IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスケー イノベーション  カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2024-66985上向流電気化学凝集反応器、及びそれを用いて廃水から汚染物質を除去する方法
<>
  • 特開-上向流電気化学凝集反応器、及びそれを用いて廃水から汚染物質を除去する方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024066985
(43)【公開日】2024-05-16
(54)【発明の名称】上向流電気化学凝集反応器、及びそれを用いて廃水から汚染物質を除去する方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/463 20230101AFI20240509BHJP
【FI】
C02F1/463
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147630
(22)【出願日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】10-2022-0144442
(32)【優先日】2022-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パク ジュン ミン
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA08
4D061DB18
4D061DC13
4D061DC20
4D061EA06
4D061EB04
4D061EB14
4D061EB16
4D061EB19
4D061EB20
4D061EB27
4D061EB28
4D061EB33
4D061EB37
4D061EB39
4D061GA14
4D061GC20
(57)【要約】
【課題】廃水中の低濃度で存在する汚染物質を電力効率的に除去することができる上向流電気化学凝集反応器を提供する。
【解決手段】本発明の上向流電気化学凝集反応器は、反応器の内部に固定されたカソードと、前記カソードと所定の間隔で離隔する少なくとも1つの移動可能なアノードと、前記カソードと前記アノードとの間隔の変化を検知する検知部と、前記検知部で検知されたカソードとアノードとの間隔の変化に基づいて、カソードとアノードとの間隔を前記所定の間隔に維持する制御部と、第1分離部と、前記第1分離部よりは下部に位置する第2分離部と、前記第2分離部と流体連通するスラッジ流出口と、を含んでなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上向流電気化学凝集反応器であって、
反応器の内部に固定されたカソードと、
前記カソードと所定の間隔で離隔する少なくとも1つの移動可能なアノードと、
前記カソードと前記アノードとの間隔の変化を検知する検知部と、
前記検知部で検知されたカソードとアノードとの間隔の変化に基づいて、カソードとアノードとの間隔を前記所定の間隔に維持する制御部と、
第1分離部と、
前記第1分離部よりも下部に位置する第2分離部と、
前記第2分離部と流体連通するスラッジ流出口と、を含んでなる、上向流電気化学凝集反応器。
【請求項2】
アノードが2つ以上の場合、各アノードとカソードとの間隔は同一である、請求項1に記載の上向流電気化学凝集反応器。
【請求項3】
カソードはSUS(Steel Use Stainless)又はTiを含む、請求項1に記載の上向流電気化学凝集反応器。
【請求項4】
アノードは、Fe、Al、及びこれらの組み合わせのいずれかを含む、請求項1に記載の上向流電気化学凝集反応器。
【請求項5】
第1分離部及び第2分離部は多孔質金属又はセラミックを含む、請求項1に記載の上向流電気化学凝集反応器。
【請求項6】
第2分離部が円錐形(conical)である、請求項1に記載の上向流電気化学凝集反応器。
【請求項7】
カソード及びアノードが第1分離部と第2分離部との間に位置する、請求項1に記載の上向流電気化学凝集反応器。
【請求項8】
前記反応器は浮遊物流出口をさらに含む、請求項1に記載の上向流電気化学凝集反応器。
【請求項9】
前記反応器はガス流出口をさらに含む、請求項1に記載の上向流電気化学凝集反応器。
【請求項10】
反応器に対する電力はモノポーラ(monopolar)で印加される、請求項1に記載の上向流電気化学凝集反応器。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の上向流電気化学凝集反応器を用いた廃水中汚染物質の除去方法。
