IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランドディー.ジー.株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-液体回収装置 図1
  • 特開-液体回収装置 図2
  • 特開-液体回収装置 図3
  • 特開-液体回収装置 図4
  • 特開-液体回収装置 図5
  • 特開-液体回収装置 図6
  • 特開-液体回収装置 図7
  • 特開-液体回収装置 図8
  • 特開-液体回収装置 図9
  • 特開-液体回収装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066884
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】液体回収装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20240509BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B41J2/17 201
B41J2/175 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176662
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】掛井 宏一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 昭洋
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA18
2C056EA27
2C056JC13
2C056JC27
(57)【要約】
【課題】液体収容体から漏れた液体を、液回収部によって確実に回収すること.
【解決手段】液体回収装置50は、液体を貯留している少なくとも1つの液体収容体22と、前記液体収容体22の下方に配置されている縦壁32と、前記縦壁32の壁面32aに位置し、前記壁面32aに沿って互いに間隔を有している縦長の一対の溝部70,70と、前記壁面32aのなかの、前記一対の溝部70,70の間に形成される縦長の面であって、前記液体収容体22から漏れた前記液体を下方へ案内することが可能な第1液体案内面80と、前記第1液体案内面80の下方に配置されており、前記第1液体案内面80によって案内された前記液体を受ける液回収部40とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留している少なくとも1つの液体収容体と、
前記液体収容体の下方に配置されている縦壁と、
前記縦壁の壁面に位置し、前記壁面に沿って互いに間隔を有している縦長の一対の溝部と、
前記壁面のなかの、前記一対の溝部の間に形成される縦長の面であって、前記液体収容体から漏れた前記液体を下方へ案内することが可能な第1液体案内面と、
前記第1液体案内面の下方に配置されており、前記第1液体案内面によって案内された前記液体を受ける液回収部と、を備えた液体回収装置。
【請求項2】
前記液回収部は、上下方向に開口した回収口を備え、
前記縦壁は、前記回収口に連続しているとともに壁厚方向に開口した開口部を有し、
前記開口部の上縁には、前記回収口へ向かって突出した液体案内凸部を有している、請求項1に記載の液体回収装置。
【請求項3】
前記縦壁の前記壁面は、前記一対の溝部と前記開口部との間に、一対の補助溝部と、前記一対の補助溝部の間に形成される第2液体案内面と、を有し、
前記一対の補助溝部は、前記壁面に沿いつつ前記一対の溝部から前記開口部へ向かって互いに近づく方向に傾いており、
前記一対の補助溝部の上端間の間隔は、前記一対の溝部の間隔よりも広く、
前記一対の補助溝部の下端間の間隔は、前記開口部の開口幅よりも狭い、
請求項2に記載の液体回収装置。
【請求項4】
前記第1液体案内面と前記一対の溝部の各側面とのなす角度、及び、前記第2液体案内面と前記一対の補助溝部の各側面とのなす角度は、直角又は鋭角に設定されている、請求項3に記載の液体回収装置。
【請求項5】
前記一対の溝部及び前記一対の補助溝部のうち少なくとも一方は、前記縦壁を貫通している、請求項3に記載の液体回収装置。
【請求項6】
前記液体収容体から漏れた前記液体を前記第1液体案内面まで案内する案内部材を、更に備え、
前記案内部材の先端部は、前記第1液体案内面のみに密接している、請求項1に記載の液体回収装置。
【請求項7】
前記案内部材は、軟質樹脂によって構成されており、
案内部材の前記先端部は、先端にスリットを有した先細りテーパ状に構成されており、前記第1液体案内面に対して下方へ屈曲された状態で圧接されていることによって、前記第1液体案内面のみに密接している、請求項6に記載の液体回収装置。
【請求項8】
