(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066923
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】鞍乗車両
(51)【国際特許分類】
B62J 35/00 20060101AFI20240509BHJP
B62J 37/00 20060101ALI20240509BHJP
B62J 40/00 20200101ALI20240509BHJP
【FI】
B62J35/00 A
B62J37/00 Z
B62J35/00 C
B62J40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176724
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 太郎
(57)【要約】
【課題】燃料供給システムによって車両全体の重心が左右方向の一方に極端に偏るのを抑制できる鞍乗車両を提供する。
【解決手段】鞍乗車両は、車体フレームと、走行のための動力を発生する走行動力源と、車体フレームに支持された、運転者が跨って着座するシートと、走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、車体フレームを左右に分ける中心面に対して左側に配置された左タンクと、走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、左タンクと左右方向に隙間をあけて、中心面に対して右側に配置された右タンクと、左タンクおよび右タンクの各燃料貯留空間を互いに連通する連通体と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
走行のための動力を発生する走行動力源と、
前記車体フレームに支持された、運転者が跨って着座するシートと、
前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記車体フレームを左右に分ける中心面に対して左側に配置された左タンクと、
前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記左タンクと左右方向に隙間をあけて、前記中心面に対して右側に配置された右タンクと、
前記左タンクおよび前記右タンクの各燃料貯留空間を互いに連通する連通体と、
を備える、鞍乗車両。
【請求項2】
前記左タンクおよび前記右タンクは、互いに大きさが異なる、請求項1に記載の鞍乗車両。
【請求項3】
前記左タンクの燃料貯留空間および前記右タンクの燃料貯留空間のいずれか一方に少なくとも一部が配置された、前記走行動力源に燃料を供給する燃料ポンプを更に備える、請求項1または2に記載の鞍乗車両。
【請求項4】
前記左タンクの底面の高さと前記右タンクの底面の高さとが、互いに異なり、
前記燃料ポンプは、前記左タンクおよび前記右タンクのうち底面が下方に位置するタンクに対して、取り付けられている、請求項3に記載の鞍乗車両。
【請求項5】
前記中心面に対して左右方向一方側に配置され、前記車体フレームを左右方向一方側に傾けた状態で起立させるサイドスタンドを更に備え、
前記燃料ポンプは、前記左タンクおよび前記右タンクのうち、前記中心面に対して左右方向における前記サイドスタンドと同じ側のタンクに配置される、請求項3に記載の鞍乗車両。
【請求項6】
前記走行動力源は、内燃機関を含み、
前記鞍乗車両は、前記中心面に対して左右方向における一方側に配置された、前記内燃機関の排気ポートに接続される排気装置を更に備え、
前記燃料ポンプは、前記左タンクおよび前記右タンクのうち、前記中心面に対して左右方向における前記排気装置と反対側のタンクに配置される、請求項1または2に記載の鞍乗車両。
【請求項7】
運転者が手で握るハンドルと、
上端部に前記ハンドルが接続された操舵軸と、を備え、
前記車体フレームは、前記操舵軸を角変位可能に支持するヘッドパイプを含み、
前記左タンクの前端部および前記右タンクの前端部が、前記ヘッドパイプの上端部よりも前方に位置する、請求項1または2に記載の鞍乗車両。
【請求項8】
前記左タンクおよび前記右タンクは、前記シートの前方に位置し、且つ、左右方向に見て互いに重なるように配置されている、請求項1または2に記載の鞍乗車両。
【請求項9】
前記走行動力源は、内燃機関を含み、
前記鞍乗車両は、前記内燃機関に供給される空気を浄化するフィルタを収容するエアクリーナボックスを備え、
前記エアクリーナボックスの一部または全部が、前記シートの左右方向中央部分の前端部より前方で、且つ、前記シートの左右方向中央部分の前端部より上方に配置されている、請求項1または2に記載の鞍乗車両。
【請求項10】
車体フレームと、
走行のための動力を発生する走行動力源と、
前記車体フレームに支持された、運転者が跨って着座するシートと、
前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記車体フレームを左右に分ける中心面に対して左側に配置された左タンクと、
前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記左タンクと左右方向に隙間をあけて、前記中心面に対して右側に配置された右タンクと、を備え、
前記左タンクおよび前記右タンクは、互いに大きさが異なる、鞍乗車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鞍乗車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、走行動力源として燃料タンクを備える鞍乗車両を開示している。この鞍乗車両では、燃料タンクは、フレームよりも左右方向外方に位置づけられるよう左側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鞍乗車両の左右方向一方側に燃料タンクを配置する場合、車両全体の重心が左右方向における燃料タンクが配置された側に偏る可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、燃料タンクによって車両全体の重心が左右方向の一方に極端に偏るのを抑制できる鞍乗車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る鞍乗車両は、車体フレームと、走行のための動力を発生する走行動力源と、前記車体フレームに支持された、運転者が跨って着座するシートと、前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記車体フレームを左右に分ける中心面に対して左側に配置された左タンクと、前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記左タンクと左右方向に隙間をあけて、前記中心面に対して右側に配置された右タンクと、前記左タンクおよび前記右タンクの各燃料貯留空間を互いに連通する連通体と、を備える。
