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特開2024-66829光コネクタ、光コネクタの製造方法、及び光接続構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066829
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】光コネクタ、光コネクタの製造方法、及び光接続構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20240509BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176564
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】矢加部 祥
(72)【発明者】
【氏名】指田 貴子
【テーマコード(参考)】
2H036
2H137
【Fターム(参考)】
2H036JA01
2H036KA02
2H036KA04
2H036QA14
2H036QA18
2H036QA23
2H036QA49
2H036QA56
2H137AB01
2H137BA15
2H137BA20
2H137CA15A
2H137CA49
2H137CA62
2H137CA75
2H137CC01
2H137CC11
2H137CD33
2H137DB01
2H137DB08
(57)【要約】
【課題】フェルール端面上に設けられたスペーサのフェルール端面からの剥離を抑制することができる、光コネクタ、光コネクタの製造方法、及び光接続構造を提供する。
【解決手段】光コネクタは、少なくとも1本の光ファイバと、フェルール端面を有し、フェルール端面において光ファイバの先端面を露出させるように光ファイバを保持するフェルールと、フェルール端面上に設けられ、フェルール端面において光ファイバの先端面が露出する領域を取り囲むスペーサと、スペーサを保護するように構成された保護膜と、を備える。保護膜は、光ファイバの先端面を覆うとともに、フェルール端面に直交する方向から見た場合にフェルール端面の露出する領域とスペーサの表面との境界の一部を少なくとも覆うように設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1本の光ファイバと、
フェルール端面を有し、前記フェルール端面において前記光ファイバの先端面を露出させるように前記光ファイバを保持するフェルールと、
前記フェルール端面上に設けられ、前記フェルール端面において前記光ファイバの前記先端面が露出する領域を取り囲むスペーサと、
前記スペーサを保護するように構成された保護膜と、を備え、
前記保護膜は、前記光ファイバの前記先端面を覆うとともに、前記フェルール端面に直交する方向から見た場合に前記フェルール端面の前記露出する領域と前記スペーサの表面との境界の一部を少なくとも覆うように設けられている、光コネクタ。
【請求項2】
前記フェルール端面に設けられ、ガイドピンが挿入されるように構成された少なくとも1つのガイド孔を更に備え、
前記保護膜は、前記ガイド孔を除く領域に設けられている、
請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項3】
前記少なくとも1つのガイド孔は、一対のガイド孔であり、
前記保護膜は、前記フェルール端面において前記一対のガイド孔の間に設けられている、
請求項2に記載の光コネクタ。
【請求項4】
前記保護膜は、反射防止膜である、
請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項5】
前記保護膜の硬度は、前記スペーサの硬度よりも高い、
請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項6】
前記保護膜の厚みは、前記スペーサの厚みの1/4倍以下である、
請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項7】
前記スペーサは、互いに対向する第1の長辺部及び第2の長辺部を含む枠形状を有し、
前記少なくとも1本の光ファイバは、複数の光ファイバであり、
前記複数の光ファイバの各先端面は、前記第1及び第2の長辺部の間であって前記フェルール端面の前記露出する領域において露出し、
前記保護膜は、前記第1の長辺部、前記複数の光ファイバの前記各先端面、及び、前記第2の長辺部を覆うように設けられている、
請求項1に記載の光コネクタ。
【請求項8】
少なくとも1本の光ファイバを準備する工程と、
前記光ファイバを保持するように構成された少なくとも1つの保持孔と前記保持孔の一端が露出するフェルール端面とを有するフェルールを準備する工程と、
前記保持孔に挿入された前記光ファイバの先端面が前記フェルール端面において露出するように前記光ファイバを前記フェルールに固定する工程と、
前記フェルール端面において前記光ファイバの前記先端面が露出する領域を取り囲むように前記フェルール端面にスペーサを貼り付ける工程と、
前記スペーサを保護する保護膜を蒸着によって形成する工程と、を備え、
前記保護膜を形成する工程では、前記光ファイバの前記先端面を覆うとともに、前記フェルール端面に直交する方向から見た場合に前記フェルール端面の前記露出する領域と前記スペーサの表面との境界の一部を少なくとも覆うように、前記保護膜を形成する、