前記液体収容体に貯留されている前記液体は、インクジェットプリンタによって使用されるインク又はインクヘッドを洗浄する洗浄液である、請求項1に記載の液体回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体回収装置の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体回収装置には、液体収容体の排出口から離れた位置に液体回収体を配置し、排出口から漏れた液体を溝によって液体回収体へ誘導するものがある。このような液体回収装置に関する従来技術として、例えば特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1に示される液体回収装置は、液体収容体の排出口から離れた位置に液体吸収体を配置し、排出口から漏れた液体を溝によって液体吸収体へ誘導すると、いうものである。溝は、液体収容体を収納するための筐体の壁板の側面に形成された、横溝の構成である。この溝は、底面と、対向する2つの側面とによって構成されており、底面と各々の側面との間の角部により、毛管力を発生させている。液体吸収体は、溝によって誘導されてきた液体を吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-167775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される液体回収装置では、溝によって収容できる液体はわずかであって溝からあふれた場合は、筐体の壁板の側面に広がるため、液体を液体回収体に誘導できない。
【0006】
本発明は、液体収容体から漏れた液体を、液回収部によって確実に回収することができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、液体を貯留している少なくとも1つの液体収容体と、前記液体収容体の下方に配置されている縦壁と、前記縦壁の壁面に位置し、前記壁面に沿って互いに間隔を有している縦長の一対の溝部と、前記壁面の、前記一対の溝部の間に形成される縦長の面であって、前記液体収容体から漏れた前記液体を下方へ案内することが可能な第1液体案内面と、前記第1液体案内面の下方に配置されており、前記第1液体案内面によって案内された前記液体を受ける液回収部と、を備えた液体回収装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、液体収容体から漏れた液体を、液回収部によって確実に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1Aは実施例によるインクジェットプリンタの斜視図、図1B図1Aに示されるインクヘッド周りを説明する概念図である。
図2図1Aに示されるインクカートリッジユニットの前部を省略した斜視図である。
図3図2に示されるカートリッジホルダ及び液体回収装置の斜視図である。
図4図3に示される案内部材の斜視図である。
図5図2に示されるインクカートリッジユニットの下半分を表した斜視図であって、前部を省略しない図である。
図6図5に示される下段のカートリッジケースと案内部材との掛け止め構成の要部の分解図である。
図7図4に示される案内部材のスリット周りの斜視図である。
図8図3の8-8線に沿った断面図であって、カートリッジホルダ及び液体回収装置を縦壁の内壁面側から見た図である。
図9図8の9-9線に沿った断面図であって、カートリッジホルダの下部及び液体回収装置を前側から見た断面図である。
図10図10A図8に示される一対の溝部の下端と一対の補助溝部と開口部周りの拡大図であってカートリッジホルダの縦壁を内壁面側から見た図である。図10B図10Aの10B-10Bに沿った断面図であって、縦壁を上から見た断面図である。図10C図10Aの10C-10Cに沿った断面図であって、補助溝部を上端側から見た断面図である。図10D図10Aの10D-10Dに沿った断面図であって、液体案内凸部を上から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、添付図に示した形態は本発明の一例であり、本発明は当該形態に限定されない。説明中、左右とは図面を基準として左右、前後とはメディアの送り方向を基準として前後を指す。また、図中Frは前、Rrは後、Leは左、Riは右、Upは上、Dnは下を示している。
【0011】
<実施例>
図1A及び図1Bに示されるように、インクジェットプリンタ10は、メディアMeにカラー画像を形成可能な構成であって、例えば、大型の看板、ポスターの印刷を行うことができる。
【0012】
ここで、インクジェットプリンタ10の搬送装置(図示せず)によって送られたメディアMeの送り方向S2を基準として、メディアMeの幅方向S1のことを、適宜「主走査方向S1」ということがある。また、メディアMeの送り方向S2のことを、適宜「副走査方向S2」ということがある。インクジェットプリンタ10を上から見て、副走査方向S2は主走査方向S1に対して直交した方向である。