【0007】
本開示の別の態様に係る鞍乗車両は、車体フレームと、走行のための動力を発生する走行動力源と、前記車体フレームに支持された、運転者が跨って着座するシートと、前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記車体フレームを左右に分ける中心面に対して左側に配置された左タンクと、前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記左タンクと左右方向に隙間をあけて、前記中心面に対して右側に配置された右タンクと、を備え、前記左タンクおよび前記右タンクは、互いに大きさが異なる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、燃料タンクによって車両全体の重心が左右方向の一方に極端に偏るのを抑制できる鞍乗車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る自動二輪車の正面図である。
【
図3】第1実施形態に係る自動二輪車の上面図である。
【
図4】第1実施形態に係る自動二輪車における燃料タンク近傍を拡大して示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る燃料供給システムの正面図である。
【
図6】第1実施形態に係る燃料供給システムの左側面図である。
【
図7】第2実施形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【
図8】第2実施形態に係る自動二輪車の右側面図である。
【
図9】第2実施形態の燃料供給システム、車体フレーム、バッテリパックおよびエアクリーナボックスの位置関係を示す上面図である。
【
図10】第2実施形態における燃料供給システム近傍を拡大して示す左側面図である。
【
図11】第2実施形態の燃料供給システム、車体フレーム、バッテリパックおよびエアクリーナボックスの位置関係を示す正面図である。
【
図12】変形例に係る燃料供給システムの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る自動二輪車1の左側面図である。
図2は、第1実施形態に係る自動二輪車1の正面図である。
図1に示すように、自動二輪車1は、運転者が跨って乗る鞍乗車両の一例である。また、本実施形態において、自動二輪車1は、ハイブリッド車両である。
【0012】
自動二輪車1は、従動輪である前輪2と、駆動輪である後輪3と、車体フレーム4とを備える。車体フレーム4は、ヘッドパイプ4aと、左右一対のメインフレーム4bと、シート支持フレーム4cとを有する。ヘッドパイプ4aには、操舵軸5が回動自在に挿通されている。ヘッドパイプ4aは操舵軸5を角変位可能に支持する。操舵軸5には、略上下方向に延びるフロントフォーク6が接続されており、フロントフォーク6の下端部にて前輪2が回転自在に支持されている。左右一対のメインフレーム4bは、ヘッドパイプ4aから後方に延びる。シート支持フレーム4cは、メインフレーム4bの後端部から後方に延びる。
【0013】
ヘッドパイプ4aに挿通された操舵軸5の上端部に、運転者が手で握るバー型のハンドル7が接続されている。ハンドル7の後方には、シート9が配置されている。シート9は、シート支持フレーム4cに支持されている。本実施形態の自動二輪車1は、タンデム式であり、シート9は、運転者が跨って着座する運転者シート部9aと、同乗者が跨って着座する同乗者シート部9bとが前後に並んで一体的になっている。
【0014】
前輪2と後輪3との間には、内燃機関11および電動モータ12が配置されている。内燃機関11および電動モータ12は、走行のための動力を発生する走行動力源である。内燃機関11および電動モータ12の一方または双方により発生された走行駆動力は、動力伝達機構13を介して後輪3に伝達される。動力伝達機構13には、変速機や、当該変速機から出力された回転動力を後輪3の車軸に伝達する機構(例えば、チェーン伝動機構やベルト伝動機構など)が含まれる。
【0015】
電動モータ12には、バッテリパック14から電力が供給される。バッテリパック14は、車体フレーム4にブラケットなどを介して支持されている。自動二輪車1は、車体フレーム4に固定されたバッテリケースを備えてもよく、当該バッテリケースにバッテリパック14が収容されて支持されてもよい。
【0016】
バッテリパック14は、内燃機関11の上方で、且つ、前後方向における前輪2と後輪3との間に配置されている。本実施形態では、前後方向におけるヘッドパイプ4aとシート9との間に、収容物としてのバッテリパック14を収容するための収容空間15が配置されている。収容空間15は、上面視で左右方向における一対のメインフレーム4bの間に位置する。
【0017】
シート9の前方で且つ収容空間15の上方に、アッパーカバー16が配置されている。アッパーカバー16は、シート9の左右方向中央部分の前端部9cから斜め前上方にせり出しており、運転者の着座範囲の前端位置を規制する。すなわち、アッパーカバー16は、自動二輪車1の減速時に運転者が前方に慣性力を受けた際、シート9の着座範囲より前に逸脱しないよう運転者を支える役割を果たす。
【0018】
アッパーカバー16の前方に燃料供給システム30が配置されている。燃料供給システム30について、詳細は後述する。
【0019】
内燃機関11の上方に、エアクリーナボックス17が配置されている。エアクリーナボックス17は、内燃機関11に接続されている。エアクリーナボックス17は、内燃機関11に供給される外気を浄化するフィルタを収容する。
【0020】
