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特開2024-66960気孔率勾配を有する通気性金属構造及びその製造方法
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  • 特開-気孔率勾配を有する通気性金属構造及びその製造方法 図1
  • 特開-気孔率勾配を有する通気性金属構造及びその製造方法 図2
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  • 特開-気孔率勾配を有する通気性金属構造及びその製造方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066960
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】気孔率勾配を有する通気性金属構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 5/10 20060101AFI20240509BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20240509BHJP
   B22F 3/11 20060101ALI20240509BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B22F5/10
C22C1/08 E
B22F3/11 A
B22F3/105
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197123
(22)【出願日】2022-12-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】111141824
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】520160901
【氏名又は名称】國立高雄科技大學
【氏名又は名称原語表記】National Kaohsiung University of Science and Technology
【住所又は居所原語表記】No.415 Chien-Kung Road,SanMing District,Kaohsiung,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】蔡孟修
(72)【発明者】
【氏名】邱俊▲ウェイ▼
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018CA41
4K018HA01
4K018KA22
(57)【要約】
【課題】良好な機械強度を得るとともに、製品の成形過程で空気が溜まってしまうエアトラップの問題を解決するとともに、製品の表面品質を高める、ホール勾配を有する通気金属構造及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ホール勾配を有する通気金属構造は、第1の重ね層1を備える。第1の重ね層1は、互いに表裏の関係にある第1の面及び第2の面を有する。第1の重ね層1の第1の面には、第2の重ね層2が結合される。第1の重ね層1上には、複数の第1のホール11が形成される。第2の重ね層2上には、複数の第2のホール21が形成され、第1の重ね層1の第1のホール11と、第2の重ね層2の第2のホール21とは位置が互いに対応して連通し、第2のホール21の直径が第1のホール11の直径より小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重ね層を備えた、ホール勾配を有する通気金属構造であって、
前記第1の重ね層は、互いに表裏の関係にある第1の面及び第2の面を有し、前記第1の重ね層の前記第1の面には、第2の重ね層が結合され、前記第1の重ね層上には、複数の第1のホールが形成され、前記第2の重ね層上には、複数の第2のホールが形成され、前記第1の重ね層の前記第1のホールと、前記第2の重ね層の前記第2のホールとは位置が互いに対応して連通し、前記第2のホールの直径が前記第1のホールの直径より小さいことを特徴とする、
ホール勾配を有する通気金属構造。
【請求項2】
前記第1の重ね層の前記第1のホールの直径は、80μmより大きく、
前記第2の重ね層の前記第2のホールの直径は、50μmより小さいことを特徴とする請求項1に記載のホール勾配を有する通気金属構造。
【請求項3】
第3の重ね層をさらに備え、
前記第3の重ね層は、前記第1の重ね層の前記第2の面に結合され、
前記第3の重ね層上には、複数の第3のホールが形成され、前記第3の重ね層の前記第3のホールと、前記第1の重ね層の前記第1のホールとは位置が互いに対応して連通し、前記第3のホールの直径が前記第1のホールの直径より小さいか等しいことを特徴とする請求項1に記載のホール勾配を有する通気金属構造。
【請求項4】
前記第1の重ね層の前記第1のホールの直径は、80μmより大きく、
前記第3の重ね層の前記第3のホールの直径は、80μmより大きいか50μmより小さいことを特徴とする請求項3に記載のホール勾配を有する通気金属構造。
【請求項5】
ホール勾配を有する通気金属構造の製造方法であって、
複数の金属粉末を平らに固めて第1の積層を形成し、前記第1の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第1の積層の線形経路には、溶融池幅が付随して形成され、前記第1の積層の2つの線形経路間に形成されたハッチ距離は、線形経路の溶融池幅より大きく、前記第1の積層のハッチ距離と溶融池幅との差値によりギャップが形成され、前記第1の積層上に複数の金属粉末が平らに固められて第2の積層が形成され、前記第2の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第2の積層の線形経路は、前記第1の積層の線形経路との間に夾角が形成され、前記第2の積層の線形経路には、溶融池幅が付随して形成され、前記第2の積層の2つの線形経路間に形成されたハッチ距離は溶融池幅より大きく、前記第2の積層のハッチ距離と、溶融池幅との差値によりギャップが形成され、前記第1の積層及び前記第2の積層のギャップが交差され、格子状アレイ配列の複数の第1のホールを構成し、前記第1の積層上に積層される前記第2の積層の順序は、複数の前記第1の積層及び複数の前記第2の積層を順次積層して所定の厚さの第1の重ね層を形成し、複数の前記第1の積層及び複数の前記第2の積層のギャップが交差されて構成された第1のホールの位置が互いに対応し、前記第1の重ね層に貫通されて連続した前記第1のホールが形成される、前記第1の重ね層を形成するステップ(A)と、
