(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066976
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】手動工具及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B25B 13/00 20060101AFI20240509BHJP
B25B 13/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B25B13/00 A
B25B13/02 B
B25B13/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096902
(22)【出願日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】111141840
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】519422245
【氏名又は名称】明欣國際有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】陳子鈞
(72)【発明者】
【氏名】陳詠順
(57)【要約】 (修正有)
【課題】様々な規格やサイズの締結具に適用でき、構造が簡単で、製造されやすい手動工具及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、第1標準範囲及び第2標準範囲に基づいて目標スリーブ口サイズを設定するステップと、該目標スリーブ口サイズに基づいて手動工具本体を成形するステップと、を含む手動工具の製造方法に関する。該第1標準範囲及び該第2標準範囲のうち一方はメートルサイズ範囲であり、他方はインチサイズ範囲である。該手動工具本体には、1つのスリーブ口及び該スリーブ口を囲む複数の側辺が設けられ、径方向において対向する2つの該側辺の間隔が、該目標スリーブ口サイズに対応する。本発明は、該製造方法で製造される手動工具であって、該スリーブ口が該手動工具本体の一端に設けられ、締結具の嵌設に用いられる、レンチ又はスリーブである手動工具をさらに提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動工具の製造方法であって、
第1標準範囲及び第2標準範囲に基づいて目標スリーブ口サイズを設定するステップであって、前記第1標準範囲及び前記第2標準範囲のうち一方はメートルサイズ範囲であり、他方はインチサイズ範囲であり、前記第1標準範囲は第1上限値と第1下限値を含み、前記第2標準範囲は第2上限値と第2下限値を含み、前記第1下限値が前記第2下限値と前記第2上限値との間である場合、前記目標スリーブ口サイズは前記第1下限値以上、前記第1上限値及び前記第2上限値の少なくとも1つの方以下に設定され、前記第1下限値が前記第2下限値及び前記第2上限値よりも大きい場合、前記目標スリーブ口サイズは、前記第1下限値以上前記第1上限値以下に設定されるステップと、
前記目標スリーブ口サイズに基づいて手動工具本体を成形するステップであって、前記手動工具本体には1つのスリーブ口及び前記スリーブ口を囲む複数の側辺が設けられ、径方向において対向する2つの前記側辺の間隔が前記目標スリーブ口サイズに対応するステップと、を含む、
手動工具の製造方法。
【請求項2】
前記目標スリーブ口サイズが前記第1標準範囲に対応するとともに、前記第2標準範囲に対応しない場合、前記目標スリーブ口サイズと前記第2下限値との差が、0.8mm以下である、請求項1に記載の手動工具の製造方法。
【請求項3】
前記第1下限値が前記第2下限値及び前記第2上限値よりも大きい場合、前記第1下限値と前記第2上限値との差が、0.4mm以下である、請求項1に記載の手動工具の製造方法。
【請求項4】
前記メートルサイズ範囲に対応する第1サイズマーク及び前記インチサイズ範囲に対応する第2サイズマークを前記手動工具本体にさらに設け、
前記第1サイズマーク及び前記第2サイズマークは、それぞれ、文字、数字及びパターンの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の手動工具の製造方法。
【請求項5】
少なくとも1つの識別構造を前記手動工具本体にさらに設け、
前記目標スリーブ口サイズが前記メートルサイズ範囲に対応する場合、前記第1サイズマークに前記識別構造が設けられ、前記目標スリーブ口サイズが前記インチサイズ範囲に対応する場合、前記第2サイズマークに前記識別構造が設けられる、請求項4に記載の手動工具の製造方法。
