IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニプロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-マスク 図1
  • 特開-マスク 図2
  • 特開-マスク 図3
  • 特開-マスク 図4
  • 特開-マスク 図5
  • 特開-マスク 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066892
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
A41D13/11 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176674
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 利明
(72)【発明者】
【氏名】中神 裕之
(57)【要約】
【課題】装着した状態で容易に飲食ができるマスクを提供する。
【解決手段】マスク1は、可撓性を有する樹脂フィルムにより構成される。マスク1は、マスク本体10と、一対の耳掛け部20とを備える。マスク本体10は、左右方向中央部において上下方向に延びる折り目線11と、折り目線11に沿うように形成されたシール部12とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する樹脂フィルムにより構成されたマスクであって、
マスク本体と、
前記マスク本体の上部につながる一対の耳掛け部と、
を備え、
前記マスク本体は、左右方向中央部において上下方向に延びる折り目線と、前記折り目線に沿うように形成された高剛性部と、下方に形成された開口とを有する、マスク。
【請求項2】
可撓性を有する樹脂フィルムにより構成されたマスクであって、
マスク本体と、
一対の耳掛け部と、
を備え、
前記マスク本体は、左右方向中央部において上下方向に延びる折り目線と、前記折り目線に沿うように形成された高剛性部とを有し、
前記マスク本体が前記折り目線で折り畳まれて前記折り目線の端部が上下方向に延びた状態で、前記耳掛け部は前記マスク本体から上方に向かって延びる接続部を有し、前記マスク本体の下端には開口が形成されている、マスク。
【請求項3】
前記高剛性部は、前記樹脂フィルムの内面同士が接合されたシール部である、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記マスク本体は、前記マスク本体の下端から所定長さ離れた位置に形成され、前記マスク本体の折り返しの支点となる第2の高剛性部を有する、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項5】
前記マスク本体の上部には、前記折り目線の延長線上に切欠きが形成される、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項6】
前記マスク本体と前記耳掛け部との間には、谷部が形成され、
前記谷部内において、前記耳掛け部の上端縁の傾斜は、前記マスク本体の上端縁の傾斜より大きい、請求項1又は2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクに関し、より詳しくは、飲食時に使用されるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鼻と口を覆うマスク本体と、耳に引っ掛けられる耳掛け部とを備えたマスクが広く知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたマスクは、鼻先から顎下までを覆うように装着されるため、飲食の際にはマスクを取り外すか、或いは口元からずらす必要がある。一方、マスクの下部と顔の間に隙間が存在することにより、装着した状態で飲食が可能なマスク(例えば、特許文献2参照)や、マウスシールド(例えば、特許文献3参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-056346号公報
【特許文献2】特許第6871586号