前記複数の金属粉末を前記第1の積層の第1の面上に平らに固めて第3の積層を形成し、前記第3の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第3の積層の線形経路には、溶融池幅が付随して形成され、前記第3の積層の2つの線形経路間に形成されたハッチ距離は、線形経路の溶融池幅より大きく、前記第3の積層のハッチ距離と溶融池幅との差値によりギャップが形成され、複数の金属粉末を前記第3の積層上に平らに固めて第4の積層が形成され、前記第4の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第4の積層の線形経路は、前記第3の積層の線形経路との間に夾角が形成され、前記第4の積層の線形経路には、溶融池幅が付随して形成され、前記第4の積層の2つの線形経路間に形成されたハッチ距離は溶融池幅より大きく、前記第4の積層のハッチ距離と、溶融池幅との差値によりギャップが形成され、前記第3の積層及び前記第4の積層のギャップが交差されて格子状アレイ配列の複数の第2のホールを構成し、前記第3の積層上に積層される前記第4の積層の順序は、少なくとも1つの前記第3の積層及び少なくとも1つの前記第4の積層を順次積層させて所定の厚さの第2の重ね層を形成し、少なくとも1つの前記第3の積層及び少なくとも1つの前記第4の積層のギャップが交差されて構成された第2のホールの位置は互いに対応し、前記第2の重ね層に貫通されて連続した前記第2のホールが形成され、前記第2の重ね層の前記第2のホールと前記第1の重ね層の前記第1のホールとは、互いに位置が対応して連通し、前記第2のホールの直径が前記第1のホールの直径より小さい、前記第2の重ね層を形成するステップ(B)と、を含むことを特徴とする、
ホール勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【請求項6】
前記第1の重ね層の前記第1の積層及び前記第2の積層の溶融池幅を70~150μmに設定し、
前記第1の積層及び前記第2の積層のハッチ距離を150~300μmに設定し、
前記第1の積層及び前記第2の積層のギャップを80μmより大きくするとともに、前記第1の積層及び前記第2の積層のギャップが交差されて構成される前記第1のホールの直径は80μmより大きいことを特徴とする請求項5に記載のホール勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【請求項7】
前記第2の重ね層の前記第3の積層及び前記第4の積層の溶融池幅を70~150μmに設定し、
前記第3の積層及び前記第4の積層のハッチ距離を120~200μmに設定し、
前記第3の積層及び前記第4の積層のギャップを50μmより小さくするとともに、前記第3の積層及び前記第4の積層のギャップが交差されて構成される前記第2のホールの直径は50μmより小さいことを特徴とする請求項5に記載のホール勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【請求項8】
複数の金属粉末を前記第1の重ね層の第2の面上に平らに固めて第5の積層を形成し、前記第5の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第5の積層の線形経路には、溶融池幅が付随して形成され、前記第5の積層の2つの線形経路間に形成されたハッチ距離は、線形経路の溶融池幅より大きく、前記第5の積層のハッチ距離と溶融池幅との差値によりギャップが形成され、前記複数の金属粉末を前記第5の積層上に平らに固めて第6の積層が形成され、前記第6の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第6の積層の線形経路は、前記第5の積層の線形経路との間に夾角が形成され、前記第6の積層の線形経路には、溶融池幅が付随して形成され、前記第6の積層の2つの線形経路間に形成されたハッチ距離は溶融池幅より大きく、前記第6の積層のハッチ距離と、溶融池幅との差値によりギャップが形成され、前記第5の積層及び前記第6の積層のギャップが交差され、格子状アレイ配列の複数の第3のホールを構成し、前記第5の積層上に積層される前記第6の積層の順序は、少なくとも1つの前記第5の積層及び少なくとも1つの前記第6の積層が順次積層されて所定の厚さの第3の重ね層が形成され、少なくとも1つの前記第5の積層及び少なくとも1つの前記第6の積層のギャップが交差されて構成された第3のホールの位置は互いに対応し、前記第3の重ね層に貫通されて連続した前記第3のホールが形成され、前記第3の重ね層の前記第3のホールと前記第1の重ね層の前記第1のホールとは、互いに位置が対応して連通し、前記第3のホールの直径が前記第1のホールの直径より小さいか等しい、前記第3の重ね層を形成するステップ(C)をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のホール勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【請求項9】
前記第3の重ね層の前記第5の積層及び前記第6の積層の溶融池幅を70~150μmに設定し、
前記第5の積層及び前記第6の積層のハッチ距離を150~300μm又は120~200μmに設定し、前記第5の積層及び前記第6の積層のギャップを80μmより大きくするか50μmより小さくするとともに、前記第5の積層及び前記第6の積層のギャップが交差されて構成される前記第3のホールの直径は80μmより大きいか50μmより小さいことを特徴とする請求項8に記載のホール勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【請求項10】
前記第1の重ね層の前記第1の積層及び前記第2の積層のギャップが交差されてなる夾角は、2ndgap=1stcos(90-θ)であり、
前記第2の重ね層の前記第3の積層及び前記第4の積層のギャップが交差されてなる夾角は、4thgap=3rdcos(90-θ)であり、
前記第3の重ね層の前記第5の積層及び前記第6の積層のギャップが交差されてなる夾角は、6thgap=5thcos(90-θ)であることを特徴とする請求項8に記載のホール勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状製品技術の分野に関し、特に、ホール勾配を有する通気金属構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~5で開示されている通気金属に関する製造方法は、主に金属粉末高温焼結技術を採用し、製造される金属製品が通気機能を有するが、焼結成形のホールの寸法が不均一で形状が不規則である上、ホールのランダム散布が連続性に欠け、各通気孔間が連続して接続されておらず中断された状態下で、その通気性が達成困難であり、その通気性能の有効性が確保できなかったため、排気が好ましくないなどの欠点が依然としてあった。また、従来の通気金属では、排気効果を高めるためにルース方式で焼結した場合、その硬度が大幅に下がってしまい、機械性質が低下し、射出成形製品の表面品質が維持できず、緻密方式で焼結した場合、機械強度及び射出成形製品の表面品質を確保することができたが、製品の成形過程で大量の気体が発生してしまい、空気が溜まってしまうエアトラップの問題を解決することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】台湾特許第I269814号公報
