(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024006694
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022107822
(22)【出願日】2022-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 礼佳
(72)【発明者】
【氏名】木村 亘
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131CA03
5F131CA69
5F131DA33
5F131DA42
5F131EB11
5F131EB15
5F131EB18
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB82
5F131KA23
5F131KA54
5F131KA63
(57)【要約】
【課題】温度検出部の検出精度が向上する保持装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、静電チャック1において、セラミックス部材10は、ヒータ電極部40、および、保持面11と下面12とに開口するガストンネル50の少なくとも一方と、温度センサ60と、を備え、セラミックス部材10がガストンネル50を備える場合にて、ガストンネル50は、下面12からZ軸方向に延びる縦穴51と、X軸方向やY軸方向に延び、縦穴51と接続される横穴52と、を備え、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、ヒータ電極部重なり度合いDH、および、トンネル重なり度合いDTの少なくとも一方が、20%以下、または、80%以上である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、第1の方向にて前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面と、を備える第1の板状部材を有し、
前記第1の板状部材の前記第1の面にて対象物を保持する保持装置において、
前記第1の板状部材は、
ヒータ電極部、および、前記第1の面と前記第2の面とに開口するガストンネルの少なくとも一方と、
温度検出部と、
を備え、
前記第1の板状部材が前記ガストンネルを備える場合にて、
前記ガストンネルは、
前記第2の面から前記第1の方向に延びる縦穴と、
前記第1の方向と略直交する方向である第2の方向に延び、前記縦穴と接続される横穴と、
を備え、
前記第1の方向から前記保持装置を見たときに、前記温度検出部の配置領域に対して前記ヒータ電極部が重なる割合であるヒータ電極部重なり度合い、および、前記温度検出部の配置領域に対して前記ガストンネルのうちの前記横穴が重なる割合であるトンネル重なり度合いの少なくとも一方が、20%以下、または、80%以上であること、
を特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1の保持装置において、
第3の面と、前記第1の方向にて前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面と、を備える第2の板状部材を有し、
前記第1の板状部材の前記第2の面と、前記第2の板状部材の前記第3の面とが、熱的に接続されており、
前記第2の板状部材は、前記第2の方向に延び、冷却水が流れる冷却流路を備え、
前記第1の方向から前記保持装置を見たときに、前記温度検出部の配置領域に対して前記冷却流路が重なる割合である冷却流路重なり度合いが、20%以下、または、80%以上であること、
を特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項1または2の保持装置において、
前記ヒータ電極部重なり度合い、および、前記トンネル重なり度合いの少なくとも一方が、100%であること、
を特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項1または2の保持装置において、
前記ヒータ電極部重なり度合い、および、前記トンネル重なり度合いの少なくとも一方が、0%であること、
を特徴とする保持装置。
【請求項5】
請求項1または2の保持装置において、
前記温度検出部は、複数設けられており、
全ての前記温度検出部について、前記ヒータ電極部重なり度合い、および、前記トンネル重なり度合いの少なくとも一方が、同一、または、略同一であること、
を特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保持装置に関する文献として、特許文献1には、セラミックス部材の下面に形成された凹部内に配置されたサーミスタ(温度検出部)を有する静電チャックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される静電チャックでは、セラミックス部材の下面にサーミスタが配置され、このサーミスタよりも上側の位置にヒータ電極を構成する線状の抵抗発熱体であるヒータライン部が設けられている。ここで、サーミスタの直上の位置において、ヒータライン部が設けられている部分とヒータライン部が設けられていない部分とが混在するおそれがある。