(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066918
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】成長因子産生促進剤及びこれを含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/88 20060101AFI20240509BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240509BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240509BHJP
C12N 5/077 20100101ALN20240509BHJP
【FI】
A61K36/88 ZNA
A61P17/02
A61P43/00 107
C12N5/077
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176718
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悠
(72)【発明者】
【氏名】梶原 篤史
(72)【発明者】
【氏名】三谷 信
【テーマコード(参考)】
4B065
4C088
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065BD43
4B065CA24
4B065CA44
4C088AB72
4C088AC03
4C088BA08
4C088CA04
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA89
4C088ZB22
(57)【要約】
【課題】本発明は、線維芽細胞において、血小板由来成長因子や上皮成長因子の産生を促進する技術を提供することを課題とする。
【解決手段】アヤメ科(Iridaceae)クロッカス属(Crocus)に属する植物の抽出物を有
効成分として含有する、線維芽細胞の成長因子産生促進剤であって、前記成長因子が、血小板由来成長因子及び上皮成長因子からなる群から選択される一以上である、成長因子産生促進剤。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アヤメ科(Iridaceae)クロッカス属(Crocus)に属する植物の抽出物を有効成分とし
て含有する、線維芽細胞の成長因子産生促進剤であって、
前記成長因子が、血小板由来成長因子及び上皮成長因子からなる群から選択される一以上である、成長因子産生促進剤。
【請求項2】
前記アヤメ科(Iridaceae)クロッカス属(Crocus)に属する植物が、サフラン(Crocus sativus)である、請求項1に記載の成長因子産生促進剤。
【請求項3】
前記抽出物の溶媒が、極性溶媒である、請求項1に記載の成長因子産生促進剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の成長因子産生促進剤を含む、皮膚組織の損傷の改善又は予防のための組成物。
【請求項5】
化粧料、医薬部外品、又は医薬品である、請求項4に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長因子産生促進剤及びこれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
サフランは、一般的に食品のスパイスとして広く使用されている、アヤメ科(Iridaceae)クロッカス属(Crocus)に属する植物であるが、近年、サフランの有する様々な薬理
学的特性が報告されている。例えば、柱頭を除いたサフランの花弁のアセトン抽出物は、ヒト表皮角化細胞株であるHaCaT細胞において、血管内皮成長因子(VEGF)の分泌を亢進
させたことが報告されている(非特許文献1)。
また、サフランの花弁から単離された抗酸化物質であるケンペロール又はクロシンを含むハイドロゲルは、線維芽細胞の増殖を促進したことが報告されており、これらのハイドロゲルは創傷治癒や美容への応用が期待されている(非特許文献2)。
さらに、サフランの柱頭のエタノール抽出物は、ラットの火傷モデル及びヒト皮膚線維芽細胞(HDF)のスクラッチアッセイにおいて、線維芽細胞の増殖を促進し、創傷治癒を
促進したことが報告されている(非特許文献3)。
【0003】
しかしながら、アヤメ科(Iridaceae)クロッカス属(Crocus)に属する植物の抽出物
が、線維芽細胞において血小板由来成長因子や上皮成長因子の産生を促進することについては、知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Planta Med., 83(14-15):1176-1183 (2017)
【非特許文献2】Skin Pharmacol. Physiol.,31(2):95-98 (2018)
【非特許文献3】Planta Med., 84(16):1191-1200 (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、線維芽細胞において、血小板由来成長因子や上皮成長因子の産生を促進する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アヤメ科(Iridaceae)クロッカス属(Crocus)に属する植物の抽出物
が、線維芽細胞における血小板由来成長因子や上皮成長因子の産生を促進することを見出した。
【0007】
本発明は下記の態様を含む。
[1]アヤメ科(Iridaceae)クロッカス属(Crocus)に属する植物の抽出物を有効成分
として含有する、線維芽細胞の成長因子産生促進剤であって、
前記成長因子が、血小板由来成長因子及び上皮成長因子からなる群から選択される一以上である、成長因子産生促進剤。
[2]前記アヤメ科(Iridaceae)クロッカス属(Crocus)に属する植物が、サフラン(Crocus sativus)である、[1]に記載の成長因子産生促進剤。
[3]前記抽出物の溶媒が、極性溶媒である、[1]又は[2]に記載の成長因子産生促進剤。