【特許文献2】台湾特許出願公開第201929982A号公報
【特許文献3】中国特許第107868899B号公報
【特許文献4】中国特許第105922514B号公報
【特許文献5】中国特許出願公開第106867016A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、良好な機械強度を得るとともに、製品の成形過程で空気が溜まってしまうエアトラップの問題を解決するとともに、製品の表面品質を高める、ホール勾配を有する通気金属構造及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、第1の重ね層を備えた、ホール勾配を有する通気金属構造であって、前記第1の重ね層は、互いに表裏の関係にある第1の面及び第2の面を有し、前記第1の重ね層の前記第1の面には、第2の重ね層が結合され、前記第1の重ね層上には、複数の第1のホールが形成され、前記第2の重ね層上には、複数の第2のホールが形成され、前記第1の重ね層の前記第1のホールと、前記第2の重ね層の前記第2のホールとは位置が互いに対応して連通し、前記第2のホールの直径が前記第1のホールの直径より小さいことを特徴とする、ホール勾配を有する通気金属構造を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のホール勾配を有する通気金属構造及びその製造方法は、以下(1)及び(2)の効果を有する。
(1)ホールの直径が小さめの第2の重ね層にキャビティが設けられ、キャビティ内で製品が射出成形される際、きめ細かくて平滑な表面品質を得て、ホールの直径が大きめの第1の重ね層を利用し、プラスチック製品の成形過程で発生する大量の気体を効果的に排出させ、空気が溜まってしまうエアトラップの問題を効果的に解決することができる。
(2)第1の重ね層の外側に位置する第3の重ね層は、製造の必要性に応じてそのホールの寸法を調整し、製造する金型の機械強度及び排気性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係るホール勾配を有する通気金属構造を示す分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係るホール勾配を有する通気金属構造を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るホール勾配を有する通気金属構造を示す流れ図である。
図4】本発明の一実施形態に係るレーザビーム走査状態の説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る第1の積層及び第2の積層のレーザビーム走査状態の説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る第3の積層及び第4の積層のレーザビーム走査状態の説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係る第5の積層及び第6の積層のレーザビーム走査状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、図1及び図2を参照する。図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態に係るホール勾配を有する通気金属構造は、第1の重ね層1を含む。第1の重ね層1は、互いに表裏の関係にある第1の面及び第2の面を有する。第1の重ね層1の第1の面には、第2の重ね層2が結合される。第1の重ね層1の第2の面には、第3の重ね層3が結合される。第1の重ね層1上には、複数の第1のホール11が形成される。第2の重ね層2上には、複数の第2のホール21が形成される。第3の重ね層3上には、複数の第3のホール31が形成される。第1の重ね層1の第1のホール11と、第2の重ね層2の第2のホール21と、第3の重ね層3の第3のホール31とは位置が互いに対応して連通し、第2のホール21の直径が第1のホール11の直径より小さく、第3のホール31の直径が第1のホール11の直径より小さいか等しい。第1の重ね層1の第1のホール11の直径は、80μmより大きい。第2の重ね層2の第2のホール21の直径は、50μmより小さい。第3の重ね層3の第3のホール31の直径は、80μmより大きいか50μmより小さい。
【0009】
図3を参照する。図3に示すように、本発明の一実施形態に係るホール勾配を有する通気金属構造の製造方法は、以下のステップ(A)~(C)を含む。
【0010】
ステップ(A):第1の重ね層を形成する。図4及び図5を併せて参照する。図4及び図5に示すように、複数の金属粉末を平らに固めて第1の積層4を形成し、第1の積層4上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路41をレーザビームaにより走査する。第1の積層4の線形経路41には、溶融池幅(width of melt pool)42が付随して形成される。第1の積層4の溶融池幅42を70~150μmに設定し、第1の積層4の2つの線形経路41間に形成されたハッチ距離(hatch distance)43は、線形経路41の溶融池幅42より大きい。第1の積層4の2つの線形経路41のハッチ距離43は、150~300μmに設定される。第1の積層4のハッチ距離43とその溶融池幅42との差値によりギャップ(gap)44が形成される。ギャップ44=ハッチ距離43-溶融池幅42であり、第1の積層4のギャップ44は80μmより大きく、第1の積層4上に複数の金属粉末が平らに固められて第2の積層5が形成される。第2の積層5上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路51をレーザビームaにより走査する。第2の積層5の線形経路51は、第1の積層4の線形経路41との間に夾角が形成される。第2の積層5の線形経路51には、溶融池幅52が付随して形成され、第2の積層5の2つの線形経路51間に形成されたハッチ距離53はその溶融池幅52より大きい。第2の積層5のハッチ距離53と、その溶融池幅52との差値によりギャップ54が形成される。第2の積層5の溶融池幅52は、70~150μmに設定され、そのハッチ距離53は、150~300μmに設定され、第2の積層5のギャップ54は80μmより大きく、第1の積層4及び第2の積層5のギャップ44,54が交差され、格子状アレイ配列の複数の第1のホール11を構成する。第1のホール11の直径は、80μmより大きく、第1の積層4及び第2の積層5のギャップ44,54が交差されてなる夾角は、2ndgap=1stcos(90-θ)であるが、90度であることが最も好ましい。第1の積層4上に積層される第2の積層5の順序は、複数の第1の積層4及び複数の第2の積層5を順次積層して所定の厚さの第1の重ね層1を形成し、複数の第1の積層4及び複数の第2の積層5のギャップ44,54が交差されて構成された第1のホール11の位置が互いに対応し、第1の重ね層1に貫通されて連続した第1のホール11が形成される。
