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特開2024-66841圧力センサおよび圧力センサの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066841
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】圧力センサおよび圧力センサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/14 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
G01L19/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176587
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博文
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055GG22
2F055GG25
(57)【要約】
【解決手段】圧力検知部と、予め定められた第1面および第2面を有し、前記第1面側に前記圧力検知部を収容する金属筐体部と、前記第2面に設けられた絶縁性の電着被膜と、前記圧力検知部と電気的に接続され、前記金属筐体部の貫通孔を貫通して、前記金属筐体部の外部に延伸する金属導電部と、を備える、圧力センサを提供する。予め定められた第1面および第2面を有する金属筐体部の前記第1面に圧力検知部を設ける段階と、前記圧力検知部と電気的に接続され、前記金属筐体部の貫通孔を貫通して、前記金属筐体部の外部に延伸する金属導電部を設ける段階と、電着処理により前記金属筐体部の前記第2面に絶縁性の電着被膜を設ける段階と、を備える、圧力センサの製造方法を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力検知部と、
予め定められた第1面および第2面を有し、前記第1面側に前記圧力検知部を収容する金属筐体部と、
前記第2面に設けられた絶縁性の電着被膜と、
前記圧力検知部と電気的に接続され、前記金属筐体部の貫通孔を貫通して、前記金属筐体部の外部に延伸する金属導電部と、
を備える、圧力センサ。
【請求項2】
前記金属筐体部の前記貫通孔に充填された絶縁性の充填部を備え、
前記金属導電部は、前記充填部を貫通する、
請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項3】
前記電着被膜は、前記充填部上には形成されない、請求項2に記載の圧力センサ。
【請求項4】
前記金属筐体部は、前記圧力検知部が設けられる底部と、前記底部の外周と連結した段差部と、前記段差部の外周と連結した縁部とを有し、
前記電着被膜は、前記底部、前記段差部および前記縁部の前記第2面を覆う、
請求項1に記載の圧力センサ。
【請求項5】
前記電着被膜は、前記金属導電部と離間して設けられる、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項6】
前記電着被膜の厚さは、20μm以上、80μm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項7】
前記電着被膜の材料は、エポキシ樹脂またはポリアミドの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項8】
前記電着被膜の材料は、イオン化可能である、請求項7に記載の圧力センサ。
【請求項9】
前記金属筐体部の前記第1面側に設けられるダイアフラム部と、
前記金属筐体部と前記ダイアフラム部とによって封止された領域に充填されるオイルからなるオイル部と、
を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項10】
前記金属筐体部の前記第2面側に設けられ、前記金属導電部を前記圧力センサの外部と電気的に接続するためのコネクタを収容するハウジングと、
前記電着被膜と前記ハウジングとを接着する接着部と、
を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧力センサ。
【請求項11】
前記接着部は、前記第2面側において、前記貫通孔の周囲に設けられる、請求項10に記載の圧力センサ。
