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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066862
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ステントシステム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/848 20130101AFI20240509BHJP
【FI】
A61F2/848
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176629
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100206140
【弁理士】
【氏名又は名称】大釜 典子
(72)【発明者】
【氏名】原 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】勝間 秀人
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA42
4C267AA52
4C267AA80
4C267BB26
4C267CC07
4C267GG23
(57)【要約】
【課題】半永久的に留置することが可能であり、必要に応じて、容易に除去することが可能なステントシステム10を提供する。
【解決手段】ステント本体20と、当該ステント本体20を所定の長さに保持するための保持具30とを含み、前記ステント本体20は、第1の外径D1と、第1の長さL1とを有する第1の状態21と、前記第1の外径D1より大きい第2の外径D2と、前記第1の長さL1より短い第2の長さL2とを有する第2の状態22との間で、弾性的に遷移可能であり、前記保持具30は、前記ステント本体20の長さを前記第2の長さL2に保持することにより、前記ステント本体20を前記第2の状態に維持することができ、前記保持具30による前記ステント本体20の長さの保持を解除すると、前記ステント本体20は、前記第2の状態22から前記第1の状態21に弾性的に復元する、ステントシステム10。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント本体と、当該ステント本体を所定の長さに保持するための保持具とを含み、
前記ステント本体は、
第1の外径D1と、第1の長さL1とを有する第1の状態と、
前記第1の外径D1より大きい第2の外径D2と、前記第1の長さL1より短い第2の長さL2とを有する第2の状態との間で、弾性的に遷移可能であり、
前記保持具は、前記ステント本体の長さを前記第2の長さL2に保持することにより、前記ステント本体を前記第2の状態に維持することができ、
前記保持具による前記ステント本体の長さの保持を解除すると、前記ステント本体は、前記第2の状態から前記第1の状態に弾性的に復元する、ステントシステム。
【請求項2】
前記第2の外径D2は、前記第1の外径D1の4倍~13倍の範囲内にある、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項3】
前記ステント本体は、遠位端および近位端を有し、
前記保持具は、帯状部材から形成され、遠位部、近位部、および前記遠位部と前記近位部とを接続する中間部を有し、
前記保持具の遠位部および近位部の各々を、前記第2の状態における前記ステント本体の遠位端および近位端の各々に係止することにより、前記ステント本体を前記第2の状態に維持する、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項4】
前記保持具の前記中間部の長さL3は、前記第2の長さL2超、(L2+2.0mm)以下である、請求項3に記載のステントシステム。
【請求項5】
前記中間部の厚さt3は、0.15mm~0.80mmである、請求項3に記載のステントシステム。
【請求項6】
複数の前記保持具を含む、請求項3に記載のステントシステム。
【請求項7】
前記ステント本体は、
該ステント本体の長手方向の軸を中心として、第1の巻き方向でらせん状に巻いた、複数の第1のワイヤと、
前記長手方向の軸を中心として、前記第1の巻き方向とは異なる第2の巻き方向でらせん状に巻いた、複数の第2のワイヤと、を平織りして構成されたメッシュ構造を有し、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとは、それらの端部を除いて接合されていない、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項8】
前記第1の状態における、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの交差角θ1は8°~25°であり、
前記第2の状態における、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの交差角θ2は120°~175°である、請求項7に記載のステントシステム。
【請求項9】
前記第1の状態における前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤのピッチは、それぞれ、0.3mm~3.0mmの範囲内にあり、