【特許文献3】実登第3231445号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マスクを装着した状態で飲食が可能であれば、飲食の際にマスクを外す必要がないため、感染症対策として有効であり、また使用者にとっても便利である。しかし、特許文献2に開示されたマスクは、接着剤で皮膚に貼り付けて使用するものであり、箸などが接触した際に容易にずれることが想定される。加えて、接着剤で皮膚に貼り付けることに抵抗がある使用者も多いと思われる。また、特許文献3に開示されるようなシールドは、一般的に、硬質のプラスチックで構成されるため、これについても箸などが接触した際に容易にずれることが想定される。
【0005】
上記のように、マスクやシールドを装着した状態でスムーズな飲食を実現することは容易ではない。本発明の目的は、装着した状態で容易に飲食ができるマスクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様であるマスクは、可撓性を有する樹脂フィルムにより構成されたマスクであって、マスク本体と、マスク本体の上部につながる一対の耳掛け部とを備え、マスク本体は、左右方向中央部において上下方向に延びる折り目線と、折り目線に沿うように形成された高剛性部と、下方に形成された開口部とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明の他の一態様であるマスクは、可撓性を有する樹脂フィルムにより構成されたマスクであって、マスク本体と、一対の耳掛け部とを備え、マスク本体は、左右方向中央部において上下方向に延びる折り目線と、折り目線に沿うように形成された高剛性部とを有し、マスク本体が折り目線で折り畳まれて折り目線の端部が上下方向に延びた状態で、耳掛け部はマスク本体から上方に向かって延びる接続部を有し、マスク本体の下端には開口が形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、可撓性フィルムで構成されるため埃等が付き難い上に、汚れているかの判別が容易である。このため、食事の際に埃等が飲食物上に落下するといった事態が低減できると共に汚れを視認できれば、別のマスクと交換でき、衛生的に飲食を行うことができる。また、高剛性部により、マスクを装着した状態においてマスク本体が鼻筋に沿った状態で形状維持されやすく、マスク本体の下部は口元との間に自然にすき間が生じるように顔の前方に延びる。これにより、マスク本体が口の前方を覆いつつ、口との間に大きな隙間が形成されるため、マスクの下方から飲食物を口元に運ぶことが可能となる。また、箸などが接触してもフィルムが撓んで衝撃を容易に吸収でき、マスクがずれることを抑制できる。このため、マスクを装着した状態でもスムーズな飲食が可能である。
【0009】
本発明に係るマスクにおいて、高剛性部は、樹脂フィルムの内面同士が接合されたシール部であることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、フィルムが2枚重なった状態で一体化するため、高い剛性部を確実に形成することができる。また、例えば、別部材を接合してフィルムの剛性を高くするような方法と比べて生産性が高く製造コストを低減できる。
【0011】
本発明に係るマスクにおいて、マスク本体は、マスク本体の下端から所定長さ離れた位置に形成され、マスク本体の折り返しの支点となる第2の高剛性部を有することが好ましい。また、第2の高剛性部は、樹脂フィルムの内面同士が接合されたシール部であることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、マスクを外さなくても、マスク本体を容易に折り返して口元を大きく開放することができる。上記構成は、例えば、大きなグラスを傾けて飲み物を飲む場合などに好適である。
【0013】
本発明に係るマスクにおいて、マスク本体の上部には、折り目線の延長線上に切欠きが形成されることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、鼻の上部や眉間にマスク本体が接触した場合に、切欠きの左右両側に位置する部分が広く顔に接触するため、接触の衝撃を効果的に緩和できる。
【0015】