【請求項12】
前記汚染物質は、リン、重金属、有機物、又はこれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の廃水中汚染物質の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上向流電気化学凝集反応器、及びそれを用いて廃水から汚染物質を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気凝集技術は、水系に存在するリンや重金属などの汚染物質を凝集させて除去するために使用される。電気凝集技術を用いた水処理は、消耗性電極の溶出によって生成される溶出金属と、水系に存在する汚染物質との凝集反応によって行われる。これに関連して、近年、消耗性電極の溶出による大きさの縮小、及びこれによる電極間の間隔変化による反応器の駆動に必要な電力の変化を制御することに関する研究が盛んに行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2005-0094375号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上向流電気化学凝集反応器、及びそれを用いて廃水から汚染物質を除去する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1観点による上向流電気化学凝集反応器は、反応器の内部に固定されたカソード(cathode)と、該カソードと所定の間隔で離隔する少なくとも1つの移動可能なアノードと、前記カソードと前記アノードとの間隔の変化を検知する検知部と、前記検知部で検知されたカソードとアノードとの間隔の変化に基づいて、カソードとアノードとの間隔を前記所定の間隔に維持する制御部と、第1分離部と、前記第1分離部よりも下部に位置する第2分離部と、前記第2分離部と流体連通するスラッジ流出口と、を含んでなる。
【0006】
一実施形態によれば、アノードが2つ以上である場合、各アノードとカソードとの間隔は同一であってもよい。
【0007】
一実施形態によれば、カソードはSUS(Steel Use Stainless)又はTiを含んでもよい。
【0008】
一実施形態によれば、アノードは、Fe、Al、及びこれらの組み合わせのいずれかを含んでもよい。
【0009】
一実施形態によれば、第1分離部及び第2分離部は、多孔質金属又はセラミックを含んでもよい。
【0010】
一実施形態によれば、第2分離部は円錐形(conical)であってもよい。
【0011】
一実施形態によれば、カソード及びアノードは、第1分離部と第2分離部との間に位置してもよい。
【0012】
一実施形態によれば、前記反応器は、浮遊物流出口をさらに含んでもよい。
【0013】
一実施形態によれば、前記反応器は、ガス流出口をさらに含んでもよい。
【0014】
一実施形態によれば、前記反応器に対する電力は、モノポーラ(monopolar)で印加されてもよい
【0015】
本開示の第2観点による廃水中の汚染物質を除去する方法は、第1観点の上向流電気化学凝集反応器を用いて行われてもよい。
【0016】
一実施形態によれば、前記汚染物質は、リン、重金属、有機物、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0017】
本開示の特徴及び利点は、添付図面に基づく以下の詳細な説明によってさらに明らかになるであろう。
【0018】
これに先立ち、本明細書及び請求の範囲で使用された用語又は単語は、通常的且つ辞典的な意味で解釈されてはならず、発明者がその自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきである。
【発明の効果】
【0019】
本開示の第1観点によれば、反応器の駆動時に反応器に印加される電圧を一定に保つことができ、反応器の電源を切っていない状態でもアノードを交換することができる。
【0020】
本開示の第2観点によれば、廃水中の低濃度の汚染物質を電力効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態による上向流電気化学凝集反応器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の目的、利点、及び特徴は、添付図面に関連する以下の詳細な説明からさらに明らかになるが、本開示は必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本開示を説明するにあたり、関連する公知技術についての具体的な説明が本開示の要旨を不要に不明確にするおそれがあると判断された場合、その詳細な説明は省略する。
