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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066952
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】リッド開閉装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20240509BHJP
   E05B 83/34 20140101ALI20240509BHJP
【FI】
B60K15/05 B
E05B83/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022176796
(22)【出願日】2022-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 和輝
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ43
2E250JJ48
2E250LL13
3D038CA33
3D038CB01
3D038CC16
(57)【要約】
【課題】組み付け性を向上させること。
【解決手段】リッド開閉装置は、リッドを開動作させる第一動力を発生するアクチュエータと、外力をリッドを開動作させる第二動力に変換する外力作動機構と、第一及び第二動力をリッドに伝達する動力伝達機構と、を備える。動力伝達機構は、アクチュエータに対して軸方向一方側に配置され、第一動力により回転すると共に第二動力により回転し得る第一シャフトと、第一シャフト及びリッドに接続され、第一シャフトの回転に伴って回転してリッドを開閉動作させる第二シャフトと、を有する。外力作動機構は、第一シャフトと同軸上に配置される回転部材を有する。動力伝達機構は、第一シャフトと回転部材とを第二動力の非発生時は互いに非係合としかつ第二動力の発生時は互いに係合させる係合切替部を有する。回転部材は、動力伝達機構に一体的に組み込まれ、アクチュエータに対して第一シャフトの配置される側と同じ側に配置されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対して閉位置と開位置との間で開閉動作するリッドと、
前記リッドを少なくとも開動作させる第一動力を発生するアクチュエータと、
手動操作に伴う外力を前記リッドを開動作させる第二動力に変換するように作動する外力作動機構と、
前記第一動力及び前記第二動力を前記リッドに伝達する動力伝達機構と、
を備え、
前記動力伝達機構は、
前記アクチュエータに対して軸方向一方側に配置され、前記アクチュエータの発生する前記第一動力により回転すると共に、前記外力作動機構の作動による前記第二動力により回転し得る第一シャフトと、
前記第一シャフトに接続されると共に前記リッドに接続され、前記第一シャフトの回転に伴って回転して前記リッドを開閉動作させる第二シャフトと、
を有し、
前記外力作動機構は、前記第一シャフトと同軸上に配置されて該軸回りに回転可能な回転部材を有し、
前記動力伝達機構は、前記第二動力が発生しないときは前記第一シャフトと前記回転部材とを互いに非係合とし、一方、前記第二動力が発生したときは該第二動力が前記第一シャフトを介して前記第二シャフトに伝達されて前記第二シャフトが回転するように前記第一シャフトと前記回転部材とを互いに係合させる係合切替部を有し、
前記回転部材は、前記動力伝達機構に一体的に組み込まれ、前記アクチュエータに対して前記第一シャフトの配置される側と同じ側に配置されている、リッド開閉装置。
【請求項2】
前記第一シャフトは、前記アクチュエータに対して前記基材の中央寄りに配置され、
前記回転部材は、前記アクチュエータに対して前記基材の中央寄りに配置される、請求項1に記載されたリッド開閉装置。
【請求項3】
前記係合切替部は、
前記回転部材に設けられる係合部と、
前記第一シャフトに設けられ、前記係合部に係合可能な被係合部と、
を有し、
前記係合部と前記被係合部とは、前記第二動力が発生しないときは互いに係合せず、一方、前記第二動力が発生したときは互いに係合する、請求項1に記載されたリッド開閉装置。
【請求項4】
前記回転部材は、前記第二動力が発生しないときは前記第一シャフトに対して前記係合部と前記被係合部とが互いに係合しない空転範囲に位置し、一方、前記第二動力が発生したときは前記係合部と前記被係合部とが互いに係合した状態で前記第一シャフトと一体で回転する、請求項3に記載されたリッド開閉装置。
【請求項5】
前記第一シャフトと前記第二シャフトとは、互いに径方向に離れて配置されており、
前記動力伝達機構は、前記第一シャフトと前記第二シャフトとの間の動力伝達を行うシャフト間伝達機構を有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載されたリッド開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車体に取り付けられた基材の開口を開閉するリッドを開閉動作させることが可能なリッド開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リッドを開閉動作させるリッド開閉装置が知られている(例えば、特許文献1)。リッドは、例えば車体に取り付けられ車両の充電口や給油口などを露出させる基材の開口を開閉する蓋材である。上記の特許文献1記載のリッド開閉装置は、動力発生用のアクチュエータと、緊急用の外力作動機構と、を備えている。アクチュエータは、電力供給により作動してリッドを開閉動作させる動力を発生する。外力作動機構は、アクチュエータの故障などの緊急時に操作者の手動操作により作動する機構であって、その手動操作に伴う外力をリッドを閉位置から開位置へ開動作させる動力に変換する。
