IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066859
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】車両用バッテリーケース
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/242 20210101AFI20240509BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240509BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240509BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20240509BHJP
【FI】
H01M50/242
B60K1/04 Z
H01M50/249
H01M50/224
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176616
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB05
3D235CC15
3D235EE63
3D235HH42
5H040AA14
5H040AA37
5H040AS04
5H040AY03
5H040AY10
5H040CC05
5H040CC20
5H040CC28
5H040CC33
5H040LL01
(57)【要約】
【課題】 バッテリーケースの強度の確保と積載効率の向上とを両立する。
【解決手段】 バッテリーケース1は、一対の第1フレーム10および一対の第2フレーム20を有するフレーム体2と、フレーム体2の内部に設けられて一対の第2フレーム20同士を接続する1以上のクロスメンバ4と、フレーム体2の下部に設けられてバッテリーBを支持する支持板3とを備える。クロスメンバ4は、隔壁部41と、隔壁部41の下端部から両側に突出する一対の突出部42とを有する。隔壁部41および一対の突出部42の両端部が、一対の第2フレーム20の内側面それぞれに接続され、支持板3が、突出部42の上面に支持される。アンダーカバー5が、フレーム体2および支持板3を下から覆い、クロスメンバ4の下面に取り付けられる。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる一対の第1フレーム、および前記第1方向に直交する第2方向に延びる一対の第2フレームを有し、平面視で矩形枠状であるフレーム体と、
前記フレーム体の内部で前記第1方向に延び、前記一対の第2フレーム同士を接続する1以上のクロスメンバと、
前記フレーム体の下部に設けられ、バッテリーを支持する支持板と、
前記フレーム体および前記支持板を下から覆うアンダーカバーと、を備え、
前記クロスメンバが、
前記第1方向および上下方向に延びる隔壁部と、
前記隔壁部の下端部から前記隔壁部の両側面よりも前記第2方向の両側に突出し、前記第1方向に延びる一対の突出部と、を有し、
前記隔壁部および前記一対の突出部の前記第1方向の両端部が、前記一対の第2フレームの内側面それぞれに接続され、
前記支持板が、前記突出部の上面に支持され、前記アンダーカバーが、前記クロスメンバの下面に取り付けられる、
車両用バッテリーケース。
【請求項2】
前記クロスメンバが押出材からなり、前記隔壁部と前記一対の突出部とが一体成形されている
請求項1に記載の車両用バッテリーケース。
【請求項3】
前記クロスメンバが、7000系アルミニウム合金からなる
請求項1に記載の車両用バッテリーケース。
【請求項4】
前記突出部の一部が、厚肉部であり、前記支持板または前記アンダーカバーが前記厚肉部に螺合されるボルトで前記突出部に固定される
請求項1に記載の車両用バッテリーケース。
【請求項5】
前記第1方向が車幅方向であり、前記第2方向が車長方向であり、
前記一対の第2フレームが、一対のサイドフレームであり、前記一対の第1フレームが、前記一対のサイドフレームの前端部同士を接続するフロントフレーム、および前記一対のサイドフレームの後端部同士を接続するリアフレームである、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用バッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、底壁および4つの側壁を有する容器本体と、4つの側壁のうち対向する2つ同士を接続する複数のクロスメンバと、容器本体を下から覆うアンダーカバーとを備えるバッテリーケースを開示している。容器本体は、バッテリーモジュールを収容するための空間を形成する。クロスメンバは、この空間を仕切るとともに容器本体を補強する。クロスメンバは、押出材で構成され、長方形状の断面を有し、底壁上に支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-68523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成によれば、容器本体を十分に補強するためには、クロスメンバの幅を広くする必要がある。するとその分、バッテリーの積載効率の低下を招く。
【0005】
そこで本発明は、車両用バッテリーケースの強度の確保および積載効率の向上を両立することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、第1方向に延びる一対の第1フレーム、および前記第1方向に直交する第2方向に延びる一対の第2フレームを有し、平面視で矩形枠状であるフレーム体と、前記フレーム体の内部で前記第1方向に延び、前記一対の第2フレーム同士を接続する1以上のクロスメンバと、前記フレーム体の下部に設けられ、バッテリーを支持する支持板と、前記フレーム体および前記支持板を下から覆うアンダーカバーと、を備え、前記クロスメンバが、前記第1方向および上下方向に延びる隔壁部と、前記隔壁部の下端部から前記隔壁部の両側面よりも前記第2方向の両側に突出し、前記第1方向に延びる一対の突出部と、を有し、前記隔壁部および前記一対の突出部の前記第1方向の両端部が、前記一対の第2フレームの内側面それぞれに接続され、前記支持板が、前記突出部の上面に支持され、前記アンダーカバーが、前記クロスメンバの下面に取り付けられる、車両用バッテリーケースを提供する。
【0007】
上記構成によれば、バッテリーが、支持板の上面およびフレーム体の内周面により画定された収容空間に収容され、隔壁部が収容空間を車長方向に仕切る。クロスメンバは、支持板ひいては収容空間の下方に位置付けられる一対の突出部を有しており、一対の突出部も、一対のサイドフレームの内側面それぞれに接続される。このため、車両に側方からの衝突荷重が作用したときに、一対の突出部にも荷重を伝達することが可能になる。その分、バッテリーケースの強度を落とすことなく隔壁部の幅(車長方向の寸法)を小さくすることが許容され、隔壁部による収容空間の縮小が軽減される。このように、バッテリーケースの強度を確保することと、バッテリーの積載効率を改善することとを両立できる。
