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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066981
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240509BHJP
   A01D 67/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01D67/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023134018
(22)【出願日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2022176345
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】楠瀬 善雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 充
(72)【発明者】
【氏名】李 昇圭
(72)【発明者】
【氏名】森川 裕
【テーマコード(参考)】
2B043
2B076
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA02
2B043BA05
2B043BA09
2B043BB14
2B043DA01
2B043DA04
2B043DC01
2B043EA02
2B076AA03
2B076BA07
2B076CD03
(57)【要約】
【課題】手動操舵装置に対して過剰な操作荷重がかかると自動操舵から手動操舵へ切り替わる作業機において、自動操舵を確実に継続しながら作業機の一部の操作も行えるようにして操作性を向上させた作業機を提供する。
【解決手段】手動操舵と自動操舵とが切り替え可能な作業機1は、手動操舵装置18と、切替操作を受け付けて手動操舵を自動操舵へ切り替える自動操舵装置121と、第1操作を受け付けて作業機の一部を動作させる第1操作部材131とを備え、手動操舵装置18とは別に第1操作部材131を設けた。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動操舵と自動操舵とが切り替え可能な作業機であって、
手動操舵装置と、
切替操作を受け付けて前記手動操舵を前記自動操舵へ切り替える自動操舵装置と、
第1操作を受け付けて前記作業機の一部を動作させる第1操作部材と
を備え、
前記手動操舵装置とは別に前記第1操作部材を設けた、作業機。
【請求項2】
前記自動操舵装置の側方に前記第1操作部材が配置されている、請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記手動操舵装置に対して前記自動操舵装置が配置されている側に取り付けられたアームレストをさらに備え、
前記第1操作部材が、平面視では前記自動操舵装置と前記アームレストとの間に配置されている、請求項2に記載の作業機。
【請求項4】
前記第1操作部材が、前記アームレストの前端より低い位置に配置されている、請求項3に記載の作業機。
【請求項5】
前記アームレストは、位置調整可能に構成されている、請求項3に記載の作業機。
【請求項6】
ドアの内側に取り付けられた把手部をさらに備え、
前記アームレストは、前記把手部に支持部材を介して取り付けられ、
前記支持部材は、前記アームレストを位置調整可能に支持する、請求項3に記載の作業機。
【請求項7】
前記支持部材は、前後方向に延びる回動軸を備え、
前記アームレストは、前記支持部材により前記回動軸周りに回動自在に支持されている、請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記支持部材は、前記アームレストが回動する可動域の端部において、前記アームレストを保持する保持手段を備える、請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記保持手段は、前記アームレストの前記回動軸周りの周方向の位置を保持するデテント機構を有する、請求項8に記載の作業機。
【請求項10】
前記アームレストには、収容部が連結されている、請求項3に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業などを行うコンバインやトラクターなどの作業機に関し、特に、手動操舵と自動操舵とが切り替え可能であって手動操舵装置に対して過剰な操作荷重がかかると自動操舵から手動操舵へ切り替わる作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が開示する農作業機では、手動走行と自動走行とを切り替える切替スイッチが、主変速レバーの握り部に設けられている。また、自動走行中において設定走行ラインを平行に変位させる変位スイッチが、ハンドル奥の表示パネル付近に設けられている。