【請求項12】
前記接着部は、エポキシ樹脂を含む、請求項10に記載の圧力センサ。
【請求項13】
前記接着部の材料は、前記電着被膜の材料と組成が異なる、請求項10に記載の圧力センサ。
【請求項14】
前記電着被膜の厚みは、前記接着部の厚みよりも薄い、請求項10に記載の圧力センサ。
【請求項15】
前記電着被膜は、前記接着部と接着した接着領域と、前記接着部と接着していない非接着領域とを有する、請求項11に記載の圧力センサ。
【請求項16】
予め定められた第1面および第2面を有する金属筐体部の前記第1面に圧力検知部を設ける段階と、
前記圧力検知部と電気的に接続され、前記金属筐体部の貫通孔を貫通して、前記金属筐体部の外部に延伸する金属導電部を設ける段階と、
電着処理により前記金属筐体部の前記第2面に絶縁性の電着被膜を設ける段階と、
を備える、圧力センサの製造方法。
【請求項17】
電着処理により前記金属筐体部の前記第2面に絶縁性の電着被膜を設ける前記段階の前に、前記金属筐体部の前記貫通孔を充填する絶縁性の充填部を設ける段階を備え、
前記金属導電部は、前記充填部を貫通し、
前記電着被膜は、前記充填部上には形成されない、
請求項16に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項18】
前記金属筐体部の前記貫通孔を充填する絶縁性の充填部を設ける前記段階の後に、電着処理により前記金属筐体部の前記第2面に絶縁性の電着被膜を設ける前記段階の前に、
前記金属筐体部の前記第1面側にダイアフラム部を設ける段階と、
前記金属筐体部と前記ダイアフラム部とによって封止された領域にオイルを充填する段階と、
前記オイルを充填するための注入孔を封止する段階と、
を備える、請求項17に記載の圧力センサの製造方法。
【請求項19】
前記金属導電部を前記圧力センサの外部と電気的に接続するためのコネクタを収容するハウジングを、接着部をアニール処理することによって前記金属筐体部の前記第2面側に接着する段階を備え、
電着処理により前記金属筐体部の前記第2面に絶縁性の電着被膜を設ける前記段階は、前記電着被膜をアニール処理する段階を含み、
前記電着被膜のアニール処理温度は、前記接着部のアニール処理温度より高い、
請求項16から18のいずれか一項に記載の圧力センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力センサおよび圧力センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「半導体型圧力検出装置を収容した液封入式の圧力センサ」が記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2016-191656号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、圧力検知部と、予め定められた第1面および第2面を有し、前記第1面側に前記圧力検知部を収容する金属筐体部と、前記第2面に設けられた絶縁性の電着被膜と、前記圧力検知部と電気的に接続され、前記金属筐体部の貫通孔を貫通して、前記金属筐体部の外部に延伸する金属導電部と、を備える、圧力センサを提供する。
【0004】
前記圧力センサにおいて、前記金属筐体部の前記貫通孔に充填された絶縁性の充填部を備えてよい。前記金属導電部は、前記充填部を貫通してよい。
【0005】
上記いずれかの圧力センサにおいて、前記電着被膜は、前記充填部上には形成されなくてよい。
【0006】
上記いずれかの圧力センサにおいて、前記金属筐体部は、前記圧力検知部が設けられる底部と、前記底部の外周と連結した段差部と、前記段差部の外周と連結した縁部とを有してよい。前記電着被膜は、前記底部、前記段差部および前記縁部の前記第2面を覆ってよい。
【0007】
上記いずれかの圧力センサにおいて、前記電着被膜は、前記金属導電部と離間して設けられてよい。
【0008】
上記いずれかの圧力センサにおいて、前記電着被膜の厚さは、20μm以上、80μm以下であってよい。
【0009】
上記いずれかの圧力センサにおいて、前記電着被膜の材料は、エポキシ樹脂またはポリアミドの少なくとも1つを含んでよい。
【0010】
上記いずれかの圧力センサにおいて、前記電着被膜の材料は、イオン化可能であってよい。
【0011】
上記いずれかの圧力センサは、前記金属筐体部の前記第1面側に設けられるダイアフラム部と、前記金属筐体部と前記ダイアフラム部とによって封止された領域に充填されるオイルからなるオイル部と、を備えてよい。