光コネクタの製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の光コネクタである第1光コネクタと、
前記第1光コネクタと接続される第2光コネクタと、を備え、
前記第1光コネクタと前記第2光コネクタとは、前記スペーサを間に挟んで対向するように接続される、光接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光コネクタ、光コネクタの製造方法、及び光接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバと、光ファイバを保持するフェルールと、フェルール端面上に接合されたスペーサとを備える光コネクタが開示されている。この光コネクタでは、スペーサは、光ファイバの先端面から延びる光路を通過させる開口を有し、他の光コネクタとの間隔を規定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/073408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたスペーサ付きの光コネクタを他の光コネクタに接続する際、接続に先立って、布等のクリーナをフェルール端面に強く押し当てた状態で滑らせて、フェルール端面から露出する光ファイバの先端面を清掃する。これにより、光ファイバの先端面に異物が付着することで引き起こされる光接続損失を防止できる。しかしながら、上記の光コネクタは、薄いフィルムからなる枠状スペーサをフェルール端面に接合した構成であり、その内側の狭い領域で光ファイバの先端面を清掃することになる。このため、光ファイバの先端面を清掃する際、光ファイバの先端面が露出する領域の周りに位置するスペーサにクリーナが接触し、スペーサをフェルール端面から剥離させることがある。
【0005】
本開示は、フェルール端面上に設けられたスペーサのフェルール端面からの剥離を抑制することができる、光コネクタ、光コネクタの製造方法、及び光接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一側面として、光コネクタを提供する。この光コネクタは、少なくとも1本の光ファイバと、フェルール端面を有し、フェルール端面において光ファイバの先端面を露出させるように光ファイバを保持するフェルールと、フェルール端面上に設けられ、フェルール端面において光ファイバの先端面が露出する領域を取り囲むスペーサと、スペーサを保護するように構成された保護膜と、を備える。保護膜は、光ファイバの先端面を覆うとともに、フェルール端面に直交する方向から見た場合にフェルール端面の露出する領域とスペーサの表面との境界の一部を少なくとも覆うように設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、フェルール端面上に設けられたスペーサのフェルール端面からの剥離を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る光接続構造の構成の一例を示す断面図である。
図2図2は、一実施形態に係る光コネクタの構成の一例を示す斜視図である。
図3図3は、光コネクタのフェルール端面を示す正面図である。
図4図4は、図3のVI-VI線に沿った光コネクタの断面構造の一例を示す図である。
図5図5は、他の光コネクタのフェルール端面を示す正面図である。
図6図6は、一実施形態に係る光コネクタの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、一実施形態に係る光コネクタにより奏される作用効果を説明するためのグラフである。
図8図8は、変形例に係る光コネクタのフェルール端面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
[1]本開示の一実施形態に係る光コネクタは、少なくとも1本の光ファイバと、フェルール端面を有し、フェルール端面において光ファイバの先端面を露出させるように光ファイバを保持するフェルールと、フェルール端面上に設けられ、フェルール端面において光ファイバの先端面が露出する領域を取り囲むスペーサと、スペーサを保護するように構成された保護膜と、を備える。この光コネクタでは、保護膜は、光ファイバの先端面を覆うとともに、フェルール端面に直交する方向から見た場合にフェルール端面の露出する領域とスペーサの表面との境界の一部を少なくとも覆うように設けられている。
【0010】
この光コネクタでは、保護膜は、フェルール端面において光ファイバの先端面が露出する領域とスペーサの表面との境界の一部を少なくとも覆うように設けられている。これにより、光ファイバの先端面を清掃する際に、フェルール端面に押し当てられるクリーナがフェルール端面の領域とスペーサの表面との境界に接触することを抑制することが可能となる。その結果、フェルール端面上に設けられたスペーサのフェルール端面からの剥離を抑制することが可能となる。また、スペーサが保護膜によって保護されるので、フェルール端面に押し当てられるクリーナがスペーサの表面に接触することを抑制することができる。その結果、スペーサの表面における傷の発生を抑制することも可能となる。
【0011】