本発明に係るマスクにおいて、マスク本体と耳掛け部との間には谷部が形成され、谷部内において、耳掛け部の上端縁の傾斜は、マスク本体の上端縁の傾斜より大きいことが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、マスク本体の上端縁が頬骨の下部に沿うような装着状態が得られ、マスク本体の上端縁が顔に密着しやすくなる。このため、飛沫の抑制効果が向上し、またメガネを装着した場合にはメガネが曇り難い等の効果がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るマスクによれば、マスクを装着したままスムーズな飲食が可能である。本発明に係るマスクは、飲食の際に外す必要がないため、感染症対策として効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態のマスクを示す図である。
図2】第1の実施形態のマスクを示す図であって、マスクを展開した状態を示す。
図3】第1の実施形態のマスクの装着状態を示す写真である。
図4】第2の実施形態のマスクを示す図である。
図5】第2の実施形態のマスクを示す図であって、マスクを展開した状態を示す。
図6】第2の実施形態のマスクを示す図であって、マスク本体の下部を折り返した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るマスクの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0020】
[第1の実施形態]
図1図3に、第1の実施形態であるマスク1を示す。図1はマスク1を折り畳んだ状態を示し、図2はマスク1を展開した状態を示す。図1及び図2に示すように、マスク1は、マスク本体10と、一対の耳掛け部20とを備える。マスク本体10は、口と鼻を覆う部分であって、左右方向中央部に形成された上下方向に延びる折り目線11と、折り目線11に沿うように形成された高剛性部とを有する。本実施形態では、高剛性部としてシール部12が形成される。耳掛け部20は、耳に引っ掛けられる部分であって、マスク本体10の上部につながっている。本実施形態の一対の耳掛け部20には、耳が挿入される貫通孔21がそれぞれ形成されている。なお、貫通孔ではなく切り欠きとしてもよい。
【0021】
本明細書において、マスクの左右方向とは、マスクが装着されたときに顔の左右方向に対応する方向を意味する。同様に、マスクの上下方向とは、マスクが装着されたときに顔の上下方向に対応する方向を意味する。
【0022】
マスク1は、可撓性を有する樹脂フィルムにより構成される。このため、埃等が付き難い上に、汚れているかの判別が容易であり、衛生的に飲食を行うことができる。また、箸などがマスク1に接触してもフィルムが撓んで衝撃を吸収できるので、マスク1がずれることが抑制される。マスク1は、2枚以上のフィルムを接合して構成されてもよいが、生産性等の観点から、好ましくは1枚のフィルムにより構成される。樹脂フィルムの厚みは、例えば、1mm以下であり、好ましくは50μm以上800μm以下、又は100μm以上500μm以下である。フィルムの厚みが当該範囲内であれば、マスク1の装着状態において目的とするマスク形状を確保でき、かつ装着性、取り扱い性等が良好である。
【0023】
マスク1を構成する樹脂フィルムの材質は、特に限定されないが、一例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレ-ト、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系モノマーの共重合体等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、複層構造を有していてもよい。樹脂フィルムは、例えば、上記樹脂を主成分とする基材層と、シーラント層とを含む二層構造であってもよい。シーラント層を含む場合、ヒートシール(溶着)によりシール部12を形成することが容易になる。
【0024】