【0012】
上記いずれかの圧力センサは、前記金属筐体部の前記第2面側に設けられ、前記金属導電部を前記圧力センサの外部と電気的に接続するためのコネクタを収容するハウジングと、前記電着被膜と前記ハウジングとを接着する接着部と、を備えてよい。
【0013】
上記いずれかの圧力センサにおいて、前記接着部は、前記第2面側において、前記貫通孔の周囲に設けられてよい。
【0014】
上記いずれかの圧力センサにおいて、前記接着部は、エポキシ樹脂を含んでよい。
【0015】
上記いずれかの圧力センサにおいて、前記接着部の材料は、前記電着被膜の材料と組成が異なってよい。
【0016】
上記いずれかの圧力センサにおいて、前記電着被膜の厚みは、前記接着部の厚みよりも薄くてよい。
【0017】
前記電着被膜は、前記接着部と接着した接着領域と、前記接着部と接着していない非接着領域とを有してよい。
【0018】
本発明の第2の態様においては、予め定められた第1面および第2面を有する金属筐体部の前記第1面に圧力検知部を設ける段階と、前記圧力検知部と電気的に接続され、前記金属筐体部の貫通孔を貫通して、前記金属筐体部の外部に延伸する金属導電部を設ける段階と、電着処理により前記金属筐体部の前記第2面に絶縁性の電着被膜を設ける段階と、を備える、圧力センサの製造方法を提供する。
【0019】
前記圧力センサの製造方法において、電着処理により前記金属筐体部の前記第2面に絶縁性の電着被膜を設ける前記段階の前に、前記金属筐体部の前記貫通孔を充填する絶縁性の充填部を設ける段階を備えてよい。前記金属導電部は、前記充填部を貫通してよい。前記電着被膜は、前記充填部上には形成されなくてよい。
【0020】
上記いずれかの圧力センサの製造方法は、前記金属筐体部の前記貫通孔を充填する絶縁性の充填部を設ける前記段階の後に、電着処理により前記金属筐体部の前記第2面に絶縁性の電着被膜を設ける前記段階の前に、前記金属筐体部の前記第1面側にダイアフラム部を設ける段階と、前記金属筐体部と前記ダイアフラム部とによって封止された領域にオイルを充填する段階と、前記オイルを充填するための注入孔を封止する段階と、を備えてよい。
【0021】
上記いずれかの圧力センサの製造方法は、前記金属導電部を前記圧力センサの外部と電気的に接続するためのコネクタを収容するハウジングを、接着部をアニール処理することによって前記金属筐体部の前記第2面側に接着する段階を備えてよい。電着処理により前記金属筐体部の前記第2面に絶縁性の電着被膜を設ける前記段階は、前記電着被膜をアニール処理する段階を含んでよい。前記電着被膜のアニール処理温度は、前記接着部のアニール処理温度より高くてよい。
【0022】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】圧力センサ100の斜視図の一例を示す。
図2図1で示した圧力センサ100のA-A'断面図の一例を示す。
図3】比較例の圧力センサ500のA-A'断面図の一例を示す。
図4A】圧力センサ100の変形例を示す。
図4B図4Aで示した圧力センサ100の第2面視の一例を示す。
図5A図1で示した圧力センサ100の製造プロセスのB-B'断面の一例を示す。
図5B図1で示した圧力センサ100の製造プロセスのB-B'断面の一例を示す。
図5C図1で示した圧力センサ100の製造プロセスのB-B'断面の一例を示す。
図5D図1で示した圧力センサ100の製造プロセスのB-B'断面の一例を示す。
図5E図1で示した圧力センサ100の製造プロセスのB-B'断面の一例を示す。
図5F図1で示した圧力センサ100の製造プロセスのB-B'断面の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、圧力センサ100の斜視図の一例を示す。圧力センサ100は、圧力検知部10と、金属筐体部20と、電着被膜30と、金属導電部40と、充填部42と、オイル注入孔70とを備える。
【0026】
圧力検知部10は、圧力センサ100の受圧空間内の圧力を検知する。圧力検知部10は、半導体基板を用いた圧力センサチップであってよいが、これに限定されない。圧力検知部10は、ダイアフラム部50の変形を通してオイル部60が圧縮されることによって伝達された圧力を検知してよい。ダイアフラム部50およびオイル部60については後述する。ダイアフラム部50およびオイル部60は、図1には図示されていない。圧力検知部10は、検知した圧力を電気信号に変換してよい。
