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特開2024-66911アキシャルギャップモータ及びエアギャップ調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066911
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】アキシャルギャップモータ及びエアギャップ調整方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/24 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
H02K21/24 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176704
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】太田 智
【テーマコード(参考)】
5H621
【Fターム(参考)】
5H621BB02
5H621PP02
(57)【要約】
【課題】ダブルロータ・シングルステータ構造のアキシャルギャップモータにおいて、エアギャップの調整について改善することである。
【解決手段】ステータと、前記ステータの軸方向一方側で前記ステータと軸方向に対向する第1ロータと、前記ステータの軸方向他方側で前記ステータと軸方向に対向する第2ロータと、を有するアキシャルギャップモータであって、前記ステータとの相対的な軸方向位置が固定され、前記第1ロータ及び前記第2ロータと共に回動する基準部材と、前記第1ロータ及び前記第2ロータの少なくとも一方と前記基準部材との相対的な軸方向位置を調整可能な調整部材と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、前記ステータの軸方向一方側で前記ステータと軸方向に対向する第1ロータと、前記ステータの軸方向他方側で前記ステータと軸方向に対向する第2ロータと、を有するアキシャルギャップモータであって、
前記ステータとの相対的な軸方向位置が固定され、前記第1ロータ及び前記第2ロータと共に回動する基準部材と、
前記第1ロータ及び前記第2ロータの少なくとも一方と前記基準部材との相対的な軸方向位置を調整可能な調整部材と、
を有する
アキシャルギャップモータ。
【請求項2】
前記第1ロータ及び前記第2ロータを前記基準部材に固定するボルトを有し、
前記調整部材は、前記ボルトによる固定に抗って前記第1ロータ及び前記第2ロータと前記基準部材との間隔を広げる調整ネジである
請求項1に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項3】
前記調整ネジは、周方向に複数設けられている
請求項2に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項4】
前記ステータとの相対的な周方向位置が固定されたシャフトと、
前記基準部材を前記シャフトに対して軸支する軸受と、を有する
請求項1に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項5】
前記シャフトと同軸に設けられ、前記第1ロータ及び前記第2ロータの回転を外部出力可能な継ぎシャフトを有する
請求項4に記載のアキシャルギャップモータ。
【請求項6】
ステータと、前記ステータの軸方向一方側で前記ステータと軸方向に対向する第1ロータと、前記ステータの軸方向他方側で前記ステータと軸方向に対向する第2ロータと、を有するアキシャルギャップモータのエアギャップ調整方法であって、
前記アキシャルギャップモータは、前記ステータとの相対的な軸方向位置が固定され、前記第1ロータ及び前記第2ロータと共に回動する基準部材を有し、
前記第1ロータ及び前記第2ロータの少なくとも一方と前記基準部材との相対的な軸方向位置を調整することでエアギャップを調整する
エアギャップ調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アキシャルギャップモータ及びエアギャップ調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アキシャルギャップモータは、ステータとロータとが軸方向にエアギャップを介して対向するように配置される。ステータとロータとの間の距離であるエアギャップの大きさは、アキシャルギャップモータの所望の性能が発揮される長さに設定される。
【0003】
しかしながら、アキシャルギャップモータを構成する部品の個体差等により、エアギャップの大きさには個体差が生じるため、エアギャップの大きさを調整する機構の提供が望まれる。
【0004】
特許文献1では、二つのステータの間に一つのロータを挟んで構成されるシングルロータ・ダブルステータ構造のアキシャルギャップモータにおいて、外側から内側にステータを押し込むことで、ロータとステータとの間のエアギャップを調整可能な機構が開示されている。この調整機構では、ステータは、ステータを収容するケースを基準とし、ステータとケースとの間隔を調整することによってエアギャップを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-164217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、アキシャルギャップモータとしては、二つのロータの間に一つのステータを挟んで構成されるダブルロータ・シングルステータ構造を採用することができる。ダブルロータ・シングルステータ構造によれば、シングルロータ・ダブルステータ構造よりも出力の向上が期待できる。