【0008】
前記クロスメンバが押出材からなり、前記隔壁部と前記一対の突出部とが一体成形されていてもよい。これにより、隔壁部および一対の突出部を有するクロスメンバを容易に実現できる。
【0009】
前記クロスメンバが、7000系アルミニウム合金からなってもよい。7000系は高い強度を有する素材であることから、バッテリーケースの強度が向上する。クロスメンバが配置される空間の防水性が高い場合には、7000系を用いてもクロスメンバのSCC(応力腐食割れ)の発生を抑制することができる。
【0010】
前記突出部の一部が、厚肉部であり、前記支持板または前記アンダーカバーが前記厚肉部に螺合されるボルトで前記突出部に固定されてもよい。これにより、接合強度が向上する。
【0011】
前記第1方向が車幅方向であり、前記第2方向が車長方向であり、前記一対の第2フレームが、一対のサイドフレームであり、前記一対の第1フレームが、前記一対のサイドフレームの前端部同士を接続するフロントフレーム、および前記一対のサイドフレームの後端部同士を接続するリアフレームであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両用バッテリーケースの強度の確保と積載効率の向上とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る車両用バッテリーケースのトップカバーを分解して示す斜視図。
図2図1に示すバッテリーケースのトップカバー以外の要素を分解して示す斜視図。
図3図1に示すバッテリーケースの平面図。
図4図3のIV-IV線に沿って切断して示すバッテリーケースの断面図。
図5図3のV-V線に沿って切断して示すバッテリーケースの断面図。
図6図2に示すフレーム体の分解斜視図。
図7図6に示す第1フレームとしてのフロントフレームの延出部の断面図。
図8図6に示す第1フレームとしてのフロントフレームを下から見て示す斜視図。
図9図6に示す第2フレームとしての右サイドフレームを左から見て示す斜視図。
図10A図2に示すフレーム体の角部を上から見て示す斜視図。
図10B図2に示すフレーム体の角部を下から見て示す斜視図。
図11図2に示すクロスメンバの斜視図。
図12図3のXII-XII線に沿って切断して示すバッテリーケースの断面図。
図13図3のXIII-XIII線に沿って切断して示すバッテリーケースの断面図。
図14】第2実施形態に係る車両用バッテリーケースの断面図。
図15】第3実施形態に係る車両用バッテリーケースの断面図。
図16】第4実施形態に係る車両用バッテリーケースの断面図。
図17】第5実施形態に係る車両用バッテリーケースの断面図。
図18】第6実施形態に係る車両用バッテリーケースの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。以下の説明において、方向は、本実施形態に係るバッテリーケース1が車両に搭載されている状態(以下、単に「搭載状態」という)且つ当該車両が水平な地面に接地している状態における、当該車両の向きを基準としている。車幅方向は、水平な左右方向と対応するとともに第1実施形態における「第1方向」と対応し、車長方向は、水平な前後方向と対応するとともに第1実施形態における「第2方向」と対応する。ただし、この方向は、車両への搭載前のバッテリーケース1あるいはその構成要素の姿勢に応じて適宜変更され得るし、搭載状態においても地面の勾配に応じて適宜変更され得る。
【0015】
(第1実施形態)
図1図5を参照して、本実施形態に係るバッテリーケース1は、走行のための駆動源として電気モータを備える車両に搭載され、電気モータの電源としてのバッテリーBを収容する。バッテリーケース1が搭載され得る車両の種類は、特に限定されず、一例として自動四輪車である。その場合、バッテリーケース1は、車室の床を構成するフロアパネルの下方に配置され、車両の車体90の一部を構成する一対のサイドシル91に締結される。サイドシル91は、車両の車幅方向両縁部において車長方向に延びており、バッテリーケース1は、一対のサイドシル91の間に配置される。
【0016】
<バッテリーケース>
バッテリーケース1は、フレーム体2、支持板3、1以上のクロスメンバ4、アンダーカバー5、およびトップカバー6を備える。本実施形態では、クロスメンバ4が複数である。支持板3は、複数の支持板セグメント3a~3dに分割されている。
【0017】
フレーム体2は、第1方向に延びる一対の第1フレーム10、および第1方向に直交する第2方向に延びる一対の第2フレーム20を有し、平面視で矩形枠状である。支持板3は、フレーム体2の下部に設けられる。バッテリーBは、支持板3に支持され、フレーム体2の内周面と支持板3の上面とにより画定される収容空間Sに収容される。複数のクロスメンバ4は、フレーム体2の内部に第2方向に間隔をあけてフレーム体2の内部に配置される。
【0018】
各クロスメンバ4は、第1方向に延び、一対の第2フレーム20の内側面同士を接続する。収容空間Sは、複数のクロスメンバ4で第2方向に仕切られることで、複数の分割空間Sa~Sdに分けられる。複数の支持板セグメント3a~3dが、複数の分割空間Sa~Sdにそれぞれ対応する。アンダーカバー5は、フレーム体2および支持板3を下から覆う。トップカバー6は、フレーム体2を上から覆う。
【0019】
<フレーム体>
図2図3、および図6を参照して、第1フレーム10の一方の両端部が、一対の第2フレーム20それぞれの一端部同士を接続する。第1フレーム10の他方の両端部が、一対の第2フレーム20それぞれの他端部同士を接続する。一対の第1フレーム10の各々が、一対の延出部12を有し、それにより、第1フレーム10と第2フレーム20とが、第1方向においても第2方向においても面接触した状態で接合されることを可能にしている。
【0020】
本実施形態では、第1方向が車幅方向であり、第2方向が車長方向である。フロントおよびリアフレーム2F,2Rが、第1方向(車幅方向)に延びる一対の第1フレーム10であり、一対の延出部12が、フロントおよびリアフレーム2F,2Rの各々の両端部に設けられる。一対のサイドフレーム2A,2Bが、第2方向(車長方向)に延びる一対の第2フレーム20である。フロントフレーム2Fの両端部が、一対のサイドフレーム2A,2Bそれぞれの前端部と接合される。リアフレーム2Rの両端部が、一対のサイドフレーム2A,2Bそれぞれの後端部と接合される。これにより、4本のフレーム2F,2R,2A,2Bが、全体的に矩形枠状を形成する。例えば、フレーム体2の長辺は車長方向に延び、短辺は車幅方向に延びる。
【0021】