【0003】
特許文献2が開示するコンバインでは、機体の走行方向を変更操作する回転操作式のハンドルの中心部よりも右側の部位に、頻繁に操作が必要となる刈取装置を昇降操作する昇降スイッチが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-123803号公報
【特許文献2】特開2011-139716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動操舵を行いながら作業機の高さや位置の調整などを行う際、そのための操作スイッチが手動操舵装置(ハンドルなど)に設けられていると、作業機の一部を操作する場合に手動操舵装置に手が触れることになる。このとき、手動操舵装置に過剰な操作荷重がかかると、意図とせず自動操舵が解除されて手動操舵に切り替わってしまう問題があった。
【0006】
本発明は、作業機用の操作スイッチを手動操舵装置にではなく自動操舵への切替操作を行う自動操舵装置の側方に配置し、自動操舵を確実に継続しながら作業機の一部の操作も行えるようにして操作性を向上させた作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の作業機は、手動操舵と自動操舵とが切り替え可能な作業機であって、手動操舵装置と、切替操作を受け付けて前記手動操舵を前記自動操舵へ切り替える自動操舵装置と、第1操作を受け付けて前記作業機の一部を動作させる第1操作部材とを備え、前記手動操舵装置とは別に前記第1操作部材を設けた。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自動操舵を確実に継続しながら作業機の一部の操作も行えるので、操作性および作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るコンバイン1の外観を示す右側面図である。
図2】コンバイン1の電気的構成を示すブロック図である。
図3】コンバイン1の操縦部15内を示す平面図である。
図4】操縦部15内の斜視図である。
図5】操縦部15内の主要部を拡大して示す、左後上方から見た斜視図である。
図6】操縦部15内の主要部を拡大して示す、図5よりやや上方から見た斜視図である。
図7】操縦部15内の主要部を拡大して示す、左前上方から見た斜視図である。
図8】操縦部15内の主要部を拡大して示す平面図である。
図9】操縦部15内の主要部を拡大して示す左側面図である。
図10】操縦部15内の主要部を拡大して示す、左前下方から見た斜視図である。
図11】操縦部15内の主要部を拡大して示す、左下方から見た斜視図である。
図12】主変速レバー21の拡大図である。
図13】圃場Hにおける自動走行経路Pを示す平面図である。
図14】他の実施形態に係るコンバイン1における操縦部15内の主要部を拡大して示す、左後上方から見た斜視図である。
図15】アームレスト160の指示構造を示す背面図である。
図16図15におけるXVI-XVI断面図である。
図17】アームレスト160の第2状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)コンバイン1全体の構成
図1は、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の外観を示す右側面図である。図2は、コンバイン1の電気的構成を示すブロック図である。なお、コンバイン1は、本発明の「作業機」の一例であり、他にもトラクターなどが挙げられるが、これらに限らない。以下の説明では、このコンバイン1が進む方向を前方とする。
【0011】
このコンバイン1は、手動操舵と自動操舵とが切り替え可能である。自動操舵としては、例えば、直進、刈取昇降、旋回、排出位置への移動、中割りの位置決めを自動で行う「オートモード」、圃場外形の辺に対してそれぞれ平行に自動操舵を行う「枕地直進モード」、設定した基準線に平行して自動で直進する「直進モード」などが挙げられる。その際の速度制御は、自動又は手動を選択可能とする。例えば、最初の1周分を手動で刈取りして圃場の外形を登録し、次の2から3周は「枕地直進モード」で直進中のハンドル操作を不要とし、それ以降は「オートモード」を使って刈取作業を全自動で仕上げることも可能である。ただし、自動操舵は、これらの例に限らない。
【0012】
図1および図2に示すように、コンバイン1は、刈り取った圃場の作物を機体内に掻き込み、脱穀・選別・穀粒貯留し、適宜機外に搬出可能とした収穫機としての普通型コンバインである。このコンバイン1は、自走可能な走行機体2と、その前端部に設けられた刈取部3と、脱穀部7と、選別部8と、グレンタンク10を有する穀粒貯留部9と、動力部6と、制御装置100と、操縦部15とを備える。走行機体2は、クローラ部5を有するクローラ式の走行装置として構成された走行部4を備える。なお、操縦部15については図3から図6を参照して後述するが、本発明に関するもの以外は図示を省略している。
