(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066951
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】目地材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/62 20060101AFI20240509BHJP
E04D 11/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
E04B1/62 Z
E04D11/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176792
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】306046601
【氏名又は名称】タイリック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100206139
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 匡
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙一郎
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DH35
2E001FA51
2E001FA54
2E001FA71
2E001GA51
2E001HD01
(57)【要約】
【課題】 目地台座部のコンクリート膨張圧に対する圧縮抵抗を、目地台座部の長さ方向に均等に小さくし、コンクリートの膨張を全長に渡って確実に吸収できるようにした目地材を得る。
【解決手段】 弾性材よりなる広幅の目地台座部2の上に弾性材よりなる狭幅の板状目地主部3が立設した構造の目地材1において、目地材1を構成する目地台座部2と板状目地主部3を一体に形成し、目地台座部2の底部に目地台座部2の圧縮抵抗減少用溝4を、目地台座部2の幅方向中央に位置して、目地台座部2の長さ方向全長に渡って連続して形成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材よりなる広幅の目地台座部の上に弾性材よりなる狭幅の板状目地主部が立設した構造の目地材において、目地材を構成する前記目地台座部と前記板状目地主部は一体に形成されており、前記目地台座部の底部に目地台座部の圧縮抵抗減少用溝が、前記目地台座部の幅方向中央に位置して、前記目地台座部の長さ方向全長に渡って連続して形成されていることを特徴とする目地材。
【請求項2】
前記目地台座部と前記板状目地主部とで構成される前記目地材の長手方向の両端部に、前記目地材の側面形状に対応した形状の切欠き部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の目地材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの打設面を区切って縁切りし、コンクリートの伸縮による亀裂等の発生を防止する目地材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートを打設する際に、コンクリートの伸縮による亀裂等の発生を防止するため、コンクリート打設前に目地材を予め所定間隔で設置している。
【0003】
従来、かかる目地材として、ポリエチレン、ポリスチレン等の如き合成樹脂の発泡体等の弾性材よりなる広幅の目地台座部の上に、同じく弾性材よりなる狭幅の板状目地主部が立設された構造の目地材が知られている。
【0004】
しかしながら、このような構造の目地材では、打設したコンクリートが膨脹すると、該目地材の長手方向両側面にコンクリートの膨脹圧が加わり、目地材がその材質特性により収縮して前記コンクリートの膨脹を吸収する。このとき目地台座部は、板状目地主部に比べて幅が広く、そのため、目地台座部がコンクリートの膨張圧の最初の抵抗部位となる。
【0005】
コンクリートの膨張は、先ず目地台座部で吸収されるが、目地台座部の抵抗により、該抵抗を受けたコンクリートの一部に、目地台座部より遅れて抵抗部位となる狭幅の板状目地主部側に上昇移動する現象が生じ、この結果、目地材の両側近傍のコンクリートに亀裂が生じたり、コンクリートがせり上がる等の懸念があるといった問題がある。
【0006】