そうすると、サーミスタの直上の温度分布のばらつきが生じて、サーミスタの検出精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、温度検出部の検出精度が向上する保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、第1の面と、第1の方向にて前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面と、を備える第1の板状部材を有し、前記第1の板状部材の前記第1の面にて対象物を保持する保持装置において、前記第1の板状部材は、ヒータ電極部、および、前記第1の面と前記第2の面とに開口するガストンネルの少なくとも一方と、温度検出部と、を備え、前記第1の板状部材が前記ガストンネルを備える場合にて、前記ガストンネルは、前記第2の面から前記第1の方向に延びる縦穴と、前記第1の方向と略直交する方向である第2の方向に延び、前記縦穴と接続される横穴と、を備え、前記第1の方向から前記保持装置を見たときに、前記温度検出部の配置領域に対して前記ヒータ電極部が重なる割合であるヒータ電極部重なり度合い、および、前記温度検出部の配置領域に対して前記ガストンネルのうちの前記横穴が重なる割合であるトンネル重なり度合いの少なくとも一方が、20%以下、または、80%以上であること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、第1の方向から保持装置を見たときに、温度検出部に対して、ヒータ電極部とガストンネルの横穴の少なくとも一方が、ほぼ重ならないか、ほぼ全体で重なるようにしている。そして、これにより、ヒータ電極部やガストンネルの横穴の影響による温度検出部の付近の温度分布のばらつきを抑制できる。そのため、温度検出部の検出精度が向上する。したがって、温度検出部の検出結果をもとに第1の板状部材の第1面の均熱性を確保できる。
【0008】
上記の態様においては、第3の面と、前記第1の方向にて前記第3の面とは反対側に設けられる第4の面と、を備える第2の板状部材を有し、前記第1の板状部材の前記第2の面と、前記第2の板状部材の前記第3の面とが、熱的に接続されており、前記第2の板状部材は、前記第2の方向に延び、冷却水が流れる冷却流路を備え、前記第1の方向から前記保持装置を見たときに、前記温度検出部の配置領域に対して前記冷却流路が重なる割合である冷却流路重なり度合いが、20%以下、または、80%以上であること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、第1の方向から保持装置を見たときに、温度検出部に対して、冷却流路が、ほぼ重ならないか、ほぼ全体で重なるようにしている。そして、これにより、冷却流路の影響による温度検出部の付近の温度分布のばらつきを抑制できる。そのため、第2の板状部材に冷却流路が設けられていても、温度検出部の検出精度が維持される。
【0010】
上記の態様においては、前記ヒータ電極部重なり度合い、および、前記トンネル重なり度合いの少なくとも一方が、100%であること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、第1の方向から保持装置を見たときに、ヒータ電極部とガストンネルの少なくとも一方が、温度検出部の全体に重なるようにしている。そのため、より確実に、ヒータ電極部やガストンネルの影響による温度検出部の付近の温度分布のばらつきを抑制できる。
【0012】
上記の態様においては、前記ヒータ電極部重なり度合い、および、前記トンネル重なり度合いの少なくとも一方が、0%であること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、第1の方向から保持装置を見たときに、ヒータ電極部とガストンネルの横穴の少なくとも一方が、温度検出部に重ならないようにしている。そのため、より確実に、ヒータ電極部やガストンネルの横穴の影響による温度検出部の付近の温度分布のばらつきを抑制できる。
【0014】
上記の態様においては、前記温度検出部は、複数設けられており、全ての前記温度検出部について、前記ヒータ電極部重なり度合い、および、前記トンネル重なり度合いの少なくとも一方が、同一、または、略同一であること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、第1の方向から保持装置を見たときに、全ての温度検出部について共通して、温度検出部に対して、ヒータ電極部とガストンネルの少なくとも一方が、ほぼ重ならないか、ほぼ全体で重なるようにしている。そして、これにより、全ての温度検出部について、温度検出部の付近の温度分布のばらつきを抑制できる。そのため、全ての温度検出部について、その検出精度がほぼ一定に保たれる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の保持装置によれば、温度検出部の検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の静電チャックの概略斜視図である。
【
図2】本実施形態の静電チャックの側面図(一部、XZ断面図)である。
【
図3】セラミックス部材の下面における温度センサの配置例を示す図である。
【
図4】セラミックス部材の下面における温度センサの配置例を示す図である。
【