【請求項6】
前記第1サイズマークに対応する第1識別部及び前記第2サイズマークに対応する第2識別部を前記手動工具本体にさらに設け、
前記目標スリーブ口サイズが前記メートルサイズ範囲及び前記インチサイズ範囲のうちの一方に対応するとともに、前記メートルサイズ範囲及び前記インチサイズ範囲の他方に対応しない場合、前記第1識別部は前記第2識別部とは異なる、請求項4に記載の手動工具の製造方法。
【請求項7】
前記目標スリーブ口サイズが前記第1標準範囲に対応するとともに、前記第2標準範囲に対応しない場合、前記目標スリーブ口サイズと前記第2下限値との差が、0.8mm以下であり、
前記スリーブ口に連通する複数のノッチをさらに成形し、各前記ノッチは隣接する2つの前記側辺の間に位置し、
前記目標スリーブ口サイズが前記メートルサイズ範囲及び前記インチサイズ範囲に対応する場合、前記第1識別部と前記第2識別部の形状が同じであり、前記目標スリーブ口サイズが前記メートルサイズ範囲及び前記インチサイズ範囲のうちの一方に対応するとともに、前記メートルサイズ範囲及び前記インチサイズ範囲の他方に対応しない場合、前記第1識別部と前記第2識別部の形状が異なり、前記第1識別部及び前記第2識別部は、それぞれ、円形、楕円形又は多角形パターンである、請求項6に記載の手動工具の製造方法。
【請求項8】
前記第1下限値が前記第2上限値と前記第2下限値との間にある場合、前記目標スリーブ口サイズは前記第1下限値と前記第2上限値との間にある、請求項1に記載の手動工具の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の手動工具の製造方法で製造される手動工具であって、
レンチ又はスリーブであり、前記スリーブ口は前記手動工具本体の一端に設けられ、締結具の嵌設に設けられる、
手動工具。
【請求項10】
前記スリーブ口の径方向サイズが、前記メートルサイズ範囲及び前記インチサイズ範囲のうちの一方の下限値と他方の上限値との間にある、請求項9に記載の手動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動工具に関するもので、特に手動工具及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オープンエンドレンチ、メガネレンチ、リングレンチ、ラチェットレンチ、スリーブなどの一般的な手動工具は、回転対象の締結具に適合するようにメートルサイズ又はインチサイズに適合するサイズを有し、締結具を取り付けるための少なくとも1つのスリーブ口を備える。
従来の締結具は、様々なサイズのものがあり、メートルサイズとインチサイズの2種類の規格を含むが、既存の手動工具は2種類のサイズのスリーブ口(両頭)しか提供できないので、作業者は作業用に複数の異なる規格またはサイズの手動工具を準備する必要がある。その結果、持ち運びが不便で、購入コストが高くなる。
【0003】
上記の問題を解決するために、単一のスリーブ口が2種類のサイズの締結具に適している手動工具も市販されている。しかしこのスリーブ口を囲む側壁については別途に円弧凸面、係止溝、当接壁等を加工する必要があり、構造が複雑で加工コストが高く、また、接触面積が小さいことによりこの締結具の変形や脱落等の問題も生じやすい。
【0004】
このため、上記課題を解決するために、新規で進歩性のある手動工具及びその製造方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の主な目的は、様々な規格やサイズの締結具に適用でき、構造が簡単で、製造されやすい手動工具及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるために、本発明は、第1標準範囲及び第2標準範囲に基づいて目標スリーブ口サイズを設定するステップであって、前記第1標準範囲及び前記第2標準範囲のうち一方はメートルサイズ範囲であり、他方はインチサイズ範囲であり、前記第1標準範囲は第1上限値と第1下限値を含み、前記第2標準範囲は第2上限値と第2下限値を含み、前記第1下限値が前記第2下限値と前記第2上限値との間である場合、前記目標スリーブ口サイズは前記第1下限値以上、前記第1上限値及び前記第2上限値の少なくとも1つの方以下に設定され、前記第1下限値が前記第2下限値及び前記第2上限値よりも大きい場合、前記目標スリーブ口サイズは前記第1下限値以上前記第1上限値以下に設定されるステップと、前記目標スリーブ口サイズに基づいて手動工具本体を成形するステップであって、前記手動工具本体には1つのスリーブ口及び前記スリーブ口を囲む複数の側辺が設けられ、径方向において対向する2つの前記側辺の間隔が前記目標スリーブ口サイズに対応するステップと、を含む、手動工具の製造方法を提供する。
