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特開2024-66973二酸化炭素の吸収液、及び二酸化炭素の分離回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066973
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】二酸化炭素の吸収液、及び二酸化炭素の分離回収方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20240509BHJP
   B01D 53/52 20060101ALI20240509BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20240509BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240509BHJP
   C01B 32/50 20170101ALI20240509BHJP
   C07D 211/58 20060101ALI20240509BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20240509BHJP
   C07D 401/12 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/52 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C01B32/50
C07D211/58
C07D405/12
C07D401/12
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091519
(22)【出願日】2023-06-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2022175922
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023000393
(32)【優先日】2023-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】早川 純平
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 隆広
(72)【発明者】
【氏名】高井 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】土屋 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】町田 幸祐
【テーマコード(参考)】
4C063
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB07
4C063CC10
4C063CC43
4C063CC71
4C063DD07
4C063DD08
4C063DD10
4C063EE10
4D002AA03
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC03
4D002AC05
4D002BA02
4D002CA01
4D002CA06
4D002CA07
4D002DA31
4D002DA32
4D002EA08
4D002GA01
4D002GB08
4D002GB11
4D020AA03
4D020AA04
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BB04
4D020BC01
4D020CB01
4D020CB08
4D020CB25
4D020DA03
4D020DB06
4D020DB07
4G146JA02
4G146JC08
4G146JC28
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の高い吸収能、低温における二酸化炭素の高い放出能、並びに、吸収、及び放出サイクルを繰り返しても劣化の少ない二酸化炭素吸収放出液、二酸化炭素の分離回収方法、及びアミン化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】本開示に係る吸収液は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための吸収液であって、式(1)で表されるアミン化合物、及び液状媒体を含み、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいシクロアルキル、及び置換基を有してもよいピペリジニル基のいずれか一つであり、Rは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、又は1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基であり、Xは、直接結合、又は酸素原子であり、Aは、n価の有機残基であり、nは、1~6の整数を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための吸収液であって、
前記吸収液は、式(1)で表されるアミン化合物、及び液状媒体を含み、
式(1)
【化1】
ここで、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、及び置換基を有してもよいピペリジニル基のいずれか一つであり、
は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、又は1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基であり、
Xは、直接結合、又は酸素原子であり、
Aは、n価の有機残基であり、
nは、1~6の整数を表し、
n=1かつRが1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基である場合において、前記1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基は第2の有機残基と結合する
吸収液。
【請求項2】
前記ピペリジニル基は、式(2)で表され、
式(2)
【化2】
ここで、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基である
請求項1に記載の吸収液。
【請求項3】
前記式(2)中、R~Rはメチル基であり、Rは水素原子である
請求項1に記載の吸収液。
【請求項4】
前記有機残基、及び前記第2の有機残基は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい直鎖、又は分岐の脂肪族炭化水素残基、置換基を有してもよい直鎖、又は分岐のアルコキシ残基、置換基を有してもよい直鎖、又は分岐のポリオキシアルキル残基、置換基を有してもよい(メタ)アクリロイル残基、置換基を有してもよいアルキルエステル残基、置換基を有してもよい芳香族エステル残基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素残基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素残基、置換基を有してもよい芳香族複素環残基、及び置換基を有してもよいアミノ残基のいずれか一つである
請求項1に記載の吸収液。
【請求項5】
当該残基の隣接する炭素原子と炭素原子との間に酸素原子を有する
請求項4に記載の吸収液。
【請求項6】
前記式(1)中、Rは水素原子である
請求項1に記載の吸収液。
【請求項7】
前記液状媒体は、全ハンセン溶解度パラメータ(δT)が17MPa1/2以上である
請求項1に記載の吸収液。
【請求項8】
前記式(1)で表されるアミン化合物を少なくとも5質量%以上含む
請求項1に記載の吸収液。
【請求項9】
さらに、前記ガスが硫化水素を含み、該硫化水素を吸収する
請求項1に記載の吸収液。
【請求項10】
以下の工程A、及びBを含む、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための方法であって、
工程A:請求項1~9のいずれか一項に記載の吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収液を得る工程、
工程B:工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、吸収液から二酸化炭素を脱離して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程、である
方法。
【請求項11】
前記工程Bにおける加熱温度が、50℃以上160℃以下である
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと単官能、又は多官能エポキシ化合物とを反応させる、式(3)で表されるアミン化合物の製造方法。
式(3)
【化3】
ここで、R11は、水素原子、又はメチル基であり、
12は、水素原子、又は炭素数1~8のアルキル基であり、
13~R16は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基であり、
Xは、直接結合、又は酸素原子であり、
Aは、n価の有機残基であり、
nは、1~6の整数を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を高効率に分離回収するための吸収液、該吸収液を用いた二酸化炭素を分離回収する方法、及びアミン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会活動に付随する二酸化炭素やメタンといった温室効果ガス排出量の急激な増加が地球温暖化の原因の1つに挙げられている。特に、二酸化炭素は温室効果ガスの中でも、最も主要なものであり、2016年に発効されたパリ協定に従い、二酸化炭素排出量削減に向けての対策が急務となっている。
【0003】
二酸化炭素排出量削減に向けた取組みとして、二酸化炭素の分離回収が注目されており、二酸化炭素吸収液の開発が盛んにおこなわれている。そのため、近年では、発電所や製鉄所から排出される二酸化炭素含有ガスを対象として、アミン化合物の水溶液を主成分とする化学吸収法による二酸化炭素分離回収技術の開発が精力的に推進されている。
【0004】
上記アミン化合物としては、一級アルカノールアミンであるモノエタノールアミン(MEA)、ジグリコールアミン(DGA)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、二級アルカノールアミンである2-(メチルアミノ)エタノール(MAE)、2-(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2-(イソプロピルアミノ)エタノール(IPAE)、3-(イソプロピルアミノ)プロパノール(IPAP)、ジエタノールアミン(DEA)、ジイソプロパノールアミン(DIPA)、三級アルカノールアミンであるN-メチルジエタノールアミン(MDEA)、2-(ジメチルアミノ)エタノール(DMAE)、トリエタノールアミン(TEA)、三級アルキルアミンであるN,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ジアミノヘキサン(TMDAH)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン(TMDAB)、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル(BDER)などが知られており、特にMEAが広く用いられている。
【0005】
より少ないエネルギーでの二酸化炭素の分離回収のための従来技術として、例えば、特許文献1には、アミノ基周辺にアルキル基などの立体障害を有する二級アルカノールアミンの水溶液と大気圧下の燃焼排ガスとを接触させ二酸化炭素を吸収させる方法による燃焼排ガス中の二酸化炭素の除去方法が記載されている。
【0006】
硫化水素(HS)、二酸化炭素(CO)からなる群の少なくとも1つの酸性化合物を含むガス状流出物を脱酸する方法における二酸化炭素吸収剤に含まれるアミン化合物の1つとして、ヒンダードアミン骨格からなる4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンや特定の溶剤に関する記載がなされている。これら文献では、二酸化炭素などの酸性化合物を吸収した後、相分離状態を形成するが、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンや特定の溶剤に関する、具体的な実施例が示されておらず、二酸化炭素の吸収能や放出効率に関する記載はない(特許文献2、及び特許文献3)。
【0007】
また、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと水、及びスルホランからなる二酸化炭素吸収液に関する報告されている。いずれも、二酸化炭素と反応した吸収液の二酸化炭素放出温度については120℃の実施例のみであり、二酸化炭素放出温度を100℃以下に低減した際の放出効率や繰り返し耐久性についての記載がなされていない(特許文献4、及び特許文献5)
【0008】
一方、1つの分子中に複数のアミン構造を導入した化合物を用いた二酸化炭素分離材料としては、トリアジン誘導体を用い、複数のアミン化合物をトリアジン骨格にエポキシ化合物と化学結合させて導入した化合物が、二酸化炭素と他の気体を分離するためのガス分離膜として報告されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5-301023号公報
【特許文献2】特表2-2009-529420号公報
【特許文献3】米国特開2006-104877号公報
【特許文献4】特開2012-223766号公報
【特許文献5】特開2012-516761号公報
【特許文献6】特開2008-247749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、二酸化炭素の高い吸収能、低温における二酸化炭素の高い放出能、並びに、吸収、及び放出サイクルを繰り返しても劣化の少ない二酸化炭素吸収放出液と二酸化炭素の分離回収方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、以下の二酸化炭素の吸収液、二酸化炭素の分離回収方法、及びアミン化合物の製造方法を提供する。
