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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066842
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ポンプの原動機架台
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/66 20060101AFI20240509BHJP
   F04D 13/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F04D29/66 D
F04D13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176588
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】兼森 祐治
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB22
3H130AB50
3H130AC01
3H130BA16Z
3H130BA25Z
3H130CA23
3H130DJ06X
3H130EA03Z
3H130EA06Z
3H130EB01Z
3H130EB02Z
3H130EB04Z
(57)【要約】
【課題】吐出方向及び吐出方向に対して交差する方向の固有振動数を容易に調整できるポンプの原動機架台を提供する。
【解決手段】ポンプ10の原動機架台30は、ポンプケーシング11の上側部13に取り付けられた外周壁33と、外周壁33に設けられた開口33aと、原動機20が載置される載置板34とを有する架台本体32と、載置板34に一端側が固着された撓み変形可能な複数の梁部材38と、複数の梁部材38に取り付けられた1つの質量体42と、梁部材38又は質量体42に設けられ、質量体42の固有振動数を調整するための調整部44とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプケーシングの上側部に取り付けられて前記上側部の一部を取り囲む外周壁と、前記外周壁に設けられて前記ポンプケーシングの吐出口を露出させる開口と、前記外周壁の上端に設けられて原動機が載置される載置板とを有する架台本体と、
前記載置板に一端側が固着されて前記載置板に対して交差する第1方向に延びる撓み変形可能な複数の梁部材と、
前記複数の梁部材に取り付けられた1つの質量体と、
前記梁部材又は前記質量体に設けられ、前記第1方向に対して交差する方向であり前記吐出口から液体を吐出する方向である第2方向、及び前記第1方向と前記第2方向の双方に交差する第3方向における前記質量体の固有振動数を調整するための調整部と
を備える、ポンプの原動機架台。
【請求項2】
前記質量体は、前記複数の梁部材をそれぞれ挿通可能で、前記梁部材に対する傾斜を許容する大きさの挿通孔を備え、
前記調整部は、前記梁部材の外周に設けられたネジ溝、前記ネジ溝に螺合されたナット、及び前記挿通孔よりも大きい座金を備え、前記梁部材毎に前記質量体の上下に配置されており、
前記座金は、球状凹部を有する第1部材と、前記球状凹部に嵌め込まれる球状凸部を有する第2部材とを備える、
請求項1に記載のポンプの原動機架台。
【請求項3】
前記質量体は、前記複数の梁部材に対して前記載置板からの距離が一定の位置に固着されており、
前記調整部は、
前記質量体の前記載置板側に前記梁部材毎に配置され、前記梁部材を取り囲むベース部材と、
前記梁部材を挿通可能な挿通孔を有し、前記ベース部材に対して前記梁部材に沿って移動可能なスライド部材と
を備える、請求項1に記載の原動機架台。
【請求項4】
前記質量体は、前記複数の梁部材に対して前記載置板からの距離が一定の位置に固着されており、
前記調整部は、前記梁部材毎に設けられた複数の支持部材を備え、
前記支持部材は、前記梁部材に対して回動可能に取り付けられた第1端と、前記質量体又は前記載置板に当接した第2端とを有し、前記第1端から前記第2端に向けて前記梁部材から離れるように傾斜している、
請求項1に記載の原動機架台。
【請求項5】
前記質量体は、前記複数の梁部材に対して前記載置板からの距離が一定の位置に固着されており、
前記調整部は、前記梁部材自体によって構成され、
前記梁部材は、前記梁部材の軸線が延びる方向から見て長手方向と短手方向を有する断面形状で、前記載置板及び前記質量体に対して前記軸線まわりに回転可能である、
請求項1に記載の原動機架台。
【請求項6】
前記梁部材は、中空状で、内部に多数の粒状部材を収容可能である、請求項1から5のいずれか1項に記載の原動機架台。
【請求項7】
前記質量体は、中空状で、内部に重量材を収容可能である、請求項1から5のいずれか1項に記載の原動機架台。
【請求項8】
前記質量体は、環状で、前記原動機の出力軸を中心として放射状に延びる複数の仕切壁によって、複数の収容室に区画されている、請求項7に記載の原動機架台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプの原動機架台に関する。
【背景技術】
【0002】
排水用のポンプは、据付床に貫通して配置されたポンプケーシングと、ポンプケーシングの上側部に取り付けられた原動機架台(モータ台)と、原動機架台上に取り付けられた原動機(モータ)とを備える。このポンプでは、原動機の作動によって原動機架台の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振すると、過大振動が発生する。このような共振を避けるために、原動機架台は、固有振動数が原動機の回転数等の加振周波数から離調するように設計されている。しかし、据付床の剛性が設計通りでない場合や経年的に変化した場合、固有振動数が変化して、共振が生じることがある。
