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特開2024-66966点滴スタンド及び点滴スタンドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066966
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】点滴スタンド及び点滴スタンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/14 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
A61M5/14 532
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042683
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2022176364
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511286274
【氏名又は名称】株式会社ニシウラ
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 康裕
(71)【出願人】
【識別番号】518440408
【氏名又は名称】オロル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西浦 伸忠
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066BB02
4C066CC01
4C066DD01
4C066GG10
4C066QQ01
(57)【要約】
【課題】本発明は、点滴スタンドへの取付品の取り付けを適切に行うことができ、また、取付品の取り付け位置について事後において検証や改善を容易に行うことができる点滴スタンド及び点滴スタンドの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】点滴スタンド1の下部支柱21の側面に、取付品であるハンドル40や、輸液ポンプ50、シリンジポンプ60等を取り付けるための取付目印24が刻印により設けられている。そのため、取付目印24をもとにして取り付け位置を特定した上で取り付けできるので、取付品の取り付けを適切に行うことができる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点滴スタンドの支柱部側面に、取付品を取り付けるための取付目印が刻印により設けられていることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項2】
前記刻印による前記取付目印は、レーザ加工によるものであることを特徴とする請求項1に記載の点滴スタンド。
【請求項3】
前記取付目印は、該点滴スタンド底部からの高さを示す数値であることを特徴とする請求項1に記載の点滴スタンド。
【請求項4】
前記支柱部は、ステンレス製の下部支柱と、上部支柱とからなり、
前記下部支柱の表面には発色性が付与されていることを特徴とする請求項1に記載の点滴スタンド。
【請求項5】
ステンレス製の下部支柱と、上部支柱とからなる支柱部を備える点滴スタンドの製造方法であって、
前記下部支柱の表面に発色性を付与する発色工程と、
前記発色性が付与された前記下部支柱の表面に、取付品を取り付けるための取付目印をレーザ加工により付与する刻印工程と、
からなることを特徴とする点滴スタンドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴スタンド及び点滴スタンドの製造方法に関し、より詳しくは、点滴スタンドへ取り付けられる取付品を適切に取り付けることのできる点滴スタンド及び点滴スタンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設等で使用される点滴スタンド(「イルリガードル台」とも呼ばれる)は、支柱部分にシリンジポンプや輸液ポンプ、酸素ボンベ等が取り付けられる。
【0003】
例えば、シリンジポンプは、シリンジ(注射器)に充填された薬剤・溶液を持続的に送液する装置であるが、点滴スタンドへ取り付ける位置は、基本的には患者と同じ高さに取り付ける必要がある。
【0004】
これは万が一シリンジポンプからシリンジが外れてしまった時に、その落差により患者に薬液が急速に注入される現象(サイフォニング現象)が生じ、事故につながるおそれもあるからである。
一方、看護師によっては操作のし易さを優先し、適切ではない位置に取り付けてしまうこともある。