[4][1]~[3]のいずれかに記載の成長因子産生促進剤を含む、皮膚組織の損傷の改善又は予防のための組成物。
[5]化粧料、医薬部外品、又は医薬品である、[4]に記載の組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、線維芽細胞において、血小板由来成長因子や上皮成長因子の産生を促進する技術を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】正常ヒト真皮線維芽細胞におけるPDGF遺伝子のmRNA発現量の相対値を示すグラフ。
【
図2】正常ヒト真皮線維芽細胞におけるKGF遺伝子のmRNA発現量の相対値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0011】
本発明の成長因子産生促進剤は、アヤメ科(Iridaceae)クロッカス属(Crocus)に属
する植物の抽出物を有効成分として含有する。クロッカス属に属する植物としては、特に限定されないが、サフラン(Crocus sativus)が好ましい。サフランは、英名でSaffron
、和名ではサフランで知られる。
【0012】
抽出に用いる部位としては特に限定されず、例えば、サフラン等のアヤメ科クロッカス属に属する植物の花、茎、葉、枝、根、果実、果皮、蕾等が挙げられ、これらの中でも、柱頭、花弁等の花部を用いることが好ましく、花弁を用いることがより好ましい。抽出に際しては、これらは生の状態でも乾燥状態でもよい。
【0013】
抽出に際して、サフラン等のアヤメ科クロッカス属に属する植物の抽出部位又はその乾燥物は、予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出部位の乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。
【0014】
抽出は、常圧、若しくは加圧、減圧下で、室温、冷却又は加熱した状態で抽出溶媒に浸漬させて抽出する方法、水蒸気蒸留等の蒸留法を用いて抽出する方法並びに抽出部位を圧搾して抽出物を得る圧搾法等が例示され、これらの方法を単独で、又は2種以上を組み合わせて抽出を行うこともできる。
【0015】
浸漬によって抽出する場合、アヤメ科クロッカス属に属する植物の植物体、地上部、根茎部、及び/又は種子の乾燥物1質量部に対して溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、溶媒の沸点付近の温度であれば数時間浸漬することにより行うことができる。浸漬後は、室温まで冷却し、所望により不要物を除去した後、溶媒を減圧濃縮等により除去すればよい。濃縮液を5℃で静置し、析出した澱をろ過することにより、所望の抽出物を得ることができる。
【0016】
抽出溶媒としては、特に限定されないが、極性溶媒が好ましく、例えば、水;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;及びジエチルエーテル、テトラ
ヒドロフラン等のエーテル類から選択される1種又は2種以上が好ましく挙げられる。中でも、水を用いて抽出することがより好ましい。
このようにして得られた抽出物、又はこれを適宜濃縮したものを本発明の成長因子産生促進剤とすることができる。
【0017】
また、アヤメ科クロッカス属に属する植物の抽出物は、市販のものを用いることができ、これを本発明の成長因子産生促進剤とすることができる。
【0018】
本発明の成長因子産生促進剤は、線維芽細胞における、成長因子の産生を促進する効果を発揮する。線維芽細胞は、結合組織を構成する細胞の一つであり、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸等の細胞外基質を構成する成分を合成する働きを担う。
線維芽細胞は、真皮等の皮膚組織、皮膚支帯等の皮下組織、筋組織、神経組織に存在する細胞であり、真皮線維芽細胞が好ましい。本発明の成長因子産生促進剤は、上記の線維芽細胞が分布する組織における成長因子の産生を促進するために用いることができ、皮膚組織における成長因子の産生を促進するために用いることが好ましく、表皮、真皮、及び/又は皮下組織おける成長因子の産生を促進するために用いることがより好ましく、真皮における成長因子の産生を促進するために用いることがさらに好ましい。
【0019】
本発明において、成長因子とは、血小板由来成長因子及び上皮成長因子からなる群から選択される一以上である。
血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor(PDGF))とは、組織が傷ついた際に、主に血小板から放出される成長因子であり、血小板だけでなく、マクロファージ、平滑筋細胞、内皮細胞、繊維芽細胞からも放出される。血小板由来成長因子は、組織が傷つくと放出され、繊維芽細胞やマクロファージの細胞遊走を促し、血漿中の上皮成長因子やインスリン様成長因子とともに細胞増殖を促し、組織の修復、ひいては創傷治癒に関わる。
【0020】
上皮成長因子(Epidermal Growth Factor(EGF))とは、主に血小板から分泌される成長因子であり、チロシンキナーゼを活性化し、皮膚の細胞増殖や創傷治癒を促す。
【0021】
本発明において成長因子の産生が促進するとは、本発明の成長因子産生促進剤を対象に適用した場合に、成長因子の産生促進が示されることを含む。すなわち、本発明において成長因子の産生が促進するとは、成長因子の産生が誘導されること又は亢進することを含む。
【0022】
本発明の成長因子産生促進剤は、線維芽細胞において成長因子をコードする遺伝子の発現を促進し、線維芽細胞における成長因子の産生を促進することができるため、皮膚組織の損傷を改善又は予防するのに有効である。すなわち、本発明の成長因子産生促進剤は、皮膚組織の損傷の改善又は予防のために用いることができる。なお、本発明において、「改善」は「治療」を含む。また、本発明の成長因子産生促進剤は、成長因子遺伝子発現促進剤として用いることができる。
【0023】
皮膚組織の損傷としては、特に限定はされないが、皮膚組織の障害及び損傷が含まれ、例えば、シワ、タルミ、ハリの低下、色素沈着(シミ)、くすみ、皮膚の肥厚、毛穴のひらき、ニキビ痕、表皮、真皮、及び/又は皮下組織における創傷(切創、裂創、刺傷、咬創、挫創、挫傷、擦過傷等)、褥瘡、熱傷、瘢痕、ケロイド等が挙げられ、薄毛や脱毛等の頭皮や毛髪の損傷も含まれる。