【0013】
穀粒貯留部9の前方には、操縦者が搭乗する操縦部15が設けられている。この操縦部15は、キャビン16により覆われており、座席17、その前方に配置されたハンドル(ステアリングホイール)18、主変速レバー21、副変速レバー22、作業クラッチレバー23などが設けられている。なお、主変速レバー21、副変速レバー22、および作業クラッチレバー23は、座席17の左側に配置されたサイドパネル24に設けられている。
【0014】
穀粒貯留部9の後方には、駆動源としてのエンジン25が設けられている。このエンジン25を有する動力部6が、走行部4、刈取部3、脱穀部7、選別部8、穀粒貯留部9などに回転動力を伝達する。エンジン25としては、ディーゼルエンジンが挙げられるが、これに限らない。
【0015】
刈取部3は、搬送装置としてのフィーダ30と、掻込リール34とを有する。この刈取部3は、圃場の穀稈を刈取可能とする下降位置と、穀稈を刈取不能とする上昇位置との間で昇降可能に取り付けられている。
【0016】
フィーダ30は、刈取部3にて刈り取られた穀稈を搬送して脱穀部7へと供給する搬送装置である。このフィーダ30は、ハウジングとしてのフィーダハウス35を有しており、キャビン16の左方に位置する。
【0017】
フィーダハウス35の下方には、昇降用シリンダ39が介設されている。この昇降用シリンダ39は、その伸長時に油圧の作用をともなう単動式の油圧シリンダである。したがって、昇降用シリンダ39が油圧の作用をともなって伸長することで、刈取部3(フィーダ30)が上昇方向に回動し、昇降用シリンダ39の油圧が解除されることで、刈取部3(フィーダ30)の自重による下降にともない、昇降用シリンダ39が短縮する。
【0018】
フィーダ30は、掻込リール34などとともに刈取部3を構成し、刈取部3は、昇降用シリンダ39の伸縮動作による走行機体2に対するフィーダ30の回動により昇降動作するように構成されている。また、掻込リール34も昇降可能であって、その昇降動作は、例えば、操縦部15に設けられたリール上下スイッチ131やリール上下操作スイッチ111により操作される。なお、リール上下スイッチ131やリール上下操作スイッチ111については、図3から図5を参照して後述する。
【0019】
(2)操縦部15
図3は、コンバイン1の操縦部15内を示す平面図である。図4は、操縦部15内の斜視図である。図5は、操縦部15内の主要部を拡大して示す、左後上方から見た斜視図である。図6はその主要部を拡大して示す、図5よりやや上方から見た斜視図である。図7はその主要部を拡大して示す、左前上方から見た斜視図である。図8はその主要部を拡大して示す平面図である。図9はその主要部を拡大して示す左側面図である。図10はその主要部を拡大して示す、左前下方から見た斜視図である。図11はその主要部を拡大して示す、左下方から見た斜視図である。図12は、主変速レバー21の拡大図である。図13は、圃場Hにおける自動走行経路Pを示す平面図である。
【0020】
図3から図12に示すように、このコンバイン1は、操縦部15内のほぼ中央に座席17を備えるとともに、その前方に手動操舵のための概ね丸形のハンドル18を備えている。なお、このハンドル18が本発明の「手動操舵装置」に相当する。
【0021】
このハンドル18の内側で右横やや上には、リール上下操作スイッチ111が配置されている。このリール上下操作スイッチ111は、ハンドル18を握ったまま指先で前後左右に操作可能である。このリール上下操作スイッチ111は、後述するリール上下スイッチ131と同様に、コンバイン1の一部、具体的には掻込リール34を動作させるために操作される。例えば、前後操作で昇降動作を可能とし、左右操作で回転速度を調整可能としてもよい。あるいは、リール上下スイッチ131とは異なる機能を割り当ててもよい。また、掻込リール34以外の動作ができるようにしてもよい。
【0022】
また、操縦部15は、図5から図11に示すように、自動操舵のための操作系が配置されたスイッチボックス120と、リール上下スイッチ131と、経路オフセットスイッチ132と、アームレスト140とをさらに備えている。スイッチボックス120は、部材126から129を介して右側フロントピラー41に支持されるように取り付けられている。リール上下スイッチ131および経路オフセットスイッチ132は、部材130およびドリンクホルダー142を介して、開閉する右側ドア42の内側に取り付けられている。
【0023】
スイッチボックス120は、やや縦長の箱形状を有しており、その縦方向の長さはハンドル18の半径程度である。このスイッチボックス120は、ハンドル18の右斜め前方近傍のやや下方にハンドル18から少し離して、その正面が座席17に座った操縦者の顔の方を向くように傾けて配置されている。