【0023】
以下、添付図面を参照して、本開示の一実施形態を詳細に説明する。
【0024】
図1は、一実施形態による上向流電気化学凝集反応器の概略図である。
【0025】
本明細書で使用された「上向流」という用語は、反応器に流入する原水が反応器の下部から上部へ流れることを意味する。
【0026】
前記上向流電気化学凝集反応器は、反応器の内部に固定されたカソード101と、少なくとも1つの移動可能なアノード102と、を含み、前記アノードは、カソードと所定の間隔で離隔することができる。
【0027】
カソードは、電源印加時に還元される還元電極であって、反応器に電源を印加した状態でも溶出して消耗せず、反応器内の特定の位置に固定されることにより、制御部によって移動しない。
【0028】
ここで、カソードは、アノードが少なくとも2つである場合、すべてのアノードと同じ間隔で離隔するように、図1に示すように反応器の正中央に固定できる。このとき、反応器の固定方式は特に限定されない。
【0029】
前記カソードは、金属を含むことができる。上述したように、カソードは、電源印加時にも溶出してはならないので、前記金属は、電解質に対する溶解安定性を有しながら、電気伝導度の高い金属であってもよく、本開示の目的を制限しない金属であれば、特に制限されない。電源印加時の溶解安定性及び経済性の観点では、前記金属はSUS(Steel Use Stainless)又はTiであることが好ましい。
【0030】
前記アノードは、反応器に電源を印加する場合、酸化反応によって、アノードに含まれている金属イオンを溶出させながら消耗する消耗性電極であり、ここで溶出する金属イオンは、水酸化物を形成する。これは、汚染物質の凝集剤として作用する。アノードは、反応器の内部に固定されたカソードとは異なり、反応器の外壁を貫通して、アノードの一部は反応器の内側にあり、別の一部は反応器の外側にあり、制御部によって移動可能である。また、アノードがすべて消耗しても、アノードは、消耗したアノードと同じ位置で、反応器の外側から反応器の内側へ連続的に供給されてもよい。
【0031】
アノードは、カソードと所定の間隔で離隔することができるが、前記所定の間隔は、反応器に電源を印加する場合にアノードから所望の量の金属イオンが溶出することができるように制御された間隔に該当する。ここで、アノードとカソードとの所定の間隔とは、カソードに最も近いアノードの一端部とカソードとの距離を意味する。一実施形態において、前記所定の間隔は、1~30mm、好ましくは3~25mm、より好ましくは5~20mmであり得る。カソードとアノードとの間隔が1mm未満である場合、アノードで発生する酸素とカソードで発生する水素の気泡が電極同士の間で電極間反応を阻害するおそれがあり、カソードとアノードとの間隔が30mmを超える場合、電極間の抵抗が高くなって印加電圧も増加して消費電力が増加するおそれがある。
【0032】
前記反応器は、少なくとも1つのアノードを含むことができ、アノードが2つ以上である場合、各アノードとカソードとの間隔は同一であってもよい。各アノードとカソードとの間隔を同一に維持することにより、各アノードとカソードとの間に同じ電圧が印加されるようにすることができる。これは、消耗性電極であるアノードの均一な消耗を引き起こして管理の利便性を提供することができる。
【0033】
前記アノードは、金属を含むことができ、前記金属は、電源印加時に金属イオンとして溶出して、水系で酸化しながら金属水酸化物となり、このような金属水酸化物が互いに寄り集まって結晶化することにより凝集剤として機能することができるものであれば、種類の制限がない。例えば、一実施形態において、前記金属は、反応性の高い金属を含むことができ、前記金属は、好ましくはFe、Al、及びこれらの組み合わせのいずれかであり得る。
【0034】
前記反応器は、カソードとアノードとの間隔の変化を検知する検知部113を含むことができる。一実施形態において、検知部は、カソードとアノードとの間に印加される電圧の変化を測定して、前記間隔の変化を検知することができる。反応器に電源が印加される場合、アノードが溶出して金属イオンを生成することにより、アノードの大きさが減少してカソードとアノードとの間隔が大きくなり、電極間の間隔が大きくなることにより、アノードを溶出させるために要求される電圧が増加するが、検知部は、このような電圧変化に基づいてカソードとアノードとの間隔の変化を検知することができる。
【0035】