前記第2の状態における前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤのピッチは、それぞれ、0.1mm~1.0mmの範囲内にあり、
前記第1の状態における各ワイヤのピッチは、前記第2の状態における各ワイヤのピッチより大きい、請求項7に記載のステントシステム。
【請求項10】
前記保持具は、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、タンタル、プラチナ、金、チタン合金、タンタル合金、プラチナ合金、金合金、ニッケル-チタン合金、コバルトベース合金、コバルト-クロム合金、ステンレス鋼、亜鉛-タングステン合金、およびニオブ合金からなる群から選択される1以上の材料から成る帯状部材から形成されている、請求項1に記載のステントシステム。
【請求項11】
前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤは、それぞれ、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、タンタル、プラチナ、金、チタン合金、タンタル合金、プラチナ合金、金合金、ニッケル-チタン合金、コバルトベース合金、コバルト-クロム合金、ステンレス鋼、亜鉛-タングステン合金、およびニオブ合金からなる群から選択される1以上の材料から成る線材から形成されている、請求項7に記載のステントシステム。
【請求項12】
前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤは、それぞれ、線径が0.03mm~0.25mmの範囲内にある、請求項7に記載のステントシステム。
【請求項13】
前記ステント本体は、2つ以上の層を積層した積層構造を有する、請求項1に記載のステントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はステント治療に用いられるステントシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血管や尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部に対して、ステント治療が行われている。ステント治療では、ステントデリバリー用デバイス(例えばカテーテル)を用いて、ステントを生体管腔の狭窄部まで送達し、そこでステントを拡張して狭窄部を拡げる。ステントは通常、狭窄部にそのまま留置される。ステントの主な種類として、バルーンカテーテルで拡張するバルーン拡張型ステントと、ステント自身が拡張機能を有する自己拡張型ステントとが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
バルーン拡張型ステントを用いたステント治療では、まず、カテーテルのシース(管体)の内部にステントを収納し、カテーテルを狭窄部まで前進させる。狭窄部に到達したら、ステントをシースから生体管腔内に排出する。次いで、ステントの内腔にバルーンカテーテルを挿入し、バルーンを膨張させることで、ステントを半径方向に拡張して狭窄部の内径を拡げる。狭窄部が適度な内径まで拡がったら、バルーンを縮小し、バルーンカテーテルを除去する。バルーン拡張型ステントは、塑性変形して拡張状態を維持できるので、バルーンカテーテルを除去した後も、狭窄部の内部に留まって狭窄部の内径を拡げた状態を維持できる。
【0004】
自己拡張型ステントを用いたステント治療では、まず、カテーテルのシースの内部に、縮径状態に弾性変形させたステントを収納し、カテーテルを狭窄部まで前進させる。狭窄部に到達したら、ステントをシースから生体管腔内に排出する。シースによる外力から解放された自己拡張型ステントは、それ自体の弾性によって半径方向に拡張して、狭窄部の内径を拡げることができる。ステントの弾性的な拡張を補助するために、バルーンカテーテルを用いてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-55484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のステントは、生体管腔内に半永久的に留置することを前提としている。長期的に安定して使用できるように、ステントは、生体管腔の所定位置で拡張して留置したときに生体管腔の内壁に僅かに食い込むように設計されている。これにより、ステントが生体管腔の所定位置から容易に脱離することを防止している。
ところが、ごく稀に、ステントを留置した狭窄部に病変が生じることや、ステントの留置状態に異常が生じることがあり、ステントを除去する必要が生じる場合がある。生体管腔の内壁に食い込んだステントは、ステントの外面から縮径方向に外力を付与しない限り、生体管腔から取り外すことはできない。カテーテルを用いた低侵襲の術式では、そのような操作は不可能なため、ステント除去ができなかった。そのため、ステント除去のために、侵襲性の高い手術(例えば、開腹手術、開胸手術、およびその他部位の切開を伴う手術)を行わざるを得なかった。
【0007】
ステント除去を可能にする方法として、生体内で溶解または分解する材料から製造したステント(生体溶解性または生体分解性のステント)を使用することが考えられる。しかしながら、狭窄部に病変が生じるタイミング(つまり、ステント除去が必要となるタイミング)は不明であり、そのタイミングでステントが都合よく溶解または分解する可能性は極めて低い。