[1] 二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための吸収液であって、
前記吸収液は、式(1)で表さるアミン化合物、及び液状媒体を含み、
式(1)
【化1】
ここで、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、及び置換基を有してもよいピペリジニル基のいずれか一つであり、
は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、又は1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基であり、
Xは、直接結合、又は酸素原子であり、
Aは、n価の有機残基であり、
nは、1~6の整数を表し、
n=1かつRが1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基である場合において、前記1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基は第2の有機残基と結合する吸収液。
[2] 前記ピペリジニル基は、式(2)で表され、
式(2)
【化2】
ここで、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基である[1]に記載の吸収液。
[3] 前式(2)中、R~Rはメチル基であり、Rは水素原子である[1]又は[2]に記載の吸収液。
[4] 前記有機残基、及び前記第2の有機残基は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい直鎖、又は分岐の脂肪族炭化水素残基、置換基を有してもよい直鎖、又は分岐のアルコキシ残基、置換基を有してもよい直鎖、又は分岐のポリオキシアルキル残基、置換基を有してもよい(メタ)アクリロイル残基、置換基を有してもよいアルキルエステル残基、置換基を有してもよい芳香族エステル残基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素残基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素残基、置換基を有してもよい芳香族複素環残基、及び置換基を有してもよいアミノ残基のいずれか一つである[1]~[3]のいずれかに記載の吸収液。
[5] 当該残基の隣接する炭素原子と炭素原子との間に酸素原子を有する[4]に記載の吸収液。
[6] 前記式(1)中、Rは水素原子である[1]~[5]のいずれかに記載の吸収液。
[7] 前記液状媒体は、全ハンセン溶解度パラメータ(δT)が17MPa1/2以上である[1]~[6]のいずれかに記載の吸収液。
[8] 前記式(1)で表されるアミン化合物を少なくとも5質量%以上含む[1]~[7]のいずれかに記載の吸収液。
[9] さらに、前記ガスが硫化水素を含み、該硫化水素を吸収する[1]~[8]のいずれかに記載の吸収液。
[10] 以下の工程A、及びBを含む、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための方法であって、
工程A:[1]~[9]のいずれか一項に記載の吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収液を得る工程、
工程B:工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、吸収液から二酸化炭素を脱離して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程、である
方法。
[11] 前記工程Bにおける加熱温度が、50℃以上160℃以下である[10]に記載の方法。
[12] 4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと単官能、又は多官能エポキシ化合物とを反応させる、式(3)で表されるアミン化合物の製造方法。
式(3)
【化3】
ここで、R11は、水素原子、又はメチル基であり、
12は、水素原子、又は炭素数1~8のアルキル基であり、
13~R16は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基であり、
Xは、直接結合、又は酸素原子であり、
Aは、n価の有機残基であり、
nは、1~6の整数を表す。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、該吸収液が高い二酸化炭素回収量、及び吸収速度を有すること、低いエネルギーでの二酸化炭素の放出能を有すること、及び、その二酸化炭素の回収と放出の繰り返しによる材料の劣化が抑制されることで、システム全体として低いエネルギーでの二酸化炭素分離回収が可能となる。さらに、吸収効率が向上することによって、よりコンパクトな二酸化炭素分離回収設備の設計が可能となり、初期コストが低減される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
[二酸化炭素を分離回収するための吸収液]
本実施の形態の吸収液は、式(3)で表されるアミン化合物と、液状媒体とを含む。
【0014】
本実施の形態の式(3)で表されるアミン化合物について以下に示す。
式(3)
【化3】
式(3)中、R11は、水素原子、又はメチル基であり、R12は、水素原子、又は炭素数1~8のアルキル基であり、R13、R14、R15、及び、R16は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基であり、Xは、直接結合、又は酸素原子であり、Aは、n価の有機残基であり、nは、1~6の整数を表す。
【0015】
11は、水素原子、及び、メチル基を表し、水素原子であることが好ましい。
【0016】
12は、水素原子、又は炭素数1~8のアルキル基を表す。炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、セカンダリーブチル基、イソブチル基、ターシャリブチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、セカンダリ-ペンチル基、ターシャリペンチル基、シクロペンチル基、1-ヘキシル基、2-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、メチルシクロヘキシル基、オクチル基、2ーエチルヘキシル基などが挙げられる。
【0017】
13、R14、R15、及び、R16は水素原子、又はメチル基を表し、メチル基であることが好ましい。
【0018】
Xは、直接結合、又は酸素原子を表す。
【0019】
Aは、n価の有機残基を表す。n価の有機残基としては、炭素原子を1つ以上することが好ましく、n価の有機残基の好ましい具体例としては、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のアルコキシ残基、n価の置換基を有しても良い(メタ)アクリロイル残基、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のポリオキシアルキル残基、n価の置換基を有しても良いアルキルエステル残基、n価の置換基を有しても良い芳香族エステル残基、n価の置換基を有しても良い脂環式炭化水素残基、n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基、n価の置換基を有しても良い芳香族複素環残基、又は、n価の置換基を有しても良いアミノ残基であり、それらの残基の隣接する炭素原子と炭素原子との間に酸素原子を有していてもよい。また、nは1~6の整数を表す。
【0020】
それらの残基の隣接する炭素原子と炭素原子との間に酸素原子を有していてもよいとは、脂肪族炭化水素残基、アルコキシ残基などの残基中の任意の炭素原子と炭素原子との間にエーテル結合性の酸素原子を有していてもよいという意である。
【0021】
n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基の直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0022】
具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、といった炭素数1~18のアルキルが挙げられる。
【0023】
また、アルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-オクテニル基、1-デセニル基、1-オクタデセニル基といった炭素数2~18のアルケニルが挙げられる。
【0024】
また、アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-オクチニル基、1-デシニル基、1-オクタデシニル基といった炭素数2~18のアルキニルが挙げられる。
【0025】
n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基における、置換基としては、直鎖、又は分岐のアルキル基、アルコキシ基、ポリオキシアルキル基、フェニル基、4-ニトロフェニル基、2-メトキシフェニル基、水酸基、ハロゲン原子、エポキシ基などが挙げられ、上記置換基はさらに置換基を有していても良く、置換基としては上記の置換基が挙がられる。
【0026】
置換基としての具体的なアルキル基は、前述の、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基のアルキル基と同義である。
【0027】
置換基としての具体的なアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
【0028】
置換基としての具体的なポリオキシアルキル基としては、繰り返し数が4~16のエチレンオキシド基、繰り返し数が4~16の直鎖、又は分岐のプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0029】
置換基としての具体的なハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、要素原子が挙げられる。
【0030】
n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のアルコキシ残基のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0031】
n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のポリオキシアルキル基としては、繰り返し数が4~16のエチレンオキシド基、繰り返し数が4~16の直鎖、又は分岐のプロピレンオキシド基があげられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基における、置換基と同様であり、アルキル基、フェニル基、水酸基などが好ましい。
【0032】
n価の置換基を有しても良い(メタ)アクリロイル残基としては、(メタ)アクリロイル基としては、メタクリル基、アクリロイル基が挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0033】
n価の置換基を有しても良いアルキルエステル残基のアルキルエステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピリルエステル基、ブチルエステル基、ペンチルエステル基、ヘプチルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ヘキサデシルエステル基、シクロヘキシルエステル基、1,2-シクロヘキサンジエステル基、1,2-シクロヘキセンジエステル基などが挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0034】
n価の置換基を有しても良い芳香族エステル残基の芳香族エステル基としては、フェニルエステル基、4-tert-ブチルフェニルエステル基などが挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0035】
n価の置換基を有しても良い脂環式炭化水素残基の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基が挙げられ、具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクタデシル基、2-インデノ基といった炭素数3~18のシクロアルキルが挙げられる。また、脂環式炭化水素基としては、複数のシクロアルキル基が、アルキレン基などで連結された基も含む。n価の置換基を有しても良い脂環式炭化水素残基における、置換基については、前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基における、置換基と同様であり、好ましくは分岐のアルキレン基であり、特に好ましくは、tert-ブチレン基が挙げられる
【0036】
n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基の芳香族炭化水素としては縮合数1~4の芳香族炭化水素が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、9,9-ジフェニルフルオレン、ビス(3-メチルフェニル)フルオレン、ビナフチルなどが挙げられる。
【0037】
n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基における、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基における、置換基と同様であり、好ましくは、アルキル基、アルキレン基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは、メチル基、メチレン基、tert-ブチレン基、臭素原子が挙げられる。