図5】ヒータ電極部重なり度合い(温度センサの配置領域に対してヒータ電極部の発熱体や線状に形成されるドライバが重なる割合)や、トンネル重なり度合いや、冷却流路重なり度合いを、20%以下とする場合を示すイメージ図である。
【
図6】ヒータ電極部重なり度合い(温度センサの配置領域に対してヒータ電極部の発熱体や線状に形成されるドライバが重なる割合)や、トンネル重なり度合いや、冷却流路重なり度合いを、80%以上とする場合を示すイメージ図である。
【
図7】ヒータ電極部重なり度合い(温度センサの配置領域に対してヒータ電極部の平面状に形成されるドライバが重なる割合)を、20%以下とする場合を示すイメージ図である。
【
図8】ヒータ電極部重なり度合い(温度センサの配置領域に対してヒータ電極部の平面状に形成されるドライバが重なる割合)を、80%以上とする場合を示すイメージ図である。
【
図9】ヒータ電極部重なり度合い(温度センサの配置領域に対してヒータ電極部の発熱体や線状に形成されるドライバが重なる割合)や、トンネル重なり度合いや、冷却流路重なり度合いを、100%とする場合を示すイメージ図である。
【
図10】ヒータ電極部重なり度合い(温度センサの配置領域に対してヒータ電極部の平面状に形成されるドライバが重なる割合)を、100%とする場合を示すイメージ図である。
【
図11】ヒータ電極部重なり度合い(温度センサの配置領域に対してヒータ電極部の発熱体や線状に形成されるドライバが重なる割合)や、トンネル重なり度合いや、冷却流路重なり度合いを、0%とする場合を示すイメージ図である。
【
図12】ヒータ電極部重なり度合い(温度センサの配置領域に対してヒータ電極部の平面状に形成されるドライバが重なる割合)を、0%とする場合を示すイメージ図である。
【
図13】セラミックス部材の厚み方向から静電チャックを見たときに、温度センサの配置領域に対して、ヒータ電極部の発熱体や線状に形成されるドライバ、または、ガストンネルの横穴、または、冷却流路が重なる部分と重ならない部分とが混在する場合を示すイメージ図である。
【
図14】セラミックス部材の厚み方向から静電チャックを見たときに、温度センサの配置領域に対して、ヒータ電極部の平面状に形成されるドライバが重なる部分と重ならない部分とが混在する場合を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の保持装置の実施形態について説明する。本実施形態では、保持装置として静電チャック1を例示して説明する。
【0019】
<静電チャックの全体説明>
本実施形態の静電チャック1は、半導体ウエハWを静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば、半導体製造装置の真空チャンバ内で半導体ウエハWを固定するために使用される。なお、半導体ウエハWは、本開示の「対象物」の一例である。
【0020】
図1に示すように、静電チャック1は、セラミックス部材10と、ベース部材20と、セラミックス部材10とベース部材20とを接合する接合層30とを有する。なお、セラミックス部材10は本開示の「第1の板状部材」の一例であり、ベース部材20は本開示の「第2の板状部材」の一例である。
【0021】
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、
図1に示すようにXYZ軸を定義する。ここで、Z軸は、静電チャック1の中心軸方向(
図1において上下方向)の軸であり、X軸とY軸は、静電チャック1の径方向の軸である。
【0022】
セラミックス部材10は、
図1に示すように、板状、詳しくは、円盤状の部材であり、セラミックス(セラミックス基板)により形成されている。
【0023】
セラミックスとしては、様々なセラミックスが用いられるが、強度や耐摩耗性、耐プラズマ性等の観点から、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)または窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックスが用いられることが好ましい。なお、ここでいう主成分とは、含有割合の最も多い成分(例えば、体積含有率が90vol%以上の成分)を意味する。
【0024】
図1と
図2に示すように、セラミックス部材10は、半導体ウエハWを保持する保持面11(上面)と、セラミックス部材10の厚み方向(以下、「Z軸方向」という。)について保持面11とは反対側に設けられる下面12とを備えている。なお、保持面11は本開示の「第1の面」の一例であり、下面12は本開示の「第2の面」の一例であり、Z軸方向は本開示の「第1の方向」の一例である。
【0025】
また、セラミックス部材10の直径は、例えば180~400mm程度である。セラミックス部材10の厚さは、例えば2~8mm程度である。なお、セラミックス部材10の熱伝導率は、10~50W/mK(より好ましくは、18~30W/mK)の範囲内が望ましい。
【0026】
また、セラミックス部材10は、その内部に不図示のチャック電極(吸着電極)を備えている。このチャック電極に図示しない電源から電圧が印加されることによって、チャック電極に静電引力が発生し、この静電引力によって半導体ウエハWが保持面11に吸着されて保持される。
【0027】
また、セラミックス部材10は、その内部にヒータ電極部40を備えている。ここで、ヒータ電極部40は、ヒータの発熱体41と、その発熱体41にビア44を介して繋がるドライバ42を備えている。なお、ドライバ42は線状や平面状に形成される電極である。