また、生体溶解性または生体分解性のステントは、一定期間で体内から消滅するものであり、半永久的な留置は不可能であるため、ステントの再留置手術が必要になる。稀に起こり得るステント除去のために、生体溶解性または生体分解性のステントを用いることは、ステント留置術を繰り返し行うことを強いることになり、却って患者の負担を増加する。
【0008】
そこで、本発明の実施形態は、半永久的に留置することが可能であり、必要に応じて、容易に除去することが可能なステントシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様1は、
ステント本体と、当該ステント本体を所定の長さに保持するための保持具とを含み、
前記ステント本体は、
第1の外径D1と、第1の長さL1とを有する第1の状態と、
前記第1の外径D1より大きい第2の外径D2と、前記第1の長さL1より短い第2の長さL2とを有する第2の状態との間で、弾性的に遷移可能であり、
前記保持具は、前記ステント本体の長さを前記第2の長さL2に保持することにより、前記ステント本体を前記第2の状態に維持することができ、
前記保持具による前記ステント本体の長さの保持を解除すると、前記ステント本体は、前記第2の状態から前記第1の状態に弾性的に復元する、ステントシステムである。
【0010】
本発明の態様2は、
前記第2の外径D2は、前記第1の外径D1の4倍~13倍の範囲内にある、態様1に記載のステントシステムである。
【0011】
本発明の態様3は、
前記ステント本体は、遠位端および近位端を有し、
前記保持具は、帯状部材から形成され、遠位部、近位部、および前記遠位部と前記近位部とを接続する中間部を有し、
前記保持具の遠位部および近位部の各々を、前記第2の状態における前記ステント本体の遠位端および近位端の各々に係止することにより、前記ステント本体を前記第2の状態に維持する、態様1または2に記載のステントシステムである。
【0012】
本発明の態様4は、
前記保持具の前記中間部の長さL3は、前記第2の長さL2超、(L2+2.0mm)以下である、態様3に記載のステントシステムである。
【0013】
本発明の態様5は、
前記中間部の厚さt3は、0.15mm~0.80mmである、態様3または4に記載のステントシステムである。
【0014】
本発明の態様6は、
複数の前記保持具を含む、態様3~5のいずれか1つに記載のステントシステムである。
【0015】
本発明の態様7は、
前記ステント本体は、
該ステント本体の長手方向の軸を中心として、第1の巻き方向でらせん状に巻いた、複数の第1のワイヤと、
前記長手方向の軸を中心として、前記第1の巻き方向とは異なる第2の巻き方向でらせん状に巻いた、複数の第2のワイヤと、を平織りして構成されたメッシュ構造を有し、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとは、それらの端部を除いて接合されていない、態様1~6のいずれか1つに記載のステントシステムである。
【0016】
本発明の態様8は、
前記第1の状態における、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの交差角θ1は8°~25°であり、
前記第2の状態における、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの交差角θ2は120°~175°である、態様7に記載のステントシステムである。
【0017】
本発明の態様9は、
前記第1の状態における前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤのピッチは、それぞれ、0.3mm~3.0mmの範囲内にあり、
前記第2の状態における前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤのピッチは、それぞれ、0.1mm~1.0mmの範囲内にあり、
前記第1の状態における各ワイヤのピッチは、前記第2の状態における各ワイヤのピッチより大きい、態様7または8に記載のステントシステムである。
【0018】
本発明の態様10は、
前記保持具は、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、タンタル、プラチナ、金、チタン合金、タンタル合金、プラチナ合金、金合金、ニッケル-チタン合金、コバルトベース合金、コバルト-クロム合金、ステンレス鋼、亜鉛-タングステン合金、およびニオブ合金からなる群から選択される1以上の材料から成る帯状部材から形成されている、態様1~9のいずれか1つに記載のステントシステムである。
【0019】
本発明の態様11は、
前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤは、それぞれ、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、タンタル、プラチナ、金、チタン合金、タンタル合金、プラチナ合金、金合金、ニッケル-チタン合金、コバルトベース合金、コバルト-クロム合金、ステンレス鋼、亜鉛-タングステン合金、およびニオブ合金からなる群から選択される1以上の材料から成る線材から形成されている、態様7~10のいずれか1つに記載のステントシステムである。
【0020】
本発明の態様12は、