【0011】
ステップ(B):第2の重ね層を形成する。図6を併せて参照する。図6に示すように、複数の金属粉末を第1の積層4の第1の面上に平らに固めて第3の積層6を形成し、第3の積層6上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路61をレーザビームaにより走査する。第3の積層6の線形経路61には、溶融池幅62が付随して形成される。第3の積層6の溶融池幅62を70~150μmに設定し、第3の積層6の2つの線形経路61間に形成されたハッチ距離63は、線形経路61の溶融池幅62より大きい。第3の積層6の2つの線形経路61のハッチ距離63は、120~200μmに設定される。第3の積層6のハッチ距離63とその溶融池幅62との差値によりギャップ64が形成され、第3の積層6のギャップ64が50μmより小さく、複数の金属粉末を第3の積層6上に平らに固めて第4の積層7が形成される。第4の積層7上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路71をレーザビームaにより走査する。第4の積層7の線形経路71は、第3の積層6の線形経路61との間に夾角が形成される。第4の積層7の線形経路71には、溶融池幅72が付随して形成され、第4の積層7の2つの線形経路71間に形成されたハッチ距離73はその溶融池幅72より大きい。第4の積層7のハッチ距離73と、その溶融池幅72との差値によりギャップ74が形成される。第4の積層7の溶融池幅72は、70~150μmに設定され、そのハッチ距離73は、120~200μmに設定され、第4の積層7のギャップ74が50μmより小さく、第3の積層6及び第4の積層7のギャップ64,74が交差されて格子状アレイ配列の複数の第2のホール21を構成する。第2のホール21の直径は、50μmより小さく、第3の積層6及び第4の積層7のギャップ64,74が交差されてなる夾角は、4thgap=3rdcos(90-θ)であるが、90度であることが最も好ましい。第3の積層6上に積層される第4の積層7の順序は、少なくとも1つの第3の積層6及び少なくとも1つの第4の積層7を順次積層させて所定の厚さの第2の重ね層2を形成し、少なくとも1つの第3の積層6及び少なくとも1つの第4の積層7のギャップ64,74が交差されて構成された第2のホール21の位置は互いに対応し、第2の重ね層2に貫通されて連続した第2のホール21が形成され、第2の重ね層2の第2のホール21と第1の重ね層1の第1のホール11とは、互いに位置が対応して連通する。
【0012】
ステップ(C):第3の重ね層を形成する。図7を併せて参照する。図7に示すように、複数の金属粉末を第1の重ね層1の第2の面上に平らに固めて第5の積層8を形成し、第5の積層8上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路81をレーザビームaにより走査する。第5の積層8の線形経路81には、溶融池幅82が付随して形成される。第5の積層8の溶融池幅82を70~150μmに設定し、第5の積層8の2つの線形経路81間に形成されたハッチ距離83は、線形経路81の溶融池幅82より大きい。第5の積層8の2つの線形経路81のハッチ距離83は、150~300μm又は120~200μmに設定される。第5の積層8のハッチ距離83とその溶融池幅82との差値によりギャップ84が形成され、第5の積層8のギャップ84が80μmより大きいか50μmより小さく、複数の金属粉末を第5の積層8上に平らに固めて第6の積層9が形成される。第6の積層9上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路91をレーザビームaにより走査する。第6の積層9の線形経路91は、第5の積層8の線形経路81との間に夾角が形成される。第6の積層9の線形経路91には、溶融池幅92が付随して形成され、第6の積層9の2つの線形経路91間に形成されたハッチ距離93はその溶融池幅92より大きい。第6の積層9のハッチ距離93と、その溶融池幅92との差値によりギャップ94が形成される。第6の積層9の溶融池幅92は、70~150μmに設定され、そのハッチ距離93は、150~300μm又は120~200μmに設定され、第6の積層9のギャップ94が80μmより大きいか50μmより小さく、第5の積層8及び第6の積層9のギャップ84,94が交差され、格子状アレイ配列の複数の第3のホール31を構成する。第3のホール31の直径は、80μmより大きいか50μmより小さく、第5の積層8及び第6の積層9のギャップ84,94が交差されてなる夾角は、6thgap=5thcos(90-θ)であるが、90度であることが最も好ましく、第5の積層8上に積層される第6の積層9の順序は、少なくとも1つの第5の積層8及び少なくとも1つの第6の積層9が順次積層されて所定の厚さの第3の重ね層3が形成され、少なくとも1つの第5の積層8及び少なくとも1つの第6の積層9のギャップ84,94が交差されて構成された第3のホール31の位置は互いに対応し、第3の重ね層3に貫通されて連続した第3のホール31が形成され、第3の重ね層3の第3のホール31と第1の重ね層1の第1のホール11とは、互いに位置が対応して連通する。
【0013】
本発明のホール勾配を有する通気金属構造は、上述した製造方法により簡単に製造することができる。本発明のホール勾配を有する通気金属を金型に応用するとき、ホールの直径が50μmより小さい第2の重ね層2にキャビティが設けられ、きめ細かくて平滑な表面品質を得て、第1の重ね層1のホールの直径を80μmより大きくし、プラスチック製品が射出成形される際に発生する大量の気体を排出させることを助け、空気が溜まってしまうエアトラップの問題を効果的に解決することができる。金型の外側の第3の重ね層3のホール直径は、製品製造の必要性に応じて50μmより小さくするか80μmより大きくし、金型の機械強度及び排気性を両立させることができる。本発明のホール勾配を有する通気金属構造は、金型の通気率を効果的に高め、プラスチック完成品の射出成型の過程中で発生するエアトラップ問題を改善すると同時に、射出成型の製品の表面品質を確保するとともに、金型の機械強度を高め、実際の測定に依ると、本発明が製造する金型の機械強度はロックウェル硬さ(HRC)40~50に達する。