【0003】
特許文献1には、ポンプの共振抑制を目的とした原動機架台が開示されている。この原動機架台は、ポンプケーシングのベースプレートに固着された基礎部材と、原動機が配置される搭載部材との間に、定位置に固定された複数の固定柱と、任意の位置に装着可能な調整柱とを備える。調整柱はジャッキ部を備え、ジャッキ部の伸縮によって原動機架台の動剛性を変化させ、共振の解消を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-180133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原動機架台は、ポンプケーシングの吐出口を露出させる開口を備える。そのため、揚水の吐出方向と吐出方向に対して直交する方向とで、原動機架台の剛性は異なり、固有振動数も異なる。しかし、特許文献1では、揚水の吐出方向及び吐出方向に対する直交方向の固有振動数について何ら考慮されていない。また、特許文献1の原動機架台では、固有振動数を調整する際、調整柱の装着位置変更及び増設等、大掛かりな作業が必要である。
【0006】
本発明は、吐出方向及び吐出方向に対して交差する方向の固有振動数を容易に調整できるポンプの原動機架台を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ポンプケーシングの上側部に取り付けられて前記上側部の一部を取り囲む外周壁と、前記外周壁に設けられて前記ポンプケーシングの吐出口を露出させる開口と、前記外周壁の上端に設けられて原動機が載置される載置板とを有する架台本体と、前記載置板に一端側が固着されて前記載置板に対して交差する第1方向に延びる撓み変形可能な複数の梁部材と、前記複数の梁部材に取り付けられた1つの質量体と、前記梁部材又は前記質量体に設けられ、前記第1方向に対して交差する方向であり前記吐出口から液体を吐出する方向である第2方向、及び前記第1方向と前記第2方向の双方に交差する第3方向における前記質量体の固有振動数を調整するための調整部とを備える、ポンプの原動機架台を提供する。
【0008】
原動機架台は、載置板に一端側が固着された複数の梁部材と、これらの梁部材に取り付けられた1つの質量体とを備える。これにより、原動機による原動機架台の振動を抑制できる。よって、原動機架台の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振し、ポンプに過大振動が発生することを抑制できる。
【0009】
また、梁部材又は質量体には、液体の吐出方向(第2方向)及び吐出方向に対して交差する方向(第3方向)における質量体の固有振動数を調整するための調整部が設けられている。これにより、据付床の剛性が設計通りでない場合や経年的に変化した場合、大掛かりな作業を行うことなく、調整部の操作によって、吐出方向及び吐出方向に対して交差する方向における質量体の固有振動数を、容易に調整できる。よって、直交方向及び吐出方向における原動機架台の固有振動数及び剛性を調整でき、据付床に意図しない不具合が生じても、ポンプの過大振動の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、吐出方向及び吐出方向に対して交差する方向の固有振動数を容易に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る原動機架台を用いたポンプの概略正面図。
図2図1のポンプの右側面図。
図3】梁部材の配置を示す概略図。
図4図1の原動機架台の動吸振機構の断面図。
図5】動吸振機構の概要を示す図。
図6】臨界減衰比による振動変化を示すグラフ。
図7】第2実施形態の原動機架台の動吸振機構の断面図。
図8】第3実施形態の原動機架台の動吸振機構の平面図。
図9図8の動吸振機構の側面図。
図10】第4実施形態の原動機架台の動吸振機構の平面図。
図11図10の原動機架台の固有振動数の調整状態を示す平面図。
図12】第5実施形態の原動機架台の図4と同様の図。
図13図12の質量体の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0013】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照すると、本発明の第1実施形態に係る原動機架台30は、立軸ポンプ(ポンプ)10を駆動する原動機20を搭載するために設けられている。
【0014】
立軸ポンプ10は、ポンプケーシング11、主軸16、及び羽根車17を備える。ポンプケーシング11は、据付床1の下側の吸水槽2内に配置された揚水管(下側部)12と、据付床1上に配置された吐出エルボ(上側部)13とを備える。吐出エルボ13は、据付床1上に固定するためのベースプレート14を備える。吐出エルボ13のうち図1において最も右側に位置する部分が、揚水を吐出する吐出口15である。主軸16は、吐出エルボ13を貫通して揚水管12の軸線Aに沿って同軸に延びている。羽根車17は、揚水管12内の下部に位置するように主軸16の下端に取り付けられている。
【0015】
原動機20は、出力軸21を備える電動モータである。出力軸21は、主軸16のポンプケーシング11から外側に突出した部分に、カップリング25を介して連結されている。原動機20は、制御部(図示せず)によって作動され、主軸16と一体に羽根車17を回転させ、ポンプケーシング11内を通して吸水槽2内の水(液体)を排出する。原動機20は、主軸16と一体に羽根車17を回転可能であれば、内燃機関であってもよい。
【0016】
添付図面において、Z方向は、主軸16が延びる鉛直方向(第1方向)である。Y方向は、鉛直方向Zに対して直交する方向であり、矢印で示す向きが揚水の吐出方向(第2方向)である。X方向は、鉛直方向Zと吐出方向Yの双方に直交する方向(第1方向)であり、この方向を以下の説明では直交方向という。前述の据付床1はXY平面に沿って水平に延びている。