【0013】
印刷対象としてのメディアMeは、例えば、ロールに巻かれたロールメディアであり、メディアの材質としては、普通紙などの紙類であってもよく、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂類であってもよく、アルミニウム材、鉄材等の金属類であってもよく、様々な材料によって構成可能である。
【0014】
インクジェットプリンタ10は、基台11の主走査方向S1へ延びているレール12と、このレール12に移動可能に設けられているキャリッジ13と、このキャリッジ13に設けられているインクヘッド14(プリントヘッド14)及び少なくとも1つ(例えば2つ)の紫外線照射装置15,15と、を備えている。
【0015】
基台11は、上部にメディアMeを載置するベット11a(フラットベット11a、フラットテーブル11aともいう)を有しており、メディアMeの搬送方向S2(副走査方向S2)の一方側から他方側へ及び他方側から一方側への双方向の搬送方向と、一方側から他方側へのみの単方向の搬送方向の、いずれの搬送方向にもメディアMeを搬送可能に構成されている。
【0016】
キャリッジ13は、ベット11aのメディア載置面11bに対し、副走査方向S2とは異なる方向S1(主走査方向S1)へ走査可能である。
【0017】
インクヘッド14は、複数のインクジェットノズル14aを備えている。複数のインクジェットノズル14aは、メディア載置面11bに載置されたメディアMeに紫外線硬化インクを吐出するものであって、副走査方向S2と平行にインクジェットノズル列を構成している。
【0018】
紫外線照射装置15,15は、キャリッジ13に対し、このキャリッジ13の走査方向S1(主走査方向S1)の少なくとも一方側(例えば両側)に配置されており、インクヘッド14からメディアMe上に吐出された光硬化性インクに紫外線を照射して、この光硬化性インクを硬化させる。
【0019】
図1Aに示されるように、さらにインクジェットプリンタ10は、インクカートリッジユニット20を備えている。
【0020】
図1B及び図2に示されるように、このインクカートリッジユニット20は、インクヘッド14の複数のインクジェットノズル14aにそれぞれ液状のインクを供給するための複数のカートリッジケース21a,21bと、これらのカートリッジケース21a,21bをユニットにまとめたカートリッジホルダ30とを備えている。
【0021】
図2に示されるように、各カートリッジケース21a,21bは、それぞれ異なる色彩の液状のインクを貯留しているインクパック22を収容している。各インクパック22は、インクを供給する供給口23a,23bを、それぞれ備えている。全ての供給口23a,23bは、副走査方向S2の前側Frに配置している。
【0022】
複数(例えば8個)のカートリッジケース21a,21bは、上下方向に2段に配置されるとともに、各段ごとに主走査方向S1へ4個ずつ並列に配置されている。但し、上段のカートリッジケース21aと下段のカートリッジケース21bの、どちらも個数は限定されず、少なくとも1個ずつあればよい。
【0023】
カートリッジホルダ30は、鋼板等の金属材料によって構成されている。このカートリッジホルダ30は、インクジェットプリンタ10(図1A参照)の下端面に配置された下側ベース31と、この下側ベース31の両側(例えば主走査方向S1の両側)から起立した2つの縦壁32,32と、これらの縦壁32,32の上端間に設けられた上側ベース33とを備えている。
【0024】
図2及び図3に示されるように、下側ベース31は、副走査方向S2へ互いに離間して位置する2つの脚部31a,31aと、これらの脚部31a,31a間に設けられた平板状の基板31bとを備えている。このようにして、下側ベース31の基板31bの下方には、主走査方向S1に開放した収納空間Spを有する。
【0025】
2つの縦壁32,32は、互いに対面し合う平板状の部材であって、対向面32a,32aが平滑な鉛直面であることが好ましい。この対向面32a,32aのことを「内壁面32a,32a」といい、反対側の面32b,32bのことを「外壁面32b,32b」ということがある。縦壁32,32の厚さや外壁面32b,32bの平滑さは任意である。
【0026】
上段のカートリッジケース21aは、上側ベース33の上に設置されている。下段のカートリッジケース21bは、下側ベース31の基板31bの上に設置されている。
【0027】
図2及び図3に示されるように、カートリッジケース21a,21bの各インクパック22の供給口23a,23bは、副走査方向S2の前側に配置されている。例えば、供給口23a,23bに図示せぬインク供給針が突き刺されることによって、インクパック22内のインクLiは、インク供給針からチューブを介してインクジェットノズル14a(図1B参照)に供給される。
【0028】