【0014】
本発明のホール勾配を有する通気金属構造の製造方法は、必要なホールの寸法及び形状を形成し、ホールの位置が分布された通気金属を簡便に製造し、そのホールの位置の連続性を確保することができる。そのため金型を使用する際、金型が非常に高い通気性を有するため、詰まることが全く無く、排気が中断されない上、製品の射出成形工程で離型を行うときに良好な圧力開放が得られるため、内外圧力差により離型するときに損壊することを防ぎ、空気が製品に与える影響を減らすか最低レベルまで抑えることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 第1の重ね層
2 第2の重ね層
3 第3の重ね層
4 第1の積層
5 第2の積層
6 第3の積層
7 第4の積層
8 第5の積層
9 第6の積層
11 第1のホール
21 第2のホール
31 第3のホール
41 線形経路
42 溶融池幅
43 ハッチ距離
44 ギャップ
51 線形経路
52 溶融池幅
53 ハッチ距離
54 ギャップ
61 線形経路
62 溶融池幅
63 ハッチ距離
64 ギャップ
71 線形経路
72 溶融池幅
73 ハッチ距離
74 ギャップ
81 線形経路
82 溶融池幅
83 ハッチ距離
84 ギャップ
91 線形経路
92 溶融池幅
93 ハッチ距離
94 ギャップ
a レーザビーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の重ね層を備えた、気孔率勾配を有する通気金属構造であって、
前記第1の重ね層は、互いに表裏の関係にある第1の面及び第2の面を有し、
前記第1の重ね層の前記第1の面には、第2の重ね層が結合され、
前記第1の重ね層の両面を、複数の第1のホールが連通し
前記第2の重ね層の両面を、複数の第2のホールが連通し
前記第1の重ね層の前記第1のホールと、前記第2の重ね層の前記第2のホールとは位置が互いに対応して連通し、前記第2のホールの直径が前記第1のホールの直径より小さく、
前記通気性金属構造はプラスチック製品の金型であり、
前記第2の重ね層にキャビティを設け、
前記第1のホール及び前記第2のホールを介して、前記プラスチック製品の射出成形時に発生する気体を排出可能に構成したことを特徴とする、
気孔率勾配を有する通気金属構造。
【請求項2】
前記第1の重ね層の前記第1のホールの直径は、80μmより大きく、
前記第2の重ね層の前記第2のホールの直径は、50μmより小さいことを特徴とする請求項1に記載の気孔率勾配を有する通気金属構造。
【請求項3】
第3の重ね層をさらに備え、
前記第3の重ね層は、前記第1の重ね層の前記第2の面に結合され、
前記第3の重ね層の両面を、複数の第3のホールが連通し、前記第3の重ね層の前記第3のホールと、前記第1の重ね層の前記第1のホールとは位置が互いに対応して連通し、前記第3のホールの直径が前記第1のホールの直径より小さいか等しいことを特徴とする請求項1に記載の気孔率勾配を有する通気金属構造。
【請求項4】
前記第1の重ね層の前記第1のホールの直径は、80μmより大きく、
前記第3の重ね層の前記第3のホールの直径は、80μmより大きいか50μmより小さいことを特徴とする請求項3に記載の気孔率勾配を有する通気金属構造。
【請求項5】
気孔率勾配を有する通気金属構造の製造方法であって、
複数の金属粉末を平らに固めて第1の積層を形成し、前記第1の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第1の積層の線形経路には、溶融が付随して形成され、前記第1の積層の2つの線形経路間距離は、線形経路の溶融線の幅より大きく、前記第1の積層の2つの線形経路間の距離と溶融線の幅との差によりギャップが形成され、前記第1の積層上に複数の金属粉末が平らに固められて第2の積層が形成され、前記第2の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第2の積層の線形経路は、前記第1の積層の線形経路との間に夾角が形成され、前記第2の積層の線形経路には、溶融が付随して形成され、前記第2の積層の2つの線形経路間距離は溶融線の幅より大きく、前記第2の積層の2つの線形経路間の距離と、溶融線の幅との差によりギャップが形成され、前記第1の積層及び前記第2の積層のギャップが交差され、格子状アレイ配列の複数の第1のホールを構成し、前記第1の積層上に積層される前記第2の積層の順序は、複数の前記第1の積層及び複数の前記第2の積層を順次積層して所定の厚さの第1の重ね層を形成し、複数の前記第1の積層及び複数の前記第2の積層のギャップが交差されて構成された第1のホールの位置が互いに対応し、前記第1の重ね層に貫通されて連続した前記第1のホールが形成される、前記第1の重ね層を形成するステップ(A)と、
前記複数の金属粉末を前記第1の積層の第1の面上に平らに固めて第3の積層を形成し、前記第3の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第3の積層の線形経路には、溶融が付随して形成され、前記第3の積層の2つの線形経路間距離は、線形経路の溶融線の幅より大きく、前記第3の積層の2つの線形経路間の距離と溶融線の幅との差によりギャップが形成され、複数の金属粉末を前記第3の積層上に平らに固めて第4の積層が形成され、前記第4の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第4の積層の線形経路は、前記第3の積層の線形経路との間に夾角が形成され、前記第4の積層の線形経路には、溶融が付随して形成され、前記第4の積層の2つの線形経路間距離は溶融線の幅より大きく、前記第4の積層の2つの線形経路間の距離と、溶融線の幅との差によりギャップが形成され、前記第3の積層及び前記第4の積層のギャップが交差されて格子状アレイ配列の複数の第2のホールを構成し、前記第3の積層上に積層される前記第4の積層の順序は、少なくとも1つの前記第3の積層及び少なくとも1つの前記第4の積層を順次積層させて所定の厚さの第2の重ね層を形成し、少なくとも1つの前記第3の積層及び少なくとも1つの前記第4の積層のギャップが交差されて構成された第2のホールの位置は互いに対応し、前記第2の重ね層に貫通されて連続した前記第2のホールが形成され、前記第2の重ね層の前記第2のホールと前記第1の重ね層の前記第1のホールとは、互いに位置が対応して連通し、前記第2のホールの直径が前記第1のホールの直径より小さい、前記第2の重ね層を形成するステップ(B)と、を含み、
前記通気性金属構造はプラスチック製品の金型であり、