【0007】
上記の目的を達成させるために、本発明は、また、上記の手動工具の製造方法で製造される手動工具であって、レンチ又はスリーブであり、前記スリーブ口は前記手動工具本体の一端に設けられ、締結具の嵌設に設けられる、手動工具を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の好ましい実施例の斜視図である。
【
図2】本発明の第1の好ましい実施例の側面図である。
【
図3】本発明の第2の好ましい実施例の斜視図である。
【
図4】本発明の第3の好ましい実施例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例を用いて本発明の可能な実施形態を説明するが、これらは本発明の特許範囲を制限するものではない。
【0010】
図1から2を参照には本発明の第1の好ましい実施例が示されている。本発明の手動工具の製造方法は、第1標準範囲及び第2標準範囲に基づいて目標スリーブ口サイズを設定するステップと、該目標スリーブ口サイズに基づいて手動工具本体10を成形するステップと、を含む。
【0011】
該第1標準範囲及び該第2標準範囲のうち一方はメートルサイズ範囲であり、他方はインチサイズ範囲である。該第1標準範囲は第1上限値と第1下限値を含み、該第2標準範囲は第2上限値と第2下限値を含む。該第1下限値が該第2下限値と該第2上限値との間にある場合、該目標スリーブ口サイズは、該第1下限値以上、該第1上限値及び該第2上限値の少なくとも一方以下に設定され、該第1下限値が該第2下限値及び該第2上限値よりも大きい場合、該目標スリーブ口サイズは、該第1下限値以上該第1上限値以下である。
該手動工具本体10には、1つのスリーブ口11及び該スリーブ口11を囲む複数の側辺12が設けられ、径方向において対向する2つの該側辺12の間隔は該目標スリーブ口サイズに対応する。これにより、該スリーブ口11は、メートル式及びインチ式のスケールの両方の締結具に適用することができ、加工されやすく、適用範囲が広く、取り扱いの安定性に優れる。
【0012】
本実施例では、該第1標準範囲は該インチサイズ範囲であり、該第2標準範囲は該メートルサイズ範囲である。インチ式で11/16”インチ、メートル式で17mmのサイズを例にして、基準を満たす該インチサイズ範囲は17.51mm(該第1下限値)~17.76mm(該第1上限値)であり、基準を満たす該メートルサイズ範囲は17.05mm(該第2下限値)~17.30mm(該第2上限値)であり、該目標スリーブ口サイズは、17.51mm~17.76mmの間(例えば17.67mm)に設定されてもよい。これにより、該手動工具の該スリーブ口11は、該インチサイズ範囲を満たすため、11/16”インチの締結具に適用でき、また、該メートルサイズに近い範囲では、17mmの締結具に適用することができ、別途加工する必要がなく、製造されやすくなる。
【0013】
好ましくは、該目標スリーブ口サイズが該第1標準範囲に対応するとともに、該第2標準範囲に対応しない場合、該目標スリーブ口サイズと該第2下限値との差は0.8mm以下であり、該第1下限値が該第2下限値及び該第2上限値よりも大きい場合、該第1下限値と該第2上限値との差は0.4mm以下であり、これによりサイズの差が大きすぎることを回避し、対応するサイズ範囲内で該締結具に安定的に当接して動かすことを確保する。
なお、該手動工具の製造方法では、該スリーブ口の径方向の対応する2つの該側辺の間隔が該目標スリーブ口サイズを満たすものとして設定され、該目標スリーブ口サイズは上記の方式で選択され、操作に際しては、同一のこの2つの側辺で異なるサイズの該締結具に当接することができ、この複数の側辺について別途加工したり特殊な形状にしたりする必要がない。このため、安定的な接触が確保され、該締結具の抜けや摩損が発生しにくく、使用効果が優れる。
【0014】
該手動工具の製造方法では、