【0003】
上記のリッド開閉装置において、アクチュエータの発生する動力及び外力作動機構の作動による動力は、回転シャフトを介してリッドに伝達される。アクチュエータの出力軸は、回転シャフトに直接に接続されている。回転シャフトは、アクチュエータに対して軸方向一方側に配置されて、アクチュエータから軸方向一方に延びており、その軸方向一方端でリッド側に接続されている。
【0004】
外力作動機構は、アクチュエータに対して軸方向他方側に配置された回転部材を有している。この回転部材は、アクチュエータの出力軸ひいては回転シャフトの軸方向他方端に接続され得る。具体的には、回転部材は、手動操作に伴う外力が付与されていないときは回転シャフトに接続しない非係合状態にあり、その外力が付与されたときに回転シャフトに接続して係合する。このため、外力作動機構が操作者の手動操作によって作動すると、その手動操作に伴う外力が動力として回転シャフトに伝達される。従って、上記のリッド開閉装置においては、緊急時に、アクチュエータの作動によることなく手動操作で通常のアクチュエータ作動時と同様にリッドを開状態とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-110989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のリッド開閉装置では、外力作動機構の回転部材が、アクチュエータに対して回転シャフトの配置される軸方向一方側とは反対側である軸方向他方側に配置されている。この構造では、アクチュエータに対して回転シャフト及び外力作動機構の回転部材を組み付けるうえで、アクチュエータに対して軸方向両側からの組み付け作業を要することになるので、リッド開閉装置としての組み付け性が低下してしまう。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、組み付け性を向上させたリッド開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、基材に対して閉位置と開位置との間で開閉動作するリッドと、前記リッドを少なくとも開動作させる第一動力を発生するアクチュエータと、手動操作に伴う外力を前記リッドを開動作させる第二動力に変換するように作動する外力作動機構と、前記第一動力及び前記第二動力を前記リッドに伝達する動力伝達機構と、を備え、前記動力伝達機構は、前記アクチュエータに対して軸方向一方側に配置され、前記アクチュエータの発生する前記第一動力により回転すると共に、前記外力作動機構の作動による前記第二動力により回転し得る第一シャフトと、前記第一シャフトに接続されると共に前記リッドに接続され、前記第一シャフトの回転に伴って回転して前記リッドを開閉動作させる第二シャフトと、を有し、前記外力作動機構は、前記第一シャフトと同軸上に配置されて該軸回りに回転可能な回転部材を有し、前記動力伝達機構は、前記第二動力が発生しないときは前記第一シャフトと前記回転部材とを互いに非係合とし、一方、前記第二動力が発生したときは該第二動力が前記第一シャフトを介して前記第二シャフトに伝達されて前記第二シャフトが回転するように前記第一シャフトと前記回転部材とを互いに係合させる係合切替部を有し、前記回転部材は、前記動力伝達機構に一体的に組み込まれ、前記アクチュエータに対して前記第一シャフトの配置される側と同じ側に配置されている、リッド開閉装置である。
【0009】
この構成によれば、組み付け性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るリッド開閉装置のリッド閉位置での正面側からの斜視図である。
図2】一実施形態のリッド開閉装置のリッド開位置での正面側からの斜視図(但し、一部、透視図)である。
図3】一実施形態のリッド開閉装置のリッド開位置での正面図である。
図4】一実施形態のリッド開閉装置のリッド開位置での背面図である。
図5】一実施形態のリッド開閉装置のリッド開位置での側面図である。
図6】一実施形態のリッド開閉装置の要部の分解図である。
図7】一実施形態のリッド開閉装置の動力伝達機構が有する外力作動機構の回転部材の斜視図である。
図8】一実施形態のリッド開閉装置の動力伝達機構が有する第一シャフトの要部の斜視図である。
図9】一実施形態のリッド開閉装置が備える動力伝達機構のシャフト間伝達機構の動作を説明するための図(具体的には、シャフト間伝達機構を側方から見た図)である。
図10図9に示すシャフト間伝達機構の拡大図である。
図11】一実施形態のリッド開閉装置が備える部材の配置関係を説明するための図(具体的には、部材の配置関係を背面側から見た図)である。
図12】一実施形態のリッド開閉装置のリッド開閉動作時における第一シャフトと外力作動機構との位置関係を表した図(具体的には、軸方向から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図12を用いて、本発明に係るリッド開閉装置の具体的な実施形態について説明する。
【0012】
一実施形態に係るリッド開閉装置1は、基材に対してリッドを開閉動作させる装置である。リッド開閉装置1は、例えば、ガソリン車やディーゼル車,電気自動車,ハイブリッド自動車などの車両に搭載されており、車体側部や車体前部などの車体面2に設けられた取付孔2aに設置される。取付孔2aには、例えば車両へのエネルギ供給のための供給口(具体的には充電口や給油口など;図3参照)3が配置される。
【0013】
リッド開閉装置1は、図1及び図2に示す如く、基材10と、リッド20と、アクチュエータ30と、外力作動機構40と、動力伝達機構50と、を備えている。リッド開閉装置1は、通常時はアクチュエータ30の発生する動力を動力伝達機構50を介してリッド20に伝達すると共に、アクチュエータ30の故障時などの緊急時は外力作動機構40の作動による動力を動力伝達機構50を介してリッド20に伝達することにより、リッド20を基材10に対して閉位置と開位置との間で開閉動作させる。