[2]上記[1]の光コネクタは、フェルール端面に設けられ、ガイドピンが挿入されるように構成された少なくとも1つのガイド孔を更に備えてもよい。この光コネクタでは、保護膜は、ガイド孔を除く領域に設けられてもよい。この場合、フェルール端面の全体及びスペーサの表面の全体に保護膜を設ける場合と比較して保護膜をより効率良く形成しつつ、スペーサのフェルール端面からの剥離を抑制することができる。また、例えば、蒸着によって保護膜が形成される場合、蒸着物がガイド孔に入ることを抑制することができる。その結果、ガイドピンをガイド孔から抜く際の力が増加することを抑制することができる。
【0012】
[3]上記[2]の光コネクタでは、少なくとも1つのガイド孔は、一対のガイド孔であってもよく、保護膜は、フェルール端面において一対のガイド孔の間に設けられてもよい。この場合、フェルール端面の全体及びスペーサの表面の全体に保護膜を設ける場合と比較して保護膜をより効率良く形成しつつ、スペーサのフェルール端面からの剥離を抑制することができる。
【0013】
[4]上記[1]から[3]のいずれかの光コネクタでは、保護膜は、反射防止膜であってもよい。この場合、光ファイバの先端面において発生するフレネル損失が保護膜によって抑制される。その結果、光コネクタを他の光コネクタに接続した際の接続損失を低減することができる。
【0014】
[5]上記[1]から[4]のいずれかの光コネクタでは、保護膜の硬度は、スペーサの硬度よりも高くてもよい。この場合、フェルール端面上に設けられたスペーサにおける傷の発生を一層抑制することができる。
【0015】
[6]上記[1]から[5]のいずれかの光コネクタでは、保護膜の厚みは、スペーサの厚みの1/4倍以下であってもよい。この場合、フェルール端面と他の光コネクタとの間隔をスペーサによってより確実に規定することができる。
【0016】
[7]上記[1]から[6]のいずれかの光コネクタでは、スペーサは、互いに対向する第1の長辺部及び第2の長辺部を含む枠形状を有し、少なくとも1本の光ファイバは、複数の光ファイバであり、複数の光ファイバの各先端面は、第1及び第2の長辺部の間であってフェルール端面の領域において露出し、保護膜は、第1の長辺部、複数の光ファイバの各先端面、及び、第2の長辺部を覆うように設けられてもよい。この場合、保護膜は、フェルール端面の露出する領域と第1の長辺部との境界、及び、フェルール端面の露出する領域と第2の長辺部との境界を覆うように設けられる。これにより、フェルール端面上に設けられたスペーサのフェルール端面からの剥離をより確実に抑制することが可能となる。
【0017】
[8]本開示の一実施形態に係る光コネクタの製造方法は、少なくとも1本の光ファイバを準備する工程と、光ファイバを保持するように構成された少なくとも1つの保持孔と保持孔の一端が露出するフェルール端面とを有するフェルールを準備する工程と、保持孔に挿入された光ファイバの先端面がフェルール端面において露出するように光ファイバをフェルールに固定する工程と、フェルール端面において光ファイバの先端面が露出する領域を取り囲むようにフェルール端面にスペーサを貼り付ける工程と、スペーサを保護する保護膜を蒸着によって形成する工程と、を備える。保護膜を形成する工程では、光ファイバの先端面を覆うとともに、フェルール端面に直交する方向から見た場合にフェルール端面において露出する領域とスペーサの表面との境界の一部を少なくとも覆うように、保護膜を形成する。これにより、フェルール端面上に設けられたスペーサのフェルール端面からの剥離を抑制することができる光コネクタを容易に製造することができる。
【0018】
[9]本開示の一実施形態に係る光接続構造は、[1]から[7]のいずれかに記載の光コネクタである第1光コネクタと、第1光コネクタと接続される第2光コネクタと、を備える。この光接続構造では、第1光コネクタと第2光コネクタとは、スペーサを間に挟んで対向するように接続される。この光接続構造によれば、フェルール端面からのスペーサの剥離を抑制できるため、第1光コネクタと第2光コネクタとの光接続における距離をスペーサで確実に規定することができる。これにより、本実施形態に係る光接続構造によれば、第1光コネクタと第2光コネクタとの光接続における接続損失を低減することができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る光コネクタ、光コネクタの製造方法、及び光接続構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
図1は、一実施形態に係る光接続構造の構成を示す断面図である。図1に示されるように、光接続構造100は、光コネクタ1A(第1光コネクタ)及び光コネクタ1B(第2光コネクタ)を備えている。光コネクタ1Aと光コネクタ1Bとは、スペーサ20を間に挟んで互いに対向するように接続される。これにより、光コネクタ1Aの前端面12と光コネクタ1Bの前端面12とが所定距離離れた状態で、光コネクタ1Aが保持する各光ファイバ10と光コネクタ1Bが保持する各光ファイバ10とがそれぞれ光学的に結合する。
【0021】