エアクリーナボックス17の少なくとも一部が、アッパーカバー16により上方に盛り上がった部分に位置する。すなわち、エアクリーナボックス17の少なくとも一部が、シート9の左右方向中央部分の前端部9cより前方で、且つ、シート9の左右方向中央部分の前端部9cより上方に配置されている。このため、シート9の前方のスペースを有効利用できる。
【0021】
内燃機関11の前方に、ラジエータ18が配置されている。ラジエータ18には、前後方向に走行風が通過する。ラジエータ18は、内燃機関11を冷却した冷却液を、内部に流通させて走行風と熱交換させた後、内燃機関11に供給する。
【0022】
内燃機関11の排気ポートには、燃焼後の排気ガスを排気する排気装置19が接続されている。排気装置19は、触媒装置19aとマフラ19bとを含む。内燃機関11の排気ポートから延びる排気管20の内部に、触媒装置19aが配置されており、排気管20の端部に、マフラ19bが接続されている。触媒装置19aは例えば略円筒状である。触媒装置19aは、排気ガスと接触して排気ガスを浄化する触媒を収容する。触媒は例えば三元触媒である。
【0023】
排気装置19は、車体フレームを左右に分ける中心面C、言い換えれば、自動二輪車1を左右に分ける中心面Cに対して右側に配置されている。具体的には、触媒装置19aおよびマフラ19bは、中心面Cに対して右側に配置されている。触媒装置19aおよびマフラ19bは、シート9や後輪3の車幅方向右側に位置する。
【0024】
自動二輪車1の下部には、運転者の左足および右足をそれぞれ載せるための左右一対のフットレスト21が配置されている。また、フットレスト21の後方には、同乗者の左足および右足をそれぞれ載せるための左右一対のフットレスト22が配置されている。各フットレスト21,22は、左右方向に延びる。
【0025】
自動二輪車1を左右に分ける中心面Cに対して左側に、より詳しくは左側のフットレスト21の近傍に、サイドスタンド23が配置されている。サイドスタンド23は、下方へ延びる支持状態と、後方へ延びる収納状態との間で揺動自在である。サイドスタンド23は、下方へ延びる支持状態となることで、自動二輪車1を左側に傾けた状態で起立させる。
【0026】
自動二輪車1は、車体フレーム4の前方を覆うフロントカウル24と、車体フレーム4の左側方を覆う左サイドカウル25と、車体フレーム4の右側方を覆う右サイドカウル26を備える。各カウル24,25,26は、合成樹脂製の部材である。なお、各カウル24,25,26が配置される範囲や各カウル24,25,26の形状は一例であり、本実施形態とは異なっていてもよい。また、各カウル24,25,26は、それぞれ、1つの部材により構成されてもよいし、複数の部材により構成されてもよい。各カウル24,25,26は、ラジエータ18に風を導くシュラウドを兼ねてもよい。
【0027】
(燃料供給システム)
燃料供給システム30の構成について、
図3乃至6も参照して詳しく説明する。
図3は、第1実施形態に係る自動二輪車1の上面図である。
図4は、第1実施形態に係る鞍乗車両1における燃料供給システム30近傍を拡大して示す斜視図である。
図5は、第1実施形態に係る鞍乗車両1の燃料供給システム30の近傍部分の正面図である。
図6第1実施形態に係る鞍乗車両1の燃料供給システム30の近傍部分の左側面図である。なお、自動二輪車1における燃料供給システム30の構成要素の位置を把握しやすいように、
図3ではカウル24,25,26やアッパーカバー16などは省略して示し、
図4では、カウル24などは省略して示す。
【0028】
燃料供給システム30は、内燃機関11に燃料を供給する。より詳しくは、燃料供給システム30は、内燃機関11の筒内または吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射装置に燃料を供給する。燃料供給システム30は、左タンク31、右タンク32、連通体33、および燃料ポンプ34を含む。燃料供給システム30は、車体フレーム4に支持されている。
【0029】
左タンク31は、内燃機関11の燃料を貯留する燃料貯留空間31aを有する。左タンク31は、自動二輪車1を左右に分ける中心面Cに対して左側に配置されている。左タンク31は、収容空間15より左方に配置されている。左タンク31は、左右方向に見て収容空間15と重なるように配置されている。
図6に示すように、左タンク31は、左右方向に見て収容空間15に収容された状態のバッテリパック14と重なるように配置されている。
【0030】
右タンク32は、内燃機関11の燃料を貯留する燃料貯留空間32aを有する。右タンク32は、左タンク31と左右方向に隙間をあけて、中心面Cに対して右側に配置されている。右タンク32は、収容空間15より右方に配置されている。右タンク32は、左右方向に見て収容空間15と重なるように配置されている。例えば、右タンク32は、左右方向に見て収容空間15に収容された状態のバッテリパック14と重なるように配置されている。左右方向に見て左タンク31と右タンク32とが互いに重なり、左右方向における左タンク31と右タンク32との間に収容空間15が位置する。
【0031】
左タンク31の燃料貯留空間31aと右タンク32の燃料貯留空間32aとは、連通体33により互いに連通している。すなわち、連通体33は、左タンク31の燃料貯留空間31aおよび右タンク32の燃料貯留空間32aの一方から他方に燃料が移動することを可能にする連通空間33aを有する。連通体33の連通空間33aの左側端部が、左タンク31の燃料貯留空間31aと連続しており、連通体33の連通空間33aの右側端部が、右タンク32の燃料貯留空間32aと連続している。
【0032】
図5に示すように、連通体33は、自動二輪車1を左右に分ける中心面Cに対して交差する位置に配置されている。本実施形態では、連通体33は、ヘッドパイプ4aの後方で、且つ、収容空間15の上方に配置されている。連通体33と収容空間15は、上面視で互いに重なる。例えば
図3に示すように、連通体33と収容空間15に収容された状態のバッテリパック14は、上面視で互いに重なる。
【0033】
左タンク31と内燃機関11との間、右タンク32と内燃機関11との間、および、連通体33と内燃機関11との間には、隙間がある。また、左タンク31とバッテリパック14との間、右タンク32とバッテリパック14との間、および、連通体33とバッテリパック14との間にも、隙間がある(
図5参照)。このため、内燃機関11などの熱が、左タンク31、右タンク32および連通体33に伝達されることが抑制される。