【0027】
金属筐体部20は、予め定められた第1面21および第2面22を有し、第1面21側に圧力検知部10を収容する。図1の例においては、Z軸正方向が第1面21側であり、Z軸負方向が第2面22側である。金属筐体部20は、金属筐体部20の第1面21側の窪みの内部に圧力検知部10を収容してよい。
【0028】
金属筐体部20は、圧力検知部10が設けられる底部23と、底部23の外周と連結した段差部24と、段差部24の外周と連結した縁部26とを有する。金属筐体部20の第1面21側において、底部23と段差部24とによって取り囲まれる領域が、金属筐体部20の第1面21側の窪みを形成してよい。
【0029】
電着被膜30は、金属筐体部20の第2面22に設けられる。電着被膜30は、底部23、段差部24および縁部26の第2面22を覆ってよい。電着被膜30の材料は、絶縁性の材料である。一例において、電着被膜30の材料は、エポキシ樹脂またはポリアミドの少なくとも1つを含んでよい。電着被膜30の材料は、イオン化可能であってよい。
【0030】
電着被膜30は、電着処理により金属筐体部20の第2面22に設けられてよい。電着被膜30の材料がイオン化可能であることで、電着処理によって電着被膜30を設けることができる。
【0031】
金属導電部40は、圧力検知部10と電気的に接続され、金属筐体部20の貫通孔44を貫通して、金属筐体部20の外部に延伸して設けられる。本例においては、7本の金属導電部40が設けられているが、金属導電部40の数は、これに限定されない。金属導電部40の数は、3本以上6本以下であってよく、8本以上であってよい。
【0032】
金属導電部40は、圧力検知部10によって変換された電気信号を、圧力センサ100の外部に送信するために用いられてよい。金属導電部40は、圧力センサ100の外部に設けられた信号取り出し回路に電気的に接続されてよい。
【0033】
充填部42は、金属筐体部20の貫通孔44に充填されて設けられる。充填部42の材料は、絶縁性の材料であってよい。一例において、充填部42の材料は、ガラスであってよい。
【0034】
電着被膜30は、充填部42上には形成されなくてよい。電着被膜30が電着処理によって設けられる場合、充填部42は金属筐体部20と絶縁されているため、電着被膜30は、充填部42上に形成されなくてよい。このように、電着被膜30が電着処理によって設けられる場合、選択的に電着被膜30を形成することができる。
【0035】
電着被膜30は、金属導電部40と離間して設けられてよい。電着被膜30が電着処理によって設けられる場合、金属導電部40が金属筐体部20と絶縁されているため、電着被膜30は、金属導電部40に形成されなくてよい。このように、電着被膜30が電着処理によって設けられる場合、選択的に電着被膜30を形成することができる。
【0036】
オイル注入孔70は、後述するオイル部60を形成するオイルを注入するために設けられる孔である。オイル注入孔70は、金属筐体部20の第2面22側において、封止球72によって封止されてよい。封止球72については、後述する。封止球72は、図1には図示されていない。
【0037】
圧力センサ100は、作動流体による流体圧力を検出し、検出した圧力に応じた電気信号を出力し、外部の装置に送信してよい。一例として、圧力センサ100は、油圧のような強い圧力が生じる作動流体に対して用いられる。圧力センサ100は、車両に搭載される圧力センサであってよい。
【0038】
本例の圧力センサ100においては、金属筐体部20の第2面22に電着被膜30を設けることで、金属筐体部20と金属導電部40との間の絶縁性を確保することができる。金属導電部40は、圧力検知部10からの電気信号を圧力センサ100の外部に取り出すため、金属筐体部20の第2面22側において、金属表面が露出した部分を有する。圧力センサ100の製造工程において金属コンタミネーションが発生し、または、圧力センサ100中の金属バリが脱落した場合において、金属コンタミネーションまたは金属バリなどの導電性異物によって、金属筐体部20の第2面22と金属導電部40が橋渡しされると、短絡不具合を生じるおそれがある。本例の圧力センサ100においては、金属筐体部20の第2面22に電着被膜30を設けることで、金属筐体部20と金属導電部40との間の絶縁性を確保することができ、導電性異物による短絡不具合を防止することができる。