マスク1において、一対の耳掛け部20は、マスク本体10の上部から左右に延び、マスク本体10が折り目線11で折り畳まれた状態で、マスク本体10の上端P1よりも上方に延びる。耳の上部に接する貫通孔21の上端は、マスク本体10の上端P1よりも上方に位置する。また、本実施形態の耳掛け部20は、マスク本体10の左右において、マスク本体10の上部(上半分)につながっている。具体的には、図1の貫通孔21を形成する貫通孔左側の第1接続部23はマスク本体10の上端につながっている。マスク1は耳掛け部20を耳に引っかけた後に図1の貫通孔21を形成する貫通孔右側の第2接続部24を指で下方へ引っ張ることにより、マスク上縁を顔に密着させる。マスク1は、耳掛け部20が耳に引っ掛けられることで、耳に吊り下げられた状態となり、このような上吊り構造により、マスク本体10と口の間に隙間が形成され、マスク1を装着した状態でも飲食が可能になるが、この際、図1の貫通孔21を形成する貫通孔左側の第1接続部23がマスク本体1と相対的に同じ高さ位置にあると、図1における右側に耳掛け部20を引っ張る力がマスク下部(下半分)に伝わってしまい、マスク下部の下端に形成された開口部に対して皮膚に接近する方向に引っ張られてしまう。このため、一対の耳掛け部20は、マスク本体10から上方に向かって延びる接続部を有し、マスク本体に対して相対的に上方に位置するよう構成される。
【0025】
なお、本発明の構成上、マスク本体10と耳掛け部20の境界は明確である必要はないが、本実施形態では、耳掛け部20の付け根が括れており、最も括れた部分をマスク本体10と耳掛け部20の境界Zとする。マスク1の上端縁における境界Zは、後述する谷部30の下端P3とする。
【0026】
マスク1は、上記のように、一対の耳掛け部20の上端P2が、マスク本体10の上端P1よりも上方に位置するように、一対の耳掛け部20がマスク本体10の上部から斜め上方、即ち上下方向及び左右方向に対して傾斜する方向に延びた形状を有する。マスク1では、マスク本体10の左右方向中央の折り目線11が形成された部分が、マスク本体10の上端P1及び下端P4となっている。そして、マスク本体10の上端縁は、上端P1から耳掛け部20の方向に向かって次第に下方に位置するように傾斜している。耳掛け部20の上端縁も、上端P2からマスク本体10の方向に向かって次第に下方に位置するように傾斜している。マスク1の上下方向長さL2(耳掛け部20の上端P2からマスク本体10の下端P4までの長さ)は、例えば、190mm以上210mm以下である。
【0027】
マスク本体10と耳掛け部20との間には、それぞれの上端縁の傾斜により谷部30が形成される。谷部30は、マスク1の下方に窪んだ凹部であって、本実施形態では、マスク本体10の上端P1から折り目線11と直交する左右方向に沿った仮想線αと、マスク1の上端縁とに囲まれた部分を意味する。マスク本体10の上端P1から谷部30の底である下端P3までの上下方向長さL3は、例えば、25mm以上30mm以下である。耳掛け部20の貫通孔21の上端から谷部30の下端P3までの上下方向長さは、例えば、65mm以上75mm以下である。
【0028】
谷部30内において、耳掛け部20の上端縁の傾斜は、マスク本体10の上端縁の傾斜より大きい。ここで、上端縁の傾斜とは、左右方向(仮想線α)に対する傾斜を意味する。即ち、谷部30の底に向かって、マスク本体10の上端縁が緩やかに傾斜し、耳掛け部20の上端縁が急峻に傾斜する。この場合、マスク本体10の上端縁が頬骨の下部に沿うような装着状態が得られ、マスク本体10の上端縁が顔に密着しやすくなる。これにより、飛沫の抑制効果が向上し、また使用者がメガネを装着する場合にはメガネが曇り難い等の効果がある。耳掛け部20の上端縁の傾斜角度は、平均値及び最大値のいずれも、マスク本体10の上端縁の傾斜角度より大きいことが好ましい。
【0029】
マスク本体10は、上記の通り、口と鼻を覆う部分であって、左右方向中央部に形成された上下方向に延びる折り目線11を有する。折り目線11は、例えば、マスク本体10の左右方向中央において、上端P1から下端P4まで真っ直ぐに形成される。マスク本体10は、鼻の上部から顎にわたって顔の前方を覆うことが可能な上下方向長さL1を有する。マスク1が装着されたときに、マスク本体10の上端P1は眉間の近くに位置することが好ましい。本実施形態では、折り目線11が形成される左右方向中央が上下方向に最も長い。マスク本体10の上下方向長さL1は、例えば、135mm以上150mm以下である。この場合、飛沫の抑制とスムーズな飲食を両立しやすくなる。
【0030】