【0034】
連通体33は、略平板状の底壁33bと、底壁33bの上方に位置し、上方に膨出した凸状の膨出壁33cを含む。底壁33bの前端部と膨出壁33cの前端部とが互いに接続し、底壁33bの後端部と膨出壁33cの後端部とが互いに接続しており、連通体33は全体として左右両側の端部がそれぞれ開口した筒状体を呈している。連通体33の膨出壁33cに、タンクキャップ35により閉塞可能な給油口が配置されている。
【0035】
左タンク31および右タンク32は、左右対称である。具体的には、左タンク31および右タンク32は、中心面Cに対して対称な位置にあり、左タンク31および右タンク32は、対称な形状である。
【0036】
図3に示すように、左タンク31は、連通体33の左端部から前方に延び、また、右タンク32は、連通体33の右端部から前方に延びる。
図3に示すように、左タンク31の前端部および右タンク32の前端部が、ヘッドパイプ4aよりも前方に位置する。すなわち、左タンク31、右タンク32、および連通体33は、上面視して、全体としてU形を呈している。左右方向における左タンク31と右タンク32との間の空間は、フロントフォーク6が回転する領域となっている。
【0037】
また、
図5に示すように、左タンク31は、連通体33の左端部から下方にも延び、また、右タンク32は、連通体33の右端部から下方に延びる(
図6も参照)。このため、連通体33に配置された給油口から供給された燃料は、連通空間33aから燃料貯留空間31aまたは32aへ流れ落ちる。
【0038】
より詳しくは、給油口から燃料が供給されると、左タンク31および右タンク32の燃料貯留空間31a,32aに燃料は溜まっていく。そして、燃料貯留空間31a,32aの燃料の液面が、連通体33の底壁33bに達すると、燃料貯留空間31a,32aだけでなく連通空間33aにも燃料は溜まっていく。すなわち、連通空間33aも燃料を貯留するための空間として機能する。言い換えれば、左タンク31、右タンク32、および連通体33が、1つの燃料タンク30Aを構成する。燃料タンク30A、すなわち左タンク31、右タンク32、および連通体33は、合成樹脂製である。
【0039】
左タンク31および右タンク32は、左右方向における左側のフットレスト21の左端部および右側のフットレスト21の右端部との間に配置されている。このため、仮に自動二輪車1が横転した場合でも、フットレスト21の端部が地面に接触することになる。このため、左タンク31または右タンク32と地面との接触を回避できる、または、左タンク31または右タンク32と地面とが接触したときの衝撃を緩和できる。
【0040】
図4に示すように、左タンク31は、左方および上方から左サイドカウル25により覆われており、右タンク32は、右方および上方から右サイドカウル26により覆われている。連通体33の膨出壁33cの上面は、露出している。連通体33の後端部は、アッパーカバー16の前端部と接続している。連通体33とその後方のアッパーカバー16とにより、収容空間15の上方は閉塞されている。
【0041】
燃料ポンプ34は、走行動力源である内燃機関11に燃料を供給する。本実施形態において、燃料ポンプ34の少なくとも一部が、左タンク31の燃料貯留空間31aに配置されている。燃料ポンプ34は、燃料貯留空間31aの最下端部に位置する。燃料ポンプ34は、ヘッドパイプ4aより後方に位置する。
図6に示すように、左タンク31の底壁31bは、燃料ポンプ34の位置に向かって下方に傾斜している。このため、左タンク31の燃料貯留空間31aに貯留された燃料が燃料ポンプ34に集まりやすい。
【0042】
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1では、左タンク31と右タンク32とを備えるため、車両全体の重心を左右方向中央部付近に位置づけやすい。このため、燃料を貯留するタンクによって車両全体の重心が左右方向の一方に極端に偏るのを抑制できる。
【0043】
また、本実施形態では、連通体33を介して左タンク31の燃料貯留空間31aおよび右タンク32の燃料貯留空間32aの間の一方から他方へ燃料の移動が可能である。このため、左タンク31および右タンク32のうち、左タンク31の燃料貯留空間31aにのみ燃料ポンプ34が配置されている。このように、左右のタンク31,32のそれぞれに燃料ポンプ34を設ける場合に比べて、燃料ポンプ34の数を減らすことができる。たとえば燃料ポンプ34の数を減らすことで、燃料貯留空間における燃料ポンプ34の容積分、燃料を貯留することができ、燃料貯留量を増やすことができる。
【0044】
また、本実施形態では、左タンク31の前端部および右タンク32の前端部が、ヘッドパイプ4aの上端部よりも前方に位置するため、ヘッドパイプ4a周辺のスペースを有効利用できる。
【0045】
また、本実施形態では、左タンク31および右タンク32は、シート9の前方で、且つ、左タンク31および右タンク32が互いに左右方向に見て重なるように配置されている。このため、左タンク31と右タンク32とをシート9より前方に配置させるとともに、左タンク31と右タンク32との間の隙間を、収容物を収容するためのスペースとして有効利用できる。
【0046】
また、本実施形態では、エアクリーナボックス17の一部が、シート9の左右方向中央部分の前端部9cより前方で、且つ、シート9の左右方向中央部分の前端部9cより上方に配置されているため、シート9の前方のスペースを有効利用できる。
【0047】
また、本実施形態では、サイドスタンド23は、自動二輪車1を左右に分ける中心面Cに対して左側に位置する。つまり、燃料ポンプ34は、左タンク31および右タンク32のうち、シート9に対して左右方向におけるサイドスタンド23と同じ側のタンクに配置されている。このため、サイドスタンド23を用いて自動二輪車1を起立させたときに、燃料ポンプ34側のタンクである左タンク31が、反対のタンクである右タンク32よりも下方に位置しやすくなる。このため、左タンク31および右タンク32の燃料を燃料ポンプ34に導きやすい。
【0048】
また、本実施形態では、燃料ポンプ34は、左タンク31および右タンク32のうち、中心面Cに対して左右方向における触媒装置19aおよびマフラ19bと反対側のタンクに配置されている。このため、車両全体の重心を左右方向中央部に位置づけるための設計を行いやすい。
