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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066824
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】インモールドラベル付き容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20240509BHJP
   B65D 1/26 20060101ALI20240509BHJP
   B65D 25/20 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B65D1/00 111
B65D1/26 110
B65D25/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176558
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000157887
【氏名又は名称】KISCO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(74)【代理人】
【識別番号】100095463
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 潤三
(72)【発明者】
【氏名】冨上 資治
【テーマコード(参考)】
3E033
3E062
【Fターム(参考)】
3E033AA08
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033BA21
3E033BA22
3E033BB01
3E033CA02
3E033DA08
3E033FA02
3E033GA02
3E062AA10
3E062AC02
3E062DA02
3E062DA07
3E062JA04
3E062JA08
3E062JB04
3E062JC07
3E062JD08
(57)【要約】
【課題】 落下による衝撃等の外力が加わってもラベル隙間部の割れ発生が抑制されるインモールドラベル付き容器を提供する。
【解決手段】 胴部12と胴部12の開口部に位置するフランジ部14とを有する容器本体11と、容器本体11の胴部周面にインモールド成形され一体化されたインモールドラベル21とを備え、インモールドラベル21の対向する側端間に胴部12の一部が露出するラベル隙間部16を有し、インモールドラベル21の上端縁22は、少なくとも一部が胴部12の周面に位置し、それ以外の部分の上端縁22はフランジ部14の裏面に位置し、インモールドラベル21は、胴部12の周面に位置する上端縁22の上端22aから所定の幅Wの弱接着部26を有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底の胴部と、該胴部の開口部に位置するフランジ部とを有する容器本体と、該容器本体の前記胴部の周面にインモールド成形され一体化されたインモールドラベルとを備え、
前記インモールドラベルの対向する側端の間に前記胴部の一部が露出するラベル隙間部を有し、
前記インモールドラベルの前記フランジ部側に位置する上端縁は、少なくとも一部が前記胴部の周面に位置し、それ以外の部分の上端縁は前記フランジ部の裏面に位置し、前記胴部の周面に位置する前記上端縁は、その上端から所定の幅の弱接着部を有していることを特徴とするインモールドラベル付き容器。
【請求項2】
前記インモールドラベルの前記弱接着部と前記胴部との接着力は、前記インモールドラベルの前記弱接着部以外の部位と胴部との接着力の50%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のインモールドラベル付き容器。
【請求項3】
前記弱接着部は、前記インモールドラベルの前記上端からの幅Wが0.5mm~20mmの範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のインモールドラベル付き容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールドラベル付き容器に係り、特に、外力に起因する割れ発生が抑制されるインモールドラベル付き容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、樹脂材料を用いて真空成形した樹脂容器は、真空成形時の引き伸ばしにより容器形状の歪を生じることがあった。また、このような真空成形容器は、多色で高精細な印刷が困難であった。一方、予め印刷を行った板状の樹脂材料を用いて真空成形することは可能であるが、真空成形時の引き伸ばしにより絵柄等に歪みが生じるという問題があった。
【0003】