マスク本体10は、口の左右両端を超えて口の全体を広く覆うことが可能な左右方向長さを有する。マスク本体10の下部は、耳掛け部20の貫通孔21と上下方向に重なる位置まで左右方向に広がっている。マスク本体10の左右方向長さL4は、例えば、115mm以上130mm以下である。この場合、飛沫の抑制とスムーズな飲食を両立しやすくなる。また、マスク1の左右方向長さL5は、例えば、上下方向長さL2より長く、200mm以上220mm以下である。マスク本体10の下端縁は、折り目線11が形成された左右方向中央から左右に向かって次第に上方に位置するように緩やかに湾曲している。下端が左右に向かって次第に上方に位置することで、食事中に箸がマスクに当たるといった事態を低減することができる。
【0031】
マスク本体10は、折り目線11に沿うように形成された高剛性部として、折れ目線11の上端から下端に亘って樹脂フィルムの内面同士が接合されたシール部12を有する。通常のマスクは折れ目線においてマスク上部とマスク下部とでくの字状に形成されている。即ち、マスク上部における折れ目線とマスク下部における折れ目線が交差して、折れ目線におけるマスク下端はマスク上部における折れ目線に対して軸直方向に延びて、下方の開口部が閉じられているが、本発明のマスク本体10の下端において開口を閉じる方向にシール部12が延びておらず、下方が開口している。シール部12は、例えば、樹脂フィルムの内面同士が接合されることでフィルムが2枚重なった状態となっており、他の部分よりも剛性が高くなっている。シール部12を設けることにより、マスク本体10の左右方向中央部が鼻筋に沿って延び、マスク本体10の下端に開口が形成されやすく、マスク下部が口元との間にすき間をあけた状態で口元の前方に延出した装着状態が得られる。これにより、飛沫の抑制とスムーズな飲食を両立できる。高剛性部は少なくともマスクの折り目線11の三分の一に形成されているのが好ましく、折り目線11において上側線、中間線、下側線と三つに均等に分割した領域における中間線に形成されているのが好ましい。マスクが触れる鼻筋とマスクが触れない鼻の直下のいずれにも高剛性部が形成されていることでマスクが自重により垂れて、マスク本体10の下端開口が閉じる方向に変形してしまうことを好適に防ぐことができる。また、実施形態において、シール部は折れ目線の直上に連続的に形成されているが、断続的に形成されていてもよいし、折れ目線から少しずれたところにおいて、折れ目線に沿って形成されていてもよい。
【0032】
シール部12は、樹脂フィルムの内面同士を接着剤で接合して、或いはフィルムを溶剤で溶かして形成されてもよいが、好ましくはヒートシール(熱溶着)により形成される。この場合、樹脂フィルムはシーラント層を含むことが好ましく、マスク1の内面にシーラント層が位置するように折り目線11が形成される。なお、高剛性部は、別部材を接合して形成されてもよく、例えば、別の樹脂フィルムを樹脂フィルムの外面に接合してもよいが、生産性向上等の観点から、フィルムの内面同士が接合したシール部12であることが好ましい。フィルムの溶断により高剛性部を形成することも可能であるが、後述のように、高剛性部は一定以上の幅を有することが好ましいことから、ヒートシールにより形成されることが好ましい。
【0033】
シール部12は、マスク本体10の上部から下部にわたって形成されることが好ましく、本実施形態では、折り目線11と平行に延び、マスク本体10の上端P1から下端P4まで連続的に形成されている。シール部12を断続的に形成することも可能であるが、好ましくは途中で途切れることなく連続的に形成される。シール部12は、例えば、折り目線11が形成された部分を含むマスク本体10の左右方向中央部において、全長にわたって略一定の幅で形成される。シール部12の幅の一例は、マスクを構成するシートの厚みにもよるが、厚みが薄めの柔軟性の高いシートの場合、0.5mm以上である。即ち、柔軟なシートは皮膚に対して柔軟に密着してくれるため、皮膚とマスク上縁の間に隙間が生じにくい一方、自重により下側が垂れて開口を閉鎖しやすいが、シール部12があることで、マスク1を装着したときに目的とする形状に維持することが容易になる。
【0034】