【0049】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る自動二輪車51について説明する。
図7は、第2実施形態に係る自動二輪車51の左側面図である。
図8は、第2実施形態に係る自動二輪車51の右側面図である。本実施形態の自動二輪車51は、第1実施形態と異なり、カウルを備えないタイプ、いわゆるネイキッドタイプである。本実施形態においても、自動二輪車51は、第1実施形態と同様、ハイブリッド車両である。
【0050】
自動二輪車51は、従動輪である前輪52と、駆動輪である後輪53と、車体フレーム54とを備える。車体フレーム54は、ヘッドパイプ54aと、左右一対のメインフレーム54bと、シート支持フレーム54cとを有する。ヘッドパイプ54aには、操舵軸55が回動自在に挿通されている。ヘッドパイプ54aは操舵軸55を角変位可能に支持する。操舵軸55には、略上下方向に延びるフロントフォーク56が接続されており、フロントフォーク56の下端部にて前輪52が回転自在に支持されている。左右一対のメインフレーム54bは、ヘッドパイプ54aから後方に延びる。シート支持フレーム54cは、メインフレーム54bの後端部から後方に延びる。
【0051】
ヘッドパイプ54aに挿通された操舵軸55の上端部に、運転者が手で握るバー型のハンドル57が接続されている。ハンドル57の後方には、シート59が配置されている。シート59は、シート支持フレーム54cに支持されている。本実施形態の自動二輪車51は、タンデム式であり、シート59は、運転者が跨って着座する運転者シート部59aと、同乗者が跨って着座する同乗者シート部59bとが前後に並んで一体的になっている。
【0052】
前輪52と後輪53との間には、内燃機関61および電動モータ62が配置されている。内燃機関61および電動モータ62は、走行のための動力を発生する走行動力源である。内燃機関61および電動モータ62の一方または双方により発生された走行駆動力は、動力伝達機構63を介して後輪53に伝達される。動力伝達機構63には、変速機や、当該変速機から出力された回転動力を後輪53の車軸に伝達する機構(例えば、チェーン伝動機構やベルト伝動機構など)が含まれる。
【0053】
電動モータ62には、バッテリパック64から電力が供給される。バッテリパック64は、内燃機関61の上方で、且つ、前後方向における前輪52と後輪53との間に配置されている。本実施形態では、前後方向におけるヘッドパイプ54aとシート59との間に、収容物としてのバッテリパック64を収容するための収容空間65が配置されている。収容空間65は、上面視で左右方向における一対のメインフレーム54bの間に位置する。
【0054】
シート59の前方で且つ収容空間65の上方に、アッパーカバー66が配置されている。アッパーカバー66は、下方に開口した凸状に成型されている。アッパーカバー66により、収容空間65の上方は閉塞されている。アッパーカバー66は、収容空間65に収容されたバッテリパック64の上面全体を覆う。アッパーカバー66は、シート59の左右方向中央部分の前端部59cから斜め前上方にせり出しており、運転者の着座範囲の前端位置を規制する。すなわち、アッパーカバー66は、自動二輪車51の減速時に運転者が前方に慣性力を受けた際、シート59の着座範囲より前に逸脱しないよう運転者を支える役割を果たす。
【0055】
アッパーカバー66の下方に燃料供給システム80が配置されている。燃料供給システム80について、詳細は後述する。
【0056】
内燃機関61の上方に、エアクリーナボックス67が配置されている。エアクリーナボックス67は、内燃機関61に接続されている。エアクリーナボックス67は、内燃機関61に供給される外気を浄化するフィルタを収容する。
【0057】
エアクリーナボックス67の少なくとも一部が、アッパーカバー66により上方に盛り上がった部分に位置する。すなわち、エアクリーナボックス67の少なくとも一部が、シート59の左右方向中央部分の前端部59cより前方で、且つ、シート59の左右方向中央部分の前端部59cより上方に配置されている。このため、シート59の前方のスペースを有効利用できる。
【0058】
内燃機関61の前方に、ラジエータ68が配置されている。ラジエータ68には、前後方向に走行風が通過する。ラジエータ68は、内燃機関61を冷却した冷却液を、内部に流通させて走行風と熱交換させた後、内燃機関61に供給する。
【0059】
内燃機関61の排気ポートには、燃焼後の排気ガスを排気する排気装置69が接続されている。排気装置69は、触媒装置69aとマフラ69bとを含む。内燃機関61の排気ポートから延びる排気管70の内部に、触媒装置69aが配置されており、排気管70の端部に、マフラ69bが接続されている。触媒装置69aは例えば略円筒状である。触媒装置69aは、排気ガスと接触して排気ガスを浄化する触媒を収容する。触媒は例えば三元触媒である。
【0060】
排気装置69は、自動二輪車51を左右に分ける中心面Cに対して右側に配置されている。具体的には、触媒装置69aおよびマフラ69bは、中心面Cに対して右側に配置されている。触媒装置69aおよびマフラ69bは、シート59や後輪53の車幅方向右側に位置する。
【0061】
自動二輪車51の下部には、運転者の左足および右足をそれぞれ載せるための左右一対のフットレスト71が配置されている。また、フットレスト71の後方には、同乗者の左足および右足をそれぞれ載せるための左右一対のフットレスト72が配置されている。各フットレスト71,72は、左右方向に延びる。
【0062】
自動二輪車51を左右に分ける中心面Cに対して左側に、より詳しくは左側のフットレスト71の近傍に、サイドスタンド73が配置されている。サイドスタンド73は、下方へ延びる支持状態と、後方へ延びる収納状態との間で揺動自在である。サイドスタンド73は、下方へ延びる支持状態となることで、自動二輪車51を左側に傾けた状態で起立させる。
【0063】
(燃料供給システム)
燃料供給システム80の構成について、
図9乃至11も参照して詳しく説明する。
図9は、第2実施形態の燃料供給システム80、車体フレーム54、バッテリパック64およびエアクリーナボックス67の位置関係を示す上面図である。
図10は、第2実施形態における燃料供給システム80近傍を拡大して示す左側面図である。
図11は、第2実施形態の燃料供給システム80、車体フレーム54、バッテリパック64およびエアクリーナボックス67の位置関係を示す正面図である。