【0038】
n価の置換基を有しても良い芳香族複素環残基の芳香族複素環としては、縮合数1~4の芳香族複素環であり、例えば、ピロール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン、インドール、キノリン、カルバゾール、フタルイミドなどが挙げられる。置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0039】
n価の置換基を有しても良いアミノ残基のアミノ基としては、アニリン基が挙げられる。また置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基における、置換基と同様であり、好ましくはアルキル基があり、より好ましくはメチル基が挙げられる。
【0040】
Aは、好ましくは、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基、又は、n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基であり、さらに好ましくは、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐の脂肪族炭化水素残基であり、特に好ましくは、n価の直鎖炭化水素残基である。
【0041】
本実施の形態における式(3)で表されるアミン化合物の代表例の化合物(1)~(78)を表1-1に示すが、本実施の形態は、この代表例に限定されるものではない。
【0042】
【表1-1】
【0043】
【表1-1】
【0044】
【表1-1】
【0045】
【表1-1】
【0046】
【表1-1】
【0047】
また、本実施の形態に用いる式(3)で表されるアミノ化合物は、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと単官能もしくは多官能エポキシ化合物(A)とを反応させて得ることができる。なお、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを使用した場合には、この式(3)中、R11は水素原子となり、R13、R14、R15、及びR16は、メチル基となる。
【0048】
具体的には、本実施の形態の式(3)で表されるアミン化合物は、4-アミノ-2.2.6.6-テトラメチルピペリジンと単官能もしくは多官能エポキシ化合物(A)との反応を適当な溶媒中で実施することで得ることができる。溶媒としては、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。なお反応は、無水条件下で実施することが目的物である式(3)で表されるアミン化合物を得る上で好ましい。
【0049】
単官能もしくは多官能エポキシ化合物(A)のエポキシ当量に対して、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの1級アミノ基当量比で、0.95~1.1当量の範囲で反応させることで得ることができる。
【0050】
本実施の形態で用いる単官能もしくは多官能エポキシ化合物(A)について説明する。単官能エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1個有する化合物を示し、多官能エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物である。
【0051】
単官能エポキシ化合物は、単官能脂肪族エポキシ化合物、及び単官能芳香族エポキシ化合物が挙げられる。
【0052】
単官能脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族アルコールのグリシジルエーテル、アルキルカルボン酸のグリシジルエステルなどが挙げられ、その具体例は、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、炭素12、及び13が混合したアルキルグリシジルエーテル、アルコールのグリシジルエーテル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステルなどがあげられる。
【0053】
上記単官能脂肪族エポキシ化合物としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いることもできる。市販品の場合、例えば、デナコールEX-121、デナコールEX-171、デナコールEX-192、(ナガセケムテックス社製);
エポライトM-1230、(共栄社化学社製)アデカグリシロールED-502、アデカグリシロールED-502S、アデカグリシロールED-509E、アデカグリシロールED-509S、アデカグリシロールED-529、(ADEKA社製)などがあげられる。
【0054】
上記単官能芳香族エポキシ化合物として、フェノール、クレゾール、ブチルフェノールなどのフェノール化合物、又はそのアルキレンオキサイド付加物のモノグリシジルエーテル;
レゾルシノールやハイドロキノン、カテコールなどの2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のモノグリシジルエーテル化物;
フェニルジメタノールやフェニルジエタノール、フェニルジブタノールなどのアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のモノグリシジルエーテル化物;
フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のモノグリシジルエステル;
安息香酸のグリシジルエステル、スチレンオキサイド、又はジビニルベンゼンのモノエポキシ化物などが挙げられる。
【0055】
上記単官能芳香族エポキシ化合物としては、市販品を用いてもよく、市販品のものを用いることができる。市販品の場合、例えば、デナコールEX-141、デナコールEX-146、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)などがあげられる。
【0056】
多官能エポキシ化合物は、エポキシ樹脂組成物に一般的に使用されているものでよく、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであればその種類は特に制限されない。
【0057】
多官能エポキシ化合物は、多官能脂肪族エポキシ化合物、及び多官能芳香族エポキシ化合物が挙げられる。
【0058】
多官能脂肪族エポキシ化合物としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0059】
多官能脂肪族エポキシ化合物としては、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、アルケニレングリコールジグリシジルエーテルなどの分子内にエポキシ基を2つ有する二官能脂肪族エポキシ化合物;
トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの三官能以上のアルコールのポリグリシジルエーテル[トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール(トリ、又はテトラ)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトール(トリ、テトラ、ペンタ、又はヘキサ)グリシジルエーテルなど]などの分子内にエポキシ基を3つ以上有する多官能脂肪族エポキシ化合物エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、又はトリメチロールプロパンジグリシジルエーテルとトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの混合物(例えばデナコールEX-321L:ナガセケミテックス社製)のようなトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0060】
多官能脂肪族エポキシ化合物は、市販品を用いることができ、例えば、“EP-4088S”(以上、(株)ADEKA製)、“EHPE3150”(以上、(株)ダイセル製)、“EX-211L”、“EX-212L”(以上、いずれもナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0061】
多官能芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどの少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル化物;
エポキシノボラック樹脂;
レゾルシノールやハイドロキノン、カテコールなどの2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物;
フェニルジメタノールやフェニルジエタノール、フェニルジブタノールなどのアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物;
フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル;
ジビニルベンゼンのジエポキシ化物などが挙げられる。
【0062】
多官能芳香族エポキシ化合物としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0063】
多官能芳香族エポキシ化合物は、市販品を用いることができ、例えば、“デナコールEX-201”、“デナコールEX-711”、及び“デナコールEX-721”(以上、いずれもナガセケムテックス(株)製);
“オグソールEG-280”、及び“オグソールCG-400”(以上、いずれも大阪ガスケミカル(株)製);
“EXA-80CRP”、及び“HP4032D”(以上、いずれもDIC(株)製);
“jER828”、及び“jER828EL”(以上、いずれも三菱ケミカル(株)製);
“アデカレジンEP-4100”、“アデカレジンEP-4100G”、“アデカレジンEP-4100E”、“アデカレジンEP-4100L”、“アデカレジンEP-4100TX”、“アデカレジンEP-4000”、“アデカレジンEP-4005”、“アデカレジンEP-4901”、“アデカレジンEP-4901E”(以上、いずれも(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0064】
本実施の形態の、式(3)で表されるアミン化合物を得るために用いる単官能エポキシ化合物、及び多官能エポキシ化合物は単独で用いてもよく、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
具体的な単官能もしくは多官能エポキシ化合物(A-1)~(A-74)の構造を表2-1に示す。
【0066】
【表2-1】
【0067】
【表2-1】
【0068】
【表2-1】
【0069】
【表2-1】
【0070】
【表2-1】
【0071】
次に、本実施の形態の吸収液で用いる、液状媒体について説明する。
【0072】
(液状媒体)
本実施の形態に用いる液状媒体は、式(3)で表されるアミン化合物を混和することが可能であれば特に限定しない。上記の式(3)で示されるアミン化合物は、二酸化炭素を吸収し、加熱によって、二酸化炭素を放出することができるが、二酸化炭素の分離には高エネルギーを要する。そこで、式(3)で表されるアミン化合物と二酸化炭素の分離効率を向上させるために、液状媒体を用いることによって、二酸化炭素の放出温度を低下させることが可能であり、二酸化炭素の放出効率が高くなることを見出した。
【0073】
具体的な液状媒体としては、水、有機溶媒、及びイオン性液体、又は、これらの混合溶媒を使用することができる。本実施の形態に係るアミン化合物は、上記の式(3)で示されるように、水酸基及びアルキル基の両方を有するため、水だけでなく、有機溶媒に対しても好適に溶解させることができる。
【0074】
本実施の形態のイオン性液体としては、カチオンとアニオンからなり、100℃、大気圧で液体の塩である。本実施の形態に係るイオン液体は、特に室温(25℃)で液体であると好ましい。即ち、本実施の形態に係るイオン液体の融点は、100℃以下であれば特に限定されないが、50℃未満であると好ましく、25℃未満であるとより好ましく、10℃未満であると特に好ましい。また、本実施の形態に係るイオン液体の融点の下限は、特に限定されない。なお、イオン液体は融点以下でも過冷却となり液体状態をとることが多く、そのような液体状態を保持できれば融点が高くとも限定されない。また、イオン液体の融点はアミン類の混合により低下することがあり、二酸化炭素吸収液として利用できれば限定されない。
【0075】
本実施の形態に係るイオン液体を構成するアニオンは、リン酸、ホスホン酸、リン酸エステル、又はホスホン酸エステルのアニオンなどが挙げられる。
【0076】
本実施の形態に係るイオン液体において、カチオンは特に限定されないが、イミダゾリウム類、アンモニウム類、又はホスホニウム類であると好ましい。
【0077】
本実施の形態の液状媒体として用いることができる水、及び有機溶媒としては、特に制限はないが、水、及び有機溶媒の具体例を、全ハンセン溶解度パラメータ(δT)と共に表3に記載する。
【0078】
(全ハンセン溶解度パラメータ(δT))
ハンセンパラメータは、全ヒルデブランド値を、分散力(δD)、極性成分(δP)、及び水素結合(δH)成分の3つの部分に分割する。ヒルデブランド値は、気化、ファンデルワールス力、及び溶解度の間の関係を用いて計算される。全ハンセン溶解度パラメータ(δT)は、分散(δD)、極性(δP)、及び水素結合(δH)力に分解され、式(1)を用いて計算される。
δT=δD+δP+δH(1)
式中、
・δDは、分散成分であり、
・δPは、極性成分であり、
・δHは、水素結合成分である。
【0079】
なお、本明細書において、「ハンセン溶解度パラメータ」の計算は、コンピュータソフトウェア「Hansen Solubility Parameters inPractice(HSPiP)」を用いて計算した値を意味する。なお、計算に使用した「HSPiP」のバージョンは「5.4.02」である。
【0080】
また液状媒体を2種以上用いる場合は、それぞれの溶媒の質量分率を重みとした加重平均を用いる。
【0081】