ここで、各フレーム2F,2R,2A,2Bの「内周部」とは、当該フレーム2F,2R,2A,2Bの長手方向と直交する幅方向において、フレーム体2の内周側の部分をいう。各フレーム2F,2R,2A,2Bの「外周部」とは、幅方向において内周側とは反対側であるフレーム体2の外周側の部分をいう。
【0022】
例えば、フロントフレーム2Fにおいては、車幅方向が長手方向であり、車長方向が幅方向であり、後側がフレーム体2の内周側であり、前側がフレーム体2の外周側である。リアフレーム2Rにおいては、前側が内周側であり、後側が外周側である。サイドフレーム2A,2Bにおいては、車長方向が長手方向であり、車幅方向が幅方向であり、車幅方向内側がフレーム体2の内周側であり、車幅方向外側がフレーム体2の外周側である。なお、車幅方向内側とは、バッテリーケース1が車両に搭載された状態(以下、単に「搭載状態」という)において当該車両の車幅中心に近づく側であり、車幅方向外側とは、当該車幅中心から遠ざかる側である。
【0023】
一対の第1フレーム10としてのフロントおよびリアフレーム2F,2Rは、互いに同様に構成されている。フロントフレーム2Fは、本体部11および一対の延出部12を有する。本体部11は、車幅方向に延びる。一対の延出部12は、本体部11の両端部それぞれから車幅方向に延びる。一対の延出部12は、本体部11の外周部に連続している。
【0024】
本体部11は、基部13および内側突出部14を有する。基部13は、車幅方向および上下方向に延びる。基部13は、一対の内側壁13aおよび外側壁13bと、側壁13a,13bの上端部同士を接続する上壁13cと、側壁13a,13bの下端部同士を接続する下壁13dとを有する。内側壁13aは、フロントフレーム2Fの内周部を構成するとともにフレーム体2の内周面を形成する。外側壁13bは、フロントフレーム2Fの外周部を構成する。基部13は、これら4つの壁13a~13dにより構成される矩形状の断面を有する。基部13は、上下方向において上壁と下壁との間で車幅方向に延びる1以上の仕切壁13eを更に有する。内側突出部14は、基部13の下端部から内周側へ突出し、車幅方向に延びる。
【0025】
図7および図8も併せて参照して、一対の延出部12の各々が、閉断面部15および板状部16を含む。閉断面部15は、基部13を延長することで構成される。板状部16は、基部13の外側壁13bを延長することで構成される。閉断面部15は、内側突出部14の上側に位置付けられる。板状部16は、閉断面部15の下側且つ車幅方向の先端側に位置付けられており、車長方向から見るとL字状である。なお、車幅方向の先端側とは、フロントフレーム2Fの右端部に設けられた延出部12においては右側を指し、フロントフレーム2Fの左端部に設けられた延出部12においては左側を指す。
【0026】
本実施形態では、フロントフレーム2Fが押出材からなる。フロントフレーム2Fの材料は、特に限定されない。耐候性、強度、重量、および成形性など各種設計要求を考慮すると、6000系アルミニウム合金は、フロントフレーム2Fの材料の好適例の一つである。延出部12は、押出成形により得られたフレーム素材を切削することによって形成される。フレーム素材の原形状は、長手方向において端から端まで本体部11と同等の一様な断面を有する。このようなフレーム素材の両端部に切削加工を施すことによって、一対の延出部12が本体部11と一体的に成形され、フロントフレーム2Fが製造される。
【0027】
本体部11に含まれる内側突出部14は、車幅方向外側に向けられた一対の端面11aを有する。一対の延出部12の各々は、内周側に向けられた内側面12aを有する。特に、板状部16は、L字状の内側面を形成する。内側突出部14の端面11aは、延出部12(特に、板状部16)の内側面12aと直交している。
【0028】
リアフレーム2Rは、フロントフレーム2Fに対し、上下方向の仮想軸周りに180度回転対称で配置される。一対の延出部12は、リアフレーム2Rの外周部(後部)に設けられる。
【0029】
図9を併せて参照して、各サイドフレーム2A,2Bは、基部21、内側突出部22、および外側突出部23を有する。基部21は、車長方向および上下方向に延びる。基部21は、一対の内側壁21aおよび外側壁21bと、側壁21a,21bの上端部同士を接続する上壁21cと、側壁21a,21bの下端部同士を接続する下壁21dとを有する。内側壁21aは、各サイドフレーム2A,2Bの内周部を構成すると共にフレーム体2の内周面を形成する。外側壁21bは、各サイドフレーム2A,2Bの外周部を構成する。基部21は、これら4つの壁21a~21dにより構成される矩形状の断面を有する。基部21は、上下方向において上壁21cと下壁21dとの間で車長方向に延びる1以上の仕切壁21eを更に有する。本実施形態では、単なる一例として、2つの仕切壁21eが、4つの壁21a~21dで囲まれた中空を上下方向に3等分するようにして、上下方向に互いに離れて配置されている。
【0030】
外側突出部23は、基部21の下端部から外周側(車幅方向外側)へ突出する。外側突出部23は、車体90、特にその一部を構成するサイドシル91に固定される。これにより、バッテリーケース1が搭載状態となる。サイドシル91は、矩形状の断面を有し、車長方向に延びる。外側突出部23の上面はサイドシル91の下面と上下方向に接触し、基部21の外周面はサイドシル91の内側面に接触する。この状態で、外側突出部23に下から上に向けて挿通されるボルトで、フレーム体2がサイドシル91に締結される。
【0031】
内側突出部22は、基部21の下端部から内周側(車幅方向内側)へ突出し、車幅方向に延びる。基部21と内側突出部22とは、車長方向の両端部において面一の端面を形成し、また、面一の下面を形成する。内側突出部22の側面は、基部21の側面に対し、内側突出部22の基部21からの突出量だけ車幅方向にオフセットされる。内側突出部22の側面は、基部21の側面と、内側突出部22の上面を介して連続している。
【0032】
図10Aおよび図10Bを併せて参照して、右サイドフレーム2Aの前端部は、フロントフレーム2Fの右端部に接合される。このとき、内側突出部22の側面が、本体部11としての内側突出部14の端面11aと面接触される。また、右サイドフレーム2Aの前端面は、延出部12としての板状部16の内側面12aと面接触される。右サイドフレーム2Aの基部21の前端面は、L字状の板状部16のうち閉断面部15よりも車幅方向先端側(右側)の部位に接触する。右サイドフレーム2Aの内側突出部22の前端面は、L字状の板状部16のうち閉断面部15よりも下側の部位に接触する。右サイドフレーム2Aの外側突出部23は、フロントフレーム2Fとは接触せず、フロントフレーム2Fおよび右サイドフレーム2Aが成す角部から、車幅方向外側(右側)へ突出する。右サイドフレーム2Aの基部21の側面は、閉断面部15の端面と面接触する。右サイドフレーム2Aの内側突出部22の上面は、閉断面部15の下面に面接触してもよく、閉断面部15の下面と僅かなクリアランスをあけて上下方向に対向されていてもよい。