マスク本体10は、シール部12のみによって、真っ直ぐに延びる折り目線11に近接する部分だけが接合されて展開しない状態となっている。マスク本体10には、例えば、マスク本体10の上端縁及び下端縁に沿うようなシール部は存在せず、特にマスク本体10の下端には、左右方向に延びるようなシール部は存在しない。このため、マスク本体10の下部は大きく展開し、口元との間に大きな隙間が容易に形成される。
【0035】
耳掛け部20は、耳が挿入される貫通孔21を有し、貫通孔21の周囲の環状部22が耳に引っ掛けられる。環状部22は、マスク本体10との境界から上方に延びる第1接続部23と第2接続部24が耳掛け部20の上端側でつながることにより環状に形成されている。貫通孔21は、真円形状や、楕円形状であってもよいが、本実施形態では、斜め上方に向かってやや長く延びた長孔となっている。耳に引っ掛けられる環状部22が途中で途切れることなく、貫通孔21の全周にわたって形成されることで、可撓性のある樹脂フィルムで構成される耳掛け部20であっても、耳から外れることが効果的に抑制されると共に図1の貫通孔21を形成する貫通孔右側の第2接続部24を指で下方へ引っ張る際に指で掴みやすく、引っ張りやすい。環状部22の幅は、例えば、10mm以上20mm以下である。
【0036】
貫通孔21は、上下左右に大きく形成されている。例えば、貫通孔21の左右方向長さL6は、70mm以上90mm以下であり、上下方向長さL7は60mm以上80mm以下である。この場合、貫通孔21に耳を挿入することが容易であり良好な装着性が得られる。また、貫通孔21内における耳の位置にある程度余裕ができるので、耳掛け部20によりマスク本体10が強く引っ張られるようなテンションがかかり難い。これにより、マスク1を装着したときに下方の開口部が閉じる方向にテンションがかかることを防ぎ、目的とする形状に維持することが容易になる。
【0037】
耳掛け部20は、上記のように、耳の上部に接する貫通孔21の上端がマスク本体10の上端P1よりも上方に位置するように形成される。貫通孔21の上端からマスク本体10の上端P1までの上下方向長さは、例えば、20mm以上50mm以下である。この場合、耳掛け部20を耳に引っ掛けたときに、即ちマスク1を装着したときに、マスク本体10の上部が鼻筋に沿った状態となり、耳の上部と鼻とでマスク1が支持された上吊り状態となる。
【0038】
なお、耳掛け部20は、その上部がマスク本体10の上部につながっていればよく、マスク本体10の下部につながっていてもよいが、マスク本体10の下部が耳の方向に強く引っ張られるようなテンションがかからない構造とする必要がある。具体的には、一般的なマスクのように貫通孔21の縁が耳の後側に強く引っ掛からないように貫通孔21を左右方向に大きく形成すること、耳掛け部20の第1接続部23及び第2接続部24がマスク本体10の上部のみにつながった形状とすること等が挙げられる。
【0039】
図3は、マスク1の試作品をマネキンに装着した状態を示す写真である。図3に示すように、マスク1は、マスク本体10の上部における折り目線11が鼻筋に沿うように、かつ鼻先から延出するマスク本体10の下部における折り目線11も鼻筋の延長線上に位置するような装着状態となる。これにより、マスク本体10の下部は、口元との間にすき間をあけて顔の前方に延びる。即ち、マスク1の下部が口の前方を覆いつつ、マスク1と口との間に大きな隙間が形成される。このため、マスク1の下方から飲食物を口元に運ぶことが可能となる。なお、マネキンは硬質であるため、マスク1の上縁がマネキンの顔に密着していないが、人の顔の皮膚は柔軟であるため、耳を耳掛け部20の貫通孔21に通して第2接続部24を下方に引っ張ることでマスク1の上縁が密着するようになる。
【0040】
マスク本体10の折り目線11は、上端P1から下端P4にわたって略直線状に延びている。マスク本体10の下部と口元の間に大きな隙間が形成されるマスク1の装着状態には、シール部12の機能が大きく関わっている。即ち、折り目線11に沿ってシール部12を形成し、折り目線11に沿った部分の剛性を高くすることにより、鼻先から延出したマスク本体10の下部が大きく撓むことを防止でき、口元との間の大きな隙間が維持されると考えられる。
【0041】