表3は、異なる溶媒の分散成分、極性成分、及び水素結合成分、並びに異なる溶媒に対する全ハンセン溶解度パラメータ(δT)計算結果を示す。
【表3】
【0082】
【表3】
【0083】
本実施の形態の液状媒体としては、全ハンセン溶解度パラメータ(δT)が17MPa1/2~35MPa1/2の有機溶媒、もしくはイオン性液体であることが好ましく、さらに好ましくは、20MPa1/2~35MPa1/2の有機溶媒、もしくはイオン性液体であることが好ましく、特に好ましくは、23MPa1/2~35MPa1/2の有機溶媒、もしくはイオン性液体である。
【0084】
本実施の形態の吸収液において、吸収液中の式(3)で表されるアミン化合物と液状媒体との質量比は好ましくは、5:95~95:5の範囲であり、さらに好ましくは、5:95~50:50の範囲であり、特に好ましくは、10:90~25:75の範囲である。吸収液中の、式(3)で表されるアミン化合物の含有率は、5質量%以上が好ましく、さらに好ましくは10重量%以上であり、特に好ましくは、25質量%以上であり、75質量%以下が吸収液の吸収効率の観点で好ましい。
【0085】
本実施の形態の吸収液に用いる液状媒体は、式(3)で表されるアミン化合物と二酸化炭素との反応物を溶解させるものであっても良いし、溶解させないものであっても良い。
【0086】
本実施の形態の二酸化炭素吸収液には、一般的に知られた、例えばモノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、アミノメチルプロパノール、イソプロピルアミノエタノール、1,5-ジアザビシクロ-5-ノネン、ピペラジン、トリエチルアミン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1、8-ジアザビシクロ-7-ウンデセン、1、4-ジアザビシクロオクタン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、ジイソプロピルアミン、4-アミノピリジン、ジエチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、tert-オクチルアミン、ジオクチルアミン、ジヘキシルアミン、2-エチル-1-ヘキシルアミン、2-フルオロフェニルアミン、3-フルオロフェニルアミン、3,5-ジフルオロベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン(MBZA)、3-フルオローN-メチルベンジルアミン、4-フルオローN-メチルベンジルアミン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、N-メチルイミダゾール、1-トリフルオロアセチルイミダゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ジイソプロピルアミン,2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどを添加しても良い。また、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンについては、式(3)で表されるアミン化合物の製造時の原料の未反応物として、吸収液に混在する場合がある。
【0087】
本実施の形態の吸収液は、式(3)で表されるアミン化合物、及び液状媒体以外の成分を、必要に応じて、本実施の形態の効果を阻害しない範囲で含んでいてもよい。その他の成分としては、本実施の形態の吸収液の化学的、又は物理的安定性を確保するための安定剤(酸化防止剤などの副反応抑制剤)、本実施の形態の吸収液を用いる装置や設備の材質の劣化を防ぐための防止剤(腐食防止剤など)が挙げられる。本実施の形態の吸収液におけるこれらその他の成分の含有量は本実施の形態の効果を阻害しない範囲であれば特に制限的なものではないが、質量濃度で5%以下が好ましい。
【0088】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄などが挙げられる。
【0089】
上記腐食防止剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ホスホノプロパン-2-ジカルボン酸、ホスホノスクシン酸、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、マレイン酸系重合体(例えばマレイン酸、及びアミレンの共重合体、又はマレイン酸、アクリル酸、及びスチレンの三元共重合体)などが挙げられる。
【0090】
二酸化炭素を含むガスとしては、例えば、石炭、重油、天然ガスなどを燃料とする火力発電所、製造所のボイラー、セメント工場のキルン、コークスで酸化鉄を還元する製鐵高炉、銑鉄中の炭素を燃焼して製鋼する製鉄転炉、石炭ガス化複合発電設備などからの排ガス、採掘時天然ガス、改質ガスなどが挙げられ、該ガス中の二酸化炭素濃度は、体積濃度で通常5~50%程度、特に10~40%程度であればよい。かかる二酸化炭素濃度範囲では、本実施の形態の作用効果が好適に発揮される。なお、二酸化炭素を含むガスには、二酸化炭素以外に窒素、水蒸気、一酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、二酸化硫黄、二酸化窒素、メタン、水素などのガスが含まれていてもよい。
【0091】
本実施の形態の吸収液である、式(3)で表されるアミン化合物、及び液状媒体は、二酸化炭素以外に、硫化水素の吸収にも優れている。
【0092】
[吸収液による二酸化炭素の分離回収方法]
本実施の形態の吸収液による二酸化炭素の分離回収方法は、二酸化炭素を含むガス中の二酸化炭素を分離回収するための方法であって、本実施の形態の吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収液を得る工程A、及び、工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、吸収液から二酸化炭素を脱離して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程Bを含む。
【0093】
(工程A)
工程Aでは、吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させることで、該二酸化炭素を含むガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させて分離する。
【0094】
工程Aにおける、吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させる方法は、特に限定されるものではない。例えば、吸収液中に二酸化炭素を含むガスをバブリングさせる方法、二酸化炭素を含むガス中に吸収液を霧状に降らす方法(噴霧乃至スプレー方式)、磁製や金属網製の充填材が入った吸収塔内で高圧の二酸化炭素を含むガスと吸収液とを向流接触させる方法などが挙げられる。
【0095】
工程Aにおける温度は、25~40℃とすることができる。この範囲であれば、吸収液が二酸化炭素回収量、及び二酸化炭素吸収速度に優れる。工程Aにおける温度は、好ましくは25~35℃である。
【0096】
工程Aにおける圧力は、通常1.0bar以上、好ましくは1.0~3.5barとすることができる。また、より高い圧力で行うことで更に高い二酸化炭素の吸収性能が得られる。
【0097】
(工程B)
工程Bでは、工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、吸収液から二酸化炭素を脱離して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する。
【0098】
工程Bの二酸化炭素を脱離して放散させる工程における温度は、50~160℃とすることができる。この範囲であれば、吸収液が二酸化炭素の放散速度に優れる。工程Bにおける加熱温度は、好ましくは50~80℃であり、より好ましくは50~60℃である。
【0099】
工程Bの二酸化炭素を脱離して放散させる工程における圧力は、通常3.5bar以下、好ましくは1.0~3.5barとすることができる。また、より低い圧力で行うことで更に高い二酸化炭素の放散性能が得られる。
【0100】
二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、二酸化炭素を脱離して放散させ、回収する方法は、特に限定されるものではない。例えば、蒸留と同じく、吸収液を加熱して釜で泡立てて脱離する方法、棚段塔、スプレー塔、磁製、金属網製などの充填材の入った放散塔内で液界面を広げて加熱する方法などが挙げられる。これらの方法により、純粋な、あるいは非常に高濃度の二酸化炭素を回収することができる。
【0101】
工程Bにおいて二酸化炭素を放散した後の吸収液は、再び工程Aに戻し、循環再利用することができる。該循環過程において、工程Bで加えられた熱は、二酸化炭素を吸収した吸収液との熱交換により、吸収液の昇温に利用される。該熱交換により二酸化炭素分離回収工程全体のエネルギーの低減が計られる。
【0102】
本実施の形態の吸収液による二酸化炭素の分離回収方法により分離回収された二酸化炭素は、通常95~100%の体積濃度を持ち、純粋で、あるいは非常に高濃度であり得る。該分離回収された二酸化炭素は、現在その技術が開発されつつある地中や海底などへの隔離貯蔵(CCS)や石油増進回収法(Enhanced Oil Recovery、EOR)に供することができる。その他、該分離回収された二酸化炭素の利用用途は、特に限定されるものではない。例えば、化成品などの合成原料、或いは食品冷凍用の冷剤などが挙げられる。
【0103】
<実施の形態2>
[二酸化炭素を分離回収するための吸収液]
本実施の形態の吸収液は、式(1)で表されるアミン化合物と、液状媒体とを含む。なお、実施の形態1と同様の内容については、繰り返しの説明を避けるため、本実施の形態においては割愛する場合がある。
【0104】
本実施の形態の式(1)で表されるアミン化合物について以下に示す。
式(1)
【化1】
【0105】
式(1)中、R、及びRは、各々独立して、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよい複素環基、又は置換基を有してもよいシクロアルキル基を表し、Xは、直接結合、又は酸素原子であり、Aは、n価の有機残基であり、nは、1~6の整数を表す。
【0106】
特に、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、及び置換基を有してもよいピペリジニル基のいずれか一つであり、Rは、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、又は1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基であり、Xは、直接結合、又は酸素原子であり、Aは、n価の有機残基であり、nは、1~6の整数を表し、n=1かつRが1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基である場合において、1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基は第2の有機残基と結合することが好ましい。Rは、置換基を有しても良いアルキル基、又は置換基を有してもよいピペリジニル基であることが好ましい。
【0107】
当該ピペリジニル基の一様態は、式(2)で表される。
式(2)
【化2】
ここで、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基である
【0108】
、及びRにおける、「置換基を有してもよいアルキル基」、「置換基を有してもよい複素環基」、「置換基を有してもよいシクロアルキル基」における「置換基」としては、ハロゲン原子、直鎖、又は分岐のアルキル基、アルキレン基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、水酸基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、スルファモイル基、N-置換スルファモイル基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、イミノ基、窒素原子、酸素原子、フェニル基、スルファニル基などが挙げられ、上記置換基はさらに置換基を有していても良く、置換基としては上記の置換基が挙げられる。
【0109】
置換基を有してもよいアルキル基の「アルキル基」は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-オクチル基、ステアリル基、2-エチルへキシル基などの直鎖、又は分岐アルキル基が挙げられる。「置換基を有するアルキル基」は、例えば、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル基、2-エトキシエチル基、2-ブトキシエチル基、2-ニトロプロピル基、ベンジル基、4-メチルベンジル基、4-tert-プチルベンジル基、4-メトキシベンジル基、4-ニトロベンジル基、2,4-ジクロロベンジル基、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、ペンチルスルファニル基、ヘキシルスルファニル基、オクチルスルファニル基、デシルスルファニル基、ドデシルスルファニル基、オクタデシルスルファニル基、メトキシエチルスルファニル基、アミノエチルスルファニル基、ベンジルアミノエチルスルファニル基、メチルカルボニルアミノエチルスルファニル基、フェニルカルボニルアミノエチルスルファニル基、スルファニルメチル基、2-スルファニルエチル基、1-スルファニルエチル基、アミノメチル基、アミノエチル基、N-メチルアミノエチル基、N-エチルアミノエチル基、N-(アミノエチル)アミノエチル基、N-(ヒドロキシエチル)アミノエチル基、N-プロピルアミノエチル基、N-イソプロピルアミノエチル基、N-ブチルアミノエチル基、アミノプロピル基、N-メチルアミノプロピル基、N-エチルアミノプロピル基、N-プロピルアミノプロピル基、N-(アミノプロピル)アミノプロピル基、N-イソプロピルアミノプロピル基、N-ブチルアミノプロピル基、アミノブチル基、アミノペンチル基、アミノヘキシル基、アミノオクチル基、アミノデシル基、アミノドデシル基、アミノオクタデシル基、アミノエトキシメチル基、アミノエチルアミノエチル基、アミノエチルアミノメチルフェニル基、アミノエチルアミノカルボニルメチル基、アミノエチルアミノカルボニルフェニル基、ヒドロキシメチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、4-ヒドロキシブチル基、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルプロピル基、2-(1-ピペラジニル)エチル基などが挙げられる。置換基を有するアルキル基としては、アミノエチル基、N-メチルアミノエチル基、N-エチルアミノエチル基、N-(アミノエチル)アミノエチル基、N-プロピルアミノエチル基、N-イソプロピルアミノエチル基、N-ブチルアミノエチル基、アミノプロピル基、N-メチルアミノプロピル基、N-エチルアミノプロピル基、N-プロピルアミノプロピル基、N-(アミノプロピル)アミノプロピル基、N-イソプロピルアミノプロピル基、N-ブチルアミノプロピル基、アミノブチル基、2-(1-ピペラジニル)エチル基が好ましく、アミノエチル基、N-メチルアミノエチル基、N-エチルアミノエチル基、N-(アミノエチル)アミノエチル基がより好ましい。