【0024】
スイッチボックス120の正面の左側ほぼ中央には、比較的大きな円形の自動開始ボタン121が配置されており、この自動開始ボタン121が押されてONすると手動操舵が自動操舵に切り替わるようになっている。なお、自動開始ボタン121又はこれを含むスイッチボックス120が本発明の「自動操舵装置」に相当する。自動開始ボタン121を押してONする操作は本発明の「切替操作」の一例である。
【0025】
なお、サイドパネル24に設けられている主変速レバー21は、図12に示すように、リール前後・リール変速スイッチ21a,刈取部3における水平制御の操作スイッチ21b、直進アシストON/OFFスイッチ21c、刈取昇降スイッチ21d、ノークラッチ副変速スイッチ21e、オートセットスイッチ21f、オートリフトスイッチ21g、および刈取クラッチスイッチ21hを備えている。これらのスイッチのうち、直進アシストON/OFFスイッチ21cは自動開始ボタン121と同じ機能を有する。
【0026】
また、スイッチボックス120は、図5、6、8、9に示すように、自動操舵の第1経路および第2経路をそれぞれ登録する第1経路ボタン122および第2経路ボタン123と、始点(A点)および終点(B点)をそれぞれ設定するA点ボタン124およびB点ボタン125とをさらに有している。
【0027】
コンバイン1は、図13に示すように、圃場Hに対して複数の基準線Lを設定可能に構成されており、各基準線Lについて圃場Hに始点Aおよび終点Bを設定することで始点Aから終点Bまでの基準線Lを作成する。本実施形態では、複数の基準線Lとして第1基準線L1および第2基準線L2を設定可能に構成されている。第1基準線L1は第1始点A1から第1終点B1までを直線で結んで作成され、第2基準線L2は第2始点A2から第2終点B2までを直線で結んで作成される。図13では、第1基準線L1に基づいて作成された自動走行経路Pが示されており、この自動走行経路Pにしたがってコンバイン1は自動直進走行を行う。
【0028】
リール上下スイッチ131は、コンバイン1の高さや位置の調整、リールの昇降など、コンバイン1の一部を動作させるために操作される。例えば、刈取部3の昇降動作可能としてもよい。具体的には、このリール上下スイッチ131を前方に倒すと刈取部3が下降し、後方に倒すと刈取部3が上昇するようにしてもよい。ただし、動作させる対象(コンバイン1の一部)や操作方法は、これらの例示に限らない。このリール上下スイッチ131は、図5に示すように、ハンドル18の右横近傍のやや下方にハンドル18から少し離して、且つスイッチボックス120の側方(スイッチボックス120からも少し離してその下端部の近傍)に配置されている。なお、このリール上下スイッチ131が本発明の「第1操作部材」に相当する。このリール上下スイッチ131を前方又は後方に倒す操作は本発明の「第1操作」の一例である。
【0029】
経路オフセットスイッチ132は、リール上下スイッチ131のすぐ右側に配置されており、自動操舵による経路の左右のオフセットを調整するために操作される。例えば、右側に倒す毎に右方向へのオフセットを所定量(例えば数cm)ずつ加算し、左側に倒す毎に左方向へのオフセットを同一の所定量ずつ加算するようにしてもよい。
【0030】
アームレスト140は、図5から図9に示すように、操縦者の腕を載せられるように上面がやや湾曲した台状部材であり、ハンドル18の右斜め後方でリール上下スイッチ131より少し高く配置されている。つまり、図3、8からわかるように、平面視ではリール上下スイッチ131は自動開始ボタン121とアームレスト140との間に配置されているとも言える。なお、このアームレスト140は、図11に示すように、取り付け部材141およびドリンクホルダー142を介して、開閉する右側ドア42の内側に取り付けられている。
【0031】
また、リール上下スイッチ131は、図9に示すように、アームレスト140に右腕を載せたままで指先によって操作できるような、アームレスト140の前端よりやや低い位置に配置されている。このような操作を右手に極力負担をかけずに行えるようにするため、図9、11に示すように、取り付け部材141に設けられた長溝141bおよびボルト141aによって、アームレスト140はリール上下スイッチ131に対して前後に位置調整(接近又は離間)可能に構成されている。さらに、図11に示すように、取り付け部材141に設けられた長溝141dおよびボルト141cによって、アームレスト140はリール上下スイッチ131に対して左右に位置調整可能に構成されている。
【0032】
また、コンバイン1には、ハンドル18への操作荷重を検出する操作荷重センサー150(図2参照)がさらに備えられている。自動操舵時にハンドル18への過剰な(所定値以上)操作荷重がかかると、自動操舵が解除されて手動操舵に切り替わる。これにより、自動操舵を解除したいときに特別な操作をすることなく、ハンドル18の操舵という自然な操作で自動操舵を解除して、そのまま手動操舵による運転に移行できる。例えば、操作荷重だけでなく操舵角も検出できるようにして、予め設定された操舵角以上になったときにも自動操舵を解除するようにしてもよい。なお、この操作荷重センサー150が本発明の「検出部」に相当する。