【0017】
引き続いて図1及び図2を参照すると、原動機架台30は、架台本体32と、架台本体32に取り付けられた動吸振機構36とで構成されている。動吸振機構36によって、架台本体32の吐出方向Yと直交方向Xの固有振動数を調整可能としている。
【0018】
架台本体32は、吐出エルボ13を概ね取り囲む外周壁33と、原動機20が載置される載置板34とを備える。この架台本体32は、搭載する原動機20の回転数等の加振周波数から固有振動数が離調するように設計されている。
【0019】
外周壁33は、吐出エルボ13の外径よりも大きく、ベースプレート14の外径よりも小さい直径の円筒状であり、ベースプレート14上にボルト止めされている。但し、外周壁33は、吐出エルボの一部を取り囲める構成であれば、円筒以外の筒状であってもよいし、複数の支柱によって構成されていてもよい。外周壁33には、吐出エルボ13の一部を貫通させて吐出口15を露出させる開口33aが設けられている。開口33aは、鉛直方向Zに延びる半長円形状であり、外周壁33の下端側が開放されている。
【0020】
載置板34は、原動機20を載置可能な大きさかつ厚みの円板状であり、外周壁33の上端を閉塞し、XY平面に沿って水平に延びている。載置板34には、揚水管12の軸線Aとの交点を中心とする挿通孔34aが設けられ、この挿通孔34aを通して原動機20の出力軸21が架台本体32内に突出している。
【0021】
動吸振機構36は、複数の梁部材38、1つの質量体42、及び梁部材38毎に設けられた調整部44を備える。第1実施形態の動吸振機構36では、調整部44によって梁部材38及び載置板34に対する質量体42の傾斜角度θを調整することで、吐出方向Y及び直交方向Xにおける質量体42の固有振動数を調整可能とし、これによって架台本体32及び原動機20の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振することを防止している。
【0022】
図4を参照すると、梁部材38は、例えば鋼鉄製で、載置板34から鉛直方向Zの下向きに延びる片持ち梁構造である。この梁部材38は、直径が一様な梁本体38aと、載置板34に固着するための一端の固着部38bとを備える。梁本体38aは鉛直方向Zに対して交差する任意の方向に撓み変形可能であり、上端が載置板34に当接して支持されている。固着部38bは、梁本体38aの直径よりも小さく、載置板34に形成されたネジ孔に螺合されるネジ軸である。但し、固着部38bは、載置板34を貫通してナットによって締め付けられる構成であってもよく、載置板34に固着可能な構成であれば必要に応じて変更可能である。
【0023】
図3を参照すると、複数の梁部材38は、揚水管12の軸線Aまわりを周方向に等間隔をあけて配置されている。本実施形態では、4本の梁部材38が用いられている。4本の梁部材38は、軸線A上を通り吐出方向Yに延びる線VLy上に2本配置され、軸線A上を通り直交方向Xに延びる線VLx上に2本配置されている。但し、4本の梁部材38は、吐出方向Yに延びる線VLyの両側にそれぞれ2本ずつ配置され、かつ直交方向Xに延びる線VLxの両側にそれぞれ2本ずつ配置されていてもよい。つまり、4本の梁部材38は、吐出方向Yに延びる線VLy及び直交方向Xに延びる線VLxそれぞれを軸として線対称に配置され、質量体42を吐出方向Y又は直交方向Xに傾斜可能な構成であればよい。なお、梁部材38を3本又は5本以上用いる場合も同様である。
【0024】
図4を参照すると、梁部材38は中空状のパイプからなる。梁部材38の下端は栓体39によって塞がれ、梁部材38の上端は開放されている。但し、梁部材38の上端も栓体によって塞がれていてもよい。梁部材38の内部空間には、例えば基本粒径が30μm以上150μm以下で中央値がおよそ100μm、重さが3μgのセラミックボールからなる多数の粒状部材40が収容されている。多数の粒状部材40は、梁部材38を粉体ダンパとして機能させるために収容されており、梁部材38内での移動によって振動を吸収して減衰させる。但し、梁部材38内には、振動減衰機能を向上させるために、粒状部材40と一緒に油等の液体(図示せず)を収容させてもよい。
【0025】
質量体42は、調整部44を介して複数の梁部材38の任意の位置に取り付けられ、架台本体32内に配置されている。質量体42は、円環状リングからなり、梁部材38が撓み変形しても外周壁33内に干渉することない外径で、図1に示すカップリング25を取り囲む直径の貫通孔42aを有する。質量体42は、原動機20の重量に対して定められた比率(例えば3%以上5%以下)の重量を有していれば、任意の材料によって形成可能である。
【0026】
質量体42には、複数の梁部材38にそれぞれ対応する挿通孔42bが形成されている。挿通孔42bの直径は梁本体38aの直径よりも大きく、梁部材38をそれぞれ挿通し、梁部材38に対する質量体42の傾斜を許容する。
【0027】
引き続いて図4を参照すると、調整部44は、吐出方向Y及び直交方向Xにおける質量体42の固有振動数を調整するために設けられている。調整部44は、梁部材38に対して質量体42を、直交する方向に延びる状態及び傾斜させた状態のいずれでも保持可能である。具体的には、調整部44は、梁部材38の梁本体38aの外周面に設けられたネジ溝38c、ネジ溝38cに螺合可能なナット45、及びナット45と質量体42の間に配置される座金46を備える。ナット45と座金46は、質量体42の上下にそれぞれ配置されている。
【0028】