【0110】
置換基を有してもよい複素環基は、例えば、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ピローリル基、3-ピローリル基、2-フリル基、3-フリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-イミダゾリル基、2-オキサゾリル基、2-チアゾリル基、ピペリジノ基、4-ピペリジル基、モルホリノ基、2-モルホリニル基、N-インドリル基、2-インドリル基、2-ベンゾフリル基、2-ベンゾチエニル基、2-キノリノ基、N-カルバゾリル基などが挙げられる。
【0111】
置換基を有してもよいシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、メチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロへキシル基、エチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基などが挙げられる。
【0112】
Xは、直接結合、又は酸素原子を表す。
【0113】
Aは、n価の有機残基を表す。n価の有機残基としては、炭素原子を1つ以上することが好ましく、n価の有機残基の好ましい具体例としては、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のアルコキシ残基、n価の置換基を有しても良い(メタ)アクリロイル残基、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のポリオキシアルキル残基、n価の置換基を有しても良いアルキルエステル残基、n価の置換基を有しても良い芳香族エステル残基、n価の置換基を有しても良い脂環式炭化水素残基、n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基、n価の置換基を有しても良い芳香族複素環残基、又は、n価の置換基を有しても良いアミノ残基であり、それらの残基の隣接する炭素原子と炭素原子との間に酸素原子を有していてもよい。また、nは1~6の整数を表し、特に、1~2が好ましい。
【0114】
n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基の直鎖もしくは分岐炭化水素としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0115】
具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、といった炭素数1~18のアルキルが挙げられる。
【0116】
また、アルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-オクテニル基、1-デセニル基、1-オクタデセニル基といった炭素数2~18のアルケニルが挙げられる。
【0117】
また、アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-オクチニル基、1-デシニル基、1-オクタデシニル基といった炭素数2~18のアルキニルが挙げられる。
【0118】
n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基としては、直鎖、又は分岐のアルキル基、アルコキシ基、ポリオキシアルキル基、フェニル基、4-ニトロフェニル基、2-メトキシフェニル基、水酸基、ハロゲン原子、エポキシ基などが挙げられ、上記置換基はさらに置換基を有していても良く、置換基としては上記の置換基が挙がられる。
【0119】
置換基としての具体的なアルキル基は、前述の、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基のアルキル基と同義である。
【0120】
置換基としての具体的なアルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。
【0121】
置換基としての具体的なポリオキシアルキル基としては、繰り返し数が4~16のエチレンオキシド基、繰り返し数が4~16の直鎖、又は分岐のプロピレンオキシド基が挙げられる。
【0122】
置換基としての具体的なハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、要素原子が挙げられる。
【0123】
n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のアルコキシ残基のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0124】
n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐のポリオキシアルキル基としては、繰り返し数が4~16のエチレンオキシド基、繰り返し数が4~16の直鎖、又は分岐のプロピレンオキシド基があげられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様であり、アルキル基、フェニル基、水酸基などが好ましい。
【0125】
n価の置換基を有しても良い(メタ)アクリロイル残基としては、(メタ)アクリロイル基としては、メタクリル基、アクリロイル基が挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0126】
n価の置換基を有しても良いアルキルエステル残基のアルキルエステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピリルエステル基、ブチルエステル基、ペンチルエステル基、ヘプチルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ヘキサデシルエステル基、シクロヘキシルエステル基、1,2-シクロヘキサンジエステル基、1,2-シクロヘキセンジエステル基などが挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0127】
n価の置換基を有しても良い芳香族エステル残基の芳香族エステル基としては、フェニルエステル基、4-tert-ブチルフェニルエステル基などが挙げられ、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0128】
n価の置換基を有しても良い脂環式炭化水素残基の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基が挙げられ、具体的にはシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロオクタデシル基、2-インデノ基といった炭素数3~18のシクロアルキルが挙げられる。また、脂環式炭化水素基としては、複数のシクロアルキル基が、アルキレン基などで連結された基も含む。n価の置換基を有しても良い脂環式炭化水素残基における、置換基については、前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様であり、好ましくは分岐のアルキレン基であり、特に好ましくは、tert-ブチレン基が挙げられる
【0129】
n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基の芳香族炭化水素としては縮合数1~4の芳香族炭化水素が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、9,9-ジフェニルフルオレン、ビス(3-メチルフェニル)フルオレン、ビナフチルなどが挙げられる。
【0130】
n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基における、置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様であり、好ましくは、アルキル基、アルキレン基、ハロゲン原子であり、特に好ましくは、メチル基、メチレン基、tert-ブチレン基、臭素原子が挙げられる。
【0131】
n価の置換基を有しても良い芳香族複素環残基の芳香族複素環としては、縮合数1~4の芳香族複素環であり、例えば、ピロール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン、インドール、キノリン、カルバゾール、フタルイミドなどが挙げられる。置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様である。
【0132】
n価の置換基を有しても良いアミノ残基のアミノ基としては、アニリン基が挙げられる。また置換基については前述のn価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基における、置換基と同様であり、好ましくはアルキル基があり、より好ましくはメチル基が挙げられる。
【0133】
Aは、好ましくは、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基、又は、n価の置換基を有しても良い芳香族炭化水素残基であり、さらに好ましくは、n価の置換基を有しても良い直鎖もしくは分岐炭化水素残基であり、特に好ましくは、n価の直鎖炭化水素残基である。
【0134】
本実施の形態における式(1)で表されるアミン化合物の代表例の化合物(AM-79)~(AM-122)を表1-2に示すが、本実施の形態は、この代表例に限定されるものではない。
【表1-2】
【0135】
【表1-2】
【0136】
【表1-2】
【0137】
また、本実施の形態に用いる式(1)で表されるアミン化合物は、アミノ化合物(C)と単官能もしくは多官能エポキシ化合物(B)とを反応させて得ることができる。
【0138】
具体的には、本実施の形態の式(1)で表されるアミン化合物は、アミノ化合物(C)と単官能もしくは多官能エポキシ化合物(B)との反応を適当な溶媒中で実施することで得ることができる。溶媒としては、アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などが挙げられる。なお反応は、無水条件下で実施することが目的物である式(1)で表されるアミン化合物を得る上で好ましい。
【0139】
単官能もしくは多官能エポキシ化合物(B)のエポキシ当量に対して、アミノ化合物(C)の1級アミノ基当量比で、0.95~1.1当量の範囲で反応させることで得ることができる。
【0140】
本実施の形態で用いる単官能もしくは多官能エポキシ化合物(B)について説明する。単官能エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1個有する化合物を示し、多官能エポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物である。
【0141】
単官能エポキシ化合物は、単官能脂肪族エポキシ化合物、及び単官能芳香族エポキシ化合物が挙げられる。
【0142】
単官能脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族アルコールのグリシジルエーテル、アルキルカルボン酸のグリシジルエステルなどが挙げられ、その具体例は、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、炭素12、及び13が混合したアルキルグリシジルエーテル、アルコールのグリシジルエーテル、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステルなどがあげられる。
【0143】
上記単官能脂肪族エポキシ化合物としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いることもできる。市販品の場合、例えば、デナコールEX-121、デナコールEX-171、デナコールEX-192、(ナガセケムテックス社製);
エポライトM-1230、(共栄社化学社製)アデカグリシロールED-502、アデカグリシロールED-502S、アデカグリシロールED-509E、アデカグリシロールED-509S、アデカグリシロールED-529、(ADEKA社製)などがあげられる。
【0144】
上記単官能芳香族エポキシ化合物として、フェノール、クレゾール、ブチルフェノールなどのフェノール化合物、又はそのアルキレンオキサイド付加物のモノグリシジルエーテル;
レゾルシノールやハイドロキノン、カテコールなどの2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のモノグリシジルエーテル化物;
フェニルジメタノールやフェニルジエタノール、フェニルジブタノールなどのアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のモノグリシジルエーテル化物;
フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のモノグリシジルエステル;
安息香酸のグリシジルエステル、スチレンオキサイド、又はジビニルベンゼンのモノエポキシ化物などが挙げられる。
【0145】
上記単官能芳香族エポキシ化合物としては、市販品を用いてもよく、市販品のものを用いることができる。市販品の場合、例えば、デナコールEX-141、デナコールEX-146、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)などがあげられる。
【0146】
多官能エポキシ化合物は、エポキシ樹脂組成物に一般的に使用されているものでよく、1分子中にエポキシ基を2個以上有するものであればその種類は特に制限されない。
【0147】
多官能エポキシ化合物は、多官能脂肪族エポキシ化合物、及び多官能芳香族エポキシ化合物が挙げられる。
【0148】
多官能脂肪族エポキシ化合物としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0149】
多官能脂肪族エポキシ化合物としては、アルキレングリコールジグリシジルエーテル、アルケニレングリコールジグリシジルエーテルなどの分子内にエポキシ基を2つ有する二官能脂肪族エポキシ化合物;
トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの三官能以上のアルコールのポリグリシジルエーテル[トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトール(トリ、又はテトラ)グリシジルエーテル、ジペンタエリスリトール(トリ、テトラ、ペンタ、又はヘキサ)グリシジルエーテルなど]などの分子内にエポキシ基を3つ以上有する多官能脂肪族エポキシ化合物エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、又はトリメチロールプロパンジグリシジルエーテルとトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの混合物(例えばデナコールEX-321L:ナガセケミテックス社製)のようなトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタグリシジルエーテル、ソルビトールヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0150】
多官能脂肪族エポキシ化合物は、市販品を用いることができ、例えば、“EP-4088S”(以上、(株)ADEKA製)、“EHPE3150”(以上、(株)ダイセル製)、“EX-211L”、“EX-212L”(以上、いずれもナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0151】
多官能芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどの少なくとも1個の芳香族環を有する多価フェノール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル化物;
エポキシノボラック樹脂;
レゾルシノールやハイドロキノン、カテコールなどの2個以上のフェノール性水酸基を有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物;
フェニルジメタノールやフェニルジエタノール、フェニルジブタノールなどのアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル化物;
フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル;
ジビニルベンゼンのジエポキシ化物などが挙げられる。
【0152】
多官能芳香族エポキシ化合物としては、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0153】
多官能芳香族エポキシ化合物は、市販品を用いることができ、例えば、“デナコールEX-201”、“デナコールEX-711”、及び“デナコールEX-721”(以上、いずれもナガセケムテックス(株)製);
“オグソールEG-280”、及び“オグソールCG-400”(以上、いずれも大阪ガスケミカル(株)製);
“EXA-80CRP”、及び“HP4032D”(以上、いずれもDIC(株)製);
“jER828”、及び“jER828EL”(以上、いずれも三菱ケミカル(株)製);
“アデカレジンEP-4100”、“アデカレジンEP-4100G”、“アデカレジンEP-4100E”、“アデカレジンEP-4100L”、“アデカレジンEP-4100TX”、“アデカレジンEP-4000”、“アデカレジンEP-4005”、“アデカレジンEP-4901”、“アデカレジンEP-4901E”(以上、いずれも(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0154】
本実施の形態の、式(1)で表されるアミン化合物を得るために用いるアミノ化合物、及び単官能エポキシ化合物、多官能エポキシ化合物は単独で用いてもよく、異なる複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0155】
具体的なアミノ化合物(C)の構造を表1-3に示す。
【表1-3】
【0156】
具体的な単官能もしくは多官能エポキシ化合物(B)の構造を表2-2に示す。
【表2-2】
【0157】
次に、本実施の形態の吸収液で用いる、液状媒体について説明する。
【0158】
(液状媒体)
本実施の形態に用いる液状媒体は、式(1)で表されるアミン化合物を混和することが可能であれば特に限定しない。上記の式(1)で示されるアミン化合物は、二酸化炭素を吸収し、加熱によって、二酸化炭素を放出することができるが、二酸化炭素の分離には高エネルギーを要する。そこで、式(1)で表されるアミン化合物と二酸化炭素の分離効率を向上させるために、液状媒体を用いることによって、二酸化炭素の放出温度を低下させることが可能であり、二酸化炭素の放出効率が高くなることを見出した。
【0159】
具体的な液状媒体としては、実施の形態1と同様に、水、有機溶媒、及びイオン性液体、又は、これらの混合溶媒を使用することができるため、本実施の形態において詳細は割愛する。本実施の形態に係るアミン化合物は、上記の式(1)で示されるように、水酸基及びアルキル基の両方を有するため、水だけでなく、有機溶媒に対しても好適に溶解させることができる。
【0160】
(全ハンセン溶解度パラメータ(δT))
ハンセンパラメータは、全ヒルデブランド値を、分散力(δD)、極性成分(δP)、及び水素結合(δH)成分の3つの部分に分割する。ヒルデブランド値は、気化、ファンデルワールス力、及び溶解度の間の関係を用いて計算される。全ハンセン溶解度パラメータ(δT)は、分散(δD)、極性(δP)、及び水素結合(δH)力に分解され、式(1)を用いて計算される。
δT=δD+δP+δH(1)
式中、
・δDは、分散成分であり、
・δPは、極性成分であり、
・δHは、水素結合成分である。
【0161】
なお、異なる溶媒の分散成分、極性成分、及び水素結合成分、並びに異なる溶媒に対する全ハンセン溶解度パラメータ(δT)計算結果は、実施の形態1の表3と同様であるため、本実施の形態においては割愛する。
【0162】
本実施の形態の液状媒体としては、全ハンセン溶解度パラメータ(δT)が17MPa1/2~35MPa1/2の有機溶媒、もしくはイオン性液体であることが好ましく、さらに好ましくは、20MPa1/2~35MPa1/2の有機溶媒、もしくはイオン性液体であることが好ましく、特に好ましくは、23MPa1/2~35MPa1/2上の有機溶媒、もしくはイオン性液体である。
【0163】
本実施の形態の吸収液において、吸収液中の式(1)で表されるアミン化合物と液状媒体との質量比は好ましくは、5:95~95:5の範囲であり、さらに好ましくは、5:95~50:50の範囲であり、特に好ましくは、10:90~25:75の範囲である。吸収液中の、式(1)で表されるアミン化合物の含有率は、5質量%以上が好ましく、さらに好ましくは10重量%以上であり、特に好ましくは、25質量%以上であり、75質量%以下が吸収液の吸収効率の観点で好ましい。
【0164】
本実施の形態の吸収液に用いる液状媒体は、式(1)で表されるアミン化合物と二酸化炭素との反応物を溶解させるものであっても良いし、溶解させないものであっても良い。
【0165】
本実施の形態の二酸化炭素吸収液には、一般的に知られた、例えばモノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、アミノメチルプロパノール、イソプロピルアミノエタノール、1,5-ジアザビシクロ-5-ノネン、ピペラジン、トリエチルアミン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1、8-ジアザビシクロ-7-ウンデセン、1、4-ジアザビシクロオクタン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノヘプタン、ジイソプロピルアミン、4-アミノピリジン、ジエチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、tert-オクチルアミン、ジオクチルアミン、ジヘキシルアミン、2-エチル-1-ヘキシルアミン、2-フルオロフェニルアミン、3-フルオロフェニルアミン、3,5-ジフルオロベンジルアミン、N-メチルベンジルアミン(MBZA)、3-フルオローN-メチルベンジルアミン、4-フルオローN-メチルベンジルアミン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、N-メチルイミダゾール、1-トリフルオロアセチルイミダゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、ジイソプロピルアミン,2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどを添加しても良い。
【0166】
本実施の形態の吸収液は、式(1)で表されるアミン化合物、及び液状媒体以外の成分を、必要に応じて、本実施の形態の効果を阻害しない範囲で含んでいてもよい。その他の成分としては、本実施の形態の吸収液の化学的、又は物理的安定性を確保するための安定剤(酸化防止剤などの副反応抑制剤)、本実施の形態の吸収液を用いる装置や設備の材質の劣化を防ぐための防止剤(腐食防止剤など)、吸収液の泡立ちを防ぐための添加剤(消泡剤)、pH調整剤、粘度調整剤が挙げられる。本実施の形態の吸収液におけるこれらその他の成分の含有量は本実施の形態の効果を阻害しない範囲であれば特に制限的なものではないが、質量濃度で5%以下が好ましい。
【0167】
上記酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄などが挙げられる。
【0168】
上記腐食防止剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1vジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、1-ホスホノプロパン-2-ジカルボン酸、ホスホノスクシン酸、2-ヒドロキシホスホノ酢酸、マレイン酸系重合体(例えばマレイン酸、及びアミレンの共重合体、又はマレイン酸、アクリル酸、及びスチレンの三元共重合体)などが挙げられる。
【0169】
上記消泡剤としては、例えば、シリコーン系、ポリエーテル系、アセチレンジオール系、金属石鹸系、リン酸エステル系、脂肪酸エステル系などが挙げられる。
【0170】
上記pH調整剤としては、例えば、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸など)、有機酸(クエン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、p-トルエンスルホン酸など)、無機塩基(炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなど)、有機塩基(メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ピペラジン、エタノールアミン、トリエタノールアミンなど)などが挙げられる。
【0171】
上記粘度調整剤としては、例えば、ポリイミン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。
【0172】
二酸化炭素を含むガスとしては、例えば、石炭、重油、天然ガスなどを燃料とする火力発電所、製造所のボイラー、セメント工場のキルン、コークスで酸化鉄を還元する製鐵高炉、銑鉄中の炭素を燃焼して製鋼する製鉄転炉、石炭ガス化複合発電設備などからの排ガス、採掘時天然ガス、改質ガスなどが挙げられ、該ガス中の二酸化炭素濃度は、体積濃度で通常5~50%程度、特に10~40%程度であればよい。かかる二酸化炭素濃度範囲では、本実施の形態の作用効果が好適に発揮される。なお、二酸化炭素を含むガスには、二酸化炭素以外に窒素、水蒸気、一酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル、二酸化硫黄、二酸化窒素、メタン、水素などのガスが含まれていてもよい。
【0173】
本実施の形態の吸収液である、式(1)で表されるアミン化合物、及び液状媒体は、二酸化炭素以外に、硫化水素の吸収にも優れている。
【0174】
[吸収液による二酸化炭素の分離回収方法]
本実施の形態の吸収液による二酸化炭素の分離回収方法は、二酸化炭素を含むガス中の二酸化炭素を分離回収するための方法であって、本実施の形態の吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収液を得る工程A、及び、工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、吸収液から二酸化炭素を脱離して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程Bを含む。なお、工程A及び工程Bは、実施の形態1の工程A及び工程Bと同様であるため、本実施の形態においては割愛する。