図2は、光接続構造100の一方を構成する光コネクタ1Aを示す斜視図である。図2に示されるように、光コネクタ1Aは、複数の光ファイバ10、複数の光ファイバ10を保持するフェルール11、及び、スペーサ20を備えている。光コネクタ1Aは、フェルール11で保持する光ファイバ10を、光接続構造100の他方を構成する光コネクタ1Bに保持される光ファイバ10に光学的に接続する部品である。スペーサ20は、詳細は後述するが、光コネクタ1Aの前端面12(フェルール端面)に接合され、光コネクタ1Aの前端面12と光コネクタ1Bの前端面12との間隔を規定する。光コネクタ1Bは、図1に示すように、スペーサ20を有しない点を除いて、光コネクタ1Aと同様の構成であり、複数の光ファイバ10及びフェルール11を備えている。以下では、特段の断りがない限り、光ファイバ10及びフェルール11は、光コネクタ1A,1Bの構成部材として説明する。なお、図1に示す光接続構造では、光コネクタ1Bは、光コネクタ1Aとは上下反転した状態で、光コネクタ1Aに接続されている。
【0022】
各光ファイバ10は、X方向に沿ってそれぞれ延びている。複数の光ファイバ10は、フェルール11内において、Y方向において並んで配置されている。各光ファイバ10は、光ファイバ心線10aと、光ファイバ心線10aを覆う樹脂被覆10bとを有する。各光ファイバ10は、X方向における途中から先端面10cに亘って樹脂被覆10bが除去されることにより、光ファイバ心線10aが露出している。なお、光ファイバ10の本数は、図2に示す例のように、12本に限定されない。光ファイバ10の本数は、4本、8本又は24本等であってもよい。
【0023】
フェルール11は、複数の光ファイバ10を整列させて保持する部材である。フェルール11は、例えば、略直方体状の外観を呈している。フェルール11は、例えば、樹脂によって形成され、一例としてはカーボン等の無機フィラーを含有するポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂によって形成されている。フェルール11は、X方向における前端に位置する前端面12と、X方向における後端に位置する後端面13とを有する。フェルール11は、Y方向において対向するように設けられた一対の側面14と、Z方向において対向するように設けられた底面15及び上面16とを有する。上面16には、窓部16aが設けられている。
【0024】
前端面12は、フェルール11のX方向における前端に位置している。前端面12は、例えば平坦な面であり、図1に示すように、YZ平面に対して傾斜している。前端面12とYZ平面とが成す傾斜角度θは、例えば4°以上16°以下であり、一例として、8°である(図4参照)。前端面12は傾斜していなくてもよい。前端面12は、Y方向及びZ方向における中央において中央領域R1を有する(図3を参照)。中央領域R1では、複数の光ファイバ10の各先端面10cが露出している。言い換えると、フェルール11に設けられた各保持孔19が前端面12の中央領域R1において開口する。保持孔19の開口は、Y方向に沿って一例に形成されている。中央領域R1には、更に、一対のガイド孔17A,17Bが開口している。一対のガイド孔17A,17Bは、複数の光ファイバ10の先端面10cをY方向において挟むように設けられている。
【0025】
後端面13は、フェルール11のX方向における後端に位置している。後端面13は、YZ平面に沿って延在している。後端面13には、複数の光ファイバ10をまとめて受け入れる導入孔18が形成されている。導入孔18は、窓部16aを通してフェルール11の外部に繋がっている。導入孔18の前方部分から前端面12に貫通するように複数の保持孔19が形成されている。各保持孔19には、光ファイバ心線10aがそれぞれ挿入されて保持される。各先端面10cは、上述したように前端面12から露出しており、例えば前端面12と面一である。光コネクタ1Aにおける先端面10cは、光コネクタ1Bにおける先端面10cと光結合される(図1を参照)。つまり、光コネクタ1Aにおける先端面10cから出射した光は、光路Lを通過して光コネクタ1Bにおける先端面10cに入射する。同様に、光コネクタ1Bにおける先端面10cから出射した光は、光路Lを通過して光コネクタ1Aにおける先端面10cに入射する。
【0026】
一対のガイド孔17A,17Bは、光コネクタ1Aと光コネクタ1Bとが接続される際に、ガイドピン(不図示)と共に、対応する光ファイバ10同士のYZ平面に沿った面において位置出しを行うための構成である。一対のガイド孔17A,17Bは、前端面12から後端面13に向かって延在しており、ガイドピンが挿入されるように構成されている。例えば、光コネクタ1Aの一対のガイド孔17A,17Bのそれぞれにガイドピンの半分を挿入し、ガイドピンの残りの半分を光コネクタ1Bの一対のガイド孔17A,17Bのそれぞれに挿入することで、対応する光ファイバ10同士の位置出しが行われる。
【0027】
スペーサ20は、光コネクタ1Aの前端面12と光コネクタ1Bの前端面12との間隔を規定するための薄型部材である。スペーサ20は、第1主面21と、第1主面21とは反対側の第2主面22とを有する。第1主面21は、光コネクタ1Aの前端面12に接合されている。第2主面22は、光コネクタ1Aが光コネクタ1Bに接続される際に光コネクタ1Bの前端面12に当接する。スペーサ20は、例えばフィルム状の樹脂部材からなり、一例としてポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂製フィルムから形成することができる。スペーサ20の厚みT(図4を参照)は、例えば、5μm以上100μm以下であってもよいし、5μm以上25μm以下であってもよいし、一例として8μmである。ここで、接合とは、接着剤を用いた接合だけでなく、力学的な接着、化学的な接着、分散接着、静電接着又は溶着等であってもよい。スペーサ20を構成する樹脂がフェルール11を構成するベース樹脂と同じ種類(例えばPPS樹脂)である場合、溶着等により、スペーサ20をフェルール11の前端面12に容易に接合することができる。