かかる問題を解決するものとして、目地台座部の一部に、目地台座部の圧縮抵抗を小さくさせる圧縮抵抗減少部が設けられた目地材が開示されている(特許文献1参照)。目地台座部の一部に設けられた圧縮抵抗減少部は、目地台座部の底部に、目地材の長手方向に間欠的に開口する溝により形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された目地材は、目地台座部の一部に、目地台座部の圧縮抵抗を小さくさせる圧縮抵抗減少部が設けられているので、目地材の長手方向両側面にコンクリートの膨脹圧が加わったとき、目地台座部の一部に設けられている圧縮抵抗減少部がコンクリートの膨張圧に対する目地台座部の圧縮抵抗を、その材質特性だけによる圧縮抵抗より小さくさせる。
【0009】
しかし、目地台座部に設けられた圧縮抵抗減少部となる溝は、目地材の長手方向に間欠的に形成されているので、目地台座部における目地と目地の間の部分ではコンクリートの膨張圧に対する目地台座部の圧縮抵抗を小さくさせるといった作用が働かず、目地台座部の圧縮抵抗が長さ方向に均等に小さくなっていないことになり、このため、目地材の長さ方向両側面にコンクリートの膨脹圧が加わったとき、目地材の両側近傍のコンクリートに亀裂が生じたり、コンクリートがせり上がる等の懸念を確実に解消できないといった問題がある。
【0010】
本発明の目的とするところは、目地台座部のコンクリート膨張圧に対する圧縮抵抗を、目地台座部の長さ方向に均等に小さくし、コンクリートの膨張を全長に渡って確実に吸収できるようにした目地材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、弾性材よりなる広幅の目地台座部の上に弾性材よりなる狭幅の板状目地主部が立設した構造の目地材において、目地材を構成する前記目地台座部と前記板状目地主部は一体に形成されており、前記目地台座部の底部に目地台座部の圧縮抵抗減少用溝が、前記目地台座部の幅方向中央に位置して、前記目地台座部の長さ方向全長に渡って連続して形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、目地材を構成する前記目地台座部と前記板状目地主部は一体に形成されており、前記目地台座部の底部に目地台座部の圧縮抵抗減少用溝が、前記目地台座部の幅方向中央に位置して、前記目地台座部の長さ方向全長に渡って連続して形成されているので、前記目地材の前記目地台座部にコンクリートの膨脹圧が加わったとき、前記目地台座部は、その材質特性により収縮するだけでなく、前記圧縮抵抗減少用溝の空間が変形し、前記圧縮抵抗減少用溝の空間の変形がコンクリートの膨脹圧に対する前記目地台座部の圧縮抵抗を、その材質特性だけによる圧縮抵抗より小さくさせることになり、そして前記圧縮抵抗減少用溝は前記目地台座部の長さ方向に全長に渡って連続して形成されていることから、前記目地台座部のコンクリート膨張圧に対する圧縮抵抗が、前記目地台座部の長さ方向に均等に小さくなり、コンクリートの膨張を全長に渡って確実に吸収し、目地材の長さ方向両側面にコンクリートの膨脹圧が加わったとき、目地材の両側近傍のコンクリートに亀裂が生じたり、コンクリートがせり上がる等の懸念を確実に解消することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記目地台座部と前記板状目地主部とで構成される前記目地材の長手方向の両端部に、前記目地材の側面形状に対応した形状の切欠き部が形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、前記目地台座部と前記板状目地主部とで構成される前記目地材の長手方向の両端部に、前記目地材の側面形状に対応した形状の切欠き部が形成されているので、コンクリート打設面へ設置される目地材の交差部で、一方の目地材の側面に、これと交差するように配置される他方の目地材の端部を当接させる際に、施工現場で目地材の端部を目地材の側面形状に対応した形状に加工するといった手間がなくなり、目地材の設置作業が容易となり、また、目地材を金型成型することで前記切欠き部の均一性が図れるので、隙間がなく納まりの良い交差部を確保することができる。
さらには、目地材の端部を突き合わせたとき、突合せ部に前記切欠き部による隙間が生じ、この隙間がコンクリート打設面との間で開口部を形成することになり、例えば、コンクリート打設面への目地材の設置作業中に降水があった場合、前記開口部が雨水を排水するための水抜き口として機能する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係る目地材によれば、目地台座部のコンクリート膨張圧に対する圧縮抵抗が、目地台座部の長さ方向に均等に小さくなり、コンクリートの膨張を全長に渡って確実に吸収し、目地材の長さ方向両側面にコンクリートの膨脹圧が加わったとき、目地材の両側近傍のコンクリートに亀裂が生じたり、コンクリートがせり上がる等の懸念を確実に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る目地材の実施の形態の一例を示す正面図である。