マスク1は、折り目線11を鼻筋に沿わせるように、マスク本体10を鼻に押し当てるようにして装着される。つまり、マスク本体10を鼻筋に合わせた状態で、耳掛け部20を耳に引っ掛けることでマスク1を装着し、その後、第2接続部24を下方に引っ張りマスク1の上縁を皮膚に密着させる。マスク1は、耳掛け部20の第1接続部23及び第2接続部24がマスク本体10の上部につながり下部につながっておらず、また貫通孔21が大きく形成されているため、マスク本体10が耳の方向に強く引っ張られるようなテンションが作用し難い。ゆえに、マスク1の上記装着形態が維持され易い。
【0042】
マスク1は、さらに、可撓性を有する樹脂フィルムで構成されるため、箸などが接触してもフィルムが撓んで衝撃を容易に吸収でき、マスクがずれることを抑制できる。以上のような理由から、上記構成を備えたマスク1によれば、装着した状態でもスムーズな飲食が可能である。
【0043】
[第2の実施形態]
図4図6に、第2の実施形態であるマスク1Xを示す。図4はマスク1Xを折り畳んだ状態を示し、図5はマスク1Xを展開した状態を示す。以下では、第1の実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を用いて上記説明を援用するものとする。
【0044】
図4及び図5に示すように、マスク1Xは、マスク本体10Xと、マスク本体10Xの上部につながった一対の耳掛け部20とを備え、全体的な形状はマスク1と類似している。マスク本体10Xは、マスク1の場合と同様に、折り目線11と、折り目線11に沿うように形成された高剛性部である第1のシール部12Aとを有する。第1のシール部12Aは、マスク1の場合と同様に、折り目線11に沿って一定の幅で形成される。一方、マスク1Xは、マスク本体10Xの上部において、折り目線11の延長線上に形成された切欠き40を有する点で、マスク1と異なる。さらに、第2の高剛性部として第2のシール部12Bを有する点で、マスク1と異なる。
【0045】
切欠き40は、マスク本体10Xの左右方向中央部に形成された凹部であって、樹脂フィルムの一部を切除することにより形成される。なお、切欠き40は、樹脂フィルムの折り目線11が形成された部分を切除して形成されてもよく、折り目線11を形成する前に樹脂フィルムを切除して形成されてもよい。折り目線11の延長線上に切欠き40が形成されるため、マスク本体10Xの左右方向中央から左右に離れた二箇所がマスク本体10Xの上端P1となる。
【0046】
切欠き40の効果により、切欠き40の左右両側に位置する部分が広く顔に接触するため、例えば、箸などがマスク本体10Xに当たってマスク本体10Xが突き上げられた場合であっても顔への衝撃を効果的に緩和できる。特に、折り目線に沿った高剛性部が形成されている場合、眉間等にマスク本体が突き刺さるといったことが防止される。なお、マスク本体10Xは箸などが接触すると撓むため、この撓みによっても衝撃が吸収される。切欠き40は、マスク1を展開した状態で、マスク本体10の上端縁が略V字状を呈するように形成される。切欠き40は、谷部30より浅く形成されることが好ましい。切欠き40の深さは、例えば、谷部30の深さの50%以上80%以下である。
【0047】
第2のシール部12Bは、マスク本体10Xの下端P4から所定長さ離れた位置に形成された、マスク本体10Xの折り返しの支点となる第2の高剛性部である。第2のシール部12Bを設けることにより、マスク1Xを外さなくても、マスク本体10Xの下部を容易に折り返して口元を大きく開放することができる。なお、第2の高剛性部は、別部材を接合して形成することも可能であるが、生産性等の観点からヒートシールにより形成されることが好ましい。第2のシール部12Bは、第1のシール部12Aと同時に形成されてもよく、別々に形成されてもよい。
【0048】
第2のシール部12Bは、マスク本体10Xの上下方向中央部において、折り目線11から離れた位置に形成される。即ち、第2のシール部12Bは、マスク本体10Xの上下方向の同じ位置において、第1のシール部12Aよりも耳掛け部20側に形成される。第2のシール部12Bは、マスク1Xを装着したときに、鼻先から延出する部分であって、鼻先に近い部分に形成されることが好ましい。具体的には、マスク本体10Xの上端P1から上下方向に60mm以上80mm以下の位置に第2のシール部12Bが形成される。
【0049】