これに対して、射出成形金型内に所定の形状のラベルを配し、熱可塑性樹脂を射出して樹脂部材を成形することにより胴部にラベルを一体化するインモールドラベル付き容器の場合は、上記のような問題を生じることがないため、種々の分野で使用されている。
【0004】
このようなインモールドラベル付き容器は、一般に胴部の開口部にフランジ部を備えており、インモールドラベルの上端縁側はフランジ部の裏面に沿って折り曲げられ、これによりインモールドラベルの上端縁はフランジ部の裏面に位置する。また、インモールドラベルの下端縁は胴部の底部に位置する。一方、インモールドラベルの側端は胴部の周面に位置し、対向する両側端の間には、胴部の一部が露出するラベル隙間部が存在する。ここで、従来より、省資源の観点から、インモールドラベル付き容器の強度維持のために厚みが必要なフランジ部や底部に比べて、胴部の厚みを薄くして樹脂材料の使用量を抑えることが行われている。そのため、落下による衝撃等の外力がインモールドラベル付き容器に加わると、胴部、特に、ラベル隙間部に変形が生じて容器に割れが発生し易いという問題がある。
【0005】
そのために、ラベル隙間部を曲線形、波形等の非直線形状としたり(特許文献1)、胴部のラベル隙間部が位置する部位のみを厚くして補強したり、胴部の内周面に多数の突条リブを設けて補強することにより(特許文献2)、ラベル隙間部における割れ発生を防止するようにしたインモールドラベル付き容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-76315号公報
【特許文献2】特許第5458432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、胴部の横断面形状が円形状や楕円形状ではなく、角形状や括れを有する形状等、インモールドラベルの上端縁側の全域をフランジ部の裏面に沿って折り曲げた状態でインモールド成形することが困難な形状の容器の場合は、インモールドラベルの上端縁の一部が胴部の周面に位置することとなる。このようなインモールドラベル付き容器に、落下による衝撃等の外力が加わると、当該部位にて容器の割れが発生し易いという問題があった。
【0008】
本発明は、従来提案されているインモールドラベル付き容器におけるこのような問題に鑑みてなされたもので、落下による衝撃等の外力が加わっても、インモールドラベルの上端縁対応部における割れ発生が抑制されるインモールドラベル付き容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、有底の胴部と、該胴部の開口部に位置するフランジ部とを有する容器本体と、該容器本体の前記胴部の周面にインモールド成形され一体化されたインモールドラベルとを備え、
前記インモールドラベルの対向する側端の間に前記胴部の一部が露出するラベル隙間部を有し、
前記インモールドラベルの前記フランジ部側に位置する上端縁は、少なくとも一部が前記胴部の周面に位置し、それ以外の部分の上端縁は前記フランジ部の裏面に位置し、前記胴部の周面に位置する前記上端縁は、その上端から所定の幅の弱接着部を有する構成とした。
【0010】
本発明の他の態様においては、前記インモールドラベルの前記弱接着部と前記胴部との接着力は、前記インモールドラベルの前記弱接着部以外の部位と胴部との接着力の50%以下であるような構成とされる。
【0011】
本発明の他の態様においては、前記弱接着部は、前記インモールドラベルの前記上端からの幅Wが0.5mm~20mmの範囲とされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るインモールドラベル付き容器は上記のとおりであって、容器本体の胴部周面に位置するインモールドラベルの上端縁が、その上端から所定の幅の弱接着部を有しているため、落下による衝撃等の外力が加わっても、インモールドラベルの上端縁における割れ発生が抑制されるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のインモールドラベル付き容器の一例を示す斜視図である。
図2図1に示されるインモールドラベル付き容器の側面図である。
図3図2のI-I線におけるインモールドラベル付き容器の縦断面形状を示す部分拡大断面図である。
図4図2のII-II線におけるインモールドラベル付き容器の縦断面形状を示す部分拡大断面図である。
図5図3で円Aにて囲まれる部位の拡大断面図である。
図6】本発明のインモールドラベル付き容器を構成するラベルの平面視形状を示す図である。
図7】本発明のインモールドラベル付き容器を構成するラベルの層構成の一例を示す凹陥部における断面図である。
図8】従来のインモールドラベル付き容器に落下による衝撃等の外力が加わった際のラベルの上端縁の状態を説明するための図5相当の図である。
図9】本発明のインモールドラベル付き容器に落下による衝撃等の外力が加わった際のラベルの弱接着部の状態を説明するための図5相当の図である。
図10】本発明のインモールドラベル付き容器の他の例を示す斜視図である。