前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤは、それぞれ、線径が0.03mm~0.25mmの範囲内にある、態様7~11のいずれか1つに記載のステントシステムである。
【0021】
本発明の態様13は、
前記ステント本体は、2つ以上の層を積層した積層構造を有する、態様1~12のいずれか1つに記載のステントシステムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の実施形態に係るステントシステムは、半永久的に留置することが可能であり、必要に応じて、容易に除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1(a)は、実施形態に係るステント本体の第1の状態における概略正面図であり、図1(b)は、図1(a)の一部を拡大した概略部分拡大図であり、図1(c)は、図1(a)のステント本体を遠位端側(図中の上側)から観察した概略上面図である。
図2図2(a)は、実施形態に係る保持具の概略正面図であり、図2(b)は、図2(a)の保持具の概略断面図である。
図3図3(a)は、実施形態に係るステントシステムの概略正面図であり、第2の状態にあるステント本体を、保持具で固定している。図3(b)は、図3(a)の一部を拡大した概略部分拡大図であり、図3(c)は、図3(a)のステントシステムを遠位端側(図中の上側)から観察した概略上面図である。
図4図4は、別の実施形態に係るステント本体を遠位端側から観察した概略上面図であり、該ステント本体は積層構造を有している。
図5図5(a)~(c)は、実施形態に係るステントシステムの使用方法を説明するための概略正面図であり、図5(d)は、図5(a)のステントシステムを遠位端側(図中の上側)から観察した概略上面図である。
図6図6(a)~(d)は、実施形態に係るステントシステムの使用方法を説明するための概略断面図である。
図7図7(a)~(b)は、ステントシステムの除去方法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
実施形態に係るステントシステム10は、ステント本体20と、ステント本体20を拘束して、所定の形状に保持するための保持具30とを含む(図1図3)。以下に、ステント本体20および保持具30について、順次説明する。
【0025】
(ステント本体20)
ステント本体20は、内腔25を有する筒状部材であり、例えば金属細線のメッシュなどから構成される。ステント本体20は、遠位端20aおよび近位端20bを有する。
ステント本体20は、図1(a)に示すような第1の状態21と、図3(a)に示すような第2の状態22を取ることができる。
【0026】
図1(a)に示す第1の状態21は、ステント本体20に外力を付与していない(つまり拘束されていない)状態である。ステント本体20は、第1の外径D1と、第1の長さL1とを有している。
本明細書において、ステント本体20「外径」とは、筒状のステント本体20の外面の直径であり、「長さ」は、筒状のステント本体20の長手方向(図1(a)の長手方向の軸Cの延在方向)におけるステント本体20の最大長のことである。
【0027】
図3(a)に示す第2の状態22は、第1の状態21にあるステントを、長手方向に沿って圧縮した状態である。第2の状態22におけるステント本体20は、第2の外径D2と、第2の長さL2とを有している。
【0028】
第2の状態22における第2の外径D2は、第1の状態21における第1の外径D1より大きく、第2の状態22における第2の長さL2は、第1の状態21における第1の長さL1よりも短い。
【0029】
ステント本体20を、第1の状態21から第2の状態22に移行するためには、第1の状態21にあるステント本体20を、長手方向に沿って圧縮する。ステント本体20の第1の長さL1は、より短い第2の長さL2に変化し、それに伴い、ステント本体20の第1の外径D1は、より大きい第2の外径D2に変化する。
【0030】
第1の状態21から第2の状態22へは、弾性的に遷移する。つまり、第2の状態22において、外力を除くと、第1の状態21へと弾性的に復元する。このように、ステント本体20は、外力の付加または除去により、第1の状態21と第2の状態22との間を弾性的に遷移可能である。
【0031】
第2の状態22を維持するためには、外力を付与し続ける必要がある。本実施形態では、保持具30によって、ステント本体20を、圧縮後の短い長さ(第2の長さL2)に保持することで、ステント本体20を第2の状態22に維持する。
保持具30で第2の状態22に維持されたステント本体20は、保持具30によるステント本体20の保持を解除するだけで、第1の状態21に復元する。
【0032】
従来のステントでは、外径が小さい状態(本実施形態の「第1の状態21」に相当)から半径方向に拡張すると(本実施形態の「第2の状態22」)、ステント自体が有する構造的強度または半径方向外向きの弾性力により、ステントは、外径が大きい状態(第2の状態22)に維持される。そのため、ステントを半径方向に拡張した後に、拡張前の状態(第1の状態21)に戻すためには、半径方向内向きに応力をかける必要があった。カテーテルを用いた低侵襲の術式では、半径方向内向きに応力をかけて、拡張前の状態(第1の状態21)に戻すことは極めて困難であり、カテーテルを用いた術式によるステント除去は実質的に不可能であった。