【0028】
スペーサ20は、例えば、前端面12の外周に沿って延在(接合)しており、枠形状を呈している。スペーサ20の内側には、光ファイバ10の先端面10cから出射した光を通すための開口23が形成されている。スペーサ20は、Y方向に沿って延在する一対の長辺部24と、Z方向に沿って延在する一対の短辺部25とを有し、一対の長辺部24及び一対の短辺部25によって前端面12の中央領域R1を取り囲む(図3を参照)。開口23は、光コネクタ1Aの複数の光ファイバ10の先端面10cそれぞれと、光コネクタ1Bの複数の光ファイバ10の先端面10cそれぞれとの間に延びる複数本の光路Lを通過させる(図1及び図2参照)。開口23は、一対のガイド孔17A,17Bに挿抜されるガイドピンを通過させるように構成されていてもよい。このようなスペーサ20により、光コネクタ1Aの光ファイバ10と光コネクタ1Bの光ファイバ10とが非接触で光接続することができる。
【0029】
上述した構成を有する光コネクタ1Aは、図3及び図4に示すように、保護膜30Aを更に備えている。図3は、光コネクタ1Aの前端面12を示す正面図である。図4は、図3のVI-VI線に沿った光コネクタ1Aの断面構造の一例を示す図である。保護膜30Aは、光コネクタ1Aが保持する複数の光ファイバ10の各先端面10cとスペーサ20とを保護する膜である。保護膜30Aは、前端面12の中央領域R1上からスペーサ20の第2主面22上にかけて設けられている。具体的には、保護膜30Aは、Y方向に沿って一列に並んでいる複数の光ファイバ10の各先端面10cと、スペーサ20の一対の長辺部24(第1の長辺部、第2の長辺部)とを連続して覆うように形成されている。この構成により、保護膜30Aは、前端面12に直交する方向から見た場合に、前端面12とスペーサ20(長辺部24)の第2主面22との境界B1,B2を覆って境界B1,B2を保護する。保護膜30Aは、中央領域R1のうち一対のガイド孔17A,17Bが位置する領域は除くように設けられている。例えば、保護膜30Aは、前端面12の中央領域R1において一対のガイド孔17A,17Bの間に設けられている。これにより、一対のガイド孔17A,17Bへのガイドピンの挿入が阻害されない。
【0030】
図3及び図4に示される例では、保護膜30Aは、前端面12に直交する方向から見た場合に矩形状を呈している。保護膜30Aは、前端面12に直交する方向から見た場合に、前端面12においてフェルール11の底面15寄りの端部から上面16寄りの端部まで延在している。保護膜30Aは、Z方向から見た場合に一対のガイド孔17A,17Bの間に設けられたスペーサ20の一部分を、覆っている。
【0031】
前端面12の中央領域R1とスペーサ20の長辺部24の第2主面22との境界B1は、前端面12上の上面16寄りにおいてY方向に沿って延在する境界B11と、前端面12上の底面15寄りにおいてY方向に沿って延在する境界B12と、を有する。保護膜30Aは、前端面12に直交する方向から見た場合に境界B11,B12を覆っている。また、前端面12の外縁部とスペーサ20の長辺部24の第2主面22との境界B2は、前端面12上の上面16寄りにおいてY方向に沿って延在する境界B21と、前端面12上の底面15寄りにおいてY方向に沿って延在する境界B22と、を有する。保護膜30Aは、前端面12に直交する方向から見た場合に境界B21,B22を更に覆ってもよい。
【0032】
光コネクタ1Bは、保護膜30Aに対応する保護膜30Bを更に備えてもよい。図5は、光コネクタ1Bの前端面12を示す正面図である。図5に示すように、保護膜30Bは、光コネクタ1Bの前端面12に設けられている。保護膜30Bは、保護膜30Aと同様に、複数の光ファイバ10の各先端面10cを覆っている。保護膜30Bは、保護膜30Aと同様に、中央領域R1のうちガイド孔17A,17Bを除く領域に設けられている。図5に示される例では、保護膜30Bは、前端面12に直交する方向から見た場合に矩形状を呈している。保護膜30Bは、前端面12に直交する方向から見た場合に、前端面12においてフェルール11の底面15寄りの端部から上面16寄りの端部まで延在している。なお、光コネクタ1Bがスペーサ20を備えていないため、保護膜30Aと異なり、保護膜30Bは、スペーサ20を覆う構成を有していない。
【0033】
保護膜30A,30Bは、例えば、反射防止膜(ARコート)であり、一例としては酸化物多層膜が積層された蒸着膜である。保護膜30A,30Bは、光ファイバ10と空気との屈折率差で生じる反射を抑制することによって、光学損失を抑制する。保護膜30A,30Bは、屈折率の高い膜と、屈折率の低い膜とが交互に積層された膜である。保護膜30A,30Bの表面には、例えば、樹脂と比較して非常に硬い材料からなる膜が形成されている。例えば、保護膜30Aの表面には、石英からなる膜が形成されている。保護膜30A,30Bの硬度は、スペーサ20よりも高い。前端面12に直交する方向における保護膜30A,30Bの厚みは、例えばスペーサ20の厚みの1/4倍以下である。保護膜30A,30Bの厚みは、例えば1μm未満である。これにより、スペーサ20による間隔の規定を阻害しない。
【0034】