【0033】
(3)他の実施形態
次に、コンバイン1の他の実施形態について説明する。以下の説明において、実施形態と同一の構成については同一の符号を振り、その説明を省略する。図14は、他の実施形態に係るコンバイン1における操縦部15内の主要部を拡大して示す、左後上方から見た斜視図である。
【0034】
コンバイン1には、把手部43が設けられている。把手部43は、右側ドア42の内側に取り付けられ、前後方向に沿って延びている。把手部43にはドリンクホルダー142が連結されている。ドリンクホルダー142は、把手部43と右側ドア42との間に配置されている。ドリンクホルダー142は、把手部43および右側ドア42に固定されている。ドリンクホルダー142には、把手部43を介してアームレスト160が連結されている。
【0035】
図15は、アームレスト160の支持構造を示す背面図である。この図では、主に破線で囲む部分の構造について、説明の便宜のために断面図で示している。また、この図では説明の便宜のために、ドリンクホルダー142の上側の図示を省略している。
【0036】
図15に示すように、ドリンクホルダー142には、固定板143が連結されている。固定板143は、ドリンクホルダー142と一体に形成されている。固定板143は、第1固定片143Aと第2固定片143Bとを備える。第1固定片143Aは、ドリンクホルダー142の一方側(左側)の端部から、上方に向けて延びる板材である。第2固定片143Bは、第1固定片143Aの上端部から、左側に向けて延びる板材である。固定板143のうち、第2固定片143Bが、把手部43の下側に固定されている。
【0037】
ドリンクホルダー142の左側の端部には、台座144が取り付けられている。台座144は、座面が左上を向くように傾斜して、ドリンクホルダー142の左側の端面に取り付けられている。
【0038】
アームレスト160は、把手部43に支持部材170を介して取り付けられている。アームレスト160は、支持部材170により、回動軸Ax1を中心として周方向に回動自在に支持されている。
【0039】
アームレスト160は、マット部161と、固定部162と、アーム部163とを備えている。マット部161は、ウレタン等の軟質材料により形成されている。マット部161は平面視で略矩形状を呈している。マット部161の上面に操縦者の右の手のひらが載置されることで、アームレスト160が使用される。マット部161の下面には固定部162が連結されている。
【0040】
固定部162は、マット部161とアーム部163とを固定する。固定部162は金属材料により形成されている。固定部162は平面視で矩形状を呈する金属板である。固定部162は、ボルトを介してマット部161の下面に固定されている。固定部162にはアーム部163の先端が連結されている。
【0041】
アーム部163は一方向に延びるパイプ材である。アーム部163の一方側(左側)の端部は、固定部162に連結されている。アーム部163の他方側(右側)の端部には、後述する支持部材170の可動筒172が連結されている。アーム部163は、アームレスト160の使用状態(図15に実線で示す状態)において、左右方向に延びるとともに、右側の端部が湾曲している。アーム部163の右側の端部は、右側に向かうにしたがって、次第に上方を向くように傾斜して伸びている。このため、アーム部163は正面視で略L字状を呈する。アーム部163の右側の端部には、板状の当接板164が取り付けられている。当接板164は、台座144の座面に当接している。これにより、アームレスト160のマット部161に操縦者が手のひらを載せることでアーム部163が受ける荷重を、台座144により支持することができる。
【0042】
支持部材170は、アームレスト160を位置調整可能に支持する部材である。支持部材170は、前後方向に延びる回動軸Ax1を備えている。アームレスト160は、支持部材170により回動軸Ax1周りに回動自在に支持される。以下の説明において、連結筒171の回動軸Ax1に沿う方向を軸方向と示す。また、回動軸Ax1周りに周回する方向を周方向と示す。また、回動軸Ax1と直交する方向を径方向と示す。
【0043】
支持部材170は、連結筒171と、可動筒172と、固定軸174と、プランジャ175とを備えている。連結筒171は、固定板143における第2固定片143Bの下面に固定されている。
【0044】
図16は、図15におけるXVI-XVI断面図である。図16に示すように、連結筒171は、軸方向に間隔をあけて2つ配置されている。連結筒171の内側には、筒状のカラー176が挿入されている。2つの連結筒171は同軸に配置されている。