【0064】
燃料供給システム80は、内燃機関61に燃料を供給する。より詳しくは、燃料供給システム80は、内燃機関61の筒内または吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射装置に燃料を供給する。燃料供給システム80は、左タンク81、右タンク82、連通体83、および燃料ポンプ84を含む。
【0065】
左タンク81は、内燃機関61の燃料を貯留する燃料貯留空間81aを有する。左タンク81は、自動二輪車51を左右に分ける中心面Cに対して左側に配置されている。左タンク81は、収容空間65より左方に配置されている。左タンク81は、左右方向に見て収容空間65と重なるように配置されている。左タンク81は、左右方向に見て収容空間65に収容された状態のバッテリパック64と重なるように配置されている(
図7参照)。
【0066】
右タンク82は、内燃機関61の燃料を貯留する燃料貯留空間82aを有する。右タンク82は、左タンク81と左右方向に隙間をあけて、中心面Cに対して右側に配置されている。右タンク82は、収容空間65より右方に配置されている。右タンク82は、左右方向に見て収容空間65と重なるように配置されている。例えば、右タンク82は、左右方向に見て収容空間65に収容された状態のバッテリパック64と重なるように配置されている(
図8参照)。左右方向に見て左タンク81と右タンク82とが互いに重なり、左右方向における左タンク81と右タンク82との間に収容空間65が位置する。
【0067】
左タンク81および右タンク82は、合成樹脂製である。例えば左タンク81および右タンク82は、ブロー成型により製作される。
【0068】
図11に示すように、左タンク81の燃料貯留空間81aと右タンク82の燃料貯留空間82aとは、連通体83により互いに連通している。すなわち、連通体83は、左タンク81の燃料貯留空間81aおよび右タンク82の燃料貯留空間82aの一方から他方に燃料が移動することを可能にする連通空間83aを有する。連通体83は、自動二輪車51を左右に分ける中心面Cに対して交差する位置に配置されている。
【0069】
本実施形態では、連通体83は、パイプまたはチューブである。連通体83は、ヘッドパイプ54aの後方に配置されている。
図9に示すように、連通体83は、バッテリパック14の下方に配置されている。連通体83は、上面視で、収容空間65に収容されたバッテリパック64と重なる。ただし、連通体83は、バッテリパック14の下方になくてもよい。連通体83は、上面視で、収容空間65に収容されたバッテリパック64と重ならなくてもよい。例えば連通体83は、上面視で、バッテリパック54の後方のエアクリーナボックスと重なってもよい。
【0070】
左タンク81および右タンク82は、左右非対称である。左タンク81および右タンク82は、互いに大きさが異なり、互いに形状も異なる。左タンク81には、燃料ポンプ84が配置される。燃料ポンプ84が配置される側のタンクである左タンク81は、燃料ポンプ84が配置されない側のタンクである右タンク82より大きい。また、左タンク81の底面の高さと右タンク82の底面の高さとが互いに異なる。右タンク82の底面の最下部は、左タンク81の底面の最下部より上方に位置する。右タンク82の燃料貯留空間82aの最下部は、左タンク81の燃料貯留空間81aの最下部より上方に位置する。
【0071】
図9に示すように、左タンク81は、左側のメインフレーム4bの下方に位置する。左タンク81の一部が、上面視で、左側のメインフレーム4bに重なる。また、左タンク81の左端部は、左側のメインフレーム4bよりも左方に位置する。本実施形態では、左タンク81は、上面視で、左側のメインフレーム4bと重なるが、左タンク81は、上面視で、左側のメインフレーム4bと重ならなくてもよい。左タンク81は、左側のメインフレーム4bにブラケットなどを介して支持されている。
【0072】
本実施形態では、左タンク81は、メインフレーム4bに沿って延びる。メインフレーム4bは、後方にいくにしたがって下方に位置するように斜め下方に延びている。左タンク81も同様に斜め下方に長い形状を呈している。左タンク81の前端部は、左タンク81の後端部より上方に位置する。
【0073】
燃料ポンプ84は、走行動力源である内燃機関61に燃料を供給する。本実施形態において、燃料ポンプ84の少なくとも一部が、左タンク81の燃料貯留空間81aに配置されている。
図9に示すように、燃料ポンプ84の一部が、上面視で、左右方向における一対のメインフレーム4bの外側に、はみ出ている。ただし、燃料ポンプ84の全体が、上面視で、左右方向における一対のメインフレーム4bの外側に位置してもよいし、左右方向における一対のメインフレーム4bの内側に位置してもよい。
【0074】
燃料ポンプ84は、燃料貯留空間81aの最下端部に位置する。すなわち、燃料ポンプ84は、左タンク81の後端部に位置する。左タンク81の燃料貯留空間81aに貯留された燃料が燃料ポンプ84に集まりやすい。
【0075】
右タンク82は、右側のメインフレーム4bの下方に位置する。右タンク82の一部が、上面視で、右側のメインフレーム4bに重なる。また、右タンク82の右端部は、右側のメインフレーム4bよりも右方に位置する。本実施形態では、右タンク82は、上面視で、右側のメインフレーム4bと重なるが、右タンク82は、上面視で、右側のメインフレーム4bと重ならなくてもよい。右タンク82は、右側のメインフレーム4bにブラケットなどを介して支持されている。
【0076】
本実施形態では、右タンク82は、メインフレーム4bに沿って延びる。メインフレーム4bは、後方にいくにしたがって下方に位置するように斜め下方に延びている。右タンク82も同様に斜め下方に長い形状を呈している。右タンク82の前端部は、右タンク82の後端部より上方に位置する。
【0077】
連通体83は、右タンク82の下部と、当該右タンク82の下部より更に下方に位置する左タンク81の下部とを接続する。本実施形態では、
図11に示すように、連通体33は、右タンク82の側壁における下部に接続されているが、連通体33は、右タンク82の底壁に接続されていてもよい。右タンク82の燃料は、連通体83を通じて重力により左タンク81に流れる。連通体83は、右タンク82から左タンク81に向かって斜め下方に延びる。右タンク82との連通体83における接続箇所は、左タンク81との連通体83における接続箇所よりも上方に位置する。