【0005】
また、輸液ポンプは、設定した時間あたりの流量で持続的に輸液や薬剤投与をコントロールすることができる装置であるが、点滴スタンドへ取り付ける位置は、高過ぎると転倒のおそれがあり、また、非特許文献1にあるように患者の心臓の高さに対して±50cm以内の範囲で使用するよう決められているものもある。
一方、看護師によっては点滴スタンドの下部支柱ではなく、上部支柱の側(高さ調整ノブの上側)に取り付けてしまうこともある。
また、経験の浅い看護師であれば、シリンジポンプと輸液ポンプのどちらを上にするのか咄嗟には判断できないことも生じうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3102285号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】株式会社ジェイ・エム・エス、[online]、JMS輸液ポンプ OT-808、[令和4年10月28日検索]、インターネット〈chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/530360/530360_22000BZX01356000_B_01_02.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように点滴スタンドに取り付けられるシリンジポンプや輸液ポンプ、酸素ボンベ等の取付品は、適切な位置に取り付ける必要があるにも関わらず、発明者が調べたところ、現場においては、看護師任せであり、また取付位置を指示する場合にも「下の方に」というような曖昧で感覚的な指示によって取り付けられていた。
したがって、取付品の取り付け位置が適切でないことによる点滴スタンドの転倒も生じていた。
【0009】
このような点滴スタンドの転倒を防止するために、特許文献1には点滴スタンドへの取付品である医療用装置側の電源コードに、床面に対する高さを特定できる表示手段を付与したものが開示されている。
【0010】
しかしながら、点滴スタンドに取り付けられる取付品は、複数であることも多く複数の電源コードが混在することになり目盛がわかり難い。また、電源コード自体もそれ程太いわけではないので、目盛がわかり難い。また、現場においては床面には様々なものも存在し、点滴スタンドそのものの脚部もあることから、電源コードがきれいに垂れ下がるわけではない。また、点滴スタンドへ取り付ける際には、医療用装置側と電源コードの床面側の目盛の両方を確認する必要があり、取り付け作業が難しい。したがって、特許文献1のように取付品側に表示手段を付与することは現実的ではない。
【0011】
また、点滴スタンドの転倒が生じた場合に、取付品の取り付け位置がどこであったのかが正確にわからないと、事後においての検証や改善を行うことも難しいという問題もある。
【0012】
そこで、本発明は、点滴スタンドへの取付品の取り付けを適切に行うことができ、また、取付品の取り付け位置について事後において検証や改善を容易に行うことができる点滴スタンド及び点滴スタンドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の点滴スタンドは、点滴スタンドの支柱部側面に、取付品を取り付けるための取付目印が刻印により設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明の点滴スタンドによれば、刻印による取付目印が支柱部側面に設けられているため、この取付目印を基にして取付品であるシリンジポンプや輸液ポンプ、酸素ボンベ等を取り付けることができるので、取り付け位置を特定した上で取り付けを行うことができる。したがって、取付品の取り付けを適切に行うことができる。
【0015】
また、取付目印があるため、取付品の取り付け位置も正確にわかるので、仮に点滴スタンドの転倒が生じた場合であっても、事後において取付目印を基にした検証や改善を行うこともできる。
【0016】
なお、一般的な点滴スタンドでは、支柱部が、下部支柱と上部支柱とからなり、この上部支柱が下部支柱の頂部から下部支柱内に挿入される共に、上部支柱が出し入れできるようになっており、高さ調整部で上部支柱の位置が固定できるようになっている。
【0017】
このような点滴スタンドにおいて、本発明における取付目印は、下部支柱にのみ設けておく構成を採用することができる。何故ならば、上部支柱にまで取付目印を設けておくと、上部支柱側の目印を基に上部支柱へ取付品を取り付けてしまうことも想定される。しかしながら、上部支柱側へ取付品を取り付けると重心が高くなり過ぎて不安定となり、点滴スタンドの転倒のおそれも高まってしまう。そのため、上部支柱側への取り付けが行われないようにするために、上部支柱には取付目印を設けない構成とすることもできる。