【0014】
基材10は、供給口3を収容する容器状或いは箱状のボックス部材である。基材10は、取付孔2aに嵌るように車体面2に取り付け固定されている。基材10は、底壁部11と、側壁部12と、収容空間13と、開口部14と、を有している。基材10は、奥側にて底壁部11が形成され、側壁部12が底壁部11の周縁を取り囲んで収容空間13を構成するように形成され、かつ手前側にて開口部14が形成された筒状の有底部材である。基材10は、樹脂などにより成形された射出成形体である。
【0015】
供給口3は、燃料タンクやバッテリなどに一端が接続する配管やケーブルの他端に設けられている。燃料タンクやバッテリは、底壁部11に設けられた第一貫通孔11aよりも奥側に配置されている。供給口3は、第一貫通孔11aを介して収容空間13に収容されている。供給口3は、リッド20の閉位置でそのリッド20の奥側に隠れる一方、リッド20の開位置で燃料供給や充電が可能となるように開口部14を介して車外に露出する。
【0016】
基材10は、枠部15を有している。枠部15は、開口部14の周縁部に沿って環状に形成されており、開口部14の周縁部から枠外方向に向けて延出するようにフランジ状に形成されている。基材10は、枠部15の裏面が車体面2の取付孔2a周縁のフランジ面などに当接することにより車体面2に位置決めされる。
【0017】
リッド20は、基材10の開口部14を開閉する蓋部材である。リッド20は、板状に形成されている。リッド20は、開口部14やその開口部14の周縁における枠部15に合わせた大きさを有している。リッド20は、リッド20の閉位置で車体面2に面一になるように開口部14を閉じる。尚、リッド20の表面は、車体面2に合わせて湾曲していてもよい。リッド20は、例えば樹脂により成形された射出成形体である。
【0018】
リッド20は、閉位置と開位置との間で移動する開閉動作を行うことが可能である。尚、閉位置とは、リッド20が開口部14を閉じる位置のことである。また、開位置とは、リッド20が開口部14を開放する所定位置のことである。リッド20は、基材10に対して位置移動可能に支持されている。リッド20は、通常は、車両使用者などの操作者の手動操作によることなくアクチュエータ30からの動力で開閉動作し、アクチュエータ30の故障などの緊急時は、操作者の手動操作による外力作動機構40からの動力で開閉動作する。
【0019】
アクチュエータ30は、リッド20を少なくとも開動作させる動力(以下、第一動力と称す。)を発生することが可能である。アクチュエータ30は、リッド20を開動作させる第一動力だけでなく、リッド20を閉動作させる第一動力を発生することも可能である。アクチュエータ30は、電力供給により第一動力を発生する電動モータなどである。アクチュエータ30は、正方向及び逆方向の双方に回転することが可能である。
【0020】
尚、正方向とは、リッド20を閉位置から開位置へ開動作させる方向のことであり、逆方向とは、リッド20を開位置から閉位置へ閉動作させる方向のことであってよい。また、以下では、正方向及び逆方向は、アクチュエータ30の動作に限らず、後に詳述する外力作動機構40及び動力伝達機構50の各部品の動作に適用するものとする。
【0021】
アクチュエータ30は、正方向及び逆方向のうち選択した方向に回転駆動することが可能である。アクチュエータ30は、リッド20の閉位置で操作者により所定のスイッチ開操作(例えば、図1図2、及び図3に示すスイッチ90への押圧操作)が行われた場合は制御装置からの開指令に従って正方向に回転駆動される。この場合、リッド20は、開動作する。また、アクチュエータ30は、リッド20の開位置で操作者により所定のスイッチ閉操作(例えば、スイッチ90への押圧操作)が行われた場合は制御装置からの閉指令に従って逆方向に回転駆動される。この場合、リッド20は、閉動作する。
【0022】
アクチュエータ30は、アッパボックス31とロアボックス32とに囲まれる空間内に回転可能に収容されている(図6参照)。アクチュエータ30は、アッパボックス31とロアボックス32とが締結されることにより上記の空間内に収容される。アクチュエータ30は、上記の空間内に収容された状態で基材10に取り付け固定される。
【0023】
外力作動機構40は、手動操作に伴う外力をリッド20を開動作させる動力(以下、第二動力と称す。)に変換するように作動する機構である。外力作動機構40は、図5及び図6に示す如く、回転部材41と、ワイヤ43と、を有している。
【0024】
回転部材41は、回転可能な部材である。回転部材41は、周方向に作用する力によって回転できる形状を有していればよく、図6及び図7に示す如く扇状に形成されている。尚、回転部材41は、例えば円盤状や円筒状に形成されていてもよい。回転部材41は、動力伝達機構50に一体的に組み込まれている。
【0025】
回転部材41は、アッパボックス31とロアボックス32とに囲まれる空間の外側に配置されている。回転部材41は、ロアボックス32の外部(具体的には、ロアボックス32におけるアッパボックス31側とは反対側の外部)に露出して配置されている。回転部材41は、図6及び図11に示す如く、アクチュエータ30に対して後述の第一シャフト51の配置される側と同じ側に配置されており、アクチュエータ30に対して基材10やリッド20の内側すなわち中央寄りに配置されている。回転部材41は、ロアボックス32に回転可能に支持されており、アクチュエータ30の出力軸と同軸上で回転可能である。回転部材41の回転軸は、アクチュエータ30の回転軸に一致しており、アクチュエータ30の回転軸と同軸上にある。
【0026】