下段のカートリッジケース21bの各インクパック22の供給口23bは、基板31bに形成されている孔31cから下方の収納空間Spへ突出している。
【0029】
基板31bの下方の収納空間Spには、液を回収するための液回収部40(回収容器40)が配置されている。この回収容器40は、下側ベース31の開放側(主走査方向S1)から出し入れすることができる。この回収容器40は、供給口23bから漏れたインク(液)を回収することが可能な、上を開放した(回収口41を備えた)平底の回収容器であって、例えばトレイによって構成される。
【0030】
上段のカートリッジケース21aの各供給口23aから漏れたインクLi(液体Li)は、インクジェットプリンタ10(図1A参照)に備えた液体回収装置50によって、回収される。この液体回収装置50は、漏れたインクLi(液体Li)を上段のカートリッジケース21aの供給口23aから離れた位置へ誘導し、回収容器40によって回収するものである。下段のカートリッジケース21bの各供給口23bから漏れたインクLi(液体Li)は、各供給口23bの下に備えられた回収容器40に落ちることで回収される。このようにして、上段のカートリッジケース21a及び下段のカートリッジケース21bの、各供給口23a,23bから漏れたインクLi(液体Li)を回収容器40によって回収することができる。
【0031】
以下、液体回収装置50について詳しく説明する。図2及び図3に示されるように、液体回収装置50は、上段インクパック22の供給口23aから漏れたインクLi(液体Li)を右側の縦壁32の内壁面32aまで案内する案内部材60を備えている。
【0032】
上段のカートリッジケース21aの各供給口23aから漏れたインクLi(液体Li)は、副走査方向S2の前側に配置されている案内部材60によって集められる。この案内部材60は、断面V字状又は断面U字状の樋の構成あって、主走査方向S1の一方から他方(左側の縦壁32から右側の縦壁32の内壁面32a)へ向かって、下り勾配に延びている。
【0033】
詳しく述べると、図3及び図4に示されるように、案内部材60は、断面中央を底61(V字状又はU字状の底61)とし、この底61から両側へ開くように延びた一対の側板62,62と、これらの側板62,62の上端から下方へ延びた(折り返された)一対のフランジ63,63とによって構成されている。各フランジ63,63の下端には、複数の掛け止め爪64が設けられている。
【0034】
図5及び図6に示されるように、これらの掛け止め爪64は、下段のカートリッジケース21bの上面の掛け止め孔21cに掛け止められている。この結果、案内部材60は、下段のカートリッジケース21bに固定される。
【0035】
図3及び図4に示されるように、上段のカートリッジケース21a(図2参照)の各供給口23aから漏れたインクは、V字状又はU字状の底61に沿いつつ、右側の縦壁32の内壁面32aへ向かって案内される。
【0036】
図4に示されるように、案内部材60は、下り勾配の先端部65を、平面視で先細りテーパ状、つまり右側の縦壁32の内壁面32aへ向かって先細りテーパ状に形成されている。この下り勾配の先端部65のことを、「下り側の端部65」ということがある。この下り側の端部65の先端部分66には、案内部材60の長手方向に沿ったスリット67が形成されている。このスリット67は、案内部材60の底61の延長上に位置するとともに、先端が開放され且つ上下方向に貫通している。
【0037】
この案内部材60は、軟質樹脂などの軟質部材の成形品であることが好ましい。軟質部材の案内部材60なので、先端部分66は、スリット67の基端67a(開放した先端とは反対側の部位)から先を下方へ折り曲げ可能である(図7参照)。
【0038】
図7に示されるように、折り曲げられた部分、つまり屈曲した先端部分66の面66aのことを、適宜「屈曲面66a」ということがある。この屈曲面66aは、下方へ屈曲した状態で右側の縦壁32の内壁面32aに押し付けられている。つまり、屈曲面66aは内壁面32aに圧接している。案内部材60の底61からスリット67の基端67aへ流れてきたインクLi(液体Li)は、スリット67の縁を伝って縦壁32の内壁面32aへ流れ、さらに、この内壁面32aを伝って下方へ流れることができる。
【0039】
図7図10に示されるように、右側の縦壁32の内壁面32aには、縦長の一対の溝部70,70と、一対の溝部70,70の間に位置する第1液体案内面80と、この第1液体案内面80の下方に位置する開口部90と、一対の溝部70,70と開口部90との間に位置する一対の補助溝部100,100と、この一対の補助溝部100,100の間に形成される第2液体案内面110と、が設けられている。
【0040】