【0078】
左タンク81の前端部に、タンクキャップ85により閉塞可能な給油口が配置されている。すなわち、給油口は、自動二輪車51を左右に分ける中心面Cに対して燃料ポンプ84が位置する側と同じ側に位置する。
【0079】
給油口は、左斜め上方に開口している。給油口から燃料を供給すると、左タンク81の燃料貯留空間81aの前端部から、燃料貯留空間81aの後端部へ流れ落ちる。こうして、燃料貯留空間81aの後端部に燃料が溜まっていく。そして、燃料貯留空間81aから、連通体83を介して右タンク82の燃料貯留空間82aに燃料が移動する。こうして、左タンク81の燃料貯留空間81aと右タンク82の燃料貯留空間82aの双方に燃料が溜まっていく。
【0080】
なお、右タンク82の例えば上端部などには、蒸発した燃料を吸着する吸着物質を収容したキャニスタに導くホースが接続されている。このため、連通体83を通じて左タンク81から右タンク82に燃料が流れにくくなることは抑制されている。本実施形態では、右タンク82とキャニスタとを接続するホースに、左タンク81から延びるホースが合流している。このため、左タンク81の蒸散ガスと右タンク82の蒸散ガスを1つのキャニスタに導くことができる。
【0081】
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
また、本実施形態では、左タンク81および右タンク82が互いに大きさが異なる。このため、左タンク81と右タンク82の互いの大きさを調整することで、車両全体の重心を左右方向中央部に位置づけるための設計を行いやすい。
【0083】
また、本実施形態では、燃料ポンプ84は、左タンク81および右タンク82のうち底面が下方に位置するタンクである左タンク81に対して取り付けられている。このため、燃料ポンプが取り付けられていない右タンク82の燃料貯留空間82aに貯留される燃料を燃料ポンプ84に導きやすい。
【0084】
また、本実施形態では、左タンク81および右タンク82が、それぞれ、上面視において、一対のメインフレーム4bに重なる。このため、左タンク81および右タンク82が、上面視において、一対のメインフレーム4bよりも左右方向外側に位置する場合と比べ、左タンク81および右タンク82を自動二輪車1の左右方向における中心面Cに近い位置に配置できる。これにより、左タンク81および右タンク82の各タンクと地面との接触を回避または抑制でき、且つ、車両全体の重心を左右方向中央部に位置づけやすい。
【0085】
<その他の実施形態>
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。
【0086】
鞍乗車両の一例として、自動二輪車を例示したが、運転者が跨って乗る車両であれば、三輪車などの他の形態の車両でもよい。また、鞍乗車両は、ハイブリッド車でなくてもよい。例えば鞍乗車両は、走行動力源として内燃機関のみを備える車両でもよい。この場合、内燃機関の上方に、比較的大きな収容空間が形成され得る。
【0087】
収容空間に収容される収容物として、バッテリパックが例示されたが、収容物は、運転者の荷物でもよい。その他、収容空間に収容される収容物は、エアクリーナ、過給機やインタークーラ、モータ、ジェネレータなど、鞍乗車両に搭載された装置であってもよい。
【0088】
自動二輪車1を左右に分ける中心面Cに対する排気装置やサイドスタンド、燃料ポンプなどの各種要素の位置は、上記実施形態で説明された位置と左右逆であってもよい。燃料ポンプが、中心面Cに対して左右方向における排気装置と同じ側に位置してもよい。燃料ポンプが、中心面Cに対して左右方向におけるサイドスタンドと反対側に位置してもよい。また、燃料ポンプは、右タンクおよび左タンクの外側に配置されてもよい。
【0089】
サイドスタンドが鞍乗車両を右側に傾けた状態で起立させるものである場合には、燃料ポンプは、左タンクおよび右タンクのうち、同じ側である右タンクに配置されるのが好ましい。ただし、サイドスタンドが配置される側、すなわち、サイドスタンドにより車体フレームを傾ける方向と、鞍乗車両を左右に分ける中心面に対して左右方向における燃料ポンプの位置は、異なってもよい。
【0090】
第1実施形態において、自動二輪車1が、連通体33の代わりにまたは加えて、左タンク31の下部と右タンク32の下部とを連通する連通体を備えてもよい。例えば、
図12に示すように、第1実施形態における左タンク31の下部と右タンク32の下部とが、チューブである連通体36により接続されていてもよい。この場合、連通体36は、バッテリパック14を迂回するように配置されてもよい。
【0091】
上記第1および第2実施形態では、左タンクおよび右タンクは、樹脂製であったが、これに限られず、左タンクおよび右タンクは、金属製でもよい。左タンクおよび右タンクの形状や位置は、上記実施形態で説明されたものに限定されず、適宜変更可能である。
【0092】
上記第1実施形態では、左タンク31および右タンク32は、それぞれカウル25,26に側面を覆われていたが、左タンク31および右タンク32は、カウルに覆われていなくてもよい。上記第1実施形態の燃料供給システムの構成は、カウルを備えないネイキッドタイプの自動二輪車にも適用可能である。また、上記第2実施形態の燃料供給システムの構成は、カウル付きの自動二輪車にも適用可能である。
【0093】
また、エアクリーナボックスの位置も上記実施形態で説明されたものに限定されず、エアクリーナボックスの全体がシートの下方に位置してもよい。エアクリーナボックスは、収容空間の前方に位置してもよい。
【0094】
車体フレームの形状や構成なども、上記実施形態で説明されたものに限定されない。
【0095】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0096】
[項目1]
車体フレームと、
走行のための動力を発生する走行動力源と、
前記車体フレームに支持された、運転者が跨って着座するシートと、
前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記車体フレームを左右に分ける中心面に対して左側に配置された左タンクと、
前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記左タンクと左右方向に隙間をあけて、前記中心面に対して右側に配置された右タンクと、