前記反応器は、検知部で検知されたカソードとアノードとの間隔の変化に基づいて、カソードとアノードとの間隔を前記所定の間隔に維持する制御部111を含むことができる。検知部で検知されたカソードとアノードとの間隔が、電源印加前のカソードとアノードとの間隔に比べて一定割合だけ増加した場合、制御部は、アノードをカソード方向に押し込むように、カソードとアノードとの間隔を電源印加前のカソードとアノードとの間隔に維持することができる。一実施形態では、検知部においてカソードとアノードとの間隔の変化が電圧の測定から検知される場合、制御部はカソードとアノードとの間の電圧が減少するようにアノードを制御することができる。具体的には、制御部は、カソードとアノードとの間隔が、電源印加前のカソードとアノードとの間隔に比べて10%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは3%以上増加したと検知部によって検知される場合に、これを電源印加前のカソードとアノードとの間隔に維持することができる。好ましくは、制御部は、検知部によってカソードとアノードとの間隔が変化することをリアルタイムで受け取り、リアルタイムで作動することができる。このように、カソードとアノードとの間隔を電源印加前の間隔に維持することにより、反応が行われても、アノードから所望の量の金属イオンが均一に溶出するようにして効率的な凝集反応を行うことができる。
【0036】
前記制御部は、アノードを反応器の外部から反応器の内部へ挿入する方式であれば、特に制限はない。一実施形態において、前記制御部は、モーターを含んでもよく、モーターは、アノードが貫通する反応器の外壁に位置し、アノードを反応器内のカソード方向に押し込む駆動力を提供することができる。制御部によってアノードがカソード方向に押し込まれて消耗しても、アノードが全て消耗する前に新しいアノードを制御部に位置させることにより、反応器の電源を維持しながらアノードを交換することができる。
【0037】
前記反応器は、第1分離部103及び第2分離部104を含むことができる。第1分離部及び第2分離部は、反応器内に、一端面が反応器の底部と平行な方向に存在することができ、ここで、第2分離部は、第1分離部よりも下部に位置することができる。
【0038】
第1分離部及び第2分離部は、これらの間に存在する、反応器内の特定の区域を定義することができ、前記区域は、反応器に電源が印加される場合、アノードから溶出した金属イオンの金属水酸化物が互いに寄り集まって結晶化した凝集剤が存在するベッド(bed)に該当することができる。凝集剤は、表面が水和しながら、原水に存在するリンや重金属などの汚染物質と共有結合又は静電気的結合によってスラッジを形成することができる。また、凝集剤は、スラッジを形成しなくても、第1分離部から第2分離部へと移動しながら他の金属水酸化物と接触してサイズが大きくなり、第2分離部を通過し難い。
【0039】
前記第1分離部及び第2分離部は、多孔質金属又は多孔質セラミックを含むことができる。ここで、多孔質金属及び多孔質セラミックは、液体成分のみを通過させることができる物質であって、アノードから溶出した金属イオンの水酸化物である凝集剤、及び凝集剤と汚染物質との凝集反応によって生成されるスラッジなどの固体成分がベッドの上部及び下部に抜け出さないようにする役割を果たす。前記多孔質金属及び多孔質セラミックは、例えば、特定のサイズの固体をろ過し、液体のみを通過させることができる気孔付き金属又はセラミックであってもよく、ふるい又は網の形態であってもよい。
【0040】
一実施形態において、前記多孔質金属又は多孔質セラミックは、サイズ1~10μmの気孔を含むことができる。アノードから溶出した金属イオンによって生成される凝集剤は、数十乃至数百マイクロメートルの大きさを有するので、凝集剤、及び凝集剤と汚染物質との凝集によって生成されるスラッジは、前記多孔質金属又は多孔質セラミックの気孔を介してベッドの上部又は下部に抜け出さない。
【0041】
前記反応器は、スラッジ流出口108を含み、スラッジ流出口は、第2分離部と流体連通する。スラッジ流出口は、前述したように、ベッドに存在する凝集剤及びスラッジなどの固体成分が反応器の外部へ排出できる流出口に該当し、一実施形態によれば、このような固体成分は、引き抜きによってスラッジ流出口によって排出できるので、スラッジ流出口は、引き抜き装置を含むことができる。
【0042】
前記第2分離部は、形態に制限がないが、凝集剤やスラッジなどの固体成分が沈殿によって集められ、引き抜きによってスラッジ流出口へ排出されることを容易にすることができる形態であることが好ましい。例えば、第2分離部は円錐形であってもよく、この場合、第1分離部と第2分離部との間で生成された凝集剤及びスラッジが沈殿によって円錐状の第2分離部の頂点に集中するようにして、頂点と流体連通するスラッジ流出口を介して容易に排出できるようにすることができる。
