15mmの帯状試料と、弱接着部位26を設けずに試料面とした幅15mmの帯状試料と、を作製し、定盤上に載置した帯状試料の試料面に、容器本体11を射出成形するための樹脂材料を溶融して接触させ、固化後、帯状試料を所定の速度で樹脂から180°剥離して測定することができる。
【0027】
ラベル21は、容器表面となる面が、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着せず、胴部12に溶着する面が、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着するように構成されている。ラベル21の胴部12に溶着する面には、上記のように側端縁24a,24bから所定の幅で弱接着部位26a,26bが設けられており、この弱接着部位26a,26bは、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と弱く溶着する部位である。また、ラベル21の容器表面となる面には、通常、所望の印刷が施される。
【0028】
図7は、本発明のインモールドラベル付き容器を構成するラベルの層構成の一例を示す断面図である。図7に示されるラベル21は、容器表面となる面側から、表面層21a、中間層21b、溶着層21cの3層構造となっており、溶着層21cには、側端縁24a(24b)から所定の幅Wで弱接着部位26a(26b)が設けられている。
【0029】
表面層21a、中間層21bは、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着しない層であり、溶着層21cは、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着する層である。このような表面層21a、中間層21b、溶着層21cは、容器本体11を射出成形するための樹脂材料に応じて適宜選択することができる。例えば、容器本体11を射出成形するための樹脂材料がポリプロピレン(PP)樹脂である場合、表面層21aは二軸延伸ポリプロピレン(OPP)から成る層、中間層21bはポリエチレンテレフタレート(PET)から成る層、溶着層21cはマットOPP、ヒートシールOPPから成る層とすることができる。
【0030】
また、弱接着部位26a,26bは、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と弱く溶着する部位であり、このような弱接着部位26は、例えば、溶着層21cに対してフレーム処理装置で表面の改質処理を行うこと、あるいは溶着層21cに対して抗ヒートシール剤等を塗布することにより設けることができる。
【0031】
本発明のインモールドラベル付き容器を構成するラベル21は、図7に示される層構成を有するものに限定されるものではない。例えば、ラベル21を、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着しない樹脂材料からなる単層構造とし、容器本体11の胴部12に溶着する面に対して、弱接着部位26a,26bでは、例えばドット状に面積比率50%の割合でヒートシール剤を塗布することにより、容器本体11の胴部12に対する弱い溶着性を付与し、弱接着部位26a,26bを除いた部位では、ヒートシール剤を面積比率100%の割合で塗布することにより、容器本体11の胴部12に対する強い溶着性を付与してもよい。また、ラベル21を、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着する樹脂材料から成る単層構造とし、容器本体11の胴部12に溶着する面の弱接着部位26a,26bに対して、抗ヒートシール剤を塗布することにより、容器本体11の胴部12に対する弱い溶着性を付与し、容器表面となる面に対して、オーバーコートニス等を塗布することにより、容器本体11を射出成形するための樹脂材料に溶着しない面としてもよい。さらに、ラベル21を2層構成、4層以上の多層構成としてもよく、この場合も、ラベル21の容器表面となる面が、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着せず、胴部12に溶着する面が、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着するとともに、弱接着部位26a,26bを有するように構成する。
【0032】