回転部材41は、外縁に形成された溝42を有している。溝42は、径方向外方に向けて開口している。ワイヤ43は、回転部材41に外力を付与する外力付与部である。ワイヤ43の一端部は、回転部材41の外周上に固定されている。ワイヤ43は、その一部が回転部材41の溝42に沿って嵌るように構成されている。ワイヤ43の他端部には、操作者が引っ張り操作することが可能な操作部43aが設けられている。ワイヤ43は、緊急時に操作部43aが引っ張り操作された場合に、回転部材41の外周上の固定箇所を支点にして接線方向に引かれることにより、その手動操作に伴う外力を回転部材41に付与する。回転部材41は、ワイヤ43から外力が付与された場合、その外力を第二動力に変換するように正方向に回転する。
【0027】
動力伝達機構50は、アクチュエータ30の発生した第一動力及び外力作動機構40の作動による第二動力をリッド20に伝達する機構である。動力伝達機構50は、第一シャフト51と、第二シャフト52と、シャフト間伝達機構60と、係合切替部70と、第一アーム53と、第二アーム54と、を有している。
【0028】
第一シャフト51は、アクチュエータ30の発生する第一動力により回転すると共に、外力作動機構40の作動による第二動力により回転し得る軸部材である。第一シャフト51は、アクチュエータ30の出力軸と同軸上に延びている。第一シャフト51は、軸方向一端でアクチュエータ30の出力軸に軸嵌合されている。アクチュエータ30が回転すると、アクチュエータ30から第一シャフト51の軸方向一端側に第一動力が伝達される。この場合、第一シャフト51は、アクチュエータ30の出力軸の回転に伴ってその出力軸と一体で軸中心Z1を中心にして回転する。尚、第一シャフト51は、アクチュエータ30の出力軸自体であってもよい。また、第一シャフト51は、アクチュエータ30の出力軸と同軸上ではなく、減速機やリンクを介してその出力軸に接続されていてもよい。
【0029】
第一シャフト51は、図6及び図11に示す如く、アクチュエータ30に対して軸方向一方側に配置されており、具体的には、アクチュエータ30に対して基材10やリッド20の内側すなわち中央寄りに配置されている。第一シャフト51は、ロアボックス32の内側から外側(すなわち、アッパボックス31側とは反対側)へ軸方向に突出している。すなわち、第一シャフト51は、軸方向一端がアクチュエータ30の出力軸に接続されかつ軸方向他端がロアボックス32の外側に位置するように配置されている。第一シャフト51は、ロアボックス32に回転可能に支持されている。上記の回転部材41は、アクチュエータ30の出力軸ひいては第一シャフト51と同軸上で軸中心Z1を中心にして回転可能である。
【0030】
外力作動機構40に第二動力が生じていないときは、係合切替部70の後述する係合部71と被係合部72とが互いに係合しないので、外力作動機構40から第一シャフト51への動力の伝達は生じない。一方、外力作動機構40に第二動力が生じると、係合部71と被係合部72とが互いに係合するので、外力作動機構40から第一シャフト51へその第二動力が伝達される。この場合、第一シャフト51は、外力作動機構40の回転部材41の回転に伴ってその回転部材41と一体で軸中心Z1を中心にして正方向に回転する。
【0031】
第二シャフト52は、第一シャフト51の回転に伴って回転してリッド20を開閉動作させる軸部材である。第二シャフト52は、第一シャフト51に接続されている。具体的には、第二シャフト52は、シャフト間伝達機構60を介して第一シャフト51に接続されている。第一シャフト51の軸中心Z1と第二シャフト52の軸中心Z2とは、互いに平行に延びている。第一シャフト51と第二シャフト52とは、互いに径方向に離れて配置されている。すなわち、第二シャフト52の軸中心Z2は、第一シャフト51の軸中心Z1とは異なる位置でその軸中心Z1と平行に延びている。第二シャフト52は、ロアボックス32に回転可能に支持されている。
【0032】
シャフト間伝達機構60は、第一シャフト51と第二シャフト52との間の動力伝達を行うリンク機構である。シャフト間伝達機構60は、第一シャフト51から第二シャフト52へ第一動力又は第二動力を伝達する。シャフト間伝達機構60は、図9及び図10に示す如く、第一リンク61と、第二リンク62と、第三リンク63と、を有している。第一リンク61、第二リンク62、及び第三リンク63はそれぞれ、アーム板状に形成されている。第一リンク61と第二リンク62と第三リンク63とは、その順で第一シャフト51と第二シャフト52との間で直列接続されている。第一リンク61、第二リンク62、及び第三リンク63は、アッパボックス31とロアボックス32とに囲まれる空間に収容されている。
【0033】
第一リンク61は、一端部が軸中心Z1を中心にして回動可能に第一シャフト51(具体的には、その軸上)に接続されて一体化されると共に他端部が第二リンク62の一端部に相対回転可能に支持されるように構成されている。第二リンク62は、一端部が第一リンク61の他端部に相対回転可能に支持されると共に他端部が第三リンク63の一端部に相対回転可能に支持されるように構成されている。第三リンク63は、一端部が第二リンク62の他端部に相対回転可能に支持されると共に他端部が軸中心Z2を中心にして回動可能に第二シャフト52(具体的には、その軸方向一端部)に接続されて一体化されるように構成されている。
【0034】
第一リンク61は、第一シャフト51の回転に伴って第一シャフト51と一体的に軸中心Z1を中心にして回動する。尚、第一リンク61は、第一シャフト51の外周面に一体で形成されていてもよいし或いはその外周面に一体化するように取り付け固定されていてもよい。第二リンク62は、第一リンク61の回動に連動して移動(姿勢変化)する。第三リンク63は、第二リンク62の移動に連動して第二シャフト52と一体的に軸中心Z2を中心にして回動する。第二シャフト52は、第三リンク63の回動に連動して軸中心Z2を中心にして回転する。尚、第三リンク63は、第二シャフト52の外周面に一体で形成されていてもよいし或いはその外周面に一体化するように取り付け固定されていてもよい。