【0045】
可動筒172は、外径および内径が軸方向の全域にわたって一様な筒状を呈する。可動筒172は、軸方向の両端が開口している。可動筒172の軸方向の両端におけるそれぞれの内側に、カラー176が挿入されている。可動筒172の軸方向の両端部は、連結筒171における軸方向の端面と対向している。このため、可動筒172の軸方向の変位が規制される。一方、可動筒172は連結筒171により周方向に変位可能(回転自在)に保持されている。
【0046】
可動筒172の周壁には、周壁を径方向に貫く切欠き部173が形成されている。切欠き部173のうち、径方向の外端部には、面取り(テーパ面)が形成されている。面取りが形成されていることで、後述するプランジャ175のボール175Cが、切欠き部173の内部に円滑に進入し、又は内部から円滑に離脱することができる。可動筒172の周壁には、複数の切欠き部173が形成されている。複数の切欠き部173は、軸方向の位置が互いに一致している。
【0047】
図15に示すように、切欠き部173は、第1切欠き部173Aと第2切欠き部173Bとを有する。第1切欠き部173Aおよび第2切欠き部173Bは、可動筒172の周壁において、周方向に間隔をあけて配置されている。アームレスト160の周方向の可動域は、第1切欠き部173Aおよび第2切欠き部173Bの位置により規定される。
【0048】
本実施形態では、第1切欠き部173Aおよび第2切欠き部173Bの位置関係は、回動軸Ax1を中心とした中心角が70°となっている。第1切欠き部173Aおよび第2切欠き部173Bの中心角は45°よりも大きいことが好ましい。なお、可動筒172は切欠き部173を3つ以上有してもよい。また、複数の切欠き部173それぞれの位置関係は、任意に変更することができる。
【0049】
固定軸174は、軸方向に延びる軸部材である。固定軸174は、2つの連結筒171および可動筒172の内側に、カラー176を介して挿通される。これにより、連結筒171および可動筒172の位置が固定軸174により固定される。固定軸174は、回動軸Ax1と同軸に配置されている。固定軸174における軸方向の両端部それぞれには、連結筒171の軸方向の変位を規制する抜け止めとしての座金177が取り付けられている。座金177は、軸方向の外側に取り付けられたC字状の止め輪178により、軸方向の位置が規制されている。
【0050】
プランジャ175は、アームレスト160の周方向の位置を規制する部材である。プランジャ175は、可動筒172に形成された切欠き部173と協働して、デテント機構を構成する。デテント機構とは、ばね等の抵抗によって、ストッパ部材を所定位置に保持する機構を指す。すなわち、プランジャ175および可動筒172が、アームレスト160が回動する可動域の端部において、アームレスト160を保持する保持手段として機能する。このように、保持手段は、アームレスト160の回動軸Ax1周りの周方向の位置を保持する。
【0051】
プランジャ175は、収容筒175Aと、スプリング175Bと、ボール175Cと、止めねじ175Dとを備えている。
【0052】
収容筒175Aは、中心軸線Ax2が径方向(左右方向)に延びる筒状を呈する。収容筒175Aは径方向の一方側(左側)の端面が、固定板143における第1固定片143Aに連結されている。収容筒175Aは、中心軸線Ax2が、可動筒172の軸方向の中心よりも軸方向の一方側に位置するように配置されている。
【0053】
スプリング175Bは、径方向(左右方向)に延びるコイルばねである。スプリング175Bは、収容筒175Aの内部に収容されている。スプリング175Bは、中心軸線Ax2と同軸に配置されている。
【0054】
ボール175Cは、収容筒175Aの内部に収容されている。ボール175Cは、収容筒175Aの内部において、径方向に移動自在に配置されている。ボール175Cは、可動筒172のストッパ部材である。
【0055】
ボール175Cは収容筒175Aの内部のうち、径方向の一方側(左側)の端部に配置されている。ボール175Cは、スプリング175Bの端部と当接し、スプリング175Bにより径方向における収容筒175Aの外側(左側)に向けて付勢されている。ボール175Cは、左側の端部が可動筒172の切欠き部173の内部に挿入されている。
【0056】
止めねじ175Dは、収容筒175Aの径方向の他方側(右側)の端部に取り付けられている。止めねじ175Dは外周面に雄ねじ部が形成されている、止めねじ175Dは、収容筒175Aの内周面に形成された雌ねじと連結される。止めねじ175Dは、スプリング175Bにおける径方向の他方側(右側)の端部と当接することで、スプリング175Bの付勢力に対抗する。
【0057】
アームレスト160は、第1状態および第2状態を備えている。第1状態とは、アームレスト160が使用される状態である。第2状態とは、アームレストが使用されない状態である。