【0018】
また、本発明において、この取付目印は刻印によって設けられている。単に取付目印ということであれば、例えばシールのような目印の貼付けによって設けることも考えられる。しかしながら、点滴スタンドの取付品は、取付後にも高さを調整できるように、一般的にクランプ式の固定具を介して支柱部に固定されている。また、点滴スタンドには、患者が移動する際に点滴スタンドも簡単に移動できるようにするために、ハンドルが支柱部に取り付けられているものも多い。そして、このハンドルも高さを調整できるようクランプ式の固定具を介して支柱部に固定されている。したがって、取付品の高さを調整する際の固定具の移動によってシールが簡単に剥がれてしまうことになる。また、例えば、フェルトペンのような筆記具を用いて取付目印を支柱部側面に記載しておくことも考えられる。しかしながら、点滴スタンドはアルコール消毒されることも多いので、簡単に拭き取られてしまうことになる。したがって、このような理由から取付目印は、刻印によって設ける必要がある。
【0019】
また、本発明の点滴スタンドは、前記刻印による前記取付目印が、レーザ加工によるものであることが好ましい。
支柱に刻印する方法としては、手打やプレス機による打刻や、削る方法等があるが、点滴スタンドは、主に医療施設で用いられるため、刻印の際に支柱部への負荷を最小限に抑えるために、非接触であるレーザ加工が適している。
【0020】
また、本発明の点滴スタンドは、前記取付目印が、該点滴スタンド底部からの高さを示す数値であることが好ましい。
取付目印としては、例えば、ローマ字や記号等も考えられるが、高さを示す数値としておくことにより、点滴スタンドの転倒が生じた場合等の事後における検証や改善の際に、数値情報の方がより一層活用しやすくなる。また、多忙で緊張感のある現場においては、取り付け位置を指示する際等、数値で行うことで指示が明確になり、理解も容易となる。また、患者が使用するベッドの周囲で高さの目印として活用することができる。
【0021】
また、本発明の点滴スタンドは、前記支柱部が、ステンレス製の下部支柱と、上部支柱とからなり、前記下部支柱の表面には発色性が付与されていることが好ましい。このようにステンレス製の下部支柱に発色性を付与することで、例えば、下部支柱がアルミ製の点滴スタンドと簡単に見分けることができる。また、色調の異なる点滴スタンドを準備することで、色調の違いに基づいた点滴スタンドの使い分けを行うことができる。この使い分けとしては、患者の転倒リスクによる使い分けのようなものがある。
【0022】
また、上記目的を達成するため、本発明の点滴スタンドの製造方法は、ステンレス製の下部支柱と、上部支柱とからなる支柱部を備える点滴スタンドの製造方法であって、前記下部支柱の表面に発色性を付与する発色工程と、前記発色性が付与された前記下部支柱の表面に、取付品を取り付けるための取付目印をレーザ加工により付与する刻印工程と、からなることを特徴とする。
【0023】
このような製造方法によれば、刻印による取付目印が支柱部側面に設けられているため、この取付目印を基にして取付品を取り付けることができる。また、単に取付目印を設けただけではこの取付目印が見難いこともあるが、このような製造方法によれば、非常に取付目印が見やすくなることから、より確実に取付品の取り付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】点滴スタンドの基本的な構成を示す全体図である。
図2】実施形態1の点滴スタンドの要部を示した撮像からなる図である。
図3】実施形態2に係る点滴スタンドの全体図である。
図4】実施形態2に係る点滴スタンドの下部支柱部の撮像図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0026】
まず、点滴スタンド1の基本的な構成について説明する。図1は点滴スタンド1の全体図である。点滴スタンド1は、スタンド部10、支柱部20、フック部30とで構成されている。
【0027】
スタンド部10は、点滴スタンド1を移動したり、立てておくためのものであり、放射状に伸びた5つの脚部11で構成されている。そして、この脚部11の先端にはそれぞれキャスター12が取り付けられた構成となっている。なお、脚部11は必ずしも5つということではなく、例えば3つの脚部11のようなものもある。また、脚部11は図1のような放射状に伸びたものだけではなく、例えばH形状のような形状の4つの脚部11からなるようなもの等、様々なものもある。
【0028】