【0007】
ところが、ダブルロータ・シングルステータ構造の場合、ステータが二つのロータの間に挟まれているため、外側からステータを押し込んでエアギャップを調整するという特許文献1の機構を用いることができない。
【0008】
あえて、外側からロータを押し込むことが考えられるが、ケースは固定であるのに対してロータは回転しているため、ロータはケースを基準として押し込むことができない。
【0009】
また、ロータの押し込みに偏りがあるとロータの偏心が生じ、回転時に偏心による振動が生じてしまう。このため、偏心を解消するための調整機構も求められることになる。
【0010】
また、ステータを軸方向に動かすこととすると、ダブルロータの場合、いずれのロータに対してもステータ位置が変動してしまうため、調整に手間を要する。
【0011】
このため、従来、ダブルロータ・シングルステータ構造のアキシャルギャップモータにおいては、エアギャップの調整が困難であるという問題があった。
【0012】
本発明は、ダブルロータ・シングルステータ構造のアキシャルギャップモータにおいて、エアギャップの調整について改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係るアキシャルギャップモータは、ステータと、前記ステータの軸方向一方側で前記ステータと軸方向に対向する第1ロータと、前記ステータの軸方向他方側で前記ステータと軸方向に対向する第2ロータと、を有するアキシャルギャップモータであって、前記ステータとの相対的な軸方向位置が固定され、前記第1ロータ及び前記第2ロータと共に回動する基準部材と、前記第1ロータ及び前記第2ロータの少なくとも一方と前記基準部材との相対的な軸方向位置を調整可能な調整部材と、を有する。
【0014】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記第1ロータ及び前記第2ロータを前記基準部材に固定するボルトを有し、前記調整部材は、前記ボルトによる固定に抗って前記第1ロータ及び前記第2ロータと前記基準部材との間隔を広げる調整ネジである。
【0015】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記調整ネジは、周方向に複数設けられている。
【0016】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記ステータとの相対的な周方向位置が固定されたシャフトと、前記基準部材を前記シャフトに対して軸支する軸受と、を有する。
【0017】
上記の一態様のアキシャルギャップモータにおいて、前記シャフトと同軸に設けられ、前記第1ロータ及び前記第2ロータの回転を外部出力可能な継ぎシャフトを有する。
【0018】
本発明の一態様に係るアキシャルギャップモータのエアギャップ調整方法は、ステータと、前記ステータの軸方向一方側で前記ステータと軸方向に対向する第1ロータと、前記ステータの軸方向他方側で前記ステータと軸方向に対向する第2ロータと、を有するアキシャルギャップモータのエアギャップ調整方法であって、前記アキシャルギャップモータは、前記ステータとの相対的な軸方向位置が固定され、前記第1ロータ及び前記第2ロータと共に回動する基準部材を有し、前記第1ロータ及び前記第2ロータの少なくとも一方と前記基準部材との相対的な軸方向位置を調整することでエアギャップを調整する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、ダブルロータ・シングルステータ構造のアキシャルギャップモータにおいて、エアギャップの調整について改善することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るモータの斜視図である。
図2図1のモータ10から、継ぎシャフト50、ボルト50a、第2ロータコア31、ボルト33a及び調整ネジ34aを除いて示す斜視図である。
図3】第2ロータコア31を軸方向一方側から見た斜視図である。
図4】ロータコア固定部材80の斜視図である。
図5図1のモータ10を、X軸と直交し中心軸Jを通る面で切断して示す側断面である。
図6図1のモータ10を、中心軸Jと平行であって、中心軸J及びボルト33の軸中心を通る面で切断して示す側断面である。
図7図1のモータ10を、中心軸Jと平行であって、中心軸J及び調整ネジ34の軸中心を通る面で切断して示す側断面である。
図8図1のモータ10を、中心軸Jと平行であって、中心軸J及び調整ネジ34の軸中心を通る面で切断して示す側断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るアキシャルギャップモータについて説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0022】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、図1に示す中心軸Jの軸方向すなわち中心軸Jが延びる方向と平行な方向とする。Y軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち図1の上下方向とする。X軸方向は、Z軸方向及びY軸方向の両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を-側とする。