前記第2の重ね層にキャビティを設け、
前記第1のホール及び前記第2のホールを介して、前記プラスチック製品の射出成形時に発生する気体を排出可能に構成したことを特徴とする、
気孔率勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【請求項6】
前記第1の重ね層の前記第1の積層及び前記第2の積層の溶融線の幅を70~150μmに設定し、
前記第1の積層及び前記第2の積層の2つの線形経路間の距離を150~300μmに設定し、
前記第1の積層及び前記第2の積層のギャップを80μmより大きくするとともに、前記第1の積層及び前記第2の積層のギャップが交差されて構成される前記第1のホールの直径は80μmより大きいことを特徴とする請求項5に記載の気孔率勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【請求項7】
前記第2の重ね層の前記第3の積層及び前記第4の積層の溶融線の幅を70~150μmに設定し、
前記第3の積層及び前記第4の積層の2つの線形経路間の距離を120~200μmに設定し、
前記第3の積層及び前記第4の積層のギャップを50μmより小さくするとともに、前記第3の積層及び前記第4の積層のギャップが交差されて構成される前記第2のホールの直径は50μmより小さいことを特徴とする請求項5に記載の気孔率勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【請求項8】
複数の金属粉末を前記第1の重ね層の第2の面上に平らに固めて第5の積層を形成し、前記第5の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第5の積層の線形経路には、溶融が付随して形成され、前記第5の積層の2つの線形経路間距離は、線形経路の溶融線の幅より大きく、前記第5の積層の2つの線形経路間の距離と溶融線の幅との差によりギャップが形成され、前記複数の金属粉末を前記第5の積層上に平らに固めて第6の積層が形成され、前記第6の積層上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路をレーザビームにより走査し、前記第6の積層の線形経路は、前記第5の積層の線形経路との間に夾角が形成され、前記第6の積層の線形経路には、溶融が付随して形成され、前記第6の積層の2つの線形経路間距離は溶融線の幅より大きく、前記第6の積層の2つの線形経路間の距離と、溶融線の幅との差によりギャップが形成され、前記第5の積層及び前記第6の積層のギャップが交差され、格子状アレイ配列の複数の第3のホールを構成し、前記第5の積層上に積層される前記第6の積層の順序は、少なくとも1つの前記第5の積層及び少なくとも1つの前記第6の積層が順次積層されて所定の厚さの第3の重ね層が形成され、少なくとも1つの前記第5の積層及び少なくとも1つの前記第6の積層のギャップが交差されて構成された第3のホールの位置は互いに対応し、前記第3の重ね層に貫通されて連続した前記第3のホールが形成され、前記第3の重ね層の前記第3のホールと前記第1の重ね層の前記第1のホールとは、互いに位置が対応して連通し、前記第3のホールの直径が前記第1のホールの直径より小さいか等しい、前記第3の重ね層を形成するステップ(C)をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の気孔率勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【請求項9】
前記第3の重ね層の前記第5の積層及び前記第6の積層の溶融線の幅を70~150μmに設定し、
前記第5の積層及び前記第6の積層の2つの線形経路間の距離を150~300μm又は120~200μmに設定し、前記第5の積層及び前記第6の積層のギャップを80μmより大きくするか50μmより小さくするとともに、前記第5の積層及び前記第6の積層のギャップが交差されて構成される前記第3のホールの直径は80μmより大きいか50μmより小さいことを特徴とする請求項8に記載の気孔率勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【請求項10】
前記第1の重ね層の前記第1の積層及び前記第2の積層のギャップが交差されてなる夾角は、2ndgap=1stcos(90-θ)であり、
前記第2の重ね層の前記第3の積層及び前記第4の積層のギャップが交差されてなる夾角は、4thgap=3rdcos(90-θ)であり、
前記第3の重ね層の前記第5の積層及び前記第6の積層のギャップが交差されてなる夾角は、6thgap=5thcos(90-θ)であることを特徴とする請求項8に記載の気孔率勾配を有する通気金属構造の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状製品技術の分野に関し、特に、気孔率勾配を有する通気金属構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~5で開示されている通気金属に関する製造方法は、主に金属粉末高温焼結技術を採用し、製造される金属製品が通気機能を有するが、焼結成形のホールの寸法が不均一で形状が不規則である上、ホールのランダム散布が連続性に欠け、各通気孔間が連続して接続されておらず中断された状態下で、その通気性が達成困難であり、その通気性能の有効性が確保できなかったため、排気が好ましくないなどの欠点が依然としてあった。また、従来の通気金属では、排気効果を高めるためにルース方式で焼結した場合、その硬度が大幅に下がってしまい、機械性質が低下し、射出成形製品の表面品質が維持できず、緻密方式で焼結した場合、機械強度及び射出成形製品の表面品質を確保することができたが、製品の成形過程で大量の気体が発生してしまい、空気が溜まってしまうエアトラップの問題を解決することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】台湾特許第I269814号公報
【特許文献2】台湾特許出願公開第201929982A号公報
【特許文献3】中国特許第107868899B号公報
【特許文献4】中国特許第105922514B号公報