座金46は、質量体42の挿通孔42bの直径よりも大きい外径を有する球面座金である。この座金46は、質量体42に面接触状態で配置される第1座金(第1部材)47と、ナット45に面接触状態で配置される第2座金(第2部材)48とを備える。第1座金47は、球面状をなすように軸方向に窪む球状凹部47aを備える。第2座金48は、球状凹部47aを相補する曲率で球面状をなすように軸方向に突出し、球状凹部47aに嵌め込まれる球状凸部48aを備える。第1座金47には、挿通孔42bと概ね同じ直径の挿通孔47bが設けられている。この座金46では、ナット45の締め付けによって、球状凹部47aと球状凸部48aとが圧接され、梁部材38に対して傾斜した姿勢の質量体42であっても緩みなく挟み込むことができる。但し、第1座金47が球状凸部を備え、第2座金48が球状凹部を備えていてもよい。また、第1座金47は、質量体42に一体に設けられていてもよし、第2座金48は、ナット45に一体に設けられていてもよい。
【0029】
このような調整部44が設けられた梁部材38において、振動等によって撓み変形可能な範囲は、載置板34の下面から上側のナット42の上端までとなる。本実施形態では、この撓み変形可能な範囲である梁部材38の長さLを、調整部44によって任意に調整できる。
【0030】
ここで、動吸振機構36による主軸16及び羽根車17を含むポンプケーシング11の振動抑制の原理について、図5及び図6を参照して説明する。
【0031】
図5に示す主振動系のmは、図1に示す原動機架台30に対応している。また、図5に示す副振動系は、図4に示す動吸振機構36に対応している。より具体的には、図5に示すm図4に示す質量体42に対応し、図5に示すk図4に示す梁部材38に対応し、図5に示すcが図4に示す粒状部材40に対応している。
【0032】
図1及び図2に示すように、架台本体32に原動機20が取り付けられているため、架台本体32の固有振動数ωがポンプの主軸16又は原動機20(主振動系)のの回転数に同期して共振する場合がある。しかし、本実施形態の原動機架台30は、図4に示す固有振動数のωの動吸振機構36(副振動系)を備えるため、架台本体32及び原動機20の振動エネルギを動吸振機構36が吸収し、架台本体32の振動を迅速に低減できる。
【0033】
図6は臨界減衰比による振動変化を示すグラフである。図6において、横軸は周波数であり、縦軸は振幅である。図6において二点鎖線は、架台本体32の応答を示し、図6において一点鎖線は、粒状部材40(減衰機能)がない非減衰型の動吸振機構36の応答を示す。図6においてピッチが異なる2種の破線及び実線は、粒状部材40を備える減衰型の動吸振機構36の応答を示す。
【0034】
図6を参照すると、動吸振機構36を備える原動機架台30を架台本体32に用いた場合、2つの共振ピークが現れ、その交点がP,Qである。これらのP,Q点は減衰をどの様に変化させても変わらない(定点)。梁部材38のばね定数Kと減衰定数を適切に設定すると、P点とQ点を通る2つの共振ピークを低く抑えることができ、広い範囲にわたって低振動が達成できる。
【0035】
図6に一点鎖線で示す非減衰型の動吸振機構36の場合、副振動系(質量体42)の固有振動数を外力の振動数に一致させることによって、ばね(梁部材38)の復元力と外力を釣り合わせることができる。これにより、主振動系(架台本体32及び原動機20)の応答は完全にゼロになる。
【0036】
減衰型の動吸振機構36の場合、主振動系(架台本体32及び原動機20)の回転数と動吸振機構36が共振するように調整する。外力ではなく主振動系に同調させるので、広い周波数範囲で効果があり、自由振動も抑制される。但し、動吸振機構36による減衰には最適値があり、減衰が小さ過ぎる場合には図6においてピッチが広い破線で示すようになり、減衰が大き過ぎる場合には図6においてピッチが狭い破線で示すようになる。適切な減衰を動吸振機構36に持たせると、図6に実線で示すように広い範囲の固有振動数に対して制振効果を発揮できる。また、経年劣化により固有振動数が変化しても制振効果を発揮できる。
【0037】
次に、第1実施形態の動吸振機構36によって、吐出方向Y及び直交方向Xにおける質量体42の固有振動数を調整(変更)する作業を、図3及び図4を参照して説明する。
【0038】
4本の梁部材38に対する質量体42の保持位置を変更する場合、例えば、個々の梁部材38に螺合された2個のナット45をそれぞれ緩める。続いて、梁部材38に対して質量体42を任意の保持位置及び傾斜角度θに位置決めし、下側のナット45を回転させ、座金46を介して質量体42の下面を保持させる。その後、上側のナット45を回転させ、質量体42の上面に座金46を介して圧接する。これにより、質量体42は、一対のナット45に座金46を介して挟み込まれ、鉛直方向Zにおける任意の保持位置及び傾斜角度θに保持される。
【0039】
原動機架台30の直交方向Xの固有振動数を吐出方向Yの固有振動数よりも上昇させる場合、図4に示す状態とする。具体的には、図3において直交方向Xに延びる線VLx上に位置する一方側(図4では右側)の梁部材38に対する質量体42の保持位置を最も低くし、線VLx上に位置する他方側(図4では左側)の梁部材38に対する質量体42の保持位置を最も高くする。
【0040】
これにより、撓み変形可能な梁部材38の長さL、つまり作用点から力点までの梁部材38の距離を、梁部材38毎に調整できる。その結果、梁部材38による直交方向Xのばね定数Kxが吐出方向Yのばね定数Kyよりも大きくなり、質量体42の直交方向Xの固有振動数は吐出方向Yの固有振動数よりも上昇する。具体的には以下の通りである。
【0041】
撓み変形可能な梁部材38の長さをL、断面2次モーメントをI、ヤング率をEとすると、梁部材38のばね定数Kは以下の数式1を満たす。
【0042】
【数1】
【0043】
図3において吐出方向Yに延びる線VLy上には、撓み変形可能な長さLが同じ2本の梁部材38があるため、吐出方向Yにおける梁部材38のばね定数Kyは以下の数式2を満たす。
【0044】
【数2】
【0045】