【0028】
また、セラミックス部材10は、保持面11と下面12とに開口するガストンネル50を備えている。このガストンネル50は、下面12からZ軸方向に延びる縦穴51と、Z軸方向と略直交する方向(X軸方向、Y軸方向)に延び、縦穴51と接続される横穴52と、横穴52に接続しZ軸方向に保持面11まで延びる縦穴53と、を備えている。なお、X軸方向とY軸方向は、本開示の「第2の方向」の一例である。
【0029】
また、セラミックス部材10は、その下面12にて、温度センサ60を備えている。この温度センサ60は、複数設けられている。例えば、
図3や
図4に示すように、温度センサ60は、セラミックス部材10の下面12にて均等に分けられた複数のゾーン(図中、破線で区切られたゾーン、ここでは4つのゾーン)のそれぞれに少なくとも1個ずつ設けられるようにして、合計4個設けられている。ヒータ電極部40は4つのゾーン内にそれぞれ配置され、ヒータ電極40はゾーンごとに独立して制御可能である。なお、温度センサ60は、本開示の「温度検出部」の一例である。
【0030】
ベース部材20は、セラミックス部材10に対し保持面11側とは反対側に配置されている。このベース部材20は、例えば円柱状に形成されている。また、ベース部材20は、例えば金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等)により形成されているが、金属以外であってもよい。
【0031】
そして、ベース部材20は、
図1に示すように、上面21と、Z軸方向にて上面21とは反対側に設けられる下面22と、を備えている。そして、ベース部材20の上面21は、セラミックス部材10の下面12と、接合層30を介して、熱的に接続されている。なお、上面21は本開示の「第3の面」の一例であり、下面22は本開示の「第4の面」の一例である。
【0032】
ベース部材20の直径は、例えば180~400mm程度である。また、ベース部材20の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば20~50mm程度である。なお、ベース部材20(アルミニウムを想定)の熱伝導率は、160~250W/mK(好ましくは、230W/mK程度)の範囲内が望ましい。
【0033】
ベース部材20は、Z軸方向と略直交する方向(X軸方向、Y軸方向)に延び、冷却水が流れる冷却流路70を備えている。
【0034】
接合層30は、セラミックス部材10の下面12とベース部材20の上面21との間に配置され、セラミックス部材10とベース部材20とを熱伝達可能に接合する。このようにして、セラミックス部材10の下面12と、ベース部材20の上面21とが、熱的に接続されている。
【0035】
この接合層30は、熱伝導性を有するフィラーを含む樹脂(シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等)の接着材により構成されている。なお、接合層30の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば0.1~1.5mm程度である。また、接合層30の熱伝導率は、例えば1.0W/mKである。なお、接合層30(シリコーン系樹脂を想定)の熱伝導率は、0.1~2.0W/mK(好ましくは、0.5~1.5W/mK)の範囲内が望ましい。
【0036】
以上のような静電チャック1においては、ベース部材20に備わる冷却流路70に冷媒を流すことにより、ベース部材20が冷却され、これにより、接合層30を介してセラミックス部材10からベース部材20に熱が引かれて、セラミックス部材10が冷却される。そして、セラミックス部材10が冷却されることにより、保持面11に保持される半導体ウエハWを冷却できるようになっている。
【0037】
<温度センサに関して>
本実施形態の静電チャック1では、温度センサ60で検出された温度に基づいて、セラミックス部材10の保持面11の温度分布が均一になるように、ヒータ電極部40の発熱体41の発熱量を制御している。温度センサ60としては、具体的にはサーミスタやRTD(測温抵抗体)等が挙げられる。温度センサ60は、ヒータ電極部40およびガストンネル50の横穴52よりも下面12側に配置され、例えばセラミックス部材10の下面12に凹部を設け、凹部内に配置される。
【0038】
(ヒータ電極部やガストンネルとの関係に関して)
図2に示すように、セラミックス部材10における温度センサ60よりも上側(保持面11側)の領域には、ヒータ電極部40やガストンネル50が設けられている。ここで、温度センサ60の直上の位置に、ヒータ電極部40やガストンネル50が設けられる部分と設けられない部分とが混在する場合がある。
【0039】
例えば、
図13に示すように、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、温度センサ60の配置領域に対して、ヒータ電極部40の発熱体41や線状に形成されるドライバ42、または、ガストンネル50の横穴52が重なる部分と重ならない部分とが混在する場合がある。あるいは、
図14に示すように、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、温度センサ60の配置領域に対して、ヒータ電極部40の平面状に形成されるドライバ42が重なる部分と重ならない部分とが混在する場合がある。