インモールドラベル21の弱接着部位26a,26bと胴部12との接着力は、上記のように、インモールドラベル21の弱接着部位26a,26bを除く部位と胴部12との接着力の50%以下、したがって、弱接着部位26a,26bが胴部12に溶着していない状態を含めて設定することが可能である。しかし、弱接着部位26a,26bと胴部12との接着力が低くなるほど、インモールド成形後に射出成形金型からインモールドラベル付き容器1を取り出す際に、樹脂材料の収縮率とラベル21の収縮率の差に起因した皺が弱接着部位26a,26bに生じ易くなるので、使用する樹脂材料とラベル21の収縮率の差を考慮して、弱接着部位26a,26bと胴部12との接着力を設定することが好ましい。
【0033】
このようなインモールドラベル付き容器1は、一般に、容器本体11に所望の内容物を所定量充填した後、フランジ部14の上面14aに所望のフィルムを接着あるいは溶着して容器本体11を密封し、さらに、必要に応じてフランジ部14に係合するような蓋材を装着して製品出荷される。
【0034】
このようにして製品出荷されたインモールドラベル付き容器1に対して、落下による衝撃等の外力が加わった場合について、図面を参照して説明する。図8は、従来のインモールドラベル付き容器に落下による衝撃等の外力が加わった際のラベル隙間部の状態を説明するための、図5相当の図である。また、図9は、本発明のインモールドラベル付き容器に落下による衝撃等の外力が加わった際のラベル隙間部の状態を説明するための、図5相当の図である。
【0035】
図8に示すように、従来のインモールドラベル付き容器1′では、インモールドラベル21′が胴部12′に溶着されて一体化されており、ラベル隙間部16′を介して対向する側端縁24′a,24′bは、胴部12′に溶着されていない状態となっている。したがって、従来のインモールドラベル付き容器1′では、ラベル隙間部16′を介して対向する側端縁24′a,24′bに沿って、2本の切り込み(ノッチ)が胴部12′の周面に存在するような状態となっている。このため、製品出荷されたインモールドラベル付き容器1′が落下し、その衝撃により、例えば、液状の内容物を介して胴部12′に衝撃力P1が作用すると、ラベル21′の側端縁24′a,24′bにおけるノッチ効果により、側端縁24′a,24′bが存在するラベル隙間部16′の両側部に作用力P2が作用する。この作用力P2は、衝撃力P1が大きい箇所ほど大きくなり、ラベル隙間部16′において割れが生じる。
【0036】
一方、本発明のインモールドラベル付き容器1では、図5に示されるように、胴部12に溶着され一体化しているインモールドラベル21は、ラベル隙間部16を介して対向する側端縁24a,24bから所定の幅で、胴部12との接着力が弱い弱接着部位26a,26bを有している。これにより、製品出荷されたインモールドラベル付き容器1が落下し、その衝撃により、例えば、液状の内容物を介して胴部12に衝撃力P1が作用すると、図9に示すように、弱接着部位26a,26bにおいて、胴部12からのインモールドラベル21の剥離が生じる。この弱接着部位26a,26bにおけるインモールドラベル21の胴部12からの剥離の程度は、衝撃力P1が大きい箇所ほど大きくなる。これにより、従来のインモールドラベル付き容器1′における側端縁24′a,24′bに沿った2本の切り込み(ノッチ)は消滅し、ラベル21の側端縁24a,24bにおけるノッチ効果は発現せず、ラベル隙間部16における割れ発生が防止される。なお、図8図9においても、インモールドラベル21の弱接着部位26a,26bと胴部12との接着界面を鎖線で示し、インモールドラベル21の弱接着部位26a,26bを除く部位と胴部12との接着界面を実線で示している。
【0037】
本発明のインモールドラベル付き容器1において、弱接着部位26a,26bの位置、形状、数、寸法は、図2図6に示される例に限定されるものではない。例えば、ラベル隙間部16を介して対向する側端縁24a,24bのそれぞれの側端縁に沿って、弱接着部位26a,26bが1箇所以上存在するものであってもよい。図10に示されるインモールドラベル付き容器1の例では、ラベル隙間部16を介して対向する側端縁24a,24bのそれぞれの側端縁に沿って3箇所に弱接着部位26a,26bが存在する。この場合、一方の側端縁24aに沿って位置する3個の弱接着部位26aと、他方の側端縁24bに沿って位置する3個の弱接着部位26bは、ラベル隙間部16を介して交互に位置している。そして、3個の弱接着部位26aは、それぞれ一部が3個の弱接着部位26bに対向している。これにより、ラベル隙間部16は、側端縁24aと側端縁24bの少なくとも一方に、必ず弱接着部位26が存在することとなる。なお、図10では、インモールドラベル21における弱接着部位26a,26bとインモールドラベル21の他の部位との境界を、一点鎖線で示している。