支柱部20は、伸縮可能なものであり、スタンド部10に固定された下部支柱21と、下部支柱21内に挿入されており、その先端から出し入れ可能となって伸びる上部支柱22と、上部支柱22の高さを維持固定しておく高さ調整部23とからなる。なお、下部支柱21の材質としてはステンレス製のものが多い。また、上部支柱22の材質は、同様にステンレス製のものや、軽量化等の目的でアルミ製のもの等がある。また、支柱部20は伸縮可能なものではなく、一本の支柱からなるものでも構わない。
【0029】
フック部30は、輸液バッグや点滴を吊るしておくためのものであり、上部支柱22の先端に固定され、左右に伸びた金属製の棒の先端がフック形状となっている。なお、フック部30は、図1とは異なり、上部支柱22の先端から放射状に複数伸びるような形状のものや、切欠き形状のフック等、様々ものもある。
点滴スタンド1の基本的な構造はこのようなものとなっているが、上記のように細部の構造や材質等については様々なものが存在している。
【0030】
[実施形態1]
本発明はこのような点滴スタンド1に対して適用したものであり、次に、その具体的な実施形態について図を用いて説明する。なお、実施形態の説明においては、点滴スタンド1と同じ構成については同じ符号を用いて説明する。図2は本実施形態の点滴スタンド1の要部を示した撮像からなる図である。
【0031】
点滴スタンド1は、支柱部20に様々な取付品が取り付けられる。本実施形態においては、下部支柱21に、上からハンドル40、輸液ポンプ50、シリンジポンプ60が取り付けられている。
【0032】
ハンドル40は、患者が点滴スタンド1を持って移動する際や、看護師が点滴スタンド1を移動させる際に把持するものである。ハンドル40はクランプ式のハンドル固定部41を介して、下部支柱21の所定の位置に固定される。このハンドル固定部41は、グリップノブ42を回すことで着脱を行う。なお、ハンドル固定部41は、クランプ式の他に雄ネジのグリップノブ42の先端を直接下部支柱21の側面に押し当てて固定するような方式でも構わない。
【0033】
輸液ポンプ50は、設定した時間あたりの流量で持続的に輸液や薬剤投与をコントロールすることができる医療用装置である。輸液ポンプ50はクランプ式の輸液ポンプ固定部51を介して、下部支柱21の所定の位置に固定される。この輸液ポンプ固定部51は、グリップノブ52を回すことで着脱を行う。
【0034】
シリンジポンプ60は、シリンジに充填された薬剤・溶液を持続的に送液する医療用装置である。シリンジポンプ60もクランプ式のシリンジポンプ固定部61を介して、下部支柱21の所定の位置に固定される。このシリンジポンプ固定部61も、グリップノブ62を回すことで着脱を行う。
【0035】
ハンドル40や、輸液ポンプ50、シリンジポンプ60のような取付品は、使用される患者にあわせてそれぞれの固定部を介して適切な位置に取り付ける必要がある。そして、本実施形態においては、取付品を支柱部20に取り付ける際の目印として、下部支柱21の側面には取付目印24が刻印により設けられている。
【0036】
本実施形態におけるこの取付目印24は、(図2の拡大部分において符号24で示す「55」、「70」、「75」のような)数値からなり、この数値は点滴スタンド1の底部(床面)からの高さになっており、5cm刻みでの数値となっている。
【0037】
また、この刻印により形成されている取付目印24は、具体的には、レーザ加工により設けられている。したがって、手打やプレス機による打刻や、削る方法による刻印に比べ、下部支柱21への刻印による負荷を抑えることができ、医療現場における使用時の安全面において適している。
【0038】
このように、本実施形態の点滴スタンド1は、下部支柱21の側面に、取付品であるハンドル40や、輸液ポンプ50、シリンジポンプ60を取り付けるための取付目印24がレーザ加工による刻印により設けられている。したがって、取付品を取り付ける際には、この取付目印24をみながら確認して取り付けることができるので、適切な位置へ取り付けることができる。
【0039】
また、輸液ポンプ50やシリンジポンプ60は、かなりの重量であることから、スタンド部10の脚部11と重なる位置に取り付けることにより点滴スタンド1の転倒を抑えることができる。点滴スタンド1は、下部支柱21の側面に取付目印24が設けられていることから、例えば、取付目印24と何れかの脚部11との位置が同じになるようにしておき、医療用機器である取付品を取り付ける際には、取付目印24と重なるように取り付けるようにすることで、医療用機器と脚部11とが重なるように取り付けることができる。取付目印24は、このような利用も可能であり、点滴スタンド1の転倒をより一層防ぐことができる。