次に、図6を参照して、上述した構成を有する光コネクタ1Aの製造方法の一例について説明する。図6は、光コネクタ1Aの製造方法を説明するためのフローチャートである。光コネクタ1Aの製造方法では、まず、複数の光ファイバ10を準備する(ステップS01:光ファイバを準備する工程)。具体的には、光ファイバ心線10aと光ファイバ心線10aを覆う樹脂被覆10bとを有する複数の光ファイバ10を準備する。そして、各光ファイバ10において、先端面10cから所定の位置までの樹脂被覆10bを除去し、これにより、光ファイバ心線10aを露出させる。
【0035】
続いて、フェルール11を準備する(ステップS02:フェルールを準備する工程)。平坦な前端面12を有するフェルール11は、例えば、押し出し成形等によって製造したものを準備する。フェルール11は、一例として、MTフェルールである。
【0036】
続いて、複数の光ファイバ10をフェルール11内の所定箇所に固定する(ステップS03:光ファイバをフェルールに固定する工程)。具体的には、複数の光ファイバ10をフェルール11の導入孔18からフェルール11の内部に挿入し、更に、各光ファイバ10の光ファイバ心線10aを対応する保持孔19にそれぞれ挿入する。そして、各光ファイバ10の先端面10cが前端面12の中央領域R1から露出する位置まで、光ファイバ10を移動させる。先端面10cは、前端面12と面一になってもよい。その後、フェルール11の窓部16aから導入孔18に接着剤を注入する。この際、注入された接着剤はフェルール11の保持機構(不図示)によって保持されている光ファイバ10を覆う。その後、接着剤を硬化させることによって、複数の光ファイバ10をフェルール11に対して固定させる。
【0037】
続いて、前端面12にスペーサ20を貼り付ける(ステップS04:フェルール端面にスペーサを貼り付ける工程)。具体的には、前端面12の中央領域R1を取り囲むように前端面12に枠形状のスペーサ20を貼り付ける。より詳細には、スペーサ20が前端面12の中央領域R1を取り囲み、スペーサ20の開口23が中央領域R1に位置するように、スペーサ20を前端面12に貼り付ける。スペーサ20の貼り付けには、溶着等の各種の方法を用いることができる。これにより、スペーサ20の開口23内に光ファイバ10の各先端面10c及び一対のガイド孔17A及び17Bが位置した状態となる(図3も参照)。
【0038】
続いて、前端面12に保護膜30Aを形成する(ステップS05:フェルール端面に保護膜を形成する工程)。具体的には、前端面12の中央領域R1及びスペーサ20の一対の長辺部24を覆うように、蒸着によって、保護膜30Aを形成する。より詳細には、保護膜30Aが複数の光ファイバ10の各先端面10cを覆うとともに、Z方向から見た場合に前端面12とスペーサ20の長辺部24との境界B1,B2を覆うように、保護膜30Aを蒸着によって形成する(図3も参照)。この蒸着の際には、保護膜30Aの短辺部25及びガイド孔17A,17Bに対応する領域を覆うマスクを光コネクタ1Aの前端面12に被せて、蒸着処理を行う。これにより、ガイド孔17A,17B内への蒸着材料の侵入が防止される。なお、保護膜30Aが多層膜から構成される場合、このような蒸着処理を繰り返す。以上により光コネクタ1Aが製造される。なお、光コネクタ1Bの製造方法は、スペーサ20を貼り付ける工程を除いて、光コネクタ1Aと同様であるため、説明を省略する。
【0039】
以下、本実施形態に係る光コネクタ1A、光接続構造100、及び光コネクタ1Aの製造方法の作用効果について説明する。従来の光コネクタでは、光コネクタを他の光コネクタに接続する際、接続に先立って、布等のクリーナをフェルール端面に強く押し当てた状態で滑らせて、フェルール端面から露出する光ファイバの先端面を清掃する。これにより、光ファイバの先端面に異物が付着することで引き起こされる光接続損失を防止できる。しかしながら、従来の光コネクタは、薄いフィルムからなる枠状スペーサをフェルール端面に接合した構成であり、その内側の狭い領域で光ファイバの先端面を清掃することになる。このため、光ファイバの先端面を清掃する際、光ファイバの先端面が露出する領域の周りに位置するスペーサにクリーナが接触し、スペーサをフェルール端面から剥離させることがある。
【0040】
例えば、光ファイバの先端面を清掃する際に用いるクリーナは、一般的に乾式である。この場合、光ファイバの先端面を清掃する場合、光コネクタの前端面にクリーナが押し当てられると共に、光コネクタの前端面に対してクリーナがスライドする。これにより、光ファイバの先端面上の異物が除去される。ここで、光ファイバの先端面上の異物を確実に除去するためには、光ファイバの先端面を含む光コネクタの前端面に一定以上の力でクリーナを押し当ててスライドさせる必要がある。したがって、光コネクタの前端面に平行な方向に力がかかり、光コネクタの前端面とクリーナとの間に摩擦が生じる。その結果、フェルールの前端面とスペーサの表面との境界に布が引っかかることにより、スペーサがフェルールの前端面から剥離するおそれがある。また、フェルールの前端面上のスペーサとクリーナとが接触するため、フィルムに傷が発生するおそれがある。
【0041】