【0058】
図15に実線で示すように、アームレスト160の第1状態では、プランジャ175におけるボール175Cの一部が、第1切欠き部173Aの内部に挿入されている。このため、プランジャ175と可動筒172が係合し、可動筒172の周方向の変位が規制される。これにより、コンバイン1の走行に伴う振動がアームレスト160に伝わったとしても、アームレスト160にがたつきが生じるのを抑制することができる。
【0059】
次に、操縦者の降車時など、アームレスト160の使用が終了した際に、アームレスト160は第1状態から第2状態に移行される。具体的には、操縦者がアームレスト160のマット部161を把持し、回動軸Ax1周りに周方向の上方に向けてアームレスト160を回動させる。この際、可動筒172は、切欠き部173に形成された面取りを介して、切欠き部173に挿入されたボール175Cに対して、径方向の他方側(右側)に向けた外力を与える。
【0060】
これによりボール175Cは、スプリング175Bからの径方向の一方側(左側)に向けた付勢力に対抗して、径方向の他方側(右側)に向けて変位する。ボール175Cが第1切欠き部173Aから完全に離脱すると、可動筒172とプランジャ175との係合状態が解除され、アームレスト160は、可動筒172とともに、操縦者の操作に応じて周方向の上方に向けて回動する。
【0061】
そして、アームレスト160が周方向の上方に向けて回動する過程において、第2切欠き部173Bと、プランジャ175のボール175Cとの周方向の位置が一致する。この際、ボール175Cが、スプリング175Bからの径方向の一方側(左側)の付勢力に応じて、第2切欠き部173Bの内部に進入する。
【0062】
これにより、図15において2点鎖線で示すように、アームレスト160が周方向の上方に向けて跳ね上がった状態で、プランジャ175が可動筒172と係合し、可動筒172の周方向の変位が規制される。このようにして、使用しない時のアームレスト160の位置が保持される。この状態がアームレスト160の第2状態となる。
【0063】
すなわち、アームレスト160の可動域は、第1切欠き部173Aとプランジャ175とが径方向に対向する位置から、第2切欠き部173Bとプランジャ175とが径方向に対向する位置までとなる。
【0064】
図17は、アームレスト160の第2状態を示す背面図である。図17に示すように、使用しない時のアームレスト160は、マット部161が把手部43の上方に位置した状態で保持されている。このように、支持部材170がアームレスト160を位置調整可能に支持する。このように、アームレスト160の位置を調整することができるため、例えば右側ドア42の開閉時、又はコンバイン1への操縦者の乗降時におけるアームレスト160の車内(左側)への突出量を抑えることができ、アームレスト160の利便性を向上することができる。
【0065】
また、アームレスト160が、支持部材170により回動軸Ax1周りに回動自在に支持されているので、操縦者により、アームレスト160の位置を容易に変更することができる。
【0066】
また、支持部材170が、アームレスト160が回動する可動域の端部において、アームレスト160を保持する保持手段を備えている。このため、アームレスト160の位置が固定され、アームレスト160にがたつきが生じるのを抑制することができる。
【0067】
また、アームレスト160にドリンクホルダー142が連結されているので、操縦者の利便性を向上することができる。
【0068】
(4)その他の変形例
本発明の第1操作部材について、その他の例について説明する。第1操作部材には、以下の少なくとも一方に該当する操作スイッチが該当する。
・自動操舵中(特に直進モード中)に使用頻度が高い操作スイッチ
・ハンドル18又はハンドル18の周囲に設けられている操作スイッチ
すなわち、第1操作とは、自動操舵と並行して操縦者により個別に行われる操作と定義することができる。
【0069】
自動操舵中(特に直進モード中)に使用頻度が高い操作スイッチとしては、例えば、以下が挙げられる。
・刈取部3の前後の傾斜を制御する操作スイッチ
・掻込リール34の前後、上下を調整する操作スイッチ
【0070】
ハンドル18又はハンドル18の周囲に設けられている操作スイッチとしては、例えば、以下が挙げられる。
・クラクション
・ウインカー等の各種の方向指示器の操作スイッチ
【0071】
コンバイン1では、自動操舵中は、ハンドル18に所定値以上の操作荷重が負荷されることで、自動操舵が解除され、手動操作に切り替わる。このため、コンバイン1では、自動操舵中に使用頻度が高いスイッチであって、ハンドル18又はハンドル18の周囲に設けられている操作スイッチを、ハンドル18とは別に設けている。これにより、自動操舵中には、ハンドル18に設けられた第1操作部材を操作することで、操縦者はハンドル18に接触することなく、該当する各操作を行うことができる。