【0024】
成長因子の産生促進は、公知の測定方法により確認することができ、例えば、線維芽細胞における成長因子の産生量や、線維芽細胞における成長因子をコードする遺伝子の発現
量を測定することで確認することができる。
線維芽細胞における成長因子をコードする遺伝子の発現量を測定する方法としては、例えば、線維芽細胞からmRNAを抽出してcDNAを合成し、成長因子をコードする遺伝子(血小板由来成長因子(PDGF)遺伝子、上皮成長因子(KGF)遺伝子)の発現量をリアルタイムqPCR法により測定する方法が挙げられる。
【0025】
本発明の成長因子産生促進剤は、当該成長因子産生促進剤を原液で利用しても良いし、当該成長因子産生促進剤を任意の濃度に希釈して利用してもよい。また、本発明の成長因子産生促進剤は、製剤化に用いられる任意の成分と適宜組み合わせて配合することにより、外用剤又は経口剤の形態とすることができる。
本発明においては、成長因子産生促進剤を含む外用剤又は経口剤の形態とすることが好ましい。
【0026】
外用剤としては化粧料、医薬部外品、医薬品等が好適に例示でき、本発明の効果を損ねない限度において、通常使用される任意成分を含有することもできる。このような任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボカド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオ
ン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、2,4-ヘキサンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシ-4’-t-ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類フェノキシエタノール等の抗菌剤等が好ましく例示できる。
【0027】
経口剤としては、例えば、菓子やパン、麺等の一般食品、ドリンク製剤、カプセル剤や錠剤の形態をとる健康増進の目的を有する食品群(例えば、特定保健用食品等)、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤や、錠剤の形態をとる経口投与医薬品等が例示できる。
経口剤の形態とする場合においては、許容される任意成分を含有することができる。この様な任意成分としては、食品であれば、塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、酢等の調味成分、着色成分、フレーバー等の矯臭成分、増粘剤、乳化・分散剤、保存料、安定剤、各種ビタミン類等が好適に例示でき、健康増進の目的を有する食品群や医薬品であれば、結晶セルロース、乳糖等の賦形剤、アラビヤガムやヒドロキシプロピルセルロース等の結合剤、クロスカルメロースナトリウム、デンプン等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤、矯味、矯臭剤、着色剤、各種ビタミン類等が好ましく例示できる。これらを常法に従って処理することにより、経口剤を製造することができる。
【0028】
外用剤におけるアヤメ科クロッカス属に属する植物の抽出物の総含有量は、特に限定されないが、例えば、乾燥質量として、0.00001~1質量%、好ましくは0.001~0.1質量%とすることができる。
経口剤におけるアヤメ科クロッカス属に属する植物の抽出物の総含有量は、特に限定されないが、例えば、乾燥質量として、0.01~100質量%、好ましくは10~80質量%とすることができる。
また、外用剤又は経口剤において、固形分として、前記植物の抽出物を1日あたり10~1000mgを1回又は数回に分けて適用する形態とすることができる。
【実施例0029】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
<実施例1>サフラン抽出物の真皮線維芽細胞での成長因子への影響
正常ヒト真皮線維芽細胞(NHDF)(クラボウ社製、製品番号KF-4109)を、24wellプレ
ートに播種し(4.0×104cells/mL)、10%FBS含有D-MEM培地を用いて37℃、5%CO2環境下で24時間培養した。その後、培地を、最終濃度0.1%のサフラン抽出物を含む10%FBS含有D-MEM培地に交換した。なお、サフラン抽出物としては、サフランの花弁(柱頭を除く)の水抽出物を用いた。また、陰性対照としては、培地を、サフラン抽出物を含まない10%FBS含有D-MEM培地に交換した。37℃、5%CO2環境下で48時間培養した後、培地を除去し、PBS(-)1000μL/wellで洗浄した。
RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて上記正常ヒト真皮線維芽細胞のmRNAを抽出し
、Superscript VILO DNA synthesis Kit(Lifetechnologies社製)を用いてcDNAを合成後、血小板由来成長因子(PDGF)遺伝子及び上皮成長因子(KGF)遺伝子の発現量をリアル
タイムqPCR法にてそれぞれ測定した。また、内在性コントロール遺伝子であるACTBのmRNA発現量を同様に測定した。なお、測定には、QuantiFact SYBR GREEN PCR kit(QIAGEN社
製)を用いた。プライマーとしては、PDGF遺伝子及びKGF遺伝子に関しては、表1に示す
配列のプライマーを用い、ACTB遺伝子に関しては、Hs_ACTB_2_SG QuantiTect Primer(QIAGEN社製、製品番号QT01680476)を用いた。
各mRNA発現量についてACTBの発現量による補正を行い、陰性対照での発現量を1とした
場合の相対値をそれぞれ求めた。
【0031】
【0032】
図1及び2に、PDGF遺伝子及びKGF遺伝子の各相対発現量を示す。サフラン抽出物を添
加した真皮線維芽細胞では、PDGF遺伝子の相対発現量が2.08、KGF遺伝子の相対発現量が1.24であった。この結果から、サフラン抽出物は、真皮線維芽細胞におけるPDGF遺伝子及
びKGF遺伝子の発現を促進することが示された。