【0043】
図1に示すように、前記カソードとアノードは、第1分離部と第2分離部との間に位置してもよい。より好ましくは、カソード及びアノードは、第1分離部と第2分離部との間の区域内に、第1分離部からより近く位置することができる。カソード及びアノードが第1分離部に近い反応器の上部に位置することにより、カソード及びアノードの表面に溶出したアノードの金属水酸化物、すなわち凝集剤が形成されることを防止して、カソードとアノードとの間の電圧を一定に維持することができる。より具体的には、カソード及びアノードが第1分離部からより近く位置することにより、反応器の上部でアノードから溶出した金属イオン及びその水酸化物が生成される。この水酸化物は、重力によって下降しながら、他の金属水酸化物と凝集して大きさが大きくなり、結果的には第2分離部の付近に凝集剤が集中的に存在することができるようにする。カソード及びアノードが第1分離部と第2分離部との間に存在することにより、第1分離部と第2分離部によって定義される区域に、アノードから溶出した金属イオンによってベッドが形成できる。
【0044】
前記ベッドにおいて、凝集剤の濃度は均一でなくてもよい。具体的には、図1に示すように、前記ベッドの下部、すなわち、第2分離部付近における凝集剤の濃度は、ベッドの上部と比較して極めて高くてもよい。また、前記ベッドの上部に該当する、カソードとアノードが存在する位置では凝集剤の濃度が低くてもよい。このような凝集剤の濃度の不均一性は、前述のように重力の作用によって発生するものである。これは、カソード及びアノードの表面に凝集剤がくっ付く確率を大きく下げ、カソード及びアノードへの均一な電圧の印加を可能にし、ベッドの下部に集中した凝集剤が反応器の下部から上向流で流入する廃水中に存在する汚染物質と接触することが可能な確率を大きく増加させるので、廃水中の汚染物質の濃度が極めて低い場合でも、凝集反応が形成できるようにすることができる。
【0045】
前記反応器は、原水流入口106をさらに含んでもよい。原水流入口は、第2分離部よりも下部に位置することができる。原水流入口を介して、前記反応器の処理対象である廃水などの原水が反応器に流入し、流入した原水は、上向流で第2分離部を通過することができる。原水に存在する汚染物質は、ベッドの凝集剤との凝集反応を起こしてスラッジを形成することができる。
【0046】
前記反応器は、浮遊物流出口105をさらに含むことができる。浮遊物流出口は、第1分離部よりも上部に位置することができる。カソード及びアノードにおいてアノードの金属が溶出する酸化-還元反応の際に、付随的に発生する水電分解によってカソードでは水素ガスが発生し、アノードでは酸素ガスが発生するが、酸素及び水素ガスの発生によりアノードから溶出した金属イオンが第1分離部を通過して反応器の上部へ浮上することができ、このように上部へ浮上した金属イオンが水素化反応を介して凝集剤を形成し、原水中の汚染物質がこれと凝集して形成されたスラッジは、浮遊物流出口を介して反応器の外部へ排出できる。
【0047】
前記反応器は、ガス流出口110をさらに含んでもよい。ガス流出口は、反応器内のガス成分を反応器の外部へ排出する流出口であり、上述した酸化-還元反応の際にカソードとアノードで発生する酸素及び水素ガスは、前記ガス流出口を介して排出できる。
【0048】
前記反応器は、処理水流出口109をさらに含んでもよい。原水流入口を介して反応器内に流入した原水中の汚染物質は、ベッドでの凝集反応によってスラッジ流出口から排出され、残留汚染物質、凝集剤及びスラッジは、電気浮上によって浮遊物流出口を介して排出される。また、カソード及びアノードの酸化-還元反応の際に生成された酸素及び水素ガスは、ガス流出口から排出される。このように、処理された原水、すなわち処理水は、処理水流出口を介して反応器の外部へ排出されることができる。処理水流出口は、処理水を排出する場合に第1分離部よりも上部に存在する浮遊物質が処理水と共に反応器の外部へ流出しないようにする特殊な構造を有してもよい。前述した浮遊物流出口と共に、処理水流出口は、反応器内の水位を維持する役割も果たすことができる。
【0049】
一実施形態において、処理水流出口は、スクリーンを含むことができ、浮遊物流出口よりも下部に位置することができる。浮遊物流出口よりも下部に位置し、固体成分を濾過することが可能なスクリーンを含む処理水流出口を介して、一部の固体浮遊物質を含む処理水の液体成分のみが、浮遊物流出口によって処理水が排出される前に反応器の外部へ排出されることができる。
【0050】