一方で、図3において直交方向Xに延びる線VLx上には、撓み変形可能な長さがL1の梁部材38とL2の梁部材38がある。また、質量体42の中心から長さL2の梁部材38までの半径をR、直交方向Xに延びる線VLxに対する質量体42の傾斜角度をθとすると、直交方向Xにおける梁部材38のばね定数Kxは以下の数式3を満たす。
【0046】
【数3】
【0047】
吐出方向Yに延びる線VLy上に位置する梁部材38の長さLと、直交方向Xに延びる線VLx上に位置する梁部材38の長さL2との差をbとする。そして、数式3のRθをbに置き換えると、直交方向Xにおける梁部材38のばね定数Kxは以下の数式4を満たす。
【0048】
【数4】
【0049】
数式4に示すように、直交方向Xに延びる線VLxに対して質量体42を傾斜させると、梁部材38による直交方向Xのばね定数Kxは、梁部材38による吐出方向Yのばね定数Kyよりも大きくなる。これにより、梁部材38の剛性は吐出方向Yよりも直交方向Xの方が高くなり、質量体42の直交方向Xの固有振動数ωxを吐出方向Yの固有振動数ωyよりも上昇できる。このように、質量体42の傾斜によって、質量体42の固有振動数に指向性を持たせることができる。
【0050】
一方で、原動機架台30の吐出方向Yの固有振動数ωyを直交方向Xの固有振動数ωxよりも上昇させる場合、図3において吐出方向Yに延びる線VLy上に位置する一方側の梁部材38に対する質量体42の保持位置を最も低くし、線VLy上に位置する他方側の梁部材38に対する質量体42の保持位置を最も高くする。これにより、梁部材38による吐出方向Yのばね定数Kyが直交方向Xのばね定数Kxよりも大きくなる。その結果、梁部材38の剛性は、直行方向Xよりも吐出方向Yの方が高くなり、質量体42の吐出方向Yの固有振動数ωyを直交方向Xの固有振動数ωxよりも上昇できる。
【0051】
また、4本の梁部材38によるばね定数Kを全体的に大きくしたい場合、撓み変形可能な長さLが短くなるように、質量体42を梁部材38の上側に保持させる。逆に、4本の梁部材38によるばね定数Kを全体的に小さくしたい場合、撓み変形可能な長さLが長くなるように、質量体42を梁部材38の下側に保持させる。このように、撓み変形可能な梁部材38の長さLを全体的に調整することによって、4本の梁部材38によるばね定数Kを全体的に調整できる。その結果、直交方向X及び吐出方向Yにおける質量体42の固有振動数ωx,ωyを調整できる。
【0052】
以上のように、本実施形態の原動機架台30では、大掛かりな作業を行うことなく、調整部44による質量体42の保持位置の調整によって、直交方向X及び吐出方向Yにおける質量体42の固有振動数ωx,ωyを調整できる。よって、据付床1の剛性が設計通りでない場合や経年的に変化した場合、実際の据付床1の状態に応じ、調整部44によって質量体42の固有振動数ωx,ωyを調整することにより、吐出方向Y及び直交方向Xにおける質量体42の固有振動数を調整し、これによって架台本体32及び原動機20の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振することを防止できる。
【0053】
このように構成した原動機架台30は、以下の特徴を有する。
【0054】
原動機架台30は、載置板34に一端側が固着された複数の梁部材38と、これらの梁部材38に取り付けられた1つの質量体42とを備える。これにより、原動機20による原動機架台30の振動を抑制できる。よって、原動機架台30の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振し、立軸ポンプ10に過大振動が発生することを抑制できる。
【0055】
梁部材38には、吐出方向Y及び直交方向Xにおける質量体42の固有振動数ωy,ωxを調整するための調整部44が設けられている。これにより、据付床1の剛性が設計通りでない場合や経年的に変化した場合、大掛かりな作業を行うことなく、調整部44の操作によって、吐出方向Y及び直交方向Xにおける質量体42の固有振動数ωy,ωxを、容易に調整できる。よって、直交方向X及び吐出方向Yにおける原動機架台30の固有振動数及び剛性を調整でき、これにより、架台本体32の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振することを防止できる。
【0056】
質量体42は、梁部材38に対する傾斜を許容する挿通孔42bを備える。また、調整部44は、梁部材38に設けられたネジ溝38c、ネジ溝38cに螺合されたナット45、及び質量体42の挿通孔42bよりも大きい座金46を備え、座金46は、球状凹部47aを有する第1座金47と球状凸部48aを有する第2座金48とを備える。そのため、梁部材38及び載置板34に対して質量体42が傾斜するように、梁部材38毎に質量体42の保持位置を調整できる。これにより、梁部材38が撓み変形可能な範囲である載置板34から調整部44までの距離、つまり作用点から力点までの梁部材38の長さを、梁部材38毎に調整できる。よって、梁部材38毎のばね定数Kが調整されるため、直交方向X及び吐出方向Yにおける質量体42の固有振動数ωx,ωyを確実に調整できる。その結果、実際の据付床1に応じて原動機架台30の振動を抑制でき、原動機架台30の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振することを防止できる。
【0057】
梁部材38は、中空状で、内部に多数の粒状部材40を収容可能である。これにより、梁部材38に減衰機能を兼ね備えさせることができる。よって、原動機架台30の振動を効率的に抑制できる。
【0058】
以下、本発明の他の実施形態並びに種々の変形例を説明するが、これらの説明において、特に言及しない点は第1実施形態と同様である。以下で言及する図面において、第1実施形態と同一の要素には同一の符号を付している。
【0059】
(第2実施形態)