図11図10に示されるインモールドラベル付き容器を構成するラベルの平面視形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1図6において、インモールドラベル付き容器1は、底部13を有する胴部12と、この胴部12の開口部15に位置するフランジ部14とを有し、合成樹脂が射出成形されて成る容器本体11と、この容器本体11の胴部12の周面にインモールド成形により一体化されたインモールドラベル21とを備えている。容器本体11を構成する胴部12の横断面形状は、例えば、四隅に位置する角部12Aを丸めた正方形状とされる。
【0015】
インモールドラベル21の対向する側端24a,24bの間には、胴部12の一部が露出するラベル隙間部16が存在する。また、インモールドラベルの上端縁22には、胴部12の4箇所の角部12Aに対応する箇所に凹陥部27が形成され、凹陥部27形成部分の上端縁22は胴部12の周面に止まるが(図2図3)、それ以外の部分は、フランジ部14の裏面14bに位置する(図4)。そして、インモールドラベル21の凹陥部27形成部分に、上端縁22の上端22aから所定の幅Wで弱接着部26を設けてある。
【0016】
なお、図2では、インモールドラベル21における弱接着部26とそれ以外の部位との境界を一点鎖線で示している。また、図3図4においては、インモールドラベル21の弱接着部26と胴部12との接着界面を鎖線で示し、弱接着部26以外の部位と胴部12との接着界面を実線で示している。
【0017】
図5は、図3で円Aに囲まれる部分の拡大断面図である。図5に示されるように、インモールドラベル21は、凹陥部27の上端縁22の上端22aから所定の幅Wで弱接着部26が設けられている。なお、図5においては、インモールドラベル21の弱接着部26と胴部12との接着界面を鎖線で示し、弱接着部26以外の部位と胴部12との接着界面を実線で示している。
【0018】
上述したように、容器本体11を構成する胴部12の横断面形状は、例えば、四隅に位置する角部12Aを丸めたような正方形状であり、底部13の平面視形状も、四隅に位置する角部12Aを丸めたような正方形状である。そして、容器本体11は、上方が若干拡開するテーパー形状にされる。また、底部13の周縁13aから下方に、脚部17が突設される。
【0019】
容器本体11を構成するフランジ部14は、胴部12の上端縁12aから胴部12の軸方向(図2に矢印⇒で示される方向)に対して直角方向に突設された環状構造であり、平坦な上面14aを備えている。
【0020】
このように胴部12、底部13、フランジ部14を有する容器本体11は、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ乳酸樹脂等の樹脂単独で射出成形されたものであってよく、また、混合樹脂、共重合樹脂で射出成形されたものであってもよい。
【0021】
インモールドラベル付き容器1を構成するラベル21は、展開すると図6に示されるような平面視形状であり、上端縁22、下端縁23、側端24a,24bを有し、上端縁22の4箇所に凹陥部27を有している。凹陥部27の位置は、胴部12の4箇所の角部12Aに対応する位置である。
【0022】
このラベル21の胴部12に溶着する面には、凹陥部27の上端縁22の上端22aから所定の幅Wで弱接着部26(図6では、梨地模様を付して示している)が設けられている。図示した例では、凹陥部27は円弧状であり、各凹陥部27において、凹陥部27の上端縁22の上端22aから所定の幅Wで弱接着部26が形成されている。その場合、図示した例のように、幅Wの弱接着部26が、凹陥部27から横方向距離Dの近傍部分(この上端縁22は、インモールドラベル付き容器1においてフランジ部14の裏面14bに位置する)にまで延設することとしてもよい。
【0023】
インモールドラベル付き容器1を構成するラベル21における弱接着部26の幅Wは、0.5mm~20mm、好ましくは2mm~5mmの範囲とすることができる。弱接着部26の幅Wが0.5mm未満であると、落下による衝撃等の外力がインモールドラベル付き容器1に加わった際に、凹陥部27が存在する胴部12における割れ発生の防止効果が奏されないことがあるので、好ましくない。また、幅Wが20mmを超えると、インモールドラベル付き容器1の通常の取り扱いにおいて、弱接着部26からのインモールドラベル21の剥離が生じる場合があるので、やはり好ましくない。
【0024】
また、上端縁22の凹陥部27から距離Dの近傍部分にも弱接着部26を形成する場合、その距離Dは、20mm以下、好ましくは5mm以下の範囲とすることができる。距離Dが20mmを超えると、インモールドラベル付き容器1の通常の取り扱いにおいて、フランジ部14の裏面14bに位置する上端縁22からのインモールドラベル21の剥離が生じる場合があるので、好ましくない。
【0025】