これに対して、本実施形態に係る光コネクタ1Aでは、保護膜30Aは、前端面12に直交する方向から見た場合に、前端面12とスペーサ20の第2主面22との境界B1の一部を少なくとも覆うように設けられている。これにより、光ファイバ10の先端面10cを清掃する際に、前端面12に押し当てられるクリーナが前端面12の中央領域R1とスペーサ20の表面との境界B1に接触することを抑制することが可能となる。その結果、前端面12上に設けられたスペーサ20の前端面12からの剥離を抑制することが可能となる。また、スペーサ20が保護膜30Aによって保護されるので、前端面12に押し当てられるクリーナがスペーサ20の表面に接触することを抑制することができる。その結果、スペーサ20の表面における傷の発生を抑制することも可能となる。
【0042】
例えば、光ファイバ10の先端面10cを清掃する際、前端面12がクリーナに押し込まれると、クリーナの布が巻き取られることによって前端面12に対してZ方向に沿って一定の向きに布がスライドする。この布は、一対のガイド孔17A,17Bの間において、スペーサ20の開口23の内側に入り込みつつ一定の向きにスライドする。このとき、前端面12に押し当てられるクリーナがスペーサ20と前端面12との境界B1に接触することが保護膜30Aによって抑制される。例えば、Z方向において底面15から上面16に向かって布がスライドする場合、前端面12とスペーサ20の第2主面22との境界B11に布が接触することが保護膜30Aによって抑制される。また、例えば、上記と反対向きに布がスライドする場合、前端面12とスペーサ20の第2主面22との境界B12に布が接触することが保護膜30Aによって抑制される。上記いずれの場合においても、前端面12上に設けられたスペーサ20の内縁部に布等が接触することが抑制されるので、スペーサ20がめくれ上がることが抑制される。その結果、スペーサ20の前端面12からの剥離を抑制することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態に係る光コネクタ1Aは、前端面12に設けられ、ガイドピンが挿入されるように構成された一対のガイド孔17A,17Bの少なくともいずれかを備える。光コネクタ1Aでは、保護膜30Aは、中央領域R1のうち一対のガイド孔17A,17Bを除く領域に設けられている。この場合、前端面12の全体及びスペーサ20の第2主面22の全体に保護膜30Aを設ける場合と比較して保護膜30Aをより効率良く形成しつつ、スペーサ20の前端面12からの剥離を抑制することができる。
【0044】
ここで、前端面12の全体及びスペーサ20の第2主面22の全体に保護膜30Aを蒸着によって形成する場合、一対のガイド孔17A,17Bに蒸着物が入ってしまう。これにより、一対のガイド孔17A,17Bにガイドピンを挿抜する際の抜き力が増加してしまう。図7は、保護膜30Aの形成前の上記抜き力を示すグラフG1と、保護膜30Aの形成後の上記抜き力を示すグラフG2とを示すグラフである。図7において、横軸はサンプル番号を示し、縦軸は抜き力(N)を示している。図7に示されるように、前端面12の全体及びスペーサ20の第2主面22の全体に保護膜30Aを蒸着によって形成すると、一対のガイド孔17A,17Bにガイドピンを挿抜する際の抜き力が増加する。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る光コネクタ1Aでは、保護膜30Aは、一対のガイド孔17A,17Bを除く領域に設けられる。これにより、例えば蒸着によって保護膜30Aが形成される場合でも、蒸着物がガイド孔に入ることを抑制することができる。その結果、ガイドピンをガイド孔から抜く際の力が増加することを抑制することができる。以上のように、保護膜30Aが形成される範囲を一部制限することによって、前端面12上の光ファイバ10の先端面10cを清掃する際にクリーナによるスペーサ20の損傷を抑制しつつ、一対のガイド孔17A,17Bにガイドピンを挿抜する際の抜き力の増加を抑制することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態に係る光コネクタ1Aは、ガイドピンが挿入される一対のガイド孔17A,17Bを備える。保護膜30Aは、前端面12において一対のガイド孔17A,17Bの間に設けられている。この場合、前端面12の全体及びスペーサ20の第2主面22の全体に保護膜30Aを設ける場合と比較して保護膜30Aをより効率良く形成することができる。さらに、クリーナは、例えば一対のガイド孔17A,17B間のみを清掃する構造であるので、保護膜30Aを前端面12の全面ではなく一対のガイド孔17A,17Bの間のみに蒸着した場合であっても、スペーサ20の前端面12からの剥離を抑制すると共に、スペーサ20の第2主面22に傷が生じることを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る光コネクタ1Aでは、保護膜30Aは、反射防止膜である。この場合、光ファイバ10の先端面10cにおいて発生するフレネル損失が保護膜30Aによって抑制される。その結果、光コネクタ1Aを光コネクタ1Bに接続した際の接続損失を低減することができる。
【0048】