【0033】
これに対し、実施形態のステント本体20は、保持具30によるステント本体20の保持を解除するだけで、ステント本体20を第2の状態22から第1の状態21に容易に戻すことができる。よって、ステント本体20を生体管腔内に留置後、カテーテルを用いた低侵襲の術式で、ステント本体20を除去することができる。
【0034】
第2の状態22における第2の外径D2は、拡径する生体管腔の部位、種類によって異なるが、通常は第1の状態21における第1の外径D1の4倍~13倍の範囲内にあることが好ましく、5倍~11倍の範囲内にあることがより好ましい。
第1の状態21では第1の外径D1が小さいので、ステント本体20の送達(生体管腔内を通して狭窄部まで運搬)を容易であり、第2の状態22では第2の外径D2が大きいので、狭窄部を効果的に拡張できる。
【0035】
図1(a)~(b)および図3(a)~(b)に示すように、ステント本体20は、複数のワイヤ200を平織りして筒状に編み上げた構成を有していてもよい。
ステント本体20は、巻き方向の異なる2種類のワイヤ200を含んでいる。第1のワイヤ201は、ステント本体20の長手方向の軸Cを中心として、第1の巻き方向201a(図1(a)~(c)および図3(a)~(c)では左巻き)で、らせん状に巻いたものである。第2のワイヤ202は、長手方向の軸Cを中心として、第1の巻き方向201a(左巻き)とは異なる第2の巻き方向202a(図1(a)~(c)および図3(a)~(c)では右巻き)で、らせん状に巻いたものである。
【0036】
ここで、「左巻き」とは、ステント本体20を遠位端20a側から観察した状態(例えば図1(c))で、遠位端20a側から近位端20b側に進むときのワイヤの巻き方向が、反時計回りであることを意味する。
「右巻き」とは、ステント本体20を遠位端20a側から観察した状態(例えば図1(c))で、遠位端20a側から近位端20b側に進むときのワイヤの巻き方向が、時計回りであることを意味する。
【0037】
複数の第1のワイヤ201と、複数の第2のワイヤ202とを、交互に上下させて平織りすることで、筒状のメッシュ構造を有するステント本体20を形成することができる。
ステント本体20の両端には、第1のワイヤ201の端部と第2のワイヤ202の端部が突出する。織り上げたワイヤ200がほどけることを防止するため、およびワイヤ200の端部が生体管腔の内壁を傷つけるリスクを低減するために、隣接する第1のワイヤ201と第2のワイヤ202との間で、それらの端部を溶接等により接合することが好ましい。図1(a)には、遠位側の接合部203aと、近位側の接合部203bが、それぞれ図示されている。接合部203a、203bで接合するとき、平織り部分から飛び出す第1のワイヤ201と第2のワイヤ202の端部を長めに残すことが好ましい。つまり、ステント本体20の両端に、接合部203a、203bで繋がったゆるみ(ループ)を形成することが好ましい。ゆるみ(ループ)は、ステント本体20の外径を、第1の外径D1から第2の外径D2に広げたときに、接合部203a、203bに強い引張り応力がかかることを抑制するバッファとして機能し得る(図1(a)、図3(a))。
【0038】
なお、ステント本体20が接合部203a、203bを有する場合、ステント本体20の遠位端20aおよび近位端20bは、接合部203a、203bで接合されたワイヤのループを除いた端部を指すものとする。
【0039】
ワイヤ200の端部を接合する接合部203a、203b以外では、第1のワイヤ201と第2のワイヤ202は接合されていないことが好ましい。ステント本体20が第1の状態21と第2の状態22との間を遷移するときに、第1のワイヤ201と第2のワイヤ202との交差部分が自由に摺動し得るので、それらの状態21、22の間をスムーズに遷移できる。
【0040】
図1(b)には、第1の状態21において、ステント本体20(ワイヤ200の平織り部分)を平面的に観察したときの、第1のワイヤ201と第2のワイヤ202との交差角θ1が示されており、図3(b)には、第2の状態における第1のワイヤ201と第2のワイヤ202との交差角θ2とが示されている。交差角θ1、θ2は、長手方向の軸Cに対するワイヤ200の傾斜の程度を知る指標になる。
交差角が小さいとき(例えば、図1(a)、(b)に示すように、ステント本体20が第1の状態21にあるとき)、ワイヤ200は、長手方向の軸Cに対する傾斜が小さい。このことは、ステント本体20が長く、外径が小さくなっていることを示唆している。
交差角が大きいとき(例えば、図3(a)、(b)に示すように、ステント本体20が第2の状態22にあるとき)、ワイヤ200は、長手方向の軸Cに対する傾斜が大きい。このことは、ステント本体20が短く、外径が大きくなっていることを示唆している。
【0041】
第1の状態21における交差角θ1は、8°~25°であることが好ましく、10°~20°であることがより好ましい。
第2の状態22における交差角θ2は120°~175°であることが好ましく、140°~170°であることがより好ましい。
これにより、ステント本体20の送達時(生体管腔内を通して狭窄部まで運搬するとき)における第1の状態21では、外径が小さいので送達が容易であり、一方、狭窄部に到達してステント本体20を第2の状態22にするときは、十分に大きい外径にすることができるので、狭窄部を効果的に拡張できる。
【0042】