インモールドラベル付き容器1では、ラベル21の側端24aと側端24bが対向するように、ラベル21が容器本体11の胴部12の周面にインモールド成形により一体化されている。また、図3図4に示されるように、ラベル21の上端縁22側がフランジ部14の裏面14bに沿って折れ曲がり、上端縁22はフランジ部14の裏面14bに位置し、凹陥部27では、上端縁22が胴部12の周面に位置しており、また、ラベル21の下端縁23は脚部17に位置している。
【0026】
ここで、弱接着部26と胴部12との接着力について説明する。本発明では、インモールドラベル21の弱接着部26と胴部12との接着力が、インモールドラベル21の弱接着部26以外の部位と胴部12との接着力の50%以下、好ましくは30%以下とされる。胴部12に対する弱接着部26の接着力が、胴部12に対する弱接着部26以外の部位の接着力の50%を超えると、後述するように、製品出荷されたインモールドラベル付き容器1に対して、落下による衝撃等の外力が加わった際に、凹陥部27が存在する胴部12における割れ発生の防止効果が奏されないことがあるので、好ましくない。
【0027】
上記の胴部12に対する弱接着部26の接着力と、胴部12に対する弱接着部26以外の部位の接着力は、例えば、以下のように測定することができる。先ず、インモールドラベル21用のシートを用いて、胴部12に溶着する面側に弱接着部26を設けて試料面とした幅15mmの帯状試料と、弱接着部26を設けずに試料面とした幅15mmの帯状試料とを作製する。このような帯状試料を定盤上に載置し、この帯状試料の試料面に、容器本体11を射出成形するための樹脂材料を溶融して接触させ、固化後、帯状試料を所定の速度で樹脂から180°剥離して測定することができる。
【0028】
ラベル21は、容器表面となる面が、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着せず、胴部12に溶着する面が、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着するように構成されている。ラベル21の胴部12に溶着する面には、上記のように凹陥部27において上端縁22の上端22aから所定の幅Wで弱接着部26が設けられており、この弱接着部26は、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と弱く溶着する部位となる。また、ラベル21の容器表面となる面には、通常、所望の印刷が施される。
【0029】
図7は、本発明のインモールドラベル付き容器を構成するラベルの層構成の一例を示す、凹陥部27部分の断面図である。図7に示されるラベル21は、容器表面となる面側から、表面層21a、中間層21b、溶着層21cの3層構造となっており、溶着層21cには、凹陥部27において上端縁22から所定の幅で弱接着部26が設けられている。
【0030】
表面層21a及び中間層21bは、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着しない層であり、溶着層21cは、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着する層である。このような表面層21a、中間層21b、溶着層21cは、容器本体11を射出成形するための樹脂材料に応じて適宜選択することがでる。例えば、容器本体11を射出成形するための樹脂材料がポリプロピレン(PP)樹脂である場合、表面層21aは二軸延伸ポリプロピレン(OPP)からなる層、中間層21bはポリエチレンテレフタレート(PET)からなる層、溶着層21cはマットOPP、ヒートシールOPPからなる層とすることができる。
【0031】
また、弱接着部26は、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と弱く溶着する部位であり、このような弱接着部26は、例えば、溶着層21cに対してフレーム処理装置で表面の改質処理を行うこと、あるいは、溶着層21cに対して抗ヒートシール剤等を塗布することにより設けることができる。
【0032】
本発明のインモールドラベル付き容器を構成するラベル21は、図7に示される層構成を有するものに限定されるものではない。例えば、ラベル21を、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着しない樹脂材料から成る単層構造とし、容器本体11の胴部12に溶着する面に対して、弱接着部26では、例えば、ドット状に面積比率50%の割合でヒートシール剤を塗布することにより、容器本体11の胴部12に対する弱い溶着性を付与し、弱接着部26以外の部位ではヒートシール剤を面積比率100%の割合で塗布することにより、容器本体11の胴部12に対する強い溶着性を付与してもよい。
【0033】