【0040】
そして、このような場合、温度センサ60の直上にて温度分布のばらつきが発生して、温度センサ60の検出精度が低下するおそれがある。そのため、温度センサ60で検出された温度に基づいて適切にヒータ電極部40の発熱体41の発熱量を制御できず、セラミックス部材10の保持面11の温度分布を均一にすることができないおそれがある。
【0041】
そこで、本実施形態では、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、温度センサ60の直上の位置に、ヒータ電極部40やガストンネル50が設けられる部分と設けられない部分とが混在しないようにする。すなわち、温度センサ60の直上の位置に、ヒータ電極部40やガストンネル50の横穴52を、全体または略全体に亘って配置しないか、または、全体または略全体に亘って配置するようにする。
【0042】
具体的には、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、温度センサ60の配置領域に対してヒータ電極部40が重なる割合であるヒータ電極部重なり度合いDH、および、温度センサ60の配置領域に対してガストンネル50の横穴52が重なる割合であるトンネル重なり度合いDTを、20%以下、または、80%以上とする。
【0043】
すなわち、ヒータ電極部重なり度合いDH(詳しくは、温度センサ60の配置領域に対してヒータ電極部40の発熱体41や線状に形成されるドライバ42が重なる割合)や、トンネル重なり度合いDTを、
図5に示すように20%以下、または、
図6に示すように80%以上とする。
【0044】
また、ヒータ電極部重なり度合いDH(詳しくは、温度センサ60の配置領域に対してヒータ電極部40の平面状に形成されるドライバ42が重なる割合)を、
図7に示すように20%以下、または、
図8に示すように80%以上とする。
【0045】
なお、より好ましくは、ヒータ電極部重なり度合いDH、および、トンネル重なり度合いDTを、10%以下、または、90%以上とする。さらに好ましくは、ヒータ電極部重なり度合いDH、および、トンネル重なり度合いDTを、
図9や
図10に示すように100%、あるいは、
図11や
図12に示すように0%とする。
【0046】
そして、このようにして、ヒータ電極部重なり度合いDHやトンネル重なり度合いDTを調整することにより、ヒータ電極部40やガストンネル50の横穴52の影響による温度センサ60の直上の温度分布のばらつきを抑制できる。そのため、温度センサ60の検出精度が向上する。したがって、温度センサ60で検出された温度に基づいて適切にヒータ電極部40の発熱体41の発熱量を制御できるので、セラミックス部材10の保持面11の温度分布を均一にして、セラミックス部材10の保持面11の均熱性を確保できる。
【0047】
また、温度センサ60は複数設けられているが、複数の温度センサ60のそれぞれについて、ヒータ電極部重なり度合いDHやトンネル重なり度合いDTが異なる場合には、複数の温度センサ60の検出結果を単純に比較できない。そのため、セラミックス部材10の保持面11における温度のばらつきを正確に把握できないおそれがある。
【0048】
そこで、本実施形態では、全ての温度センサ60について、ヒータ電極部重なり度合いDH、および、トンネル重なり度合いDTを、同一、または、略同一とする。
【0049】
なお、セラミックス部材10は、ヒータ電極部40を備える一方でガストンネル50を備えない場合、または、ヒータ電極部40を備えない一方でガストンネル50を備える場合もある。そのため、本実施形態では、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、ヒータ電極部重なり度合いDH、および、トンネル重なり度合いDTの少なくとも一方を、20%以下、または、80%以上とする。
【0050】
(冷却流路との関係に関して)
図2に示すように、温度センサ60よりも下側にあるベース部材20には、冷却流路70が設けられている。ここで、温度センサ60の直下の位置に、冷却流路70が設けられる部分と設けられない部分とが混在する場合がある。
【0051】
例えば、
図13に示すように、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、温度センサ60の配置領域に対して、冷却流路70が重なる部分と重ならない部分とが混在する場合がある。
【0052】
そして、このような場合、温度センサ60の直下にて温度分布のばらつきが発生して、温度センサ60の検出精度が低下するおそれがある。そのため、温度センサ60で検出された温度に基づいて適切にヒータ電極部40の発熱体41の発熱量を制御できず、セラミックス部材10の保持面11の温度分布を均一にすることができないおそれがある。
【0053】
そこで、本実施形態では、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、温度センサ60の直下の位置に、冷却流路70が設けられる部分と設けられない部分とが混在しないようにする。すなわち、温度センサ60の直下の位置に、冷却流路70を、全体または略全体に亘って配置しないか、または、全体または略全体に亘って配置するようにする。
【0054】