各ワイヤ200はらせん状に形成されているため、各ワイヤ200のらせんのピッチ(らせんが一周したときの長手方向のシフト量)は、長手方向の軸Cに対するワイヤ200の傾斜の程度を知る指標になる。
らせんのピッチが大きいとき(例えば、図1(a)、(b)に示すように、ステント本体20が第1の状態21にあるとき)、ワイヤ200は、長手方向の軸Cに対する傾斜が小さい。このことは、ステント本体20が長く、外径が小さくなっていることを示唆している。
らせんのピッチが小さいとき(例えば、図3(a)、(b)に示すように、ステント本体20が第2の状態22にあるとき)、ワイヤ200は、長手方向の軸Cに対する傾斜が大きい。このことは、ステント本体20が短く、外径が大きくなっていることを示唆している。
【0043】
第1の状態21では、第1のワイヤ201および第2のワイヤ202のピッチは、それぞれ、0.3mm~3.0mmの範囲内にあることが好ましく、0.5mm~2.0mmの範囲内にあることがより好ましい。
第2の状態22では、第1のワイヤ201および第2のワイヤ202のピッチは、それぞれ、0.1mm~1.0mmの範囲内にあることが好ましく、0.2mm~0.7mmの範囲内にあることがより好ましい。
なお、第1の状態における各ワイヤのピッチは、第2の状態における各ワイヤのピッチより大きくなるように、ピッチを設定する。
【0044】
これにより、ステント本体20の送達時(生体管腔内を通して狭窄部まで運搬するとき)における第1の状態21では、外径が小さいので送達が容易であり、一方、狭窄部に到達してステント本体20を第2の状態22にするときは、十分に大きい外径にすることができるので、狭窄部を効果的に拡張できる。
さらに、
【0045】
また、らせんのピッチは、ステント本体20の長手方向におけるワイヤ密度(単位長さを横断するワイヤの本数)を知る指標となる。例えば、1本の第1のワイヤ201に着目したとき、その第1のワイヤ201のらせんのピッチをP(mm)とすると、単位長さ(mm)を横断する第1のワイヤの本数=1/P(mm-1)となる。
らせんのピッチが大きいとき(例えば、図1(a)、(b)に示すように、ステント本体20が第1の状態21にあるとき)、長手方向に伸びたらせんになり、長手方向におけるワイヤ密度が低下する。
らせんのピッチが小さいとき(例えば、図3(a)、(b)に示すように、ステント本体20が第2の状態22にあるとき)、巻きのきつい、長手方向に緻密に巻いたらせんになり、長手方向におけるワイヤ密度が上昇する。
【0046】
ステント本体20を生体管腔内に留置するとき、ステント本体20の外面から生体管腔の内壁に向かって、半径方向外向きに適切な圧力を付与し、これにより、生体管腔を拡げると共に、生体管腔の内壁にステント本体20を係止する。このとき、ステント本体20を構成するワイヤ200が生体管腔の内壁に食い込む。生体管腔の内壁に接するステント本体20の単位面積当たりのワイヤ本数が増えると、ワイヤ200の食い込みを緩和することができる。
内壁へのワイヤの食い込み緩和の観点から、第2の状態22における第1のワイヤ201および第2のワイヤ202のピッチを、それぞれ、0.1mm~1.0mmの範囲内にすることが好ましく、0.2mm~0.7mmの範囲内にすることがより好ましい。これにより、第1のワイヤ201および第2のワイヤ202が生体管腔の内壁に過度に食い込むことを緩和し得る。
【0047】
前記第1のワイヤ201および前記第2のワイヤ202は、それぞれ、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、タンタル、プラチナ、金などの単体金属材料、およびチタン合金、タンタル合金、プラチナ合金、金合金、ニッケル-チタン合金、コバルトベース合金、コバルト-クロム合金、ステンレス鋼、亜鉛-タングステン合金、ニオブ合金等の合金材料からなる群から選択される1以上の材料から成る線材から形成されていることが好ましい。それらの材料は、生体安全性が高く、また、ステント本体20に適切な弾性を付与することができる。
【0048】
第1のワイヤ201と第2のワイヤ202は、同じ材料からなる線材であってもよく、異なる材料からなる線材であってもよい。
複数の第1のワイヤ201が、全て同じ材料からなる線材であってもよく、一部の第1のワイヤ201が、他の第1のワイヤ201と異なる材料からなる線材であってもよく、全ての第1のワイヤ201が、異なる材料からなる線材であってもよい。
同様に、複数の第2のワイヤ202が、全て同じ材料からなる線材であってもよく、一部の第2のワイヤ202が、他の第2のワイヤ202と異なる材料からなる線材であってもよく、全ての第2のワイヤ202が、異なる材料からなる線材であってもよい。
第1のワイヤ201、第2のワイヤ202を構成する線材は、1つの材料からなる線材でも、複数の材料を含む複合材料からなる線材でもよい。
【0049】
第1のワイヤ201および第2のワイヤ202は、それぞれ、線径が0.03mm~0.25mmの範囲内にあることが好ましく、線径が0.07mm~0.20mmの範囲内にあることがより好ましい。そのような線径を有するワイヤは、適切な弾性と強度(ワイヤの切れにくさ)を有し得、生体管腔内に留置したときにワイヤが屈曲しにくく、軽量で耐久性に優れたステント本体20を得ることができる。
【0050】
第1のワイヤ201と第2のワイヤ202は、同じ線径材であってもよく、異なる線径であってもよい。