【0033】
接合には溶接が好適に適用される。この場合、溶接線が、右サイドフレーム2Aとフロントフレーム2Fとを接合する接合部2Wとなる。溶接線は、例えば、次の箇所で延在する。(1)基部21の端面と板状部16の外面との境界、(2)基部21の上面と閉断面部15の上面との境界、(3)基部21の側面と閉断面部15の内側面との境界、(4)内側突出部22の上面と閉断面部15の内側面との境界、(5)内側突出部22の上面と内側突出部14の上面との境界、および(6)内側突出部22の側面と内側突出部14の側面との境界である。
【0034】
このようにして、右サイドフレーム2Aの前端部は、その端面がフロントフレーム2Fの右端部の延出部12の内側面12aと面接触し且つその側面が本体部11の端面11aと面接触した状態で、フロントフレーム2Fに接合される。右サイドフレーム2Aの後端部とリアフレーム2Rの右端部の組、左サイドフレーム2Bの前端部とフロントフレーム2Fの左端部の組、および左サイドフレーム2Bの後端部とリアフレーム2Rの左端部の組についても、これと同様である。
【0035】
<クロスメンバ>
図11および図12を参照して、複数のクロスメンバ4は、互いに同様の構造を有する。クロスメンバ4は、押出材からなる。クロスメンバ4は、密閉性を有する収容空間内に設けられることから、耐水性あるいは耐候性が低い材料を用いることを許容される。その分、強度や軽量性を重視することを許容され、7000系アルミニウム合金は、クロスメンバ4の材料として好適に利用可能である。
【0036】
クロスメンバ4は、隔壁部41および一対の突出部42を有する。本実施形態では、押出成形によって、隔壁部41と一対の突出部42とが一体に成形され、互いに継ぎ目なく連続する。
【0037】
隔壁部41は、車幅方向および上下方向に延びる。隔壁部41は、矩形状断面を有し、当該断面の長辺が上下方向に延び、短辺が車長方向に延びる。隔壁部41は、一対の側壁41a,41bと、側壁41a,41bの上端部同士を接続する上壁41cと、側壁41a,41bの下端部同士を接続する下壁41dとを有する。一対の側壁41a,41bは、隔壁部41の一対の側面を形成する。一対の突出部42は、隔壁部41の下端部から隔壁部41の両側面よりも車長方向の両側へ突出し、車幅方向に延びる。本実施形態では、隔壁部41の下面が、一対の突出部42の下面と面一であり、クロスメンバ4は、逆T字状の断面を有する。
【0038】
クロスメンバ4の車幅方向の両端面は、一対のサイドフレーム2A,2Bの内側面それぞれに面接触した状態または近接対向した状態で、一対のサイドフレーム2A,2Bそれぞれに接合される。本実施形態では、一対のサイドフレーム2A,2Bが、内側突出部22を有している。このため、各サイドフレーム2A,2Bの内側面の下部(内側突出部22の内側面)は、内側面の上部(基部21の内側面)と車幅方向においてオフセットされている。この形態において、隔壁部41の両端部は一対の突出部42に対して車幅方向の両側へ突出している。隔壁部41の両端面が、一対のサイドフレーム2A,2Bの基部21の内側面に接合される。一対の突出部42の両端面が、一対のサイドフレーム2A,2Bの内側突出部22の内側面に接合される。これにより、サイドフレーム2A,2Bの内側突出部22の上面と、クロスメンバ4の一対の突出部42の上面とが面一となる。これら4つの上面は、平面視で矩形枠状である。
【0039】
複数のクロスメンバ4が、このようにしてフレーム体2に接合されることで、収容空間Sが、クロスメンバ4の本数よりも1多い数の分割空間Sa~Sdに分割される。複数の分割空間Sa~Sdは、クロスメンバ4が平行に延びる方向(車幅方向)と直交する方向(車長方向)に並べられる。
【0040】
隔壁部41は、4つの壁41a~41dにより構成される矩形状の断面を有すると共に、上下方向において上壁41cと下壁41dとの間で車幅方向に延びる1以上の仕切壁41eを更に有する。本実施形態では、隔壁部41が2つの仕切壁41eを有し、隔壁部41と接合されるサイドフレーム2A,2Bの基部21も2つの仕切壁21eを有する。搭載状態(もしくは、バッテリーケース1の組付状態)において、隔壁部41の仕切壁41eは、基部21の仕切壁21eと上下方向において同じ位置にある。このため、サイドフレーム2A,2Bに側方から入力された荷重を仕切壁21eから仕切壁41eに円滑に伝達することができ、クロスメンバ4が荷重を受け止めることができる。
【0041】
<支持板>
図2図3図12、および図13を参照して、各支持板セグメント3a~3dは、対応する分割空間Sa~Sd内に配置され、一対のサイドフレーム2A,2Bそれぞれの内側突出部22の上面に支持されるとともに、クロスメンバ4の一対の突出部42それぞれの上面に支持される。支持板セグメント3a~3dの外周縁部と、これら上面との間では、溶接などの線接合が行われたうえでシール剤が塗布されてもよい。これにより、支持板3の上側にある収容空間Sが、支持板3の下側の空間からシールされ、収容空間Sの密閉性(防水性および防塵性)が向上する。
【0042】
<アンダーカバー>
アンダーカバー5は、本実施形態では単一の部品で構成されており、フレーム体2および支持板3を全体的に下から覆う。アンダーカバー5は、フレーム体2の下面およびクロスメンバ4の下面に締結される。
【0043】
これにより、支持板3とアンダーカバー5との間に空間S2が形成される。空間S2は、支持板セグメント3a~3dを介して分割空間Sa~Sdの下方に位置付けられ、クロスメンバ4の突出部42あるいはフレーム体2の内側突出部22と同等の高さを有する。
【0044】
なお、後述するが、本実施形態では、クロスメンバ4が隔壁部と一対の突出部とを含むため、バッテリーケース1の強度が向上し、収容空間S内に配置される隔壁部を細くすることが許容される。これを受け、従前の形態との対比において、(1)クロスメンバ4の本数を増やして更なる強度向上を図ると共に積載効率(すなわち、クロスメンバ4の幅の総和)を維持する形態や、(2)クロスメンバ4の本数を維持してクロスメンバ4の幅の総和を減らし、それにより強度および積載効率をともに向上させる形態とすることが考えられる。
【0045】
他方、各クロスメンバ4の下面には、アンダーカバー5との締結のためボルトが挿し通される複数の締結点が設定される。形態(1)および(2)のいずれにおいても、バッテリーケース1の全体としての締結点の車長方向(クロスメンバ4の長手方向と直交する方向)における間隔を短くすることができる。それにより、バッテリーケース1が路面から荷重を受けたときに、アンダーカバー5の強度を確保できる。
【0046】