また、ラベル21を、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着する樹脂材料から成る単層構造とし、容器本体11の胴部12に溶着する面の弱接着部26に対して、抗ヒートシール剤を塗布することにより、容器本体11の胴部12に対する弱い溶着性を付与し、容器表面となる面側に対して、オーバーコートニス等を塗布することにより、容器本体11を射出成形するための樹脂材料に溶着しない面としてもよい。さらに、ラベル21を2層構成、4層以上の多層構成としてもよく、この場合も、ラベル21の容器表面となる面が、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着せず、胴部12に溶着する面が、容器本体11を射出成形するための樹脂材料と溶着するとともに、弱接着部26を有するように構成する。
【0034】
インモールドラベル21の弱接着部26と胴部12との接着力は、上記のように、インモールドラベル21の弱接着部26以外の部位と胴部12との接着力の50%以下の範囲であり、したがって、弱接着部26が胴部12に溶着していない状態を含めて設定することが可能である。しかし、弱接着部26と胴部12との接着力が低くなるほど、インモールド成形後に射出成形金型からインモールドラベル付き容器1を取り出す際に、樹脂材料の収縮率とラベル21の収縮率の差に起因した皺が弱接着部26に生じ易くなるので、使用する樹脂材料とラベル21の収縮率の差を考慮して、弱接着部26と胴部12との接着力を設定することが好ましい。
【0035】
このようなインモールドラベル付き容器1は、一般に、容器本体11に所望の内容物を所定量充填した後、フランジ部14の上面14aに所望のフィルムを接着あるいは溶着して容器本体11を密封し、さらに、必要に応じ、フランジ部14に係合するような蓋材を装着して製品出荷される。
【0036】
このようにして製品出荷されたインモールドラベル付き容器1に対して、落下による衝撃等の外力が加わった場合について、図面を参照して説明する。図8は、従来のインモールドラベル付き容器1′に落下による衝撃等の外力が加わった際のラベルの上端縁の状態を説明するための、図5に相当する図であり、図9は、本発明のインモールドラベル付き容器1に落下による衝撃等の外力が加わった際のラベルの弱接着部の状態を説明するための、図5に相当する図である。なお、図8図9においても、インモールドラベル21の弱接着部26と胴部12との接着界面を鎖線で示し、弱接着部26以外の部位と胴部12との接着界面を実線で示している。
【0037】
図8に示すように、従来のインモールドラベル付き容器1′では、インモールドラベル21′が胴部12′に溶着され一体化されており、その上端縁22′は、容器本体11′を構成する樹脂材料に溶着されていない状態となっている。したがって、インモールドラベル21′の凹陥部27′形成部分における上端縁22′は、胴部12′に溶着されていない状態となっている。このため、インモールドラベル21′の凹陥部27′に沿って、切り込み(ノッチ)が胴部12′に存在するような状態となっている。
【0038】
このように胴部12の4箇所の角部12Aに凹陥部27′が存在(図2参照)するインモールドラベル付き容器1′では、切り込み(ノッチ)が胴部12′の周面に4箇所存在することとなる。このようなインモールドラベル付き容器1′が製品出荷された後、落下等による衝撃により、例えば、液状の内容物を介して胴部12′に衝撃力P1が作用すると、ラベル21′の凹陥部27′の上端縁22′におけるノッチ効果により、凹陥部27′に沿って作用力P2が作用する。この作用力P2は、衝撃力P1が大きい箇所ほど大きくなり、凹陥部27′が存在する胴部12′において割れが生じる。
【0039】
一方、本発明のインモールドラベル付き容器1では、図2図5に示されるように、容器本体11に溶着され一体化しているインモールドラベル21は、胴部12に位置する凹陥部27の上端縁22の上端22aから所定の幅Wの弱接着部26を有している。これにより、製品出荷されたインモールドラベル付き容器1が落下し、その衝撃により、例えば、液状の内容物を介して胴部12に衝撃力P1が作用すると、図9に示すように、弱接着部26において、胴部12からのインモールドラベル21の剥離が生じる。この弱接着部26におけるインモールドラベル21の胴部12からの剥離の程度は、衝撃力P1が大きい箇所ほど大きくなる。これにより、従来のインモールドラベル付き容器1′に4箇所存在するラベル21′の凹陥部27′における4本の切り込み(ノッチ)は消滅し、ラベル21の4箇の凹陥部27が存在する部位におけるノッチ効果は発現せず、凹陥部27が存在する胴部12における割れ発生が防止される。
【0040】
本発明のインモールドラベル付き容器1は、例えば、射出成形金型の雌型の胴部にラベル21を配置し、雄型を挿入して、溶融した樹脂材料を射出成形金型内に射出して、容器本体11を成形すると共に、胴部12にラベル21を一体化することにより製造することができる。
【0041】