【0035】
第二リンク62は、図10に示す如く一部が切り欠かれた肉抜き部62aを有している。肉抜き部62aは、リッド20が閉動作するときにリッド閉位置近傍で軸中心Z1上の第一シャフト51に干渉せず、或いは、リッド20が開動作するときにリッド開位置近傍で軸中心Z2上の第二シャフト52に干渉せず、肉抜き部62aが無い構造に比べて第二リンク62の回動範囲を広げるために設けられる。尚、第二リンク62は、肉抜き部62aを有することに代えて、一定の幅を有する帯板状に形成されていてもよい。
【0036】
係合切替部70は、回転部材41と第一シャフト51との係合と非係合とを切り替える部位である。係合切替部70は、外力作動機構40の作動によって第二動力が発生したときは、その第二動力が第一シャフト51を介して第二シャフト52に伝達されて第二シャフト52が回転するように回転部材41と第一シャフト51とを互いに係合させる。また、係合切替部70は、上記の第二動力が発生しないときは、回転部材41と第一シャフト51とを互いに非係合とする。尚、係合切替部70は、アクチュエータ30によって第一動力が発生したときは、上記の第二動力が発生しない限り、その第一動力が第一シャフト51を介して第二シャフト52に伝達されて第二シャフト52が回転するように、回転部材41と第一シャフト51とを互いに非係合とする。
【0037】
係合切替部70は、係合部71と、係合部71に係合可能な被係合部72と、を有している。係合部71は、回転部材41に設けられている。被係合部72は、第一シャフト51に設けられている。係合部71と被係合部72とは、第一動力が発生するタイミングでは互いに非係合となり、第二動力が発生するタイミングでは互いに係合する。
【0038】
すなわち、係合部71と被係合部72とは、アクチュエータ30による第一動力により第一シャフト51が回転されるときすなわちその第一動力によってリッド20を閉位置と開位置との間で開閉動作させるタイミングでは、互いに係合しない。一方、係合部71と被係合部72とは、ワイヤ43の操作に伴って外力作動機構40による第二動力が発生したときすなわちその第二動力によってリッド20を閉位置から開位置に向けて開動作させるタイミングでは、互いに係合する。
【0039】
係合部71は、外力作動機構40の回転部材41に一体で形成され或いは回転部材41とは別体で回転部材41に取り付け固定される。回転部材41は、第一シャフト51の軸方向先端部が挿入される軸孔41aを有している。係合部71は、図7に示す如く、軸孔41a近傍の内壁から軸中心Z1に向けて突出するように凸状に形成されている。係合部71は、軸孔41aの周方向全域のうち一部の角度範囲(例えば90°)のみに設けられている。係合部71は、扇状に形成されている。
【0040】
被係合部72は、第一シャフト51に一体で形成され或いは第一シャフト51とは別体で第一シャフト51に取り付け固定される。被係合部72は、図8に示す如く、第一シャフト51の軸体外面から径方向外方に向けて突出するように凸状に形成されている。被係合部72は、第一シャフト51の周方向全域のうち一部の角度範囲(例えば90°)のみに設けられている。被係合部72は、扇状に形成されている。
【0041】
尚、係合部71は、上記した軸孔41aの周方向全域のうち上記した一部の角度範囲全体に亘って突出していてもよいが、その一部の角度範囲の少なくとも両端で突出していればよい。また、被係合部72は、上記した第一シャフト51の周方向全域のうち上記した一部の角度範囲全体に亘って突出していてもよいが、その一部の角度範囲の少なくとも両端で突出していればよい。
【0042】
係合部71の上記角度範囲と被係合部72の上記角度範囲との合算値は、360°未満である。そして、係合部71の上記角度範囲及び被係合部72の上記角度範囲は、第一動力によってリッド20が閉位置と開位置との間で開閉動作する際には係合部71と被係合部72との非係合が継続し、第二動力によってリッド20が閉位置から開位置まで開動作する際には係合部71と被係合部72との係合が継続するように設定されている。
【0043】
係合部71及び被係合部72はそれぞれ、凸状部の側面が周方向に向くように形成されている。係合部71と被係合部72とは、その側面同士が当接することにより互いに係合し、一方、その側面同士が周方向に離れることにより互いに非係合となる。
【0044】
回転部材41と第一シャフト51とは、アクチュエータ30による第一動力が発生しておらずかつワイヤ43が手動操作されず回転部材41に外力が付与されていないときに係合部71と被係合部72とが互いに非係合となるように、配置構成されている。回転部材41は、アクチュエータ30による第一動力が発生したときは第一シャフト51に対して係合部71と被係合部72とが互いに係合しない空転範囲に位置する。また、回転部材41は、外力作動機構40の作動による第二動力が発生したときは係合部71と被係合部72とが互いに係合した状態で第一シャフト51と一体で回転する。
【0045】
アクチュエータ30による第一動力が発生すると、その第一動力によって第一シャフト51が軸中心Z1を中心にして回転するが、係合部71と被係合部72とは互いに非係合である。この非係合の状態は、リッド20が閉位置と開位置との間で開閉動作する過程で常に維持される。この際、第一動力は第一シャフト51を介して第二シャフト52に伝達されるので、第二シャフト52が第一動力によって回転する。
【0046】
一方、アクチュエータ30による第一動力は発生しないがワイヤ43に手動操作に伴う外力が付与されると、その外力が回転部材41に伝達されて回転部材41を軸中心Z1を中心にして回転させる力となる。この場合、ワイヤ43への外力は、リッド20を開動作させる第二動力に変換される。回転部材41が回転すると、係合部71と被係合部72とが互いに係合し、第二動力が第一シャフト51に伝達される。この係合の状態は、リッド20が閉位置から開位置に達するまで維持される。この際、係合部71と被係合部72とが互いに係合した状態で回転部材41と第一シャフト51とが一体的に回転するので、第二シャフト52が第二動力によって回転する。