形態(1)においては、単なる一例として、複数の締結点が、各クロスメンバ4の下面上で、車幅方向に直線的に配列された1列の締結点列を成していてもよい。クロスメンバ4の本数が増えるため、バッテリーケース1を全体として見たときに、隣接する締結点列の間隔が狭まり、衝突荷重に対する強度が向上する。形態(2)においては、単なる一例として、複数の締結点が、各クロスメンバ4の下面上で、車幅方向に直線的に配列された2列の締結点列をなしていてもよく、この場合、2列の締結点列は、例えば、一対の突出部42それぞれの下面に設定される。これにより、クロスメンバ4の本数を減らしながら締結点列の個数を増やすことができ、衝突荷重に対する強度が向上する。
【0047】
<冷却機構>
図3および図13を参照して、バッテリーケース1には、収容空間Sに収容されているバッテリーBを冷却する冷却機構7が設けられている。冷却機構7は、液冷式であり、液体状の冷媒を通流させる冷媒通路70を有する。冷媒は、例えば、水にエチレングリコールを混合してなるロングライフクーラントである。冷媒を圧送するポンプ79aや、冷媒を冷却するためのラジエータ79bは、バッテリーケース1の外部に設けられ、バッテリーケース1の外部で取り回されたホースを介してバッテリーケース1に内在する冷媒通路70と接続される。
【0048】
バッテリーケース1には、バッテリーケース1外の配管材が接続される流入口70aおよび流出口70bが設けられている。冷媒通路70は、流入口70aから流出口70bへと冷媒を通流させる。流入口70aおよび流出口70bは、フレーム体2に設けられている。フレーム体2の一対の第1フレーム10(本実施形態では、フロントおよびリアフレーム2F,2Rと対応)が、合計4つの延出部12を有しており、流入口70aは、一対の第1フレーム10のいずれかのうち一方側の延出部12に設けられ、流出口70bは、一対の第1フレーム10のいずれかのうち他方側の延出部12に設けられる。流入口70aの選択肢が4、流出口70bの選択肢は1つの流入口70aに対して2であるので、流入口70aおよび流出口70bの配置の組合せは8通りあるが、いずれが採用されてもよい。単なる一例として、本実施形態では、流入口70aが、フロントフレーム2Fの右側の延出部12に設けられ、流出口70bが、フロントフレーム2Fの左側の延出部12に設けられている。
【0049】
冷媒通路70は、一対のサイドフレーム2A,2Bの内部に形成されるフレーム内通路71と、フレーム内通路71と連通されて支持板3の内部に形成される板内通路72と、フレーム内通路と71板内通路72とを接続する配管材73とを含む。このように、冷媒は、支持板3の内部を通過するようになっており、冷媒は、支持板3上に支持されているバッテリーBとの間で、支持板3を介した固体伝熱によって熱交換を行う。支持板3は、バッテリーBを支持する役割のみならず、バッテリーBから熱を奪う冷却板としての役割を果たす。
【0050】
フレーム内通路71は、流入口70aと連通される流入通路71aと、流出口70bと連通される流出通路71bとを含む。流入通路71aおよび流出通路71bは、一対の第2フレーム20(本実施形態では、一対のサイドフレーム2A,2Bと対応)に分かれて設けられている。流入通路71aは、一対の第2フレーム20のうち、流入口70aが設けられている一方側の第2フレーム20に設けられている。流出通路71bは、一対の第2フレーム20のうち、流出口70bが設けられている他方側の第2フレーム20に設けられている。本実施形態では、単なる一例として、流入口70aが、フロントフレーム2Fの右方の延出部12に設けられており、流入通路71aが、右サイドフレーム2Aに設けられている。流出口70bが、リアフレーム2Rの左方の延出部12に設けられており、流出通路71bが、左サイドフレーム2Bに設けられている。
【0051】
流入通路71aおよび流出通路71bは、第2フレーム20(本実施形態では、一対のサイドフレーム2A,2Bと対応)の内側突出部22にそれぞれ設けられている。本実施形態では、各サイドフレーム2A,2Bが、押出材で一体成形されており、内側突出部22は、第2フレーム20の延在方向に沿って延びる中空部を形成する。フレーム内通路71(流入通路71aおよび流出通路71b)は、このように押出時に成形される中空部により構成される。
【0052】
各支持板セグメント3a~3dは、平面視で矩形状である。各支持板セグメント3a~3dは、蓋板31および溝形成板32を有する。溝形成板32は、蛇行して延びる溝33を有し、蓋板31が溝形成板32に重ね合わされることで、溝33が閉塞されて板内通路72が形成される。溝形成板32は、溝33の一端部を外部に開放する流入接続口34a~34dと、溝33の他端部を外部に開放する流出接続口35a~35dとを有する。溝33の一端部ひいては流入接続口34a~34dは、支持板3の車幅方向の一方側(本実施形態では、右側)に配置され、溝33の他端部ひいては流出接続口35a~35dは、支持板3の差幅方向の他方側(本実施形態では、左側)に配置される。
【0053】
流入通路71aは、車長方向に並ぶ複数の流出接続口74a~74dを介し、外部に開放される。流出接続口74a~74dは、概略等間隔をあけて互いに離れて配置されており、複数の分割空間Sa~Sdひいては複数の支持板セグメント3a~3dと一対一で対応している。流出通路71bについてもこれと同様である。流出通路71bは、複数の流入接続口75a~75dにおいて外部に開放されており、複数の流入接続口75a~75dは、車長方向に等間隔をあけて配置され、複数の分割空間Sa~Sdひいては複数の支持板セグメント3a~3dと一対一で対応している。
【0054】
配管材73は、各分割空間Sa~Sdあるいは各支持板セグメント3a~3dに対し、流入側と流出側とで2つ設けられている。流入側と流出側とで2つ1組の配管材73が、分割空間Sa~Sdひいては支持板セグメント3a~3dと同数設けられている。各分割空間Sa~Sdに着目すると、流入側の配管材73は、車幅方向の一方側において、流入通路71aの流出接続口74a~74dを支持板セグメント3a~3dの流入接続口34a~34dに接続している。流出側の配管材73は、車幅方向の他方側において、支持板セグメント3a~3dの流出接続口35a~35dを流出通路71bの流入接続口75a~75dに接続している。
【0055】
フレーム内通路71の流入接続口74a~74dおよび流出接続口75a~75dは、内側突出部22の内側面に開口しており、車幅方向の内側に向けられている。他方、板内通路72の流出接続口34a~34dおよび流入接続口35a~35dは、支持板セグメント3a~3dの下面に開口し、下方に向けられている。配管材73は、各サイドフレーム2A,2Bから車幅方向内側へ延び、上方へ屈曲して支持板セグメント3a~3dに接続される。取り回しがコンパクトであり、配管材73は、支持板3の下面とアンダーカバー5の上面との間の空間S2に収容される。
【0056】
サイドフレーム2A,2Bの内側突出部22は、収容空間Sあるいは分割空間Sa~Sdを画定する内周面を有する基部21に対し、車幅方向内側へ突出している部位である。支持板3は、この内側突出部22上に支持される。フレーム内通路71は、このような内側突出部22の内部に設けられることから、内周面よりも車幅方向の内側に配置され且つ支持板3よりも下側に配置されている。