【0039】
図2は、図1で示した圧力センサ100のA-A'断面図の一例を示す。圧力センサ100は、ダイアフラム部50と、オイル部60とを備える。
【0040】
ダイアフラム部50は、金属筐体部20の第1面21側に設けられる。ダイアフラム部50は、縁部26の第1面21側に設けられてよい。ダイアフラム部50の材料は、金属等の導電性の材料であってよい。ダイアフラム部50は、縁部26と溶接によって接続されてよい。ダイアフラム部50は、作動流体の圧力によって変形し、オイル部60を圧縮してよい。
【0041】
オイル部60は、金属筐体部20とダイアフラム部50とによって封止された領域に充填されるオイルからなる。オイル部60は、図1に示した注入孔70から、金属筐体部20とダイアフラム部50とによって封止された領域に注入されてよい。オイル注入孔70は、オイル部60が注入された後、金属筐体部20の第2面22側において、封止球72によって封止されてよい。封止球72については、後述する。封止球72は、図2には図示されていない。
【0042】
オイル部60は、ダイアフラム部50の変形に応じて圧縮され、圧力検知部10に圧力を伝達してよい。圧力検知部10は、検知した圧力を電気信号に変換してよい。
【0043】
金属導電部40は、充填部42を貫通してよい。金属導電部40が充填部42を貫通するとは、充填部42を形成してから金属導電部40を設ける順序で製造されたものに限定されない。金属導電部40を設けた後に、または、金属導電部40を設けるのと同時に、充填部42を形成したものも、金属導電部40が充填部42を貫通するものに含まれる。金属導電部40は、絶縁性の充填部42によって、金属筐体部20と絶縁されていてよい。金属導電部40が、絶縁性の充填部42によって、金属筐体部20と絶縁されることによって、圧力検知部10から取り出された電気信号が、金属筐体部20に導電することを防止することができる。
【0044】
図2に示されるように、電着被膜30は、金属筐体部20の第2面22の全面に設けられてよく、底部23、段差部24および縁部26の第2面22を覆ってよい。一例として、電着被膜30が電着処理によって設けられる場合、金属筐体部20は導通しているため、電着被膜30は、金属筐体部20の第2面22の全面に形成される。この場合、電着被膜30は、充填部42上には形成されなくてよく、電着被膜30は、金属導電部40と離間して設けられてよい。
【0045】
電着被膜30の厚さは、20μm以上、80μm以下であってよい。電着被膜30が電着処理によって設けられる場合、電界によって金属筐体部20の第2面22にムラのない均一な電着被膜30を形成することができる。金属筐体部20に電圧を印加することで、電着液中の電着材料が移動して、金属筐体部20の表面に電着被膜30が形成される。電圧印加による誘引によって、電着被膜30が成長することから、金属筐体部20の表面の細かい部分にまで電着材料が入り込むことができ、強靭な電着被膜30を形成することができる。
【0046】
図3は、比較例の圧力センサ500のA-A'断面図の一例を示す。比較例の圧力センサには、電着被膜30が設けられていない。比較例の圧力センサにおいては、金属筐体部20の第2面22に電着被膜30が設けられていないため、金属筐体部20と金属導電部40との間の絶縁性を確保することができず、導電性異物による短絡不具合を生じるおそれがある。
【0047】
図4Aは、圧力センサ100の変形例を示す。圧力センサ100は、接着部80と、ハウジング90とを備える。
【0048】
ハウジング90は、金属筐体部20の第2面22側に設けられ、金属導電部40を圧力センサ100の外部と電気的に接続するためのコネクタ(不図示)を収容する。ハウジング90の材料は樹脂であってよいが、これに限定されない。ハウジング90には、リードフレームがインサート成型されていてよい。リードフレームがインサート成型されたハウジング90を設けることで、ハーネス等の外部電線との導通を確保することができる。ハウジング90と金属筐体部20の接続は、接続部に金属板を巻き付けて固定する圧着であってよく、露出した金属部同士を溶かして接続する溶着であってよく、接着剤を用いた接着であってよい。本例のハウジング90と金属筐体部20とは、接着により接続されている。ハウジング90と金属筐体部20とを接着剤を用いて接着することにより、圧力センサ100の内部構造のレイアウトの自由度を高めることができる。また、圧着と比較して、パーツ数を低減することができる。