【0023】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「一方側」と呼び、Z軸方向の負の側(-Z側)を「他方側」と呼ぶ。なお、一方側及び他方側とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。周方向において、+Z側から-Z側を見たときの時計回りの側を「周方向一方側」と呼び、反時計回りの側を「周方向他方側」と呼ぶ。
【0024】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。また「軸方向と直交する方向に拡がる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)と直交する方向に拡がる場合に加えて、軸方向(Z軸方向)と直交する方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に拡がる場合も含む。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータの斜視図である。図1のモータ10は、アキシャルギャップモータの一例である。モータ10は、中心軸Jに沿って延びるシャフト71(図5参照)と、ステータ20と、ステータ20の軸方向一方側に配置された第1ロータ40と、ステータ20の軸方向他方側に配置された第2ロータ30と、を有する。
【0026】
モータ10は、第1ロータ40の軸方向一方側から第1ロータ40を覆うブラケット70を有する。第1ロータ40は、ブラケット70に覆われているため、図1では露出していない。ブラケット70は、中心軸Jと同軸のほぼ円板状の部材である。
【0027】
第1ロータ40は、第1ロータコア41(図5参照)及び第1ロータ磁石42(図5参照)を有する。第1ロータコア41は、中心軸Jと同軸のほぼ円板状の部材である。第1ロータコア41の軸方向一方側の面は、ブラケット70の軸方向他方側の面と対向する。第1ロータコア41の軸方向他方側の面には、例えば接着剤によって第1ロータ磁石42が固定される。第1ロータ磁石42の軸方向他方側の面は、ステータ20の軸方向一方側の面と対向する。第1ロータ磁石42は、軸方向と直交する面が扇形で、軸方向に厚みを有する磁石を周方向に複数配置して構成される。
【0028】
第2ロータ30は、第2ロータコア31及び第2ロータ磁石32(図2参照)を有する。第2ロータコア31は、中心軸Jと同軸のほぼ円板状の部材である。第2ロータコア31の軸方向他方側の面は、軸方向他方側で露出する。第2ロータコア31の軸方向一方側の面には、例えば接着剤によって第2ロータ磁石32が固定される。第2ロータ磁石32の軸方向一方側の面は、ステータ20の軸方向他方側の面と対向する。
【0029】
モータ10は、ステータ20を収容するステータケース60を有する。ステータケース60は、ステータ20を周方向外側から覆う第1ステータケース61を有する。第1ステータケース61は、中心軸Jと同軸のほぼ円筒状の部材である。第1ステータケース61は、鉛直方向上側にY軸方向に貫通する貫通孔61aを有する。ステータ20は、貫通孔61aを介してステータケース60内に供給された、例えば冷却オイル等の冷媒によって冷却される。
【0030】
ステータケース60は、ステータ20を軸方向一方側から覆う第2ステータケース63を有する。第2ステータケース63は、中心軸Jと同軸のほぼ円板状の部材である。第2ステータケース63は、ステータコア21の軸方向一方側端を、軸方向一方側に露出するように、軸方向に貫通する複数の孔を有する。
【0031】
ステータケース60は、ステータ20を軸方向他方側から覆う第3ステータケース62を有する。第3ステータケース62は、中心軸Jと同軸のほぼ円板状の部材である。第3ステータケース62は、ステータコア21の軸方向他方側端を、軸方向他方側に露出するように、軸方向に貫通する複数の孔を有する。
【0032】
ステータケース60は、ステータ20を周方向内側から覆う第4ステータケース64(図5参照)を有する。第4ステータケース64は、中心軸Jと同軸のほぼ円筒状の部材である。
【0033】
モータ10は、ロータコア固定部材80(図4参照)を有する。ロータコア固定部材80についての詳細は後述する。モータ10は、ボルト33及び調整ネジ34を有する。ボルト33は、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。ボルト33は、軸方向に延びて、第2ロータコア31とロータコア固定部材80とを固定する。ボルト33aは、複数のボルト33のうちの一つである。調整ネジ34は、軸方向に延びて、第2ロータコア31とロータコア固定部材80との間の距離を調節する。調整ネジ34aは、複数の調整ネジ34のうちの一つである。以下におけるボルト33aや調整ネジ34aについての説明は、複数のボルト33や複数の調整ネジ34のうちの他のものについても同様である。
【0034】
モータ10は、継ぎシャフト50及びボルト50aを有する。ボルト50aは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。継ぎシャフト50は、中心軸Jと同軸のほぼ円板状の部材である。継ぎシャフト50は、ボルト50aによって、ロータコア固定部材80に固定される。
【0035】