【0038】
図10に示されるようなインモールドラベル付き容器1に対して、落下による衝撃等の外力が加わった場合につき、図11を参照して説明する。図11は、図10のD-D線におけるインモールドラベル付き容器の横断面の部分拡大断面図である。図11に示されるように、製品出荷されたインモールドラベル付き容器1が落下し、その衝撃により、例えば、液状の内容物を介して胴部12に衝撃力P1が作用すると、弱接着部位26において、胴部12からのインモールドラベル21の剥離が生じる。
【0039】
この場合、図10にて弱接着部位26aと弱接着部位26bとが対向している箇所では、上述の図9に示したように、ラベル21の側端縁24a,24bにおけるノッチ効果は発現せず、ラベル隙間部16における割れ発生が防止される。一方、図11に示されるように、ラベル21の側端縁24aには弱接着部位26aが位置するが、側端縁24bには弱接着部位26bが位置しない箇所では、衝撃力P1により弱接着部位26aの剥離が生じて、ラベル21の側端縁24aにおけるノッチ効果は発現せず、ラベル21の側端縁24bのみにおいてノッチ効果による作用力P2が作用する。
【0040】
しかし、このようなラベル21の側端縁24bにおけるノッチ効果による作用力P2の作用は、ラベル21の側端縁24bに弱接着部位26bが位置するラベル隙間部16では発現しない。即ち、ラベル隙間部16の全域に亘って、ラベル隙間部16の両側部作用力P2が作用することはなく、したがって、図8に示されるような従来のインモールドラベル付き容器1′に比べて、ラベル隙間部16における割れ発生が大幅に抑制される。なお、図11においても、インモールドラベル21の弱接着部位26aと胴部12との接着界面を鎖線で示し、インモールドラベル21の弱接着部位26aを除く部位と胴部12との接着界面を実線で示している。
【0041】
図10に示されるインモールドラベル付き容器1は一例であり、一方の側端縁24aに沿った弱接着部位26aの位置と数、他方の側端縁24bに沿った弱接着部位26bの位置と数は、ラベル隙間部16を介して弱接着部位26aの一部が弱接着部位26bに対向するように適宜設定することができる。
【0042】
本発明のインモールドラベル付き容器1は、例えば、射出成形金型の雌型の胴部にラベル21を配置し、雄型を挿入して、溶融した樹脂材料を射出成形金型内に射出して、容器本体11を成形すると共に、胴部12にラベル21を一体化することにより製造することができる。
【0043】
上述のインモールドラベル付き容器の実施形態は例示であり、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。
【0044】
例えば、インモールドラベル付き容器1の胴部12の横断面形状、底部13の平面視形状、開口部15の平面視形状は、図示例のような円形状に限定されず、長方形状の四隅を丸めたような長円形状、正方形状の四隅を丸めたような円形状、楕円形状、長軸方向の中央に括れを有するような楕円形状等、任意に設定することができる。
【実施例0045】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例]
(ラベルの作製)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム(東レフィルム加工(株)製 VM-PET1510)、厚み30μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂フィルム(東洋紡(株)製 P2161)、および、厚み20μmのマットOPP樹脂フィルム(東洋紡(株)製 P4166)を準備した。
【0046】
上記のPET樹脂フィルムに一方の面にOPP樹脂フィルムをラミネートし、他方の面にマットOPP樹脂フィルムをラミネートして、厚みが62μmの3層構造のシートを作製した。このシートでは、マットOPP樹脂フィルム面が胴部に溶着する面となる。
【0047】