【特許文献5】中国特許出願公開第106867016A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の主な目的は、良好な機械強度を得るとともに、製品の成形過程で空気が溜まってしまうエアトラップの問題を解決するとともに、製品の表面品質を高める、気孔率勾配を有する通気金属構造及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、第1の重ね層を備えた、気孔率勾配を有する通気金属構造であって、前記第1の重ね層は、互いに表裏の関係にある第1の面及び第2の面を有し、前記第1の重ね層の前記第1の面には、第2の重ね層が結合され、前記第1の重ね層上には、複数の第1のホールが形成され、前記第2の重ね層上には、複数の第2のホールが形成され、前記第1の重ね層の前記第1のホールと、前記第2の重ね層の前記第2のホールとは位置が互いに対応して連通し、前記第2のホールの直径が前記第1のホールの直径より小さいことを特徴とする、気孔率勾配を有する通気金属構造を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の気孔率勾配を有する通気金属構造及びその製造方法は、以下(1)及び(2)の効果を有する。
(1)ホールの直径が小さめの第2の重ね層にキャビティが設けられ、キャビティ内で製品が射出成形される際、きめ細かくて平滑な表面品質を得て、ホールの直径が大きめの第1の重ね層を利用し、プラスチック製品の成形過程で発生する大量の気体を効果的に排出させ、空気が溜まってしまうエアトラップの問題を効果的に解決することができる。
(2)第1の重ね層の外側に位置する第3の重ね層は、製造の必要性に応じてそのホールの寸法を調整し、製造する金型の機械強度及び排気性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る気孔率勾配を有する通気金属構造を示す分解斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る気孔率勾配を有する通気金属構造を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る気孔率勾配を有する通気金属構造を示す流れ図である。
図4】本発明の一実施形態に係るレーザビーム走査状態の説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る第1の積層及び第2の積層のレーザビーム走査状態の説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る第3の積層及び第4の積層のレーザビーム走査状態の説明図である。
図7】本発明の一実施形態に係る第5の積層及び第6の積層のレーザビーム走査状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、図1及び図2を参照する。図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態に係る気孔率勾配を有する通気金属構造は、第1の重ね層1を含む。第1の重ね層1は、互いに表裏の関係にある第1の面及び第2の面を有する。第1の重ね層1の第1の面には、第2の重ね層2が結合される。第1の重ね層1の第2の面には、第3の重ね層3が結合される。第1の重ね層1上には、複数の第1のホール11が形成される。第2の重ね層2上には、複数の第2のホール21が形成される。第3の重ね層3上には、複数の第3のホール31が形成される。第1の重ね層1の第1のホール11と、第2の重ね層2の第2のホール21と、第3の重ね層3の第3のホール31とは位置が互いに対応して連通し、第2のホール21の直径が第1のホール11の直径より小さく、第3のホール31の直径が第1のホール11の直径より小さいか等しい。第1の重ね層1の第1のホール11の直径は、80μmより大きい。第2の重ね層2の第2のホール21の直径は、50μmより小さい。第3の重ね層3の第3のホール31の直径は、80μmより大きいか50μmより小さい。
【0009】
図3を参照する。図3に示すように、本発明の一実施形態に係る気孔率勾配を有する通気金属構造の製造方法は、以下のステップ(A)~(C)を含む。
【0010】
ステップ(A):第1の重ね層を形成する。図4及び図5を併せて参照する。図4及び図5に示すように、複数の金属粉末を平らに固めて第1の積層4を形成し、第1の積層4上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路41をレーザビームaにより走査する。第1の積層4の線形経路41には、溶融(width of melt pool)42が付随して形成される。第1の積層4の溶融42の幅を70~150μmに設定し、第1の積層4の2つの線形経路41間距離(hatch distance)43は、線形経路41の溶融42の幅より大きい。第1の積層4の2つの線形経路41の2つの線形経路間の距離43は、150~300μmに設定される。第1の積層4の2つの線形経路間の距離43とその溶融42の幅との差値によりギャップ(gap)44が形成される。ギャップ44=2つの線形経路間の距離43-溶融42の幅であり、第1の積層4のギャップ44は80μmより大きく、第1の積層4上に複数の金属粉末が平らに固められて第2の積層5が形成される。第2の積層5上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路51をレーザビームaにより走査する。第2の積層5の線形経路51は、第1の積層4の線形経路41との間に夾角が形成される。第2の積層5の線形経路51には、溶融52が付随して形成され、第2の積層5の2つの線形経路51間距離53はその溶融52の幅より大きい。第2の積層5の2つの線形経路間の距離53と、その溶融52の幅との差値によりギャップ54が形成される。第2の積層5の溶融52の幅は、70~150μmに設定され、その2つの線形経路間の距離53は、150~300μmに設定され、第2の積層5のギャップ54は80μmより大きく、第1の積層4及び第2の積層5のギャップ44,54が交差され、格子状アレイ配列の複数の第1のホール11を構成する。第1のホール11の直径は、80μmより大きく、第1の積層4及び第2の積層5のギャップ44,54が交差されてなる夾角は、2ndgap=1stcos(90-θ)であるが、90度であることが最も好ましい。第1の積層4上に積層される第2の積層5の順序は、複数の第1の積層4及び複数の第2の積層5を順次積層して所定の厚さの第1の重ね層1を形成し、複数の第1の積層4及び複数の第2の積層5のギャップ44,54が交差されて構成された第1のホール11の位置が互いに対応し、第1の重ね層1に貫通されて連続した第1のホール11が形成される。
【0011】