図2は、図1のモータ10から、継ぎシャフト50、ボルト50a、第2ロータコア31、ボルト33a及び調整ネジ34aを除いて示す斜視図である。第2ロータ磁石32は、第2ロータコア31に接着剤等で固定されているが、図2では、第2ロータ磁石32が見えるように、第2ロータコア31のみを除いて示している。第2ロータ磁石32は、複数の磁石を周方向に複数配置して構成される。
【0036】
モータ10は、ボルト62a及びボルト62bを有する。ボルト62aは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。ボルト62bは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。第3ステータケース62は、その径方向外側をボルト62aによって第1ステータケース61の軸方向他方側に固定される。第3ステータケース62は、その径方向内側をボルト62bによって、第4ステータケース64の軸方向他方側に固定される。
【0037】
ロータコア固定部材80は、軸方向他方側端に端部81を有する。ロータコア固定部材80は、端部81の軸方向一方側に小径部82を有する。小径部82の外径は、端部81の外径よりも大きい。小径部82は、端部81との段差となる軸方向他方側の面にボルト穴82aを有する。ボルト穴82aは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。
【0038】
継ぎシャフト50は、軸方向一方側において、径方向内側が空洞になっている。継ぎシャフト50は、その径方向内側の空洞にロータコア固定部材80の端部81を収容するように、ロータコア固定部材80の軸方向他方側に嵌まる。ボルト50aは、継ぎシャフト50を軸方向に貫通してロータコア固定部材80のボルト穴82aに嵌まり、ロータコア固定部材80に継ぎシャフト50を固定する。
【0039】
ロータコア固定部材80は、小径部82の軸方向一方側に第2大径部83を有する。第2大径部83の外径は、小径部82の外径よりも大きい。第2大径部83は、小径部82との段差となる軸方向他方側の面83aに、軸方向に貫通するボルト穴83bを有する。ボルト穴83bは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。また、第2大径部83は、面83aに突き当て部83cを有する。突き当て部83cは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。
【0040】
ボルト33は、第2ロータコア31を軸方向に貫通してロータコア固定部材80のボルト穴83bに嵌まり、ロータコア固定部材80に第2ロータコア31を固定する。調整ネジ34は、詳しくは後述するように、第2ロータコア31を軸方向に貫通して突き当て部83cに突き当たり、ロータコア固定部材80と第2ロータコア31との距離を調整することで、エアギャップを調整する。
【0041】
図3は、第2ロータコア31を軸方向一方側から見た斜視図である。第2ロータコア31は、軸方向一方側に、第2ロータ磁石32を接着して収容する収容部31aを有する。
【0042】
第2ロータコア31は、その径方向内側に、収容部31aの軸方向一方側の面よりも軸方向一方側に突出した突出部31bを有する。突出部31bは、軸方向に貫通してボルト33が通るボルト穴31cを有する。ボルト穴31cは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。突出部31bは、軸方向に貫通し調整ネジ34が通るネジ穴31dを有する。ネジ穴31dは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。
【0043】
調整ネジ34は、第2ロータ30とロータコア固定部材80との相対的な軸方向位置を調整可能な調整部材の一例である。詳しくは後述するが、調整ネジ34は、第2ロータコア31のネジ穴31dに嵌まって軸方向一方側に押し込まれることで、第2ロータ30とロータコア固定部材80との間隔を広げる。
【0044】
なお、第1ロータ41は、第2ロータコア31を軸方向一方側と他方側とで反転した以外は、第2ロータコア31と同様の構成であるので、詳しい説明は省略する。
【0045】
図4は、ロータコア固定部材80の斜視図である。ロータコア固定部材80は、第2大径部83の軸方向一方側に肉抜き部84を有する。ロータコア固定部材80は、肉抜き部84の軸方向一方側に第1大径部85を有する。第1大径部85の外径は、第2大径部83の外径と同径である。ロータコア固定部材80は、第1大径部85から第2大径部83までが連続して同径であって肉抜き部84を有しない構成であってもよい。肉抜き部84は、第1大径部85や第2大径部83よりも小径になるように肉抜きされた部分である。ロータコア固定部材80は、肉抜き部84を有することで軽量化される。ロータコア固定部材80は、ステータ20に対する相対的な軸方向位置が固定され、第1ロータ40及び第2ロータ30と共に回動する基準部材の一例である。
【0046】
第1大径部85は、軸方向に貫通するボルト穴85aを有する。ボルト穴85aは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。また、第1大径部85は、軸方向一方側の面に突き当て部85bを有する。突き当て部85bは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。
【0047】
図5は、図1のモータ10を、X軸と直交し中心軸Jを通る面で切断して示す側断面である。図6は、図1のモータ10を、中心軸Jと平行であって、中心軸J及びボルト33の軸中心を通る面で切断して示す側断面である。