【0047】
尚、第二動力による第二シャフト52の回転は、第一動力による第二シャフト52の回転に比べて狭い角度範囲で行われるものであってよい。すなわち、第一動力による第二シャフト52の回転は、リッド20を閉位置と全開となる開位置との間で開閉動作させるように行われるものであってよく、第二動力による第二シャフト52の回転は、リッド20を閉位置から全開よりも手前の所定開位置(例えば、操作者が手動でリッド20を全開となる開位置まで移動させることが可能な開位置)まで開動作させるように行われるものであってよい。
【0048】
第一アーム53及び第二アーム54は、第二シャフト52の回転により互いに同期して回動することにより、リッド20を車体面2や開口部14に対して平行な状態に維持させながら開閉動作させるアーム部材である。第一アーム53及び第二アーム54はそれぞれ、基材10側とリッド20側との間に介在している。第一アーム53と第二アーム54とは、基材10側とリッド20側との間で互いに並列に配置されている。第一アーム53及び第二アーム54はそれぞれ、アクチュエータ30に対して第一シャフト51の配置される側と同じ側に配置されており、アクチュエータ30に対して基材10の中央寄りに配置されている。
【0049】
第一アーム53は、リッド20の正面側から見たときに左右方向に離れて一対設けられている。また、第二アーム54は、リッド20の正面側から見たときに左右方向に離れて一対設けられている。以下、適宜、右側の第一アーム53を第一アーム53Rと、左側の第一アーム53を第一アーム53Lと、右側の第二アーム54を第二アーム54Rと、左側の第二アーム54を第二アーム54Lと、それぞれ称す。第二アーム54Rと第二アーム54Lとは、互いに連結バー55を介して連結されている(図4及び図6参照)。尚、第一アーム53Rと第一アーム53Lとは、互いに連結バーなどを介して連結されていてもよいが、互いに連結されていなくてもよい。
【0050】
第二シャフト52は、軸方向一端部が第一シャフト51(具体的には、シャフト間伝達機構60の第三リンク63の他端部)に接続しかつ軸方向他端部がリッド20(具体的には、第二アーム54(例えば、左側の第二アーム54L))に接続するように構成されている。第二シャフト52の軸方向一端部は、第三リンク63に一体化されている。第二シャフト52の軸方向他端部は、第二アーム54に設けられた嵌合孔54aに挿入され第二アーム54に一体化されている。第二アーム54は、第二シャフト52の回転に伴って軸中心Z2を中心にして回動する。
【0051】
第一アーム53及び第二アーム54はそれぞれ、アーム長手方向の一端部が基材10に回動可能に支持されると共にアーム長手方向の他端部がリッド20に回動可能に支持された、アーム状に延びる部材である。例えば、第一アーム53は、アーム長手方向に直交する各支点の軸方向の厚みが所定幅を有するように厚肉状に形成されている。また、第二アーム54は、各支点の軸方向の厚みが第一アーム53に比べて小さくなるように薄肉板状に形成されている。尚、第一アーム53及び第二アーム54の軸方向は、上記の左右方向である。
【0052】
左右一対の第一アーム53R,53Lは、左右対称の形状を有し、アーム長手方向の両端部それぞれで同軸上において互いに同期して回動する。左右一対の第二アーム54R,54Lは、左右対称の形状を有し、アーム長手方向の両端部それぞれで同軸上において互いに同期して回動する。第一アーム53と第二アーム54とは、互いに同期して協働しながら回動することでリッド20を開閉動作させる。
【0053】
第一アーム53の一端部は、基材10の基材第一支点に支持されている。第一アーム53の他端部は、リッド20のリッド第一支点に支持されている。第一アーム53は、基材第一支点とリッド第一支点との間で湾曲して延びている。第二アーム54の一端部は、基材10の基材第二支点に支持されていると共に、第二シャフト52に一体化されている。第二アーム54の他端部は、リッド20のリッド第二支点に支持されている。第二アーム54は、基材第二支点とリッド第二支点との間で湾曲して延びている。
【0054】
上記した基材第一支点及び基材第二支点はそれぞれ、基材10の底壁部11の裏面側に設けられている。基材第一支点は、基材第二支点よりも上方に設けられている。リッド第一支点及びリッド第二支点はそれぞれ、リッド20の裏面側に設けられている。リッド第一支点は、リッド第二支点よりも上方に設けられていると共に、基材第一支点とは異なる位置に設けられている。リッド第二支点は、基材第二支点とは異なる位置に設けられている。第一アーム53は、第二アーム54よりも上方に位置している。各第一アーム53は、基材10に対して基材第一支点を中心にして回動すると共に、リッド20に対してリッド第一支点を中心にして回動する。各第二アーム54は、基材10に対して基材第二支点を中心にして回動すると共に、リッド20に対してリッド第二支点を中心にして回動する。
【0055】
基材10の底壁部11は、第二貫通孔11b及び第三貫通孔11cを有している。第二貫通孔11bは、右側の第一アーム53R及び第二アーム54Rが貫通する孔である。第三貫通孔11cは、左側の第一アーム53L及び第二アーム54Lが貫通する孔である。第二貫通孔11bは、第一貫通孔11aの右側に設けられている。第三貫通孔11cは、第一貫通孔11aの左側に設けられている。第二貫通孔11b及び第三貫通孔11cはそれぞれ、リッド20の開閉動作時における第一アーム53及び第二アーム54の回動が許容されるように、上下方向に延びて長孔状に形成されている。尚、第二貫通孔11b及び第三貫通孔11cはそれぞれ、第一貫通孔11aに接続して一体形成されていてもよい。