【0049】
接着部80は、電着被膜30とハウジング90とを接着する。接着部80は、エポキシ樹脂を含んでよい。接着部80の材料は、電着被膜30の材料と組成が異なってよい。電着被膜30の厚みは、接着部80の厚みよりも薄くてよい。
【0050】
図4Bは、図4Aで示した圧力センサ100の第2面視の一例を示す。ここで、第2面視とは、金属筐体部20の第2面22側から垂直に視たときの図をいう。図4Bでは、他の部材が視えなくなるため、ハウジング90は省略してある。
【0051】
図4Bに示されるように、接着部80は、第2面22側において、貫通孔44および封止球72の周囲に設けられてよい。封止球72については、後述する。接着部80は、第2面22側において、段差部24に沿って設けられてよい。
【0052】
電着被膜30は、接着部80と接着した接着領域32と、接着部と接着していない非接着領域34とを有してよい。接着領域32は第2面視において、接着部80の裏面に設けられており、第2面視では視えない。そのため、図4Bにおいては、接着領域32を示す引出線は破線で示されている。
【0053】
本例の圧力センサ100においては、金属筐体部20の第2面22に電着被膜30を設けることで、金属筐体部20と接着部80との密着力を向上することができる。結果として、金属筐体部20とハウジング90との密着を強化することができる。また、アンカー効果による密着力の強化を図るために、金属筐体部20の第2面22をレーザ等により加工し、表面を粗化する表面租化処理を省略することができる。表面粗化処理を省略することにより、圧力センサ100の製造工程の数を低減することができる。さらに、表面粗化処理を省略することにより、製造工程における金属コンタミネーションの発生を抑制することができ、導電性異物による短絡不具合を防止することができる。
【0054】
図5Aから図5Fは、図1で示した圧力センサ100の製造プロセスのB-B'断面の一例を示す。本例では、圧力センサ100の製造プロセスの一例を示しており、これに限定されない。
【0055】
図5Aでは、金属筐体部20の第1面21に圧力検知部10を設ける。圧力検知部10は、底部23の第1面21に設けられてよい。圧力検知部10は、樹脂等の接着剤によって底部23の第1面21と接着されてよい。貫通孔44および/または注入孔70は、圧力検知部10を設ける前に形成されてよく、圧力検知部10を設けた後に形成されてよい。本例の貫通孔44および注入孔70は、圧力検知部10を設ける前に形成されている。
【0056】
図5Bでは、金属筐体部20の貫通孔44を貫通して、金属筐体部20の外部に延伸する金属導電部40を設ける。また、金属筐体部20の貫通孔44を充填する絶縁性の充填部42を設ける。金属導電部40は、充填部42を貫通してよい。金属筐体部20の貫通孔44を貫通して、金属筐体部20の外部に延伸する金属導電部40を設ける段階と、金属筐体部20の貫通孔44を充填する絶縁性の充填部42を設ける段階とは、同時に行われてよく、いずれかの段階が他方の段階よりも前に行われてよい。一例として、金属導電部40にビーズ状のガラス材料を巻き付けた状態で貫通孔44に挿入し、加熱処理によってガラス材料を溶解することによって貫通孔44を充填し、金属導電部40と充填部42とを同時に設けることができる。
【0057】
金属導電部40を設けた後で、金属導電部40と圧力検知部10とを電気的に接続してよい。金属導電部40と圧力検知部10とを電気的に接続する方法は、特に限定されない。一例として、金属導電部40と圧力検知部10とは、ワイヤボンディングによって電気的に接続される。
【0058】
図5Cでは、金属筐体部20の第1面21側にダイアフラム部50を設け、金属筐体部20とダイアフラム部50とによって封止された領域にオイルを充填してオイル部60を形成し、オイルを充填するための注入孔70を封止球72で封止する。ダイアフラム部50を設け、オイル部60を形成し、注入孔70を封止球72で封止する方法は、特に限定されない。封止球72の材料は金属であってよく、封止球72は、金属筐体部20と溶接によって接合されてよい。そのため、封止球72は、金属筐体部20と導通してよい。
【0059】
図5Dでは、電着処理により金属筐体部20の第2面22に絶縁性の電着被膜30を設ける。電着液36と金属筐体部20との間に電圧を印加することによって、電着被膜30が形成されてよい。