第2のシール部12Bは、マスク本体の上下方向中央部近傍に設けられている。例えば、少なくとも、マスク本体10Xの上端P1から上下方向に60mm以上80mm以下の位置であり、かつ第1のシール部12Aから5mm以上15mm以下だけ離れた位置に第2のシール部12Bは形成される。第2のシール部12Bは、この位置において点状に形成されるポイントシール部であってもよいが、本実施形態では細線状に形成されている。第2のシール部12Bは、マスク本体10Xの上下方向中央部において、左右方向に延びる部分を有する。第2のシール部12Bは、上下方向中央部において第1のシール部12Aから左右方向に延びた後、下方に折れ曲がり、マスク本体10Xの下端P4に向かって次第に第1のシール部12Aに近づくように傾斜し、下端P4で第1のシール部12Aにつながる。
【0050】
第2のシール部12Bは、耳掛け部20側に凸となるように形成される。そして、第2のシール部12Bの折り目線11から最も離れた部分が、マスク本体10Xの下部を上方に折り返したときの折り返しの支点となる。折り返しの支点は、例えば、マスク本体10Xの下端P4から上下方向に少なくとも50mm離れた位置に形成される。この場合、マスク本体10Xの下部を折り返したときに口元を大きく開放することができる。支点は、例えば、マスク本体10Xの下端P4よりも上端P1側に位置する。
【0051】
なお、第2のシール部12Bは、マスク本体10Xの下端P4から上下方向中央部に向かって次第に幅が広くなるように、幅が変化する部分を有していてもよい。また、第2のシール部12Bは、第1のシール部12Aよりも剛性を強く又は弱くしてもよく、各シール部の境でフィルムが変形するようにしてもよい。また、第2のシール部12Bを第1のシール部12Aから左右方向に離れたところに形成することで部分的に剛性を変化させてもよい。また、第1のシール部12Aを折り目線の上端から上下方向中央のみに形成し、第1のシール部12Aの下端にフィルムの変形のポイントを作ってもよく、第1のシール部12Aと第2のシール部12Bとの間に低剛性部又は高剛性部を形成して変形のポイントとしてもよい。例えば、折り目線の上下方向中央にシール部を設けないことで低剛性部を作り、変形のポイントとしてもよい。要は、折れ目線に沿った軸線上において、剛性が変化する剛性変化部を形成することで、折れの起点となる部分を実現してもよい。
【0052】
図6は、マスク本体10の下部を折り返した様子を示す。図6に示すように、マスク1Xは、マスク本体10Xの下部を上方に向けて容易に折り返すことができる。これにより、例えば、ビールジョッキ等の大きなグラスを傾けて飲み物を飲む場合などに口元を大きく開放することができる。このとき、第2のシール部12Bが折り返しの支点として機能し、適切な位置で容易にマスク本体10Xの下部を折り返すことが可能となる。
【0053】
以上のように、上記構成を備えたマスク1,1Xによれば、マスクを装着したままスムーズに飲食ができる。マスク1,1Xは、飲食の際に取り外す必要がないため、感染症対策として効果的である。マスク1Xによれば、さらに、切欠き40の機能により、マスク本体10Xが突き上げられた場合であっても顔への衝撃を効果的に緩和できると共に、第2のシール部12Bの機能により、マスク本体10Xの下部を容易に折り返して口元を大きく開放することができる。
【0054】
なお、上記実施形態は本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。例えば、上記実施形態では、V字状にフィルムを切除して形成される切欠き40を例示したが、切欠きは、折り目線11に沿って樹脂フィルムを直線状にカットして形成されるスリットであってもよい。また、折り目線に対して軸直方向に樹脂フィルムを切り取ることで、マスク本体が意図せず上方に持ち上がった時にマスク本体が点状に皮膚に突き刺さるのではなく線状に皮膚に当たるようにすることができる。この場合も、上記衝撃抑制効果が得られる。
【符号の説明】
【0055】
1,1X マスク、10、10X マスク本体、11 折り目線、12 シール部、12A 第1のシール部、12B 第2のシール部、20 耳掛け部、21 貫通孔、22 環状部、23 第1接続部、24 第2接続部、30 谷部、40 切欠き、P1,P2 上端、P3,P4 下端、Z 境界
図1
図2
図3
図4
図5
図6