【0175】
本実施の形態の吸収液による二酸化炭素の分離回収方法により分離回収された二酸化炭素は、通常95~100%の体積濃度を持ち、純粋で、あるいは非常に高濃度であり得る。該分離回収された二酸化炭素は、現在その技術が開発されつつある地中や海底などへの隔離貯蔵(CCS)や石油増進回収法(Enhanced Oil Recovery、EOR)に供することができる。その他、該分離回収された二酸化炭素の利用用途は、特に限定されるものではない。例えば、化成品などの合成原料、或いは食品冷凍用の冷剤などが挙げられる。
【実施例0176】
<実施例1>
以下、実施の形態1に係る二酸化炭素を分離回収するための吸収液について、実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明する。ただし、本開示はこれら実施例などに限定されるものではない。実施例中のマススペクトルはTOF-MSで分子量の測定を行った。
装置名:AutoFlexII (ブルカーダルトニクス社製)
【0177】
[合成例1]
化合物(1)の合成方法
【化4】
【0178】
窒素雰囲気下、メタノール50mlと混合した4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン5.0g(32.0mmol)とエチレングリコールジグリシジルエーテル(A-1)11.15g(64.0mmol)を加え、撹拌を行った。添加後、24時間室温にて撹拌し、TOF-MSにより反応物質である(A-1)が検出されないことで反応の進行を確認した。溶媒であるメタノールは40℃以下で減圧することにより取り除き、目的物である化合物(1)を得た。
【0179】
<化合物(1)のTOF-MS測定結果>
分子量の計算値:C26H54N4 O4、Mol. Wt. 486.7;
観測された分子量:m/z 486.9
【0180】
[合成例2~74]
合成例1と同様に、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと表2-2記載の単官能もしくは多官能のエポキシ化合物((A-2)~(A-74))を用いて化合物(2)~(74)を合成した。得られた化合物は、合成例1と同様にTOF-MSにて同定を行った。合成した化合物のマススペクトル結果を表4-1に示す。なお、化合物番号は本明細書の表1に記載したものと同じである。
【0181】
[合成例75]
化合物(75)の合成方法
【化5】
【0182】
窒素雰囲気下、メタノール50mlと混合した4-アミノ-ピペリジン5.0g(49.9mmol)と2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)メタン(А-70)17.38g(99.8mmol)を加え、撹拌を行った。添加後、24時間室温にて撹拌し、TOF-MSにより反応物質である(A-1)が検出されないことで反応の進行を確認した。溶媒であるメタノールは40℃以下で減圧することにより取り除き、目的物である化合物(75)を得た。
【0183】
[合成例76]
化合物(76)の合成方法
【化6】
【0184】
窒素雰囲気下、メタノール50mlと混合した4-アミノ-ピペリジン5.0g(49.9mmol)とエチレングリコールジグリシジルエーテル(А-1)17.38g(99.8mmol)を加え、撹拌を行った。添加後、24時間室温にて撹拌し、TOF-MSにより反応物質である(A-1)が検出されないことで反応の進行を確認した。溶媒であるメタノールは40℃以下で減圧することにより取り除き、目的物である化合物(76)を得た。
【0185】
[合成例77]
化合物(77)の合成方法
【化7】
【0186】
窒素雰囲気下、合成例1における、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン5.0gを2.5g(16.0mmol)に変更し、同様に合成反応を行った。添加後、24時間室温にて撹拌し、TOF-MSにより反応物質である4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが検出されないことで反応の進行を確認した。溶媒であるメタノールは40℃以下で減圧することにより取り除き、目的物である化合物(77)を得た。
【0187】
[合成例78]
化合物(78)の合成方法
【化8】
【0188】
窒素雰囲気下、合成例7における、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン5.0gを2.5g(16.0mmol)に変更し、同様に合成反応を行った。添加後、24時間室温にて撹拌し、TOF-MSにより反応物質である4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンが検出されないことで反応の進行を確認した。溶媒であるメタノールは40℃以下で減圧することにより取り除き、目的物である化合物(78)を得た。
【表4-1】
【0189】
[二酸化炭素ガスの放出効率の測定方法]
後述する実施例で調整した二酸化炭素吸収液100g(容量200mlのガス吸収瓶に入った状態)を水浴で25℃に調温した。この二酸化炭素吸収液に、100ml/分の二酸化炭素ガスと400ml/分の窒素ガスの混合気体(500ml/分)を1時間バブリングさせながら吹き込んだ。このときの二酸化炭素ガスの吸収量(1時間の二酸化炭素吸収量(L))をガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて測定した。この1時間の二酸化炭素吸収量(L)を用いて、二酸化炭素吸収液1kg当たりの二酸化炭素吸収量(L)を算出した。
【0190】
次に、この二酸化炭素吸収液を水浴で60℃に調温した。この二酸化炭素吸収液に500ml/分の窒素ガスを2時間、バブリングさせながら吹き込んだ。このときの二酸化炭素ガスの放出量(2時間の二酸化炭素放出量(L))を、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて測定した。その2時間の二酸化炭素放出量(L)を用いて、二酸化炭素吸収液1kg当たりの二酸化炭素放出量(L)を算出した。前記の2時間の二酸化炭素放出量(L)と前記の1時間の二酸化炭素の吸収量(L)から、二酸化炭素ガス放出効率(=2時間の二酸化炭素放出量(L)÷1時間の二酸化炭素吸収量(L))を算出した。
【0191】
算出した二酸化炭素ガスの放出効率の測定から、以下の通り基準を設け評価し、S、及びAを実使用可能領域とした。評価結果を表6-1に示す。
S:放出効率が0.8以上
A:放出効率が0.7以上0.8未満
B:放出効率が0.6以上0.7未満
C:放出効率が0.6未満
【0192】
[評価に用いた材料、及びガス種]
表記を簡潔にするため、以下の略記号を使用した。
ATMP:4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン
MDEA:N-メチルジエタノールアミン
MBZA:メチルベンジルアミン
MEA:モノエタノールアミン
【0193】
評価に用いたガス種は表5の通りである。
【表5】
【0194】
[実施例1]
合成例1で得られた化合物(1)30gに、ジメチルスルホキシド70gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、二酸化炭素ガスの放出効率の測定を行った。
【0195】
1時間の二酸化炭素の吸収量(L)は、標準状態換算で2.12Lであった。即ち、二酸化炭素の吸収液1kg当たりの1時間の二酸化炭素の吸収量(L)は標準状態で21.2Lであった。(二酸化炭素吸収液1kg当たりの1時間当たりの二酸化炭素吸収量(
ml/分)は353ml/分(=21.2[L/時間]C1000[ml/L]÷60[分/時間])であった。
2時間の二酸化炭素放出量(L)標準状態換算で1.83Lであった。
即ち、二酸化炭素吸収液1kg当たりの2時間の二酸化炭素放出量(L)は標準状態換算で18.3Lであった。
(二酸化炭素吸収液1kg当たりの2時間の二酸化炭素放出量(mL/分)は152ml/分(=18.3[L/2時間]C1000[ml/L]÷120[分/時間])であった。
【0196】
これらより、二酸化炭素ガスの放出効率は0.85であった。以上の結果を表6-1に示す。
【0197】
[実施例2(吸収液2)]
化合物(1)30gを15gに変更し、ジメチルスルホキシドを70gから85gに変更し同様に二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、二酸化炭素ガスの放出効率の測定を行った。評価結果を表6-1に示す。
【0198】
[実施例3~116、E1~E20、G1~G99(吸収液3~116、E1~E20、G1~G99)]
実施例1記載の化合物、及び液状媒体を表6-1記載の化合物、及び液状媒体にそれぞれ変更し、同様の実験を行った。評価結果を表6-1に示す。
【表6-1】
【0199】
【表6-1】
【0200】
【表6-1】
【0201】
【表6-1】
【0202】
[実施例117(吸収液117)]
化合物(1)25gとMDEA5gに、ジメチルスルホキシド70gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【0203】
[実施例118(吸収液118)]
化合物(7)を25gとMBZA5gに、スルホラン60gと水10gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【0204】
[実施例119(吸収液119)]
化合物(30)を25gとMBZA5gに、ジメチルスルホキシド60gと水10gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【0205】
[実施例120(吸収液120)]
化合物(1)を25gと化合物(77)を5gに、ジメチルスルホキシド70gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【0206】
[実施例121(吸収液121)]
化合物(7)を25gと化合物(78)を5gに、ジメチルスルホキシド70gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【0207】
[実施例122(吸収液122)]
化合物(7)を25gとATMPを2gに、ジメチルスルホキシド60gとN-メチル-2ピロリドン10gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【0208】
[実施例123(吸収液123)]
化合物(1)を30gに、ジメチルスルホキシド60gとN-メチル-2ピロリドン10gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【0209】
[比較例1(吸収液124)]
実施例1の化合物(1)30gをMEAに全て変更し水70gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【0210】
[比較例2(吸収液125)]
実施例1の化合物(1)30gをMEAに全て変更し、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【0211】
[参考例1(吸収液126)]
実施例1の化合物(1)30gをATMPに全て変更し、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【0212】
[実施例A1~A83(吸収液A1~A83)]
化合物と液状媒体を表7-1記載の化合物、及び液状媒体にそれぞれ変更し、同様の実験を行った。評価結果を表7-1に示す。
【表7-1】
【0213】
【表7-1】
【0214】
【表7-1】
【0215】
[実施例124~246、比較例3~4、参考例2]
(二酸化炭素ガスの吸収/放出の繰り返し評価後の吸収量の変化度合い)
表6-1、及び表7-1で作成した吸収液1~126を用い、前述の二酸化炭素ガスの吸収/放出測定を10回繰り返し行った。その後、1回目の試験と同様に、11回目の吸収量を算出し、1回目の吸収量に対する減少度合いを評価した。評価基準は以下の通りとし、S、A、及びBを実使用可能領域とした。評価結果を表8-1に示す。
S:1回目の吸収量に対して、11回目の吸収量が99.5%以上
A:1回目の吸収量に対して、11回目の吸収量が99%以上99.5%未満
B:1回目の吸収量に対して、11回目の吸収量が98%以上99%未満
C:1回目の吸収量に対して、11回目の吸収量が98%未満
【表8-1】
【0216】
【表8-1】
【0217】
[実施例M1~78、比較例5、参考例3]
(二酸化炭素ガスの吸収速度)
表6-1及び表7-1で作成した吸収液1、12、22、32、43~116、125、126を用いて吸収速度の評価を行った。調製した二酸化炭素吸収液100g(容量200mlのガス吸収瓶に入った状態)を水浴で25℃に調温した。この二酸化炭素吸収液に、100ml/分の二酸化炭素ガスと400ml/分の窒素ガスの混合気体(500ml/分)をバブリングさせながら吹き込んだ。このときの二酸化炭素ガスの吸収量(10分間の二酸化炭素吸収量(L))をガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて測定した。当該吸収量を10で除した値を吸収速度(L/min)とした。
【0218】
評価基準は以下の通りとし、S、A、及びBを実使用可能領域とした。評価結果を表9-1に示す。
S:吸収速度が1.00L/min以上
A:吸収速度が0.75L/min以上1.00L/min未満
B:吸収速度が0.50L/min以上0.75L/min未満
C:吸収速度が0.50L/min未満
【表9-1】
【0219】
上記の実施例に記載の通り、本願発明の二酸化炭素吸収液は、従来公知の二酸化炭素炭素吸収液に比べて、二酸化炭素の放出速度、及び放出効率(放出量/吸収量)に優れる効果を奏するものである。また、一般的に知られている、MEA水溶液の放出温度である120℃に対して、本開示の吸収液は、今回の実験条件である60℃の放出温度で効率的に二酸化炭素を放出することが可能であることを見出すことができた。
【0220】
<実施例2>