【0060】
金属筐体部20の貫通孔44を充填する絶縁性の充填部42を設ける段階は、電着処理により金属筐体部20の第2面22に絶縁性の電着被膜30を設ける段階の前に行われてよい。また、金属筐体部20の第1面21側にダイアフラム部50を設け、金属筐体部20とダイアフラム部50とによって封止された領域にオイルを充填してオイル部60を形成し、オイルを充填するための注入孔70を封止球72で封止する段階は、金属筐体部20の貫通孔44を充填する絶縁性の充填部42を設ける段階の後であって、電着処理により金属筐体部20の第2面22に絶縁性の電着被膜30を設ける前記段階の前に行われてよい。
【0061】
電着処理においては、電圧が印加された部分に、電着被膜30が形成されてよい。したがって、電着被膜30は、金属筐体部20の第2面22の全面に設けられてよく、金属筐体部20と導通した封止球72に設けられてよい。一方、金属筐体部20と絶縁されている金属導電部40および充填部42には、電着被膜30は形成されなくてよい。
【0062】
電着処理により金属筐体部20の第2面22に絶縁性の電着被膜30を設ける段階は、電着被膜30をアニール処理する段階を含んでよい。電着処理によって、金属筐体部20の第2面22に形成された電着被膜30を定着させるためである。
【0063】
電着処理により金属筐体部20の第2面22に絶縁性の電着被膜30を設けることで、電界によって金属筐体部20の第2面22にムラのない均一な電着被膜30を形成することができる。したがって、電着被膜30を金属筐体部20の第2面22に形成する際に、金属筐体部20の第2面22をレーザ等により加工し、表面を粗化することで、アンカー効果による密着力の強化を図らずとも、強靭な電着被膜30を形成することができる。結果として、圧力センサ100の製造工程の数を低減することができる。また、表面租化処理を省略することができるため、製造工程における金属コンタミネーションの発生を抑制することができ、導電性異物による短絡不具合を防止することができる。
【0064】
図5Eは、図1で示した圧力センサ100の電着処理後のB-B'断面の一例を示す。本例の電着被膜30は、金属筐体部20の第2面22の全面および封止球72に設けられる。本例の電着被膜30は、金属導電部40および充填部42には設けられていない。本例の圧力センサ100においては、金属筐体部20の第2面22および封止球72に電着被膜30を設けることで、金属筐体部20および封止球72と金属導電部40との間の絶縁性を確保することができ、導電性異物による短絡不具合を防止することができる。
【0065】
図5Fでは、ハウジング90を、接着部80をアニール処理することによって金属筐体部20の第2面22側に接着する。電着被膜30のアニール処理温度は、接着部80のアニール処理温度より高くてよい。これにより、すでに形成された電着被膜30が高温により溶解することなく、ハウジング90を金属筐体部20の第2面22側に接着することができる。
【0066】
金属筐体部20の第2面22に電着被膜30を設けることで、金属筐体部20と接着部80との密着力を向上することができる。したがって、電着被膜30を金属筐体部20の第2面22に形成する際に、金属筐体部20の第2面22をレーザ等により加工し、表面を粗化することで、アンカー効果による密着力の強化を図らずとも、金属筐体部20とハウジング90との密着を強化することができる。結果として、圧力センサ100の製造工程の数を低減することができる。また、表面租化処理を省略することができるため、製造工程における金属コンタミネーションの発生を抑制することができ、導電性異物による短絡不具合を防止することができる。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0068】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0069】
10 圧力検知部、20 金属筐体部、21 第1面、22 第2面、23 底部、24 段差部、26 縁部、30 電着被膜、32 接着領域、34 非接着領域、36 電着液、40 金属導電部、42 充填部、44 貫通孔、50 ダイアフラム部、60 オイル部、70 注入孔、72 封止球、80 接着部、90 ハウジング、100 圧力センサ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F