図7を参照すると、第2実施形態の原動機架台30では、複数の梁部材38の定位置に質量体42が固着され、質量体42に設けられた調整部44によって撓み変形可能な梁部材38の長さLを調整可能としている。
【0060】
第2実施形態の梁部材38には、梁本体38aの外周面にネジ溝38c(図4参照)は設けられていない。梁本体38aの固着部38bとは反対側の端部には、ネジ軸からなる固着部38dが設けられている。梁本体38aの一端は載置板34に当接し、梁本体38aの他端は質量体42に当接し、それぞれ支持されている。
【0061】
質量体42には、梁部材38の固着部38dを挿通可能な直径の挿通孔42bが形成されている。この挿通孔42bから下側へ突出した固着部38dにナット50を締め付けることによって、質量体42は、複数の梁部材38に対して載置板34からの距離(間隔)Hが一定の位置に、水平に延びるように固着されている。但し、固着部38dは、質量体42を定位置に固着可能な構成であれば、必要に応じて変更可能である。
【0062】
調整部44は、質量体42上に配置され、撓み変形可能な梁部材38の長さLの変更によって、吐出方向Y及び直交方向Xにおける質量体42の固有振動数を調整する。具体的には、第2実施形態の調整部44は、梁部材38毎に設けられたベース部材52とスライド部材53を備える。
【0063】
ベース部材52は、間隔をあけて梁部材38を取り囲む直径の円筒体であり、質量体42の載置板34側である上面に固着されている。ベース部材52の内周面には、ネジ溝52aが設けられている。
【0064】
スライド部材53は、梁部材38とベース部材52の間に配置され、ベース部材52に対して梁部材38に沿って移動可能な円筒体である。スライド部材53の外周面には、ベース部材52のネジ溝52aに螺合可能なネジ部53aが設けられている。また、スライド部材53には、梁部材38を挿通できる範囲で可能な限り小さい直径の挿通孔53bが設けられている。
【0065】
このように、根元部分に調整部44が配置された梁部材38において、振動等によって撓み変形可能な範囲は、載置板34の下面からスライド部材53の上端までである。この撓み変形可能な範囲である梁部材38の長さLは、ベース部材52に対するスライド部材53の螺合量の変更によって、梁部材38毎に調整できる。
【0066】
原動機架台30の直交方向Xの固有振動数ωxを吐出方向Yの固有振動数ωyよりも上昇させる場合、図7において最も右側に位置する調整部44のように、直交方向Xに延びる線VLx(図3参照)上に位置する梁部材38のスライド部材53を回転させてベース部材52から進出させ、撓み変形可能な梁部材38の長さL2を、吐出方向Yに延びる線VLy(図3参照)上の梁部材38の長さLよりも短くする。これにより、直交方向Xに延びる線VLx(図3参照)上の梁部材38のばね定数Kは、吐出方向Yに延びる線VLy(図3参照)上の梁部材38のばね定数Kよりも大きくなり、直交方向Xに延びる線VLx(図3参照)上の梁部材38の剛性は、吐出方向Yに延びる線VLy(図3参照)上の梁部材38の剛性よりも大きくなる。その結果、質量体42の直交方向Xの固有振動数ωxを吐出方向Yの固有振動数ωyよりも上昇できる。勿論、図7において最も左側に位置する梁部材38の調整部44も同様に調整してもよい。また、吐出方向Yに延びる線VLy(図3参照)上に位置する梁部材38のスライド部材53を後退させて、撓み変形可能な梁部材38の長さLを、直交方向Yに延びる線VLx(図3参照)上に位置する梁部材38の長さL1,L2よりも長くしてもよい。
【0067】
一方で、原動機架台30の吐出方向Yの固有振動数ωyを直交方向Xの固有振動数ωxよりも上昇させる場合、図7において最も左側に位置する調整部44のように、直交方向Xに延びる線VLx(図3参照)上に位置する梁部材38のスライド部材53を回転させてベース部材52内に後退させ、撓み変形可能な梁部材38の長さL1を、吐出方向Yに延びる線VLy(図3参照)上の梁部材38の長さLよりも長くする。これにより、直交方向Xに延びる線VLx(図3参照)上の梁部材38のばね定数Kは、吐出方向Yに延びる線VLy(図3参照)上の梁部材38のばね定数Kよりも小さくなり、直交方向Xに延びる線VLx(図3参照)上の梁部材38の剛性は、吐出方向Yに延びる線VLy(図3参照)上の梁部材38の剛性よりも小さくなる。その結果、質量体42の吐出方向Yの固有振動数ωyを直交方向Xの固有振動数ωxよりも上昇できる。勿論、図7において最も右側に位置する梁部材38の調整部44も、同様に調整してもよい。吐出方向Yに延びる線VLy(図3参照)上に位置する梁部材38のスライド部材53を進出させて、撓み変形可能な梁部材38の長さLを、直交方向Yに延びる線VLx(図3参照)上に位置する梁部材38の長さL1,L2よりも短くしてもよい。
【0068】
以上のように、第2実施形態の調整部44は、質量体42の載置板34側に配置されたベース部材52と、ベース部材52に対して梁部材38に沿って移動可能なスライド部材53とを備える。これにより、梁部材38が撓み変形可能な範囲である載置板34からスライド部材53までの距離、つまり作用点から力点までの梁部材38の長さLを、梁部材38毎に調整できる。よって、梁部材38毎のばね定数が調整されるため、直交方向X及び吐出方向Yにおける質量体42の固有振動数ωx,ωyを確実に調整できる。その結果、実際の据付床1(図1参照)に応じて原動機架台30の振動を抑制でき、原動機架台30の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振することを防止できる。
【0069】
(第3実施形態)
図7及び図8を参照すると、第3実施形態の原動機架台30では、第2実施形態と同様に、質量体42が複数の梁部材38の定位置に固着されている。調整部44は、梁部材38毎に設けられ、撓み変形可能な梁部材38の剛性(ばね定数)を調整可能としている。
【0070】