次に、この3層構造のシートを打ち抜いて、図6に示されるような平面視形状を有するラベル21を作製した。次いで、ラベル21の側端縁24a、側端縁24bからの幅Wが3mm、長さLが100mmである弱接着部位26a,26b(図6にて梨地を付して示した部位)をマットOPP樹脂フィルム面の側端縁24a、側端縁24bに形成した。この弱接着部位26a,26bは、3層構造のラベル21のマットOPP樹脂フィルムの面に対して抗ヒートシール剤を塗布することにより形成した。なお、弱接着部位26a,26bの位置、長さLは、ラベル21が容器本体11の胴部12に一体化された際に、ラベル隙間部16を介して対向する側端縁24a,24bの全域に存在するように設定した。
【0048】
(弱接着部位26a,26bの接着力の測定)
上記の3層構造のラベル21用のシートを用いて、マットOPP樹脂フィルム面側に上記のような弱接着部位を設けて試料面とした幅15mmの帯状試料1と、弱接着部位を設けずに試料面とした幅15mmの帯状試料2と、を作製した。この帯状試料のOPP樹脂フィルム面側を下にして定盤上に載置し、容器本体11を射出成形するための樹脂材料(ポリプロピレン(PP)樹脂((株)プライムポリマー製 J669T))を溶融して帯状試料の試料面に接触させ、固化させた。その後、(株)東洋精機製作所製 ストログラフを用いて、帯状試料を一定の速度(200mm/分)で樹脂から180°剥離して接着力を測定した。その結果、帯状試料1の接着力は4.8N/15mmであり、帯状試料2の接着力は12.0N/15mmであり、弱接着部位26a,26bと胴部12の樹脂材料との接着力は、弱接着部位26a,26bを除く部位と胴部12の樹脂材料との接着力40%であった。
【0049】
(インモールドラベル付き容器の製造)
図1図4に示されるような容器本体を成形するための雌型、雄型を備えた射出成形金型を準備した。この射出成形金型の雌型の胴部に、上記のラベル21を配置し、その後、雄型を挿入した。次に、220℃で溶融したポリプロピレン(PP)樹脂((株)プライムポリマー製 J669T)を射出成形金型内に射出して、容器本体11を成形すると共に、胴部12にラベル21を一体化して、インモールドラベル付き容器1を15個製造した。このインモールドラベル付き容器1の内容積は500mlであった。
【0050】
[比較例]
ラベル21のマットOPP樹脂フィルム面に、弱接着部位26a,26bを形成しなかった他は実施例1と同様にして、インモールドラベル付き容器を15個製造した。
【0051】
[インモールドラベル付き容器の落下耐久性の評価]
上述のように成形した実施例、比較例の各15個のインモールドラベル付き容器に、水400mlを充填した後、フランジ部14,14′の上面14a,14′aに、樹脂フィルム(極東高分子(株)製 トップフィルム(厚み55μm))を熱溶着して容器本体11,11′を密封した。
【0052】
上記のように水を収容した実施例、比較例の各15個、計30個のインモールドラベル付き容器を3.5℃で24時間冷却し、その後、60cmの高さからコンクリート材上に落下させた。このインモールドラベル付き容器の落下は、容器本体11の脚部17がコンクリート材上に衝突し、その際、ラベル隙間部16がコンクリート材に対して垂直方向を向く状態で落下させた。
【0053】
上記のように落下させたインモールドラベル付き容器について、割れ発生の有無を確認した。その結果、実施例のインモールドラベル付き容器は、15個全てにおいて容器本体11の割れは発生しなかった。
【0054】
一方、比較例のインモールドラベル付き容器は、15個中、15個において、ラベル隙間部での容器本体11の割れ発生が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のインモールドラベル付き容器は、インモールドラベルの側端縁から所定の幅で、胴部との接着力が弱い弱接着部位を有する構成であるため、落下による衝撃等の外力が加わってもラベル隙間部の割れ発生が抑制されるという効果を奏するので、落下による衝撃等の外力が加わってもラベル隙間部の割れ発生が抑制されるインモールドラベル付き容器の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 インモールドラベル付き容器
11 容器本体
12 胴部
13 底部
14 フランジ部
15 開口部
16 ラベル隙間部
17 脚部
21 ラベル、インモールドラベル
22 上端縁
23 下端縁
24a、24b 側端縁
26、26a、26b 弱接着部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11