また、本実施形態に係る光コネクタ1Aでは、保護膜30Aの硬度は、スペーサ20の硬度よりも高い。この場合、前端面12上に設けられたスペーサ20における傷の発生を一層抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態に係る光コネクタ1Aでは、保護膜30Aの厚みは、スペーサ20の厚みの1/4倍以下であってもよい。この場合、前端面12と光コネクタ1Bとの間隔をスペーサ20によってより確実に規定することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る光コネクタ1Aでは、スペーサ20は、互いに対向する一対の長辺部24を含む枠形状を有する。複数の光ファイバ10の各先端面10cは、一対の長辺部24の間であって前端面12の中央領域R1において露出し、保護膜30Aは、一対の長辺部24、及び複数の光ファイバ10の各先端面10cを覆うように設けられている。この場合、保護膜30Aは、前端面12の中央領域R1と長辺部24との境界B1を覆うように設けられる。これにより、前端面12上に設けられたスペーサ20の前端面12からの剥離をより確実に抑制することが可能となる。
【0051】
本実施形態に係る光コネクタ1Aは、光ファイバ10を準備する工程と、光ファイバ10を保持するように構成された保持孔19と保持孔19の一端が露出する前端面12とを有するフェルール11を準備する工程と、保持孔19に挿入された光ファイバ10の先端面10cが前端面12において露出するように光ファイバ10をフェルール11に固定する工程と、前端面12において光ファイバ10の先端面10cが露出する中央領域R1を取り囲むように前端面12にスペーサ20を貼り付ける工程と、スペーサ20を保護する保護膜30Aを蒸着によって形成する工程と、を備える。保護膜30Aを形成する工程では、光ファイバ10の先端面10cを覆うとともに、前端面12に直交する方向から見た場合に前端面12の中央領域R1とスペーサ20の表面との境界B1の一部を少なくとも覆うように、保護膜30Aを形成する。これにより、前端面12上に設けられたスペーサ20の前端面12からの剥離を抑制することができる光コネクタ1Aを製造することができる。
【0052】
本実施形態に係る光接続構造100は、上記光コネクタ1Aと、光コネクタ1Aと接続される光コネクタ1Bと、を備える。この光接続構造100では、光コネクタ1Aと光コネクタ1Bとは、スペーサ20を間に挟んで対向するように接続される。この光接続構造100によれば、前端面12からのスペーサ20の剥離を抑制できるため、光コネクタ1Aと光コネクタ1Bとの光接続における距離をスペーサ20で確実に規定することができる。これにより、光接続構造100によれば、光コネクタ1Aと光コネクタ1Bとの光接続における接続損失を低減することができる。
【0053】
以上、本開示に係る光コネクタ、光コネクタの製造方法、及び光接続構造について詳細に説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態や変形例に適用することが可能である。
【0054】
上記実施形態では、保護膜30Aは、Z方向から見た場合に、一対のガイド孔17A,17Bの間に設けられていたが、これに限定されない。保護膜30Aは、前端面12とスペーサ20の第2主面22との境界B11及び境界B12のいずれかを覆っていればよい。また、保護膜30Aは、一対のガイド孔17A,17Bを除く領域に設けられていればよい。例えば、図8に示されるように、一対のガイド孔17A,17Bと、スペーサ20の短辺部25とを除く領域に保護膜30Aが形成されてもよい。この場合、保護膜30Aの短辺部25及びガイド孔17A,17Bに対応する領域を覆うマスクを光コネクタ1Aの前端面12に被せて、保護膜30Aを蒸着によって形成してもよい。また、一対のガイド孔17A,17Bにガイドピン又は該ガイドピンと同じ直径のピンが挿入された状態で、保護膜30Aを蒸着によって形成してもよい。この場合、一対のガイド孔17A,17Bに挿入したピンは、前端面12とほぼ面一(前端面12と同程度の高さ)となっていてもよい。これにより、前端面12から突出しすぎたピンによって蒸着物が遮られることが抑制される。
【0055】
上記実施形態では、保護膜30Aは、前端面12に直交する方向から見た場合に、前端面12においてフェルール11の底面15寄りの端部から上面16寄りの端部まで延在しているが、これに限定されない。保護膜30Aは、前端面12とスペーサ20の第2主面22との境界B11及び境界B12のいずれかを覆っていればよい。例えば、保護膜30Aは、前端面12とスペーサ20の第2主面22との境界B21及び境界B22を覆っていなくてもよい。
【0056】
上記実施形態では、一対のガイド孔17A,17Bが設けられていたが、ガイド孔17A又はガイド孔17Bのみが前端面12に設けられてもよいし、ガイド孔を有しないフェルールに本開示を適用してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1A…光コネクタ(第1光コネクタ)
1B…光コネクタ(第2光コネクタ)
10…光ファイバ
10a…光ファイバ心線
10b…樹脂被覆
10c…先端面
11…フェルール
12…前端面(フェルール端面)
13…後端面
14…側面
15…底面
16…上面
16a…窓部
17A…ガイド孔
17B…ガイド孔
18…導入孔
19…保持孔
20…スペーサ
21…第1主面
22…第2主面
23…開口
24…長辺部(第1の長辺部、第2の長辺部)
25…短辺部
30A…保護膜
30B…保護膜
100…光接続構造
B1…境界
B2…境界
B11…境界
B12…境界
B21…境界
B22…境界
G1…グラフ
G2…グラフ
L…光路
R1…中央領域
θ…傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8