【0056】
第一アーム53と第二アーム54とは、一対の第一アーム53が互いに略平行な状態を維持しかつ一対の第二アーム54が互いに略平行な状態を維持しながら互いに協働して各支点を中心にして回動する。この場合、リッド20は、第一アーム53と第二アーム54との同期した回動により車体面2や開口部14に対して平行な状態を維持しながら開閉動作する。
【0057】
次に、図12を参照して、リッド開閉装置1の動作について説明する。
リッド開閉装置1において、操作が行われておらずアクチュエータ30が回転駆動されずかつワイヤ43が引っ張り操作されていないときは、アクチュエータ30による第一動力が発生せずかつ外力作動機構40の作動による第二動力が発生しないので、リッド20は、摩擦力などにより閉位置でロックされている。リッド20が閉位置にあるとき、回転部材41の係合部71と第一シャフト51の被係合部72とは、図12の上段に示す如き位置関係に維持されている。
【0058】
リッド20の閉位置で操作者により所定のスイッチ開操作が行われると、アクチュエータ30が、リッド20を開動作させる第一動力を発生する。アクチュエータ30によりかかる第一動力が発生すると、そのアクチュエータ30の正方向への回転に伴って一体で第一シャフト51が軸中心Z1を中心にして正方向に回転する。第一シャフト51が正方向に回転すると、第一動力がシャフト間伝達機構60を介して第二シャフト52へ伝達される。かかる伝達が行われると、シャフト間伝達機構60の第三リンク63の回動に連動して第二シャフト52が軸中心Z2を中心にして正方向に回転する。
【0059】
上記の如く第一動力により第二シャフト52が正方向に回転すると、第二シャフト52の回転により第二アーム54が正方向に回動し、第二アーム54の回動に同期して第一アーム53が正方向に回動する。第一アーム53及び第二アーム54が正方向に回動すると、リッド20が閉位置から車体面2や開口部14に対して平行な状態を維持しながら開位置に向けて開動作する。このリッド20の開動作は、全開となる開位置まで継続して行われる。
【0060】
また、リッド20の開位置で所定のスイッチ閉操作が行われると、アクチュエータ30が、リッド20を閉動作させる第一動力を発生する。アクチュエータ30によりかかる第一動力が発生すると、そのアクチュエータ30の逆方向への回転に伴って一体で第一シャフト51が軸中心Z1を中心にして逆方向に回転する。第一シャフト51が逆方向に回転すると、第一動力がシャフト間伝達機構60を介して第二シャフト52へ伝達される。かかる伝達が行われると、シャフト間伝達機構60の第三リンク63の回動に連動して第二シャフト52が軸中心Z2を中心にして逆方向に回転する。
【0061】
上記の如く第一動力により第二シャフト52が逆方向に回転すると、第二シャフト52の回転により第二アーム54が逆方向に回動し、第二アーム54の回動に同期して第一アーム53が逆方向に回動する。第一アーム53及び第二アーム54が逆方向に回動すると、リッド20が開位置から車体面2や開口部14に対して平行な状態を維持しながら閉位置に向けて閉動作する。このリッド20の閉動作は、閉位置まで継続して行われる。
【0062】
従って、リッド開閉装置1においては、操作者により所定のスイッチ操作が行われる場合に、アクチュエータ30に第一動力を発生させ、その第一動力を動力伝達機構50の第一シャフト51→シャフト間伝達機構60→第二シャフト52→第二アーム54及び第一アーム53→リッド20に伝達して、リッド20を閉位置と開位置との間で開閉動作させることができる。
【0063】
アクチュエータ30による第一動力によりリッド20が閉位置と開位置との間で開閉動作するときは、係合切替部70の係合部71と被係合部72とが互いに係合しない状態が継続する。このため、アクチュエータ30による第一動力によりリッド20が閉位置と開位置との間で自動的に開閉動作するときは、回転部材41の係合部71と第一シャフト51の被係合部72とが互いに係合しないので、第一シャフト51の回転によって回転部材41にその回転部材41を回転させる力が付与されることは無い。
【0064】
一方、リッド20の全閉位置で操作者による外力によりワイヤ43が引っ張り操作されると、その外力が回転部材41に付与され、回転部材41がその外力を第二動力に変換するように正方向に回転する。回転部材41が正方向に回転すると、その回転部材41の係合部71の側面が第一シャフト51の被係合部72の側面に当接して係合部71と被係合部72とが互いに係合することで、その回転部材41の回転に伴って一体で第一シャフト51が正方向に回転する。第二動力により第一シャフト51が正方向に回転すると、第二動力がシャフト間伝達機構60を介して第二シャフト52へ伝達されることで、シャフト間伝達機構60の第三リンク63の回動に連動して第二シャフト52が軸中心Z2を中心にして正方向に回転する。
【0065】
上記の如く第二動力により第二シャフト52が正方向に回転すると、第二シャフト52の回転により第二アーム54が正方向に回動し、第二アーム54の回動に同期して第一アーム53が正方向に回動する。第一アーム53及び第二アーム54が正方向に回動すると、リッド20が閉位置から車体面2や開口部14に対して平行な状態を維持しながら開位置に向けて開動作する。この第二動力によるリッド20の開動作は、全開となる開位置や全開よりも手前の所定開位置までまで継続して行われる。
【0066】
従って、リッド開閉装置1においては、リッド20の閉位置で操作者によりワイヤ43が引っ張り操作される場合に、回転部材41に操作者の手動操作に伴う外力を第二動力へ変換させて回転部材41の係合部71と第一シャフト51の被係合部72とを互いに係合させることで、その第二動力を動力伝達機構50の第一シャフト51→シャフト間伝達機構60→第二シャフト52→第二アーム54及び第一アーム53→リッド20に伝達して、リッド20を閉位置から開動作させることができる。