【0057】
<作用効果>
本実施形態に係るバッテリーケース1は、平面視で矩形枠状であるフレーム体2を備え、フレーム体2が、車幅方向に延びるフロントおよびリアフレーム2F,2R、および車長方向に延びる一対のサイドフレーム2A,2Bを有する。フロントおよびリアフレーム2F,2Rの各々が、車幅方向に延びる本体部11と、本体部11の車幅方向の両端部それぞれから車幅方向に延びる一対の延出部12とを有し、一対の延出部12は、フロントおよびリアフレーム2F,2Rの各々の外周部に設けられている。本体部11の両端部の各々は、車幅方向に向けられた端面11aを有し、一対の延出部12の各々は、車長方向に向けられた内側面12aを有する。フロントおよびリアフレーム2F,2Rの各々の端部にて、本体部11の端面11aと延出部12の内側面12aとが直交する。一対のサイドフレーム2A,2Bの各々の両端部は、その端面が延出部12の内側面12aと面接触し且つその側面が本体部11の端面11aと面接触した状態で、フロントおよびリアフレーム2F,2Rにそれぞれ接合されている。
【0058】
上記構成によれば、車両が側方から衝突荷重を受けたときには、本体部11の端面11aおよびこれと面接触するフロントおよびリアフレーム2F,2Rの側面で、荷重が受け止められる。車両が前方または後方から衝突荷重を受けたときには、延出部12の内側面12aおよびこれと面接触するサイドフレーム2A,2Bの端面で、荷重が受け止められる。フレーム体2に内在する接合部2Wに作用する剪断荷重が大幅に軽減される。よって、バッテリーケース1の強度が改善される。
【0059】
フロントおよびリアフレーム2F,2Rに関し、本体部11は、矩形状断面を有する基部13と、基部13の下端部から車長方向においてフレーム内周側へ突出するとともに車幅方向に延びる内側突出部14とを含む。他方、一対のサイドフレーム2A,2Bの各々は、矩形状断面を有する基部21と、基部21の下端部から車幅方向においてフレーム内周側へ突出する内側突出部22とを含む。これにより、基部13の矩形断面で前方または後方からの衝突荷重を吸収でき、基部21の矩形断面で側方からの衝突荷重を吸収できる。よって、バッテリーケース1の強度が向上する。フロントおよびリアフレーム2F,2Rが内側突出部14を有するため、これらフレーム2F,2Rの断面積が大きくなり、強度が向上する。内側突出部22を有するサイドフレーム2A,2Bについても、これと同様である。
【0060】
基部13が、車長方向に互いに対向する内側壁13aおよび外側壁13bを有する。一対の延出部12の各々が、内側突出部14の上側で基部13を延長することで構成される閉断面部14と、閉断面部14の下側および車幅方向の先端側で外側壁13bを延長することで構成された板状部15とを含む。内側突出部14は、内側突出部22の側面と面接触し、閉断面部15は、基部21の側面と面接触し、板状部16は、基部21および内側突出部22の端面と面接触している。これにより、延出部12は、内側突出部14よりも車幅方向の先端側且つ内側突出部14よりもフレーム外周側に設けられることになる。延出部12は、閉断面部15と板状部16とを含み、板状部16が、閉断面部15の下側および車幅方向の先端側でL字状である。このため、フロントおよびリアフレーム2F,2Rと、一対のサイドフレーム2A,2Bとの両方に内側突出部22が設けられていても、双方の内側突出部14,22を干渉させることなく面接触させた状態で接合できる。延出部12の閉断面部15は、矩形断面を有する基部13の延長により構成され、延出部12の板状部16は、基部13の外側壁13bの延出部12の延長により構成される。このため、延出部12を容易に成形できる。
【0061】
フロントおよびリアフレーム2F,2Rは押出材から成形されてもよい。この場合、一対の延出部12を切削加工によって成形可能であり、本体部11および一対の延出部12の一体化を容易に実現できる。
【0062】
本実施形態に係るバッテリーケース1は、平面視で矩形枠状のフレーム体2と、フレーム体2の下部に設けられ、バッテリーBを支持する支持板3と、バッテリーBを冷却するための液体状の冷媒が通流する冷媒通路70とを備える。フレーム体2の内周面と支持板3の上面とが、バッテリーBを収容するための収容空間Sを画定している。フレーム体2は、一対のサイドフレーム2A,2Bを備え、一対のサイドフレーム2A,2Bの各々は、上下方向および車長方向に延びる基部21と、基部21の下端からフレーム内周側に突出する内側突出部22とを有する。冷媒通路70は、一対のサイドフレーム2A,2Bの内部に形成されるフレーム内通路71と、フレーム内通路71と連通されて支持板3の内部に形成される板内通路72とを含む。支持板3は、内側突出部22上に支持される。基部21は、収容空間Sを画定する内周面の一部を構成する。フレーム内通路71は、内側突出部22に設けられる。
【0063】
上記構成によれば、支持板3が、バッテリーBの収容空間Sを画定すると共にバッテリーBを支持し、冷媒通路70が、支持板3内の板内通路72を含む。板内通路72を通流する冷媒が、支持板3を介した固体伝熱によりバッテリーBと熱交換可能であり、バッテリーBの冷却性能が向上する。板内通路72は、フレーム体2の内部に形成されるフレーム内通路71と連通している。これにより、冷媒が、フレーム内通路71から板内通路72へ、またはその逆に流れることができ、支持板3に対する冷媒の給排によって冷却性能を向上するという構成を実現できる。
【0064】
フレーム内通路71は、内側突出部22に設けられている。そのため、フレーム内通路71は、フレーム体2の内周面(特に、基部21により構成される内周面)よりも車幅方向の内側且つ支持板3よりも下側に配置されることになる。これにより、車両に側方からの衝突荷重が作用した場合、サイドフレーム2A,2Bの基部21が側方からの荷重を受け持つ。基部21は、フレーム内周側へ曲がるようにして変形するおそれがあるが、内側突出部22は、基部21の下端に設けられてフレーム内周側へ突出することから、荷重の影響を受けにくい。このため、荷重でフレーム内通路71が破断しにくく、冷却機構7が保護される。仮にフレーム内通路71が破断しても、フレーム内通路71は、支持板3よりも下方に位置付けられるため、フレーム内通路71から漏れ出た冷媒が収容空間Sに浸入しにくい。そのため、バッテリーBの防液性も高い。特に本実施形態では、支持板3と内側突出部22との間にシール剤を設けたことで収容空間Sの密閉性が向上しているため、収容空間Sへの冷媒の浸入を一層防止しやすい。
【0065】