【0040】
また、取付目印24があることで、取付品をどこに取り付けていたのかもわかるので、仮に点滴スタンドの転倒が生じた場合であっても、事後において取付目印を基にした検証や改善、例えば、輸液ポンプ50は「75」よりも上に取付けてはいけない、というようなルール作りを行うこともできる。
【0041】
なお、本実施形態においては、図2に示すように取付目印24の数値は、横向きとなっているが、縦向きで設けることも可能である。また、取付目印24は、底部からの高さを示す数値としていたが、数値以外の記号や文字、数値やこれらとの組み合わせとすることも可能である。しかしながら、事後の検証や改善に利用しやすいように、本実施形態のような数値が好ましい。また、必ずしも取付目印24は、数値のみ、或いは記号や文字のみということではなく、例えば数値と共に連続する目盛を一緒に刻印により設ける構成でも構わない。
【0042】
また、本実施形態においては、取付目印24は、下部支柱21にのみ設けられているが、上部支柱22に設けておくこともできる。しかしながら、上部支柱22へ取付目印24を設けておくと、上部支柱22に重量のある医療用機器のような取付品を取り付けてしまう可能性もあり、重心が高くなり点滴スタンド1が不安定となることも考えられる。したがって、上部支柱22へ重量のある取付品を取り付けないようにするために、本実施形態のように、取付目印24は下部支柱21にのみ設けておくことが好ましい。
【0043】
また、本実施形態においては、取付品として、ハンドル40、医療用機器である輸液ポンプ50、シリンジポンプ60を示したが、この他の取付品として酸素ボンベや血液濾過用装置等もあり、また、簡易なテーブルやモニターを設置するような固定台のようなもの、或いは、車椅子やベッドに点滴スタンド1を連結する連結具のようなものでも構わない。
【0044】
[実施形態2]
次に、図3を用いて実施形態2の点滴スタンド1A、1Bを説明する。本実施形態の点滴スタンド1A、1Bにおいては、実施形態1の点滴スタンド1と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略し、構成が異なる同一名の部分については異なる符号を用いる等して適宜説明を行う。
【0045】
本実施形態の点滴スタンド1A、1Bが実施形態1の点滴スタンド1と異なる点は、支柱部20を形成するステンレス製の下部支柱210に発色性が付与されている点である。具体的には、円筒状のステンレス鋼材の表面に極薄の光透過性酸化被膜が付与されており、この光透過性酸化被膜による光の干渉作用を利用して特定の色調に発色させる。なお、このステンレス鋼へ発色性を付与するより具体的な方法としては、例えば、特許6337383号に記載されているような既知の方法を用いることができる。
【0046】
このように下部支柱210に発色性を付与することで、点滴スタンド1Aの下部支柱210は、グリーン(G)の色調に発色し、点滴スタンド1Bの下部支柱210は、レッド(R)の色調に発色するものとなっている。なお、図1と同様、図3の点滴スタンド1A、1Bの下部支柱210の側面には、実施形態1や図2で説明した取付目印24は図示されていないが、実際には実施形態1と同様に図2で示す取付目印24Aが同様に刻印されている。また、この実際の取付目印24Aについて図4の撮像図にて示す。
【0047】
ここで、点滴スタンド1A、1Bの下部支柱210に異なる色調の発色性を付与したことについて説明する。点滴スタンド1A、1Bに異なる色調の発色性を付与することで、実施形態1の発色性を付与されていない点滴スタンド1とあわせて、異なる3つの点滴スタンド1、1A、1Bをそろえることができ、所謂点滴スタンドセットを形成できる。
【0048】
このような点滴スタンドセット(異なる点滴スタンド1、1A、1B)を院内において準備することで、患者のリスクによって使い分けることができる。つまり、トリアージと呼ばれるような患者の優先度付けを行うことが可能となる。患者のリスクとしては、具体的には、転倒するリスクが考えられる。
【0049】
病院によっては、看護師が患者の転倒リスクを把握できるようにするために、患者に目印を直接付けたりしている。例えば、過去に1度転倒したことのある「リスク中」の患者、過去に複数回転倒したことのある「リスク大」の患者がわかるような目印を衣服に付けたりしている。
【0050】
しかしながら、患者に目印を直接付けてもあまり目立ち難く見落とすこともある。また大きな目印を患者に付けてしまうと露骨に患者が嫌がることもある。また、患者は院内において、同じフロアーを移動するだけでなく、異なるフロアーへも移動することになるが、異なるフロアーにいる病院内のスタッフにとっては、患者に付けられた目印は気付きにくいものである。