一対の溝部70,70(第1溝部70,70)は、縦壁32の内壁面32aに位置し、この内壁面32aに沿って互いに間隔In1を有している縦長の溝の構成である。さらに、一対の溝部70,70は、内壁面32aにのみ開口している有底の溝の構成、または、右側の縦壁32を貫通した長孔の構成である。好ましくは、一対の溝部70,70は、右側の縦壁32を貫通した長孔によって構成される。各第1溝部70,70の上端71,71は、案内部材60の屈曲面66aの上端よりも上位に位置する。第1溝部70,70の溝幅はW1である。縦壁32の内壁面32aに沿って、一対の第1溝部70,70同士の中間を通る上下方向の直線CLを、適宜「中心線CL」ということがある。
【0041】
第1液体案内面80は、縦壁32の内壁面32aのなかの、一対の第1溝部70,70の間に形成される縦長の面であって、各インクパック22(図2参照)の供給口23aから漏れたインクLi(液体Li)を下方へ案内することが可能である。前記案内部材60の屈曲面66aは、縦壁32の内壁面32aのなかの、第1液体案内面80の上端部81のみに密接している。図10Bも参照すると、第1液体案内面80と一対の第1溝部70,70の各側面72,72とのなす角度θ1は、直角又は鋭角に設定されている。
【0042】
縦壁32の下端には、液回収部40の回収口41に向かって開口した開口部90が、形成されている。この開口部90は、縦壁32の壁厚方向にも開口している。前記下段のカートリッジケース21bの基板31bには、開口部90の真下に位置して、上下に貫通した貫通孔31dが形成されている。このようにして、開口部90は、液回収部40の回収口41に対して、上下方向に連続している。開口部90の開口幅はW2(図10A参照)である。
【0043】
さらに、縦壁32に形成されている開口部90の上縁91には、液回収部40の回収口41へ向かって突出した液体案内凸部92が形成されている。この液体案内凸部92の頂点93は、一対の溝部70,70の中心線CL上に位置している。言い換えると、縦壁32を内壁面32a側から見て、開口部90の上縁91は、中心線CL上を頂点93としたV字状に形成されている。図10Dも参照すると、縦壁32の内壁面32aと液体案内凸部92の側面94とのなす角度θ2は、直角又は鋭角に設定されている。
【0044】
一対の補助溝部100,100(第2溝部100,100)は、縦壁32の内壁面32aに沿いつつ一対の第1溝部70,70から開口部90へ向かって互いに近づく方向に傾いている。つまり、一対の補助溝部100,100は、縦壁32の内壁面32aに下細りテーパ状に位置している。さらに、一対の補助溝部100,100は、内壁面32aにのみ開口している有底の溝の構成、または、右側の縦壁32を貫通した長孔の構成である。好ましくは、一対の補助溝部100,100は、右側の縦壁32を貫通した長孔によって構成される。図10Aも参照すると、第2溝部100,100の溝幅はW3であり、例えば第1溝部70,70の溝幅W1と同じである。
【0045】
図10Aを参照すると、より好ましくは、第2溝部100,100は、中心線CLに対して対称形に構成されている。第2溝部100,100同士の傾斜角はαである。第2溝部100,100の上端101,101間の間隔In2は、第1溝部70,70の間隔In1よりも広い。第2溝部100,100の下端102,102間の間隔In3は、開口部90の開口幅W2よりも狭い。第1溝部70,70の下端73,73から第2溝部100,100の上端101,101までの離間高さはH1である。第2溝部100,100の下端102,102から開口部90の上縁91までの離間高さはH2である。
【0046】
第2液体案内面110は、縦壁32の内壁面32aのなかの、一対の補助溝部100,100の間に形成されている。この第2液体案内面110は、対向間隔が漸減する一対の下降傾斜する補助溝部100,100に囲まれているので、第1液体案内面80によって下方へ案内されたインクLi(液体Li)を、開口部90へ寄せ集めることが可能である。図10Cを参照すると、第2液体案内面110と一対の第2溝部100,100の各側面103,103とのなす角度θ3は、直角又は鋭角に設定されている。
【0047】
図8も参照すると、前記液回収部40(回収容器40)は、第1液体案内面80の下方の、中心線CL上に配置されている。
【0048】
次に、液体回収装置50の作用を説明する。
図2に示される上段のカートリッジケース21aの各供給口23aから漏れたインクLi(液体Li)は、図7に示される案内部材60によって第1液体案内面80まで案内され、さらに図8に示される第1液体案内面80により下方へ案内されて、第2液体案内面110へ流れ落ちる。流れ落ちたインクLiは、この第2液体案内面110により中央に寄せ集められて、液体案内凸部92の頂点93に集まる。頂点93に集まったインクLiは、頂点から落下し、開口部90を通って液回収部40に回収される。
【0049】
ところで、液体収容体22に貯留されている液体Liは、図1A図1Bに示されるインクジェットプリンタ10によって使用されるインクに限定されるものではなく、インクヘッド14を洗浄する洗浄液とすることが可能である。