複数の第1のワイヤ201が、全て同じ線径であってもよく、一部の第1のワイヤ201が、他の第1のワイヤ201と異なる線径であってもよく、全ての第1のワイヤ201が、異なる線径であってもよい。
同様に、複数の第2のワイヤ202が、全て同じ線径であってもよく、一部の第2のワイヤ202が、他の第2のワイヤ202と異なる線径であってもよく、全ての第2のワイヤ202が、異なる線径であってもよい。
【0051】
ステント本体20は、2つ以上の層を積層した積層構造を有していてもよい。図4は、3層(第1の層221、第2の層222、第3の層223)を積層した積層構造を有するステント本体220の概略上面図である。なお、最も外側の第3の層223の外径を、積層構造を有するステント本体220の外径とみなす。
積層構造を有することにより、ステント本体220の強度を高めることができる。
【0052】
積層構造を有するステント本体220の製造方法の一例では、まず、最も内側の第1の層221を、図1(a)に示すステント本体20と同様に、ワイヤを平織りして作製する。第1の層221を構成するワイヤの端部を接合して処理した後、別のワイヤを用いて、第1の層221の外側に、第1の層221を覆うように第2の層222を作製する。第2の層222も、ワイヤを平織りして作製し得る。第2の層222を構成するワイヤの端部を接合して処理した後、さらに別のワイヤを用いて、第2の層222の外側に、第2の層222を覆うように第3の層223を作製する。第3の層223も、ワイヤを平織りして作製し得る。
【0053】
このように作製したステント本体220は、第1の層221、第2の層222および第3の層223の各々を構成するワイヤが互いに独立しているため、ステント本体220を、第1の状態と第2の状態との間で遷移させるとき、ワイヤ間の干渉を低減でき、それらの状態の間で遷移をスムーズにすることができる。
【0054】
(保持具30)
保持具30は、ステント本体20を第2の状態22に維持するために使用される。
上述したように、本実施形態のステント本体20は、外力がない状態では、第1の状態21をとる。そのため、ステント本体20を第2の状態22で維持するためには、外力を付与し続ける必要がある。保持具30は、第2の状態22において、長手方向に圧縮されて短くなった第2の長さL2を、その長さのまま保持することで、ステント本体20を第2の状態で維持するものである(図3(a))。
保持具30によるステント本体20の保持を解除すると、第2の状態22に維持されたステント本体20は、ステント本体20自身が備える、半径方向内向きの弾性力により、第1の状態21に戻る。
【0055】
保持具30は、ステント本体20を第1の状態21に保持でき、かつ容易に解除できるものであれば特に限定されない。構造の容易さ、低侵襲の術式での操作容易性から、保持具30は、帯状部材から形成することが好ましい。図2(a)、(b)に示す保持具30の例では、遠位部32、近位部33、および遠位部32と近位部33とを接続する中間部31を有している。図2(b)に示すように、保持具30の遠位部32を、中間部31に向かって折り曲げて、フック32aを構成する。このフック32aは、ステント本体20の遠位端20aに引っかけるためのものである。
【0056】
保持具30を用いて、ステント本体20を第2の状態22に保持する際は、さらに、保持具30の近位部33を、遠位部32と同じように折り曲げて、ステント本体20の近位端20bに係止する(図3(a)、図6(c)~(d))。
【0057】
図6(d)に示すように、第2の状態22のステント本体20を保持具30で保持するとき、第2の状態22のステント本体20の長さ(第2の長さL2)が、保持具30の中間部31の長さL3とほぼ等しいことが好ましく、ステント本体20を、第2の長さL2の状態で保持することができる。ただし、遠位部32および近位部33の折り曲げ部分における保持具30の厚さと、保持具30とステント本体20とのクリアランス等を考慮すると中間部31の長さL3は、第2の長さL2超、(L2+2.0mm)以下であることが好ましい。
【0058】
保持具30によるステント本体20の保持を解除する方法の一例では、保持具30の中間部31をカテーテル等に固定した切断器具で切断する方法がある。保持具30を容易に解除できるようにするためには、中間部31が切断し易いことが好ましい。一方、長期にわたって留置する場合には、保持具30が破損しにくいことが好ましい。保持具30の中間部31は、弾性的に圧縮されたステント本体20によって、常に引張り応力が付加されているため、中間部31は適度な引張り強度を有することが好ましい。
それらを勘案すると、中間部31の厚さt3は、0.15mm~0.80mmであることが好ましく、0.20mm~0.50mmであることがより好ましい。これにより、切断器具での切断容易性と、長期間にわたる破損抑制とを共に達成し得る。
【0059】
保持具30は、複数使用することが好ましい。図3(a)、(b)に示すように、ステント本体20を複数の保持具30で固定すると、保持具30がステント本体20から受ける引張り応力が、複数の保持具30に分散されるため、各保持具30にかかる引張り応力が低下し、保持具30の破損リスクを低減できる。さらには、個々の保持具30の中間部31の引張り強度を低下することが可能になるため、保持具30によるステント本体20の保持を解除するときの切断をさらに容易にすることができる。また、複数の保持具30を使用することで、1つの保持具30が破損したとしても、残りの保持具30によってステント本体20を第2の状態22に維持できるため、不用意なステント本体20の脱離を抑制することができる。