図1に示すように、該メートルサイズ範囲に対応する第1サイズマーク20及び該インチサイズ範囲に対応する第2サイズマーク30を該手動工具本体10に設ける。該第1サイズマーク20及び該第2サイズマーク30は、それぞれ、文字、数字及びパターンの少なくとも1つを含み、これにより、使用者が容易に選択して使用することができる。好ましくは、該手動工具の製造方法では、少なくとも1つの識別構造40を該手動工具本体10に設け、該目標スリーブ口サイズが該メートルサイズ範囲に対応する場合、該第1サイズマーク20に該識別構造40が設けられ、該目標スリーブ口サイズが該インチサイズ範囲に対応する場合、該第2サイズマーク30に該識別構造40が設けられ、これにより、使用者は該スリーブ口11が該当する標準サイズを識別するのに有利である。
本実施例では、該少なくとも1つの識別構造40は、該第1サイズマーク20に対応する第1識別部41と、該第2サイズマーク30に対応する第2識別部42と、を含み、該第1識別部41及び該第2識別部42は、それぞれ、例えば円形、楕円形又は多角形パターンであってもよい。該目標スリーブ口サイズが該メートルサイズ範囲及び該インチサイズ範囲のうちの一方に対応するとともに、該メートルサイズ範囲及び該インチサイズ範囲の他方に対応しない場合、該第1識別部41は該第2識別部42とは異なる。例えば、
図1に示す六角形枠及び円形枠であり、該第1識別部41と該第2識別部42の形状が異なる。これにより、該スリーブ口11のサイズが11/16”インチの該インチサイズ範囲を満たし、17mmの該メートルサイズ範囲にも適用できることも使用者が容易に把握できる。
他の実施例では、該少なくとも1つの識別構造は、パターン、凹凸構造、カラーブロック、文字色付けなどを含んでもよく、例えば、該第1及び第2識別部は、標準範囲を満たす場合、赤色模様とされ、標準範囲を満たさない場合、緑色模様とされる。該第1及び第2識別部は、標準範囲を満たす場合、円形枠とされ、標準範囲を満たさない場合、枠無しなどとしてもよく、いずれも識別に有用である。
【0015】
該手動工具の製造方法では、好ましくは、該スリーブ口11に連通する複数のノッチ13を設けてもよく、各該ノッチ13は、隣接する2つの該側辺12の間に位置し、該締結具を嵌設しやすくするとともに、該締結具の隅部の摩損を回避する。好ましくは、各該側辺12は、連続して延伸している平坦切断面であり、この間隔を限定する各該側辺12の幅が、該複数の側辺12の他方の幅以上である。これにより、該締結具に安定的に当接することが可能とされる。
【0016】
また、
図3には、第2の好ましい実施例が示されている。該第1下限値が該第2上限値と該第2下限値との間にある場合、該目標スリーブ口サイズは、該第1下限値と該第2上限値との間にある。本実施例では、該第1標準範囲は該メートルサイズ範囲であり、該第2標準範囲は該インチサイズ範囲である。インチ式で5/8”インチ、メートル式で16mmのサイズを例にして、基準を満たす該インチサイズ範囲は15.91mm(該第2下限値)~16.16mm(該第2上限値)であり、基準を満たす該メートルサイズ範囲は16.05mm(該第1下限値)~16.27mm(該第1上限値)であり、該目標スリーブ口サイズは、16.05mm~16.16mmの間(例えば16.15mm)に設定されてもよい。これにより、該スリーブ口11aは、該インチサイズ範囲及び該メートルサイズ範囲の両方を満たし、様々なサイズに適用することができ、使用されやすい。
該目標スリーブ口サイズが該メートルサイズ範囲及び該インチサイズ範囲に対応する場合、該第1識別部41と該第2識別部42の形状が異なる。これは、該スリーブ口11aが2つの規格サイズを満たし、対応する該締結具に同時に適用できることを示す。なお、該手動工具本体10aには該スリーブ口11a、11bが複数設けられてもよく、この複数のスリーブ口11a、11bの形状、規格やサイズは、必要に応じて同一又は異なるようにしてもよい。
【0017】
本発明は、上記の手動工具の製造方法で製造される手動工具をさらに提供する。該手動工具は、レンチ(例えば
図1~3に示す第1及び第2実施例)又はスリーブ(
図4に示す第3実施例)であってもよい。該スリーブ口11、11a、11b、11cは、該手動工具本体10、10a、10bの一端に設けられ、締結具の嵌設に用いられる。該スリーブ口11aの径方向サイズが、好ましくは、該メートルサイズ範囲及び該インチサイズ範囲のうちの一方の下限値と他方の上限値との間にあり、これにより、該メートルサイズ範囲及び該インチサイズ範囲の両方を満たすことができ、様々な規格及びサイズの該締結具に好適に適用できる。
【符号の説明】
【0018】
10、10a、10b 手動工具本体
11、11a、11b、11c スリーブ口
12 側辺
13 ノッチ
20 第1サイズマーク
30 第2サイズマーク
40 識別構造
41 第1識別部
42 第2識別部