【0050】
以上の液体回収装置50の説明をまとめると、次の通りである。
【0051】
図2図3及び図8を参照する。本実施例によれば、第1に、液体回収装置50は、
液体Li(例えばインクや洗浄液)を貯留している少なくとも1つの液体収容体22(インクパック22)と、
この液体収容体22の下方に配置されている縦壁32と、
この縦壁32の壁面32a(内壁面32a)に位置し、この壁面32aに沿って互いに間隔を有している縦長の一対の溝部70,70(第1溝部70,70)と、
壁面32aのなかの、一対の溝部70,70の間に形成される縦長の面であって、液体収容体22から漏れた液体Liを下方へ案内することが可能な第1液体案内面80と、
この第1液体案内面80の下方に配置されており、第1液体案内面80によって案内された液体Liを受ける液回収部40(回収容器40)と、を備えている。
【0052】
このように、液体回収装置50は、液体収容体22から液回収部40までの落差を利用したものである。図8A及び図8Bも参照すると、液体収容体22から漏れた液体Liは、一対の溝部70,70に囲まれている縦長の第1液体案内面80を伝わって、液回収部40に流れ落ちる。第1液体案内面80の両側の縁82,82(側縁82,82)は、一対の溝部70,70の開口側の縁74,74(角74,74)に合致している。このため、第1液体案内面80を伝わって流れ落ちる液体Liの一部が、第1液体案内面80の両側縁82,82まで流れても、この縁82,82の部分(エッジ部分)の表面張力によって、流れ方向を規制される。従って、液体収容体22から漏れた液体Liを、液回収部40によって確実に回収することができる。
【0053】
図6を参照する。第2に、好ましくは、第1に記載の液体回収装置50であって、液回収部40は、上下方向に開口した回収口41を備えている。縦壁32は、回収口41に連続しているとともに壁厚方向に開口した開口部90を有している。この開口部90の上縁91には、回収口41へ向かって突出した液体案内凸部92を有している。
【0054】
第1液体案内面80によって下方へ案内された液体Liを、開口部90の上縁91に設けられた液体案内凸部92によって、周囲に飛散させることなく、回収口41に集めることができる。従って、液体収容体22(図2参照)から漏れた液体Liを、液回収部40に確実に回収することができる。
【0055】
図10A図10Dを参照する。第3に、好ましくは、第2に記載の液体回収装置50であって、縦壁32の壁面32aは、一対の溝部70,70と開口部90との間に、一対の補助溝部100,100(第2溝部100,100)と、一対の補助溝部100,100の間に形成される第2液体案内面110と、を有している。一対の補助溝部100,100は、壁面32aに沿いつつ一対の溝部70,70から開口部90へ向かって互いに近づく方向に傾いている。一対の補助溝部100,100の上端101,101間の間隔In2は、一対の溝部70,70の間隔In1よりも広い。一対の補助溝部100,100の下端102,102間の間隔In3は、開口部90の開口幅W2よりも狭い。
【0056】
第1液体案内面80によって下方へ案内された液体Liは、下細りテーパ状に位置した一対の補助溝部100,100に囲まれている第2液体案内面110を伝わって、開口部90へ流れ落ちる。第2液体案内面110の両側の縁111,111(側縁111,111)は、一対の補助溝部100,100の開口側の縁104,104(角104,104)に合致している。このため、第2液体案内面110を伝わって流れ落ちる液体Liの一部が、この第2液体案内面110の両側縁111,111まで流れても、この縁111,111の部分の表面張力によって、流れ方向を規制される。従って、第2液体案内面110によって下方へ案内された液体Liを、周囲に飛散させることなく、開口部90へ寄せ集めることができる。
【0057】
単に、一対の溝部70,70のみが開口部90まで連続して延びている場合には、これらの溝70,70の長さが縦に長くなる。その分、縦壁32の強度は小さくならざるを得ない。
【0058】
これに対し本発明では、縦壁32において、一対の溝部70,70と開口部90との間に、一対の補助溝部100,100を有している。その分、一対の溝部70,70の長さを短くできる。従って、縦壁32の強度を高めることができる。
【0059】
図10A図10Cを参照する。第4に、好ましくは、第3に記載の液体回収装置50であって、第1液体案内面80と一対の溝部70,70の各側面72,72とのなす角度θ1、及び、第2液体案内面110と一対の補助溝部100,100の各側面103,103とのなす角度θ3は、直角又は鋭角に設定されている。
【0060】
各々の溝部70,100の縁74,104(角74,104)が直角又は鋭角なので、各々の溝部70,100の縁74,104の部分の表面張力を、より高めることができる。この結果、液体Liが第1液体案内面80の縁82,82や第2液体案内面110の縁111,111を超えて外側へ流れ出ないように規制して、下方へ案内する効果を一層高めることができる。