以下、実施の形態2に係る二酸化炭素を分離回収するための吸収液について、実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明する。ただし、本開示はこれら実施例などに限定されるものではない。実施例中のマススペクトルは<実施例1>と同様にTOF-MSで分子量の測定を行った。
【0221】
[合成例1]
化合物(AM-79)の合成方法
【0222】
【化9】
【0223】
窒素雰囲気下、メタノール300mlと混合したエチルアミン(A-1)30.0g(665.5mmol)とネオペンチルグリコールグリシジルエーテル(B-1)72.0g(332.7mmol)を加え、撹拌を行った。添加後、24時間室温にて撹拌し、TOF-MSにより反応物質である(A-1)が検出されないことで反応の進行を確認した。溶媒であるメタノールは40℃以下で減圧することにより取り除き、目的物である化合物(AM-79)を得た。
(化合物(1)のTOF-MS測定結果)
分子量の計算値:C15H34N2 O4、Mol. Wt. 306.4;
観測された分子量:m/z 306.5
【0224】
[合成例79~122]
合成例B1と同様に、表2-2、及び表3記載のアミン化合物と単官能もしくは多官能のエポキシ化合物を用いて化合物(AM-80)~(AM-122)を合成した。得られた化合物は、合成例B1と同様にTOF-MSにて同定を行った。合成した化合物の収量とマススペクトル結果を表4-2に示す。なお、化合物番号は本明細書の表1-2に記載したものと同じである。
【表4-2】
【0225】
(二酸化炭素ガスの放出効率の測定方法)
後述する実施例で調整した二酸化炭素吸収液100g(容量200mlのガス吸収瓶に入った状態)を水浴で25℃に調温した。この二酸化炭素吸収液に、100ml/分の二酸化炭素ガスと400ml/分の窒素ガスの混合気体(500ml/分)を1時間バブリングさせながら吹き込んだ。このときの二酸化炭素ガスの吸収量(1時間の二酸化炭素吸収量(L))をガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて測定した。この1時間の二酸化炭素吸収量(L)を用いて、二酸化炭素吸収液1kg当たりの二酸化炭素吸収量(L)を算出した。
【0226】
次に、この二酸化炭素吸収液を水浴で60℃に調温した。この二酸化炭素吸収液に500ml/分の窒素ガスを2時間、バブリングさせながら吹き込んだ。このときの二酸化炭素ガスの放出量(2時間の二酸化炭素放出量(L))を、ガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて測定した。その2時間の二酸化炭素放出量(L)を用いて、二酸化炭素吸収液1kg当たりの二酸化炭素放出量(L)を算出した。
前記の2時間の二酸化炭素放出量(L)と前記の1時間の二酸化炭素の吸収量(L)から、二酸化炭素ガス放出効率(=2時間の二酸化炭素放出量(L)÷1時間の二酸化炭素吸収量(L))を算出した。
【0227】
算出した二酸化炭素ガスの放出効率の測定から、以下の通り基準を設け評価し、S、及びAを実使用可能領域とした。評価結果を表7-1に示す。
S:放出効率が0.8以上
A:放出効率が0.7以上0.8未満
B:放出効率が0.6以上0.7未満
C:放出効率が0.6未満
【0228】
[評価に用いた材料、及びガス種]
表記を簡潔にするため、以下の略記号を使用した。
ATMP:4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン
MDEA:N-メチルジエタノールアミン
MBZA:メチルベンジルアミン
MEA:モノエタノールアミン
【0229】
評価に用いたガス種は、<実施例1>の表5と同様であるため、ここでは割愛する。
【0230】
[実施例B1(吸収液B1)]
合成例B1で得られた化合物(1)30gに、ジメチルスルホキシド70gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、二酸化炭素ガスの放出効率の測定を行った。
【0231】
1時間の二酸化炭素の吸収量(L)は、標準状態換算で2.18Lであった。即ち、二酸化炭素の吸収液1kg当たりの1時間の二酸化炭素の吸収量(L)は標準状態で21.8Lであった。(二酸化炭素吸収液1kg当たりの1分間当たりの二酸化炭素吸収量(ml/分)は363ml/分(=21.8[L/時間]C1000[ml/L]÷60[分/時間])であった。
2時間の二酸化炭素放出量(L)標準状態換算で1.80Lであった。
即ち、二酸化炭素吸収液1kg当たりの2時間の二酸化炭素放出量(L)は標準状態換算で18.0Lであった。
(二酸化炭素吸収液1kg当たりの1分間の二酸化炭素放出量(mL/分)は150ml/分(=18.0[L/2時間]C1000[ml/L]÷120[分/時間])であった。
【0232】
これらより、二酸化炭素ガスの放出効率は0.83であった。以上の結果を表6-2に示す。
【0233】
[実施例B2(吸収液B2)]
化合物(1)30gを15gに変更し、ジメチルスルホキシドを70gから85gに変更し同様に二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、二酸化炭素ガスの放出効率の測定を行った。評価結果を表6-2に示す。
【0234】
[実施例B3~B54、E21~40、J1~144(吸収液B3~B54、E21~40、J1~144)]
実施例B1記載の化合物、及び液状媒体を表6-2記載の化合物、及び液状媒体にそれぞれ変更し、同様の実験を行った。評価結果を表6-2に示す。
【表6-2】
【0235】
【表6-2】
【0236】
【表6-2】
【0237】
[実施例D1(吸収液B55)]
化合物(AM-84)25gとMDEA5gに、ジメチルスルホキシド70gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-2に示す。
【0238】
[実施例D2(吸収液B56)]
化合物(7)を25gとMBZA5gに、スルホラン60gと水10gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-2に示す。
【0239】
[実施例D3(吸収液B57)]
化合物(11)を25gとMBZA5gに、ジメチルスルホキシド60gと水10gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-2に示す。
【0240】
[実施例D4(吸収液B58)]
化合物(6)を25gと化合物(15)を5gに、ジメチルスルホキシド70gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-2に示す。
【0241】
[実施例D5(吸収液B59)]
化合物(7)を25gと化合物(16)を5gに、ジメチルスルホキシド70gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-2に示す。
【0242】
[実施例D6(吸収液B60)]
化合物(7)を25gとATMPを2gに、ジメチルスルホキシド60gとN-メチル-2ピロリドン10gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-2に示す。
【0243】
[実施例D7(吸収液B61)]
化合物(6)を30gに、ジメチルスルホキシド60gとN-メチル-2ピロリドン10gを加えて混合攪拌して、二酸化炭素吸収液(100g)を調製し、これを200mlのガス吸収瓶に入れ、同様の実験を行った。評価結果を表7-2に示す。
【0244】
[実施例C1~C83、K1~128(吸収液C1~C83、K1~128)]
実施例D1記載の化合物、及び液状媒体を表7-2記載の化合物、及び液状媒体にそれぞれ変更し、同様の実験を行った。評価結果を表7-2に示す。
【表7-2】
【0245】
【表7-2】
【0246】
【表7-2】
【0247】
【表7-2】
【0248】
【表7-2】
【0249】
[実施例G1~61、H1~202、L1~128]
(二酸化炭素ガスの吸収/放出の繰り返し評価後の吸収量の変化度合い)
表6-2、及び表7-2で作成した吸収液B1~61、C1~83、E21~35、K1~128、G1~99を用い、前述の二酸化炭素ガスの吸収/放出測定を10回繰り返し行った。その後、1回目の試験と同様に、11回目の吸収量を算出し、1回目の吸収量に対する減少度合いを評価した。評価基準は以下の通りとし、S、A、及びBを実使用可能領域とした。評価結果を表8-2に示す。
S:1回目の吸収量に対して、11回目の吸収量が99.5%以上
A:1回目の吸収量に対して、11回目の吸収量が99%以上99.5%未満
B:1回目の吸収量に対して、11回目の吸収量が98%以上99%未満
C:1回目の吸収量に対して、11回目の吸収量が98%未満
【表8-2】
【0250】
【表8-2】
【0251】
【表8-2】
【0252】
【表8-2】
【0253】
[実施例M79~122]
(二酸化炭素ガスの吸収速度)
表6-2及び表7-2で作成した吸収液B1、B12、B22、B32、B43~54、J1、J110、J125、J141~144、J17、J32、J47、J63~79、J95を用いて吸収速度の評価を行った。調製した二酸化炭素吸収液100g(容量200mlのガス吸収瓶に入った状態)を水浴で25℃に調温した。この二酸化炭素吸収液に、100ml/分の二酸化炭素ガスと400ml/分の窒素ガスの混合気体(500ml/分)をバブリングさせながら吹き込んだ。このときの二酸化炭素ガスの吸収量(10分間の二酸化炭素吸収量(L))をガス流量計と二酸化炭素濃度計を用いて測定した。当該吸収量を10で除した値を吸収速度(L/min)とした。
【0254】
評価基準は以下の通りとし、S、A、及びBを実使用可能領域とした。評価結果を表9-2に示す。なお、比較として<実施例1>に記載の吸収液125~126を使用した比較例5及び参考例3の結果を併せて示す。
S:吸収速度が1.00L/min以上
A:吸収速度が0.75L/min以上1.00L/min未満
B:吸収速度が0.50L/min以上0.75L/min未満
C:吸収速度が0.50L/min未満
【表9-2】
【0255】
上記の実施例に記載の通り、本願発明の二酸化炭素吸収液は、従来公知の二酸化炭素炭素吸収液に比べて、二酸化炭素の放出速度、及び放出効率(放出量/吸収量)に優れる効果を奏するものである。また、一般的に知られている、MEA水溶液の放出温度である120℃に対して、本開示の吸収液は、今回の実験条件である60℃の放出温度で効率的に二酸化炭素を放出することが可能であることを見出すことができた。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための吸収液であって、
前記吸収液は、式(1)で表されるアミン化合物、及び液状媒体を含み、
式(1)
【化1】
ここで、Rは、水素原子、置換基としてハロゲン原子、シクロアルキル基、アルコキシ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、ニトロ基、水酸基、カルバモイル基、N-置換カルバモイル基、スルファモイル基、N-置換スルファモイル基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、イミノ基、フェニル基、スルファニル基を有してもよい直鎖アルキル基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、及び置換基を有してもよいピペリジニル基のいずれか一つであり、
は、水素原子、炭素数1~8の直鎖アルキル基、又は1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基であり、
Xは、直接結合、又は酸素原子であり、
Aは、n価の有機残基であり、
nは、1~6の整数を表し、
n=1かつRが1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基である場合において、前記1,2-(2-ヒドロキシ)エチレン基は第2の有機残基と結合する
吸収液。
【請求項2】
前記ピペリジニル基は、式(2)で表され、
式(2)
【化2】
ここで、R は、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基であり、
は、水素原子である、
請求項1に記載の吸収液。
【請求項3】
前記式(2)中、R~Rはメチル基である、
請求項に記載の吸収液。
【請求項4】
前記有機残基、及び前記第2の有機残基は、それぞれ独立して、置換基を有してもよい直鎖、又は分岐の脂肪族炭化水素残基、置換基を有してもよい直鎖、又は分岐のアルコキシ残基、置換基を有してもよい直鎖、又は分岐のポリオキシアルキル残基、置換基を有してもよい(メタ)アクリロイル残基、置換基を有してもよいアルキルエステル残基、置換基を有してもよい芳香族エステル残基、置換基を有してもよい脂環式炭化水素残基、置換基を有してもよい芳香族炭化水素残基、置換基を有してもよい芳香族複素環残基、及び置換基を有してもよいアミノ残基のいずれか一つである
請求項1に記載の吸収液。
【請求項5】
前記R は、アミノ基を有する直鎖アルキル基である、
請求項1に記載の吸収液。
【請求項6】
前記式(1)中、 は水素原子である
請求項1に記載の吸収液。
【請求項7】
前記液状媒体は、全ハンセン溶解度パラメータ(δT)が17MPa1/2以上である
請求項1に記載の吸収液。
【請求項8】
前記式(1)で表されるアミン化合物を少なくとも5質量%以上含む
請求項1に記載の吸収液。
【請求項9】
さらに、前記ガスが硫化水素を含み、該硫化水素を吸収する
請求項1に記載の吸収液。
【請求項10】
以下の工程A、及びBを含む、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収するための方法であって、
工程A:請求項1~9のいずれか一項に記載の吸収液を、二酸化炭素を含むガスと接触させ、二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を吸収した吸収液を得る工程、
工程B:工程Aで得られた二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して、吸収液から二酸化炭素を脱離して放散させ、放散した二酸化炭素を回収する工程、である
方法。
【請求項11】
前記工程Bにおける加熱温度が、50℃以上160℃以下である
請求項10に記載の方法。