【0051】
そこで、本実施形態のように異なる色調の発色性が付与された点滴スタンド1A、1Bや、点滴スタンド1を準備しておくことで、患者のリスクに応じて点滴スタンド1、1A、1Bを使い分けることができ、その色調によって転倒リスクを周囲の人が把握することが可能となる。とくに点滴スタンドの下部支柱210での発色なので、非常に目立ちやすく、院内の看護師を含めた院内スタッフにわかりやすいことから、異なるフロアーであっても周囲にいるスタッフが気付きやすい。また、上部支柱220のように、下部支柱210側に挿入されてしまうこともない。
【0052】
例えば、今まで転倒していない患者は転倒リスクが低いことから点滴スタンド1を使用させ、1度転倒したことのあるような患者は転倒リスクがあることからグリーン(G)の色調に発色する点滴スタンド1Aを使用させ、複数回転倒したことのある患者は転倒リスクが大であることからレッド(R)の色調に発色する点滴スタンド1Bを使用させる。
【0053】
また、病院によっては、必ずしも下部支柱2がステンレス製の点滴スタンドだけでなく、アルミ製の点滴スタンドが混在していることもある。アルミ製の点滴スタンドは、ステンレス製の点滴スタンドに比べると強度が低いことから、図2に示す輸液ポンプ50やシリンジポンプ60のような重量のあるものは取り付けない方がよい。また、転倒リスクの高い人に対しても転倒した場合を考えると強度のある点滴スタンドを使用させた方がよい。一方で、ステンレス製の点滴スタンドとアルミ製の点滴スタンドとを見分けることは、一般の人にとっては必ずしも容易なことではない。
【0054】
そこで、本実施形態のようなステンレス製の下部支柱210に発色性を付与した点滴スタンド1Aを用いることで、下部支柱210が発色している点滴スタンドはステンレス製であることを一目で見分けることができる。したがって、アルミ製とステンレス製の点滴スタンドを取り違えることによる事故を防ぐこともできる。
【0055】
また、下部支柱210に色を付与するだけであれば表面の塗装やラッピングも考えられるが、病院内で使用される点滴スタンドは、感染防止対策としてアルコールによる拭き取りも頻繁に行われ、また輸液ポンプ50やシリンジポンプ60等もクランプで取り付けられたりすることから、塗装やラッピングは適さない。しかしながら、ステンレス鋼への発色性を付与する構成であれば、拭き取りやクランプの摩擦等にも強いことから非常に適している。
【0056】
また、点滴スタンド1A、1Bの下部支柱210の側面には図示していない取付目印24Aがレーザ加工による刻印により設けられているが、この取付目印24Aとステンレス鋼の発色とは相性がよく、点滴スタンド1A、1Bの取付目印24Aは、点滴スタンド1の取付目印24に比べ、非常に見やすくなるという効果もある。したがって、取付目印24Aの効果をより一層高めることができる。
【0057】
この点、図4には表面に取付目印24Aが付与されるとともに、発色性が付与された下部支柱210の撮像図を示している。なお、図4に示す下部支柱210は、ブルー(B)の色調に発色したものである。
【0058】
そして、この下部支柱210は、最初に発色性を付与する発色工程を行い、次に発色性が付与された下部支柱210の表面に取付目印24AAをレーザ加工により付与する刻印工程を行って製造されている。このように発色性を付与した後、レーザ加工を行うため、レーザ加工によりもともとのステンレス表面が露出することになる。
【0059】
製造工程にはおいては、先にレーザ加工による刻印工程を行った後に、発色工程を行うことも可能ではあるが、本実施形態のような工程により製造された実施形態2の点滴スタンドは、図4の下部支柱210からもわかるように、実施形態1の点滴スタンド1の取付目印24に比べ、非常に見やすくなっている。したがって、取付品を取り付ける際には、視認性のよいこの取付目印24Aをみながら確認して取り付けることができるので、より確実に取り付けることができる。
【0060】
なお、実施形態2では、ステンレス製の下部支柱210に発色性を付与したものを説明したが、上部支柱220もステンレス製であれば上部支柱220へ発色性を付与する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1、1A、1B:点滴スタンド
10:スタンド部
11:脚部
12:キャスター
20:支柱部
21、210:下部支柱
22、220:上部支柱
23:高さ調整部
24、24A:取付目印
30:フック部
40:ハンドル
50:輸液ポンプ
60:シリンジポンプ
図1
図2
図3
図4