処理水流出口から排出される処理水は、原水流入口を介して流入するときの原水に比べて、汚染物質の濃度が90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上低減できる。
【0051】
前記反応器は、ドレイン(drain)107をさらに含んでもよい。ドレインは、反応器の底部(bottom)に位置することができ、これにより反応器の定期的なメンテナンスの際に洗浄水を排出するか、或いは第2分離部よりも下部に存在しうる凝集剤及びスラッジを反応器の外部へ排出することができる。
【0052】
前記反応器に対する電力は、モノポーラで印加できる。モノポーラ電力印加方式は、1つの電極が1つの極性のみを帯びるようにする電力印加方式である。多数の板状電極が平行に整列されている場合、電源に直接接続された2つの電極間の全ての電極が、一方の電極の一面が(+)極性、他の一面が(-)極性を帯びる電力印加方式である双極性(bipolar)電力印加方式による場合、電源に直接接続された電極間の全ての電極に電場を形成するために高い電圧を印加しなければならず、電力印加の際に電源に直接連結された両電極間の全ての電極が消耗できるのに対し、モノポーラ電力印加方式によれば、高い電圧を印加する必要がなく、電力供給の際に電源の(-)極に接続されたアノードのみが消耗するので、電力消耗が少ないという利点があり、アノードから溶出する金属イオンの量が少ないため、低濃度の汚染物質の除去に一層効率的である。
【0053】
本開示の一観点によれば、前述した上向流電気化学凝集反応器を用いて廃水中の汚染物質を除去する方法が提供される。前述した上向流電気化学凝集反応器の原水流入口を介して原水を流入させ、電力を印加する場合、カソードとアノードとの間で酸化-還元反応が発生して、アノードに含まれている金属がイオンとして溶出する。溶出した金属イオンは、水酸化物形態の凝集剤を形成し、凝集剤は、第1分離部と第2分離部との間に分布されてベッドを形成する。第2分離部よりも下部に位置した原水流入口を介して上向流で流入する廃水中に存在する汚染物質は、ベッドで凝集剤と一緒に反応を起こして、凝集剤と汚染物質とが凝集したスラッジを形成する。凝集剤を形成する金属イオンがアノードの酸化によって生成されることにより、アノードが消耗してカソードとアノードとの間隔が漸次増加すると、検知部が前記間隔の変化を検知して制御部に信号を伝達し、伝達された信号を受け取った制御部がアノードを移動させてカソードとアノードとの間隔を電源印加前の間隔に維持する。形成されたスラッジは、引き抜かされてスラッジ流出口を介して反応器の外部へ排出される。
【0054】
廃水中に存在する汚染物質は、リン、重金属、有機物、又はこれらの組み合わせを含むことができる。ここで、有機物は、アノードから溶出した金属イオンが水酸化されて形成された水酸化物と静電気的結合を形成することができるため、結果として、これにより凝集できる有機物、すなわち、金属イオンとの反応性を有する有機物であり得る。また、アノードから溶出した金属イオンは、ポリマー(polymer)を形成する特性があり、これは、ベッドを形成する凝集剤と共に第2分離部の付近に一種のフィルタを形成するので、第2分離部で前記フィルタによる濾過によって除去される原水中の分子量が大きい有機物も前記有機物に該当することができる。
【0055】
上述した一連の段階を経て、廃水から汚染物質が除去され、カソード及びアノードの酸化-還元反応時に発生する酸素及び水素ガスによって第1分離部よりも上部に浮上して第1分離部よりも上部に形成された凝集剤及びスラッジは、浮遊物流出口を介して除去できる。
【0056】
また、カソード及びアノードから発生する酸素及び水素ガスは、ガス流出口を介して反応器の外部へ排出できる。
【0057】
このように汚染物質及び反応時に発生するガス成分が除去された廃水は、処理水流出口を介して反応器の外部へ流出できる。
【0058】
以上、本開示を具体的な実施形態によって詳細に説明した。実施形態は、本開示を具体的に説明するためのものであり、本開示は、これに限定されない。本開示の技術的思想内で当該分野における通常の知識を有する者によってその変形や改良が可能であるのは明らかであるといえる。
【0059】
本開示の単なる変更又は変更は、いずれも本開示の範囲に属するものであり、本開示の具体的な保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって明らかになるであろう。
【符号の説明】
【0060】
101 カソード
102 アノード
103 第1分離部
104 第2分離部
105 浮遊物流出口
106 原水流入口
107 ドレイン
108 スラッジ流出口
109 処理水流出口
110 ガス流出口
111 制御部
112 電源
113 検知部
図1