梁部材38には、載置板34の下面に面接触状態で配置される上フランジ部38eと、質量体42の上面に面接触状態で配置される下フランジ部38fとが設けられている。梁部材38は筒状で、内容には粒状部材40(図示せず)が収容されている。
【0071】
第3実施形態の調整部44は、梁部材38に固着されたヒンジ部材55と、ヒンジ部材55に固着された支持部材56とを備え、梁部材38に対して支持部材56が回動可能である。支持部材56は、ヒンジ部材55に固着された第1端56aと、下フランジ部38fを介して質量体42に当接した第2端56bとを有し、第1端56aから第2端56bに向けて梁部材38から離れるように傾斜している。
【0072】
ヒンジ部材55によって支持部材56は、図8に二点鎖線で示すように、梁部材38の外周面の第1の位置に当接した第1角度位置から、梁部材38の外周面の第2の位置に当接した第2角度位置まで、回動できる。そして、この回動角度範囲には、支持部材56が吐出方向Yに延びる角度位置と直交方向Xに延びる角度位置とが含まれている。但し、支持部材56は、梁部材38に回転可能に配置された環状リングに固着されていてもよく、支持部材56の配置構造は、梁部材38に対して回転できる構成であれば、必要に応じて変更可能である。
【0073】
梁部材38の根元部分に調整部44が設けられた原動機架台30では、支持部材56が延びる方向を梁部材38毎に調整することで、吐出方向Yと直交方向Xにおける梁部材38の剛性を調整し、質量体42の固有振動数ωy,ωxを調整できる。
【0074】
原動機架台30の直交方向Xの固有振動数ωxを吐出方向Yの固有振動数ωyよりも上昇させる場合、全ての支持部材56が直交方向Xに延びるように、調整部44を調整する。これにより、梁部材38の剛性は、吐出方向Yよりも直交方向Xの方が高くなり、直交方向Xの梁部材38のばね定数を大きくできる。その結果、質量体42の直交方向Xの固有振動数ωxを吐出方向Yの固有振動数ωyよりも上昇できる。
【0075】
一方で、原動機架台30の吐出方向Yの固有振動数ωyを直交方向Xの固有振動数ωxよりも上昇させる場合、全ての支持部材56が吐出方向Yに延びるように、調整部44を調整する。これにより、梁部材38の剛性は、直交方向Xよりも吐出方向の方が高くなり、吐出方向Yの梁部材38のばね定数を大きくできる。その結果、質量体42の吐出方向Yの固有振動数ωyを直交方向Xの固有振動数ωxよりも上昇できる。
【0076】
以上のように、第3実施形態の調整部44は、梁部材38に回動可能に取り付けられた支持部材56を備え、この支持部材56は第1端56aから第2端56bに向けて梁部材38から離れるように傾斜している。これにより、支持部材56の配置変更によって、支持部材56が延びる方向の梁部材38の剛性を向上でき、梁部材38のばね定数を大きくできる。よって、直交方向X及び吐出方向Yにおける質量体42の固有振動数ωx,ωyを確実に調整できる。その結果、実際の据付床1(図1参照)に応じて原動機架台30の振動を抑制でき、原動機架台30の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振することを防止できる。
【0077】
(第4実施形態)
図10及び図11を参照すると、第4実施形態の原動機架台30は、第2実施形態と同様に、質量体42が複数の梁部材38の定位置に固着されている。調整部44は梁部材38自体によって構成されており、梁部材38の姿勢変更によって吐出方向Yと直交方向Xの梁部材38の剛性(ばね定数)を調整可能としている。
【0078】
梁部材38は筒状で、内容には粒状部材40(図示せず)が収容されている。梁本体38aは、梁部材38の軸線Bが延びる方向から見て長方形状であり、一対の長側面38gと一対の短側面38hとを備える。つまり、梁本体38aは、長手方向と短手方向を有する断面形状である。但し、梁本体38aは、軸線Bが延びる方向から見て楕円形状であってもよく、長手方向と短手方向を有する断面形状であればよい。
【0079】
梁本体38aの両端にはネジ軸38iがそれぞれ設けられており、これらのネジ軸38iを載置板34(図1参照)及び質量体42にそれぞれ貫通させ、ナットの螺合によって梁本体38aを所定の姿勢に保持可能としている。これにより、梁本体38aの一端は載置板34に当接し、梁本体38aの他端は質量体42に当接し、それぞれ支持されている。本実施形態でも4本の梁部材38が用いられており、これらは、吐出方向Yに延びる線VLyの両側にそれぞれ2本ずつ配置され、直交方向Xに延びる線VLxの両側にそれぞれ2本ずつ配置されている。
【0080】
このように、梁部材38自体によって調整部44が構成された原動機架台30では、載置板34(図1参照)及び質量体42に対して梁本体38aを回転させ、長側面38gが延びる方向を調整することで、吐出方向Yと直交方向Xにおける梁部材38の剛性を調整し、質量体42の固有振動数ωy,ωxを調整できる。
【0081】
原動機架台30の直交方向Xの固有振動数ωxを吐出方向Yの固有振動数ωyよりも上昇させる場合、図11に示すように、全ての梁本体38aの長側面38gが直交方向Xに延びるように、梁部材38の姿勢を調整する。これにより、梁部材38の剛性は、吐出方向Yよりも直交方向Xの方が高くなり、直交方向Xの梁部材38のばね定数を大きくできる。その結果、質量体42の直交方向Xの固有振動数ωxを吐出方向Yの固有振動数ωyよりも上昇できる。
【0082】
一方で、原動機架台30の吐出方向Yの固有振動数ωyを直交方向Xの固有振動数ωxよりも上昇させる場合、全ての梁本体38aの長側面38gが吐出方向Yに延びるように、梁部材38の姿勢を調整する。これにより、梁部材38の剛性は、直交方向Xよりも吐出方向の方が高くなり、吐出方向Yの梁部材38のばね定数を大きくできる。その結果、質量体42の吐出方向Yの固有振動数ωyを直交方向Xの固有振動数ωxよりも上昇できる。
【0083】