前記左タンクおよび前記右タンクの各燃料貯留空間を互いに連通する連通体と、
を備える、鞍乗車両。
【0097】
前記構成によれば、左タンクと右タンクとを備えるため、車両全体の重心を左右方向中央部付近に位置づけやすい。このため、燃料を貯留するタンクによって車両全体の重心が左右方向の一方に極端に偏るのを抑制できる。
【0098】
[項目2]
前記左タンクおよび前記右タンクは、互いに大きさが異なる、項目1に記載の鞍乗車両。
【0099】
前記構成によれば、左タンクと右タンクの互いの大きさを調整することで、車両全体の重心を左右方向中央部に位置づけるための設計を行いやすい。
【0100】
[項目3]
前記左タンクの燃料貯留空間および前記右タンクの燃料貯留空間のいずれかに少なくとも一部が配置された、前記走行動力源に燃料を供給する燃料ポンプを更に備える、項目1または2に記載の鞍乗車両。
【0101】
前記構成によれば、連通体を介して一方に燃料が導かれることで、左右のタンクのそれぞれに燃料ポンプを設ける場合に比べて、燃料ポンプの数を減らすことができる。たとえば燃料ポンプの数を減らすことで、燃料貯留空間における燃料ポンプの容積分、燃料を貯留することができ、燃料貯留量を増やすことができる。
【0102】
[項目4]
前記左タンクの底面の高さと前記右タンクの底面の高さとが、互いに異なり、
前記燃料ポンプは、前記左タンクおよび前記右タンクのうち底面が下方に位置するタンクに対して、取り付けられている、項目3に記載の鞍乗車両。
【0103】
前記構成によれば、左タンクおよび右タンクのうち燃料ポンプが取り付けられていない側のタンクの燃料を、燃料ポンプに導きやすい。
【0104】
[項目5]
前記中心面に対して左右方向一方側に配置され、前記車体フレームを左右方向一方側に傾けた状態で起立させるサイドスタンドを更に備え、
前記燃料ポンプは、前記左タンクおよび前記右タンクのうち、前記中心面に対して左右方向における前記サイドスタンドと同じ側のタンクに配置される、項目3または4に記載の鞍乗車両。
【0105】
前記構成によれば、サイドスタンドを用いて自動二輪車を起立させたときポンプ側のタンクが、反対のタンクよりも下方に位置しやすく、左タンクおよび右タンクの燃料を燃料ポンプに導きやすい。
【0106】
[項目6]
前記走行動力源は、内燃機関を含み、
前記鞍乗車両は、前記中心面に対して左右方向における一方側に配置された、前記内燃機関の排気ポートに接続される排気装置を更に備え、
前記燃料ポンプは、前記左タンクおよび前記右タンクのうち、前記中心面に対して左右方向における前記排気装置と反対側のタンクに配置される、項目1乃至5のいずれかに記載の鞍乗車両。
【0107】
前記構成によれば、車両全体の重心を左右方向中央部に位置づけるための設計を行いやすい。
【0108】
[項目7]
運転者が手で握るハンドルと、
上端部に前記ハンドルが接続された操舵軸と、を備え、
前記車体フレームは、前記操舵軸を角変位可能に支持するヘッドパイプを含み、
前記左タンクの前端部および前記右タンクの前端部が、前記ヘッドパイプの上端部よりも前方に位置する、項目1乃至6のいずれかに記載の鞍乗車両。
【0109】
前記構成によれば、ヘッドパイプ周辺のスペースを有効利用できる。
【0110】
[項目8]
前記左タンクおよび前記右タンクは、前記シートの前方に位置し、且つ、左右方向に見て互いに重なるように配置されている、項目1乃至7のいずれかに記載の鞍乗車両。
【0111】
前記構成によれば、シートの前方のスペースを有効利用できる。例えば左タンクと右タンクとをシートより前方に配置させるとともに、左タンクと右タンクとの間の隙間を、収容物を収容するためのスペースとして利用できる。
【0112】
[項目9]
前記走行動力源は、内燃機関を含み、
前記鞍乗車両は、前記内燃機関に供給される空気を浄化するフィルタを収容するエアクリーナボックスを備え、
前記エアクリーナボックスの一部または全部が、前記シートの左右方向中央部分の前端部より前方で、且つ、前記シートの左右方向中央部分の前端部より上方に配置されている、項目1乃至8のいずれかに記載の鞍乗車両。
【0113】
前記構成によれば、シートの前方のスペースを有効利用できる。
【0114】
[項目10]
車体フレームと、
走行のための動力を発生する走行動力源と、
前記車体フレームに支持された、運転者が跨って着座するシートと、
前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記車体フレームを左右に分ける中心面に対して左側に配置された左タンクと、
前記走行動力源の燃料を貯留する燃料貯留空間を有し、前記左タンクと左右方向に隙間をあけて、前記中心面に対して右側に配置された右タンクと、を備え、
前記左タンクおよび前記右タンクは、互いに大きさが異なる、鞍乗車両。
【0115】
前記構成によれば、左タンクと右タンクの大きさや形状を調整することで、車両全体の重心を左右方向中央部に位置づけるための設計を行いやすい。
【符号の説明】
【0116】
1 :自動二輪車
4 :車体フレーム
4a :ヘッドパイプ
4b :メインフレーム
9 :シート
11 :内燃機関
12 :電動モータ
14 :バッテリパック
15 :収容空間
16 :アッパーカバー
17 :エアクリーナボックス
19 :排気装置
19a :触媒装置
19b :マフラ
20 :排気管
21 :フットレスト
22 :フットレスト
23 :サイドスタンド
30 :燃料供給システム
30A :燃料タンク
31 :左タンク
31a :燃料貯留空間
32 :右タンク
32a :燃料貯留空間
33 :連通体
33a :連通空間
34 :燃料ポンプ
35 :タンクキャップ
36 :連通体
51 :自動二輪車
52 :前輪
53 :後輪
54 :バッテリパック
54 :車体フレーム
54a :ヘッドパイプ
54b :メインフレーム
59 :シート
61 :内燃機関
62 :電動モータ
64 :バッテリパック
65 :収容空間
66 :アッパーカバー
67 :エアクリーナボックス
69 :排気装置
69a :触媒装置
69b :マフラ
70 :排気管
71 :フットレスト
72 :フットレスト
73 :サイドスタンド
80 :燃料供給システム
81 :左タンク
81a :燃料貯留空間
82 :右タンク
82a :燃料貯留空間
83 :連通体
83a :連通空間
84 :燃料ポンプ