【0061】
図10A図10Cを参照する。第5に、好ましくは、第3~第4に記載の液体回収装置50であって、一対の溝部70,70及び一対の補助溝部100,100のうち少なくとも一方は、縦壁32を貫通している。
【0062】
一対の溝部70,70と一対の補助溝部100,100の少なくとも一方は、縦壁32を貫通しているから、液体Liは貫通している溝70,100に液体Liが表面張力により保持されるので、溝70,100に保持された液体Liによって、溝70,100を超えて流れ出すのを抑制できる。
【0063】
図2図3及び図8を参照する。第6に、好ましくは、第1~第5に記載の液体回収装置50であって、液体収容体22から漏れた液体Liを第1液体案内面80まで案内する案内部材60を備えている。案内部材60の先端部65(特に先端部65の先端部分66)は、第1液体案内面80のみに密接している。
【0064】
このため、液体収容体22から漏れた液体Liは、一対の溝部70,70に囲まれている第1液体案内面80まで、案内部材60によって案内される。案内部材60の先端部65が第1液体案内面80のみに密接しているので、案内部材60に案内された液体Liを周囲に飛散させることなく、第1液体案内面80に確実に案内することができる。
【0065】
図7及び図8を参照する。第7に、好ましくは、第6に記載の液体回収装置50であって、案内部材60は、軟質樹脂によって構成されている。案内部材60の先端部65(特に先端部65の先端部分66)は、先端にスリット67を有した先細りテーパ状に構成されており、第1液体案内面80に対して下方へ屈曲された状態で圧接されていることによって、第1液体案内面80のみに密接している。
【0066】
軟質樹脂によって構成された案内部材60は、柔軟性を有している。この案内部材60の先端部65を、第1液体案内面80に対して下方へ屈曲しつつ圧接させることで、案内部材60の先端部65と第1液体案内面80との間を、液漏れが無いように密閉することができる。
【0067】
しかも、先細りテーパ状の先端部65の先端部分66には、スリット67を有している。案内部材60の先端部65が第1液体案内面80に対して屈曲されているにもかかわらず、先端のスリット67から、液体Liを第1液体案内面80に確実に案内することができる。
【0068】
図1及び図2を参照する。第8に、好ましくは、第1~第7に記載の液体回収装置50であって、液体収容体22に貯留されている液体Liは、インクジェットプリンタによって使用されるインク又はインクヘッドを洗浄する洗浄液である。
【0069】
このため、インクジェットプリンタのためのインクや洗浄液が液体収容体22から漏れても、液回収部40によって確実に回収することができる。
【0070】
なお、本発明による液体回収装置50は、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、上記実施例に限定されるものではない。
液体回収装置50は、インクジェットプリンタ10に備える構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の液体回収装置50は、インクジェットプリンタ10に採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0072】
10 インクジェットプリンタ
14 インクヘッド
14a インクジェットノズル
21a カートリッジケース(上段のカートリッジケース)
21b カートリッジケース(下段のカートリッジケース)
22 液体収容体(インクパック)
23a 上段のカートリッジケースの供給口
23b 下段のカートリッジケースの供給口
30 カートリッジホルダ
31b 平板状の基板
31d 貫通孔
32 縦壁
32a 内壁面
32b 外壁面
40 液回収部(回収容器)
41 回収口
50 液体回収装置
60 案内部材
65 下り勾配の先端部
66 下り側の端部の先端部分
66a 屈曲した先端部分の面(屈曲面)
67 スリット
67a スリットの基端
70 一対の溝部(第1溝部)
72 溝部の側面
73 溝部の開口側の縁(角)
80 第1液体案内面
82 第1液体案内面の両側の縁(側縁)
90 開口部
91 上縁
92 液体案内凸部
100 補助溝部(第2溝部)
103 補助溝部の開口側の縁(角)
110 第2液体案内面
111 第2液体案内面の両側の縁(側縁)
In1 第1溝部間の間隔
In2 第2溝部の上端間の間隔
In3 第2溝部の下端間の間隔
Li 液体(インク)
θ1 第1液体案内面と第1溝部の側面とのなす角度
θ3 第2液体案内面と第2溝部の側面とのなす角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10