以上に述べたインモールドラベル付き容器の実施形態はあくまで例示であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明のインモールドラベル付き容器は、ラベル隙間部における割れ発生を抑制するために、ラベル隙間部を曲線形、波形等の非直線形状としたり、胴部のラベル隙間部が位置する部位のみを厚くして補強したり、胴部の内周面に多数の突条リブを設けて補強したりすることができる。
【0042】
胴部のラベル隙間部が位置する部位のみを厚くして補強する場合、例えば、図1図2に示されるラベル隙間部16では、それが位置する部位を、胴部12の他の部位よりも1.2倍~2倍の範囲で厚くすることができる。また、このように厚みを大きくするラベル隙間部16の幅は、インモールドラベル21の対向する側端24aと側端24bとの間隔の1.5倍~15倍の範囲で設定することができる。これにより、落下による衝撃等の外力が加わっても、ラベル隙間部16における割れ発生が抑制される。
【0043】
また、インモールドラベル付き容器の胴部の横断面形状、底部の平面視形状、開口部の平面視形状は、図示した例のような四隅を丸めた正方形状に限定されず、四隅を丸めた長方形状、長円形状、楕円形状、長軸方向の中央に括れを有するような楕円形状等、任意に設定することができる。いずれの形状であっても、本発明のインモールドラベル付き容器は、インモールドラベルの上端縁の少なくとも一部が胴部の周面に位置し、それ以外の部分の上端縁はフランジ部の裏面に位置しており、インモールドラベルは、胴部の周面に位置する上端縁の上端から所定の幅で弱接着部を有するものである。
【0044】
図10は、本発明のインモールドラベル付き容器の他の形状例を示す斜視図であり、図11は、図10に示されるインモールドラベル付き容器を構成するラベルの平面視形状を示す図である。図10において、インモールドラベル付き容器31は、底部43を有する胴部42と、この胴部42の開口部45に形成されるフランジ部44とを有する容器本体41と、この容器本体41の胴部42の周面にインモールド成形され一体化されたインモールドラベル51と、を備えている。また、インモールドラベル付き容器31は、インモールドラベル51の対向する側端54a,54bの間に、胴部42の一部が露出するラベル隙間部46を有している。
【0045】
容器本体41を構成する胴部42は、横断面形状が長軸方向の中央に括れを有するような楕円形状であり、底部43の平面視形状及び開口部45の平面視形状も、長軸方向の中央に括れを有するような楕円形状である。そして、開口部45の対向する2箇所の括れ箇所に傾斜部位47を設けて胴部42とフランジ部44を連設することにより、フランジ部44は平坦な上面44aを有する環状構造となっている。なお、胴部42は、底部43における楕円形状よりも、開口部45における楕円形状が大きいテーパー形状の筒体である。
【0046】
インモールドラベル付き容器31を構成するラベル51は、図11に示されるような平面視形状であり、上端縁52、下端縁53、側端54a,54bを有し、上端縁52の2箇所に凹陥部57を有している。この凹陥部57の形成位置は、容器本体41の2箇所の傾斜部位47に対応する位置である。そして、ラベル51の凹陥部57における上端縁52は、胴部42の周面に位置しており、それ以外の部分の上端縁52は、フランジ部44の裏面44bに位置している。
【0047】
ラベル51の胴部42に溶着する面には、凹陥部57部分の上端52aから所定の幅Wで弱接着部56(図11では、梨地模様を付して示している)が形成されている。図示した例では、凹陥部57は円弧状であり、各凹陥部57において、凹陥部57の上端52aから所定の幅Wで弱接着部56が形成されている。さらに、図示した例では、弱接着部56は、凹陥部57から横方向距離Dの近傍部分(この部分は、フランジ部44の裏面44bに位置する)にまで、所定の幅Wにて延設されている。
【0048】
これにより、インモールドラベル付き容器31は、インモールドラベル51の凹陥部57部分の上端縁52が胴部42の周面に位置し、上端縁52のそれ例外の部位はフランジ部44の裏面44bに位置することになる。
【実施例0049】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例]
(ラベルの作製)
厚み12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム(東レフィルム加工(株)製 VM-PET1510)、厚み30μmの二軸延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂フィルム(東洋紡(株)製 P2161)、および、厚み20μmのマットOPP樹脂フィルム(東洋紡(株)製 P4166)を準備した。
【0050】
上記PET樹脂フィルムの一方の面にOPP樹脂フィルムをラミネートし、他方の面にマットOPP樹脂フィルムをラミネートして、厚みが62μmの3層構造のシートを作製した。このシートでは、マットOPP樹脂フィルム面が胴部に溶着する面となる。