一対のサイドフレーム2A,2Bの各々が、基部21の下端か車幅方向の外側に突出する外側突出部23を有し、車体フレームが外側突出部23の上面に取り付けられ、内側突出部22の上面が、外側突出部23の上面よりも下方に位置付けられる。これにより、車両に側方からの衝突荷重が入力されると、車体フレームを介し、バッテリーケース1のうち外側突出部23の上面よりも上方の部位に荷重が作用する。内側突出部22の上面が外側突出部23の上面よりも下方に位置付けられていると、フレーム内通路71に入力される荷重を大幅に軽減できるため、冷却機構7の保護性が向上する。
【0066】
一対のサイドフレーム2A,2Bの各々が、押出材からなり、フレーム内通71路が、押出時に成形される中空部により構成されて一対のサイドフレーム2A,2Bの各々に一体化されている。これにより、サイドフレーム2A,2Bの長手方向に沿って長尺のフレーム内通路71を容易に実現できる。
【0067】
バッテリーケース1は、内側突出部22の下面に取り付けられるアンダーカバー5を更に備える。冷媒通路70が、フレーム内通路71と板内通路72とを接続する配管材73を含む。配管材73は、支持板3とアンダーカバー5との間の空間S2に収容される。配管材73は、バッテリーBの収容空間Sから支持板3により隔絶されると共にケース下外部からアンダーカバー5で隔絶された空間S2に配置される。車両走行中に路面から巻き上げられる砂礫や水で配管材73が汚損するのを防止でき、また、衝突等の影響を受けて配管材73から冷媒が漏れ出るような事態が生じても、バッテリーBを冷媒から保護できる。
【0068】
フレーム内通路71の流出接続口74a~74dが、車幅方向に向けられる。これにより、支持板3とアンダーカバー5との間の空間S2内で配管材73を取り回すにあたり、配管材73がコンパクトになる。また、フレーム内通路71の破断時に冷媒が上方の収容空間Sに向かいにくく、バッテリーBを冷媒から保護できる。
【0069】
延出部12に、冷媒通路70の流入口70aまたは流出口70bが設けられ、冷媒通路70のフレーム内通路71が、流入口70aおよび流出口70bと連通する。内側突出部22の端面が延出部12と面接触する形態においては、この延出部12に貫通孔を開けるだけで、サイドフレーム2A,2Bの延在方向に沿って長尺のフレーム内通路71をフレーム体2の外部に連通させることができる。バッテリーケース1の強度を確保しながら、冷却機構7の構成を簡素化可能となる。
【0070】
本実施形態に係るバッテリーケース1は、フレーム体2の内部に設けられた1以上のクロスメンバ4と、フレーム体2の下部に設けられてバッテリーBを支持する支持板3と、フレーム体2および支持板3を下から覆うアンダーカバー5とを備える。1以上のクロスメンバ4は、フレーム体2の内部で車幅方向に延び、一対のサイドフレーム2A,2B同士を接続する。クロスメンバ4が、隔壁部41および一対の突出部52を有する。隔壁51部は、車幅方向および上下方向に延びる。一対の突出部42は、隔壁部41の下端部から隔壁部41の両側面よりも車長方向の両側に突出し、車幅方向に延びる。隔壁部451および一対の突出部42の車幅方向の両端部が、一対のサイドフレーム2A,2Bの内側面それぞれに接続される。支持板3が、突出部42の上面に支持され、アンダーカバーが5、クロスメンバ4の下面に取り付けられている。
【0071】
上記構成によれば、バッテリーBが、支持板3の上面およびフレーム体2の内周面により画定された収容空間Sに収容され、隔壁部41が収容空間Sを車長方向に仕切る。クロスメンバ4は、支持板3ひいては収容空間Sの下方に位置付けられる一対の突出部42を有しており、一対の突出部42も、一対のサイドフレーム2A,2Bの内側面それぞれに接続される。このため、車両に側方からの衝突荷重が作用したときに、一対の突出部42にも荷重を伝達することが可能になる。その分、バッテリーケース1の強度を落とすことなく隔壁部41の幅(車長方向の寸法)を小さくすることが許容され、隔壁部41による収容空間Sの縮小が軽減される。このように、バッテリーケース1の強度を確保することと、バッテリーBの積載効率を改善することとを両立できる。
【0072】
クロスメンバ4が押出材からなり、隔壁部41と一対の突出部42とが一体成形されている。これにより、隔壁部41および一対の突出部42を有するクロスメンバ4を容易に実現できる。クロスメンバ5が、7000系アルミニウム合金からなる。7000系は高い強度を有する素材であることから、バッテリーケース1の強度が向上する。なお、本実施形態では、クロスメンバ4が配置される空間の防水性が高められており、そのため、7000系を用いてもクロスメンバ4のSCC(応力腐食割れ)の発生を抑制することができる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、図14を参照して、上記実施形態との相違を中心に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0074】
本実施形態においては、突出部42の上壁42cおよび下壁42dが、厚肉部43a,43bをそれぞれ有する。厚肉部43a,43bでは、局所的に他の残余の部位に比して、大きい板厚を有している。
【0075】
上壁42cの厚肉部43aは、車幅方向において中央側、すなわち隔壁部41が配置されている側に設けられている。支持板3の縁部は、この厚肉部41aの上に支持される。支持板3は、上から下向きに挿通されるボルト81aでクロスメンバ4の突出部42に締結される。厚肉部43aには、雌ねじ44aが形成されており、ボルト81aは、厚肉部43aの雌ねじ44aに螺合される。
【0076】
下壁42dの厚肉部43bは、一対の突出部42のうちの一方に設けられており、当該突出部42の車幅方向の中央部に設けられている。厚肉部43bは、タッピング加工により形成されている。タッピング加工により、下壁42dには、下面から上方に延びる筒部43cが設けられるとともに、筒部43cの内側が雌ねじ穴44bとなる。筒部43cの板厚は、下壁42dの残余の部位と同等であるが、筒部43cの高さは、下壁42bの板厚よりも大きい。そのため雌ねじ穴44bが設けられている部位は、下壁42dの残余の部位と比べて上下方向における寸法が大きい。アンダーカバー5は、下から上向きに挿通されるボルト81bでクロスメンバ4の突出部42に締結される。ボルト81bは、下壁42dの雌ねじ穴44bに螺合される。
【0077】
このように、局所的に板厚が大きい厚肉部42a,42bを形成し、ボルト81a,81bが厚肉部42a,42bに螺合されるので、ボルト81a,81bによる接合強度が向上する。また、厚肉部42a,42bを設けると、ヘリサート加工が容易になる。締結構造の耐久性を容易に向上させることができ、メンテナンス作業等のためにアンダーカバー5を繰返し着脱することが許容される。
【0078】
(第3実施形態)
次に、図15を参照して、上記実施形態との相違を中心に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0079】