【0067】
この構成によれば、アクチュエータ30に故障が生じていない通常時は、そのアクチュエータ30の発生する第一動力によりリッド20を開閉動作させることができる。また、アクチュエータ30に故障が生じた緊急時は、ワイヤ43が引っ張り操作されることで、回転部材41によって手動操作に伴う外力が変換された第二動力によりリッド20を開動作させることができる。このため、アクチュエータ30に故障が生じた緊急時にも、リッド20の開動作を確保して、リッド20が閉位置にロックされるのを回避することができ、これにより、緊急時に車両への燃料供給や充電の機会を確保することができる。
【0068】
また、アクチュエータ30に故障が生じていない状態でリッド20が第一動力により全閉位置と全開位置との間で開閉動作される自動開閉過程では、係合部71と被係合部72とが互いに係合しないので、その第一動力が第一シャフト51から回転部材41に伝達されることはなく、その第一動力により回転部材41が回転したり或いはワイヤ43が不意に作動することは無い。このため、リッド自動開閉中にワイヤ43に緩みなどが生ずるのを回避することができ、これにより、ワイヤ43の劣化を抑えることができると共に、ワイヤ43の緩みに伴う他部品との干渉を抑えるためのスペースを設けることが不要となり、外力作動機構40ひいてはリッド開閉装置1の小型化を図ることができる。
【0069】
また、アクチュエータ30の発生する第一動力がリッド20に伝達されるまでの動力伝達経路と外力作動機構40の作動による第二動力がリッド20に伝達されるまでの動力伝達経路とは、第一シャフト51、シャフト間伝達機構60、第二シャフト52、第一アーム53、及び第二アーム54を用いる点で共用化されている。このため、リッド開閉装置1を構成するうえでの部品点数の削減が図られている。
【0070】
更に、リッド開閉装置1において、外力作動機構40の回転部材41は、動力伝達機構50に一体的に組み込まれている。そして、回転部材41は、アクチュエータ30に対して動力伝達機構50の第一シャフト51の配置される側と同じ側に配置されている。この構造においては、アクチュエータ30に対して回転部材41及び第一シャフト51を組み付けるうえで、アクチュエータ30に対して軸方向一方側から組み付け作業を行うことができ、アクチュエータ30の軸方向両側から組み付け作業を行うことは不要である。従って、リッド開閉装置1によれば、組み付け性を向上させることができる。
【0071】
また、第一シャフト51は、アクチュエータ30に対して基材10の中央寄りに配置されている。また、回転部材41は、上記の如くアクチュエータ30に対して第一シャフト51の配置される側と同じ側に配置されており、アクチュエータ30に対して基材10の中央寄りに配置されている。
【0072】
上記の構造においては、回転部材41がアクチュエータ30に対して基材10の外寄りに配置される対比構造に比べて、軸中心Z1上において回転部材41の回転支点位置を第一シャフト51の作用点(具体的には、シャフト間伝達機構60との接続位置)に近づけることことができ、軸中心Z1上における回転部材41の回転支点位置と第一シャフト51の作用点との距離を短くすることができる。
【0073】
このため、リッド開閉装置1の構造によれば、上記の対比構造に比べて、外力作動機構40のワイヤ43が引っ張り操作されたときに、回転部材41や第一シャフト51に歪みや変形を生じ難くすることができ、操作者の手動操作に伴う外力が回転部材41を介して第一シャフト51に第二動力として伝達されるまでに生じる損失を低減することができる。従って、リッド20を所望の開位置まで開動作させるためのワイヤ43への操作荷重を下げることができ、操作者への操作負担を軽減することができる。
【0074】
ところで、上記の実施形態においては、アクチュエータ30が、リッド20を開動作させる第一動力だけでなく、リッド20を閉動作させる第一動力を発生することが可能である。すなわち、リッド20がアクチュエータ30による第一動力により自動的に開閉動作する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、アクチュエータ30が、リッド20を開動作させる第一動力のみを発生するものであってよく、リッド20がアクチュエータ30による第一動力により自動的に開動作するものであってよく、リッド20の閉動作が手動で行われるものに適用することとしてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態においては、リッド20が車体面2に対して平行な状態を維持しながら開閉動作する構造に適用することとしている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、リッド20が車体面2に対して略平行な軸を中心にして上下方向や左右方向に開閉動作する構造に適用することとしてもよい。
【0076】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。また、本明細書は、出願当初に各請求項に記載された引用関係で示される技術思想を開示するだけでなく、各請求項に記載された事項を適宜組み合わせた技術思想を開示するものである。
【符号の説明】
【0077】
1:リッド開閉装置、20:リッド、30:アクチュエータ、31:アッパボックス、32:ロアボックス、40:外力作動機構、50:動力伝達機構、51:第一シャフト、52:第二シャフト、53:第一アーム、54:第二アーム、60:シャフト間伝達機構、70:係合切替部、71:係合部、72:被係合部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12