【0072】
このように、本発明に係るコンバイン1では、第1操作を行うための操作スイッチについては、ハンドル18と、アームレスト140の前方等のハンドル18以外の部分と、の2か所にそれぞれ設けられている。そして、自動操舵の際には、ハンドル18に設けられた各操作スイッチへの操作が優先されてもよいし、ハンドル18以外の部分に設けられた第1操作部材への操作が優先されてもよい。
【0073】
また、本発明のドリンクホルダー142に代えて、操縦者の携行品のうち、ドリンク以外の物品を収容可能な収容部を設けてもよい。操縦者が社内に持ち込む携行品としては、例えば以下が含まれる。
・スマートフォンなどの端末装置
・財布やハンカチなどの身の回りの物品
・タバコや携帯灰皿など、操縦に際して携行される嗜好品
【0074】
(5)付記
本発明について以下に付記する。
【0075】
(付記1)
手動操舵と自動操舵とが切り替え可能な作業機であって、
手動操舵装置と、
切替操作を受け付けて前記手動操舵を前記自動操舵へ切り替える自動操舵装置と、
第1操作を受け付けて前記作業機の一部を動作させる第1操作部材と
を備え、
前記手動操舵装置とは別に前記第1操作部材を設けた、作業機。
【0076】
(付記2)
前記自動操舵装置の側方に前記第1操作部材が配置されている、付記1に記載の作業機。
【0077】
(付記3)
前記手動操舵装置に対して前記自動操舵装置が配置されている側に取り付けられたアームレストをさらに備え、
前記第1操作部材が、平面視では前記自動操舵装置と前記アームレストとの間に配置されている、付記1又は付記2に記載の作業機。
【0078】
(付記4)
前記第1操作部材が、前記アームレストの前端より低い位置に配置されている、付記1から付記3のいずれか1項に記載の作業機。
【0079】
(付記5)
前記アームレストは、位置調整可能に構成されている、付記3又は付記4に記載の作業機。
【0080】
(付記6)
ドアの内側に取り付けられた把手部をさらに備え、
前記アームレストは、前記把手部に支持部材を介して取り付けられ、
前記支持部材は、前記アームレストを位置調整可能に支持する、付記3から付記5のいずれかに記載の作業機。
【0081】
(付記7)
前記支持部材は、前後方向に延びる回動軸を備え、
前記アームレストは、前記支持部材により前記回動軸周りに回動自在に支持されている、付記6に記載の作業機。
【0082】
(付記8)
前記支持部材は、前記アームレストが回動する可動域の端部において、前記アームレストを保持する保持手段を備える、付記7に記載の作業機。
【0083】
(付記9)
前記保持手段は、前記アームレストの前記回動軸周りの周方向の位置を保持するデテント機構を有する、付記8に記載の作業機。
【0084】
(付記10)
前記アームレストには、収容部が連結されている、付記3から付記9のいずれかに記載の作業機。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、手動操舵と自動操舵とが切り替え可能な、様々な作業を行う作業機に利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 コンバイン(作業機)
2 走行機体
3 刈取部
4 走行部
5 クローラ部
6 動力部
7 脱穀部
8 選別部
9 穀粒貯留部
10 グレンタンク
15 操縦部
16 キャビン
17 座席
18 ハンドル(手動操舵装置)
21 主変速レバー
21a リール前後・リール変速スイッチ
21b 刈取部3における水平制御の操作スイッチ
21c 直進アシストON/OFFスイッチ
21d 刈取昇降スイッチ
21e ノークラッチ副変速スイッチ
21f オートセットスイッチ
21g オートリフトスイッチ
21h 刈取クラッチスイッチ
22 副変速レバー
23 作業クラッチレバー
24 サイドパネル
25 エンジン
30 フィーダ
34 掻込リール
35 フィーダハウス
39 昇降用シリンダ
41 右側フロントピラー
42 右側ドア
43 把手部
100 制御装置
111 リール上下操作スイッチ
120 スイッチボックス(自動操舵装置)
121 自動開始ボタン
122 第1経路ボタン122
123 第2経路ボタン123
124 A点ボタン124
125 B点ボタン125
131 リール上下スイッチ(第1操作部材)
132 経路オフセットスイッチ
135 排出オーガ操作リモコン
140 アームレスト
141 取り付け部材
142 ドリンクホルダー(収容部)
150 操作荷重センサー(検出部)
160 アームレスト
170 支持部材
171 連結筒
172 可動筒(保持手段)
173 切欠き部
174 固定軸
175 プランジャ(保持手段)
Ax1 回動軸
Ax2 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17