上記実施形態では、隔壁部41が、矩形状の断面を有する、すなわち、一対の側壁41a,41b、上壁41c、および下壁41dを有するものとしている。この定義にしたがって、本実施形態では、一対の突出部42が、側壁41a,41bの下端から突出しているのではなく、隔壁部41の下壁41dの下方に設けられている。一対の突出部42は、隔壁部41の下壁41dの車幅方向中央部から下方に延びる仕切り壁41fで車幅方向に仕切られている。各突出部42の上面は、下壁41dの上面と上下方向において略同じ位置に位置付けられている。
【0080】
この場合においても、隔壁部41および一対の突出部42の両端部が、一対のサイドフレーム2A,2Bの内周面に接合される。これにより、第1実施形態と同様にして、バッテリーケース1の強度を確保することと、バッテリーBの積載効率を向上することとを両立できる。
【0081】
(第4実施形態)
次に、図16を参照して、上記実施形態との相違を中心に、本発明の第4実施形態について説明する。
【0082】
本実施形態においても、一対の突出部42が、隔壁部41の下壁の下方に設けられている。第3実施形態では、下壁41dの車幅方向の中央部から下方に延びる仕切り壁41fで車幅方向に仕切られると共に、一対の突出部42の車幅方向の先端部同士を車幅方向に接続する共通の底壁が設けられ40a、クロスメンバ4が全体として逆T字状の断面を有する。
【0083】
これに対し、本実施形態では、一対の突出部42が、車長方向に分かれている。一方の突出部42(例えば、前側の突出部)の側壁42aは、隔壁部41の側壁41a,41bの一方(例えば、前側壁41a)と上下に連続されており、他方の突出部42(例えば、後側の突出部)の側壁42aは、隔壁部の側壁41a,41bの他方(例えば、後側壁41b)と上下方向に連続している。別の言い方では、第1実施形態のように、一対の突出部42が、隔壁部41の側壁41a,41b下端から車幅方向両側に突出している形態のクロスメンバから、隔壁部41の下壁41dが省略されている。
【0084】
この場合においても、隔壁部41および一対の突出部42の両端部が、一対のサイドフレーム2A,2Bの内周面にそれぞれ接合される。これにより、第1実施形態と同様にして、バッテリーケース1の強度を確保することと、バッテリーBの積載効率を向上することとを両立できる。
【0085】
(第5実施形態)
次に、図17を参照して、上記実施形態との相違を中心に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0086】
本実施形態では、隔壁部41が板状である。一対の突出部42は、隔壁部4の下端に設けられる。隔壁部41がその下方の仕切壁部41fと一体化され、一対の突出部42が仕切壁部41fを介して車長方向に連続しているともいえる。また、隔壁部41の両側面41g,41hから一対の突出部42が車長方向の両側に突出し、隔壁部41の下端部が一対の突出部42を車長方向に仕切っているともいえる。いずれにしても、支持板3が突出部42の上面に支持され、板状の隔壁部41は収容空間S内で車幅方向に延び、一対の突出部42は、収容空間Sの下方で車幅方向に延び、隔壁部41および一対の突出部42の両端部が、一対のサイドフレーム2A,2Bの内側面にそれぞれ接合される。
【0087】
この場合においても、バッテリーケース1の強度を確保することと、バッテリーBの積載効率を向上することとを両立できる。特に、隔壁部41が板状であるため、積載効率が一層向上する。
【0088】
(第6実施形態)
次に、図18を参照して、上記実施形態との相違を中心に、本発明の第6実施形態について説明する。
【0089】
本実施形態では、隔壁部41が、上部の板状部41Aと、下部の閉断面部41Bとを含む。一対の突出部42は、閉断面部41Bの下側に設けられている。板状部41Aは、閉断面部41Bの上壁から上方へ延びている。クロスメンバ4は、全体として車長方向に線対称の断面を有する。この場合においても、バッテリーケース1の強度を確保することと、バッテリーBの積載効率を向上することとを両立できる。
【0090】
(変形例)
これまで実施形態について説明したが、上記構成は、本発明の趣旨の範囲内で適宜追加、変更、または削除可能である。
【0091】
例えば、クロスメンバ4は、車幅方向に延びて一対のサイドフレーム2A,2Bの内周面に接合される場合に限定されない。クロスメンバ4は、車長方向に延びてフロントおよびリアフレーム2F,2Rの内周面にそれぞれ接合されてもよい。また、複数本のクロスメンバ4の全てが平行に延びている必要はなく、1つのバッテリーケース1に、車幅方向に延びる1以上のクロスメンバと、車長方向に延びる1以上のクロスメンバとが設けられていてもよい。車幅方向に延びるクロスメンバと、車長方向に延びるクロスメンバとが、収容空間内で互いに直交していてもよい。
【0092】
一対の突出部42は隔壁部41と別体であってもよい。その場合、突出部42を構成する部品が、溶接等の接合手段により隔壁部41を構成する部品と接合される。このように、隔壁部41と一対の突出部42とが、別体で構成されていても、バッテリーケース1の強度を確保することとバッテリーBの積載効率を向上することとを両立できる。クロスメンバ4の接合相手であるサイドフレーム2A,2Bが内側突出部22を有し、一対の突出部42の長さが、隔壁部41の長さよりも短くなる場合においては、隔壁部41と一対の突出部42とを別体とすることで、長さの違いに容易に対応できる。
【符号の説明】
【0093】
1 バッテリーケース
2 フレーム体
2F フロントフレーム
2R リアフレーム
2A 右サイドフレーム
2B 左サイドフレーム
10 第1フレーム
11 本体部
12 延出部
12a 内側面
13 基部(第1基部)
13a 内側壁
13b 外側壁
13c 上壁
13d 下壁
13e 仕切壁
14 内側突出部(第1内側突出部)
14a 端面
15 閉断面部
16 板状部
20 第2フレーム
21 基部(第2基部)
21a 内側壁
21b 外側壁
21c 上壁
21d 下壁
21e 仕切壁
22 内側突出部(第2内側突出部)
23 外側突出部
3 支持板
3a~3d 支持板セグメント
31 蓋板
32 溝形成板
33 溝
34a~34d 流入接続口
35a~35d 流出接続口
4 クロスメンバ
41 隔壁部
41a 内側壁
41b 外側壁
41c 上壁
41d 下壁
41e 仕切壁
42 突出部
5 アンダーカバー
6 トップカバー
7 冷却機構
70 冷媒通路
70a 流入口
70b 流出口
71 フレーム内通路
71a 流入通路
71b 流出通路
72 板内通路
73 配管材
74a~74d 流入通路の流出接続口
75a~75d 流出通路の流入接続口
79a ポンプ
79b ラジエータ
90 車体
91 サイドシル
B バッテリー
S 収容空間
Sa~Sd 分割空間
S2 アンダーカバーと支持板との間の空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18