【0060】
複数の保持具30は、例えば2~6個であることが好ましく、保持具30の固定および解除にかかる手術時間を大幅に増加させず、かつステント本体20の安定した固定を提供できる。複数の保持具30を使用する場合、図3(c)に示すように、ステント本体20の上面視において、円周方向にほぼ等間隔となるように設置することが好ましい。ただし、正確に等間隔である必要はない。例えば、保持具30が、ステント本体20の接合部203a、203bと干渉する場合は、干渉の少ない位置にずらして、保持具30を係止することが好ましい。
【0061】
前記保持具30は、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、タンタル、プラチナ、金などの単体金属材料、およびチタン合金、タンタル合金、プラチナ合金、金合金、ニッケル-チタン合金、コバルトベース合金、コバルト-クロム合金、ステンレス鋼、亜鉛-タングステン合金、ニオブ合金等の合金材料からなる群から選択される1以上の材料から成る帯状部材から形成されていることが好ましい。それらの材料は、生体安全性が高く、保持具30をステント本体20に係止するときの折り曲げ加工がしやすく、かつ折り曲げた状態でステント本体20を圧縮状態で保持し得る。
複数の保持具30を含む場合、全て同じ材料からなる帯状部材であってもよく、一部の保持具30が、他の保持具30と異なる材料からなる帯状部材であってもよく、全ての保持具30が、異なる材料からなる帯状部材であってもよい。
【0062】
(ステントシステム10の使用方法)
次に、ステントシステム10の使用方法を、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、図6(a)~(d)は、図5(d)のA-A断面での断面図であり、図6(a)~(d)において、ステント本体20の右側が、ステント本体20の内腔25である。
【0063】
生体管腔内の狭窄部までステントシステム10を送達するときは、第1の状態21にあるステント本体20を送達する。
このとき、保持具30はステント本体20と組み合わせた状態(図6(a))で送達してもよく、または、ステント本体20とは別に送達してもよい。保持具30をステント本体20と組み合わせて送達するときは、例えば図5(a)に示すように、保持具30の遠位部32を折り曲げたフック32aを、ステント本体20の外側から内腔25に向かって、ステント本体20の遠位端20aに引っかける。ステント本体20は、遠位端20aを先頭に前進させるため、ステント本体20の遠位端20aにフック32aを係止すると、送達中に外れにくい。
【0064】
生体管腔内の狭窄部に到達したら、第1の状態21にあるステント本体20を、長手方向(矢印方向)に圧縮し(図5(a)、図6(a))、第2の状態22に遷移させる(図5(b)、図6(b))。これにより、ステント本体20の外径D2が拡径し、生体管腔の内壁を押し拡げた状態になる。その後、保持具30の近位部33を、ステント本体20の内腔25側に折り曲げて、近位部33で、ステント本体20の近位端20bを係止する(図5(c)、図6(c))。さらに、保持具30の遠位部32と近位部33をそれぞれ矢印方向に押圧して、ステント本体20に密着させることで、ステント本体20に保持具30をしっかり固定する(図6(d))。これらの操作は、すべて、カテーテルを用いた低侵襲の術式で行うことができる。
【0065】
このようにして、ステント本体20は、第2の状態22のまま、生体管腔内の狭窄部に留置される。保持具30によるステント本体20の長さの保持を解除しない限り、ステント本体20、半永久的に生体管腔内に留置される。
【0066】
留置後のステント本体20を除去する必要が生じた場合は、ステントの留置位置までカテーテルを送達し、ステント本体20の内腔25側から、保持具30の中間部31を、たとえば切断線X-Xで切断する(図7(a))。中間部31を切断するとき、ステント本体20を、共に切断しても、しなくてもよい。保持具30の中間部31を切断すると、ステント本体20は弾性的に長手方向に伸び(図7(b))、第1の状態21に復元する。ステント本体20の外径は、D2からD1に縮径し、ステント本体20は、生体管腔の内壁から離脱する。第1の状態のステント本体20は、カテーテルにより容易に体外に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0067】
10 ステントシステム
20、220 ステント本体
20a 遠位端
20b 近位端
21 第1の状態
D1 第1の状態におけるステント本体の外径
L1 第1の状態におけるステント本体の長さ
22 第2の状態
D2 第2の状態におけるステント本体の外径
L2 第2の状態におけるステント本体の長さ
25 ステント本体の内腔
200 ワイヤ
201 第1のワイヤ
202 第2のワイヤ
203a、203b ワイヤの接合部
221 第1の層
222 第2の層
223 第3の層
30 保持具
31 中間部
32 遠位部
32a フック
33 近位部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7