【0048】
シャフト71は、中心軸Jと同軸のほぼ円柱状の部材である。モータ10は、ボルト70aを有する。ボルト70aは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。シャフト71は、ボルト70aによって、ブラケット70の軸方向他方側の面に固定される。本実施形態において、シャフト71は回転しない。
【0049】
モータ10は、ボルト70bを有する。ボルト70bは、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。ボルト70bは、ブラケット70及び第2ステータケース63を軸方向に貫通し、ブラケット70及び第2ステータケース63を第1ステータケース61の軸方向一方側に固定する。
【0050】
ステータ20は、ステータコア21及びステータコイル22を有する。ステータコア21は、中心軸Jと同軸の周方向に等間隔で複数設けられている。複数のステータコア21それぞれの軸方向一方側端は、第2ステータケース63の軸方向に貫通する孔から軸方向一方側に露出して、第1ロータ磁石42の軸方向他方側の面と軸方向に対向する。複数のステータコア21それぞれの軸方向他方側端は、第3ステータケース62の軸方向に貫通する孔から軸方向他方側に露出して、第2ロータ磁石32の軸方向一方側の面と軸方向に対向する。
【0051】
ロータコア固定部材80は、軸受71a及び軸受71bを介してシャフト71に軸支される。ロータコア固定部材80は、シャフト71に対し、中心軸Jを回転軸として回動可能である。図6に示すように、ロータコア固定部材80は、ボルト33によって第2ロータコア31に固定される。また、ロータコア固定部材80は、ボルト43によって第1ロータコア41に固定される。このため、第1ロータ40及び第2ロータ30がステータ20に対して回転すると、ロータコア固定部材80もステータ20に対して回転する。継ぎシャフト50は、ロータコア固定部材80に固定されているため、ロータコア固定部材80がステータ20に対して回転すると、継ぎシャフト50も回転する。モータ10は、この継ぎシャフト50の回転により、第1ロータ40及び第2ロータ30の回転を外部出力することができる。
【0052】
図7は、図1のモータ10を、中心軸Jと平行であって、中心軸J及び調整ネジ34の軸中心を通る面で切断して示す側断面である。図8は、図1のモータ10を、中心軸Jと平行であって、中心軸J及び調整ネジ34の軸中心を通る面で切断して示す側断面斜視図である。
【0053】
第2ロータ30の第2ロータコア31は、第2ロータ磁石32とステータコア21との間のエアギャップが調整可能範囲の最小値となるように、ボルト33によってロータコア固定部材80に固定される。例えば、第2ロータコア31の突出部31bの軸方向一方側の面である面31baが、ロータコア固定部材80の第2大径部83の軸方向他方側の面である面83aと接する位置で、ボルト33によって第2ロータコア31とロータコア固定部材80とが固定される。
【0054】
調整ネジ34をネジ穴31dにねじ込むと、調整ネジ34は突出部31bを軸方向他方側から軸方向一方側へと貫通し、調整ネジ34の軸方向一方側の端部は、面83aの突き当て部83cに突き当たる。
【0055】
第2ロータ磁石32とステータコア21との間のエアギャップを調整する際には、調整ネジ34をネジ穴31dにさらにねじ込む。これにより、調整ネジ34の軸方向一方側の端部は、面31baよりも軸方向一方側に突出し、ボルト33による固定に抗って面31baと面83aとの間隔を軸方向に広げる。面31baと面83aとの軸方向の間隔が広がると、第2ロータ磁石32とステータコア21との間のエアギャップが大きくなる。
【0056】
このように本実施形態によれば、調整ネジ34のねじ込み量に応じて第2ロータ磁石32とステータコア21との間のエアギャップを調整することができる。調整ネジ34は、周方向に複数設けられており、この複数の調整ネジ34それぞれのねじ込み量を調整することで、ロータの偏心を抑え、回転時の偏心による振動を抑制することができる。
【0057】
以上、第2ロータ磁石32とステータコア21との間のエアギャップの調整について説明したが、第1ロータ磁石42とステータコア21との間のエアギャップの調整についても同様である。第1ロータ磁石42とステータコア21との間のエアギャップの調整は、例えば、ブラケット70を取り付ける前に、調整ネジ44のねじ込み量を調整することによって実施することができる。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態によれば、ダブルロータ・シングルステータ構造のアキシャルギャップモータにおいて、ロータコア固定部材80を基準として、ロータを外側から押し込むことでエアギャップを調整することができる。
【0059】
また本実施形態によれば、ロータ側でのエアギャップの調整を可能とすることで、偏心を解消するよう調整することも可能となる。また、ダブルロータの各々のロータについて個別にエアギャップを調整できるので、その相互の位置が同時にずれることがなく、調整の手間を省力化できる。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
10…モータ、20…ステータ、30…第2ロータ、40…第1ロータ

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