以上のように、第4実施形態の調整部44は、梁部材38自体によって構成され、梁部材38は長手方向と短手方向を有する長方形状である。これにより、短手方向と比較して長手方向の剛性を向上でき、ばね定数を大きくできる。よって、梁部材38の姿勢変更、具体的には質量体42に対する梁部材38の長手方向と短手方向の角度位置の変更により、直交方向X及び吐出方向Yにおける質量体42の固有振動数ωx,ωyを確実に調整できる。その結果、実際の据付床1(図1参照)に応じて原動機架台30の振動を抑制でき、原動機架台30の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振することを防止できる。
【0084】
(第5実施形態)
図12を参照すると、第5実施形態の原動機架台30では、梁部材38の下端が載置板34に固着され、鉛直方向Zの上向きに延びている。つまり、梁部材38と質量体42は、架台本体32の外部に配置されている。梁部材38毎に設けられた調整部44は、第1実施形態と同様である。但し、調整部44は、第2実施形態から第4実施形態と同様であってもよい。
【0085】
図13を参照すると、第5実施形態の質量体42は中空状で、内部に重量材61を収容可能としている。具体的には、質量体42は、上端開口の本体58と、本体58を覆うカバー59とを備える。
【0086】
本体58は、円環状の底壁58a、底壁58aの内周縁に立設された円筒状の内周壁58b、及び底壁58aの外周縁に立設された円筒状の外周壁58cを備える。また、本体58には、底壁58a、内周壁58b、及び外周壁58cに連なり、原動機20の出力軸21(軸線A)を中心として放射状に延びる複数(本実施形態では8個)の仕切壁58dが設けられている。これらの仕切壁58dによって本体58内が複数の収容室60に区画されている。また、仕切壁58dの形成位置と対応するように、挿通孔42bと対応する筒部58eが設けられている。
【0087】
カバー59は、円環状の天壁59a、天壁59aの内周縁に設けられた円筒状の内周壁59b、及び底壁58aの外周縁に設けられた円筒状の外周壁59cを備える。天壁59aは本体58の上端を覆う大きさである。内周壁59bは本体58の内周壁58bの内側に重ねて配置される大きさである。外周壁59cは本体58の外周壁58cの外側に重ねて配置される大きさである。カバー59には、筒部58eの内側に重ねて配置され、挿通孔42bを画定する筒部59dが設けられている。
【0088】
重量材61は、本体58の内周壁58b、外周壁58c、1つの仕切壁58d、及び筒部58eに当接可能な扇形状の板体からなる。重量材61の厚みは収容室60の高さよりも薄く、1つの収容室60内には複数の重量材61を収容可能である。但し、重量材61は砂や液体であってもよい。
【0089】
このように構成された第3実施形態の動吸振機構36では、第1実施形態と同様に梁部材38に対して質量体42を傾斜させることにより、直交方向X及び吐出方向Yにおける質量体42の固有振動数ωx,ωyを調整できる。その結果、実際の据付床1(図1参照)に応じて原動機架台30の振動を抑制でき、原動機架台30の固有振動数がポンプ回転数に同期して共振することを防止できる。
【0090】
しかも、第5実施形態の質量体42は、中空状で、内部に重量材61を収容可能である。これにより、質量体42に重りとしての重量材61を収容させることで、直交方向X及び吐出方向Yにおける質量体42の固有振動数ωx,ωyを更に調整でき、原動機架台30の振動を効率的に抑制できる。
【0091】
また、質量体42は、放射状に延びる複数の仕切壁58dによって複数の収容室60に区画されている。これにより、原動機架台30に対する適切な位置の収容室60に重りとしての重量材61を収容できる。その結果、直交方向X及び吐出方向Yにおける質量体42の固有振動数ωx,ωyを確実に調整でき、原動機架台30の振動を抑制できる。
【0092】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0093】
例えば、第1実施形態から第4実施形態の質量体42として、第5実施形態の質量体42を用いてもよい。
【0094】
梁部材38は、中実状であり、減衰のための粒状部材40を収容不可能な構成であってもよい。
【0095】
原動機架台30を用いるポンプは、渦巻ポンプであってもよく、ポンプケーシングの上方に原動機を配置する構成であれば適用できる。
【符号の説明】
【0096】
1 据付床
2 吸水槽
10 立軸ポンプ(ポンプ)
11 ポンプケーシング
12 揚水管(下側部)
13 吐出エルボ(上側部)
14 ベースプレート
15 吐出口
16 主軸
17 羽根車
20 原動機
21 出力軸
25 カップリング
30 原動機架台
32 架台本体
33 外周壁
33a 開口
34 載置板
34a 挿通孔
36 動吸振機構
38 梁部材
38a 梁本体
38b 固着部
38c ネジ溝
38d 固着部
38e 上フランジ部
38f 下フランジ部
38g 長側面
38h 短側面
38i ネジ軸
39 栓体
40 粒状部材
42 質量体
42a 貫通孔
42b 挿通孔
44 調整部
45 ナット
46 座金
47 第1座金(第1部材)
47a 球状凹部
47b 挿通孔
48 第2座金(第2部材)
48a 球状凸部
50 ナット
52 ベース部材
52a ネジ溝
53 スライド部材
53a ネジ部
53b 挿通孔
55 ヒンジ部材
56 支持部材
56a 第1端
56b 第2端
58 本体
58a 底壁
58b 内周壁
58c 外周壁
58d 仕切壁
58e 筒部
59 カバー
59a 天壁
59b 内周壁
59c 外周壁
59d 筒部
60 収容室
61 重量材
X 直交方向(第3方向)
Y 吐出方向(第2方向)
Z 鉛直方向(第1方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13