ステップ(B):第2の重ね層を形成する。図6を併せて参照する。図6に示すように、複数の金属粉末を第1の積層4の第1の面上に平らに固めて第3の積層6を形成し、第3の積層6上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路61をレーザビームaにより走査する。第3の積層6の線形経路61には、溶融62が付随して形成される。第3の積層6の溶融62の幅を70~150μmに設定し、第3の積層6の2つの線形経路61間距離63は、線形経路61の溶融62の幅より大きい。第3の積層6の2つの線形経路61の2つの線形経路間の距離63は、120~200μmに設定される。第3の積層6の2つの線形経路間の距離63とその溶融62の幅との差値によりギャップ64が形成され、第3の積層6のギャップ64が50μmより小さく、複数の金属粉末を第3の積層6上に平らに固めて第4の積層7が形成される。第4の積層7上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路71をレーザビームaにより走査する。第4の積層7の線形経路71は、第3の積層6の線形経路61との間に夾角が形成される。第4の積層7の線形経路71には、溶融72が付随して形成され、第4の積層7の2つの線形経路71間距離73はその溶融72の幅より大きい。第4の積層7の2つの線形経路間の距離73と、その溶融72の幅との差値によりギャップ74が形成される。第4の積層7の溶融線の幅72は、70~150μmに設定され、その2つの線形経路間の距離73は、120~200μmに設定され、第4の積層7のギャップ74が50μmより小さく、第3の積層6及び第4の積層7のギャップ64,74が交差されて格子状アレイ配列の複数の第2のホール21を構成する。第2のホール21の直径は、50μmより小さく、第3の積層6及び第4の積層7のギャップ64,74が交差されてなる夾角は、4thgap=3rdcos(90-θ)であるが、90度であることが最も好ましい。第3の積層6上に積層される第4の積層7の順序は、少なくとも1つの第3の積層6及び少なくとも1つの第4の積層7を順次積層させて所定の厚さの第2の重ね層2を形成し、少なくとも1つの第3の積層6及び少なくとも1つの第4の積層7のギャップ64,74が交差されて構成された第2のホール21の位置は互いに対応し、第2の重ね層2に貫通されて連続した第2のホール21が形成され、第2の重ね層2の第2のホール21と第1の重ね層1の第1のホール11とは、互いに位置が対応して連通する。
【0012】
ステップ(C):第3の重ね層を形成する。図7を併せて参照する。図7に示すように、複数の金属粉末を第1の重ね層1の第2の面上に平らに固めて第5の積層8を形成し、第5の積層8上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路81をレーザビームaにより走査する。第5の積層8の線形経路81には、溶融82が付随して形成される。第5の積層8の溶融82の幅を70~150μmに設定し、第5の積層8の2つの線形経路81間距離83は、線形経路81の溶融82の幅より大きい。第5の積層8の2つの線形経路81の2つの線形経路間の距離83は、150~300μm又は120~200μmに設定される。第5の積層8の2つの線形経路間の距離83とその溶融82の幅との差値によりギャップ84が形成され、第5の積層8のギャップ84が80μmより大きいか50μmより小さく、複数の金属粉末を第5の積層8上に平らに固めて第6の積層9が形成される。第6の積層9上に互いに平行に間隔をおいて設けられた複数本の線形経路91をレーザビームaにより走査する。第6の積層9の線形経路91は、第5の積層8の線形経路81との間に夾角が形成される。第6の積層9の線形経路91には、溶融92が付随して形成され、第6の積層9の2つの線形経路91間距離93はその溶融92の幅より大きい。第6の積層9の2つの線形経路間の距離93と、その溶融92の幅との差値によりギャップ94が形成される。第6の積層9の溶融92の幅は、70~150μmに設定され、その2つの線形経路間の距離93は、150~300μm又は120~200μmに設定され、第6の積層9のギャップ94が80μmより大きいか50μmより小さく、第5の積層8及び第6の積層9のギャップ84,94が交差され、格子状アレイ配列の複数の第3のホール31を構成する。第3のホール31の直径は、80μmより大きいか50μmより小さく、第5の積層8及び第6の積層9のギャップ84,94が交差されてなる夾角は、6thgap=5thcos(90-θ)であるが、90度であることが最も好ましく、第5の積層8上に積層される第6の積層9の順序は、少なくとも1つの第5の積層8及び少なくとも1つの第6の積層9が順次積層されて所定の厚さの第3の重ね層3が形成され、少なくとも1つの第5の積層8及び少なくとも1つの第6の積層9のギャップ84,94が交差されて構成された第3のホール31の位置は互いに対応し、第3の重ね層3に貫通されて連続した第3のホール31が形成され、第3の重ね層3の第3のホール31と第1の重ね層1の第1のホール11とは、互いに位置が対応して連通する。
【0013】
本発明の気孔率勾配を有する通気金属構造は、上述した製造方法により簡単に製造することができる。本発明の気孔率勾配を有する通気金属を金型に応用するとき、ホールの直径が50μmより小さい第2の重ね層2にキャビティが設けられ、きめ細かくて平滑な表面品質を得て、第1の重ね層1のホールの直径を80μmより大きくし、プラスチック製品が射出成形される際に発生する大量の気体を排出させることを助け、空気が溜まってしまうエアトラップの問題を効果的に解決することができる。金型の外側の第3の重ね層3のホール直径は、製品製造の必要性に応じて50μmより小さくするか80μmより大きくし、金型の機械強度及び排気性を両立させることができる。本発明の気孔率勾配を有する通気金属構造は、金型の通気率を効果的に高め、プラスチック完成品の射出成型の過程中で発生するエアトラップ問題を改善すると同時に、射出成型の製品の表面品質を確保するとともに、金型の機械強度を高め、実際の測定に依ると、本発明が製造する金型の機械強度はロックウェル硬さ(HRC)40~50に達する。
【0014】
本発明の気孔率勾配を有する通気金属構造の製造方法は、必要なホールの寸法及び形状を形成し、ホールの位置が分布された通気金属を簡便に製造し、そのホールの位置の連続性を確保することができる。そのため金型を使用する際、金型が非常に高い通気性を有するため、詰まることが全く無く、排気が中断されない上、製品の射出成形工程で離型を行うときに良好な圧力開放が得られるため、内外圧力差により離型するときに損壊することを防ぎ、空気が製品に与える影響を減らすか最低レベルまで抑えることができる。
【符号の説明】
【0015】
1 第1の重ね層
2 第2の重ね層
3 第3の重ね層
4 第1の積層
5 第2の積層
6 第3の積層
7 第4の積層
8 第5の積層
9 第6の積層
11 第1のホール
21 第2のホール
31 第3のホール
41 線形経路
42 溶融
43 距離
44 ギャップ
51 線形経路
52 溶融
53 距離
54 ギャップ
61 線形経路
62 溶融
63 距離
64 ギャップ
71 線形経路
72 溶融
73 距離
74 ギャップ
81 線形経路
82 溶融
83 距離
84 ギャップ
91 線形経路
92 溶融
93 距離
94 ギャップ
a レーザビーム