具体的には、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、温度センサ60の配置領域に対して冷却流路70が重なる割合である冷却流路重なり度合いDCを、
図5に示すように20%以下とする、または、
図6に示すように80%以上とする。なお、より好ましくは、冷却流路重なり度合いDCを、100%、あるいは、0%とする。
【0055】
<本実施形態の作用効果>
以上のように本実施形態の静電チャック1では、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、ヒータ電極部重なり度合いDH、および、トンネル重なり度合いDTの少なくとも一方が、20%以下、または、80%以上である。
【0056】
このようにして、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、温度センサ60に対して、ヒータ電極部40とガストンネル50の横穴52の少なくとも一方が、ほぼ重ならないか、ほぼ全体で重なるようにしている。そして、これにより、ヒータ電極部40やガストンネル50の横穴52の影響による温度センサ60の直上の温度分布のばらつきを抑制できる。そのため、温度センサ60の検出精度が向上する。したがって、温度センサ60の検出結果をもとにセラミックス部材10の保持面11の均熱性を確保できる。
【0057】
また、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、冷却流路重なり度合いDCが、20%以下、または、80%以上である。
【0058】
このようにして、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、温度センサ60に対して、冷却流路70が、ほぼ全体で重ならないか、ほぼ全体で重なるようにしている。そして、これにより、冷却流路70の影響による温度センサ60の直下の温度分布のばらつきを抑制できる。そのため、ベース部材20に冷却流路70が設けられていても、温度センサ60の検出精度が維持される。
【0059】
また、ヒータ電極部重なり度合いDH、および、トンネル重なり度合いDTの少なくとも一方が、100%である。
【0060】
このようにして、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、ヒータ電極部40とガストンネル50の横穴52の少なくとも一方が、温度センサ60の全体に重なるようにしている。そのため、より確実に、ヒータ電極部40やガストンネル50の横穴52の影響による温度センサ60の直上の温度分布のばらつきを抑制できる。
【0061】
また、ヒータ電極部重なり度合いDH、および、トンネル重なり度合いDTの少なくとも一方が、0%である。
【0062】
このようにして、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、ヒータ電極部40とガストンネル50の横穴52の少なくとも一方が、温度センサ60に重ならないようにしている。そのため、より確実に、ヒータ電極部40やガストンネル50の横穴52の影響による温度センサ60の直下の温度分布のばらつきを抑制できる。
【0063】
また、温度センサ60は、複数設けられており、全ての温度センサ60について、ヒータ電極部重なり度合いDH、および、トンネル重なり度合いDTの少なくとも一方が、同一、または、略同一である。
【0064】
このようにして、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、全ての温度センサ60について共通して、温度センサ60に対して、ヒータ電極部40とガストンネル50の横穴52の少なくとも一方が、ほぼ重ならないか、ほぼ全体で重なるようにしている。そして、これにより、全ての温度センサ60について、温度センサ60の付近の温度分布のばらつきを抑制できる。そのため、全ての温度センサ60について、その検出精度がほぼ一定に保たれる。したがって、複数の温度センサ60の検出結果を単純に比較できるので、セラミックス部材10の保持面11における温度のばらつきを正確に把握できる。
【0065】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0066】
例えば、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、温度センサ60に対して、冷却流路70が、ほぼ全体で重ならないか、ほぼ全体で重なるようにすることは必須ではない。すなわち、Z軸方向から静電チャック1を見たときに、ヒータ電極部重なり度合いDH、および、トンネル重なり度合いDTの少なくとも一方が、20%以下、または、80%以上である一方で、冷却流路重なり度合いDCは、20%以下、または、80%以上でなくてもよい(すなわち、20%よりも大きく、かつ、80%未満であってもよい)。
【符号の説明】
【0067】
1 静電チャック
10 セラミックス部材
11 保持面
12 下面
20 ベース部材
21 上面
22 下面
30 接合層
40 ヒータ電極部
41 発熱体
42 ドライバ
44 ビア
50 ガストンネル
51 縦穴
52 横穴
53 縦穴
60 温度センサ
70 冷却流路
W 半導体ウエハ
DH ヒータ電極部重なり度合い
DT トンネル重なり度合い
DC 冷却流路重なり度合い