【0051】
次に、この3層構造のシートを打ち抜いて、図11に示されるような平面視形状を有するラベル51を作製した。このラベル51は、上端縁52の2箇所に凹陥部57を有するものとし、凹陥部57の位置は、インモールドラベル付き容器31にて傾斜部位47に位置するように設定した。
【0052】
次いで、ラベル51の2箇所の凹陥部57部分及び凹陥部57から距離D(6mm)の部分のマットOPP樹脂フィルム面に、幅W(3mm)の弱接着部57(図11にて梨地を付して示した部位)を形成した。この弱接着部56は、3層構造のラベル51のマットOPP樹脂フィルムの面に対して抗ヒートシール剤を塗布することにより形成した。
【0053】
(弱接着部56の接着力の測定)
上記の3層構造のラベル51のマットOの帯状試料2を作製した。この帯状試料のOPP樹脂フィルム面側を下にして定盤上に載置し、容器本体41を射出成形するための樹脂材料(ポリプロピレン(PP)樹脂(、帯状試料を一定の速度(200mm/分)で樹脂から180°剥離して接着力を測定した。その結果、帯状試料1の接着力は4.8N/15mmであり、帯状試料2の接着力は12.0N/15mmであり、弱接着部56と胴部42の樹脂材料との接着力は、弱接着部56以外の部位と胴部42の樹脂材料との接着力の40%であった。
【0054】
(インモールドラベル付き容器の製造)
図10に示されるような容器本体を成形するための雌型、雄型を備えた射出成形金型を準備した。この射出成形金型の雌型の胴部に、上記のラベル51を配置し、その後、雄型を挿入した。次に、220℃で溶融したポリプロピレン(PP)樹脂((株)プライムポリマー製 J669T))を射出成形金型内に射出して、容器本体41を成形すると共に胴部42にラベル51を一体化して、インモールドラベル付き容器31を15個製造した。このインモールドラベル付き容器31の内容積は500mlであった。
【0055】
なお、製造したインモールドラベル付き容器31は、インモールドラベルの側端54a,54bが対向しているラベル隙間部46における胴部42の厚みを、胴部42の他の部位の1.5倍とした。また、このように厚みの大きいラベル隙間部46の幅を、インモールドラベルの対向する側端54aと側端54bとの間隔の10倍とした。
【0056】
[比較例]
ラベル51のマットOPP樹脂フィルム面に、弱接着部56を形成しなかった他は、実施例と同様にしてインモールドラベル付き容器を15個製造した。
【0057】
[インモールドラベル付き容器の落下耐久性の評価]
上述のように成形した実施例、比較例の各15個のインモールドラベル付き容器に、水400mlを充填した後、フランジ部44の上面44aに、樹脂フィルム(極東高分子(株)製 トップフィルム(厚み55μm))を熱溶着して容器本体41を密封した。
【0058】
上記のように水を収容した実施例、比較例の各15個、計30個のインモールドラベル付き容器を3.5℃で24時間冷却し、その後、60cmの高さからコンクリート材上に落下させた。このインモールドラベル付き容器の落下は、容器本体41の胴部42の傾斜部位47が存在する側面がコンクリート材上に衝突し、その際、ラベル隙間部46が90度横方向を向く状態で落下させた。
【0059】
上記のように落下させたインモールドラベル付き容器について、割れ発生の有無を確認した。その結果、実施例のインモールドラベル付き容器は、15個全てにおいて、弱接着部56からのインモールドラベル51の剥離が生じたものの、容器本体41の割れは発生しなかった。
【0060】
一方、比較例のインモールドラベル付き容器は、15個中、15個において、ラベル51の凹陥部57の上端縁52が位置している傾斜部位47の近傍で、容器本体41の割れ発生が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るインモールドラベル付き容器は上記のとおりであって、容器本体の胴部周面に位置するインモールドラベルの上端縁が、その上端から所定の幅の弱接着部を有しているため、落下による衝撃等の外力が加わっても、インモールドラベルの上端縁における割れ発生が抑制されるという効果があるので、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0062】
1、31 インモールドラベル付き容器
11、41 容器本体
12、42 胴部
13、43 底部
14、44 フランジ部
14a、44a フランジ部表面
14b、44b フランジ部裏面
15、45 開口部
16、46 ラベル隙間部
47 傾斜部位
21、51 ラベル、インモールドラベル
22、52 上端縁
22a、52a 上端
23、53 下端縁
24a、24b、54a、54b 側端
26、56 弱接着部
27、57 凹陥部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11