【
図4】目地材をコンクリート打設面へ交差させて設置した交差部を示す平面図である。
【
図5】
図4に示す目地材の交差部の施工の過程を示す説明図である。
【
図6】施工された目地材の交差部を示す説明図である。
【
図7】
図4に示す目地材の端部同士を突き合わせた突合せ部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る目地材を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1~
図8は本発明に係る目地材の実施の形態の一例を示すものであり、
図1は本例の目地材を示す正面図、
図2は
図1に示す目地材の一部省略側面図、
図3は
図2の縦断面図、
図4は目地材をコンクリート打設面へ交差させて設置した交差部を示す平面図、
図5は
図4に示す目地材の交差部の施工の過程を示す説明図、
図6は施工された目地材の交差部を示す説明図、
図7は
図4に示す目地材の端部同士を突き合わせた突合せ部を示す平面図、
図8は
図7の側面図である。
【0018】
本例の目地材1は、発泡ポリエチレン、発泡スチロールの如き合成樹脂の発泡体等の弾性材よりなる広幅の目地台座部2の上に、同じく弾性材よりなる狭幅の板状目地主部3が一体に立設した構造となっている。目地台座部2及び板状目地主部3にあっては、従来のこの種の目地材を構成する目地台座部及び板状目地主部と変わるところはない。
【0019】
本例の目地材1は、目地台座部2の底部に、目地台座部2の幅方向の圧縮抵抗を小さくさせる圧縮抵抗減少用溝4が、目地台座部2の幅方向中央に位置して、目地台座部2の長さ方向全長に渡って連続して形成されている
【0020】
圧縮抵抗減少用溝4の形状、溝幅、溝深さにあっては特に限定されるものでないが、溝幅が狭く、また溝深さが浅い場合は、目地台座部2の幅方向の圧縮抵抗を十分に小さくさせられなくなる場合があり、また、溝幅が広く、また溝深さが深い場合は、圧縮抵抗減少用溝4としての強度が保てなくなる場合があるので、圧縮抵抗減少用溝4の溝幅や溝深さを、目地台座部2の幅方向の圧縮抵抗を小さくでき且つ目地台座部2としての強度が保てる範囲で設定することが求められる。
【0021】
また、本例では、目地台座部2と板状目地主部3とで構成される目地材1の長手方向の両端部5に、目地材1の側面形状に対応した形状の切欠き部6が形成されている。
【0022】
このように構成された目地材1によれば、目地材1を構成する目地台座部2と板状目地主部3は一体に形成されており、目地台座部2の底部に目地台座部2の圧縮抵抗減少用溝4が、目地台座部2の幅方向中央に位置して、目地台座部2の長さ方向全長に渡って連続して形成されているので、目地台座部2にコンクリートの膨脹圧が加わったとき、目地台座部2は、その材質特性により収縮するだけでなく、圧縮抵抗減少用溝4の空間が変形し、圧縮抵抗減少用溝4の空間の変形がコンクリートの膨脹圧に対する目地台座部2の圧縮抵抗を、その材質特性だけによる圧縮抵抗より小さくさせることになる。
【0023】
そして圧縮抵抗減少用溝4は目地台座部2の長さ方向に全長に渡って連続して形成されているので、目地台座部2のコンクリート膨張圧に対する圧縮抵抗が、目地台座部2の長さ方向に均等に小さくなり、コンクリートの膨張を全長に渡って確実に吸収する。これにより、目地材2の長さ方向両側面にコンクリートの膨脹圧が加わったとき、この膨張圧を目地台座部2の全長に渡って効果的に吸収するので、目地材1の両側近傍のコンクリートに亀裂が生じたり、コンクリートがせり上がる等の懸念を確実に解消することができる。
【0024】
また、本例では、目地台座部2と板状目地主部3とで構成される目地材1の長手方向の両端部5に、目地材1の側面形状に対応した形状の切欠き部6が形成されているので(
図5参照)、コンクリート打設面へ設置される目地材1,1の交差部7で、一方の目地材1の側面1aに、これと交差するように配置される他方の目地材1の端部5を当接させたとき、一方の目地材1の側面1aに、これと交差するように配置される他方の目地材1の端部5の端面が隙間無く当接し、隙間がなく納まりの良い交差部7を確保できる(
図6参照)。
【0025】
さらには、目地材1の端部5を突き合わせたとき、突合せ部8に切欠き部6による隙間9が生じ、この隙間9が目地材1を設置するコンクリート打設面10との間で開口部11を形成することになり、例えば、コンクリート打設面10への目地材1の設置作業中に降水があった場合、開口部11が雨水を排水するための水抜き口として機能する。
【符号の説明】
【0026】
1 目地材
1a 側面
2 目地台座部
3 板状目地主部
4 圧縮抵抗減少用溝
5 端部
6 切欠き部
7 交差部
8 突合せ部
9 隙間
10 コンクリート打設面
11 開口部